多目的意思決定の観点からの
ファジィ線形回帰分析と
需要関数同定問題への応用
1.はじめに横 井 義 則
矢 野
均
一般に,通常の線形回帰分析では,観測データとモテソレの聞の誤差変動は正 規分布に従い,それらは互いに独立であることがあらかじめ仮定されているの に対して,田中ら[9
-l1J
により初めて提案されたファジィ線形回帰分析で は,観測データとそデ、ルの間のずれは,入出力関係を表すシステム構造自体の あいまい性によるものと仮定している。彼らは, ファジィ数の αーレベノレ集合[
3
J
に基づいて定義される等号関係により,ファジィ線形回帰モデルを求め るための問題を線形計画問題[8J
に帰着させる方法を提案した。これに対し て,我々[
1
2
J
は,従来の線形回帰モデルとの関連に注意しながら,D
u
b
o
i
s
ら [ 2, 4J
により提案されたファジィ数聞の等号関係を表す3種類の指標に基 づいて, ファジィ線形回帰モデノレを求めるための線形計画問題の定式化を試み た。しかし, これらの方法では,線形計画問題を定式化する際に,あらかじめ 設定する必要のある『適合度仰の設定や更新方法に関する考察は全くなされて いなし、。 そこで,本論文では, ファジィ線形回帰モデ、/レにおける,モデノレと観測デー タの間の『適合度的とモデ、ルの『あいまい度』の聞の競合関係を多目的意思決 定状況としてとらえることにより,ファジィ線形回帰モデルを求めるための多348 第3号 第61巻 -18ー 8 ]を定式化し,対応する対話型意思決定手法を提案する。 目的計画問題[1, また,提案された対話型意思決定手法の妥当性および有効性を検討するために, 豚肉の需要関数同定問題への適用を試みる。 ファジィ線形回帰モデルの定式化 -T A Y ' A モデルによる推定値とデータ ファジィ線形回帰モデルにおいては, 一般に, 入出力関係を表すシステム構造自体のあいまい性に依存している とのずれは, ものと仮定されており,形式的には係数にあいまい性を含むモデルとして,次 のように表現することができる。 ) 1 0ム ( , an), x
=
(1, Xl, .,.. Xn)T そ れ ぞ れ フ ァ ジ ィ 数 [3
]を表す。 Doboisら[
2,
タ=
ax, a=
(ao, al, ここで、, .Y, a;, j=
0, 1,… ,n
~工, このようなファジィ数を含む等式に対処するため, 4 ]は, 2つのファジィ数必,湾の等号関係に それぞれのメンバーシップ関数μrn(u),μ正(U)を 閉区聞に対する等号関係の拡張として, 関する次の3
種類の指標を, 用いて定義した。 (2) Pos(必=宛)= 記P
2
m
i
n
(
μ
rn(u),μ
正(U)) (3)Nes(
必C
必)=
i
n
f
max
(1一μ
rn(u),μ
n(U))ueRl
(
4
)
Nes(
必 コ n)=
i
n
f
max (
μ
rn( u),1
一μ
n(U)) UERl これらの指標はそれぞれ『必が方と等しい可能性の度合¥".!l,W 1先が先に含まれ る必然性の度合い.!l,'1W犯が宛を含む必然性の度合い』を表すものと解釈できる。 さて,問題を明確に規定するため,式(1)の左辺のファジィ出力データ丸 ,i
,n
のメンバーシップ 1,ー ,kと右辺のファジィパラメータa
;
,f
=
0, 1, 関数は,それぞれ次式により与えられるものとする。 (5)[
以
(
日
)
/
d
)
戸 主d
>0
1
,
2:':,孟 y,話y
,L
(
,(Yi-y
,
)
/
e
,)fY
i
主主Y
i
,ef>O
μyi(Yi)=
9 7 i _R ei, ei, また, 349 ( L((ai-ai)/d), μai(αi)= p
,
!!:..i孟 ai孟 iii lL((ai-ii;)/cf), aj孟 ii;,d >
0
ここで ,(Yi+れ)/2と(ai十ii;)/2はそれぞれ Yiとんの平均値で, とd
,c
.
