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連携と在宅医療 -薬剤師の今後の役割と課題-

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6 日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2018年4月号

■寿命の延伸がもたらした医療の変化

 2018年度の調剤報酬改定では、基準調剤加算に代 わって地域支援体制加算が創設されました。地域医療 への貢献がその算定要件とされ、在宅業務の実績もそ の1つにあげられています。  最近、在宅医療が施策として推進されるようになっ ていますが、訪問薬剤管理指導を手がけている保険薬 局はまだ一部に過ぎません。そこで、この連載では、 在宅医療と多職種連携をテーマにこれからの薬剤師像 を考えていきたいと思います。  今、なぜ在宅医療が必要とされているのでしょうか。 まず言えるのは、“時代が変わった”ということです。 国民的漫画『サザエさん』のお父さんである磯野波平さ んの年齢をご存じですか? 54歳という設定だそう です。もっと高齢のイメージがありますよね。漫画の 連載開始は1946年です。当時は若年での死亡も多か ったので一概には比べられませんが、1947年の平均 寿命は男性が50.06歳、女性で53.96歳。それに対 して、2015年では男性80.75歳、女性86.99歳で すので、医療の役割も当然変わってきます。  昔は若い人が多かったからこそ、病気を治すための 急性期医療が何より重視されました。しかし、高齢に なると治せない病気も増えるため、急性期だけでなく、 看取りを含めた慢性期医療も欠かせません。  加えて、同じ80歳でも活動的に過ごしている人も いれば、車いすに乗っている人もいて個体差も大きく なっています。そのため、1人ひとりに対応する医療、 またその人生に寄り添う医療が必要とされるようにな ってきました。そうした役割の担い手として制度化さ れたのが、かかりつけ薬剤師といえるでしょう。

■人生の最期をどこで迎えるかも大きな問題

 病院の医療もまた変化を求められています。病気に なったら入院して治療し、治ったら退院するという病 院完結型の医療は、若年人口が多かった時代には適し ていました。しかし、治らない慢性疾患を抱えた高齢 者などでは、退院できなくなってしまいます。病院で やるべき治療がなくなったら、入院し続けるよりも住 み慣れた家に戻ったほうがいいのではないか――。在 宅医療に目が向けられている理由には、そうした医療 ニーズの変化もあります(図)。  現在、日本の人口は減少し始めていますが、65歳以 上の高齢者人口は今後も増えていきます。中でも、増加 が著しいのは85歳以上の層です。2040年には、85 歳以上の人口は2010年時点の2.7倍になると推算さ れています。このことは何を意味するのでしょうか。  85歳以上では要支援・要介護の人が5割程度を占 めています。つまり、介護を必要とする人、そして死 亡する人の急増が見込まれるということなのです。 2015年 の 死 亡 者 数 が 約130万 人 な の に 対 し、 2038年には約170万人と1.3倍になると推計され ています。「多死社会」といわれますが、その人たちが 人生の最期をどこで迎えるのかは大きな問題です。  アンケートをすると、おおよそ7割ほどの人が「自 宅で最期を迎えたい」と希望するそうです。しかし今、 実際に死亡する場所の約8割を占めているのは病院・ 診療所です。最近は少し減少傾向にありますが、その 分、高齢者施設が増えています。一方、自宅での死亡 は微増していますが、15%程度で推移しています。 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会 会長 栃木県薬剤師会 会長 株式会社メディカルグリーン 代表取締役社長

大澤光司

第1回

 今なぜ在宅医療が必要とされるのか

連携と在宅医療

―薬剤師の今後の役割と課題―

医療はより地域的に、包括的に福祉的に。 病院(入院)・外来中心としたヘルスケアシステムの限界 急性期医療 長寿(Anti-aging) 専門医(疾病・臓器) 根治治療 Data 緩和医療Q.O.L Care 病院 看取り医療 天寿(With-aging) Care 地域 かかりつけ医(人生) (資料提供:大澤光司氏) 図 医療の役割の変化 2018_4_06-07 連携と在宅医療(責).indd 6 2018/03/15 11:32:01

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7 日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2018年4月号 医療機関での死亡割合の高さは、先進国の中で日本は 突出しています。米国では約4割と日本の半分、さら にオランダでは約3割で、高齢者施設や自宅と同程度 の割合です。

