22495
日本建築学会大会学術講演梗概集
(中国) 2017年 8 月
繰 返
し
荷重を受ける
H
形断面梁の非線形挙動
せん断パネルの基本的履歴特性
日形 断 面 梁
繰返し荷重
せん断パネル
鋼材の歪硬化
円形環補強
弾塑性履歴
1.はじめに
逆対称曲げを受ける梁に関する研究に於いて繰返し載荷
での実験は普通に行われるが、学問的背景について検証
されることは殆どない。繰返し履歴性状の基本的仕組みが
判れば一方向載荷の力学的挙動の情報から繰返し履歴に
ついて予測でき、梁の設計上利することは大きいと考えた。
梁の力学的挙動に大きく関わるウェブについて、正負交
番に繰返し加わるせん断力とこれを受けるウェブ、の動きを把
握する。まず、初期不整のない状態でH形断面部材に対
しその長手方向を縦スティフナーで区分した正方形領域に
ついて、 一方向載荷と繰返し載荷とを並べて解析をした。
図-1は板厚を替えたせん断パネノレ 3例の結果であるが、
前者を実線で,後者を点線で示したもので、縦軸をそれぞ
れのせん断降伏荷重で無次元化して重ねて示している。
振幅を徐々に上げての繰返しで、せん断降伏後比較的早
い段階で降伏荷重を上回るせん断耐力にまで上昇する。
2. 繰返し載荷に伴う基本的な力学性状の把握
下段左右の図は第一象限を拡大表現しているが、図-2
は振幅の大きさを2%と一定にした正負交番の繰返しとその
後の一方向載荷の結果で、繰返し回数を変えた5ケース
の荷重変形関係をを重ねて描いたものである。1回の繰返
しとその後の一方向載荷、 2回, 3回 5回, 8回の各
繰返しとその後の一方向載荷による結果で見ると、 ・印実
線で示す一方向載荷の結果から順次離れて上昇していき、
。
/Qy
2
一定振幅繰返し議荷
1911l1lx60伽町x60011l1l
1.5
0.5
0.03 0.06 0.09
占/L
図 3
図-2
正会員。 薩川 恵一*1 正会員 鈴 木 敏 郎*2
。
/Qy
2
漸 増 振 幅 繰 返 し 載 荷
tlTll1x6∞ITII1x6001Tll1
。
~ーーー・~.:;.;.ωA
: _.''_:五j;';;~一「
ョ
イ〔一方問
白白白白白白白白ーー ーι白白色争 巴・ーー
t=25irm(Qy=3~ 17刷 ,
t= 19irm(Qy=2~ωk附 。
t=12irm(Qy=l~96kN)
_ ... 一 一 一一一一十ー
。1.0且2.0%. 3泊首
変形角各2回線返しa
2
m
川
F
U︾
t ' ' ' '
削
N
K
in
u
i
i
i
e u
内
‘
u
=
y
u
-0.03
。
0.03 0.06 0.09
占/L
図-1
繰返し5回程度の少ない回数で一定の状態に落ち着く。
図 3では正負振幅の大きさを1%~ 3%の聞で複数選択
し且つ降伏後の塑性変形量の総和を同じとなる回数を決め、
正負一定振幅の繰返し後の最終の動きだけを実線で示し
た。
o
はこの実線群の平均値を表しているが、耐力上昇値
は最初の降伏荷重に比べ略1.2倍ある。その後推移する耐
力上昇勾配は一方向載荷の荷重変形関係から見て半分程
度になっている。
。
/Qy
2
定娠中E繰返し餓荷
1911l1lx600l1l1lx60伽町
1
.5
0.5
0.03 0.06 0.09
d /L
NonJinear Behayiors of H-Section Members under Cyclic Shearing Load Partl
SATSUKA WA Keu'chi. SUZU!(f Toshirou
-
9
8
9
。
(kN)
2000
-2000 Qy=Z, 369kN :
圃
圃 ー- ーーーー・・骨ーー副・ー...
