現代信託法における不動産投資信託
著者名(日)
浅野 裕司
雑誌名
東洋法学
巻
45
号
1
ページ
1-15
発行年
2001-09-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000406/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja︻論 説︼
現代信託法における不動産投資信託
浅
野
裕
司
はじめに
東洋法学
不動産投資信託︵お巴①ω鼠$冒話曾BΦ耳賃諾け︶は、米国においても別段目新しいものではなく、一九六〇年 以来、REIT︵以下、リートと略称︶と呼ばれ存在してきた。しかし、新形態をとりながら近年、その利用数 は倍増を重ねている。わが国も平成一二年一一月末の改正投資信託法の施行により活用されはじめた。わが国の 場合、証券投資信託がこれまで主流であり、一般的に信託法理についての認識も低く、法制度に関して無理解も あって実際面での遅れもあった。ドイツにおける不動産投資信託は、一九五七年の投資会社法︵○Φω①冒 菩R 内8評巴き一譜畠8亀零9津窪︶により、証券投資と不動産投資信託に関する規定がなされている。ドイツにおけ る不動産投資ファンドに認められている投資対象物件も、賃貸用住宅、商業用不動産、開発中の土地、譲渡可能1
現代信託法における不動産投資信託 借地権などであり、開発中の土地などに投資できるのはファンドの資産総額の二〇パーセントが限度となってい る。持分証券︵受益証券︶の発行と引替えに投資会社に払込まれた払込金およびそれにより購入された財産が特 別財産となるが、対象物は契約約款に準拠して、投資会社の所有もしくは持分権者の共同所有となる︵六条一項︶。 こうしたドイツにおける不動産投資信託は、EU諸国に対する関連もあり、その運用と法制度は、大陸法系の民 法を擁するわが国にとって今後の法改正に際しては示唆に富むところとなろう。 平成一二年一一月末に施行された改正投資信託法により解禁されたわが国の不動産投資信託は、日本版REI Tと称されるように米国を参考にしている。そこで、米国のREITを中心に、その信託法理と運用の実際に触 れ、今後のわが国の運用面での法的問題も指摘して素描を試みてみたい。
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米国の不動産投資信託の概要 不動産投資信託とは、譲渡可能な受益証券を発行して、一般市民の資金を動員することにより、主として不動 産に投資し、その収益を受益者たる一般投資家に還元する信託をいう。 米国において不動産投資信託法︵寄巴評富冨ぎ奉曾日窪け↓≡曾︾9と呼ばれているのは、一九五四年の内 国歳入法︵H再oヨ巴因Φ<9器○08︶の追加形式である八五六条から八五八条の規定の通称であり、一九六一年以 降施行されている。その実質的内容は、後述する米国で過去において発達し運用されていたビジネス・トラスト東洋法学
︵−V ︵どω冒8ωけ霊8の再現ほかならず、目新しいものではない。 不動産投資信託の主要な特徴は、受託者とは独立した不動産管理人︵凶民8窪8筥8導轟90同︶ないし管理会社 ︵ヨ碧禮o目Φ導8日冨昌︶により実際上の運営がなされるために受動信託︵B霧貯霞器け︶であること、従ってま た、いわゆる課税上の導体理論︵8注9け島8曙︶により、一定の要件を備えれば、法人税免除の特典が付与され ている点にある。ビジネス・トラストは、8日ヨ9一四≦賃⊆雪または匡霧鍔魯話簿房霞仁磐とも呼ばれているが、 信託宣言︵留9貰&80津旨8すなわち財産所有者がその財産を受益者のために信託を設定し自らその信託の ︵2︶ 受託者︵q諾8Φ︶となる旨の宣言で明示信託︵窪冥のωωけ≡ωけ︶設定の一方法である。 略称REITは、会社形態または前述のビジネス・トラストとして設立されるが、信託関連の法規と比較した 場合、会社規制の法規の統一制の問題もあり、多くが会社形態で設立される傾向にある。会社型のリートは株式 を発行し、信託型のリートは受益権証券を発行している。リートは、税務面での考慮がなされており、連邦税制 上は課税が免除となっている。州税制上も一定の要件を備えていれば課税されない。リートの収益については、 リートの株主に分配され、利益の配分を受けた者が納税することになる。税金面では、リートはミューチュアル・ ︵3V ファンドと同等の資格が付与されており、一定のガイドラインに沿ったものであることが要件とされる。例えば、 少なくとも資産の七五パーセントが不動産、ほかのリートの持分、国債、現金からなること。収入の最低九〇パー セントが不動産投資、配当、受取利息、キャピタルゲインからのものであること、などである。 リートは、小口投資家に対して開かれているものであり、百名以上により所有され、課税年度後半六カ月間は3
