シンポジウム 癌治療の進歩 ( 東 女 医 大 誌 第55巻 第2
号
)
頁 112-129 昭和60年2月(1)肺癌治療の現況と問題点
東京女子医科大学 第二外科学教室(主任:織畑秀夫教授) スズ 助 教 授 鈴木
タ ダ シ忠
( 受 付 昭 和59年10月30日〉Present Status and Problems of Lung Cancer Therapy Tadashi SUZUKI
,
M.D. Department of Surgery II (Director: Prof. Hideo ORIHAT A) Tokyo Women's Medical CollegeI
t
is an international tendency that mortality from lung cancer has recently been increasing year by year. Some reports indicate worsening statistics for the future. The author studied the present situation and various important problems in 222 cases of lung cancer that we have experienced (primary lung cancer: 179, metastatic cancer: 43), and investigated the relevant literature. In 47% of the primary cases,
the cancer was巴liminatedsurgical1y,
but in 15% only thoracotomy wihtout surgical elimination was perfomed. For the secondary lung cancers, resected cases comprised 15% and simple thoracotomy was done on 2% of cases.The number of cases undergoing surgical elimination has been increasing year by year
,
and in the past 5 years it has been 61 % or more.The authors also investigated 3-year survival by type of medical course. For pneumonectomy it was about 50%, about 60% for lobectomy and about 10% for the group not resected. The 3・yearsurvival was investigated similarly by the evaluation of radicality of the operated cases. I
t
was 75% f
or the curatively resected group, 56% for the relatively curative group, 50% for the relatively non-curative group and 25% for the absolutely non-curative group. Further,
the patients were divided into 3 groups by the starting point of their clinical course. In the first group,
the cancer was found at routine check up. In the second,
it was detected unexpectedly duringg the medical course of an other disease, and in the third, it was discovered by examination after the appearance of obvious symptoms. it was concluded that there are relatively clear differances between the groups.From these studies, it seemed that to elevate the performance record, early discovery of cancer and highly curative surgical operations are most importan
t
.
The authour also reports some newly devised techniques and recent research.
1.はじめに 報告にみる肺癌手術の本邦第1例は, 1916年に 尾見によるもので, これは試験開胸に終ったとい う1) それ以後の肺癌治療の歴史は,
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繋明期」ま たは「創生期J
,r
近代J
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現代」の3期に大きく 分けられる.即ち「繋明期」は1916年より1940年 代末までで,局所麻酔下に手探り的な肺切除が散 -112 発的に行われていた時期,r
近代」は気管内挿管下 の全身麻酔が導入されて,安全な開胸手術が可能 になってから国立癌センターが発足した1961年ま で,r
現代」はそれ以後である. 通常は,肺葉切除を要す程の大きな開胸手術に 際しては,充分な視野を得るために肋骨を切離す る場合が多いことに加え,肺そのものが呼吸循環を直接司ることもあり,肺手術に際しては気管内 挿管下の全身麻酔による完全な患者管理のもと で,始めてその目的を達し得るものである.従っ て,肺癌手術の歴史は近代的麻酔技術の歴史と軌 をーにし,欧米を含めても最近
3
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年余の歴史を有 すに過ぎない. 現在でも広く行なわれている胃切除の標準術式 であるB
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法,乳癌手術の標準術式であるH
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法,Meyer
法等が既に1
世紀以上もさか のぼることと比べ,呼吸器疾患についての1
世紀 前の成果は,R
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Koch
の結核菌の発見(18
8
2
, 後にノーベル賞受賞〉が挙げられる程度であり, 胃癌や乳癌手術に比べて肺癌手術は未だ出発した 直後の状況にあるといえる. 歴史が新しいだけに,肺癌手術の適応基準と補 助療法も含めた広い意味での治療方針についての 基礎的な考え方が施設によりまちまちであり,今 だに肺癌関係の諸学会で, これら最も基本的な点 での検討が行なわれている状態である. このような状況にもかかわらず,最近は多くの 施設で治療成績が向上してきていると報告してい る2) 我 々 の 施 設 で も 術 後 の 長 期 生 存 例 が 年 を 追って確実に増加しつつあり,将来に一条二条の 光が見える様になったと感じている. 本論文は,第5
0
田女子医学会総会のシンポジウ ム「癌治療の進歩 癌治療の現況と問題点一」の 中で,著者が担当した肺癌の報告に多少の文献的 検討を加えたものであり,困難な状況下にある肺 癌治療の現状につき,重要と思われる幾つかの問 題点を挙げ,あわせて日頃著者の考えていること の一端を述べたものである.1
1
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教 室 例 昭和4
2
年度より昭和5
8
年1
2
月までの1
7
年間に, 東京女子医大第11外科で経験した症例は,原発性 表 1 肺癌患者内訳(昭和42年 6月 昭和58年12月〕 (外来処置のみの4例を含む〕 原 発 性 肺 癌 転 移 性 肺 癌 年度 再 入 院 例数 手術不能 試験開胸 病巣切除 例数 手術不能 試験開胸 病巣切除 42 4 4 1 43 4 2 2 1 44 7 6 1 1 45 4 1 1 2 2 46 5 3 2 3 47 2 1 1 2 1 1 3 48 7 5 2 1 1 1 49 4 1 1 2 6 5 1 3 50 6 3 1 2 5 5 51 12 5 l 6 9 8 1 52 9 4 1 4 1 1 2 53 12 4 3 5 2 2 54 17 9 2 6 5 55 21 7 1 13 4 3 1 3 56 31 10 1 20 6 6 10 57 18 3 4 11 5 4 1 13 58 16。
3 13 1 1 5 合計 179 68 27 84 43 37 l 5 52 (東京女子医大外科〉-113-年以後は年間平均で20例を越える様になった. 原発性肺癌の男女比は
3
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5
: 1
で男性に多く,年 齢分布は男性で平均64歳,女性で60歳と,女性が やや若年である(図1).1
1
1
.