f
は そ れ ぞ れ あ とa
;
の左右の広がりのノミラメータである。 L(・)は型関数[3 ]と呼ばれ,L
(
・)は[
0
,∞)上で定義される強意単調減少かつ連続的徴分可能な関 (6) 多目的意思決定の観点からのフプジィ線 形回帰分析と需要関数問定問題への応用 ai孟!!:..i,d
>
0 次の性質を満たすものとする。 数,L
(
O
)
=
1
,かつ,任意のXE[
0
,∞)に対してL
(
x
)
注O
。 式(5),(6)で定義されるファジィ数必 aiは, 、 、 J ノ ・ 1 ( ¥ 3 ノ ・ 1 ・ 1 〆 f t、 しばしば次のように表される [ 3。
]
タ (~i , ダ i ,e
,
f
e
f)L,i
=
1
, ai=
(ai, ii;,d
,c
f
)
L
, j=
0, 1,… ,n
簡単のためファジィ数 ajを構成要素とするファジィパラメータベクトル dを(
7
)
(8),
k
(
9
)
a = (笠,ii, cL, CR)L a = (!!:..o, !!:..1, !!:..n), a (iio, iil, ,iin,) cL(
c
o
,c
f
,れ, d), cR (d,c
f
,… , c~) n次元入力データル1
,“ ,kは,事前に与えられていることか 一般性を失うことなく,次のように仮定できる。 ( 10) ここで で表すことにする。 d H H l ( さらに, ら, (12) ( 13) , k, j E.
J
t
Xii<
0,i
=
1,… , k, j E ]i -この時, ファジィ数聞の演算規則[3 ]から次式が成立する。 Xu註0
,=
1
, ) , n 噌 l ︿ n aXi忍
ajXij=
(主(Xi),P(Xi), qL(Xi), qR(Xi))L (15) (16) ここで、ρ
(Xi)=~.a ;Xii jE}j一+
2
j:
E}_
jiijXii,
P(Xi) =~" ;E}j iijXi;+~_!!:..jXii jEJJー qL(Xi)=2:
jE}"chu-j ;L
E:
_cfxij,
qR(Xi) =~"dxu-~_dxij-20- 第61巻 第3号 350 さて,指標(1)
-
(
3
)
に基づく,ファジィ線形回帰モデル aXiとファジィ出力 データタzの聞の等号関係は,その適合度を表す αの値を固定すれば,通常の不 等式制約に帰着されることが,次の定理に示される[
1
2
J
。 【定理1】(
1) P
o
s
(
ル
aXi)孟α
一 ー タi+主(Xi)壬L-1(α )ef+L -1(α )qL (Xi) Yi -P(Xi) 三五 L -1(α)ef+L-1(α )qR(Xi)(
I
I
)
Nes(
タiC aXi)孟α
一-2::'i+主(Xi)豆 一L-1(1-α)ef+L-1(α )qL(Xi) Yi-P(Xi)壬 一 L-1(1-α )ef+L-1(α )qR(Xi)(
I
I
I
)
Nes(
タ2つ
aXi)孟α
2::'i -p"(X,)壬V
1(α
)ef-L -1(1一α
)qL(Xi) -Yi+P(Xi)壬L-1(α )ef-L -1(1α )qR(Xi) 白骨 ( J8) (]9) 側 (21) (22) ここで,制約集合(1 )-(III)は,それぞれ,『f
z
が aXiと等しい可能性,Yi がaXiに含まれる必然性 ,Yiが axを含む必然、性の度合いが,それぞれ, α以 上であるような,ファジィパラメータベクトルa
を構成するベクトルQ
,a
,c
L, CRの集合』であると解釈できる。 さて,通常の線形回帰モデルのパラメータは,たとえば, h min2
:
1 Yi一αXi1, αERn+l i=l すなわち h minL
:
Zis
u
b
j
e
c
t
t
o
ーめ+αXi三五 Zi, 1,…,k Yi一αXi三五 Zi, 1, … , k (23)。
4) を解くことにより求められることに注意しよう。そこで,問題似)の制約式と定 理1の(1 ) -(III)との対応関係を考慮すれば,指標(2)-(4)に対応して,ファジィ 線形回帰モデルを求めるための問題{Pl
}
-{P3}を,それぞれ,次のように構351 多目的意思決定の観点からのファジィ線形回帰分析と需要関数同定問題への応用 成することができる。 {Pl} min
J
(
.