現代信託法における不動産投資信託 その持分の五〇パーセント以上が五名以下で保有されることがあってはならないという規定もある。リートは、 ︵4︶ 株式を発行し、ときには普通株式のほか、優先株式、転換社債を発行することもある。 リートの形態には、匡o旨彊鵯に投資するもの、不動産物件に直接投資するもの、モーゲージ・不動産物件双方 に投資するもの、といった三つの形態がある。モーゲージ・リートの大部分は稼働物件のオーナーに対してのみ 資金を貸付けている。このリートヘの投資は、現時点での高配当を目的とするものであり、将来の価格上昇を期 待しての投機ではない。株価が上昇する局面は金利が下落する場合のみに限られ、金利が上昇すればこのリ:ト の株価は下落する。これが、このリートに投資する場合の金利リスクである。金利上昇リスクを相殺するため、 多くのこのリートはその資金のかなりの部分を変動金利型モーゲージに投資している。これにより市場金利変動 に対応可能となり金利リスクは低減されることになる。 エクイティ・リートは、不動産所有権の持分を購入するものである。このリートの大半は、オフィスビルなど 特定の種類の物件に投資を集中したりするが、投資による利益はさまざまである。このリートは、物件の賃料を 増額するなどの方法によりキャッシュフローを増加させることが可能なため、モーゲージ・リートほどの金利は ないとされる。 ︵5︶ ハイブリッド・リートは、モーゲージと物件そのものの両方に投資を行うものである。 リートは、設立や運用に関して多くの基準や規制があるが、それらの規則を守れば社債や株式を発行できると ともに借入れも行って資金調達することができる。リ:トには、適格要件と要件違反に対する罰則など厳しい条
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︵6︶ 件が付されている。適格要件には、組織要件、資産要件、所得要件、配当要件、などがある。 一九九二年に税制優遇措置によりリートは活性化がもたらされた。現在ではリートの多くはUPREIT︵アッ ︵7V プリート︶ととして形成されている。UPREITは、従来のものとその仕組みが異なっている。UPREIT ︵qヨ酵①一冨勺碧9R筈首閑田↓︵アンブレラ・パートナーシップ・リート︶とは、リートに不動産を現物出資した 元所有者が負担すべきキャピタルゲイン課税を将来に繰り延べることができる仕組みである。リートは、一般的 に株式を発行して集めた投資家の資金と金融機関からの融資などで不動産を購入し、その運用益を投資家に配当 するが、UPREITは、リートが直接不動産を購入するのではなく、不動産のオーナーとパートナーシップを ︵8︶ 構築して所有するという形態をとる。 換言すると、不動産所有者が不動産をパートナーシップ︵○冨轟江畠勺巽9R筈昼○℃︶に現物出資することに なるため、本来の売却であれば、そこで課税されるキャピタルゲイン課税はなく、将来、もともとのオーナーが その持分権︵OPユニット︶をリート株に転化するか、現金化した場合に、はじめて課税される。不動産が実質 上、無税で株式に転換されて、あとはリートの上場された株式として売却益を期待することができる状態となる。 リートは、そのOPを支配したまま適格要件を充足し、株式を公募︵ぎ置巴勺&一80融R冒ひq﹂勺○︶して資金を 調達する。そして、この資金の中から当該OP分を債務として計上する。OPユニットには、通常三年程度経過 しないと株式に転換できないという制約があるが、その間に物件の収益性が改善され、リートの株価が上昇すれ ば、実物不動産をそのままで売却するよりも大きい資金調達ができ、また、現物出資者は、自らの判断でキャピ5
