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[A Study of Ethnobotanical Culture : The Case of Tai People in Xishuangbanna, Yunnan]

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東 南 ア ジア研 究 35巻3号 1997年12月

雲南 タイ族 にお け る植物 文化

- 西双 版網 の村 か

ら-郭

春 *

A St

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TheCas

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nXi

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huangbanna,Yunnan

GuoYanchun*

InYunnan,ⅩishuangbannahastropicalforestasItsmainform ofvegetationas95% oftheland ismountainouswithonly5% comprisingbasins. Thereare13ethnicgroupsco-residingthere. Inthelonghistoryofecologicaladaptation.theseethnicgroupstransformedtheenvlrOnment andcreatedagreatvarletyOfbotanicalHcultures.H ThispaperfocusesontheTa主ethnlCgroup livingin thebasins,and explicatestherealitiesofTaiethnobotanicalculturebased on field work.

TherealitiesandtechniquesofTaiethnobotanicalculturecanbesummarizedasfollows: First.how Taipeopleutilizetrees,bamboosandrattansastimber. Herespecialattention ispaldtothetechniquesinpreventionagalnStputrefactionandinsects. Moreover,theother commonusesofbamboosandrattansarealsoconsldered.

Secondly,classificatlOnOfplantsisconsidered, Taipeopleclassifyplantsbasedonshape and utility. According to this system,all kinds of plants receive a name. This folk classlficationishandeddownfrom generationtogeneration.

Thethird variantisthesplCePlantsandwoodyvegetables.whichareusedin Ta主food. ThecommonsplCeplantsarearrangedinto5typesbaseduponthetlSefulpartofaplant,which includetherootstock,bark.leaves,flowers and fruits. Allspiceplantsdiscussed hereare consideredfortheirecologicalpropertiesanduses. While,thewoodyvegetablesarearranged into4typesbasedonyoungleaves (includesshoots),flowers(includesbuds),pithand fruit. andtheircookinglSalsodiscussed.

The fourth factor concer・ns the cultivation oftimber trees.spice Plants and woody vegetables. Taipeople cultivate plants because they want to use them primarlly as a permanentresource・

Thefifth factorconcernstheplantswhich areconnected with theTalpeOple'sreliglOn (Buddhism). Theseparticularplantsareprotectedbythevillagers. Ontheotherhand,the plantsalsofurnishagoodnaturalenvironmentforthevillagers・

In conclusion,the study throws new lightupon the culturaトecologlCalrealities ofTa主 ethnobotanicalculture. Therealitiesshow thatTaipeople上lseparticularplantsafterlearning thecharacteristicsoftheseplantsandtheirgrowingconditlOnS. Keyplantsystem supportsthe basisofthevillager,'slivelihood. Furthermore.thecultivationandproteet10nOfwlldplantsare boundupwlththeIdeaofusingtheplantsindefinitely. Inaword,Taipeoplehaveasound understandingoftheirnaturalenvironmentand/oradeeprespectforit.

*京 都 大 学 大 学 院 人 間 ・環 境 学 研 究 科 ;GraduateSchoolofHumanandEnvlrOnmentalStudies,Kyoto University,46Shimoadaehi-cho.Yoshida,Sakyo-ku.Kyoto606101,Japan

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東南 アジア研 究 35巻3号

はじめに

西双版納 で は近年約40年 間 に森林面積が大幅 に減少 してお り, このいわば環境 問題- の対策 が 緊急 の課 題 とな って い る。今 後 の西双版納 にお ける 自然保護 や持 続 的 な発展 を考 え る とき に,最 も重要 になるテーマ は, この地域 にお いて従来,人 と自然 との間 に培 われて きた固有 の 関係 を復活 させ るこ とであ る。 これ を現実 の もの とす るため には まず,少数民族 の人 々の伝統 的文化 を掘 り起 こす作業が必要 となる。少数民族 の人 々は従 来, 自然 と深 く関係 しなが ら生 き て きた。 人 と自然 の両者 は相互 に影響 を及 ぼ しなが ら,その関係 を徐 々に変化 させ て い くが, 西双版約 の人 々は,その営 みの中で 自然 を改造 しなが らも同時 に保全 して きた。 この 自然 と人 間 との相互作用 の中で少数民族 固有の文化 が また形成 されてい った とい える。 この ような関係 は1950年代 まで に西双版納 に広 く見 られていた。数十年後の今 日,人 と自然 との相互依存 関係 は相対 的 に弱 め られたが,少数民族 の人 々は未 だに この 自然 との関係 を強 く 維持 してい る。 このため,少数民族 の伝統 的文化 を掘 り起 こす こ とは,少数民族 を取 り巻 く自 然 環境 が ます ます悪化 してい く情 勢下 で人 と自然 の関係 の修復 に大 きな意義 を もっ こ ととな る。 以上 の問題意識 の もと,本論 で は古 くか ら西双版約 に住 む タイ族 を取 り上 げ, タイ族 と自然 との関係 を掘 り起 こす ことにす る。 タイ族 は,西双版納 の 自然 の中で も特 に森林 と深 く結 びつ いて きた。人 々は森林 あ るい は植物 に関 して様 々な知識 を蓄積 してお り, これ らの知識 が タイ 族 の生活 と発展 な らびに, 自然環境 の変化 に大 きな役割 を果 た した こ とは明 白であ る。本論文 で は, この よ うな知識 の中で も,特 に タイ族が もつ植物 に関す る知識 を取 り出 して, その知識 の内実や,役割 , さらには環境保全 に どの ような意義 を もつ のか につ いて検討す る。 また, こ れ を明 らか にす るこ とに よ り, それが人間 と環境 との調和 及 び農村 の持続 的発展 との関係 に及 ぼす役割 につ いて検討 したい。

調査 は,景 洪 県の劫 竿 (Menghang,Ganglangbaと も呼 ばれ る) と劫 海県 の劫 混 (Menghun) 郷 鼻緬 (Manmian)村 で行 った。調査期 間 は1995年 の 7月 か ら 9月 までの 3カ月 間及 び1996年 10月か ら11月 までの 2カ月間で あ る。 デ ー タは現地での生態調査 及 び資源利用 に関す る聴取 り に よって得 た。

樹木について

タイ族 の生活 の中で も,樹木 との関わ りの 中に最 も多種多様 な植物文化 が見 られ る。 その中 で も,建材用 の樹 木が一番大切 に されてい る。 西双版約 は高温高湿 であ るため,材木が腐敗 し 490

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郭 :雲 南 タ イ族 にお け る植 物 文化 やす い。 また, シ ロア リな どの害 虫 も多 く,材 木 の虫 食 いが ひ どい。 この ため, 人 々 は材 木 の 耐 用期 間 をで きるだ け長 くす る よ うに技 術 的 な工 夫 を して きた。 また, タイ族 は伝 統 的 に簡単 な工 具 を使 い,伐採 も加 工 も山刀 と斧 しか用 い ない。 さ らに, これ らの工 具 で も加 工 が たやす い樹 木 が選 択 され る。 具 体 的 な技 術 は以 下 の通 りで あ る。 1.樹木材 を分類 して使 う タイ族 は樹「木 を主 に建 材 用 に使 う。 そ れ以外 に,工 具 と家具 用 に も用 い る。 西双 版納 で は, 材 木 は防腐 と防虫 の特 性 を強 く要 求 され, タイ族 は樹 木 を防腐 ・防 虫効果 の強 さに よ り,経験 的 に分類 して, 用途 別 に利 用 す る。 この観 点 か ら,樹 木 は次 の 四種 類 に分 け られ る。 (1) 特 級 材 特 級 材 は腐敗 に強 く, 同時 に虫 食 い に も強 い。 また,土 に埋 め た り, 強 い 日照 や高 い湿気 の もとにお かれ た りして も, 変形 した り裂 けた り しな い。 それ に加 えて,樹 幹 は まっす ぐで,過 当 な太 さを もつ 。 特級 材 は建材 と して, 多 くは屋外 の柱 や杭 に使 用 され る。 それ以 外 に,棉 , 冒, 家具 や農具 な どに も使 わ れ る。 特 級 材 木 には表 1に示 した十 数種 類 が あ る。 (2)上 質 材 上 質材 は,特 級 材 ほ ど腐 敗 に対 して強 くな く, 虫 食 い に も弱 い。 この ため,室 内の梁 ,柱 , 角板 ,板 ,桁 な どに使 用 され る。 上 質材 木 の常 用樹 種 を ま とめ る と表 2の よ うに な る。 表1 特級材 の種類 村 び との呼 び名 学 名 malXIXle malWalWen gexilie gemalyOngyO malmen maisalang malmOZhan maimueifei mueihan malSuO malpOna muelgan malSuOXln malar maishan Acaciacatechu (Linn.f)w llld. AlblZiaodorattssima (Llnn.f.)Benth. CassiaslameaLlnn.

