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ステンレス鋼薄板を用いた耐震パネルの構造性能 (産学連携プロジェクト研究報告) 利用統計を見る

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(1)

ステンレス鋼薄板を用いた耐震パネルの構造性能 (

産学連携プロジェクト研究報告)

著者名(日)

松下 吉男, 星野 真志

雑誌名

工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告

35

ページ

36-40

発行年

2013

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006170/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

ステンレス鋼薄板を用いた耐震パネルの構造性能

松下 吉男*星野 真志**

         1.はじめに  本研究は,平成23年度の産学連携プロジェクト研究 の報告であるが、平成22年度に行った研究と関連して いるため両者を合わせて報告する。  阪神・淡路大震災および東日本大震災で多くの社殿の 被害が報告されている。拝殿の周りには壁が少なく,ぬ れ縁との間には建具が配置され開口を大きくしている。 このような伝統的木造建物を耐震補強する方法として. ステンレス鋼薄板を用いた耐震パネルを考案した。せん 断による弾性座屈が発生した薄板構造は.その後張力場 が形成されて安定した変形特性を示すことが知られてい る、これらの特徴を1形断面のウェブに適用した研究P や耐震パネルに適用した研究2)などが報告されている。 ウェブの場合は最終的にはフランジの耐力で決まる場合 が多く,耐震パネルでは低降伏点鋼を用いてエネルギー 吸収型として用いる場合が多い.薄板の構造性能は周辺 の固定度によって左右されるため.木造のフレームとの 境界条件を考慮し,フレームの耐力によって耐震パネル の性能を低下させない工法が必要である、          2.研究の目的  事前に行った耐震診断で,極めて稀に発生する地震に 対して倒壊と判定された神社の耐震補強を計画した。耐 震補強に先立ち,実物大耐震パネルを製作し構造性能実 験を行なった。本報告では,平成22年に行った研究内 容と,ステンレス耐震パネルを木造建築物の耐震補強に 用いるときの課題を検証し,その対策を検討した.平成 22年度の研究成果を都内の神社の耐震補強に用い,そ の躯体工事が完了した日の午後東北地方太平洋沖地震が 発生し,目前で補強効果が実証される結果となった。耐 震パネルを木造の柱梁に直接接合した場合,木材が繊維 方向に裂ける現象が発生した、平成23年度は木材の表 面を補強した場合の構造性能を検証した。  本報告では,これら…連の研究を報告する。対象とし た神社を写真1に示す。          3.耐震診断  耐震診断の前に,小屋組みや床下及び基礎の劣化診断 と,各部材寸法の測定および木材の強度と含水量を測定 した。詳細は省略するが,柱の傾斜測定では層間変形角

鱗.

一k,...

〔・鞠竃籔

写真1 対象とした神社

にして最大1/166(rad)の傾斜が確認された。損傷限界 および安全限界は図12)に示す様に,損傷限界を1/120 (rad),安全限界を1/30(rad)とした。耐震診断の結果,稀 に発生する地震に対して中破,極めて稀に発生する地震 に対して倒壊の判定が得られた。この結果.X, Yの両 方向ともに耐震補強が必要となり,耐震パネルを用いて 補強することとなった。     稀に発生する地震時極めて稀に発生する地震時

柊こ〔こ蚤

1/15 r(圃 図1 神戸地震での被害例に基づく、伝統的木造軸組みの   構造特性と建物の変形       4.実験 4.1 試験体  試験体の外寸は,写真1の神社に取り付けることを 前提に,高さ(h)×せい(d)×厚さ(t)を2240× 1250×L2㎜とした。パネルの素材はステンレス鋼薄 板(SUS304)で厚さ1.2mmとし,隅角部に火打ち板を

取り付けた。パネル周辺のリブを2L−40×40×5㎜

(SUS304)とし,このリブでステンレスパネルを挟み M8ボルト(SUS304)を150㎜ピッチで配しこれらを固 定した。火打ち板は厚さ5㎜のステンレスパネル(2辺 が200mmの直角二等辺三角形)を用い,リブに溶接し M8ボルト6本でステンレスパネルと一体化した, 亭理工学部 建築学科 “亭 兼d工業株式会社 東洋大学工業技術研究所報告

一36一

(3)