外科的呼吸器疾患の流れと肺癌の傾向 図2は既に本誌3)にて報告したものだが,昭和 肺癌179例,転移性腫撞型肺癌43例の合計222例で ある(表1). 年度別患者数は,昭和48年までは年間10例以下 であり,昭和50年以後に急、増しつつある.昭和55 昭和57年度は 5月末までの数より想定 ← → 肺 癌 <>---0自然気胸 &ー→縦隔腫傷 口一一ロ胸部外傷 > _ _ x胸廓疾患 50 25 t . ﹄ 古 川 オ 以 上、
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i Q f r k d ι ー に υ 一 ノ 0 9 ト ' A 法 A 浩 一 / 叩 日 オ 以 下 外科的胸部疾患,年度別入院患者数(疾患別〉 東京女子医大外科 図2 (東京女子医大外科) 図1 原発性肺癌,年齢別分布(
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男性 (3ト 峨 , 平 均64.0歳)i・-・:女性
(31-70歳,平均60.1歳) ) Female 300 75-79 80-84 70-74 85+ 65-69 80-84 75-79 85十 70-74 60-64 45-49 40-44 65-69 55-59 50-54 200 ロ100。
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ι o c c a ( ) ( ) ﹂[ ' H m w ハ H C H C L H ﹂ ヨ E 凸 ハ U ハ U ハU F b A 官 q u 20 10 に d A せ っ d 2 35-39 1950 '55 '60 '65 '70 '75'78 Year 図 3 本邦に於ける年齢別及び性別癌死亡率 (1950-1978) 一気管・気管支・肺癌の人口 10万人当たり死亡率 CICD,8th r巴vision)ー(文献 4よ り引用〕 -114-1950 '55 '60 '65 '70 '75'78 Year57年度までの教室入院患者数の変化を示す〔昭和 58年以後は教室ベット数が大きく変わり,入院患 者の状況が変わったため省く).これにみる傾向 は,他の多くの報告と同様であり,肺癌及び胸部 外傷の増加が明らかである.このうち,胸部外傷 については,昭和53年度に当院救急センターが整 備充実して外傷の受け入れ患者数が増加したこと が主因であり,必ずしも一般的な外傷患者の変動 を全面的に反映したものとはいえないが,肺癌に ついてはそのような特別な事情はなく,一般的に 肺癌患者そのものが増えている状況をかなり反映 していると考えている. そこで諸報告により肺癌患者数の変動をみる. まずICD統計4)により我国に於ける人口10万人当 たり肺癌死亡をみると(図
3
),男女ともに年を 追って増加傾向にあり,しかも高齢者程増加率が 著明で,例えば70歳代では30年間に20倍前後に増 えている.日本全体ではなく,もっとミニマムに みた場合,良く調査されたものとして大阪府がん 登録5)が引き合いに出されるが,その1958年より 1976年の聞の変化をみても胃癌,子宮癌は減少し, 肺癌,大腸癌,直腸癌は増加傾向を示す.これら の傾向は今も続いており,今後どのようになるか 心配されるところであるが,将来の予測としては, 胃癌及び子宮癌は明らかに減少し,肺癌,乳癌, 大腸癌等は増加し続けて欧米型に移行していくと 指摘されるか8) 欧米諸国の肺癌死亡率は今も上 昇傾向にある9) 我国の肺癌が欧米型に移行した場合を予想する ため, 1975年の人口10万人当たり肺癌死亡をA.A
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D.R
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(age-adjusted death rate)により国別にみ ると,やはり欧米での死亡率は高く,日本09.86) は現在のところではスコットランド (84.76),英 国(73.86),オランダ(73.34),ベルギー (69.91) 等の3-4分のlである川.我国が近い将来に高 齢化社会への移行が確実視されていることもあわ せ考えると肺癌の将来は非常に憂慮されるところ である. これら肺癌の増加については,診断技術の進歩 や結核の減少等による相対的な見かけ上の増加で はなく,環境因子(喫煙,大気汚染,アスベスト, クロム, 1i比素,ニッケル,マスタードガス等〉の 変化によるリスクファクターの悪化が寄与した絶 対数の増加であり11)環境汚染が進行中の近代社 会の状況は,前述の多くの指摘にみる疫学的事実 と通ずるものである.I
V
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手術内容と切除率 表1