ChukrasiatabularisA.Juss CordlafurcataJohnst

Dalbergtafuscapierret,ar.enneandrlaZouetLiu Dalbergiaobtusifolia (Baker)Praln

Erwla`masPectabillS (DC.)planeh.exMast

GarugaflortbundaDecne.1,ar.gamblai(KingexSmith)Kalkm GmellnaarboreaRoxb.

MesuaferreaLinn.

MltragynadilWSifolta (W all.exG.Don)Havil PremnaszemaoensisPei

S_vzygium szemaoel15eMerr.etPerry TectoIW grandt'sLlnn.∫.

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東 南 ア ジ ア研 究 35巻 3号 表2 上質材 の種類 村 び との呼 び名 学 名 maifan muelguOliang muelguObian maizhonglong maidiuleng maidiulang maifei malgegel malpaO malpaOXing malmO maimlgai malgeleng malgeShalong malmuelnlaO zhangbateng malgailiang maimufei maituoluo maileng maimueiha maiha malyOmgrOng malyOng maihu maizhapo

BischofiajavanicaBl. CastanopsishystrixA.DC. CastanopsismekongemsisA.Camus cinnamomumPathmoxylum (Jack)Nees cratoxyloncochinchin

e

nsis(Lour.)Bl.

cratoxylonfo7mOSumback)Dyersubsp.pruniflorum(Kurz)Gogelin

Duabangag71andiflwa (Roxb.etDC.)walp

Dysoxylum binecteriferum (Roxb.)Hook.f.exBedd Homalium laoticum Gagnep.

Homalium laoticum Gagnep.var..glabretum C.Y.Wu L.agestroemiatαmentOSaPresI

Litseaglutinosa (Lour.)C.B.Rob.

Metadinatrichotoma (Zoll.etMor.)Bakn.i. MonLSmaCrOuraMiq.

Nephelium chryseumBL

paramicheliabaillα相ii(Pierre)Hu

pometiatom entosa (Bl.)Teysm.etBinn.

Pterospermum lanceaefoliam Roxb.

SchimawallichiiChoisg TarennasylvistrisHutch

Terminaliabellirica (Gaertn.)Roxb.

TerminaliamyriocarPaHeurcketMuell.Arg. ToonaciliateRoem.

ToonamicrocarPa (C.DC.)Harms TremaangustifoliaBl.

vitexquinata (Lour.)Mill_

表3 -般材木 の樹木 村 び との呼 び名 学 名 malnamna gebahao maifanke maidingbie malgedong malgang malnlu malmuelmu mueibaishang maidong gemalgal maiheng muelgan 492

AilanthusfordiiNooteboom

Alangium chinensis(Lour.)Harms Albizialucidior(Steud)I.Nielsen AIstoniascholaris(Linn.)R.Br.

AnthocePhaluschinensis(Lam.)Rich.exW alp. AphanamixisgnndifoliaBl.

BombaxceibaLinn.

choerosPondiasaxillaris(Roxb)Burtt.etHill EhretiatsangiiJohnst

Macarangadenticulata (Bl.)Muell.Arg. MallotusPhiliPPinensis(Lam.)Muell.Arg. MeliatoosandenSieb.etZucc.

(5)

郭 :雲南 タイ族 にお け る植物文化 (3) 一般材 一般材 は さらに腐敗 に弱 く,虫食 い に も弱

い。

このため,室 内の床板 や壁板 な どに使 用 され る。一般材 の常 用樹種 をま とめ る と表3の ようになる。

(

4)

竹類 タイ族 は竹 も建材 と して広 く利用 してい る。 タイ族 の村 に入 ってみ る と,建材 か ら 日常生活 用具 に至 る まで,竹 で作 った ものが広 く見 られ る。 このため, タイ族 の村 には, いた る ところ に竹 が生 えてい る。

2

.樹木 の利用法 相 び とは用材 を長 く使 用す るため に,樹木 の防腐 ・防虫 にたい- ん気 を配 る。 それ は樹 木 の 伐採 か ら家 を完成 させ た後 の建材 の保全 に もつ なが る一列 の技術 の ことであ る。 具体 的 には以 下 の通 りで あ る。 (1) 伐採 の季節 を重視す る 樹木 で も,竹で も,伐採 の季節 はたい- ん重視 され る。 一般 に,雨季 の後半 にあ た る10月 に 伐採 が始 まる。 まず,選 んだ木 を切 った後,枝 を切 らない まま現地 に放置す る。 雨季が終 わ っ た後 の11月か12月 に現地でU」刀 を用 い,必要 な使 用規格 と寸 法 に従 って,栄,柱 ,角板 ,板 な どに加工 す る。 その後 , トラクターが通 れ る山路 まで人力 か牛 で用材 を運 び, そ こか ら村 まで は トラク ターで運 ぶ。 この伐採 の季節 及 び方法 は,他 の様 々な条件 にかかわ りな く, はっ き り決 まってい る。 薪 も 同 じ季節 に伐採 され る。 雨季 の終 りに伐採 す る と,建材 や薪 の防虫性 は高 くな る。 (2)水 に浸す 一部 の用材,特 に竹類 は腐敗 や虫害へ の耐性 が弱 いため,村 に運 んだ直後, あ るい は角板 や 板 な どに加工 した後,池 に入 れて水 に浸す。数 カ月後,池 か ら出 して きれいに洗 い,天 日で乾 燥 させ た後 に利 用す る。 この よ うに処理 された材 木 は防虫性 が高 い。 (3) 材 木 の下部 に石 を当て る 家 を建 て る時 に, も し材 木が直接 土 と接 した ら,接 した部分 の木 は腐 りやす くな り,虫食 い も起 こ りやす くな る。 これ を防止 す るため に,村 び とは大 きな石 を材木 の下 に置 き,材木 と土 を仕切 る。 石 の大部 分 を土 に埋 め るため, 地表 に出て い る部分 は10cmほ どであ る。 これ に よ り,材木 の下部 は乾燥状態 を保 ち,腐 りに くく, シロア リと材木 との接 触 も少 な くなる。 シロ 493

(6)

東 南 アジ ア研 究 35巻3号 ア リの防除 に関 して付 け加 える と, タイ族 の家 は伝 統 的 に二階建 てで,一階 は数十本 の柱 と穀 物 の倉 庫 が あ る以外 に は,何 もない広 々 と した空 間で あ る。 そ こは, 家禽 を飼 う場所 で もあ り, もしシロア リや虫 な どが いれ ば,す ぐ家禽 に食べ られて しま う。 これ もひ とつ の害 虫防 除 法 であ る。 (4) 煙 で いぶす タイ族 の家 は二 階建 ての高床式 で,上 に人が住 み,下 で は家畜 を飼 った り,農具 を置 いた り す る。 一 階, 二 階 と もに広 々 と して お り, 風 が よ く通 る。 彼 ら は食 事 を作 る時 に, 火 塘 (huotang)を使 う。 火槍 はい ろ りの よ うな施 設 で, 二 階 に設 けて あ る (図 1参照)。 毎 日薪 で 火 をた いて料理す る時 には,煙 が部屋 に立 ち込 め る。 このため次 第 に木 は黒 くな って くる。 こ れ は防虫, 防腐 に効果 が あ る。 村 には,数世代 を経 た家が多 い。 百年以上 も人が住 んで い る家 もあ る。 村 び との話 で は,家 の内部 が黒 けれ ば黒 いほ ど虫食 い に強 い。つ ま り,火塘 で薪 を燃 や して料 理す るこ とは,食事 を作 る以外 に,家 の保 全手段 で もあ る。 3.樹木 の栽培 につ いて これ まで, タイ族 は天然林 か ら建材 や薪 な どを伐 採 して きた。 曇緬 村 の人 は よ く山地 に住 む 4.7 腰掛置場 ひ 部屋 1 も (廊下・通路) ドア(1m) 箪 部屋2 笥 (台所・応接間・居間) 1.1m 畑 ■ 1・1m 食器棚 ソ77-5.6m 図1 蔓緬村 の村長宅 の室 内平面 図 (2階) m m 6 2 {∴ 十 。 ヽ 7 」 , 494

(7)

郭 :雲南 タイ族 における植物文化

ラ フ族 か ら木 を 買 う。 まれ な例 と して, 用 材 樹 木 の maishan (柚 木 ,TectonagrandisLinn.f..

