美容院における
質の高いサービスとは
経済学部 経営学科 0122375 山田 裕子
目 次
序 文
1、現在の美容市場
① 美容とは
② 美容市場の現状
③ 美容院出店状況と美容師数の推移
④ フリーペーパーの広告から見る現在の美容院の動向
2、美容院における課題と解決策
① 美容師数増加に伴う競争の激化
② 増加する男性の顧客への対応
③ 女性を取り巻く環境への配慮
④新たに求められる美容院のあり方
3、美容院のあるべき姿
① あるべき美容院の方向性
② 質の高いサービスとは
③ 顧客にとって柔軟なシステム
おわりに
序 文
現在、多くの企業が「お客様第一主義」や「お客様は神様である」という言葉を主張し 「顧客満足」を実現するために様々な試みがなされている。「サービスの質」を経営におい て重視し、従業員のモチベーションを上げ、より質の高いサービスを顧客に提供すること に努めている。しかし、実際に顧客の満足度は上がり、サービスの質は本当に上がったと 言えるだろうか。 現在、IT技術を駆使して便利になったものもあれば、便利になったが故に人との関わり が少なくなり、融通がきかずに困ることや「この人で良かった」と思えるような感動が少 なくなっている。また、価格競争により価格は安いが、その分人がいても単なるマニュア ル通りに機械的な対応しか得られず、買い物をする上での楽しみも減っていると感じるこ とがある。便利や安いことは必ずしも悪いことということではなく、重要なのは顧客志向 ということである。しかし、「顧客満足」を単に叫び、お客様に提示すれば良いのではない。 顧客はすでに、本当に企業が顧客の事を考えて行動しているのかということを厳しい目で 見て、単に「お客様第一主義」という言葉を発するだけでは意味がない事を知っている。 間違っていることには声を上げ、与えられれば良いとは思っていない。顧客が「満足」を 実感しなければ意味がないのである。 「サービスマネジメント」(カール・アルブレヒト、ロン・ゼンゲ)の中で、著者が「一 風を風靡した「顧客サービス」実現にむけての取り組みがビジネスシーンから姿をけして 久しい。サービスはどこから見ても、まだ完璧からはほど遠く、腐って異臭を放っている ようなものが少なくない。」と言っている。また、「大企業は、消費者にサービスを提供す ることをやめたかのようにも見える。電話をかけても人と話すのはまず不可能だ。機会が 応答し、メニューを紹介する。無味乾燥な機械音声が提供してくれる選択肢の中から、問 題解決につながる項目が見つかればラッキーである。何の配慮もなしに導入されたデジタ ル技術が、顧客とのインターフェースを非人間的なものにしてしまったことは、多くの企 業が犯したミスの中でも最大のものだったといえよう。」と言っている。つまり、電子技術 によって顧客が価値を提供されるという経験から、感動したり、ドラマチックに感じたり できる部分を排除してしまったのである。 今回私は、人と人との関わりがとりわけ密な美容院を取り上げたい。美容院は顧客一人 に対し一人の美容師が担当し、美容師の手によってカットやカラー等をする。このやり方 は基本的に昔から変わってはおらず、ひとりひとりの顧客に個別に価値を提供する。顧客 の声に耳を傾け、要望に応えることで顧客の感動が生まれる。顧客はその感動を忘れず、 次も担当の美容師がいるがために、同じ店へ足を運ぶ。この仕組みは、機械には変えられ ない。ヘアにおける微妙なニュアンスが伝わったり、思いやりのある対応はまさに人から 生まれるのである。しかし、この様な美容院の様な人との関わりが密なビジネスにおいて も様々な問題があり、サービスの質が必ずしも高くなっているとはいえない。ここ数年で 美容院の数が増加し、美容仕間の競争が激しくなっているものの、高いサービスを初めか ら期待せず、美容院を次々と変え渡り歩いている人も少なくない。また、ディスカウント業者も出現し、価格競争の面も見られる。 今回、アンケートを実施した中で、「流れ作業の様に次から次と美容師が変わり、二度と 行きたくない」という回答や「美容師の思い込みで意見を聞いてもらえない」という様な 回答があった。人の手によって感動が生まれることもあれば逆に不満を持つこともある。 「もう来たくないと感じたことがありますか?」という問いに対して62%の人が「ある」 と答えている。 現在、美容院における対応が変わり、美容院のあり方も変わってきている。従来、男性 は床屋や理容室へ行くことが当然であった。現在では、20代の男性の多くが、抵抗なく 美容院へ行く。また、美容院にいる美容師も女性だけでなく、男性も多い。そこから見え てくることは、女性のお客様の場合、女性よりも男性に担当してもらった方が良いと思う 人や、逆に男性のお客様は女性に担当してもらったほうが良いと思う人もいる。さらに、 以前は自分の希望を美容師にはっきりと伝えることに抵抗を抱く人が多かったのに対し、 自分らしさを追求する人が多くなったこともあり、はっきりと自分の希望を伝えることが 当然になっている。従来に比べ、美容院全体のサービスやスタイルと共にお客様の美容院 に対する意識も大きく変化していると言えよう。 また、若い人たちのおしゃれに対する関心が高まっているのを背景とし、美容院の数が 増加の傾向にある。最近では、人気のアイドルを美容師役としたドラマが流行したり、『カ リスマ美容師』という言葉が生まれ、美容師という職業そのものがステイタスであり、お しゃれの象徴とされるようになった。 その様な美容師に対するあこがれや流行がある中、美容師や美容院の数の増加に伴い、 美容院や美容師どうしの競争が激しくなっているが、その結果としてお客様の満足度は高 まっているのだろうか。美容院のあり方やサービスの内容が多様になっても基本は顧客志 向である。また、多くの美容院や美容師がいる中で、自分に合うスタイリストに出会うの は、「運の良さ」なのか。そして固定客を持つ要因になるのは、「カットの技術」なのか。 美容院というビジネスである以上、運の良さで済ますべきではない。どんなお客様に美容 院にとってお客様に、「また来たいな」と思って思われる様な仕組みを作らなければならな い。そこで今回、美容院における「顧客満足」とはどういうもので、質の高い対応はどう いうものか、またそれはどこから生まれるのかを考えたい。 本来あるべき美容院というのは、おしゃれなインテリアや施設、最新の機械に依存した ものではなく、顧客と付き合う中で顧客の声に耳を傾け、顧客の気持ちや状況などに応じ て顧客自身が満足いくヘアを追及することである。顧客と1回限りの付き合いではなく、 顧客が「あの店のあの美容師でなければいけない」という様に感じてもらうことである。 それがまさに、人によって生み出されたものである。