■報酬によって在宅医療に誘導する方向へ

 日本でも病院から自宅へと療養の場をシフトさせよ うと、2000年度に導入されたのが介護保険制度です。 入院医療費の急増という切迫した国の事情と、自宅で 療養したほうが最期まで尊厳を保てるのではないかと いう考え方が背景にあります。実はその数年前に医療 保険で訪問薬剤管理指導に初めて報酬がついたのです が、介護保険でも居宅療養管理指導が設けられ、薬剤 師の在宅業務がはっきり位置付けられました。しかし、 在宅医療は18年経った今でもあまり進んでいないの が現状です。  調剤報酬の変遷をみると、2008年度の改定で退院 時共同指導料が薬局薬剤師も算定できるようになり、 在宅でも緊急時のカンファレンスへの参加が在宅患者 緊急時等共同指導料として評価され、在宅医療や多職 種連携が促されるようになりました。なかなか在宅が 広がらないため、国は報酬をつけることで誘導する方 向に舵を切ったということです。  そして2012年には、在宅患者調剤加算が設けら れ、在宅医療をある程度手がける薬局が評価されまし た。さらに2016年度改定では、基準調剤加算で在宅 業務の体制や実績が必須とされました。今回の改定で 基準調剤加算は廃止されましたが、新たな加算でも在 宅業務は引き続き要件とされています。  こうした流れで、薬局薬剤師の在宅医療は推進され てきましたが、もう1つ重要な概念として「地域包括 ケアシステム」があります。これは2005年ごろに登 場したのですが、その意味するところが腑に落ちてい ない人も多いのではないでしょうか。  次回は、地域包括ケアシステムの観点から在宅医療 を考えてみたいと思います。  大沢調剤薬局片柳店は住宅地に立地しており、主に 循環器内科、小児科、漢方内科などを中心に、多くの 医療機関の処方せんを受け付けています。  在宅医療には20年近く前から積極的に取り組んで おり、8年前にはクリーンルームを設置。高カロリー 輸液や麻薬の混注なども行い、看取りまでの対応も行 っています。  また、多職種連携も進んでおり、最近ではケアマネ ジャーや訪問看護師からの相談がきっかけとなる訪問 が増えてきました。現在訪問している患者様の8割は、 そういった多職種からの相談型です。  調剤以外にも OTC 医薬品を幅広く取り揃え、健康 食品や介護用品なども取り扱い、地域の「かかりつけ 薬局・薬剤師」を目指しています。  これからも多くの患者様に気持ちよく利用していた だけるよう、明るく優しさにあふれるような薬局の雰 囲気づくりを心掛けていきたいと思っています。 管理薬剤師 上野将明氏

約20年の実績重ねた在宅医療への取り組み

地域の「かかりつけ薬局」目指す

▲大沢調剤薬局 片柳店のスタッフ。 ●本社所在地:栃木県栃木市片柳 町1- 6-35 ●設 立:1985年( 片 柳 店 開 局: 1986年) ●店舗数:薬局14店舗(他に介護 施設、保育施設などあり) ●従業員数:約170名(内、薬剤師35名) ● URL:http://www.medical-green.com/ 地域の元気を応援中!

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大沢調剤薬局 片柳店(株式会社メディカルグリーン)

(栃木市) 株式会社メディカルグリーン プロフィール 2018_4_06-07 連携と在宅医療(責).indd 7 2018/03/15 11:32:03

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6 日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2018年5月号

■地域包括ケアが目指す“ご近所付き合い”

 2025年を目途に、地域包括ケアシステムの構築が 目指されています。地域包括ケアシステムとは、「住 み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続 けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・ 生活支援が一体的に提供される体制」のことです。  この定義だけでは地域包括ケアとは何か、よく分か らないという人は多いでしょう。厚生労働省は、この システムについてさらに「地域包括ケアシステムは、 保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主 体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくこ とが必要」としています。実は私も、その意味すると ころがずっと分かっていませんでした。「なるほど」と 腑に落ちたのは、知り合いの市役所の介護保険担当職 員から、次のような解説を聞いてからです。  地域包括ケアで目指されているものは、例えて言え ば“ご近所付き合い”のようなものです。ある町で、子 どものいる若い夫婦と、老夫婦が隣り合って暮らして いるとします。その地域では、共用のごみ捨て場の清 掃を持ち回りで実施しています。あるとき、若夫婦に その当番が回ってきました。若夫婦は共働きで、朝早 くに家を出なければならず、ごみ回収後の清掃をして いたら仕事に間に合いません。そこで当番期間中は、 奥さんが午前中に仕事を休むことにしました。  そのことを知った隣のおじいさんが、「私はずっと 家にいるから代わりますよ」と当番を買って出てくれ ました。おかげで奥さんは仕事を休まずに済みました。 しばらく経って、今度は老夫婦に問題が発生しました。 粗大ごみを出したいのですが、重くて自分たちで収集 場まで運ぶことができないのです。困っていたところ、 隣の若夫婦が「私たちがやりますよ。こちらも助けて いただきましたから」と、ごみ出しを引き受けてくれ ました。一件落着です。  この2組の夫婦はお互いに助け合ったことで、余計 な費用やサービスを使わずに問題を解決することがで きました。地域包括ケアシステムが目指しているもの も、それと同じです。つまり、医療関係者や介護関係 者、行政、ボランティアなどがお互いに連携し助け合 うことで、効率的かつスムーズに患者さんを支えまし ょうということなのです。もちろん、地域によってど のような資源があるのか、どう連携していくのがよい のか事情も異なります。そのため、地域包括ケアシス テムでは「地域の特性に応じて作り上げていくこと」が 求められているというわけです。

■チームの輪に加われているか確認する方法

 これを在宅医療に当てはめると、地域包括ケアで求 められているのは図のような仕組みになります。在宅 医療に必要な資源として訪問する医師、 薬剤師、看護師のほか、急変時にすぐ に受け入れてくれる後方支援病院があ ります。加えて、さまざまな介護サー ビス事業所との橋渡しをしてくれるケ アマネジャーの存在も欠かせません。 これらの職種が互いをよく知り、いつ でも相談できるような関係でいること が、効率的で切れ目のない地域包括ケ アにつながっていくのです。  皆さんは、地域で顔見知りのケアマ