英 teak), maixixie(見茶,Acaciacatechu(Linn.I.) w illd.,英 Catechu) な ど と竹 類 は植 林 さ れ て い る。 また, gexilie (鉄 刀 木 ,cassiasismeaLinn.,英 siamesesenna) の植 林 も長 い歴 史 を も つ 。gexilieの心 材 は特 級 材 で あ るが , 村 び とは そ れ を用 材 と して 利 用 す る よ りも薪 に使 うこ と が 多 い。 gexilieの 生 長 は速 く, 伐 採 後 の 再 生 力 が 非 常 に強 い か らで あ る。 景 洪 県 の タ イ族 の村 で は, これ らの 樹 木 が 広 く植 林 され て い て , 3- 5年 ご とに薪 用 に伐 採 され る。 劫 海 県 の タイ 族 は gexilieをあ ま り栽 培 しな い。 薪 は森 林 か ら採 る。

Ⅰ 竹 について

竹 は丙 双 版 納 の 全 域 に広 く分 布 して い る。 竹 は各 少 数 民 族 の生 活 及 び生 産 活 動 の 中 で 大 きな 働 き を して い る。 タイ族 は古 くか ら竹 を利 用 して お り, 同時 に竹 につ い て 多 くの知 識 を積 み重 ね て きた。 以 下 で は, タ イ族 に お け る竹 に 関 す る認 識 , 栽 培 , そ して 利 用 上 の 知 識 を整 理 す る。 1.竹 の 民 俗 分 類 タ イ族 は竹 を maiと呼 ぶ 。 つ ま り タ イ族 は竹 を樹 木 類 の 範 ち ゅ うに 入 れ て い る こ とが 分 か る。 maiの 後 に い ろ ん な接 尾 辞 をつ け, そ れ らの 接 尾 辞 で 種 類 を 区 別 す る。 例 え ば, maibo,

maisangの boや sangな どは竹 の模 様 を表 わ す 言 葉 で あ る。 タ イ族 は また竹 の 外 観 上 の形 態 お

よ び 利 用 上 の 特 徴 に よ っ て , 竹 を 分 類 して い る。 ま た, maisangに 関 連 して , maisanghei,

maisanglai,maisanglang,maisanghai,maisangdabenな ど と呼 ば れ る竹 が あ る。 こ れ は maisang

の 後 に接 尾 辞 を新 た に重 ね る こ とに よ り, maisangを さ らに分 類 して い るの で あ る。 表 4は こ れ らの 分 類 を整 理 した もの で あ る。 表4 竹 の民俗 分類 村 び との呼 び名 学 名 分 析 malWan maihong maibo maisang maisanglai wanは甘い。つ ま り甘い竹 (実 は苛)であるO 利用上の特徴で命名。 hongは苦 い。つ ま り苦 い竹 (実 は苛)であ る。 利用上の特徴で命名。 boは大 きいOつ ま り大 きな竹である。 外観上の形態で命名。 sangは黄色 を意味す る。つ ま り幹が黄色 の竹で ある。外観上の形態で命名。 laiは しまの模様 を意味す る。つ ま りしま模様 の ある黄色の竹である。外観上の形態で命名。 maiは生物学上の属の概念 に相 当す る。wan,hong, bo,sangな どは種 を表 す 接 尾 辞 で, sangの 後 ろ の laiな どは変種 を現 す接 尾 辞。 495

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東南 アジ ア研 究 35巻3号 2.竹 の栽培 タイ族 は竹 を好 み,村 内外 の空 き地 に植林 す る。 竹 は材 木 と して利用 した り,筒 を食材 にす る。 また,竹 林 は村 の 防風 林 とな る と と もに,環境 を美化 す る観 賞林 と して も利 用 されて い る。 竹 を植 える時期 は一般 に雨季 が始 まる前 ,つ ま り3, 4月が一番 よい と考 え られ,株 分 け して植 える方法 が用 い られ る。 良い材 質 の竹 の苗 を選 び,根 の芽 を傷 め ない ように十分 に気 を 付 けて もとの群 れか ら掘 り出 して植 える。 植 える場 所 は一般 に地 味 が よ く,排 水 もよい所 を選 ぶ。個 人 の保有 地 や村 の空 き地 な どに植 え られた竹 はその人の財 産 とみ な され る。 個 人所 有 の竹 以外 に も,村 び とに とって,次 の三種 類 の竹林 が あ る。 ① 天然 竹林 。 この種 類 の竹林 は国有 で あ り,農民 は勝手 に竹 を切 る こ とがで きないが,筒 を 採 る こ とは許 され る。 一般 に天然 竹 林 が 占め る面積 は大 き く, その 中 には樹 木 も生 えて い る。 ② 自然保護 区。 この種類 の竹 林 は国が保護 して い るため,竹 を切 るこ と も筒 を採 るこ と もで きない。 ③ 村社 の水源林 と神林 。 この種類 の林 には樹 木 に混 じって竹 も生 えてい る。 水 源林 と神林 は 村社 に きび し く管 理 され て い る。 樹 木 も竹 も切 って はい け ない し,筒 を採 る こ と もで きな い。特 に,神林 は神 が住 む聖 的 な場所 とみ な されてい る。 こ うい った林 は村 び と皆 が大切 だ と考 えてい るため,特 に村社 に よって管理 され な くて も,村 び とはそ こで生 産活動 を行 わ な い 。

3

.竹 の伝 統 的 な利用 タイ族 の竹 の利用 は生活 のいた る所 に見 られ る。 この用途 を整理 す る と次 の ようにな る。 (1) 建材 と しての用 途 タイ族 の高床式住居 は古 くか ら竹 楼 と呼 ばれ,文 字通 り,竹 で作 られた家で あ る。 タイ語 で そ れ をhenと呼 ぶ 。henは honghen,つ ま り 「鳳 風 (ほ うお う) が羽根 を広 げ る

の意 味が 変 化 した もので あ る。 これ につ いて は,次 の よ うな伝 説 が あ る。

大昔 , タイ族 は家 を もたず , 人 々 は山の洞 穴 や樹 の上 に住 んで いた。Payasangmudiとい う 伝承 の文化英雄 が, 木 の葉 が雨 を遮 り止 め る様 子 にアイデ ィア を得 て,木 の枝 葉 と山草 で平屋 根 の小屋 を建 てた。 しか し,雨が 降 る と,雨漏 りが ひ ど くて住 め なか った。 あ る 日,一 匹の犬 が前足 を立 てて,地面 に座 ってい た。雨水 が犬 の ななめ にな った背 中 に沿 って流 れて いた。 こ の光 景 を見 たPayasangmudiは,犬 の姿 勢 を まね て, も う一 度 小屋 を建 て た。 小 屋 は前 が 高 く,後 が低 か ったため,雨水 は傾斜 した屋根 に沿 って流 れ たが ,風 が吹 くた びに,屋根 の両側 及 び正 面 か ら雨 漏 りが ひ ど くな り住 め な か っ た。Payasangmudiが 悩 ん で い た 時 に, 天 帝 496

(9)

郭 :雲南 タイ族 にお け る植物 文化

写真1 床板 に作 られ た竹 写真2 干 した笥

payayingは鳳風 に変 身 して,雨 降 る 日にPayasangmudiの前 に飛 んで きた。鳳風 は まず 両 羽根 を広 げ, 山の形 の よ うな尾根 を示 した。次 に,鳳風 は頭 と尾 を垂 れ下 げて,屋根 の前 と後 を被 る よ うに指示 した。最後 に,鳳風 は立 ち上 が って足 で体 を支 えて,家 を二 階立 て にす る ように

payasangmudiに暗示 した。 Payasangmudiは鳳 風 の暗示 に従 って,高床 式竹楼 を造 った。 後世 の 人 はPayasangmudiを記 念 して,竹楼 をhenpayasangmudiと呼 んだ。

