NPOの市民講座 10・配布資料
プラごみ回収後のゆくえ
講師 石渡眞理子
2010 年(平成 22 年)9 月 11 日(土) 川口市立 中央ふれあい館 講座室 1 主催 NPO 法人 すこやか文化交流協会プラスチック資源ごみ
回収後のゆくえ
石渡眞理子
元東京大学大学院工学系研究科講師
私は、大学の工学部で長年働いてきました。その間にプラスチック廃 棄物の有効利用に関わってプラスチックの熱分解反応を研究していたこ とがあります。その一方で、家庭においては、主たる家事担当者(いわゆ る主婦)として、家庭から出るごみの処理にも携わってきました。 2008年4月から東京23区の多くの区でプラごみの分別収集が始まりまし た。私の住む区でも分別収集が始まりましたが、私は、この収集方法に 次に述べるような疑問を抱きました。そこで、インターネットその他を利用 して、分別回収されたプラごみがどのように処理されているかを調査しま した。今回は、この調査で分かったことをお話し、消費者としてプラごみ問 題にどのように取り組めば良いかを皆さんとともに考えたいと思います。
1 この調査をした理由
2 プラごみの分別収集で
私の抱いた疑問
資源として分別するプラごみ(資源用プラごみ)は種類の異
なるプラスチックの混合物である。水や汚れも含まれている。
このような「原料」をどのようにリサイクリングしているの
か?「再生品」はどのようなものなのか?
資源用プラごみから再生品を作るには、分別、洗浄、融解、
成型などの多くの工程が必要であり、エネルギー資源や水
資源などが大量に使われると推測できる。それでも資源保
護や環境負荷低減に役立っているのだろうか?
3-1
ごみの分類
ごみ 産業廃棄物 (産廃) 一般廃棄物 (一廃) 生活系一般廃棄物 事業系一般廃棄物 廃棄物の処理および清掃に関する法律で定められ た廃棄物:廃プラスチック(プラスチック製造過程で 副生する成型不能な樹脂など)、汚泥、動物の糞尿、 がれきなど3-2 一般廃棄物の内訳
(環境省2004年)
事業系,
33%
生活系
67%
総排出量 5059万トン3-3 一般廃棄物の分類
ごみ プラスチック製容器包装 ガラスびん アルミ缶、スチール缶 もえるごみ もえないごみ 紙製容器包装 再商品化義務の ある容器包装 粗大ごみ ペットボトル 焼却 埋め立て 紙バッグ、段ボール 再商品化の義務の 対象ではない (市場で取引可能) 使 用 済 み 容 器 包 装 そ の 他 の ご み3-4 家庭ごみの内訳(容積比)
(環境省、2008年)
。 紙類 13% プラスチック 40%(容器 包装の約 70%) ガラス 1% 金属 2% 容器包装 以外 (44%) 容器包装 (56%)3-5 プラごみ(プラ廃)の年間排出量
(2007年)
プラスチック生産量
(2007年)
1465万トン
一般廃棄物
502万トン
産業廃棄物
492万トン
4-3 容器包装リサイクル法のしくみ
特定事業者(商品の製造・輸入・販売など) 消費者(使用後分別・廃棄) 資源用プラごみ 市区町村(収集、再分別、保管) 再商品化事業者(再商品化、製品販売) 指定法人 (日本容器包装リサ イクル協会) 再商品化費用支払い 引き取り委託など 入札による再商品化事業者の選定 委託費用支払い5 ごみの処理方法
リサイクリング ・マテリアルリサイクリング:元の材料の性質を残している。ガラ ス、金属などのリサイクリングに適している ・ケミカルリサイクリング:化学反応(熱分解、加水分解、触媒を 使った反応など)を利用する方法。 ・サーマルリサイクリング(熱回収):燃やして発生する熱を利用 する方法(燃やせば、炭酸ガス、水などになり、元にはもどらない ので、厳密にはリサイクリングと言えない)。 廃棄 ・単純焼却 ・埋め立て6-1 プラごみの
マテリアルリサイクリングとは
廃プラスチックを溶融・溶解後、成型加工して
新しいプラスチック製品をつくる技術
6-2 プラごみのマテリアルリサイクリングによる再生品
「プラスチックリサイクルの基礎知識2009」17ページ (社団法人プラスチック処理促進協会)
6-3 プラごみのマテリアルリサイクルの流れ
(例)
(草川紀久「良くわかるプラスチックリサイクル」工業調査会、2001より) プラごみ 目視による異物 除去(金属、ガラ スなどの除去) 一次破砕 2次破砕 洗浄、比重選別 脱水、乾燥 溶融 ペレット、再生品6-4
資源用プラごみ
の
マテリアルリサイクリングの問題点
これまでマテリアルリサイクリングに供されるプラごみは大部分、 産業系廃プラスチックであった。その理由は、「種類が単一である・ よごれや異物がない・供給量が多く安定している」などである。 一般系プラごみでマテリアルリサイクリングに適しているものは、 ペットボトルや発泡スチロールなどである。 家庭で分別収集された資源用プラごみがマテリアルリサイクリング に供される割合は低い。その理由は「資源用プラごみにはさまざま な種類のプラスチックの混合物であり、溶融や溶解後の成型加工が うまくいかない」「よごれや異物も混じっており、そのため、分別 や洗浄などの多くの工程が必要でエネルギー資源や水資源の消費も 増える。またそれにともなって環境負荷も発生する」などである。6-5
資源用
プラごみ分別基準適合物の
成分割合(例)
(日本容器包装リサイクル協会調べ、2008年)
PE, 27.00% PP, 18.90% PS, 17.80% PET, 13.90% PVC, 4.90% その他, 3.10% 水、Ash, 14.40% PE:ポリエチレン、PP:ポリプロピレン、PS:ポリスチレン、 PET:ポリエチレングリコールテレフタレート、PVC:ポリ塩化ビニル 自治体や調査の時期によって割合は異なる
6-6 再商品化事業者による
資源用プラごみ
落札量の内訳(合計68万トン)
(2009年データ、容器包装リサイクル協会HPより)
マテリアルリ サイクリング, 57% 油化, 2% 高炉還元 化剤, 6% コークス 炉化学原 料化, 24% 合成ガス化, 11% 再商品化率は 5-60%。7
資源用
プラごみの
ケミカルリサイクリング
7-1 プラごみの
ケミカルリサイクリングとは
熱や触媒によって熱分解などの化学変化を起こさせ、モ
ノマー(プラスチックの鎖の輪にあたるもの)や化学工
業原料などを得る方法。以下のような方法がある。
• モノマー化
• 油化
• 高炉還元剤化
• コークス炉化学原料化
• 合成ガス化
7-2 モノマー化とその問題点
• プラスチックの鎖を端から一つずつ外すとモノマーがで
きるはずである。モノマーを得るには、酸素のない状態
で熱をかけて鎖を切る方法(熱分解)があるが、多くの
場合モノマーができにくい。
• (注:「熱分解」は酸素存在下の反応である「燃焼」と
は異なる)。
7-3 プラスチックの化学構造の例
ポリエチレン(PE)の場合
[ ]に囲まれた部分がプラスチックの鎖の一つの輪に当たる。
ポリエチレンの原料はエチレンモノマーである:CH2=CH2 C:炭素、 H:水素
7-4 プラスチック熱分解生成物の例
(
モノマーの収率が低い)
ポリプロピレンの熱分解生成物
Mariko Ishiwatari, Journal of Polymer Science:Polymer Letters Edition, 22, 83-88 (1984)