1、 現在の美容市場
① 美容とは
美容院を取り上げる上で、そもそも「美容」とは何かということについて考えたい。男 性が従来、理容店に行っていたのに対し、男性も美容院へ行くようになり、美容と理容の 境界線が曖昧になっているように見えるが、両者は現在も全く違うものである。法によっ て美容の定義は理容と大きく異なる。 ○ 美容 「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくする」 (美容師法 第2条) ○ 理容 「頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整える」 (理容師法 第1条の2) 美容師法 (昭和 32 年 6 月法律第 163 号) 美容師は「美容を業とする者」をいい,美容師法に基づき厚生労働大臣の免許を得なけ ればならない。美容師の免許を持たないものは美容を業として行うことはできない。 美容とは、「パーマネントウェーブ,結髪,化粧等の方法により,容姿を美しくするこ と」とされている。美容師がコールドパーマネントウェーブ等の行為に伴う美容行為の一環 としてカッティングを行うことは美容の範囲に含まれる。また,女性に対するカッティン グはコールドパーマネントウェーブ等の行為との関連を問わず,美容行為の範囲に含まれ る。染毛も理容・美容行為に含まれる。業とは反復継続の意思をもって行うことで,有料・ 無料は問わない。また,美容師が美容を行う場合には器具やタオル等を清潔に保たねばなら ない。 (全国理容生活衛生同業組合連合会 http://www.riyo.or.jp/) つまり、理容師法、美容師法によって、美容はパーマや化粧等で容姿を美しくするのに 対し、理容はヘアカットや顔そりで容姿を整えることと定義づけられている。また、理容 師は理容店、美容師は美容店でしか働くことができない。法解釈により美容師は顔そりを することができず、理容師はパーマをかけることはできない。両者は、それぞれ異なる立 場のもとのされる。理容・美容業界の垣根の低下 理容業・美容業は上記の様にそれぞれの法律によって定められている。今後もこの区別 は暫く続くことが予想される。全理連(全国理容生活衛生同業組合連合会)は業権を守る ことが必要であるとの立場をとっている。(朝日新聞 2005年1月8日記事より) しかし、現状はお客様である利用者の行動によって、理容・美容業界の垣根が低下しつつ ある。現在、美容院へ足を運ぶ男性が当然の様に見られ、行きつけの美容院を持つ男性が 多いことからも、男性が理容店へ行くべきという価値観が薄れて生きている。男性も女性 と同じように美容院へ行き、おしゃれを楽しむという傾向が見られる。一方で、女性が理 容店へ足を運ぶことは少ない。小さな女の子が、父親に手を引かれて一緒に理容店に行く ことはあっても、20代などの女性がひとりで理容店へ足を運ぶことはめずらしい。男性 が美容院へ行くことが当たり前という意味で、理容店と美容院との垣根はなくなってきて いると言えるが、女性が理容店を利用するということがほとんどないということからは、 今でもはっきりと美容院と理容店の差ははっきりとしている。利用者の目から見て、従来 の理容サービスと美容サービスとの区別が曖昧になり、「ヘアビジネス」として認識する ようになりつつあることを意味している。 「ヘアビジネス」として考えられる事例として挙げられるのが、「カット専門店」である。 「カット専門店」というのは、「10分、1000円」など、早さと低料金を掲げ、価格設 定やサービスに変化をつけ、メニューを充実させた新規参入も相次いでいる。カットとブ ロー、シャンプーというものがセット価格で提供されている美容院に対して、カットのみ というものもある。カットと簡単なブローで1500円、15∼20分で仕上がる。 カット専門店の場合、IT 技術によるタッチパネルを使って受付をし、パソコンや携帯で受 付ができるようにもなっている。IT で合理化をし、人件費を抑えることで低価格を実現し ている。カット専門店においては、理容、美容での髪を切る行為は基本的に同じとし、理 容と美容の境界線を引いていない。 現在、「カット専門店」等の出現や美容院へ通う男性の増加から、理容と美容の境界線が わかりずらくなっていることから、今後男女関係なく、顧客としてそれぞれが持つ要望に 対してサービスを提供していく店舗が増えていくことが予想される。
② 美容院市場の現状