第2回

 地域包括ケアシステムと在宅医療

全国薬剤師・在宅療養支援連絡会 会長 栃木県薬剤師会 会長 株式会社メディカルグリーン 代表取締役社長

大澤光司

連携と在宅医療

―薬剤師の今後の役割と課題―

地域包括支援センター 地域包括支援センター 市町村 診療所・在宅療養支援診療所等 診療所・在宅療養支援診療所等 病院・在宅療養支援病院・診療所(有床診療所)等 病院・在宅療養支援病院・診療所(有床診療所)等 訪問看護事業所、薬局 介護サービス事業所 訪問診療 訪問薬剤管理・訪問看護等 訪問診療 介護サービス 一時入院 (急変時の診療や一時受入れ)一時入院 (急変時の診療や一時受入れ) 連携 在宅医療・介護連携支援に関する相談窓口 (郡市区医師会等) 在宅医療・介護連携支援に関する相談窓口 (郡市区医師会等) ※市区町村役場、地域包括支援センターに 設置することも可能 ※市区町村役場、地域包括支援センターに 設置することも可能 後方支援、 広域調整等 の支援 利用者・患者 都道府県・保健所 ・地域の医療・介護関係者による会議の開催 ・在宅医療・介護連携に関する相談の受付 ・在宅医療・介護関係者の研修 等 関係機関の 連携体制の 構築支援 ケアマネジャー 介護福祉士 薬剤師 看護師 医師 (「平成28年版厚生労働白書」より一部改編) 図 医療と介護の連携で支える在宅医療のイメージ 2018_5_06-07 連携と在宅医療(責).indd 6 2018/04/13 9:50:12

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7 日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2018年5月号 ネジャーは何人いますか。医師や訪問看護師、後方支 援病院の薬剤師ではどうでしょうか。そのうち、いつ でも相談できる相手は何人でしょうか。  こういったことを確認してみると、在宅医療チーム の中での立ち位置が分かります。あなたが相手をよく 知らなければ、当然、相手もあなたをよく知りません。 つまり、他職種をよく知らないということは、自分が 在宅チームの輪に入れていないということなのです。 ぜひチェックしてみてください。

■薬剤師の在宅業務を PR しよう

 また、各職種が互いにどのような業務・役割ができ るのかを知っておくことも重要です。ところが、他職 種からは、「薬剤師は在宅で何ができるのかが分から ない」としばしば言われます。だからこそ、在宅に取 り組む薬剤師には、「薬局で調剤するだけではなく、 在宅の患者さんの状態や服薬状況、生活環境などを観 察し、それらを踏まえた薬に関するアドバイスができ ます」と、説明するところから始めてほしいのです。  その相手は、在宅の多職種や行政、住民です。特に、 在宅チームのコアメンバーであるケアマネジャーへの 説明は大切です。ケアマネジャーの中には、さまざま な基礎資格を持つ人がいますが、最近では医療よりも 介護福祉の資格保有者が多くを占めるようになってい ます。薬剤師の職能について、よく知らない人が大半 だと思っていたほうがいいでしょう。  そのため、ケアマネジャーが集まる勉強会に参加す る、薬局で他職種向けの薬の勉強会を開くなどして、 まず説明する機会を積極的につくることが必要です。 それと並行して、市民講座などで薬剤師の在宅業務に ついて伝えていけば、住民がケアマネジャーにその利 用を求めてくれるかもしれません。  いずれにしても、何ができるか分からない相手に、 対価を支払ってまで何かを依頼しようとは思いません。 だからこそ、自分でこうした広報活動を地道に行って いくことも大切なのです。  日本一の豪雪地、新潟魚沼で1997年に第1号店を 開局し、地域密着、個別服薬支援にきめ細かく取り組 んでいます。介護保険の施行前から在宅業務にも取り 組んできました。現在8薬局、すべて本部のなのはな 調剤薬局から車で30分圏内にあります。即座に対応、 ヘルプが可能で、患者さんや他職種に迷惑を掛けない という立地戦略も立てています。迷惑を掛けないとい う意味では災害準備もかなり具現化しており、全薬局 に5,500ワット発電機を備え、毎月交代で発電訓練 と年1回は停電訓練も実施しています。実際の停電時 も約10分前後で業務再開ができています。  また、この魚沼地域はすでに超高齢社会の真っただ 中にあり、その中にありながら医療資源、人口当たりの 医師数は全国平均の半数近く、また、薬剤師も含め全 医療・福祉関係者もかなり不足の状況にあります。そ れは、さまざまな職種が連携とスキルミクスをせざる を得ない状況を自然発生的に生み出し、薬剤師も他職 種も通常の業務以上に知恵と工夫が求められています。 そして、それを可能としている能力をもったスタッフ と共に仕事ができることをとても誇りに感じています。 うおぬま調剤株式会社 会長 新潟薬科大学 客員教授 一般社団法人全国薬剤師・在宅療養支援連絡会 副会長 金井秀樹氏

きめ細かな個別服薬支援の活動に定評

地域の医療資源不足も知恵と工夫で克服

●本社所在地:新潟県南魚沼市 浦佐4135-4 ●設立:1996年(なのはな調剤 薬局開局:2002年) ●店舗数:8店舗 ●従業員数:63名 (内、薬剤師23名) ● URL:http://www.uonuma-ph.jp/ 地域の元気を応援中!