により教室例での手術内容をみると,原発 性肺癌では,病巣切除47%,単開胸(試験開胸+ 審査開胸一一後述)15%,非手術38%である. これ に対し転移性肺癌では,病巣切除17%,単開胸2 % で,前者に比べ切除率は非常に低い. 次 に 原 発 性 肺 癌 の 切 除 率 を , 昭 和42-48年, 49-53年,54-58年の3期に分けて比較すると(表 2,図4),各々 6%, 44%, 61%と後者程著明に 増加して来ている. 単開胸については各27%,16%, 11%と減少傾 向にあるが, これは術前検査の進歩と診療レベル の向上により手術の可否の術前決定がより適確に なって来たことを示す. 即ち,単開胸については,切除予定で開胸した ものの,癌浸潤が高度で守切除出来なかった場合(試 験開胸〉と,最初から切除不能と思われたものの, 補助療法の方針を決定するために開胸生検を目的 とした場合(審査開胸〉があり,前者については 比較的小数ではあるが,癌切除に対する万がーの 症例数 年 度 昭和42-48年 49-53 54-58 J口h 計 115-表2 原発性肺癌.手術内容 例数 手術不能 33 22 43 17 103 29 179 68 図4 比率 単 開 胸 病巣切除 9 7 11 27 2 19 63 84 (東京女子医大外門 S 42-S 58可能性を期待する家族の強い希望により,切除不 能と思われながらも一応手術を試みて結果的に単 開胸に終った場合等もある. 手術による根治性を獲得出来ないことがほぼ決 定的な場合に,無理して大手術をして患者のエネ ルギーを消耗するだけの結果に終るよりも,体力 を保持しながら高濃度の補助療法を行なった方が 良い症例もあり,このような見極めがある程度ま で確実に出来るようになったことも無駄な単開胸 を減少させる要因となっている. 次に患者年齢を49歳以下, 50-69歳, 70歳以上 の3年齢層に分けて手術内容をみると〔図5,) 50-69歳で切除率が最も良い.これについては, 若年者では検診や人間ドックを受けることが少な く,かなり進行して自覚症状が出現した状態で発 見される場合が多いことと,高齢者では,癌その ものは切除可能だが,呼吸循環系その他の身体異 常により,大侵襲を加える手術が出来ない場合が 多いことの反映である. 肺癌の切除率は,その病院の患者背景により, 又,集計年度により大きく異なる.例えば,第35 回日本胸部外科学会(1982,名古屋〉の報告をみ ると,中尾12)(長崎大学, 1958 -1981)は94.8%, 半沢13)(浜松医療センター, 1976-1982)は26.9%, 松島14)(日本医大,期間不詳〉は60%であり,報告 により差が著るしい.中尾報告では患者は同院呼 吸器内科を経由して来るため,最初から切除可能 と思われた場合のみ外科転科となるのに対し,半 沢報告の切除率が低いのは呼吸器科としての全肺 癌患者を母数としたものであるためであり,切除 率のみの比較では手術成績の良悪は決定出来な い.東京女子医大外科の場合は,関連病院からの 年令層 │ 図 : 手 術 不 能 図 : 単 開 胸 図 ・ 切 除 49オ 以 下 50~69 才 70才 以 上 (東京女子医大外科) S 42-S 58 図5 原 発 性 肺 癌 年 齢 層 別 手 術 内 容 C%) 116 紹介もあるものの,多くは当院呼吸器内科からの 転科であり,全体としての患者背景は一応切除可 能性についての選択を受けたものといえる. 一般的には,船津川(東京医大),成毛16)(国立 が ん セ ン タ 一 入 鈴 木lぺ東北大抗研),山口1町千 葉大肺研)等,多くの報告で40%前後の切除率と 報告されており,この辺りが現在の外科手術の成 績であろうと思われる. 患者背景の相違した施設問での単なる数値の比 較は無意味であるが,同一施設同一基準での変動 をみることは意味あることであり,我々の施設で の切除率が年とともに高くなっていることは評価 し得るものと考えている.
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.
原発性肺癌予後 原発性肺癌で経過が明らかな教室症例のうち, 病巣を切除出来ないまま他院に転院した症例を除 いた137例の予後をみた(表3>. 全摘例についてはこれまでの全手術例のうち約5
割が既に死亡したが,その大部分は術後半年以 内にあり 3年生存率も 5割強となる. 肺葉切除例は約4割が死亡し 3年生存率は約 6害』である. 非切除例は非常に成績不良で3
年生存率は1
割強に過ぎない. これらの死亡例につき,死亡までの期聞をみる と(図6
),非切除死亡例の9
割と全摘後死亡例の 8割が治療開始後l年以内にあり,肺葉切除後死 亡例は1年以内6割 2年目が3割である. 以上の検討により治療別にみた肺癌の予後をみ 表3 原 発 性 肺 癌 予 後CN= 137, 表 の 数 値 は % ) 非 切 除 例 で 他 院 転 院 例 は 除 く 3 6 1 2 3 4 5 メ口込 手術後術例期間は初(非診 カ :11 年上以 後期間〉 月 月 年 年 年 年 計 計 死亡 21 16 5 5 5 152 全 摘 例 100% CN=19) 生 存 1611 16 5 148 死亡 5 I 13 7 I 12 5 42 肺葉切除例 100% CN=60) 生 存 12 16 7 I 15 8 158 死亡 34 20 23 11 88 非 切 除 例 100% CN=38) 生存 6 3 3 I 12 〔東京女子医大外科〉ハ U / 0 4 晶 O / 非切除群 川 叫 % 全 摘 群 川川町河 肺葉切除群 年 以 後 (東京女子医大外科) 図6 原発性肺癌死亡例 外科初診より死亡までの期間 ると,非切除例は2年以内に 9割が死亡して,し かもその大部分は1年以内である.全摘例は半年 以内に 4割弱が死亡するが,それを乗り越えれば 良好な予後を得ることが出来る.肺葉切除後は3 年目まで再発死亡例をみるが,それを過ぎた6割 の症例は予後良好である. 次に肺癌手術に際しては,手術時の癌腫の存在 部位と周囲への浸潤程度, リンパ節転移の状況, 遠隔転移等により決まる臨床病期と,切除廓清範 囲の総合判定により,手術評価を治癒切除,準治 癒切除,相対的非治癒切除,絶対的非治癒切除の 4段階に評価するが,教室の最近の切除79例につ き, この手術評価と予後の検討をする(表4). まず治癒切除については,術後約