理容・美容業界の市場規模は、矢野経済研究所の推定では約2,5兆円。(朝日新聞2005 年1 月 8 日より)うち66%を美容が占めている。理容師、理容店の数は横ばいだが、美 容師、美容店数はそれぞれ理容の1.5倍で、増加傾向にある。 理美容市場規模 (矢野経済研究所調べ) 理容 34% 8365億円 美容 66% 1兆 6275億円 合計 2兆4640億円 (02年度) (朝日新聞 2005 年 1 月 8 日) 美容院は、理容院と比較すると、1,5倍の市場を規模で、年々美容院の数も増加して おり、それだけ今後、美容院の競争が激しくなることが予想される。 種目別の支出金額、利用回数、料金の比較 支出金額 平成 7 年 平成 12 年 増減率 (%) パーマ 11,084 9,562 ▲13.7 セット 1,089 657 ▲39.7 カット 4,725 6,210 31.4 利用回数 平成 7 年 平成 12 年 増減率 (%) 1.59 1.22 ▲23.2 0.42 0.24 ▲42.9 1.62 1.95 20.3 料 金 平成 7 年 平成 12 年 増減率 (%) 6,966 7,793 11.9 2,553 2,728 6.8 2,906 3,183 9.5 資料:総務省「家計調査年報」 利用支出金額、利用回数、料金の比較をしてみる。総務省の「家計調査年報」によると 1世帯当たり年間のパーマ代は平成12年9,562円で前年に比べ4.0%減となって いる。セット代は657円で前年に比べ10.0%減、カット代は6,210円で2.3% 増となり、カット代のみが前年に比べて増加している。また、利用回数は、カットが23.3%、パーマが42.9%の減少傾向にある。支出金額同様、カットは20.3%と増加 の傾向にある。両方の結果により、カットは31.4%と増加傾向にあり。セットやパー マよりカットを目的として美容院へ通う傾向が見られる。料金はパーマが11.9%、セ ットが6.8%、カットが9.5%と値上がりの傾向がある。 支出金額は最近5年間でカット代のみが大幅に増え、パーマ代、セット代は減少、なか でもセット代の減少が著しい。利用回数でもカットのみが増え、他の2つは減少しており、 特にセットの減少が目立つ。3種目の中で、カットのみが料金上昇、利用回数増加により、 支出金額が増加している。 各年(度)末現在 対前年度 平成元年 (1989) 5年 ( ' 93) 10 年度 ( ' 98) 13 年度 (2001) 14 年度 ( ' 02) 15 年度 ( ' 03) 増減数 増減率 (%) 理容所 144 522 142 619 142 786 140 599 140 374 140 130 △ 244 △ 0.2 美容所 185 452 189 975 201 379 205 204 208 311 210 795 2 484 1.2 理容所・美容所施設数の年次推移 (厚生労働省大臣官房統計情報部)
理容所・美容所施設数の年次推移を見てみる。厚生労働省大臣官房統計情報部によると 理容所は平成元年(1989)から平成15年(2003)にかけてほぼ横ばいで、平成 14年と平成15年を比較すると0.2%の減少傾向にある。一方、美容所は平成元年(1 989)から平成15年(2003)にかけて増加傾向にあり、平成14年と平成15年 を比較すると1.2%の増加傾向にある。
③ 美容院の出店状況と美容師数の推移
美容業の事業所数と美容師数の推移 (単位:件,%) 従業者規模別 事業所数 美容師数 調査年 1∼4人 5人以上 合計 (人) -88.2 -11.8 -100 昭和 61 年 137,750 18,345 156,095 301,175 -88.6 -11.4 -100 平成 3 年 145,777 18,777 164,554 314,704 -88.7 -11.3 -100 平成 6 年 148,665 18,900 167,565 324,566 -87.4 -12.6 -100 平成 8 年 149,988 21,614 171,602 329,995 〈87.2〉 〈12.8〉 〈100.0〉 平成 11 年 151,662 22.316 173,978 345,115 〈86.2〉 〈13.8〉 〈100.0〉 平成 13 年 155,232 24,853 180,085 368,057 資料: 総務省「事業所・企業統計調査」、厚生労働省「衛生行政業務報告」 (注) 1 ( )内は構成比 2 参考欄の美容師数は年度末現在である。 美容師数は過去最高の更新続く 平成13年度未現在の全国の美容師数は、168,057人となり、前年に比べ3.7% 増となっている。美容師数は平成4年以降、毎年過去最高記録を更新し続けている。増加 率は、7年以降1%以下で推移していたが、13年度は昭和56年以降最高の伸び率をみ せている。 新規免許の美容師数は、13年度は27,612人(前年比13.5%増)と大幅に 増加している。また、新規件数の水準も、平成10年度の16,451人を境に底上げしており、12、13年度と続けて27,000人台を維持している。そのことから、美容 師は男女共通の人気業種になっている。 人気業種になっているものの、現実は1日中立ちっぱなしで、店が閉まってから夜遅く にトレーニングするなど肉体的にもハードな仕事である。憧れで美容師になったものの実 際は厳しい現場であることから、美容師になってから再度サラリーマンに転向する人もい る。美容院によって、やり方や考え方が異なり、下積みの時間が長いことから長く努めら れず、店を点々としている美容師も多い。 開業ブ−ム持続、多い新規参入に成長著しい中規模層 平成13年の全国の美容業の事業所数は180,085店で、11年と比べると6,1 07店増と大幅に増えている。これは、8年対比11年の2,376店増の2.6倍に及 び、長引く不況にもかかわらず美容業界は昭和61年以来の開業ブ−ムとなっている。 従業者規模別でみると、4人以下の小規模店が全体の87.2%(理容業95.2%) となっており、平成8年の87.4%とほぼ同じである。増減率を平成8年と比べると、 50∼99人、200∼299人が減少している以外はすべての規模で増えている。5人 以下は1%台の微増だが、10∼19人11.5%増、20∼29人15.5%増と中規 模層の伸びが著しい。 営業許可使用確認の美容院の新規件数(厚生労働省「衛生行政報告例」)は、平成13年 度は10,229件で前任に比べ1.1%減となった。7年に初めて1万件を超えたが9 年には9.007件(前年比11.9%減)に落ち込み、再び10年、11年と増え、1 1年には11,382件(前年比13.3%増)と高い伸び率を示した。しかし、12年 度、13年度と減少している。 