現代信託法における不動産投資信託 ︵9︶ タルゲインの課税時期も調整できるというメリットがある。 UPREITにも、問題点がある。それは潜在的に利害衝突の可能性を有している。当初の不動産所有者が譲 渡後の資産においても低い課税べースを維持できるのに対し、一般の投資家は高い課税べースでそれを購入する ことになる。リートが売却されるような事態になったとき、二つの主体の課税べースが異なっているために、一 ︵−o︶ 般の投資家と当初の不動産所有者の利害が衝突することもあり得る。 前述したリートの要件について、法人税との関係で手続上の問題に触れておきたい。リートの条件は、まず、 一人以上の受託者などにより経営され、持分権が譲渡可能な持分で表され、課税上の内国法人であり、百名以上 の持分権者がいることが必要である。さらに、一般の金融機関もしくは保険会社など、また、内国歳入法︵冒冨毒巴 勾Φ<9器Oo8お罐V上の需お9巴げo窪渥8B冨昌はリートになることができないという制限がある︵八五 六条︵a︶項︵但し、一定の例外がある。同項︵6︶号、同条︵K︶項︶。リートは、個人の場合と同様な暦年を課税年度と ︵11︶ していることが必要である︵八五九条︵a︶項︶。リートとなるためには、その総資産の七五パーセント以上を不動産 または現金もしくはそれに準ずる資産として保有し︵八五六条︵c︶項︵4︶号︵A︶︶。かつ有価証券が総資産の二五 ︵1 2V パーセント以上にならないという要件を満たさなければならない︵同項︵4︶号︵B︶︶。この場合も、一つの発行者の 有価証券がリートの総資産の五パーセントを超えてはならず、一つの発行者の発行済議決権付株式の一〇パーセ ント以上を保有してはならないという制限がある。リートの総所有の七五パーセント以上は、不動産に対する受 動的な投資または不動産窯a茜認①に対する投資から得られていなければならない︵八五六条︵c︶項︵3︶号︶。ここ
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で、適格とされるのは、不動産からの家賃収入、不動産の処分から得た所得、不動産モーゲージ債権からの受取 利子などである。リートの総所得の九五パーセントは七五パーセントに適格な所得のほか、配当、利子、長期に 保有する有価証券などの処分からの所得で構成されていなければならないとされている︵同項︵2︶号︶。リートに 関しては、課税所得の九五パーセントの分配が適格要件として必要である︵八五七条︵a︶項︶ほか、暦年末までに、 通常所得の八五パーセントおよびキャピタルゲインの九五パーセントならびに前年度に未分配の通常所得とキャ ピタルゲインの一〇〇パーセントを分配していない場合には、その残高に対してやはり四パーセントの付加税が 課せられる︵四九八一条︶。リートの要件遵守のため、一九九七年改正法は、それまでリートが稼得した所得の持 分権者レベルにおける課税の確保から、財務省規則に従って持分権者を確認していない年度分についてはリート 扱いしないとされていたのを削除し、確認しない年度はリートに罰則金︵一導R日Φ象簿Φωき&o昌︶が課せられる ︵13︶ こととされた︵八五七条︵f︶項︶。 リートは、米国税制と金利の影響を受けながらも進化を遂げ、個人投資家から機関投資家、さらには公的資金 まで取り込み成長を続け、二〇〇〇年末には約千四百億ドルの市場規模になり、運用対象としてはなくてはなら ないものとなった。しかしながら、リートに投資する際の最大のリスクは、高すぎる価格がつくことである。も ︵14︶ しも、わが国で、米国のリートを参考にする場合、厳しい税制上の規制と詳細な情報開示の義務が必要である。 ︵1︶ 海原文雄・砂田卓士編﹁英米信託法辞典﹂︵金融財政事情研究会・平成八年四月︶一八三頁。7