3
割が死亡し ているがその大部分は3年以内の死亡であり 3 年生存率は約75%である.他の手術評価につき 3 年生存をみると,準治癒切除56%,相対的非治癒 切除50%,絶対的非治癒切除25%となる. 教 室 例 に よ り 治 療 内 容 と 予 後 と の 相 関 を み た が,ここに述べたように術式により,又,手術評 価により治療成績は明らかに異なり,治療成積向 上のためには,全摘を要す程に癌が進行しないう ちに発見することと,手術に際しては,一段でも 高い評価,即ち広範囲の廓清をした手術をするこ とが大切である. 早期の症例程予後が良いのは当然であり,因み に橋本報告同(東北大抗研, 1982)によると I期 肺 癌の5年生存率74.4%, 10年生存率52.0%と非常 に良い成績を挙げており,それよりさらに阜期の 肺癌については,於保20)(東京医大, 1982)が腫癌 径2cm以下, Po, no, M。のいわゆる早期肺癌で, 5 年生存率86.7%,10年生存率75%とし、う成績を挙 げている.後藤21)(鹿児島大放射線科, 1979)はや はり I期肺癌65例につき, 3年生存率44.7%,5年 生存は26.5%と報告したが,このうち放射線治療 のみによるものは 3年生存率33.3%,5年生存 率16.6%であるのに対し,手術又は手術+放射線 表4 原発性肺癌,切除手術例,手術評価と予後 (N =79.表の数値は%) 術後期間 6以ヵ内月 以1年内 以3年内 以5年内 5年以上 小計 合計 治(N癒=切30)除 死亡 7 10 7 3 27 100% 生存 10 10 33 13 7 73 準治癒切除 死亡 16 16 12 44 100% (N=25 生存 28 20 8 56 相非(治対N的癒= 切16除〕 死亡 19 12 19 50 100% 生存 31 13 6 50 絶非(対治N的癒ニ切8)除 死亡 75 75 100% 生存 12.5 12.5 25 〔東京女子医大外科〉-117-術式|匿:i#.~j'~'!~ii!l ~盟区麹盟覇
発見のきっかけ 人間ドyク,集検 (N=18) 他 疾 患 治 療 中 (N=36) 癌 症 状 出 現 (Nニ30) (東京女子医大外科) 図7 原発性肺癌切除例 (N=84) 発見のきっかけと手術術式 では3年生存率51.7%,5年生存率31.8%となっ ている これらの報告の如く早期例については,一応の 手術が行なわれれば,その成績は現在でもかなり 期待出来るものである. ところが, III又はIV期肺癌になるとその成績 は悲惨であり,前述の橋本報告附ではIII期の5 年生存率13.6%,10年生存率9.8%であり, 1,11期 に比べ非常に悪いー岩報告22)(金沢大学, 1981)で はI期肺癌の3年生存率及び5年生存率がいずれ も60%以上であるのに対し, III期の3年生存率は 約1割, IV期の3年生存率が0 %である.末舛報 告23)(国立がんセンター, 1982)による5年生存率 は, Ia期61%,Ib期34%であるのに対し, III期 14%, IV期1%である. 以上の他のいずれの報告でも III,IV期肺癌の 治療の困難さを述べており,肺癌治療のためには 早期発見がいかに重要で、あるか理解出来る. そこで,すでに第35回日本胸部外科学会総会 (1982)で著者24)が報告した内容の一部を繰り返す ことになるが,視点を変えて発見のきっかけと治 療成績の関連につき検討して,早期発見の重要さ について述べる. 図7は切除出来た肺癌例につき,発見のきっか けと実施された術式を調べたものだが,人間ドッ グや集検で発見された群及び他疾患治療中に発見 された群に比べ,自覚症状が出現してから発見さ れた群では患側肺全摘を要す例が著明に増加する ことを示す.さらに図8により同じ患者群別に手 -118 胸部自覚症状 (+)例 胸部自覚症状 (一)例 集検又は人間 ドック例 治癒切除 準治癒切除鶴
自
書
.J-一一一一-.J 図8 癌切除例における手術根治性の評価 (N=84) (東京女子医大外科〉 術評価をみると,自覚症状出現群では治癒切除の 減少と絶対的非治癒切除の増加が明らかである. 肺癌の病期を判定する上で,腫癌の大きさと性 状 (T因子), リンパ節への転移 (N因子),胸膜 浸潤 (p因子〉の3者が重要なこと矧-28)は前述し たが,教室例によりこれらを検討すると(図9), 自覚症状出現群ではこれらのいずれもが不良であ る.切除のためには大手術を要する場合が多く, そのわりに根治性の低い手術評価となってしまう ことがわかる 表5
,6
は於保報告20)によるが,集検により発見 された肺癌の病期についての検討を示し,集検群 に比ベ,非集検群では遅れた病期のものが非常に 多いこと,及び病期が進んだもの程集検により発 見されたものが少なくなることがわかる.非集検 群ではIII期 及 びIV期のものが各々4割にもな るが 3年生存率がIII期例で10-15%,IV期例 で0-