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なのはな調剤薬局(うおぬま調剤株式会社)

(新潟県南魚沼市) うおぬま調剤株式会社 プロフィール ▲ なのはな調剤薬局メンバー:メンバーが知恵を出し合い患者 さんの服薬問題を解決しています。 ▲なのはな調剤薬局の外観 2018_5_06-07 連携と在宅医療(責).indd 7 2018/04/13 9:50:15

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6 日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2018年6月号

■症状から薬の副作用に気付く薬剤師の観点

 薬剤師が訪問薬剤管理指導で何ができるのか、他職 種や住民などには、まだあまり知られていません。そ のため、自ら PR することが必要と前号で書きました が、多職種が関わる在宅で薬剤師にできることは何な のか、ここで改めて考えてみましょう。  私は、在宅における薬剤師の重要な役割は2つある と考えます。1つは、薬剤に関する管理・助言です。  在宅での服薬管理は、本人や家族が行うことが難し い場合、薬剤師ではなく訪問看護師が実施しているこ とも多く、中には「自分たちの仕事」という自負を持っ た人もいます。訪問看護師の業務のうち、服薬管理に かける時間はかなりの割合を占めるとも言われますが、 同じ業務を薬剤師が行えばより短時間で済ませられま すし、そもそも薬理学を学んだ薬剤師にしか分からな いことは多く存在します。  薬の副作用は本で調べれば分かりますが、在宅の高 齢者は大抵複数の薬を服用しています。5種類の薬を 服用している場合、1剤の副作用だけでなく、体内の 薬物動態を考え、薬同士の相互作用もチェックしなけ ればなりません。そうした役割は、薬剤師だからこそ できることです。  また、訪問看護師が担っている業務はバイタルのチ ェックや医療機器管理など多岐に渡ります。やはり “餅は餅屋”で、薬のことは薬剤師が引き受け、その時 間を看護師にしかできない業務に充ててもらうほうが、 効率的で効果的なチーム医療ができるはずです。  さらに、在宅チームに薬剤師の観点が入ることの意 義も大きいと考えます。例えば、ふらつきが現れた場 合、薬剤師であれば薬の副作用を疑い、減量などの処 方提案を検討します。一方、看護師や介護職であれば、 症状だけを見ると病状の悪化や機能の低下などが疑わ れるため、移動に介助者を付ける、ポータブルトイレ をベッドサイドに設置し、移動距離を減らすといった 対応方法を考える場合があります。  それぞれの職種の専門性により見方が異なるため、 導き出される答えや対応が全く違ってしまうのです。 薬という観点で気付けるのは薬剤師だけです。だから こそ私は、薬剤師が在宅現場に行くべきだと考えます。

■現場を知る介護職と医師をつなぐのは薬剤師

 薬剤師が在宅チームの他職種と連携が取れていれば、 薬という観点でチェックできるだけでなく、処方薬の 変更があった時点で、ケアマネジャーに対して「少し ふらつきが出るかもしれないので注意してもらえます か」などと、あらかじめ情報提供することもできます。 そして、実際にふらつきが出れば、ケアマネジャーが 連絡してくれるので、薬剤師から医師に迅速に相談す ることが可能です。  このような医療職、特に医師と、現場の介護職とを つなぐことが、薬剤師の在宅におけるもう1つの重要 な役割だと私は考えています。ケアマネジャーを含め て介護職は、仮に薬の副作用を疑っても医師に直接連 絡しにくいものですし、そうした状態をうまく説明す ることはさらに大変です。  その一方で、患者さんの服薬の現場を一番見ている のは介護職だという現実もあります。薬の飲み残しを 医師や薬局薬剤師に伝えているかどうかを、患者さん にアンケートしたインターネット調査の結果を見たこ とがあります。医師に伝えたことがある人は、なんと 1割未満でした。特に高齢者の場合、申し訳なさや、 医師に怒られるのではないかとの不安があるので、な かなか言い出せないのが現状でしょう。薬局薬剤師に 対しては4、5割でしたが、それでも半数以上の人は 打ち明けていないという結果でした。  それに対して、頻繁に自宅に訪問する介護職や、そ の報告を受けているケアマネジャーは、患者さんが薬 をどのように服用しているのか、きちんと管理できて いるのかなど、実際の状況をよく知っています。その 情報を医師に伝えて治療に役立てるには、薬学的な観

第3回

 薬剤師が在宅医療でできること

全国薬剤師・在宅療養支援連絡会 会長 栃木県薬剤師会 会長 株式会社メディカルグリーン 代表取締役社長

大澤光司

連携と在宅医療

―薬剤師の今後の役割と課題―

2018_6_06-07 連携と在宅医療(責).indd 6 2018/05/17 9:13:26

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7 日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2018年6月号 点を持って情報を橋渡しする役割が重要だと考えます。