美容室は、開業が比較的容易であることから、昭和40年代頃から参入が盛んに行われ てきた。しかし、その結果、同じ商圏に多数の美容院が競合するという過当競争の土壌を 作ることになり、近年は新しい店ができるのと比例して、閉める店もある。 美容院におけるサ−ビスの提供は、1人の美容師が1人の顧客に施術を行うが、大半が 手作業であって典型的な労働集約型であり、美容機械等による労働生産性向上には限界が ある。 美容師の資格を修得し、営業施設を設けて、使用開設届を提出し営業許可が取得できれ ば開業できる。開業に必要とされる資金は比較的少なくてすむので新規参入のハ−ドルは 低く、過当競争の傾向にある。最近は、女性の職場だったところへ、若手の男性美容師の 新規参入が増えており、また、店舗形態も従来型から斬新な店づくりに変化しており、美 容院に対するイメ−ジが変わってきている。 開業ブームとは言って開業することが比較的簡単であっても、店を維持することは簡単 ではない。顧客の出入りが激しい中、顧客へのしっかりとした対応を徹底することで固定 客を持たなければならない。中規模の美容院の場合、経営上顧客一人の単価を高く設定し カットのみではなく、シャンプー・ブロー・カットと言う様なセットで展開しなければチ ェーン店とは違い低価格の設定は厳しい。しかしその分、一人一人の顧客に対する対応を 丁寧にすることで、チェーン店とは違う感動を顧客に提供することができるのではないか。
④ フリーペーパーの広告から見る現在の美容院の動向
月1回発行されているフリーペーパーの「ホットペッパー」から現在の美容院の動向を 見てみたい。ホットペッパーとは地域のヘアサロンや飲食店やカフェ、ホテル等の紹介の 広告で、店の紹介記事の横に、「クーポン券」という割引券がついている。とりわけこれら の紙面の多くを割いているのは、グルメ店とヘアサロンの広告である。しかも、各店と も割引券付きである。その店に行き、割引券を見せると割引価格で提供してもらえるとい う仕組みである。 そのホットペッパーの中に美容院紹介の特集があり、約240店舗の美容院の広告が載 っている。それだけ多くの店が紹介されるため、他店より多くの集客を見込むために、そ の店の独自性を出すという姿勢が見られる。読者に向けて配信されているメッセージは店 によって違い、価格も異なる。ターゲットは女性というところもあれば、老若男女問わな い店もある。 独自性を出すために、店の売りとするもののジャンル別に紹介されている。そのジャン ルから、店の個性や得意とするものが見えてくる。広告の見出しを拾ってみると、「スト レ−トふんわり、優しげニュ−スタイル」「仕事帰りに寄りたくなるテクニカルサロン」 「多くの人が認めた実力のスゴサを確かめて」などである。技術重視、カウンセリング 重視、雰囲気が良い、郊外にある店という様に分けられる。より細かく見てみるとどの店 でも、表現は異なっているが、スタッフの技術の高さや人柄の良さ、「店の雰囲気が良くは じめて来店する人でも安心できる」、「新しい自分を発見できる」「髪だけでなく心もリラッ クスでき気持ちよくなれる」、というメッセージを配信している傾向がある。お客様の体の 一部である髪を、初めて会うスタイリストがカットするため、お客様が抱く不安を少しで も解消し、信頼してもらうことが大切ということが美容院の認識としてあることが見えて くる。どの店も、重点をおいているものは、技術、店の雰囲気、スタイリストの人柄やセ ンス、お客様への新しいスタイルの提案、心のリラックス、丁寧なカウンセリングの6つ である。どの店でも取り上げていたのは、「つやのある髪」ということで、ヘアスタイルが より良くなるだけではなく、髪そのものも良くなるということを売りにしている。キャッ チコピ−は大変魅力的で惹きつけられる。いつのまにか、「行ってみたい。」という気 になってしまう。 また、価格を見てみると、「学割り」、「初回のみ○%OFF」、「お誕生日の方○%OFF」、 「初回のみカットとカラー、カットとパーマなどをセット価格で提供」、「前髪カットのみ」 や「眉毛のカットのみ」という細分化された価格を提示している。価格の差は店によって あるが、カットとシャンプー、ブローで2000円後半から5000円前半で提供されて いる。パーマの種類は5・6種類のものがあり、カラーの種類も5種類以上のものという 種類が豊富である。パーマとカラーの価格は4000円から25000円まであり、その 内容によって価格が大きく違う。中には安さを強調している店も多く、技術などの競争だ けでなく価格競争の側面も見られる。 店の広告では、店の中の写真や、スタイリストの写真、店が目指すヘアの方向性を表 現したモデルの写真が載っている。これらの写真があることで、広告上の店の紹介文だけでは伝わりにくいスタッフの持つ雰囲気や店の雰囲気、店の目指す方向性や得意とするも のが見え、情報を得ることができ、広告を見ている側に安心感を当てる。 フリーペーパーでお店を選ぶポイントは? 安さ 47% 雰囲気 39% 説明文 7% その他 7% アンケートによると38%の人がフリーペーパーをきっかけに美容院へ行き、43%の 友人による紹介の次に多い。また、「フリーペーパーでお店を選ぶポイントは?」という問 いに対して「安さ」と答えたひとが47%、「写真等の雰囲気の良さ」が39%、「紹介さ れている店の紹介文を見て」が7%、「その他」が7%で近所、駅の近郊という内容だった。 フリーペーパーは、載っている店の数も多いため、手軽に美容院を探す際に情報を得る ツールとして大変便利である。しかも、いずれも「予約優先制」であり、予約の電話を しておけば、待ち時間のロスもない。また付いている割引券は、縦3センチ、横2セン チ程度のもので、はさみで切取り美容院にもって行き差し出すのにあまり抵抗がない。 ただ、広告にはほとんど、 全メニュ−30%オフ、ただし初来店者のみ というただ し書きがついている。美容院の戦略として考えられるのは、新規客を一度呼び込んでカ ルテを作り、サ−ビスで固定客に取り込むことで、実際は美容院が考える様な戦略通り に固定客に結びつくのは難しい。むしろ、30%割引の割引券を入手し、常に30%オ フの美容院を渡り歩く人が多い傾向にあると考えられる。それは、固定客にならないの は広告に付いている割引券程の魅力あるサービスを受けられないと感じるため、常に3 0%引きの美容院を渡り歩いた方が良い考えるためである。