数%である事実を合わせ考えると,現在の 一般的な肺癌治療レベルでは,症状が出現してか ら発見された肺癌は 3年以内に少なくも 7割以1)
T
因子 X線 気 管 支 鏡 で 無 TX:所 見 。 分 泌 液 で 証 明。 T1 主 径3.0cm以 下 主径3.1cm以 上 T2 胸水(ー),腫楊中 枢 部 か 気 管 分 岐 部 より2cm以 上ο 隣 接 臓 器 に 浸 潤 T3 胸水(+)他 2) N因子 て )-)-i +一+一れ ( 一 (-z に一て一 3 群一ま一は o 一群一又 ) 立 山 1 -2 ) H 引一第一紅同 , , .o
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5
例は一応 開胸手術を試みたものの切除出来ずに閉胸したも のである.前者の原因としては6割が反対側肺, 表7 原発性肺癌,非切除例の原因(Nニ90) 1.手 術 不 能 例(N=65) i)縦隔浸潤…・・…....・H・...・H・...……23% ii)癌性胸膜炎・ ・・H・H・..,・H・...・H・"15 iii)反対側肺転移・・ …....・H・...・H・....8 iv)鎖骨上リンパ節...・H・...…………"42 又は頚部リンパ節 転移 v)遠隔臓器転移・・H・H・-… ・・H・H・....12 100 II. 試験開胸例 (N=25) i)縦隔浸潤....・H・...…・・…....・H・...68% 詰〕胸壁浸潤…...・H・-………・…・・...・H・..32 100(
東
1
1
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科
)
遠隔リンパ節又は臓器に転移していたものであ り,後者は7割が縦隔浸潤 3割が胸壁浸潤が原 因であった. 肺癌を切除出来るかどうかを適確に診断するこ とは無駄な単開胸を避けることにつながるが,そ れには縦隔浸潤を正確に読むことが重要である. ← 119間で目立った改善はなく, ここにも進行肺癌治療 の壁の一つを見ることが出来る. 胸壁の高度浸潤は,切除不能となるもう一つの 要因であるので,
1
0
例の胸壁浸潤型肺癌について 検討すると(表8),このうち,絶対的非治癒切除 これら非切除例のうち,最近1
0
年間の症例で東 京女子医大以外に転院した症例を除いた34例につ き,治療後経過をみると(図1
0
)
,長期生存例は例 外的であり,大部分は1
年以内に死亡しているこ とは前述の如くである.死亡迄の期間は最近1
0
年 l i l i -l 聞 例 例 月 存 亡 ヵ 生 死 4 一 一 試験開胸例 回 手術不能例 59 年 58 年 57 年 53 年 52 年 50 年 (東京女子医大外科) 原発性肺癌非切除例経過 CN=34) 〔女子医大以外に転院した例を除く〉 図10 表8 原発性肺癌 絢壁浸潤型の予後 CN=lO) 、 ,dロA 療 生 存 期 間 症 例 手 術 化学療法 免疫療法 放射線治療 2、町 1y 50-916 試験開胸 FT, OK-432ど竺
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53-1125 {f MMC~
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Co4000 55-62 11 MMC OK-432 Co 2000協
55-1397 11~
~
Co 1600 56-686 左上葉切除~
OK-432 Co5000 57-373 試験開胸~
OK-432 Co6500 57-676 11~
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58--91 左上葉切除 MMC Cisρlatin ど 士 /Co 5000 非切除群 平 均 切 除 群 (東京女子医大外科) 542~ 558 -120ながらも一応主病巣を切除出来たのは2例に過ぎ ない.術後生存期間は非切除群で平均3カ月,切 除群で平均7カ月であり,教室例でみる限り進行 癌とはいっても出来るだけ切除した方が成績が良 し 、 だが,一般的にはIII期以上の進行肺癌(胸壁浸 潤型癌もこれに含まれるが〉に対する外科治療の 適応については,賛否両論があり,必ずしもどち らが主流という訳ではない.賛成者は,小数では あっても術後長期生存例が得られるので,積極的 方針をとって長期生存例を増やすよう努力すべき であるとし、う考えであり,反対者は,多少の生存 例を得られても全体としては非常に成績不良なの で,手術以外の方法をとるべきであるというもの である. 両者とも各々の治療成績を根拠にしているのだ が,実際には極めて不良な成績の中での議論であ り,岩22)の主張する如く,各々のphilosophyの相 違を示すに過ぎず, どちらかに決定出来る大きな 理由はない様に思える. これら進行肺癌の外科治療ということになると 当然のことながら拡大手術が対象となるので,次 にこの点につき述べる. 拡大手術については,原則的には,担癌肺とと もに周辺臓器又は組織を可及的に一括合併切除す る積極的外科療法ということになり29) 具体的に は表9に示された様々な術式が挙げられる制.本 邦における拡大手術の実際については,昭和55年 の日本肺癌学会での「肺癌の拡大手術