■これからの薬局に求められる4つの機能

 地域包括ケアシステムでは、専門職も含めて地域に 関わる人たちがそれぞれに持つ力を出し合い、医療や 介護の必要な人を支えることが求められます。薬局薬 剤師については、4つの機能が必要とされています (図)。在宅医療も、「チーム・アクセス」の1つに位置 付けられています。これまで薬局薬剤師は、「ラスト・ アクセス」とされる調剤の機能ばかりがクローズアッ プされてきました。調剤は相互作用のチェックや、後 発医薬品の使用によるコスト削減などの面で重要な機 能であることに変わりはないのですが、それ以外の薬 剤師の力が忘れられてしまっているように思います。  医療の「ファースト・アクセス」機能である、健康管 理や OTC 医薬品使用の助言などセルフメディケーシ ョン支援は、以前は薬局がかなり担っていました。か かりつけ薬剤師指導料などの要件として注目された地 域活動に当たる「ソーシャル・アクセス」でも、薬物乱 用防止、ドーピング防止を担うスポーツファーマシス ト、学校薬剤師など、さまざまな活躍の場があります。  ラスト・アクセスだけでなく、これらの機能をバラ ンスよく手がけることが、地域包括ケアシステムで求 められるこれからの薬局薬剤師の役割だと考えていま す。  2003年6月、宮崎市郊外に「地域のヘルスステー ション」をスローガンに開設しました。  薬局つばめファーマシーの特徴は、①クリーンルー ムがあり、輸液等の無菌調剤ができる、②在宅医療を 実施しており、通院困難な患者に薬剤師が訪問し薬学 的管理指導が行える、③ドライブスルーがあり、歩行 困難な患者や小児の患者、感染症等の患者に対応でき る、④相談室があり、インフルエンザ等感染症患者の 隔離・服薬指導、 プライバシーを 特に重視したい カウンセリング が必要な患者に 対応できる、⑤ OTC 医 薬 品 や 医療材料・衛生 材 料 の 販 売 を 行っている――。そのほか、車いす対応のトイレがあ り、バリアフリーの薬局を実現しています。  また、在宅医療に長年関わっているので、終末期の 緩和ケアや看取り、輸液、褥瘡、認知症などの服薬指 導の経験も豊富です。  超高齢化社会を迎える昨今ですが、地域住民が安心 して暮らせるように、地域のかかりつけとして今後も 取り組んで行きます。 代表取締役 萩田均司氏

超高齢化社会を迎えても安心して暮らせるように

在宅医療の経験活かし地域で充実したサービス提供

地域の元気を応援中!

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薬局つばめファーマシー(有限会社メディフェニックスコーポレーション)

(宮崎市) ●所在地:宮崎県宮崎市恒久 5073番地 ●設 立:2002年( 薬 局 つ ば め ファーマシー開局:2003年) ●店舗数:1店舗(ほかに有料 老人ホーム、居宅支援事業 所あり) ●従業員数:薬局6名(内、薬 剤師3名)、居宅介護支援事業所2名、ほかに介護職等28名 ● URL:http://www.phoenix-hd.com/ 有限会社メディフェニックスコーポレーション プロフィール ▲ 同社が運営する住宅型有料老人ホーム 「ケアヴィレッタ ナチュらいふ恒久」 かかりつけ 薬局・薬剤師機能 + 地域薬剤師会等に よる地域医療・包括 ケア体制の整備 セルフ メディケーション 健康支援業務 調剤業務 医療安全 適正使用 コスト適正化 地域活動 国民との協力・啓発 24時間・災害等体制 学校薬剤師・薬乱防止 在宅医療 在宅復帰・QOL確保 医療安全 コスト適正化 ファースト・アクセス ラスト・アクセス チーム・アクセス ソーシャル・アクセス 医療介護総合確保促進法 医療計画(地域医療構想) 介護保険事業(支援)計画 薬剤師職能の推進 健康情報拠点事業 在宅医療拠点事業  医薬品医療機器等法 第一条の六(国民の役割) 国民は、医薬品等を適正に使用 するとともに、これらの有効性 及び安全性に関する知識と理解 を深めるよう努めなければなら ない。  医療法 第6条の2第3項 「国民は、良質かつ適切な医療の効 率的な提供に資するよう、医療提供 施設相互間の機能の分担及び業務の 連携の重要性についての理解を深 め、医療提供施設の機能に応じ、医 療に関する選択を適切に行い、医療 を適切に受けるよう努めなければな らない。」 (「日本薬剤師会ホームページ」より) 図 薬局に求められる4つの機能 2018_6_06-07 連携と在宅医療(責).indd 7 2018/05/17 9:13:28

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6 日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2018年7月号

■2カ月に1回、多職種での定例会を開催

 在宅医療では多職種連携が欠かせません。互いの職 能を知り、いつでも相談できるような関係を他職種と 築ければ、現場での問題解決力もアップします。  当薬局がある栃木市では、「蔵の街コミュニティケ ア研究会(略称“こみけん”)」が多職種連携の場として 機能しています。“こみけん”は、介護保険制度がスタ ートした2000年4月に、医師、薬剤師、在宅介護相 談員、保健師、介護福祉関連専門学校講師、介護事業 者、工務店経営者、市職員の有志8人が発起人となっ て発足しました。  2カ月に1回の定例会では、外部講師や会員の各職 種による勉強会のほか、数年おきに市民フォーラムを 開催。車いすの試乗会や訪問入浴のデモンストレーシ ョンなどを交え、内容にも工夫を凝らしています。ま た、定例会の一環として、栃木県内の在宅医療・介護 関係者が一堂に会する「在宅ケアネットワーク・とち ぎ」にも毎年参加しています。  定例会の開催は、今年の6月で107回となりまし た。毎回50人程度が集まり、発足時は40人ほどだっ た会員も、今では近隣市町村からの登録も増え300 人を超えています。