一度店に行くだけでお店の良さがわかりますか? わかる 63% わからない 37% フリーペーパーをきっかけに美容院へ足を運ぶ人も多い。しかし、結果的に広告は来店の きっかけを作ることはできるが、それだけでリピートしてくれるお客様が増えることには つながらない。アンケートでは「一度行くだけで店の良さがわかりますか?」という問い に対して、男性で「わかる」と答えた人が52%、「わからない」人が48%、女性は「わ かる」と答えた人が79%、「わからない」と答えた人が21%。だった。男女合わせて、 「わかる」と答えたのは63%、「わからない」と答えた人が37%だった。男性よりも女 性の方が、一度いくだけで店の善し悪しを判断する「厳しい目」を持っているようだ。し かし、全体で見ても一度行くだけでお店の良さがわかるひとが半分以上いることから、第 一回目の来店で再度来店するか、もう来ないか判断される。 広告の中で伝えられているメッセージは実際に実践され、お客様の満足につながること はどのくらいあるのか。魅力あるサービスがお客様が実感することではじめて、リピート へつながる。実際はそれがなされていないため、美容院が提供するサービスへの期待が低 く、割引券を手に美容院を渡り歩く人が増加している。 では、この様な現状がある中、美容院における室の高いサービスはどの様なものか、ま たそれはどこから生まれるのか、価格競争ではなく魅力ある美容院を作るための対策を考 えたい。
2、
美容院における課題と解決策
① 美容師数増加に伴う競争の激化 最近の美容業界は、女性人口の増加率以上に美容院が増えている状態の中、美容師間の 競争が激しくなった。その結果として、ディスカウント業者が出現するなど、他の美容院 の固定客をいかに獲得するか、食うか食われるかの熾烈な競争が起こっている。一方で、 割引券を手に、美容院を渡り歩く人によって、その商法が逆に食われるという皮肉な現象 が生じている。 美容師の増加に伴い、そこで起きる競争が激しくなっているが、どの店も考えるのが固 定客をいかに持つかということである。固定客を持つための様々な試みを行なっている。 固定客は、安定した売上を美容院にもたらしてくれるほか、1人の満足した固定客が口コ ミで宣伝・紹介してくれるなど販売促進の効果もある。アンケートによると、美容院を知 るきっかけで最も多いのが、「友人の紹介」で43%、「フリーペーパー」が38%、「店を 見てなんとなく」が11%、「雑誌」3%だった。友人の紹介で美容院を知った人の中で、 「自分も気に入りましたか?」という質問に対して、「大変気に入った」という人が29%、 まあまあという人が64%、「期待した程ではなかった」と答えた人が7%だった。「口コ ミ」で知ったとしても、紹介されたほうも必ず満足するとは限らないが、美容院を訪れる きっかけの大きな要因になっている。 美容院を知るきっかけは何で すか? 友人の紹介 4 3 % FPの広告 3 8 % 何となく 1 1 % 雑誌 3 % その他 5 %友人に紹介されて自分も 気に入ることがで きま したか? ま あま あ 6 4 % 期待した程 ではなかった 7 % 不満 0 % 大変 気に入った 2 9 % 顧客の方も自分の大事な髪を預ける以上、自分の髪の特徴、ファッションの好み等を熟 知し、信頼ができる店の固定客になりたいと思っている。美容院は美容師とお客様の1対 1の関わり合いが強く、お客様は、美容師のひとつひとつの細かな対応までよく観察して いる。その店で、良い対応をしてもらうなど満足すると、店を変えることなく一つの美容 院を信じて通い続ける。つまり、顧客は親身で心温まる接客態度で応じてもらいたいとの 意識や、ヘアケアに関しては、パーソナルなアドバイスを受けたいとの願望が強い。一人 ひとりの髪質、ファッションの好み、来店動機等を踏まえた髪の手入れ、アドバイス等、 細分化されたニーズに即したヘアケアの管理、顧客サービスが大切である。 フリーペーパーにおいて、「初めての方に限り○○%OFF」という広告を目にするが、美 容院側は初めて来てもらい固定客につなげる考えだが、実際はそうではない。顧客は、美 容院においてサービスの質の高さをはじめから期待せず、どこもかわらない対応なら、安 くなる割引券の方が魅力に感じ、割引券を手に次々と店を渡り歩く人が多い。それは、ア ンケートからも見えてくるが「フリーペーパー等で美容院を選ぶポイントは?」という問 いに対して、「安さ」と答えた人が47%、「雰囲気」と答えた人が39%、美容院が紹介 されている文章やキャッチフレーズが7%、その他として「家の近所」や「駅の側」とい うのが7%だった。その結果として、安さを売りにするディスカウント業者が増えてきて いる。 美容院どうしの競争が激化する中、価格も非常に大切なポイントではあるが、単なる価 格競争に陥るべきではない。美容師ブームにのり価格は安いが、ずさんな対応の店が増え ることはあってはならない。競争は、各美容院のサービスの質が上がり美容界全体の質の 向上という点で良い現象である。価格での競争ではなく、サービスの質の高さとして新た な対応策が必要である。 実際に美容師の顧客に対する対応は現在どのようなものか見てみると、要望が伝わらず 自分が思ったとおりのヘアにしてもらえなかったり、いいかげんな対応をされたという様 な経験を誰しもがしている。また「もう来たくない」と感じることが誰でもある。 この様な経験を誰しもがしていることから、顧客への対応がまだまだ未熟であることが わかる。「もう来たくない」と感じる要因として上げられるのが、美容師の押し付けがま しい対応や顧客の声を無視し流行や美容師の考えを押し付けられ、自分のイメージどおり