伝 統 的 なhenpayasangmudiは全 て 竹 で作 られ, 梁,柱 か ら壁, 床 まで,異 な る種 類 の竹 が 使 われ る。 梁 と柱 に はmaiboや maisanglangな ど太 い竹が よ く使 わ れ る。 壁 と床 にはmaisang

や mainanluanな ど硬 くて防虫性 の高 い仲が使 われ る。 垂 木 にはmaihuoな ど細 くて硬 い竹 が使

われ る。 今 で は, 竹 を床板 に利 用 した建物 が よ く見 られ る (写真 1参照 )。

家 の建材 と して用 い られ る以外 に,竹製 の橋 (吊橋 な ど)が タイ族 の村 で は よ く見 られ る。

maiboや maisangや mansanglangとい った太 い竹 を, まず いか だ状 に組 んで, その後 この竹 い か だ を竹 ぎおで連 ねて ひ もで縛 れば,橋 が完 成 す る。 (2) 民俗 食 品 筒 は タイ族 の人 々の大好物 で,新鮮 な筒 は直接 料理 され る一方 ,好 み に よって,筒 を酸 っぱ い筒 ,干 した酸 っぱい筒,干 し筒 (写真2参照 ) な どに加工 す る。 この中で は,酸 っぱい筒が 最 も好 まれ る。 その 中で もT した酸 っぱい筒 は一番高級 な ものであ る。 干 した酸 っぱい筒 の作 り方 は,以下 の ようであ る。 まず ,筒 を洗 って皮 を剥 いて千切 りにす る。 次 にそれ を蒸 して, 生妻 ,唐辛子

,

lll轍 ,ハ ッカ クウ イキ ョウ,塩 な どの調味料 を加 えて混ぜ る。数 日間発酵 した 後,酸 っぱい味が 出て きた ら, これ を天 日で干 す。 これ以外 に,香 りの あ る竹maihaolanを使 った竹筒 ご飯 ,竹 筒 お茶,竹筒 肉な ど もタイ族 の 人 に

まれてい る。 ここで は,代 表 的 な 「香 りの竹筒 ご飯」 につ いて記 した い。

竹 のmaihaolan (maiは 竹,haolanは ご飯 を作 る と い う意 味 。 イ ネ科,cel'halostachyum 497

(10)

東 南 ア ジア研 究 35巻3号 pergracileMunro.,香精竹) を節 の所 で切 って竹筒 を作 り,洗 ったモチ米 を竹筒 に入 れ,それ を 水 に 7, 8時 間ほ ど浸す。それか ら,バ シ ョウの葉 で竹筒 の 口 を塞 いで,竹筒 を火 の上 で焼 く か,あ るいは灰 に埋 め る。竹筒 の 口か ら水蒸気 が出始 めてか ら約

1

0

分後,竹筒 の中の ご飯 が炊 ける。 それか ら竹筒 を火の上 (あ るいは灰 の中) か ら出 して,木 の棒 で叩 く。 竹筒 が柔 らか く なる まで叩 けば, ご飯 が もっ とおい しくなる。 十分 に叩いた後,竹筒 を二つ に割 って,乳 白色 の竹 の膜 が粘 りつ いてい るモチ米 の ご飯 を取 り出す。 この ご飯 は柔 らか くて細 かい。 よ く,千 供 のお菓子 と してあ るいは客 を招待 す る時 に作 る。 (3)観 賞用竹林 タイ族 の村 に は,空 き地 や道 路 の両側 に様 々 な種 類 の竹 が生 えて い る。 ほ っそ りと した maihuoや,黄色 の幹 に緑色 の しまが あ る maisanghan,幹 が鉄色 で姿 の美 しい maihuanlang, あ るい は幹 が太 くて空 まで高 く挿 し立 って い る各種 の maiboな どは, タイ族 の村 を美化 して いる

「竹林 の奥 に タイ族 の家が あ る」 とい う諺 は, タイ族特 有 の民族 的風情 を描 き出 してい

る。

(4)伝統行事 と儀礼

祝 日に,人 々は川辺 や村 の空 き地 に,大 きな竹 で高 いや ぐらを組 み立 てて,上 に竹 で作 った ロケ ッ ト花 火 を置 き, ロケ ッ トを空へ飛 ば して,祝 典 を始 め る。夜,太 い竹 (maibo,maisang な ど) で作 った花火 を空 き地 に置 いて,火 をつ け る と,夜空が明 る くきらびやか になる。 その

時,竹 で編 んで作 った gongfei(飛 び燈) も同時 に空 に飛 ば し, 円光 に人々の願 い ご とを乗せ る。 次 に,竹 で作 った馬 や,か ごや,腰掛 な どを仏寺-持 ってい き,仏様 に献上す る。 祝祭 日

には必 ず歌舞 を行 うが, この時,竹 で作 ったbi(笛 の ような もの) とい う楽器 はメロデ ィー と リズ ム と りに重要 で あ る。

mainanluanとい う竹 は菩提 樹 (FicusreligiosaLinn.)の ように, タイ族 の人 々には仏 の竹 と 考 え られている。 また葬式 の副葬 品 (小 さい竹楼) を作 る材料 として も使 われ る。 また,稲作

に関す る儀礼 を行 う時 に竹 をよ く使 う (写真

3

参照)。

(5)病気治療 と医薬 品

タイ族 は古 くか ら植物 を病気治療 や,予 防薬 に用 い る。 竹 も薬草 と して よ く使 われ る。 例 え

ば,年 寄 りの浮腫 には maisanghanの皮 を水 で煮 て, それ を飲 む。婦 人病 には,mailaiの根 と 芽 を水 で煮 て, それ を飲 む。 maiyanの葉 を煮 た汁 は風 邪 に効果が あ る と思 われ て い る。 一 般

に,竹 は涼薬 (炎症 を取 り去 る薬) として使 われてい る。

(11)

郭 :雲南 タイ族における植物文化 写真 3 Daliao:豊作 を祈願 して,田に置か れる。鬼 を払い,邪 を退 けると言わ れる。割 り竹で作 られる。 写真4 Kaoguang:竹の根か ら作 った,蒸 し たモチ米 を入 れ る容器。 kaoguang で保存 したモチ米は一晩 を経て も腐 らず, もとのおい しさを笑わない。 (6) 日常 生 活 及 び生 産活動 タイ族 の家 に入 って見 回す と竹 製 品が 多

い。

テ ーブ ル,腰掛 , 通 水管 , ブ ラシ, 扇子 , ほ う き, む しろ, ふ るい, ゴ ミ取 り, とうみ, び く, か ご,背 負 いか ご, 天秤棒 ,せ い ろ,飯 ご う (写真 4参照上 食器 棚 ,衣 類箱 , 箸 , 山刀 の柄 , 水 ぎせ る, アナ ゴ捕 り,釣 り竿

,弓

の矢 , 良 捕 り,秩 ,犀 風 ,穀 物 倉庫 な どはすべ て竹製 で あ る。 人 々は竹 の天秤棒 とざるで 品物 を運 び, 水 田 を竹製 の ま ぐわで な らす 。稲 を収穫 す る時 には,竹 の うちわ とむ しろ,竹棒 を使 う。 お茶 を作 る時 に は, 竹 む しろの上 で茶 の葉 を よ くもみ, そ して乾 かす 。竹 の棒 で バ ナナやザ ボ ンな どの果樹 を支 え, また, ホ ー ム ガー デ ン と田畑 の まが き も竹 で作 る。 薪 と して もよ く使 わ れ る。 4.常用 す る竹 の種 類 村 び とが利 用 して い る竹 の種類 はた くさんあ るが , その 中で 人気 の高 い もの を ま とめ る と, 次 の8種類 が あ る。