■“こみけん”の3つのルール

 栃木市で多職種連携の会が早くに立ち上がったのは、 介護保険の準備をする中で、1人の市の職員が抱いた 疑問がきっかけでした。病院という1つの組織の中で は、医師も薬剤師も看護師も、院長の命令一下で動き ますが、在宅医療では各職種はそれぞれ違う組織に属 しています。介護分野ではケアマネジャーという調整 役も誕生していましたが、当時はまだ経験が乏しい状 況で、各専門職が足並みをそろえられるのか、制度を うまく回していくことができるのかが、彼には疑問だ ったといいます。  そして、何か仕組みを作らないと多職種間の連携が 取れないのではないかと考え、早くから在宅医療に取 り組んでいた太田秀樹氏(医療法人アスムス理事長)に 相談。2人でコンセプトを練り上げたうえで、医療・ 介護の関係職種が一通りそろうように、顔見知りに声 をかけたのが、“こみけん”の始まりでした。  会の名称には“コミュニティ”という言葉を入れ、 「地域に暮らすすべての人を巻き込んで、地域の福祉 力を高めることで幸せに生きられるコミュニティの実 現を目指す」ことを設立趣旨にしました。これも彼の 考えで、当時はその意図するところがよく分からなか ったのですが、地域包括ケアシステムが注目されるよ うになって、まさに“こみけん”が掲げたビジョンだと 気付きました。  “こみけん”ではルールを3つだけ設けています。結 果を求めずとにかく続けること、定例会の後には懇親 会を実施して親交を深めること、年齢や職業に関係な く『○○さん』と呼び合うことです。多職種で構成され る世話人会も2カ月に1回あるので、世話人は毎月1 回顔を合わせ、飲み会などで親交を深めています。そ の中で顔の見える関係が自然とでき、今では“腹”の見 える関係という人までいます。みんな気の置けない仲 間という感覚で、相談も気軽にできる関係です。

■他職種との連携で得られるメリット

 職種を問わず仲間ができることで、現場の問題解決 力は格段にアップします。以前に、知り合いの高齢男 性から、「しばらくの間、車いすを貸してくれないか」 と相談されたことがありました。奥さんが転んで足の 指の骨にひびが入ってしまい、松葉づえを使用してい るそうなのですが、「不安定で危ないから」というのです。  正式に車いすをレンタルするとなると福祉用具貸与 事業者と契約を交わすなど時間や手間がかかります。 そこで、“こみけん”の仲間の事業者に連絡し事情を話 したところ、「短期間でしょうから、無料で貸せるも のがあるかもしれない」と、倉庫の中から車いすを探

第4回

 多職種連携をどう作るか――栃木市の例から

全国薬剤師・在宅療養支援連絡会会長 栃木県薬剤師会会長 株式会社メディカルグリーン代表取締役社長

大澤光司

連携と在宅医療

―薬剤師の今後の役割と課題―

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7 日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2018年7月号 し出し、すぐに男性の家に届けてくれたのです。 あっという間の問題解決でした。他職種と有機的 に結びつくと、あうんの呼吸でこんなこともでき てしまうわけです。  こうした多職種連携の効果は、数字でも示され ました。自宅、老人ホームでの死亡割合を「地域 での看取り率」として市町村別に見ると(図)、県 内では栃木市が1番高く、自宅死の割合も2番目 に多かったのです。別の調査では、薬剤師の在宅 への関与率が高いという結果も出ていて、“こみ けん”の活動が地域包括ケアシステムの構築に寄 与できているのではないかと思っています。  在宅医療を手がける読者の皆さんにも、ぜひ多 職種連携に取り組むことをお勧めします。最近は行政 が連携の会などを主導していることも多いので、そう した集まりを探して参加してもいいでしょう。そうし た場がないのであれば、自分で作るという方法もあり ます。最初から大掛かりなことをしようとせず、顔見 知りのケアマネジャーや他職種に1、2人でもよいの で、「多職種の勉強会をやりませんか」などと相談して みるのです。最初は飲み会でもよいかもしれません。  このような形で始まった会は全国にいくつもありま す。最初は2、3人の集まりでも、続いて各職種1、 2人に声をかけていき、ネットワークのキーマンにな る人が見つかれば、一気に紹介が広がっていくはずです。  アクションを起こさなければ、何も進みません。ま ずは、できるところから行動してみてください。  けだなの薬局は、鹿児島市の北側に立地しており、 主に整形外科を中心に、地域住民の処方箋を受け付け ています。  以前、この場所で開業していた薬局をそのまま継承。 実質10年以上、この場所で住民の皆さまに医薬品を 供給しつつ、在宅業務にも携わってきました。  薬局内は、さまざまな雑貨で場を演出。小さなテー ブルで雑談できる スペースなどを作 り、地域のコミュ ニティとしても機 能できるような雰 囲気づくりを心掛 けています。  また、管理薬剤 師の濵田氏はスポーツファーマシストを取得しており、 地元サッカーチームのサポートや国体に向けてアンチ ドーピング活動を行っています。  他の患者さんに対応しているときや、地域活動など でどうしても対応できないこともありますので、薬剤 師をチームで支えるために、薬剤師以外でもできる仕 事はスタッフで振り分けています。  緊急時に薬剤師を補充できる仕組みも作り、地域の かかりつけ薬局を目指してがんばっています。

薬剤師以外のスタッフもチームで業務を振り分け

地域のコミュニティとして機能する薬局目指す

代表取締役 原崎 大作氏(左) 管理薬剤師 濵田知津子氏(右) 地域の元気を応援中!