!
!
,a
, CL, CR) subject to Pos(タ aXi)主主 α,i 1, , k,c
L,c
R 孟O {P2} 立l1n J(笠,瓦,c
L,c
R) subiect to Nes(タiC aXi) 主主 α,i
1, …, k,c
L,c
R;;主O {P3} ロl1n -J(笠,a
,c
L,c
R) subject to Nes(タzコ
aXi) 主主 αi
1, , k,c
L,c
R 主 主O
ここで) J(笠,a
,c
L,c
R )ニ 21{qL(xz)+qR(xz)+(ρ(Xi)一主(X.))} はファジィ線形回帰モデノレ axのあいまい度を表す関数である。 このように定式化された問題{Pl}-{P3}は, αの値を固定すれば, -21。
。
明らか に線形計画問題であり,線形計画法[8J
により容易に解くことができる。こ こで, {Pl}-{P3}において,決定変数は X:ijではなく,立p,7
3
i
,c
f
,c
F
,jz 0,
1,
ド ,n
であり, これらの問題を解くことにより,それぞれ等号関係の指標(
2
)
-
(
4
)
に基づく制約式(17)-(18),(19)-側, (21)ー倒のもとで,ファジィ線形回帰モデル axのあいまい度を最小(あるいは最大〉にするようなファジィパラメータベグ トルa
が求められると解釈することができる。 また, {Pl}-{P3}は, それぞ れ, 田中ら [11Jの提案したConjunction問題, MIN問題, MAX問題の若干 の一般化あるいは拡張になっていることがわかる。 さらに,通常の数はファジィ数の特別な場合であることを考慮して, .Yi=
J::i=
Yi,e
i
=
e
f
=
0, ニ 1,...., k (26)α
(ao,a
l
,…, an), ai=
!
!
:
.
i
=
a;,i
=
0
, " れ,
n
(27)c
=
(Co, Cl, ..., Cn), Cjd
c.f,f
=
0
,… , n (28) とおいて,定理lの(I), (II)に代入すれば, {Pl}, {P2}の特別な場合として, 通常の出力データに対するファジィ線形回帰モデルを求める問題 {P4}を次の ように定式化できる。 {P4} ロl1n J(α,α, c, c)-22- 第61巻 第3号 352
s
u
b
j
e
c
t
t
o
一一:}3釣 Yi一αXi~孟五L
-1(α )q(Xi),i
=
1
"
k,c
~孟主0
ここで,条件闘より, q(Xi)=
qL(Xi)=
qR(Xi),i
=
1" k (29) III.多目的意思決定の観点からのファジィ線形回帰分析 これまで, ファジィ線形回帰モテソレを求めるための3
種類の問題を定式化し てきたが,これらの問題を線形計画問題として解くためには, モデルとデータ の聞の適合度を表す αの値を,あらかじめ設定しなければならない。ここで, 一般に~適合度仰の値を大きくすれば,モデルの『あいまい度J(・ )n は,{P
l},{
P
2
}
,{P
のでは大きくなり,{P
ぬでは小さくなることに注意しよう。 従って,ファジィ線形回帰モデルを求めるための問題は,それぞれ適合度的 と『あいまい度 J(・)n が互いに相競合する多目的計画問題[1, 8 ]として, 次のように定式化した方がよりν適切であると思われる。{MP
l} minJ
(
!
