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〈法〉概念 利用統計を見る

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(1)

〈法〉概念

著者

沼田 一郎

雑誌名

国際哲学研究

4

ページ

21-22

発行年

2015-03-31

URL

http://doi.org/10.34428/00007516

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

21 国際哲学研究4号 2015

第 2 ユニット報告(2)

〈法〉概 念

沼田 一郎

 第 2 ユニットでは、〈法〉概念を課題のひとつとしてきた。国家間の条約から家族内での約束事まで、〈法〉には 様々なレベルがあることは周知であるし、それぞれのレベルに成文法と不文法が存在している。また、〈法〉の現 象形態は時代や地域あるいは文化によって多様を極めているが、それらをあえて〈法〉という言葉で括りうると考 えると、そこには「比較」という手法を適用することが可能となる。この多様な〈法〉はそれぞれ対等な地位を有 しているはずだが、現実の国家法の多くは西欧由来の法体系をその基礎としているのである。たとえば日本の民法 典がドイツやフランスなどから直接的な影響を受けていることは、その成立過程を学べばただちに了解されること である。  ところが、西欧近代以外の地域や時代にはそれぞれ固有の〈法〉体系が存在したし、現存してもいる。イスラー ム文化圏、インド文化圏、中国文化圏は古い起源を持つ法体系すなわち「伝統法」が存在し、それらがもっぱらア ジアに偏在していることから「アジア法」と称されることもある。しかし、「アジア」の概念規定それ自体が多大 の困難をはらんでいるし、西洋法もしくはその下位分類としての「英米法」や「大陸法」と同列に扱い、同じ切り 口で扱うことが妥当かどうかは自明のことではないであろう。  本ユニット研究員の沼田はインドの古代法を研究課題としている。資料は古代インド語で記された「ダルマ・ シャーストラ(dharmaśāstra)」すなわち「ダルマの指南書」と総称される文献資料が中心であるが、「ダルマ (dharma)」の訳語としては「法」が最も一般的である。これは仏教においては極めて重要な概念であり、仏教文 献の中国語訳に際して採用されたものと思われるが、現代日本語においても「法則」「法律」「説法」「法事」のよ うに、様々に異なる意味において用いられうるものであって、それを的確かつ簡潔に定義することは困難である。  「ダルマ」はダルマ・シャーストラの文脈においても多様な意味を持つが、現代語の「法律」あるいは law、 droit、Gesetz などに相当する概念としても用いられる。「ダルマ・シャーストラ」を「法典」と邦訳するのは必ず しも適切ではないが、この文献群は中世以降になると「法律」を扱うことを専らとするようになるのも事実であ る。沼田は、インドの伝統的な〈法〉概念はどのようなものであり、それは dharma の歴史的な意味の変遷とどの ように関わるのかということを研究課題としている。そこで、世界の様々な法系から〈法〉概念を取り出して、共 通理解の可能性を探るべく 2012 年度に第 1 回のシンポジウム「〈法〉概念の時間と空間-〈法〉の多様性とその可 能性を探る」を企画・実施した。当日の報告順に現代中国(鈴木賢・北海道大学)、古代インド(沼田一郎・東洋 大学)、イスラーム(堀井聡江・桜美林大学)、葛西康徳(古代ギリシア・東京大学)、仏教(堀内俊郎・東洋大学) がパネリストとして報告し、その後フロアも含めてディスカッションを行った。  このシンポジウムは、多様な〈法〉概念を提示して相互理解を深める機会となったが、上述のように今日の国家 法は西洋法が基礎をなしていることがほとんどである。したがって、これら伝統法と西洋法との融合あるいは相克 を問題とする必要が感じられた。続く 2013 年度には、そのような観点から「〈法〉の移転と変容」をテーマとして 再び〈法〉のシンポジウムを実施した。ここでは、長谷川晃(法のクレオール・北海道大学)、岡孝(日本民法・ 学習院大学)、浅野宜之(インド近代法・大阪大谷大学)、桑原尚子(マレーシアのイスラーム法・高知短期大学)、 シマ・アヴラモヴィッチ(セルビア法・ベオグラード大学)、二宮正人氏(ブラジル法・サンパウロ大学)が報告 した。「異法融合」の基礎理論である長谷川報告を基調報告とし、他はいずれも非西欧社会における近代化と法体 系の確立という共通した問題を含んでいる。(以上 2 回のシンポジウムの成果は、それぞれ、『国際哲学研究』別冊 2、4 として刊行された)

(3)

22 全体シンポジウム「国際化とは何をすることなのか~東洋大学国際哲学研究センターの「これまでとこれから」~」  以上のように、第 2 ユニットでは〈法〉を主題とした共同研究を主催した。〈法〉は普遍的であると同時に、そ の現れ方や機能は多様である。その点では比較研究の格好の素材であることは疑い得ないし、比較の方法論をそこ から取り出すこともできるであろう。また、異なる法系の比較研究であるかぎり、それがドメスティックな研究で はありえないが、しかしそれがそのまま「国際的」な研究であるとも言い切れない。第 2 回のシンポジウムでは外 国の研究者を招くことができたが、我々は「国際」の内実を常に問わねばならないのではないだろうか。

参照

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