薬局 File



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けだなの薬局(株式会社はらさきや)

(鹿児島市) ●本 社 所 在 地: 鹿 児 島 県 鹿 児 島 市 永吉2丁目35−13−201 ●設立:2016年 (けだなの薬局開局:2016年) ●店舗数:1店舗 ●従業員数:5名(内、薬剤師2名) 株式会社はらさきや プロフィール ▲けだなの薬局の外観 ▲けだなの薬局のスタッフ ※老人ホームには特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、有料老人ホーム、軽費老 人ホームが含まれる  (厚生労働省「在宅医療にかかる地域別データ集(平成26年)」を基に作成) 図 栃木県内での看取り率 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 (%) 自宅死の割合 老人ホーム死の割合 大田原市 那須塩原市 那須町 那須烏山市那珂川町 宇都宮市 真岡市益子町 茂木町市貝町芳賀町小山市下野市上三川町野木町栃木市 壬生町足利市佐野市 さくら市塩谷町 高根沢町日光市 鹿沼市 矢板市 2018_7_06-07 連携と在宅医療(責).indd 7 2018/06/15 10:02:48

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6 日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2018年11月号

■「患家に上がれない」には“連携”が効く

 今回は、在宅現場によくある問題を取り上げます。 訪問の最初の関門としてありがちなのは、「患者さん 宅に上がらせてもらえない」という問題です。こうし た場合には、多職種連携ができていると大きな助けに なります。  ケアマネジャーと連携が取れていれば、あらかじめ 患者さんや家族に、「薬が多くて大変だから、薬剤師 さんに話を聞いてもらうと助かると思いますよ」と、 訪問の意義を伝えてもらうことができます。歯科医と 連携したケースでは、「今日抜歯したので、出血がお さまっているか見てくれないか」と頼まれ、それを理 由に家に入れてもらったこともありました。  患者さんや家族は、薬剤師の仕事をよく理解してい ません。何の説明もないまま訪問すれば、薬剤師の専 門性や在宅医療の仕組みを知らない患者さんたちが 「何をしに来たのだろう」と訝しがるのは当然です。他 職種に間に入ってもらったり、連携関係にあることを 示したりすることは、患者さんたちに安心してもらう ために効果的なのです。他職種からの提案で始まった 在宅業務では、ファーストステップがスムーズなのも そのためです。  当薬局では、在宅業務の8割ほどが他職種の相談か ら始まっています。その多くは、「患者さんが薬を飲 めていないので見に来てほしい」といった、ケアマネ ジャーからの相談です。  主治医も、自宅での患者さんの実態に気付いていな いことがほとんどで、訪問する余裕がないことも少な くありません。そのため、ケアマネジャーなどから依 頼があると、薬剤師が一度患者さん宅を訪問し、状況 を観察して主治医に報告します。そのうえで、必要が あれば訪問指示を出してもらいます。こうした流れで 訪問に入ることが多いため、当薬局では主治医が訪問 診療をしていない段階で、薬剤師のみが訪問している ケースも少なくありません(参考資料:図)。

■期間限定訪問というオプションも

 ケアマネジャーからなぜ当薬局に相談が寄せられる のかといえば、前回書いたように、多職種が定期的に 顔を合わせる「蔵の街コミュニティケア研究会」でのつ ながりがあるほか、ケアマネジャー協会の研修会で薬 剤師の職能を講演する機会をいただいたことも影響し ていると思われます。さまざまな機会をとらえ、薬剤 師の職能を知ってもらうことが業務での相談につなが り、薬剤師が患者さんのプラスになる関わりができれ ば、その情報は地域に口コミで広がり、在宅の依頼は 増えていきます。  ただし、患者さんや家族から、訪問を断られること もあります。「お金がかかるから」というのもよく聞く 理由です。確かに訪問すれば、来局してもらうよりも 費用は数百円高くなります。訪問の必要性を感じてい ても、「生活に余裕がないから、来てもらうのは難し い」と言われれば、無理強いはできません。そうした 場合に持っておくと役立つのが「期間限定訪問」という オプションです。  1回目の訪問で患者さんの状況や生活環境を確認し、 服薬しやすくするための管理方法や剤形・薬剤の変更