① maibo (厚 毛 龍竹,DendrocalamusgigantelLSW allexMunro)。 太 い竹 で, 幹 茎 が25cm くら

いの もの は普 通 で,高 さは20mに も達 す る。 優 れ た防腐 , 防虫性 を持 ち, 家 の建 材 , 水槽 ,

水 筒 ,まが き, 毛 糸 編 み針 な どの 材 料 に使 わ れ る。 筒 は大 き く, 最 も大 きい の は2- 3kg

もあ る。酸 っぱい筒 と干 し筒 の原材 料 に よい。

② maisang(黄 竹 ,D.m

e

mbraHaCeuSMunro)。 硬 い材 質 を もち,表 面 は滑 らか で あ る。 虫 食 い

に強 く,床板 や 箸の材料 に よ く使 われ,飯 ご うの材料 に もよい。

③ maihuo (泰 竹 ,ThJ・rSOStaChyssL'am(,nSis(Kurz)Gamble)。幹 はあ ま り太 くな くま っす ぐで, 枝 は細 く, 葉 は小 さい。群 生 したmaihuoの姿 は優 雅 で, 観 賞 用 に用 い られ る。 また幹 は中 空 で はな く, 太 さ も適 当 なの で,垂 木 や鋤 の柄 な どに も使 わ れ る。 筒 は食べ られ る。

(12)

東 南 ア ジ ア研 究 35巻3号

④ maihei(沙羅 軍竹,schizostachyum funghαmiiMcClure)。幹 が 中空 で,弾 力性 の あ る ひ ご が とれ るため,毛 糸編 み針 の材 料 に よ く使 われ る。 maiheiの筒 で作 った干 し筒 は, 上 品 な 味が好 まれ る。

(9 maiwan (版 納 甜 竹,D.hamiltoniiNeesetArn .exMunro)。 筒 は甘 くて, しなやか で, お

い しい。一番高級 品であ る。

(む maihong (里穂 大節竹, IndosasasingulispiculaW en)。筒 は苦 いが,特 別 な味で人 々に好 ま れてい る。 伐 った竹 の幹 は まが さと して よ く用 い られ る。

⑦ maihuanlang (紫 竹,phyllostachysnigra(Lodd.)Munro)。 枝 も葉 も小 さ くて細 い。幹 が灰

色で, よ く観 賞用 に植 え られ る。 薬用 に も使 われ る。

⑧ maihaolan (香 嬬 竹,cephalostachyum PergracileMunro)。 群生 した小 さい竹 で あ る。 中空

の幹 の内側 に一層 の膜があ り, この膜 は よい香 りを発 す るため,竹筒 ご飯 を作 る道具 に用 い られ る。 また,竹 の表面 は栗色 で,光沢が あ り,観 賞用 に も用 い られ る。 以上 の 8種類 を除いて,常用 され る竹 の種 類 を整理す る と,表 5の ようになる。

藤 について

西双版納 には,捧類 が豊 か に分布 してい る。 タイ族 は樹 木や竹 な ど と同時 に古 くか ら藤 を分 類 して きた。 タイ族 は藤類植物 をwaiと総称 して い る。 そ して,竹 - の命 名 と同 じよ うに,藤 の形 態 や 表5 タイ族が常用す る竹 の種類 村 び との呼 び名 学 名 用 途 malPlaO BambusalePideaMcClur Fu,W mainanluan B.sinosPinosaMcClur M.R,T

maisangh an B.vulgarisSchraderexH.Wendlcv.vittata(A.etC.Riv)Chia B.0,M maisangbuo DendyocalamusalbostriatusHsuehetK.L Wang B,F,S maihebo D.asper(Schult.)Backer B.S.W maisanglang D.baybatusHsuehetD.Z.Li B,S

maihelan D.brandisii(Munro)Kurz F,S,W

mailei D.calostachyus(Kurz)Kurz B maihegaihao D.lmgiligulatusK.L.Wang F,S maisangdaben D.membrlanaCeuSMunrovar.sulcatusK.L Wang F,S,W

maisanghei D.membranaceusMunrof.fimbriligulatusHsuehetD.Z.Li B,S,W maisanglai D.membranaceusMunrof.striatusHsuehetD.Z.Li

maibao D.sinicusChiaetJ.L.Sum

mailai Gigantochloaalbociliata (Kurz)Munro matyam Pseudostachyum PolymorPhumMunro

B,0,S,W B,Fi,Fu,S F,W F,Fi,W

注,用途名称 :B:building,F:fencing,Fi:firecraker,Fu:furniture,M:medicine,0:ornament,R:religion,

S

:

(bamboo)shoot,T:(farm)tool,W:weaving

(13)

郭 :雲 南 タ イ族 にお け る植 物 文 化

特 徴 及 び用途 に よって,waiの後 に接 尾 辞 を付 け る。 例 えば,wainuoiとい う藤 と,wailongと

い う藤 の場 合, nuoiは 「小 さい」, longは 「大 きい」 とい う意 味 で あ る。 これ らの場 合 は,藤 の 形 態 及 び 特 徴 に よ っ て 棒 を 命 名 した 例 で あ る。 ま た,waishaigongと い う藤 の 場 合 ,

shaigongは 「綿打 ち弓

とい う意 味 で あ る。 つ ま り,waishaigongとい う棒 は綿 打 ち弓 に使 わ

れ る。 これ は用 途 に よ って藤 を命 名 した例 で あ る。 篠 に対 す る呼 び名 は,村 に よ って違 う場 合 も多 い。 1.藤 の分 布 及び栽 培 膝 の 栽培 は竹 ほ どに は広 く普 及 して い ない。村 の近 くの谷 間 や個 人保 有 の 山 な どで少 し栽培 され るの みで あ る。 タイ族 は藤 を多量 に使 うに もかか わ らず , これ らの藤 は森 林 か ら野生種 を 採 集 す るか, あ るい は ラ フ族 (野 生 種 )や ハ 二族 (野 生 種 もあ れ ば, 栽 培 種 もあ る) か ら買 う 。 隻緬 村 には,龍IH林 (神 林 及 び村 落 の墓場 に大 きな藤 が た くさん生 えて い るが, この林 は村 び とに とって聖 な る林 で, こ この 藤 を探 って はい け ない。 例 え ば, 隣村 か ら手伝 い に きて い た 二 人 の少女 が, そ この藤 をブ ラ ンコに使 って遊 んで いた。 その こ とを後 に村長 が知 って, 少女 は きび し く叱 られ た。 村 長 は少女 に 「病 気 にな るぞ」 と言 った そ うで あ る。

2

.藤 の伝 統 的利 用 タイ族 は棒 を 自家用 にのみ利 用 し, 商品 に は しない。次 の よ うな用途 が あ る。 (1) 日用 品 か ご, ざる, 箱 , 入 れ物 , 腰 掛 , 椅 子 , 飯 ご う, テ ー ブ ル な どの 日用 品 は割 り藤 で編 ん だ り, あ るい は割 り竹 で編 んで,篠 で 補 強 して作 られ る竹 刀 の 鞘 もよ く割 り藤 で編 んで作 られ る。 (2) 建 築材料 と農具 か やぶ きの家 を建 て る時 に,棒 を使 って垂 木 や桁 な どを縛 り,割 り藤 で かや を筏 の よ うに結 ぶ。 また,柑 び とは篠 の皮 で ひ もを作 って,牛 をつ ないで 田 を耕 す 。 (3) 物干 し タイ族 の家 で は,長 く細 い篠 を物 十 し用 の ひ もと して よ く使 う。 篠 の皮 を剥 い て洗 うだ けで で きあが り,便 利 な上 に長期 間使 え る。 501

(14)

東 南 ア ジ ア研 究 35巻 3号

表6 食 用 で きる藤 の種 類

村 び との呼 び名 学 名 食 用

wainuoi (タイ)calamusgracilisRoxb. 果物 dahong (ハニ)C.nambariensisBecc.var.alpinusS.J.PeietS.Y.Chen 果物 dahong (ハニ)C.nambariensisBecc.var.menglongensisS.J.PeietS.Y.Chen 果物 dahong (ハニ)C.nambariensisBec°.var.xishuangbannaensisS.J.PeietS.Y.Chen 果物

dahong (ハニ)C.ObwoideusS.J.PeietS.Y.Chen 果物 1eileiniu(ハニ)C.yunnanensisS.J.PeietS.Y_Chen 果物,野菜 Ieileixiu(ハニ)C.yunnanensisSJ.PeietS.Y.Chenvar.densifloraS.I.PeietS.Y.Chen 野菜

(

4

)

