子 ど も が 主 体 的 に 課 題 に 取 り 組 む こ と が で き る 発 問 の 工 夫 高度学校教育実践専攻 教員養成特別コース 橋 本 高 志 1.研究の動機 この研究に取り組むきっかけは 1年次 の 12月に行った「道徳・一まいの新聞」 である。この授業実践を行ったあとにプ ロトコル分析を行うと,授業時間におい て教師の発話がほとんどを占めるという 結果になった。私が実践したい授業は, 教師が多くを語ることで授業が展開され ていくものではなく,子どもが自ら課題 を持ち,自ら取り組むことができる学習 形態であるO そのためには子どもからさ まざまな視点からの意見を引き出さなく てはいけない。子どもが主体となって考 えを高めていくためには発問の役割が大 きいと考えている0)授業の中で教師が発 する言葉は子どもにとって大きな要素で ある。発問の質を向上させることは授業 力の向上や子ども理解にもつながる。子 どもの生活の経験などを関連させながら 子どもへの問し、かけを工夫すると授業に 取り組む意欲も変わってくる。授業が子 どもにとっで効果的なものとするために は,発問という要素は重要で、あるととら えた。
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発聞を研究するにあたって 国語辞典によると,発問とは「問いを 発すること」とある。では質的にどうと 実 習 責 任 教 員 山 田 芳 明 実 習 指 導 教 員 木 下 光 一 実 習 指 導 教 員 藤 原 伸 彦 らえるかということは 1年次の授業実践 を基に,聞いは次のように分類されると 考えてきた。 -質問=問いに対じて答えが限定される 聞いのこと ・発問=問いに対して答えが複数ある聞 いのこと 自身の授業実践では質問に対して子ど もは答えられることはできていたが,発 問に対しではなかなか答えを述べること ができない光景があった。そのことから 発聞についての授業改善に取り組んで、い きたいと考えていた。その発問の質的分 類について,カントは「試問式方法は, 対話教授法であるか,問答教授法のいず れかである。」と述べているo (カント, 1969, p.411) ・対話教授法…生徒たちの理性に問い質 す方法 ・問答教授法…生徒たちの記憶力に問い 質す方法』 こ こ で 対 話 教 授 法 に 定 義 さ れ て い る 「理性J'とは,生活の中で、培ってきた考 え方や判断力もこの中に含まれると私は 解釈している。 また,大西は発問の中でも「ゆれる発問」 「大きな発問Jr
動かない発問」と分類さ れることについて言及している。(大西,1988) これらの文献を参考にして本研究 では,発聞を 「子どもがそれぞれ考え,個々の意見を 持ち,それを表現できる間し、かけ」とし た。 上記で示した発聞について各授業実践 における有用性を次の尺度で判断するこ とにした。 -適切…間し、かけに対してねらいに近づ く考えを表現することができる。 -不適切・・・問し、かけに対してねらいに近 づく考えを表現することができない。 問いかけに対して教師のねらいに対し て遠い反応を子どもが示したとき,それ は不適切な発問である。教師がねらいに 近づくための方向性を示す手助けとなる 発聞が授業を行う上で重要となってくる。 その方向性を子どもが把握できるような 発聞によって,子どもはねらいに近づく ことができる考えを持つことができると 考える。 3.授業実践および課題と改善策 大学院 2年次のインターンシッフ。実習 にて,理科・道徳、・国語の 3つの授業実 践を行った結果,さまざまな課題が見つ かった。たとえば次のような課題が見つ かった。 -怒意性のある発聞が見られた0 .発聞につながりがない。 -教師の発聞が漠然としていて,指示し ている内容が明確で、はない。 怒、意性のある発問は授業実践を行った 3つの授業すべてにおいて見られた。教 師の怒意性のある発聞によって教師主導 で授業が展開されているように見受けら れた。しかし,怒意性のある発聞によっ て子どもの考えが教師のねらいに近づく ことが出来ているため,その点からいえ ば怒意性のある発聞は適切な発聞に分類 される。 次に,発聞につながりが見られない場 面は理科の授業で見られた。