松下 吉男 星野 真志

 試験体は3体で,図3に示すように上下を鉄骨梁に固 定し,両端がピン接合された柱に座屈止めを施したステ ンレスパネルをA試験体とした/:一方.木造フレーム とリブをM9,長さ100㎜のコーチボルトで固定させた 試験体をB試験体とした,その内,上下の梁の表面に 厚さO.27mmのステンレスシートを接着して,木材を補強 した試験体をB−2とし,補強しない試験体をB−1とした一 木造フレームは,梁が120×210mm,柱が120×120㎜ である。木材に取り付けたパネルと火打ち材の詳細を図 2に示す。図中の斜線部分がステンレスシートで補強し た部分である。 梁(米松’r20x210) 1  ガイドー ◇       会   |:‘li       一

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 0 160 60 54  26 240 図3 実験装置および加力方法 4.3 材料強度  実験に用いた12㎜のステンレスパネル(SUS304)と 0.27㎜のステンレスシートの機械的性質を表1に示す。 両者とも0.1%offset値を降伏点とした。εmaxはσu

時点のひずみ度を示す。Eはヤング係数YRは降伏比

を示す. 表1 素材の機械的性質 370 1245 1990 375  t imm)   ぴ iN/mm2)   ⑳ iN/mm2)   E iN/mm2) YR ε髄x i%) ステンレスパネル 1.2 276 755 1.93×105 0.37 55 ステンレスシート 027 823 930 4.3x105 0.89 12 図2 試験体の概要と火打ち部の詳細 4.2実験方法  実験装置および加力方法を図3に示す。上下のL形 鋼は150㎜ピッチに配したM8ボルトで上下のH形梁に 取り付けた。柱(H−175×175×7.5×11㎜)は上下の 梁とピン節で接合し,試験体の変形を妨げないものとし た。また,アムスラーに固定したH形鋼をレールとして, 上梁に取り付けたガイドによって転倒を防止した。一方, 耐震パネルの縦リブの面外座屈を防止するため,柱中間 部2か所にL形鋼を設置した。試験体への加力は,上 梁を水平方向に正負漸増繰り返しとして載荷した。繰り 返しサイクルは,上下梁の内法高さに対してせん断変形 角γを.1/1000,1/500.1/300,1/250,1/200.1/150. 1/100,1/75,1/50,1/40(rad)とした。パネル中央の 対角軸の両面にストレインゲージを貼付した. 4.4 弾性座屈耐力の予測  板要素のせん断座屈応力度(τcr)は(1)式1’で表 わされ.弾性せん断座屈耐力は(2)式で表す。 Tcr一κ P2‘三・)(tw)2 (1) ρer=τ。rtd (2)  この時の.幅厚比の上限値は、文献4)のプレートガー ダーのスチフナのないときの値を参照し,

d/・.−」/拓とした(ろ。・パネル薄板の降

伏点,単位:N・ノ㎜i)。  板要素が上下梁に固定され.側面は単純支持とすると 座屈係数は5.34となる1}。ステンレスの降伏点がoffset 値のため, は素材の比例限界点とし,(1),(2)式から 計算したパネルの弾性せん断座屈耐力は, ニ12.6kNと なる,

(4)

4.5 荷重一せん断変形関係  各試験体の荷重(Q)一せん断変形角関係を図4の(a) ∼(c)に示す. Z IOO  80 a (a)A試験体 ( 30 z 工 ︶o 20 10 ・・ . . .5 一1 一 0.5 1 1 γ(x10 2信d) ・20 (b)B−1試験体 40 30 20 10 T 一一 「 5 一ユ 一 α5 ユ 1.5   2 2 一20 γ(x10’2信d) 一30 一40       (c)B−2試験体 図4 荷重(Q)一せん断変形角(γ)履歴曲線 5 5  ステンレスパネル(A試験体)の最大せん断耐力は 10L5kNで,安定した履歴カーブを示している。プレー トが面外座屈を起こすため,正負の転換点では滑り現象 が生じている、パネルは150㎜ピッチでM8ボルトで周 辺のリブに固定されているが,引張によってボルトのパ ネルに支圧力が生じ最終的にはパネルが破断する寸前ま で延びていた。  一方,木材のフレームに取り付けたパネル実験では, パネルの引張に伴って下梁木材がコーチボルトの先端付 近から繊維に沿って破断した(B−1試験体)。履歴カー ブは正負で異なったループを描き不安定な形状を示して いる。このため木材の割裂破壊を防止するために木材の 表面を補強して同様の実験を行った(B−2試験体)。そ の結果,無補強のB−1に比べて安定したループを示して いるが,せん断耐力はそれほど上昇していない。その原 因として,木材の表面にアクリル樹脂で接着し補強した ステンレスシートが木材と完全には一体化しておらず, 木材が繊維方向に破断するとともに,コーチボルトが木 材から抜け出る現象がみられた、木材を補強してもコー チボルトの抜け出しを防止できない限りパネル本体の耐 力を引き出すことは困難である。 4.6 各ループ時のパネル変形  A試験体とB−2試験体の各ループ時での変形状況を写 真2と写真3に示す。写真2では.せん断弾性座屈の増 加に伴って斜め方向に明確な張力場(斜め方向の引張を 負担する部分)が生じ,正側(上段)と負側(下段)で その形状がはっきり確認された。  一方.写真3ではパネルのせん断弾性座屈後張力場が 形成されているが,早期に耐力低下が生じ,せん断変形 と共に木材の割裂破壊が進行した。せん断変形が正負で 反転する際パネルが圧縮から引張へ,引張から圧縮へ と変化するため音が発生する.地震時の動的な現象では ポコポコという連続音が発生するc