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のアンケー ト調査3りがあり,全集計例489例のうち,壁側胸膜 のみの切除例も含む胸壁合併切除55.4%,心膜・ 心・大血管を含む合併切除30.3%,横隔膜合併切 除6.5%,その他7.8%であり,拡大手術とはいっ ても,実際のところは壁側胸膜又は胸壁の一部を 切除する程度のことが大半である. 術式を個別的にみると,拡大手術に含めるかど うかに議論のある場合もあり,例えば壁側胸膜合 併切除について,野々山鈎)は,拡大手術の範時に含 めてないが,著者も同じ意見である.元々陳旧性 胸膜炎の既往を有する患者は多く,その多少高度 な場合は,むしろ胸膜外性にアプローチした方が 表9 進 行 肺 癌 に 対 す る 拡 大 手 術 1)T,症例 a)他臓器浸潤例 1)胸壁合併切除術 2)心膜合併切除術 3)心大血管合併切除術 4)胸膜合併切除術 5)横隔膜合併切除術 6) 食道合併切除術 b) 気管分岐部より 2 cm以内の癌浸潤 1)気管形成術 2)気管支形成術 Csleeve lobectomy) 3)腕摘除術 c)ー側無気肺,閉塞性肺炎 1)肺機除術 2) 気管支形成術 d)胸 水 1)護側胸膜 stripping 2) 胸膜肺摘除術 2) N,症例 a)広範囲縦隔郭清術 b)胸骨縦切開縦隔郭清術 c)心膜合併切除術 d) 心大血管合併切除術 3) M,症例 原発巣,転移巣合併切除術 a)鎖骨上窓リンパ節転移 b)骨転移 c)脳転移 d)肝転移 e)内転移 f)その他 4)他肺葉浸潤例 a)二葉合併切除術 b) 他葉部分〔区域)切除術 c)肺摘除術 (文献30より引用〕 容易に切除出来るので癌の根治性とは無関係に, 壁側胸膜合併切除をする場合も多い.さらに多少 でも胸膜浸潤が認められた時の癌の根治性を考え た場合は,壁側胸膜を剥離切除する程度では根治 性に関しては不充分であり,この程度を拡大手術 に含めるのは問題のあるところと考える.又,著 者は,乳癌や消化管手術における拡大手術を考慮 した場合,二葉切除,他肺葉部分合併切除,肺摘 除等を拡大手術に含めることは一考の余地あると ころと考える. 患側肺全摘例(肺摘例〉を拡大手術の範時に入 れるかどうかはともかく,その適応と予後を考え た場合,多くの問題を含むので、肺摘術の実際につ き簡単に述べる. まず教室例での3年生存は約5割であることは 前述したが,これはむしろ成績の良い方であり, 大岩間(千葉大学肺研, 1981)報告での全摘例術後 生存率は, 3月が82%,6月が61%,1年が32%, 2年が19%,3年17%,5年11%である. そもそも肺癌の治療成績が病期により著明に異 なることは前述したが,全摘例の予後についても 同様であり,辻33)(長崎大学外科, 1977)のIII期-121-及びIV期癌全摘例の5年生存率は3.8%,岡本34) (千葉大学肺研, 1977)のIII期癌全摘例の5年生 存率は0.9%と極めて不良である. 肺全摘に対しては,それによる癌根治性と同時 に,手術侵襲による全身状態の低下も考慮する必 要がある.大岩32)は肺全摘例の全身状態悪化に及 ぼす影響は予想以上であり,術後合併療法に対し ても悪影響が及ぶので,準治癒手術以上の根治性 が得られる場合に行なうべきであるといい,イ中 田お)はー側肺動脈閉塞試験や負荷心電図を行なっ て術後機能を充分に検討した上で適応を決めるべ きであるという. 他にも, 70歳以上の高齢者では避けるべきであ るとか円肺性心,心筋梗塞・慢性心不全等の循環 器系障害者や,ある程度全身衰弱を来たした場合 は適応がない37)等々,機能面からみた術後困難症 を重視して適応を制限した意見が多い. 以上述べた如く,現在の肺癌治療成績について は多くの困難を認める.そして外科的肺癌治療の 成績改善のためには,①早期発見早期切除,②根 治性を高めるための外科的工夫,③術後の呼吸循 環機能維持と合併症予防が重要である.
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I.教室例にみる工夫改善 そこで,最近の教室研究でどの様な工夫を行 なっているかを整理し,具体例を述べる.表10は その一覧である. 表10最近の教室例にみる肺癌治療内容の改善 I 根治性を高めるための外科的工夫 1)系統的リンパ節廓清…症例によっては反対側 縦縞リンパ節も除去 2)拡大手術 i )胸壁合併切除 ii)心嚢合併切除 3)新Lい器械の使用 i )レーザーメス ii)針状鏡 II 術後機能を保持するための外科的工夫 1) Sleeve Resection(袖状切除〉 2)肺動脈パイパス作成による術後肺高血圧症の 予防(右腕全摘の場合〉一-実験段階 III 手術適応の拡大 1)早期例司疑わしきは手術 2)術後管理の進歩とPoorRisk症例に対する適応. (東京女子医大外科〕 まず,手術的な根治性を高めるためには充分な リンパ節廓清が必要である.最近はさらに一歩厳 密に考え,症例によっては反対側縦隔又は反対側 肺門部迄廓清することを要求されるようになっ た.従来の開胸アプローチ即ち肋間法による患側 開胸では,これは不可能であり,最近は胸骨縦切 開法による両側廓清が検討されている38) 我々も 本法は広範囲の廓清をするという目的に適ってい ると考え,最近の症例で施行している.写真1は 本法により,充分に縦隔が露出し,しかも両側肺 に対する手術操作が可能なことを示す.写真2
は 写真 l 胸 骨 縦 切 闘 に よ り 縦 隔 及 び 両 胸 腔 を 露 出. M:縦隔.lP::左肺.rP:右肺. 写真2 胸 骨 縦 切 開 術 後(42歳 男 性). 右 肺 葉 切 除 , 及 び縦隔,左肺門リンパ節廓清を行なった. -122-4