!
,a
,c
L,c
R ) 江laxα
s
u
b
j
e
c
t
t
o
P
o
s
(
タ aXi)孟α
,i
1,“, k,c
L,c
R 主主 0,α
ε
(0, 1){
M
P
2
}
min J(笠,a
,c
L,c
R ) ロlaxα
s
u
b
j
e
c
t
t
o
Nes(
タiC aXi)孟α 1
, ,k, cL, cR 孟0
,αε(0
,1){
M
P
3
}
min-J(旦,a
,c
L,c
R ) ロlaxα
s
u
b
j
e
c
t
t
o
Nes(
タzコ
aXi)孟α 1
,'
"
k,
c
L,c
R 主主0
, αε
(
0
, 1){
M
P
4
}
min J(α,α, c, c) 立laxα
353 形回帰分析と需要関数同定問題への応用多目的意思決定の観点からのファジィ線
s
u
b
j
e
c
t
t
o
-Yi+αXi話V'
(α )q(Xi),i=l, Yi一αXi孟V '
(α )q(Xi),
i
=
1
,
c
主0
,
αε(0, 1) -23-" k k, 多目的計画問題{MPl)-{MP4)において, 目的関数 J(・)と適合度αは互 いに競合しているので, 通常の単一目的計画問題の最適解の概念はそのままで は適用できない。その代わりに, 多目的計画問題では, ある目的を改善するた めには,少なくとも他のいずれかの目的関数を改悪せざるを得ない解として, パレート最適解が次のように定義されている。 【定義1] 多目的計画問題{MPl)-{MP4)において,制約集合上の任意の (α,a, CL,c
R )とαに対して, J(笠,a, CL, CR)三J
(
!
!
*
,a*, CL*, CR*) C{MP3)の場合は不等号は逆向き〕 α =と α* が成立しない時, (笠*, a*,c
L*, CR*)と♂を,パレート最適解という。 ここでは,豆は2つの制約式のうち少なくとも 1つは等号を含まないことを 意味する。 一般に, バレート最適解は無限個存在するので,意思決定者は, これらの集 合の中から, なんらかの主観的な判断に基づいて、最終的な解を導出しなけれv
i
ならない。 このような多目的意思決定状況において, ここでは通常設けられている次の 仮定をおく。 【仮定リ 多目的計画問題{MPl)-{MP4)の目的関数 J(・)と αに対して,意思決定 者の満足度を表す関数 U(J, α)が存在する。ここで,意思決定者は U(J, α)を 大域的に陽に求めることはできないが,その代わり局所的に選好を評価するこ とカLできる。 単調増加入 また, U(J, α)はJ
に関して強意単調減少C{MP3)の場合は強意 αに関して強意単調増加である。 仮定1において,もし U(J, α)が陽に求められるのであれば,多目的計画間24ー 第61巻 第3号 354 題 {MPl}-{MP4}は U(J, α)を最大化する単一目的計画問題に帰着できる ことに注意しよう。しかし ,U(J, α)を陽に求めることは一般には困難である ので,意思決定者との対話を通じて,彼の満足解を導出する必要がある。 そこで,本稿では,意思決定者との対話を通じてパレート最適解の集合の中 から彼の満足度を導出するための対話型意思決定手法を提案する。 {MPl}のノ之レート最適解の1つは,次の制約問題[6 ]を解くことにより 得られる。 {CPl} min .J(笠,
a
, CL, CR) subiect to α孟α。
Pos(タi=
aXi) 主主 α 1, .,.. k,c
L,c
R 孟O ここでa
o