食用

一部 の藤 はその果実 か,あ るい は若芽 を食用 にす る。 果実 は酸 っぱい 味がす る。 若芽 は野菜

と して,火で焼 いて塩 と唐辛子 を付 けて食べ るか,あ るいはそれ を細 か く鴇 いて,米粉 と一緒 に してスープにす る。 この ように食用 の藤 は表6に示す ように数種類 あ る。

(5)綿打 ち弓

タイ族 はwaishangong (弓弦 藤,calamusrhabdocladusBurretvar,globulosusS.JIPeietS・Y chen) とい う藤 で作 った弓で綿 を打つ。 この篠 は硬 くて弾性 に富 んだ材 質 を もつ。 (6)飾 り 畑仕事 な どに出か け る時,男性 は藤 をベ ル トの よ うに腰 に締 め て, これ に山刀 な どを掛 け る。 この場合 は実用 よ りも,男性 の強 さを誇示す る意味が大 きい。

香料植物 と木本野菜

これ まで, タイ族 の人 々の生活 に関係 の深 い樹 木,竹,篠 の三種類 の植物 につ いて考察 して きた。 これ以外 に もタイ族 の人 々は豊かな植物資源 を利用 してい る。 特 に食用 の植物 には,樹 木,竹 ,藤 の ほか,多 くの種類 の野菜が あ る。 この項 で は, と りわけ タイ族 の人 々の生活 に関 係 の深 い香料植物 と木本野菜 につ いて記 したい。 1.香料植 物 タイ族 の家 で食事 に招待 され る と, まず様 々な味 と香 りの料理 に魅 了 され る。 この味 と香 り の源 となる香辛料 は新鮮 な ものが用 い られ るこ ともあ り, また,干 した もの もあ る。 以下 に, 植物 の どの部位 が香辛料 と して利用 され るか によって整理 した。 502

(15)

郭 :雲 南 タ イ族 にお け る植 物 文 化

(

1

)

板類 (球 茎,塊 根 ,鱗 茎 な どを含 む)

① maniangbu (菌 香砂 仁 ,AchasmayunnanensisT.L.WuetSenjenChen)。Zingiberaceaeの多年 生草 本植物 。野生 で,林下 の湿気 の多 い ところ及 び山谷 の渓流 の付 近 に生 えて い る。 ウイキ

ョウの香 りがす る根 茎 を取 って,千切 りに した り細 か く鴇 い た りして, 肉料 理 の調 味料 に使

う 。

(2) 茎 (皮)類

① piliu(麻 根 ,pif・ermagenB.C.Cheng,ined)。 Piperaceaeの蔓植物 。 野 生 で, 山 の岩 石 , また 樹 幹 の上 に着生 してい る。茎全体 が辛 くて舌 が しびれ る よ うな味 がす るが, サ ンシ ョウ とは 違 った香 りを もつ 。 茎 あ るい は根 は, 肉料理 やサ ラダの調味料 に使 われ る。

(参jikuwei(肉柱 , cinnammnum cassiaPresl)。 Lauraceaeの照 葉 樹 木 で, 村 で よ く栽培 され て

い る。 その皮 は漢方薬 と して も貴 重 で あ る。 肉料理 の調味料 に使 われ る。

(3) 菓類

(∋fei(香 参,polygonum caespitosum Bl.)。 Polygonaceaeの 多年生 草 本 植 物 。野生 の もの もあ れ

ば,栽培 され る もの もあ る。 野生種 は, よ く川 及 び渓流 の辺 りに生 えて い る。葉 は コエ ン ド

ロ と類 似 した香 りを もち, 肉料理 の調 味 料 と して使 われ る。 村 び とはホ ーム ガーデ ンで fei

を栽培 す る。

② pala(臭 菜,Acaciaintsia(L.)Willd)。 Mimosaceaeの潅 木 。野 生 の もの もあれ ば,栽培 され

る もの もあ る。 野生種 は よ く低 山の林 の周辺 及 び疎林 内 に生 えてい る。 葉 は特 別 な香 りを も

ち,卵 と一緒 に妙 めて食べ る。

③ pabuomenmang (刺 完要 ,Eryngiumfoetidum Linn.)。 Umbellieferaeの 多年生 の草 本植 物 。 野 生 で,低 山の林 の周辺 ,渓流 の辺 り,港木 の下 な どに生 えて い る。 葉 は コエ ン ドロ と類似 し

た香 りを もち,青 い唐 辛子 と一緒 に細 か く損 いて,塩 と醤油 と酢 を加 えて, 肉料理 やサ ラダ の調 味料 に使 う。 pabuomenmangは タイ族料理 に最 もよ く使 われ る調 味料 で あ る (写真 5参

照 )。

④caobajiao(大 乗石 龍尾 ,I.imnoPhilarugosa(Roth.)Merr.)0Scrophulariaceaeの宿根草 本植物 。 野生 で,低 山の沼 沢地帯 及 び谷 の渓流 の周辺 の草 の下 に生 えて い る。株 全体 が強 いハ ッカ ク

ウイキ ョウ (八 角,Illt'cium ventm Hook.f.) の香 りを もつ 。 葉 を取 って直接香 辛料 とす るか,

あ るい はそれ を干 して粉 に して か ら使 う。 一般 に, ハ ッカ クウイキ ョウの代 わ りに, 肉料 理

や漬物 な どを作 る時 に使 う。

⑤yinkeng(吉 龍 革,EIsholtziacommunis(Coll.etHemsl.)Diels)。Labiataeの一年生 の草 本植 物 。

標 高1,000m くらいの 山区 に多 く栽培 され てい る。 葉 や花 は レモ ンの香 りを もち,葉 や干 し

(16)

東南 アジア研 究 35巻3号

写実 5 pabuomenmang(刺 完要, Eryngium

foetidum Linn.):最 も頻 繁 に用 い ら れ る香 草

写真 6 タイ族 の食卓

た花 は肉料理 やサ ラダな どの調 味料 に使 われ る。

⑥ sahai(香 茅,cymboPogα相Citratus(DC.)stapf)。 Agrostidoideaeの 多年 生 の草 本植 物 。 ホー ム

ガーデ ンで よ く栽培 されてい る。 葉 は レモ ンの香 りを もち, 肉料 理 の調 味香料 に使 われ る。

また,sahaiで魚 を包 んで焼 く調 理法 は タイ族 の人 々に好 まれ る。

(4) 花類

①maisuo(雲南 石 梓 ,GmelinaarboreaRoxb.)。Verbenaceaeの半 落 葉樹 。野 生 で,低 山か 中 間

山地 の林 に生 えて い る。 2- 3月 に黄色 の花 が咲 く。 花 は よい香 りが し,村 び とはそ れ を取

って,干 して置 く。 タイ暦 の新 年 の時 (4月10日前 後) に, タイ族 の家庭 で はた くさんの料 理 が作 られ る。 その中で も,haonuosuoとい う餅 は不可 欠であ るが,maisuoの花 は餅 を黄色

にす る色素 及 び良い香 りをつ け る香 料 と してモチ米 に加 え られ る。

(5) 果実 (檀 ) 類

① maihan (山八 角,MicheliahedyosPermaLow)。 Magnoliaceaeの常 緑樹 。 野生 で, 雨林 に生 え

てい る。 村 び とは果実 を成熟期 に採集 して,種 を取 り出す。 この種 はい い香 りを もち, 肉料

理 や, ソーセ ー ジな どを作 る時 に調 味料 と して使 われ る。 また肉の塩漬 けに も使 う。 使 う時

に,炭 で少 し焼 いた後細 か く鴇 いて肉 に加 える。 その香 りを タイ族 の人 々 は好 む。漢族 がハ ッカ クウイキ ョウ (八 角) や caoguo(草果 ,Amomum tsao-koCrevostetLemarie)を愛 用す る ように, タイ族 の人 は maihanを愛用 してい る。

(参sehaiteng(山鶴 椴 ,Litseacubeba(Lour.)pers.)0 Lauraceaeの小 さい樹 木。 野 生 で,低 山及

び中間山地 の疎林 内 に生 えて い る。 果実 は, レモ ンの香 りを もち,細 か く鳴 いた後,塩 ,普

油 ,唐 辛子 な どを加 えて調 味料 と して使 われ る。

(17)

郭 :雲南 タイ族における植物文化

③maqie(香 果 花 板 ,zanthoxylum utilisHuang)0 Rutaceaeの高 木 。野 生 で ,低 山及 び中 間山地

の疎 林 内 に生 えて い る。 干 した果 実 はサ ンシ ョウ と似 た香 りを もち,細 か く鴇 いた後, 肉料 理 の調 味料 と して使 われ る。 また, 肉の塩 漬 け に もよ く使 われ る。 これ まで述べ て きた香 料植 物 は タイ族 が利 用 す る ものの一部 にす ぎない。 タイ族 は これ らの 香 料植 物 を使 って,特 色 の あ る料 理 を生 み, 食生 活 を豊 か に発展 させ た (写真 6参照)。 上記 の香 料 植 物 は, 野 生 の ものが 多 い が, 栽培 され る もの もあ る。 野 生 種 採 集 か ら栽 培 へ の変 化 は,香 料植物 を手 軽 に安 定 して利 用 す る狙 いが 大 きい 。

2.