2
歳男性で,右肺上葉の気管支分岐部に生じた腺 癌の術後である.この手術創により右上葉切除及 びリンパ節廓清,縦隔リンパ節廓清,左肺門部廓 清を行なった. 次は胸膜外アプローチを示す. 写真3
は58
歳男性.右上葉原発のI
I
I
期肺癌で 胸壁肋膜に浸潤しており,胸膜外剥離により胸壁 軟部組織を含めて上葉切除を行なった. 写真4は68歳男性.さらに高度に胸郭浸潤して 肋骨迄侵されているため,肋骨を含めて胸壁合併 切除をした. 写真3 胸膜外アプローチの術中所見.T腫癌,Pl 胸膜, W:胸膜外胸壁. 写真4 肋骨を含む胸壁合併切除を行なった手術標 本.L 肋骨, W:胸壁筋肉. 写真5
は6
7
歳女性で左上葉原発腺癌で,心膜よ り肺動脈壁に浸潤し, これらを合併切除したもの で,切除された左肺上葉とそこに癌性癒着せる心 膜を示す. 写真6
は5
9
歳女性で,左上葉転移性肺癌(昭和 52年に胃癌で手術)により,炭酸ガスレーザーに より転移巣を含む区域切除をした後である. 写真 7は教室の樋口(現在当院形成外科学教室 に在籍〉による家兎実験で,炭酸ガスレーザーに より肺表面をvaporizing(蒸灼〉 した所で-ある. 炭 酸 ガ ス レ ー ザ ー の 機 能 と し て はcutting, vaporizing, coagulatingの3つがあるが,今のと ころ肺手術に際してこれらの作用を目的にして炭 123 -写 真5 心外膜合併切除例手術標本.PC:心外膜, H:肺門部. 写真6 炭酸ガスレーザーにより区域切除(1))写 真7 炭酸ガスレーザーにより vaporizing.家 兎 実験〉 酸ガスレーザーを使用したとL、う報告は見ない. 我々は肺癌手術後に皮膚の手術搬痕に一致して局 所再発した2例を経験したが,術後の胸腔内再発 も相当に多いことを合わせ考えると,肺癌では術 中に癌細胞を散布する可能性はかなり高いと思わ れる.特に腫癌ぎりぎりで切断せざるを得ない場 合に, レーザーメスを使用することで癌細胞散布 を少しでも減らすことが出来ると考えている.ま た,開胸して胸膜播種を認めた場合,通常は制癌 剤を胸腔内に散布して閉胸するが,播種が軽度又 は小範囲であれば閉胸する前にさらにレーザーメ スでvaporizingした方が良いと考えている.以 上,根治性を少しでも高めるための工夫を述べた が,次に肺摘後の循環機能を維持するための検討 を述べる. 図11は教室の高橋の犬実験によるもので,右肺 全摘をすると,左房圧(LA)は変動しないが,肺 動脈圧 (PA)及び中心静脈圧 (CVP)が時間とと もに上昇していくことを示す.これは肺摘後のか なり早い時期から肺高血圧症が生ずることを示す ものである.これが長期に続くと右心不全を生ず るが, これは大循環系よりの環流静脈血を受ける 肺循環系の血管床が著明に減少したことが原因で ある.右肺全摘後の右心不全は,臨床でも術後困 LA PA CVP n=6 5ト25 PA 4f201 CVP 3f15 /f//v
f
ウ
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2fl0 1f5 全書IJ前 全 刷 櫨 30 60 90 120 150 180min 図11 右肺全摘後のPA,LA,CVPの変化 (犬実験〉 難症の重要な問題であるが,高橋の実験データは これを裏付けるものである. それで少しでも肺動脈血を他に逃がして肺動脈 圧を下げることは有意義であると考え,右肺動脈 の断端と肋間静脈聞にbypassを作成しその効果 を検討した.図1
2
は教室の小野田制の犬実験結果 によるものだが.bypass作成犬 (B群〉は時間と ともに肺高血圧が改善することを示し,右心不全 予防のために有意義と思われた. もちろんこれらは未だ実験段階にあるわけであ り,臨床応用に対しては手技的な問題を検討する 必要があるし,又bypassが大きければ大量の血 液がから回りすることになって酸素交換能率を下 げ過ぎることになるので,臨床的な至適bypass 流量も検討する必要があるのだが,肺全摘後合併 症を少しでも軽減するために本法は有意義なもの と考えている.生理的な良好状態を保つためのも う一つの考えは,病巣部を確実に切除するのと同 時に健常肺を少しでも多く残存することであるが そのために従来の如く,病巣部及びそれより末 梢部を含めてー塊として大きく取り去ってしまわ ず,病巣部のみ必要範囲を切除し,残りは気管, 気管支,及び症例によっては血管についても吻合 をして末梢健常部を残す術式,郎ちsleeveresec -tion(袖状切除〉をする努力をしている. 写真8
は4
9
歳男性で,右肺上葉気管支 (上幹〉 一 124mmHg ひ一一-0A群(n=6) ・一一・B群(n=8) mean 土so 301 A 群ネ*水 不*不 本** * * * ネ ホ * * * *** *** 281 日 群 * ** ネ** **水 不 * * 6 4 2 0 8 6 4 2 2 2 2 2 1 1 1 1