は意思決定者によりあらかじめ設定される値で,制約問題{Cpl} を解くことにより w適合度』が α。以上という条件のもとで rあいまい度 J(・)
A
を最小にするようなファジィパラメータベグトノレa
が求められる。 ({MP2) -{MP4}の場合に対しでも全く同様に制約問題 {CP2}-{CP4}を構成する ことができる。) このような制約問題の最適解と多目的計画問題のパレート最適解の関係は, 次の定理に与えられる。 【定理2
】 (a*, li*, c,*L cR*)と♂が多目的計画問題 {MPl}-{MP4}のノ ξレート最 適解であるための必要十分条件は, (ぜ, li*, cL*, cR*)が ♂ε(0
,1)に対する 制約問題 {Cpl}-{CP4}の一意な最適解となることである。 制約問題を解くことにより得られるパレート最適解に対して,意思決定者は, 現在の解に満足す!るか,あるいは,不満足であれば rr適合度 αo~ の値を更新す る必要がある。ここで,既に述べてきたように rr適合度 αo.!lと『あいまい度 J(・).!lは互いに相競合しているので,意思決定者は α。の値を更新する場合に は,このことを考慮する必要がある。意思決定者が αoの値を更新する時の有益 な情報として rr適合度』と『あいまい度』の間のトレードオフ比を利用するこ とが考えられるが,幸いにも,このトレードオフ比の情報は,感度解析[5
]
355 の立場から, 【定理3】 多目的意思決定の観点からのファジィ線 形回帰分析と需要関数同定問題への応用 次の定理に示すように容易に求められる。 -25-(Cpl) -(Cp4)は, それぞれ, 一意的な最適解 (α,
a
, CL, CR )をもち,非 この時, (CPl) -(CP4)の最適目的関数 次の関係が成立する。 退化条件を満たしていると仮定する。 {直を J1(α)-J.(α)で表せば, それぞれ,E与よ=一生主立よ主
π
{
Hef+
qL(Xi))+ Al(e
f
+
qR(Xi))}。
0)刊'(.2 01α i=l aJ2(a)
=
1
-
Lで
-α)去
{
i
T
Z
e
f
+
A
7
e
f
}
rJrt rJU i=1。
L-1(α) ーーってー~~{πrqL(Xi)+A7qR(Xi)} (31) aa i=lE#i= 一辺4旦よ会 {π~ef+À~ef}
υα aa i=1+1-L11-α) 主 {íT~qL(Xi )十 À~qR(Xi)}
0(1 i=l (32)E与よ=一旦
4
位
三
π
{
tq(Xi)+λtq(Xi)} (33) υa aa i=1 ここlで,π
f
, A;',i
=
1
, ""'k, 1=
1
,2
,3
,4
はそれぞれ制約式(Iかω
に対応す るシンプレックス乗数を表す。 以上の議論より,多目的計画問題(MPl)-(MP4)のバレート最適解の集合 の中から,意思決定者の満足解を導出するための対話型アルゴリズムを次のよ うに構成することができる。 [ステップ1]
を設定する。 意思決定者は, 主観的に『適合度α
o
J
(0<α
。<1)の初期値 [ステップ2] 設定された『適合度 αo~ に対して,対応する制約問題 (Cp l) -(CP4)を解き,多目的計画問題(MPl
}
-(MP4)のノミレート最適解とトレー ドオフ比(30)-側を計算する。 [ステップ3] 意思決定者は,ステップ 2 により得られた『あいまい度J(・)~ と α。の値に満足ならば終了。そうでなければ,現在の目的関数値とトレードオ フ比の情報を考慮して, 『適合度α
o
J
の値を更新してステップ2
へ戻る。-26ー 第61巻 第3号 356
I
V
.