にならないことがある。美容院へ行く顧客の期待として、自分のイメージ通りにして欲し いというのが当然ある。顧客とは違う人間である美容師が全くイメージどおりのヘアを完 成させることは簡単ではないが、顧客の声に耳を傾けることは最低限の対応ではないか。 それをしないで、顧客の要望をかなえることはできない。カウンセリングを今後強化し顧 客の声を十分に引き出す作業を重視していくことが必要であると考える。一見関係がない 様な会話であっても、顧客を知りヘアへ反映させるような作業であることもあり、顧客と コミュニケーションをはかり、確認しながら完成させていくことが顧客には求められてい る。 ② 増加する男性の顧客のへの対応 以前は、美容店は女性が行くところとされ、男性は理容店へ行っていた。しかし、 現在ではその価値観が崩れ始め、多くの男性が美容院へ足を運ぶ。若い男性が美容院に行 くのは、何ら不思議でない社会現象となっている。 アンケートからによると、『美容院を利用したことがありますか?』という問いに対し、 女性は「はい」と答えた人が100%、男性では「はい」と答えた人が81%、「いいえ」 と答えた人が19%いた。80%の男性が美容院へ行ったことがあり、特にためらいもな く利用している事がわかる。むしろ行ったことがない男性の方がめずらしい。また、『行き つけの美容院はありますか?』という問いに対して、男性は「ある」と答えた人が74%、 「ない」と答えた人が26%いた。行きつけの美容院へ通っている期間を尋ねると、男性 は最も多いのが2∼3年で43%、次が1年で19%、5年以上通っている人が19%で、 3ヶ月未満の人が12%いる。 行きつけの美容院へ通っている期間は? (男性) 1年 19% 半年 7% 3ヶ月未満 12% 5年以上 14% 4∼5年 5% 2∼3年 43%
行きつけの美容院へ通っ ている期間は? (女性) 2∼3年 37% 1年 29% 5年以上 8% 4∼5年 5% 3ヶ月未満 5% 半年 16% 一方、男性で「美容院を利用したことがない」と答えた人に理由を尋ねると、「床屋へ 行く、両親や友人に切ってもらう」と答えた。一部、「美容院に行く柄じゃない」という美 容院に対して行きづらい印象を持つ人もいた。 現在、法解釈により美容師は顔そりをすることができず、理容師はパーマをかけるこ とはできないと定められているが、今後、男性が美容院へ行くのが当たり前になる中、顔 そりをしないなど、女性に絞った対応をするだけでは男性にとって満足できないだろう。 男性が美容院へ通う意味は、容姿を単に整えるだけでなく、身なりをおしゃれにかっこよ くすることにある。身なりをよりかっこよくしたいと思う気持ちは、男女とも変わりはな いのである。法律によって定められている限り、美容院における男性に対して多様なサー ビスを提供することは簡単ではないが、その中でより男性に利用しやすい店作りをする必 要があるのではないだろうか。 ③ 女性を取り巻く環境への配慮 美容院は女性が一人で行くイメージがあるが、それが変わってきている。最近では、住 宅街の美容院には若い母親に連れられて、幼い男児までが行く傾向が増えつつある。女性 をとりまく環境において、子供の存在がある事を忘れてはならない。現在では子供が幼く ても気軽に美容院に行けるような環境作りがなされている。美容院の横に託児所があり、 子供が自由に遊んでいる間、母親は日ごろの育児から開放されて子供の心配をせずリラッ クスしながらカットできる。また、母親がカットしている間、子供も一緒にカットをする 店もある。そこでは、子供が嫌がらないような配慮がなされており、各セット椅子にカメ ラが設置され、アニメなどの好みのビデオが見ることができる。そのため、泣いたり嫌が ったりすることなくカットを終えることができる。本来、幼い男児は、理容店に行くのを 拒む傾向が強く、整髪中にぐずる子供が多いのは、昔も今も変わりがない。このテレビ活 用は、テレビの小型化、ソフトの多様化などITを駆使したものであり、一方では子供が もっている整髪を嫌がる盲点をついた商法の展開である。 女性が美容院へ行くまでの流れを考えると、子供の存在もあれば、子供の育児に忙しい 母親が日ごろの家事をお休みして、美容院へ足を運ぶことが予想される。そのため、待ち
時間を極力少なくしたり、美容院はもはや女性だけの店ではないことから、男性や母親と 来店する男児に対する適切な対応が求められる。今後は、美容院へ足を運ぶ際の女性を取 り巻く環境を整えることが必要不可欠である。 ④ 新たに求められる美容院のありかた 近年、エステティックは急速に広まった。美容業のみならず異業種からの参入が増加し、 市場規模は拡大傾向にある。 エステティックの内容は、従来は脱毛、美顔等が中心であったが、現在は痩身、全身美容 等にまで広がっている。また、「リラクゼーション」といったストレスの解消等の面も強 調され、メンズエステも徐々に増加している。この現象は「美」に関する興味の幅の広が りが見られる。美容院において、ネイルアートなど様々なサービスが受けられるようにな っているのは、フリーペーパーからもわかる。広告において、カフェが隣にあるものや、 カットをした方にはネイルアートをセットでやってくれる店もある。 アンケートでは「カット以外で美容院に期待することは?」という問いに対して、「気分 転換」と答えた人が34%、「よりかっこよく、又は美しくなれる」が34%、「癒し」が 23%、「元気になれる」が2%、「情報交換」が2%、その他が5%だった。 美容院に来る目的として、ヘアに限らず、気分転換になることやより美しく・かっこよ くなることがあげられる。 カット以外で美容院に期待することは? その他 5% 気分転換 34% 情報交換 2% かっこよく なれる 34% 癒し 23% 元気になれる 2% 今後は、美容室を利用する際に、ヘアだけでなく「総合的な美容」の要素を求めるお客 様が増加することが考えられる。そのため現在美容院では、単に髪を切るだけのところで はなく、ネイルアートやマッサージ、エステなどの様々なアプローチをすることでがなさ れている。男性は理容、女性は美容という伝統的な価値観が変わり、美容院のあり方が変 わる中、お客様の「美」に対する意識が高くなり幅広い要望に応える美容院が今後必要に なる。