1.0%協 :2.0同角3.0事
, 4 変 形 各2回線返し
-4000
0.03
0.06 5t/L
( a )
図 4
漸増振幅繰返し戴荷
19rrmx60伽膚lx60伽開
σ U一ε 関係
中 ー ーー マ
-;'Qy.~? ,. ~.4~.~N
60
a =43.2kN/ cm:...ー ニコニコ."・コニコー窃・ 2
4
0
3
ぞ三三士
σ =36.0kN/cm' ③
20
シ云Fウ 『
Qy=2,843kN
。
。
0.03 0.06 0.09 E
図 4は同じ 19mm板厚のせん断パネノレに関する繰返し
載荷の解析結果であるが、繰返しに伴う鋼材の硬化特性を
組み込んだ (a)図に対し (b)図は繰返し履歴での耐力上
昇から換算される降伏点鋼とする結果である。両国の最外縁
の動きは殆ど同じであり、繰返し荷重を受ける構造体への負
荷として降伏荷重に対し2割増の耐力上昇分を見込むことが
必要で、降伏荷重を確保するだけでなく更に耐力の上乗せ
を図る必要がある。付図は、解析で設定した鋼材の性質で
①は ay=36kN/cm2
標準的鋼材,②はσy=43.2kN/cm2
と1.2
倍に換算し且つ降伏後の耐力上昇を1/2に抑えた鋼材で、
それぞれの背景にある点線は真応力一真歪の関係である。
3. 初期不整のない状態での力学的釣合
図-5は付図③で示す歪硬化勾配を0とする鋼材の解析
結果で、 図-1と同じ 3例に関するこれら両図の比較から繰
返し載荷に伴う耐力上昇が同じ程度の大きさで起きている。
。
/Qy
2
荷
。
載
mT
t
E
i
-﹃
し ∞
一
m
勾
匡
-E
6
一
/
ヒ
困
問
T
刈
明
書
則
氏
一
3
歪
制
剛
﹁
l
U
漸
t
寸
。
0.03 0.03 0.06 _ 0.09
d/L
図-5
( b)
0.06
t5/L 付 図
しかし、歪硬化勾配の無い鋼材の結果に見られる降伏荷
重到達後の更なる耐力上昇については、初期不整が無い
とし座屈変形が生ずることなく基本的な釣合い応力が保持
されたとしても降伏荷重を超えることの説明はつかない。こ
のことの整合性をとるには、繰返し載荷では鋼材の歪硬化
とは別の耐力上昇に関わる要因があると考えるのが自然で
ある。初期不整のないせん断パネルに於ける耐力上昇が
生み出される仕組みが如何なるものか、これを知ることが安
定した繰返し履歴を確保するための解決の糸口となろう。
一般に構造体に力が作用すると釣合う応力と直接 ・間接
の様々な歪が生ずるが、変形が拡大進行してして過程で
初期不整の無い状態では基本的な応力と変形での釣合い
関係とは異なる力が発生し、即ち変形を抑えようとする構
造体内部で新たな抵抗力が生じて初期に設定された荷重
に関係する応力とは別の応力が加わったと考えられる。即
ち、この新たに発生した応力が構造体に作用する力に抵
抗することで、強度の上乗せになっている。従って、安定し
た繰返し履歴とするためにはこのような状況を作り出せば良
く、力を受けて生ずる変形を完壁に拘束しなくても変形の
進行を遅らせ乃至は力と直結する変形の推移を若干ずらす
ことでも抵抗力は発生するのではないか。これまでとは逆
に座屈変形の進行を許容し且つ利用して力を創りだすこと
で繰返しに伴う耐力上昇に追随できるものと考えた。
[本研究で使用した鋼材の繰り返し特性は、文献(山田
哲他 :パウシンカ守一効果を考慮した構造用鋼材の簡潔な履
歴モデ、/レ,日本建築学会構造系論文集,第559号, 2002
年9月掲載された実験資料に基づきモデル化を試み、加
えて複数の繰返し加力に伴うせん断パネノレの実験結果と解
析結果との照合を行って最終的に履歴則を決めております。
従って、本論文の結果についてはここで、取扱った解析例題
の相対的な関わりを調べる上で有効と考えています。]
AichiInstitute of Technology
SuzukiLaboratory of Material and Structure
*
1 愛 知工業 大 学
*
2 構 造 材 料 研 究会
-
9
90-6
8