需要関数同定問題への応用 提案した対話型アルゴリズムの妥当性,有効性について検討するために,次 のような豚肉の需要関数同定問題を考えてみよう。 家計調査年報[
1
3
J
によれば,昭和42年から昭和6
1
年までのわが国におけ る一世帯当りの年聞の豚肉,牛肉の品目別購入数量および平均価格は表lに与 えられている。ここでは,説明変数として, X1 豚肉の実質価格=豚肉価格/消費者物価指数X
2 牛肉の実質価格=牛肉価格/消費者物価指数 表l わが国における 1世帯あたり年間の品目別購入数量および平均価格 (全世帯、人口5万以上の都市〉 年 次 世帯人員 消費支出総額 豚肉数量 豚肉価格 牛肉数量 牛肉価格 消費者物価指数 昭 和 年 人 円 100g 円/100g 100g 円/100g 昭和55年=100 42 4 13 733.092 144 35 65 28 68 44 103 05 354 43 4 05 797.292 139 38 74 30 64 38 11321 373 44 3 97 881.964 133..087 84 12 70 121 118 00 39 3 45 3 95 993.504 147543 82 71 75 109 12349 42 3 46 3 93 1,088,904 157650 85 34 79 963 131 38 449 47 390 l.183.680 164 027 91 57 82 589 14310 46 9 48 388 1,397,172 180 403 103 13 76050 187 40 52 4 49 3 86 1,681,644 193.167 114 30 79198 215 10 65 2 50 386 1,925,700 188 920 139 29 82096 242 15 729 51 3 80 2.146.212 195534 151 44 85604 272 23 79 7 52 3 78 2,324,904 201 430 14716 89 026 276 62 86 1 53 377 2,463,108 202.980 144 99 99460 27826 894 54 3 80 2.628.972 209858 13862 101029 28610 926 55 378 2,819,352 21356 138 58 96 39 312.44 100 0 56 375 2,934,048 201 95 148 27 98 91 313.59 104 9 57 3 73 3. 09l. 908 20L47 151 11 10288 31788 107 7 58 370 3.166.476 19322 154 51 102.14 31826 109 7 59 368 3,251,748 193 81 153 56 105 37 316 67 112 1 60 3 65 3,343,104 18583 14949 103 57 32432 114 4 61 365 3,357,576 18699 143 74 104 22 327.62 115 1357 X3 多目的意思決定の観点からのファジィ線 形回帰分析と需要関数同定問題への応用 一人当りの実質消費支出 = 消 費 支 出 総 額 / (消費者物価指数×世帯人員) を取り上げ,次式で定義される豚肉の需要関数を説明することにする Y 一人当りの豚肉需要量=豚肉数量/世帯人員
27-[
7
。
]
まず,表1
のデータから計算される入出力データに対して,通常の重線形回 帰モデルを当てはめると次のような結果が得られた。Y
=
-3 9
5
6
5
-15
“690X
1+16625X2
+
00039122X
3。
4) 標準偏差(
4
7
0
3
4
)
(
3
5
1
8
8
)
(
0
0
0
1
3
0
8
8
)
t
-
値(
-33358) (
4
7
2
4
6
)
(
2
9
8
9
1
)
推定値の標準偏差σ=
2
.
.