木 葉 (木本 の野菜 ) タイ族 は様 々 な植物 を香 料 と して使 う以外 に,木 葉 もよ く食べ る。 タイ族 は古 くか ら木 葉 を 食べ る習 慣 を もち, そ の調 理 法 な ど も豊 か で あ る。 次 に, タイ族 が よ く利 用 す る木 菜 につ い て, 食 され る部位 ,調 理 法 及 び利 用 の特 徴 につ いて考 察 す る。 (1) 多様 な木菜

① 樹 木 の若 葉 と若 芽 。 この種 類 の樹 木 に はpagon (樹 頭 菜 , crataevaunilocuLan'sBuch.-Ham)

やmaiyonheng (香 椿 , Toonasinensis(A.Juss.)Roem.)な どが あ る。

(丑花 及 び花 の つ ぼ み。 この種 類 の樹 木 に は1uobi(火焼 花 ,Mayodendrm"'gneum(Kurz)Kurz)

やmaisuo(雲 南 石梓 ,GmelinaaγboreaRoxb.)な どが あ る。

③ 茎 の芯 の部 分 。 この種 類 の樹 木 に はguozhu(魚 尾 葵,caryotaochlandraHance)やguobang

(董 椋 ,CaryotaWrensLinn.) な どが あ る。

④ 果 実 。 この種 類 の樹 木 に はmaheleng (野 茄 ,solanum coaguLensForsk)やmasang(五 柾 果 , DilleniaindicaLinn.)な どが あ る。 (2) 調 理 法 ① バ シ ョウの葉 で包 んで焼 く。 取 って きた新鮮 な木葉 (主 に若葉 と若 芽 類 ) を洗 ってか ら,塩 と唐 辛子 を加 えて, 火塘 (い ろ り) の炭 で焼 い て 食べ る。 (参妙 め る。 渋 くて苦 い味 がす る若 葉 や若 芽 な どの場 合 は, まず しば ら く湯 につ けて, 水 を きっ た後 ,油 と塩 を加 えて妙 め る。 ③ ス ー プ を作 る。 果 実 類 はだい た い スー プ にす る。 作 る時 には, まず果 実 を細 か く鴇 いて,港 に入 れ てか ら塩 や油 な どを加 え る。 ④ み そ を作 る。 果 実 類 を新 鮮 な状 態 で , あ るい は蒸 して か ら形 が な くな る まで撮 く。 そ して 塩 ,唐 辛 子 , コエ ン ドロな ど を加 えて みそ を作 る。 タイ族 の 人 は この よ うなみ そ をnanbiと 呼 び, 野菜 にnanbiを付 けて食べ る。 505

(18)

東南 アジ ア研 究 35巻3号 ⑤ 生で食べ る。 これ は木本野菜 の主 な食べ方 であ る。 村 び とは よ く昼 間採 って きた木菜 を夕食 に nanbiな どを付 けて生 で食べ る。 (釘漬物 にす る。 竹類 や若葉 な どは よ く漬物 に され る。 (3) 利用上 の特徴 以上 に示 した ように,西双版納 には多種類 の木本野菜が豊富 にあ り, また, タイ族 の人 々は 木本野菜 を利用す る経験 と知識 を豊 か に もちあ わせ てい る とい える。 タイ族 の人 々の木本野菜 利用 には以下 の ような特徴 が見 られ る。 ① 木菜 の種類が多 く,それぞれの木菜が季節性 を もつ ため,年 間 を通 じて常 に何 らかの種類 の 木菜 が食べ られ る。 ② タイ族 は野生 の野菜 を薬用植物 と同 じように考 えてい る。 タイ族 は昔か ら各種 の植物 を利用 して病気 に対処 して きた。 その実践 を通 じて, 「タイ医学」 とも言 える独 自の医学体系 を創 造 した。 タイ医学 とは簡単 に言 えば,様 々な動物,植物,鉱物 を薬 に して病気 に対処す る医 学 であ る。 タイ医学 の元で利用 され る植 物 は1,000種 以上 に も及ぶ [西双版納 州民族 医薬研 究所縮 写組 1995:14]。 あ る種 の木菜 につ いて は,村 び とは必ず しも味覚 のみ を求 めて食 す るわけで はな く,健康 に良いか らとい う理 由で食す る。 (彰野生 の木菜 を とるだけで はな く,最近で は栽培 され るようにな って きた。 この現象 の背景 に は,近所 か ら手軽 に とれ る とい う便利 さの一方で,野生 の木菜が少 な くな って きた こ とも確 かであ る。 ホ ームガーデ ンで の栽培 が一般 で あ る。

ⅤⅠ

上座部仏教 と植物

タイ族 は皆上座部仏教 を信仰 してい る。彼 らの信仰 で は, これ まで28代 にわた る仏教 の祖 師 が い た。祖 師 はそ れぞ れ に悟 り樹 を もち, 最 後 の祖 師 Sakyamuniは maixili(菩提 樹 ,Ficus religiosaLinn.)の 下 で 悟 りを 開 い た。 他 の悟 り樹 と して, 例 え ば, maimuha (叱 黍 勤, Terminaliabellirica(Gaertn.)Roxb.),mailing (宋 果 格,FicusracemosaLinn.),maisuo(雲 南 石 秤 ,GmelinaarboreaRoxb.)な どがあ る。 それ らの樹 木 を村 び とは厳 しく保 護 してい る

「両 親

を捨 てて はい けない,菩提樹 を切 って はい けない

とい う諺があ るように,昔 の地方 の法律 に も 「菩提樹 を切 った ら,van (仏寺) を壊 す こ とと,僧侶 を殺 した場 合 と同 じ処罰 を受 ける。 当人 は死刑 の判 決 を下 され, その子供 たちは仏寺 の奴僕 と して使役 され る

とい う厳重 な条項 があ った。 星緬村 には,古 い菩提樹 が4本 あ る。 村 の長老 たちの話 で は, この4本 の菩提樹 は彼 らが生 まれた時 には もうそ こにあ り,樹齢 は不 明であ る。 この4本 の菩提樹 の形状 (樹冠 図,胸高周 506

(19)

郭 :雲南 タイ族 にお け る植物文化

園,樹 高 とそれぞれの位 置) は図2の通 りであ る。

宗教 は タイ族 の 人 々の 日常 生 活 に深 く浸 透 して お り, 仏教 の活動 は多 くの植 物 と関連 が あ る. 仏 寺 を建 て る時 と菩 薩 を彫 刻 す る 時 に,maishang (柚 木,TectonagrandisLinn.f.) や

maiyonkang (麻 棟 ,chukrasiatabulariaA.Juss.) な どの樹 木 が使 われ る。 dan仏 (仏 寺- お金 や品物 を施 す 活動 ) の時,maibuolang (鉄 力 木,MesuaferreaLinn.) の果実 か ら得 た油 を仏灯 の燃 料 とす る。仏像 に水 を浴 びせ る時 に香料 植物 と して, pongmaxing (雲 南樺 ,cinnamomum glandultj:erum (W all.)Nees)の葉 を水 に入 れ る。 僧 侶 の け さ を染 め る時, shala(狭 葉 巴戟,

Morindaangustifolia Roxb.) の 心 材 か ら取 っ た 染 料 を 使 うO 僧 侶 が 水 浴 び を す る 時,

maizhongbu (蒲桃 ,syzygium jambos(Linn.)AIston)の皮 を水 に入 れ て聖 水 をつ くる。仏 像 へ の供 花 と してguonuo(蓮 花 ,NelumbonuciferaGaertn., 英eastindianlotus),1inuoluai(文 殊 蘭,cri7Wm aSiaticum Linn.var.sinicum Baker,英st.johnslily), nuodaihom (妾 花,Hedychium coronarium Koenig,英commongingerlily)な どを用 い る。 仏寺 の庭 に は多 くの植 物 を植 えな け

れ ばな らない と信 じられてお り,少 な くとも 「五種 の樹 木類 と六種 の花類」 を栽培 す る。 7.7m 村iZZの水田の中 6.触 仏 書 のA の■ No.4 ●G=3.56nl H=ユ3.伽l 10,5m 7.&n tb

.