「じゃあ」と いう言葉で発聞を組み立てた結果,子ど もの思考の流れに即した発問にはならず, 子どもがねらいに近づいている様子は見 られなかった。これは授業の流れから見 てあまり適切ではなく,授業には流れが あるということを改めて把握できた。こ のように,授業を行う上での適切な発聞 が構成する要素は,授業の流れの中での 関係性も含まれることがわかった。 教師の発聞が漠然としていて,指示し ている内容が明確で、はない場面は国語の 授業実践で見られた。教師の発問が漠然 としていると,子どもからの反応が見ら れず,沈黙することがプロトコル分析か ら明らかになった。発問のあいまいさに よって子どもの思考の方向性が見えなく なっているようであった。教師の意図を 伝えるためには「簡潔さ・子どもにあっ た言葉を使う・明快さ」の 3つが重要で あると考える。「イ可を答えるのかJ
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イ可を 考えるのか」をしっかり子どもに提示す ることが重要で、ある。 ここでは 3つの要素について例を挙げ たが,これらも含めたさまざまな課題か ら,改善に向けての 11の項目を設定した。改善に向けての
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の項目 視点[1J
教師の発聞がクラス全体を考えることができているか。 lつの発問に対して, l人が応答した際 jその応答に対してどんな考えを持ったかを子どもたちに聞き, 深められるようにする。 視 点[2J子ども主体の授業の構成になっているか。また時間通りに授業を進めるため には,おおよその時間で考えてほしいことを区切って,それに即した発問構成や 想定される子どもたちの反応を考えて行う。 視 点 [3J言っていることが前と後では反対のことを言わないようにする。 視 点[4J問し1かけの対象が発表者個人だけでなく,他の子どもに対しての間し1かけを しているか。 視 点 [5J 教師が考えてほしい内容に近付けるために,ヨ子、意性を含んだ発聞かどうか考 える。 視 点 [6J子どもが発した授業に必要な発言,あまり必要でない発言に対しての対応を 適切にする。 視 点[7J こま切れな発問をしないようにする。 視 点 [8J必要性のない発聞をして,子どもの思考を妨げないようにする。 視 点 [9J 授業の内容・目標と関連がないことについてオウム返しをしないようにする。 視 点 [10J 発問の内容を明確にし,子どもが理解しやすいようにする。 視 点[11]子どもの意見を引き出しながら授業を進め,子どもと教材の距離が適切なも のを扱うようにする。 4. 改善策をふまえた授業実践と考察 前項で示した 11の項目をふまえて「道 徳、・黄熱病とのたたかい」の授業実践を 行った。そしてその結果,次のような改 善された点が見つかった。r
(1) 1つ の 発 聞 か ら 子 ど も の 意 見 が 多 数出ている。また教師もクラス全体を意 識した問し、かけができている」r
(2)子 ど も の 言 葉 を 引 用 し て 授 業 が 展 開できているため,子ども主体の授業と なっている」r
(3)段 階 的 な 発 問 を 組 み 立 て る こ と に よって子どもの思考に無理がなく授業が 展開されている」r
(4)~発表してくださし、』という明確な 指示をして発表を促すと子どもがスムー ズに発表することができていた」r
(5)導 入 で 社 会 科 と の 関 連 や 学 級 文 庫 で野口英世と触れ合っていることを再確 認させることで,子どもと教材の距離は 適切なものとして扱うことができた」 しかし次のような課題も同時に浮かび 上がってきた。r
(1)教師が用いた『そうやねえ』とい う言葉がけには予定調和のニュアンスが 受け取られ,教師主導のイメージを受け た」r
(2)二者択一の発聞をすると,し、かに も教師の意図が見えた発問となった」 この授業実践を振り返って,不必要な 言い回しが多い,発表する人数が限られ ているということも明らかになった。改 善に向けての 11 の項目は有効で、あった が,まだまだ改善の余地が残されている ようであるO 次の授業で「理科・電磁気のはたらき」において授業実践を行った。そして次の ような改善された点が見つかった。