2
2
0
0
,重相関係数R
=
0
“9
6
3
7
4
(注 計算は, 香 川 大 学 計 算 セ ン タ -MELCOM COSMO 7
0
0
S
に用意されて いるサブルーチンライブラリNSP
を用いて行った。) これに対して, 本稿では, 提案した対話型アノレゴリズムに基づいてファジィ 線形回帰モデノレを構成することを試みる。 表1
のデータから計算される入出力データはすべて非ファジィ数なので,本 例に対しては, ファジィ線形回帰モデ‘ノレを求めるための多目的計画問題 {MP 4}を適用する。表lのデータに対して, {MP4}は次式で表される。 ロun2
2
1
忍
CiXU 立lax α subject to一巳+忍
aiX;
;
孟V
1(α)忍
cふ
;
,
i
=
1
2
0
巴一忍
ajX
i;孟L
吋α)忍
c;X
吋i=
1
2
0
Cj注0
,j=
0
,刷..,3
,α E(
0
,n
ただし, XiO=
1
,=
1
, .,.2
0
以下では, フ ァ ジ ィ パ ラ メ ー タ ん の 型 関 数 [3 ]を次式で定義する。 L(x)=l-x,o
五x
孟1
-28- 第61巻 第3号 358 この多目的計画問題に対して,仮想的な意思決定者のもとで,提案した対話型 アルゴリズムを適用した場合の対話過程を要約すれば,表2のようになる。 表
2
において,仮想的な意思決定者の設定した適合度 αの初期値o
5
に対し て,制約問題を解き,ファジィパラメータa
o-ゐ,あいまい度J(・)およびト レードオフ比o
J
/
仰が計算され表示されている。意思決定者はこれらの情報を 考慮してw
あいまい度 J(・).1を犠牲にすることにより『適合度引を改善し ようと考え, αの値を06
に更新している。以下,同様の対話を繰り返すことに 表2 対 話 過 程 ITERATION 1. (a=
05) ao = (ao, Co) = (-8.9852, 0) al=
(al, Cl)=
(一7.0309, 0) a2=
(a2, C2)=
(
9.5143, 13259) a3=
(a3, C3)=
(
00056516, 000034195) J=
257.22, dJ/da=
514.43 ITERA TION 2.. (α= 0..6) ao=
(ao, (0)=
(-8.9852, 0) al=
(al, (1)=
(一70309, 0) a2=
(a2, C2)=
(
9..5143, L6573) a3=
(a3, C3)=
(
0.0056516, 000042744) I=
32152, dJ/da=
803..80 ITERA TION 3.. (α=07) ao=
(ao, Co)=
(-8.9852, 0) ム =(al,(1)=(ー7.0309, 0) ゐ =(の,む)= ( 9..5143, 22098) a3=
(a3, (3)=
(
0.0056516, 000056992) J = 42869, dJ/dσ= 14290 ITERA TION 4.. (α= 065) ao= (ao, (0) = (-8..9852, 0) ム =(al,cl)=(-7.0309, 0) a2=
(a2, C2)=
(
9..5143, L8941) a3= (a3, C3) = ( 0..0056516, 000048851) J = 367.45, dJ/da = 10499359 形回帰分析と需要関数同定問題への応用多目的意思決定の観点からのファジィ線 より,本例では 4回のイテレーションで満足解に到達している。 -29-満足解α =0..65の時のファジィ線形回帰モデルは,次のように表される。 1=(-89852, 0)+(一7..0309, 0) X 1 + (9ゅ5143,L 8941)X z (35) 十(0..0056516, 000048851)X3 平均値 8 9852-7ゅ0309X1+9 5143Xz+0“0056516X3 広がりのパラメータ 18941Xz+0引00048851X3 式側において, カッコ内の左側の値は各ファジィパラメータの平均値を,右側 の値は広がりのノfラメータを表す。 通常の線形回帰モデル(34)と,ファジィ線形回帰モデノレ(35)は, ともに,豚肉の 実質価格が下がれば下がるほど,牛肉の実質価格が上がれば上がるほど,実質 消費支出が上がれば上がるほど,豚肉需要量が増加するという常識に矛盾しな い結果が得られている。また,ファジィ線形回帰モテソレの回帰係数
a
l
の平均値 (一7ゅ0309)が通常の線形回帰モデルの回帰係数。 1(-15 690)よりも絶対値 が小さくなっているのは,豚肉の需要量に対する豚肉の実質価格の感度がファ ジィパラメータ az,んの広がりのパラメータに吸収されているためと考えら れる。さらに,ファジィ線形回帰モデルにおいて,ファジィパラメータムの広 がりのパラメータ Cl=
0
であるのに対して az,a3の広がりのパラメータは それぞれCz= L8941, C3 = 000Q48851となっているが,これは,豚肉の実質価 格は豚肉の需要量に直接的な影響を与えているのに対して,牛肉の実質価格や 実質消費支出はある種のあいまいさをもって豚肉の需要量に間接的に影響を及 ぼしていることを示すものと考えられる。このことは,豚肉の需要量と牛肉の 実質価格,実質消費支出の関係が,現実には単純な線形関係では表現できるよ うなものではなくて,それ以外のシステムの他の複雑な諸要因との関わりの中 で間接的な影響を与えあう関係にあることを意味している。v
.