3

C

4.

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a

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r\ 13.3n 図2 蔓緬 村 の4本 の古 い菩提 樹 507 9.1m

9

.

伽l

(20)

東南 アジア研 究 35巻3号

仏教 と関係 す る植 物 は多 いが, こ こで は guolang(経 典) につ いて特 記 したい。guolangと は タイ語 で タラの樹 を表 わすoguolang(貝葉椋 ,coryphaumbraculiferaLinn.)は シ ュロ科 に 属 し,立 木が高 くて壮大 であ る。 木の幹 は まっす ぐで丸 く,枝 が ない。樹冠 は大型 の傘 の よ う で,葉 は手 の ひ らの ように広 が ってい る。guolangは一般 に50-60年 間生 き,一生 に- 回 しか 花 を咲かせ ないが,一度花が咲 いて しまうと,木 はだんだん枯 れて死 んでい く。 上座部仏教が 西双版綱 に伝 来 した後 (12世紀 前 後), タイ族 は guolangの葉 を用 いて仏 教 の経典 を記録 して きた。今 は紙 を多 く使 うが, どこの仏寺 で もguolang経典 が見 られ る。guolang経 典 は次 の よ うに して作 る。 切 り落 と した guolangの葉 をハサ ミで 同 じサ イズ に切 って押 しつ けて平 にす る。 次 にこれ をお湯で煮 てか ら乾 か し, もう一度押 しつ けて平 にす る。 この時,葉 はすで に緑 色 か ら薄 い黄色 に変 わ ってい る。 で きた葉 を冊 に装丁 して,鉄筆 で葉 の上 に字 を彫 る。 彫 り終 わ った ら,植物性 の油 を上 に塗 り付 ける。 そ うす る と,葉 の表面 に明瞭 な筆跡が現 れ る。 こう して作 られた guolang経典 は防水 ・防虫 ・防腐性 を備 え,数百年 間 も保存 で きる。

ⅤⅠ

おわ りに

最後 に, これ まで に記 して きた タイ族 の植物 に関す る知識 と利用 の諸側面 を振 り返 り, タイ 族 の植物文化 につ いて要約す る。 これ まで考察 した タイ族 の植物 文化 につ いて整理す る と, 図 3の ようになる。 まず, タイ族 は,樹 木,竹,藤 につ いて,それぞれの性 質及 び特徴 を把握 した上で,材木 と して生 活 の 中 に適 宜 に利用 して い る。 特 に,材 木 の防腐 と防虫 に関す る知識 とそ の利用技術 は, タイ族 の人 々に とって合理的かつ効率 的 な もので あ る。それ らの知恵が結 晶 した竹楼 は, タイ族 の先祖代 々の住居 を支 えて きた。住居以外 に,竹 と藤 は タイ族 の 日常生活及 び生産活動 一般 に利用 されてい る。 第二 に, タイ族 は長期 にわた って植物 を利用す る過程 において,植物 を民俗 的 に分類 して き た。 その分類 の基準 は植物 の形態 のみ な らず,実用性 に基づ いてい る。 彼 らはこれ らの基準 に 基づ いた接尾辞 を階層 的 に積 み重 ねて植物 の名称 を作 ってお り, これ らの名称 に タイ族 の民俗 的知識 が凝集 されてい る。 第三 に, タイ族 の食生活 には,多 くの香料植物 が利用 され る。村 び とは各植物 の香 りや味 と い った特性 を認識 した上で,様 々な香 りあ るい は味 を持つ植物 を異 なる調理法 で料理す る。 ま た,多 くの樹 木 の若葉,花,果実 な どが村 び とに野菜 と して食べ られてい る。 また,薬用植物 も多 く,村 び とは 「食」 と 「薬」 が 同義であ る と考 えてい る。 第 四に,宗教 あ るい は信仰 と関連す る植物が た くさんあ る。 それ らの植物 は村 び とに保護, あ るいは栽培 されてい る。 508

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郭 :雲 南 タイ族 にお け る植物 文化

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図3 タイ族 の植 物 文化 の実態 (生 活 と植物 利 用 の 関係 ) 注 :● は生 活 と植 物 利 用 の 関係 タイ族 の環境 観 や植物文化 が優 れてい る ところは, 第一 に,野生種 が もつ特性 の微妙 な差異 を上手 に生活 に利 用 してい くとい う智恵 にあ るが, それのみで はない 。 第二 に,食用植 物 や観 賞用植物 に代 表 され る よ うに村住 まいの生 活 に うるおい を もたせ るア メニテ ィの要素 が 多 く感 じられ る こ とで あ る。 さ らに, 第三 に, 人 口増加 や商 品経 済 の流入 とい ったあ る意味 で は避 け られ ない外部要 因 にいか に柔 軟 に対処 して, 人間 と自然環境 との調和 を持続 させ てい くか とい う智恵 であ る。 この点 に こそ タイ族 の環境観 や植物文化 の真髄 が あ る といえ る。 土地利 用 に関 して い う と, これ はAgroforestry栽 培 や ホ ー ム ガーデ ンニ ングあ るい は龍 山林 とい ったか た ちで表現 され て い る [郭 1997] 。 また,植物 利用 に関 してい うと,材 木,香料植物 ,木菜 のい ず れ に関 して も, タイ族 は もと もと野生 の もの を採 集 していたが,野生 種 が徐 々に少 な くな っ て きた とい う状 況 に鑑 みて,現 在 で は栽培 も しくは植林 して い る植物 あ るい は樹 木が少 な くな い とい う現 象 に現 れてい る。 本 論で は,具体 的 な植物利 用 の事例 を示 す 中か ら, タイ族 の人 々の環境 保全思想 や環境観 に つ いて検討 した。西双版納 にお ける森林減 少 や景観悪化- の対 策 と して, タイ族 の実例 が よい 参考 となる こ とは明 らかで あ るが, これ は他 民族 の土 地利 用 の実態 や環境 観 な ど と照 ら し合 わ せ る作業 か らよ り確 か な もの となろ う。、今 後 の研 究課題 と したい。 509

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東南 アジア研 究 35巻3号 謝 辞 以下 の よ うな多 くの方 々の協 力 と助 言 に支 え られて,本稿 をま とめ る こ とが で きた。 ここに厚 く感謝 の 意 を表 したい。 まず , フ ィール ド調査 の際 にお世 話 にな った タイ族 の人 々 に感謝 した い。 また,劫混 郷 政府 か らの協 力 も言 い尽 くせ ない ほ ど大 きい。 原 稿作 成 にあ た って は,指 導教 官 の古 川 久雄 先生 (京都 大 学), 山 田勇 先 生 (京 都 大学) 及 び向井 史郎 先 生 (京都 大学) か ら内容 と 日本語 に関す る適確 な助 言 をいた だい た。 なお,本研 究 は京都 大学東南 アジ ア研 究 セ ンターの山 田勇教授 を代 表者 と した 「人 と森林 世界 に関す る 大 陸 間比較研 究」 の研 究協 力者 に加 えて いた だいた こ と,及 び,富士 ゼ ロ ックス小林 節太郎 記念 基 金 の研 究助成 に よって可 能 にな った。心 か らお礼 を申 し上 げ たい。 参 考 文 献 陳三 陽他.1993.「西双版納藤類資 源的民 族植 物学研 究

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表 3 ‑般材木 の樹木 村 び との呼 び名 学 名 mal na mna g ebahao mai f anke ma i di ngbi e mal g e dong mal ga ng mal nl u m al m u el mu m u e i ba i s h a ng m ai d on g g e m a l g al m a i he ng m u e l g a n 492
表 6 食 用 で きる藤 の種 類

参照

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