3、美容院のあるべき姿
① あるべき美容院の方向性 以上の結果などを踏まえて、本来あるべき美容院の姿は、最新型の機械の導入や IT 技術 を駆使した顧客へのサービス、おしゃれで高級感のあるインテリアという様なものに依存 してはならない。もちろん、最新型の機械によって髪を極力痛めないための工夫や ITを使 って便利さを追求することや顧客管理も必要ではあるが、最も大切なのは、美容師の顧客 への質の高い対応である。美容師はと人そのものの、質の高さが何よりも重要になる。高 い意識を持ち顧客の望みを叶えよう努める美容師がいる店ならば、例えおしゃれなインテ リアではなかったとしても、お客様はその美容師を目指して通い続けるだろう。それでは、 最新型の機械やおしゃれなインテリアなどではない、美容師が目指すべき質の高いサービ スとはどういうものか考えたい。 アンケートによると、「現在の美容院に満足していますか?」という問いに対して「大変 満足」と答えた人が19%、「まあまあ」が76%、「不満」が5%だった。さらに、「どう すれば、満足できると思いますか?」という問いに対して、「スタイリングや、より自分に 合うヘア等のアドバイスや提案をしてくれる」が33%、「より良い接客」が27%、「よ り安く」が19%、「より入りやすい店づくり」が16%、「コーヒー等を出すなどのサー ビスをしてくれる」が1%、「その他」が4%で「技術・オリジナリティーのある店、カウ ンセリングをしっかりしてくれる」、「待ち時間を少なく」という内容だった。 現在の美容院に満足ですか? まあまあ 76% 不満 5% 大変満足 19%どうすれば満足できますか? 提案 33% 安く 19% 接客 27% その他 4% 店作り 16% サービス 1% 現在の美容院に対しての満足度が「まあまあ」と答えた人が76%いるため、今後は満足 と感じてもらうためのさらなる努力が必要不可欠である。とりわけ、より満足のいく要因 で、「より良い接客」や「より自分に合うための提案」をあげられていることからサービス の質の向上がなにより求められている。 カットやカラー等の高い技術を持つことでより、完成度の高いヘアが出来上がるとい う見方もあるが、それだけとは今後、言えないのではないか。技術はもちろん重要である。 顧客はお金を払っているため、それだけの技術が当然求められる。しかし、技術があって も顧客の声に耳を傾け、話を聞く姿勢がなければ、美容師の自己満足でしかなく、持って いる技術も意味がなくなってしまう。 そこで、今後はカットやカラーの技術だけでなく、顧客に対する質の高い対応が重視され る。 ② 質の高いサービスとは 現在の美容院に対して、「まあまあ」という回答が76%いたことから、まだまだ顧客は 満足していないことは明らかだ。今後、更なる質の向上が期待される。満足できるための 要因として上げられたのが、様々なヘアに関するアドバイスの強化と質の高い接客である。 接客とは幅広いが、具体的に何が質の高い接客なのか考えてみたい。
親切な対応をしても ら っ たと 感じる時はど の様な時です か? その他 5% コーヒー 5% 面白い話 30% 快くやり直し してくれた 26% 親身になって 話を聞いて くれた 34% アンケートで「親切な対応をしてもらったと感じる時はどの様な時ですか」という問い に対して、「親身になって話を聞いてくれた」と答えた人が34%、「面白い話をしてくれ た」が30%、「切った後快くやり直してくれた」が26%、「コーヒー等を出してくれた」 が5%、その他として、「退屈させない気配りをしてくれた」や「確認しながらカットして くれる」「スタイリングのやり方や、より自分に似合う髪形の提案をしてくれた」が5%だ った。顧客が親切と感じる要因は、顧客の目線に立ち親身になって話を聞き、面白い話を 交えながらコミュニケーションをはかっていくことで、顧客との距離を縮めることができ る。一方的に、美容師の考えを押し付けず、顧客の考えをベースとしてアドバイスを行な っていく姿勢が求められる。 「二度と来たくないと」思っ たこ とはありま す か? ある 62% ない 38%
「 もう来たく ない」 と感じた理由は何で すか? 態度が悪い 31% 高い 3% カット 下手 32% 希望が伝わ ら ない 24% その他 10% 逆に「もう来たくないと感じたことはありますか?」という問いに対して女性で「ある」 と答えた人が91%、「ない」が9%、男性では「ある」と答えた人が35%、「ない」が 65%、全体で「ある」が65%、「ない」が38%だった。その理由は、「カットが下手」 と答えた人が32%、「接客の態度が悪い」が31%、「自分の希望が伝わらない」が24%、 「高い」が3%、「その他」が10%で「美容師の好みで切った」、「美容師の意欲が感じら れない」、「髪が痛んだ」、「時間がかかる」という内容だった。 ほとんどの人が「もう来たくない」と感じる経験をしている。特に女性の方がその様な 経験をした人が多い。美容院における質の高いサービスとは、結果として顧客それぞれに あったヘアを実現し、かつ、その後のヘアをより魅力的に見せるためのスタイリング方法 やアフターフォローを実践することである。美容師の姿勢で前提にあるのが、ひとりひと り違う顧客の感覚を理解し共有すること。美容師は顧客を主観だけで捉えず、客観的に捉 えることも必要だ。美容師の考えも大切だが、一人一人の顧客が何を良い、好きと感じ、 何が嫌と思うのかという事を知り理解することが必要だと考える。例えば、この髪質には 長い髪が合うというものであっても、肝心の顧客が長い髪を好きでなければ意味がない。 