第5回

 在宅現場での「困った」にどう対応するか

株式会社メディカルグリーン 代表取締役社長

大澤光司

連携と在宅医療

―薬剤師の今後の役割と課題―

A:医師の指示型 B:薬局提案型 C:多職種提案型 D:退院時カンファ型 医師・歯科医 師からの指示 薬剤師訪問 訪問の意義・目的説明 薬剤師が訪問して状況把握 ⇒薬剤師介入の必要性があると判断⇒患者に訪問の意義・目的説明 ずっと訪問することだけをイメージせず、計画性を持って期間限定で訪問することも一考 医師・歯科医師に情報提供 ⇒薬剤師の訪問の必要性報告⇒訪問指示を出してもらう 患者同意 訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指導)開始 情報の共有&問題点を相互認識 情報の共有&問題点を相互認識 薬局窓口で薬 剤師が疑問視 退院時に薬局が決定さ れる薬薬連携が重要と なる ケアマネ、訪問看護な ど多くの医療・介護職、 そして家族からの相談 (「日本薬剤師会ホームページ」より) 図  訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指導)開始に至る 4つのパターン 2018_11_06-07 連携と在宅医療(責).indd 6 2018/10/17 9:20:38

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7 日本ケミファ㈱発行[PHARMACY DIGEST]2018年11月号 などを医師に提案します。そして2回目の訪問で調整 した薬剤を持っていき、患者さんに説明します。その 方法でうまく服薬できているかを確認させてもらうた めに、3回目の訪問をします。  このように、「3回だけの訪問ならばどうですか」な どと期間を区切って提案してみると、受け入れてもら えることもあります。新たな問題が出てきたら、その ときに改めて訪問に入るというスタンスです。  経済的に考えても、訪問によって残薬や、服薬でき ていないために状態が安定せず薬が追加されているこ とが発見されれば、主治医にそれを報告することで処 方薬が減り、患者さんの自己負担も減らせます。3回 程度の訪問ならば、あっという間にその費用の元は取 れるはずです。こうした方法があることも、覚えてお くといいと思います。

■状態の安定した患者さんにできることは?

 何回も訪問していると、状態の安定している患者さ んでは説明することがなくなり、「何を話せばいいの か分からない」という声もしばしば聞きます。以前に 勉強会に招聘した在宅医は、「医師も同じ」と話してい ました。脈を取ったりはしているものの、医学的に話 すべきことはない。だから、その先生は世間話をして 帰ってくるそうです。  もちろんそれは、世間話でお茶を濁す、という意味で はありません。会話をするなかで、表情に元気がない、 普段とどことなく違うといった様子が感じられれば、 服薬状況や症状などを確認する糸口になります。その 先生によると、普段から患者さんの顔を見て話をして いるからこそ、小さな変化にも早く気付けるそうです。  真面目な人ほど毎回きちんと薬の説明をしなければ と気負いがちですが、同じ説明の繰り返しでは訪問の 意義が感じられないばかりか、患者さんの負担にもな りかねません。状態に変化がないときは世間話をしつ つ、「ご飯は美味しいですか」「夜はよく眠れています か」といった質問を織り交ぜて、「食事」「排泄」「睡眠」 「運動」「認知」という5領域の状態を確認できれば十 分でしょう。そうした日々のやり取りを続け、いざと いうときに迅速に対応できるように備えることが在宅 医療では大切なのだと思います。  動物たちが本来の輝きを魅せる「行動展示」でイノベ ーションを起こした旭山動物園でおなじみの北海道旭 川市。中央薬局は北の大地の真ん中で市内8店舗、創 業から39年の老舗保険薬局として地域の健康に寄り 添っています。  われわれ薬剤師を取り巻く日本の医療や介護、福祉 の環境は大きく変わろうとしています。旭川はその医 療のパラダイムシフトに適応すべく、さまざまな活動 が盛んに繰り広げられている地域です。そのような環 境の中で中央薬局では、外 来調剤はもちろん、古くか ら在宅ケアに携わり、疾病 の一次予防として検体測定 室の設置や口腔ケアにも取 り組みを拡げ、すべてのフ ェーズをサポートできる体制を整えています。また、 それぞれがすべての役割を担うのではなく、多職種と の連携同様、薬局間・薬局内で連携を取り合い、個性 を活かす薬局運営を行っています。  健康維持から看取りまで。人生の輝きを維持し、人 間本来の生き方・亡くなり方を「支えるイノベーショ ン」を起こし続ける保険薬局を目指しています。

健康維持から看取りまで

イノベーションを起こし続ける保険薬局に

株式会社中央薬局 旭川中央薬局 一般社団法人旭川薬剤師会 理事 広報部部長 あいうべ体操アドバイザー 長塚健太氏 地域の元気を応援中!

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- File.5-

旭川中央薬局(株式会社中央薬局)

(北海道旭川市) ●所在地:北海道旭川市金星町1丁目 2-17 ●設立:1980年(旭川中央薬局開局: 2000年) ●店舗数:8店舗 ●従業員数:41名(内、薬剤師16名) ● URL:http://www.chuo-pharm. co.jp/ 株式会社中央薬局 プロフィール ▲ モ ダ ン な 外 観 の 旭川中央薬局 ▲旭川中央薬局のスタッフ *「連携と在宅医療」は今号で最終回となります。次号より、大澤光司氏による新たな連載がスタートしますので、引き続きご期待ください。(編集部) 2018_11_06-07 連携と在宅医療(責).indd 7 2018/10/17 9:20:40

参照

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