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海原文雄・砂田卓士編、前掲書、二七頁。海原文雄﹁英米信託法概論﹂︵有信堂、一九九八年︶二七、二二六、二 六三、二九二頁。なお、海原教授の御研究の論文の主なものに次に掲げる参照論文があり、ここに感謝と敬意を表し ておきたい。ビジネストラストの団体性と課税の問題︵復刊信託六三号二三頁以下︶、ビジネストラスト︵アメリカ 商事法ハンドブック三五八頁以下︶、ビジネストラスト︵国際商事法務二巻五号三頁以下︶、アメリカの不動産投資信 託︵日本法学三五巻四号五九頁以下︶、アメリカにおける土地信託︵復刊信託七七号三頁以下、同七八号一四頁以下︶、 ビジネストラストと土地信託︵信託論叢二二〇頁以下︶、日米土地信託法の対比︵四宮古希記念﹁民法・信託法理論 の展開﹂四三七頁以下︶、アメリカの土地信託再考︵信託一五二号四一頁以下︶。 片桐謙﹁アメリカのモーゲージ金融﹂︵日本経済評論社、一九九五年四月︶二二四頁以下。Uo轟匡ωΦ凝旨四P .S鳴薦◎ミミ§ミ無き鵯S壽肉蹄鳴黛導鳴肉国寡.﹄≧鳴ミ肉ミ織きむ肉鳴ミ肉G。聾黛斜、、肉ミ討ミ︵冒昌仁鋤曙H8“︶’ ジョンA・マラニー・民間都市開発推進機構REIT研究会訳﹁REIT﹂︵金融財政事情研究会、平成一一年五 月︶九頁以下。冒ぎ︾﹂≦ε訂諾ざ.、国田↓ωき鼠姦轟鷺O津ω&島8巴8富9営<8けBΦ導霞拐什ρ、、冒﹃ミ一一2俸 ωo昌ρぎo●一8刈● ジョンA・マラニi、前掲書、 一〇ー一二頁。 岡内幸策﹁不動産証券化と不動産ファンド﹂︵日本経済新聞社、二〇〇一年一月︶一七三頁。 岡内幸策、前掲書、一七四頁、ジョンA・マラニー、前掲書、二〇頁。℃圧9ω●ω畠Rお﹃㌦.寒鴨舅霞Sのミミ鑓 導驚妻、こミ鳴ミ黛Oミ§軸爲黛b魯ミ9駐&、§醤\聲、、肉鳴ミ肉。う罫黛鳴肉鳴蔑魅ミ︵ミ凶日Φび一〇8︶”ωoω8P名曽瑛ΦP Oo目﹃鋤旨帥い讐β○昌け 川口有一郎﹁不動産投資信託﹂︵ダイヤモンド社、一一〇〇一年四月︶四四∼四六頁。 川口、前掲書、四七頁、岡内、前掲書、一七四頁。ω○ξoΦ“Zg D江自巴>ωω8冨江go胤菊o巴国ω鼠8冒<Φ曾含Φ導↓歪馨ω● ω鋤瑛賓く38貫\の負§N蔑N、。う◎瀞、誉博Oぎ肺禽袋、さ醤試蹄の肉§88“肉騨ミき食Oo§§oミ肉肉N↓の融§罫ミ︸、、 山ミ頴§、的︵︾⊆讐ω“ρ一。8︶● 佐藤英明﹁信託と課税﹂︵弘文堂、平成ご一年五月︶六〇頁。 佐藤、前掲書、六一頁。 佐藤、前掲書、七八頁。8
︵14︶ なお、不動産投資信託に関する文献は数多く、堂園昇平﹁不動産投資信託﹂︵信託法研究第一七号、信託法学会、 一九九三年︶八一頁以下などがあり、また、アメリカの各州の信託法の研究については、中野正俊監修﹁アメリカ信 託法﹂︵有信堂、日本信託銀行信託法研究会、一九九三年八月︶がある。さらに、各国における投資信託制度の比較 研究について、落合誠一編著﹁比較投資信託法制研究﹂︵有斐閣、一九九六年六月︶がある。同書の第五章﹁ドイツ 法制﹂は新井誠教授の優れた論文であり、わが法制の今後に有益な示唆を与えている。 二 わが国における不動産投資信託
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わが国は、二〇〇〇年二月三〇日に改正投資信託が施行され、﹁不動産投資信託﹂が解禁された。平成一二年 度に、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律などの改正︵平成二一法九七Vにより、投資者から資金 を集めて市場で専門家が管理・運用する集団投資の仕組みについて、資金調達者の選択肢を拡大し投資者に対す る多様な商品の提供を可能とする観点から﹁特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律︵題名を﹁資産 の流動化に関する法律﹂に改正︶および﹁証券投資信託及び投資法人に関する法律﹂︵題名を﹁投資信託及び投資 法人に関する法律﹂に改正︶について、幅広い資産を対象とするとともに適切な投資者保護のための枠組みを整 備するための措置を講じている。こうした法制度の背景には、流動性に乏しかった不動産市場が生まれ変わると の期待もあり、不動産市場の活性化は日本経済の足かせとなっている金融機関の不良債権を解きほぐす契機とな るとされるだけに、不動産投資信託が株式や債権と並ぶ金融商品として根付くかどうか注目されている。9