また美容院ではカットをすれば終わりではない。その後のアフターフォローも非常に重 要だ。アンケートからもわかるが、親切な対応で「快くやり直してくれた」と感じている 人も多い。プロの手ではなく、顧客の手でもうまくスタイリングでき、美容院を出て少し 時間が経ち、納得がいかなかった場合も、納得するまで手直しをするが必要だ。 アンケートで「カット等で担当のスタイリストに重視してもらいたいことは?」という 問いに対して「自分の個性に合ったもの」と答えた人が78%、「今までとは違ったより自 分に似合うヘアの提案」が18%、「斬新なヘア」が1%、「切り抜き等を忠実に再現する」 が2%だった。アンケートの回答で多かった、顧客の個性に合うヘアを提案する上では、 顧客を様々な角度から理解し、さらに発展して新たな顧客の魅力を引き出すことも重要で ある。その結果、顧客の個性をうまく引き出すことができるのではないだろうか。
カット において美容師に重視しても ら いたいこ とは? 個性に合った もの 78% 斬新なもの 1% 新たな 自分発見 18% その他 1% 忠実に再現 2% ヘアを完成させていくまでの過程が簡単ではなく、多様な方法がある。美容院の場合、 顧客の髪質、雰囲気などそれぞれ顧客によって違うため、パターンを決め付けて顧客に押 し付けてしまうと、顧客は納得しない。顧客は自分に合うものを何より求めている。マニ ュアルがあっても、顧客に合わせて柔軟な対応をするだけのシステムでなければならない。 接客やシャンプーなど基盤となるマニュアルは必要だが、顧客の意見をうまく取り入れヘ アに活かせる様な仕組みが必要である。 顧客にとって、美容師が話しやすく近寄りやすい存在であることも重要である。美容師 と顧客とでヘアを作り上げる上で、顧客の希望を叶える要因は、カットやカラーの技術だ けではない。もちろんカットの技術や経験、テクニックも重要で、希望をうまく聞き出す 会話のテクニックというものもあるだろう。しかし、最も重要なのが顧客のペースに合わ せて、顧客が持つイメージを引き出し、具体的にし共有することだ。自由回答のアンケー トで、「自分に合うと思う美容院、合わないと思う美容院はどういうものですか?」という 問いを投げかけた。「自分に合う美容院」と答えたなかで最も多い回答が「自分の好みのヘ アにしてくれた」、「話しやすく、話が合う」ということであった。逆に「合わない美容院 は?」という問いに対して、最も多かった回答は「結果としてイメージと違うヘアにされ てしまう」、「話が合わず、意見を聞いてくれない」というものだった。美容院という空間 を楽しいものにするかも美容師の手にかかっている。初めての顧客に対して、不安を取り 除き、緊張を溶くような楽しい話をしたり、じっくり話を聞き反応を見ながら調整するこ とで美容師の信頼は高まるのではないだろうか。 それでは、以上の様な質の高いサービスを提供できるようなシステムはどういうものか を考えたい。
③ 顧客にとって柔軟なシステム サービスの質は非常に幅広く、また限りないものだ。多様な顧客がおり、求めるものが 多様であっても顧客に対する対応が不確実なものであってはならない。多様な顧客がいる 事を理解し、どんな顧客に対しても確実に質の高いサービスを提供する仕組みがなければ ならない。 自分に合う美容師と出会うのは「運」であるという考え方があるが、人との出会いは「運」 という側面があるものの、全てが「運」の力であるべきではないと考える。顧客が素晴ら しい美容師と出会って感動し、運が良かったと感じるのは良いが、美容院側は多様な顧客 がいて多様な要望がある事を認識した上で多様な要望に必ず応えられる様な仕組みを備え ていなければならない。顧客がイメージと違うと感じることで、同じ美容院へ足を運ばな くなることが多い中、それが起こる原因として美容師の一方的な考えの押し付けや柔軟に 対応できていないことが考えられる。 レオナルド・ペリー著「成功企業のサービス戦略」のなかで「最高の成果を上げている サービス企業は、提供しているサービスが本来備えている柔軟性を最大限利用する方法を 常に考えている。彼らは、それを価値と薄いマニュアル、さらには厳選され、よく訓練さ れた意識の高いサービス提供者と、柔軟なサービスの実行を可能にするシステムによって 実現しているのである。柔軟性の高いシステムは、サービス・カスタマイゼーションの可 変方キャパシティーという手段によって、エクセレントなサービスの実行を可能にしてい る。」と言っている。また、「エクセレントなサービス企業は、柔軟なサービス・システム の必要性を熟知している。彼らは人間の特性と、ビジネスが硬直したものではなく、ダイ ナミックな相互作用であることをよく理解している。エクセレンスの実行を実現するうえ で鍵を握っているのは、何ができるかというメニューではなく、ニーズに柔軟に対応する というサービス本来の姿勢であり、オペレーションの中に流れる理念であり、細かな手続 きを超えたエッセンスを重視する考え方に他ならない。柔軟性は、土台があるものではな く、行動の哲学なのである。」と言っている。 美容院において出来ることを限定し、このタイプにはこのヘアが適切だという固定観念を 持たず、顧客が抱く要望やいうわがままを十分に引き出し、顧客それぞれに対応していく 事が必要だと考える。それぞれの顧客の環境や状況を理解した上で、ヘアを創り上げるシ ステムが必要だ。質の高いサービスを提供するとことは、多様な要望に応える体制がある ということである。決められた行動の中で決められた事をするのは簡単だが、美容院では 多様な要望が飛び交うため、その様な体制では対応できない。そのシステムの中でも顧客 とのイメージや思いを共有するためにカウンセリングを重視するべきだと考える。顧客の 声を十分に聞き、ヘアに生かしていくシステムの中でカウンセリングを特に重視すること で、美容師と顧客のあるイメージの相違をなくすことが出来、より完成度の高いヘアを提 供できるのではないか。