おわりに 本論文では,まず,ファジィ数聞の大小関係を統合的に取り抜うためにDub-30~ 第61巻 第3号 360 oisらにより提案された3種類の指標に基づいて,ファジィ線形回帰モデルを 求めるための 3種類の線形計画問題を定式化した。次に,線形計画問題として 取り扱うためにあらかじめ設定しなければならな¥"W適合度的と,モデルの『あ いまい度』の競合関係を多目的意思決定状況としてとらえることにより,ファ ジィ線形回帰モデルを求めるための多目的計画問題を定式化した。さらに,定 式化された多目的計画問題に対して,意思決定者の満足解を導出するための対 話型アルゴリズムを提案した。最後に,提案した対話型アルゴリズムの妥当性, 有効性を検討するために豚肉の需要関数同定問題に適用した。今後は,従来の 確率論の立場からの回帰分析とファジィ回帰分析の関係を明らかにすると共 に,ファジィ回帰分析の適用が有効と思われる,あいまいなデータを含む現実 の問題への適用が望まれる。 謝辞 著者(矢野〕が日頃御指導いただいている,岩手大学教授,坂和正敏先生に 感謝いたします。 参 考 文 献
[ 1] Chankong, V. and Y Y Haimes, Multibjectiove Decision Making Theory and Methodology, N orth-Holland (1983)
[ 2] Dubois, D, '‘Linear Programming with Fuzzy Data"Analysis
0
/
Fuzzy ln -10門 但ation,Vol.3, (Ed. by l C Bezdek) CRC Press, (1987) pp 241-263[ 3 ] Dubois, D and H Prade, Fuzzy Sets and Systems. Theory and Apρlications,
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[ 4] Dubois, D. and H. Prade, Ranking Fuzzy Numbers in the Setting of Possibillity Theory, lnformation Sじience,30, (1983) pp. 183-224
[ 5] Fiacco, A V, lntroduction to Sensitivity and Stabiliか Anafysis in Nonlinear Programming, Academic Press (1983)
[6] Haimes, Y Y, W. A.Hall and H.T.Freedman, The Surrogate Worth Trade-off Method, Elsevier (1975)
361 形回帰分析と需要関数同定問題への応用多目的意思決定の観点からのファジィ線
[7] 伊 大 知 良 太 郎 編 経 済 統 計 講 義J(第3章〉青林書院新社(1971年〉
-31-[8 J 坂 和 正 敏 線 形 シ ス テ ム の 最 適 化 〈 一 目 的 か ら 多 目 的 へ
>
.
1
森北出版(1984年) [ 9J
Tanaka, H.., Fuzzy Data Analysis by PossibilisticLinear Models, Fuzzy Sets and$ystems, Vol 24, (1987) pp.. 363-375
[10J Tanaka, H , L Hayashi and
J
Watada, Possibilistic Linear Regression Analysis Based on Possibility Measure, Proceedings of Second IFSA Co日gress,Tokyo, (1987)pp. 317-320 [llJ 田中・和多国・林 iファジィ線形回帰分析の3つの定式イヒJ,~計測自動制御学会論文 集』第22巻第10号(1986年)pp.. 1051-1057 [12J 横井・矢野 iファジィ線形回帰モデノレと大型小売庖販売額予測問題への応用J~香川大 学経済論叢』第60巻第4号, (1988年)pp 1-41 [13J 総務庁総計局,家計調査年報(昭和42年度版から昭和61年度版まで)