現代信託法における不動産投資信託 不動産投資信託は、信託財産を不動産に対する投資として運用することを目的とする信託である。 改正投資信託法は、改正前の主として有価証券という文言が運用資産に制限を加えていたのに対して、運用対 象が拡大して﹁主として有価証券等﹂と﹁等﹂が加わることにより、不動産投資信託の解禁ということになった。 これまでは、ファンド資産の五〇パーセント超が有価証券でなければならなかったが、不動産を含め特定資産は ファンド全体の資産価値の五〇パーセント超であればよいことになり、個々の運用資産も五〇パーセントを超え る必要はなく、政令で指定される資産合計が五〇パーセント超であればよいことになった。また、施行規則では、 知的財産権なども対象となった。 改正投資信託法は、そのなかで﹁投資法人﹂制をとっている︵六一条∼二二一二条︶。この投資法人は会社型であり、 投資家から集めた資金などで不動産を購入し、そこから得られた賃料や売却益を投資家に配当する目的のために だけ組織される。その投資法人が発行する株式が一般に日本版REIT株と称されるものである。 改正投資信託法は、基本として、委託者指図型投資信託︵三条∼四九条︶、委託者非指図型投資信託︵四九条の二 ー四九条の一二︶、投資法人︵六一条∼二二一二条︶の類型を規定している。 このうち、委託者非指図型は、改正投資信託法で新設されたもので、指図型と異なり、たとえば、信託銀行が 直接複数の投資家と信託契約を締結し、信託銀行独自の判断で資産運用を行うものである。 不動産投資信託は、一般的な会社型以外にも信託型︵契約型︶と呼ばれる株式投資信託に似た仕組みのものも ある。日本版REITとして期待されている会社型投資信託は、米国の主流となっているUPREITのような 10
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現物出資によるREIT株との交換はできない。 不動産投資信託は、投資法人制度が重要であり、それを中心として考える必要がある。投資法人は、不動産や 有価証券などを購入し、その不動産などを特定資産として有価証券を発行する。少額資金で不動産運用が可能と なり証券取引法上の有価証券であれば、その流通性は増大する。投資法人が発行する投資証券は、無額面である が上場する場合は一口五万円以上︵純資産額べース︶となる。 投資法人の設立は、法人ではあるがその性格は主として特定資産に投資運用することを目的とする社団、とな り、社団の性格を維持するには、収益︵配当可能所得︶の九〇パーセント以上を投資家に還元することが条件と なる。投資法人を設立するには、株式会社設立の発起人と同じく設立企画人が必要である。設立企画人は、法人・ 個人を問わないが、投資法人が主として投資対象とする資産と同種の資産を運用対象とする投資信託委託業者、 その他、政令で定めるものでなければならない。設立企画人が複数いる場合は、そのうちの一名がその資格該当 者でなければならない。 投資法人の設立要件として、投資法人の設立時の出資総額は一億円以上︵投資法人が常時保持する最低純資産 額は五千万円以上︶でなければならない。投資法人の発行証券︵無額面︶である投資口︵投資証券︶は、オープ ンエンド型の場合は投資口のみの発行で、クローズドエンド型の場合は投資口のほか、投資法人債の発行が認め られる。投資法人債を発行する場合は一般の社債管理会社にあたる投資法人債管理会社を定め、債権の管理を委 託しなければならない。投資法人は、規約︵投資信託では約款に相当︶に定めておけば借入れを行うことが可能 11現代信託法における不動産投資信託 である。投資法人の業務開始については一八七条により金融庁の登録を受け登録投資法人にならなければならな い。投資法人は、一般の株主にあたる投資主が投資主総会を開催して投資法人の運営方針などを検査する。法人 役員は、執行役員一名以上、監督役員は執行役員のほか一名以上が必要であり、これらの役員は欠格事由にあた らないほか、利害関係人がその職に就任することも原則禁止されている。 投資法人の実際上の運営は、投資信託委託業者が行うことになり、主として不動産を運用する場合は不動産投 資顧問業や宅建業法上の取引一任代理の認可取得などが必要である。 改正投資信託法は、投資家保護の観点から行為準則、利益相反取引に関する情報開示、企業統治について強化・ 整備されたとしている。投資信託委託業者などは、情報開示の対象となる取引がある場合、総理府令で定める当 該取引に係る事項を記載した書面を、当該投資信託財産および当該信託財産︵当該投資法人および当該特定資産︶ と同種の資産を投資対象とする他の投資信託財産︵他の投資法人︶に係るすべての受益者に対して交付すること が義務づけられている。 改正投資信託法は、米国では既に一般的なREIT自身による自家運用を認めていないので、実際の不動産の 選定や投資判断などは投資信託委託業者が行う。また、投資法人が取得した不動産に係る権利書などは資産保管 会社が保管する。 投資法人の株式にあたる投資証券は、東京証券取引所の不動産投資信託市場などに上場され一般の株式と同様 に売買される。そのため上場基準は、ω総資産の七五パーセント以上を不動産および不動産関連商品で運用して 12