図図図図一獲

’図日闘

      ノ 、 ループ A’”slt 写真2 A試験体の変形 東洋大学工業技術研究所報告

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松下 吉男 星野 真志

工 負 ∬ξ口耐震パネル 園鋼板パネル ロマツト基礎 図5 パネル取り付け状況 写真3 B−2試験体の変形 写真4 耐震パネル隅角部取り付け状況          5.耐震補強 5.1 建物概要  対象建物は.写真1に示した神社で,桁行方向(X方向) 92m(3スパン),梁間方向(Y方向)5.6rn(2スパン) の拝殿と,桁行方向(X方向)3.6m(1スパン),梁間 方向(Y方向)3、6m(2スパン)の幣殿から構成された 平屋建物である.柱・梁の材質はヒノキであり小屋組み の曲り梁はマツである、屋根は銅板葺きであり,内壁は 落とし込みの杉板張りである。基礎は断面が280×400 ∼600㎜の無筋コンクリート布基礎である。 5.2 補強概要  耐震パネルは,外観を損ねないように,既設両開き建 具の片側を固定とし,その建具の裏に設置した。また. 各耐震パネルが効果を発揮するために,既設長押と飾り 梁を一体の梁となるようにし,欄間部分に各耐震パネル を繋ぐ梁材として鋼板パネルを設置した.耐震パネルは, 床下にも設置し,軸力を処理するためのマット基礎を設 置した(図5)。また,実際に取り付けた写真を写真4 に示す, 5.3 耐震補強後の耐震診断  補強後の耐震診断の結果を図6に示す/t図6より,稀 に発生する地震に対して無被害,極めて稀に発生する地 震に対しても無被害という判定が得られた、耐震補強前 の耐震診断結果より,各方向とも診断時の値を上回る結 果となった、 Q(k卜}  100 60 485 40 こ発注する地震i時 2。 準て稀に難する地麟 14.5      1/120    1/60   .18 049  0      1      2      3 図6 耐震診断結果 4      5 γ(xlO−Zrad)

(6)

       6.結び  ステンレス鋼薄板を用いた耐震パネルの構造性能につ いて,特にパネルの境界条件を変動因子として実験を 行った。また.これらのパネルを実在の神社の耐震補強 として設置した時の耐震診断結果を検証した.その結果 以下の結果が得られたL 1)神社の耐震診断では,極めて稀に発生する地震に対  して倒壊の判定結果が出た。 2)実物大実験の結果,1.2㎜厚のステンレスパネルは  100kN以上の耐力を示した。 3)木材に直接取り付けた場合,リブと木材を繋ぐコー  チボルトの先端付近から木材が割裂する現象が確認さ  れた。 4)木材の表面をステンレスシートで補強しても、コー  トボルトが抜け出る現象が生じた。 5)既存神社の耐震補強ではマット基礎を増設しアン  ヵ一ボルトで緊結した。 6)補強後の耐震診断では十分な耐力が確認された。 参考文献 D松下吉男,加藤 勉、安楽秀獄:ステンレス薄肉1形断面梁の  終局耐力と変形,構造工学論文集VoL43B、 pp329−336.  1997.3 2)木造軸組構法建物の耐震設計マニュアル編集委員会「伝統構法  を生かす木造耐震設計マニュアルー限界耐力計算による耐震  設計・耐震補強設計法、学芸出版社、2004.04 3)日本建築学会:鋼構造座屈設計指針,2009、ag 3版 4)日本建築学会:鋼構造限界状態設計指針・同解説.2010,第3版 東洋大学工業技術研究所報告

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参照

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