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いること、ω安定運用対象︵賃料収入が現に生じている不動産で一年以内に売却する見込みのないもの︶などが 総資産額の五〇パーセント以上、㈹総資産五〇億円以上、ω純資産一〇億円以上、㈲一口当りの純資産は五万円 以上、㈲上場時は四千口以上、投資口を保有する投資家は千人以上、としている。また、上場後も年二回の決算 短信や運用の価格に関する情報などを開示しなければならない。 改正投資信託法で新設された委託者非指図型投資信託は、前述したように信託型となっているが、これは信託 銀行のために法制化されたものであり、信託銀行など信託会社が自ら有価証券としての信託受益権である受益証 ︹−︶ 券を発行し、募集した資金で自らの判断で不動産や有価証券に投資・運用を行うことになる。 不動産投資信託には、資産下落などリスクが伴う。預金などに比べ利回りが高いのはリスクが伴うためである。 不動産投資には、地価の下落をはじめ、有力テナントの退去による賃貸収入の減少や災害リスクとして地震や火 災などさまざまなリスクがある。会社型の場合、上場後の価格は、思惑を含めてさまざまな要因を反映する需要 と供給の関係によって変動するため、普通の株式ほどではないにしても、ある程度の価格下落リスクがあること も考慮する必要がある.なかでも、不動産に係る法規制が変わることによるリスクの発生は、税法、建築規制、 条例などがあり、工場の設置、土壌汚染など環境の変化に伴うリスクもある。株式などよりは小さいミドルリス ク・ミドルリターンの商品と位置づけられているため、ややもするとリスク面が無視され不動産の流動化のみが 期待されるところに問題がある。 13現代信託法における不動産投資信託 ︵1︶ 岡内幸策、前掲書、一九八頁以下、川口有一郎、前掲書、五八頁以下、堂園昇平﹁不動産投資信託﹂信託法研究第 一七号八九頁以下、拙稿﹁財産形成計画と投資信託法﹂東洋法学第四三巻一号、同﹁信託制度の現代的機能﹂東洋法 学第四四巻第一号。
おわりに
不動産投資信託は、不動産市場の活性化につながり、わが国経済の足かせとなっている金融機関の不良債権を 解きほぐすきっかけとなると期待されている。しかし、不良債権問題はまったく別の問題であり、不良債権問題 は一応終りをむかえていると考えられる。 不動産投資信託の定着には、より投資家の保護などを考慮して法整備が必要である。優良な不動産を適正価格 で取得するなど、投資家の立場に立った運用が大前提となる。信託法二二条との関連も委託者非指図型投資信託 ではよく考慮しなければならない。会社型では当面、運用会社は不動産会社などが出資して設立されているので、 親会社関係の不動産への投資が多くなる可能性がある。投資家に判断材料を提供するとともに、親会社の意向重 視の疑念を生じないためにも、投資物件などに関する情報公開の徹底が必須である。また、不動産投資信託の販 売業者は、金融商品販売法に基づいてリスクを説明する義務がある。 今回の改正投資信託法による不動産投資信託は、運用面で米国のREITを思想に入れているが、資格要件や 14成立要件など米国のほうが厳しく、またUPREITが米国の主流であるのに対し、わが国は法制上無理がある。 そこで、今後、ドイツにおける投資信託および不動産投資信託を考慮︵参照文献はω壁けい置奉暮日9眞①ωΦ貫 丙○ヨ目Φ旨貰墜BOΦωの9まR内巷一琶目一躍畠①ωΦ一一旨蝉坤窪目αN⊆日O①ωの旨尋段α窪くR鼠Φσ壁ω販巳R 冒<8雷旨亀﹂零Nψ。捺O費一。q﹄.司警誓R。譲‘U器閑8洋αRぎ<①卑目窪庶9αω一〇逡,︶してわが国の投資信 託法をさらに改正していく必要がある。最後に、恩師水島廣雄先生の御健康の御快復の一日も早きことを祈念し、 学恩に感謝を表したい。