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A群 日 群 * 10 ふ T 麻目半導入時全嫡前 全摘珪 全摘撞 閉胸憧30分 60分 (開胸時) (開胸時) (閉胸時)(シャ〆ト制時) ユド* ** 90分 120分 150舟 180骨 図12右肺全捕後の肺動脈圧の変動(犬実験).A群。非処置群.B群。肺動脈肋間静 脈問パイパス群. 写真8 袖状切除 (SleeveResection)による右上葉 切除標本.切除された右主幹及び上葉枝ロを示す. (49歳男性〉 に生じた腺癌で,右主幹を含めて袖状切除(図13) したものである. 写真9は65歳男性.やはり右上幹に生じた腺癌 で,袖状切除した標本の割面である.癌腫が気管 支内腔に突出してポリープ状に発育した状況を示 すが,通常の肺葉切除では癌の一部を取り残すこ とはこの写真で明らかである.V
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肺癌に対する開胸方針の考え方と 早期肺癌 手術に際し,癌がどの程度に確診されているか により,手術方針に多少の変更がある(表1
1).例 えば,既に細胞診で癌が確認されていれば最初か ら肺葉切除又は肺全摘で臨むことになり,癌が病 理組織学的に確認されてない場合はまず腫癌摘出 又は区域切除をして術中ゲフリールにより病理検 査を行ない,癌が確認されてから引き続き根治手 術を行なうことになる. 従来の一般的な方針としては,癌が確認される か,又は相当に疑いが濃い場合に外科医の手に委 ねられて来た.だがこれでは早期肺癌の多くを逃 がしてしまうことになる.我々の症例の中には, 年に2回の定期検診を14年間も受けていずれも異 常を指摘されながら,結核であろうと思われて経 過をみているうちにpancoast症状が出現するに 致った例制を始め,癌としての確診がつかない場 合に,抗結核剤によるため治療を受けていた例は 多いが,その他にも,医師から異常を指摘されな がらも確信ある説明がないので,患者が軽視して しまい精査を受けないうちに進行癌になった例 等,患者自身の心遣いは勿論,医師側の注意と配 慮によっては,もっと早い時期に発見されたであ ろうと思われる症例がかなり多い. 於保則t土経験例のうち70%以上が来院時に既に 病期III以上の進行癌であると述べ,進行癌たら しめた理由として, 自覚症状がありながら医師を 125T 気 管 r-8 右主気管支 1-8 左主気管支 u 上葉筏口 m 中葉枝口 @ 癌 腫 図13写真8症例のシェーマ. 写真9 袖 状 切 除 さ れ た 右 上 葉 の 割 面.上葉気管支口 より主幹に顔を出した癌腫を示す_(65歳男性〉 訪れずに放置したとしづ患者自身の責任と, 一方 で,医師を訪れながら誤診された例,異常を発見 されながら確認が得られず放置され,進行癌に 表11 肺癌治療における関胸手術の適応と方針 I 術前細胞診で確診されてい る場合(特に肺門部型) II 検査上癌が強〈疑われるも 病理学的に確診されてない 場合 (特に肺野型) III 良性と恩われるが,悪性を 否定出来ない場合 肺葉切除 区域切除
ι
病理検査 ι 肺葉切除 腫癒摘出又は一部生検ι
病理検査ι
肺葉切除 (東京女子医大外科〉 なって初めて肺癌と診断された例など,医師の認 識不足から見過ごされた例も少なくないと述べて いる.林41)は進行肺癌4
2
例につき,医療機関受診か ら診断確定までの期間を調べたが,それによると 1カ月以内に確定したのは3例 ( 7 %)しかなく,1
-3
カ月1
8
例(
4
3
%
)
,3
-6
カ月1
1
例(
26%
)
,6
カ月以上1
0
例(
2
4
%
)
と,医師側因子による診 断の遅れが目立っと述べている.これらの反省と 検討により,我々は,外からの生検がし難し、小陰 影のうちに,どちらかというと診断を目的とした 開胸手術を行なって早期癌を発見するという,貴 重な症例を得るようになった. 写真1
0
は斯かる症例である.患者は6
0
歳女性だ が,感冒に擢患して近医を受診し,偶々胸部X線 検査を受けたところ,左下葉に異常陰影を指適さ -126-語
写真10 (60歳女性〉左下葉の早期肺癌X線像 (1)) 写真11 写真10と同症例CT像 (1> ) れて当院呼吸器内科を紹介された.このX線では 陰影が小さく詳細は明らかでなくて悪性の診断は 得られない.写真1
1
はこの患者のCT
像で,左肺 に小腫癌陰影を認めるがやはり悪性所見とは考え 難い.針状生検による細胞診ではn
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だが, 悪性を完全には否定出来ないとし、う呼吸器内科医 の感により開胸生検をしたところ,径1cm末満の 腫癌があり,術中凍結切片で腺癌が証明された. 次は75歳の男性でやはり非常に早期の転移性肉 腫である.昭和57年3月に左第8肋骨細網肉腫に より,当院整形外科にて第7-9
肋骨切除を受け た.術後抗腫蕩剤及び放射線治療を受けたが,左 胸水貯留と全身状態悪化が著るしく,術後1
カ月 写真12 (75歳男性〉転移性肉腫単純写 真 (1> ) 写真13転移性肉腫断層写真 (1> ) 目より外科に転科した.外科転科後,胸水は漸時 消失し一般状態も改善した. ところが5
8
年4
月の 胸部X線 (写真12)で、右下葉に径O.7cmの円形陰 影が出現.直ちに断層写真 (写真13)を受けたが これらの検査では悪性を思わせる所見は得られな かった.だが臨床経過を考慮の上で右下葉切除術 を施行した.切除標本の病理組織検査の結果は転 移性細網肉腫であった.術後1年半経過した現在, 他に再発は認めず経過は良好である.-127-表12外科的肺癌治療の限界(N二127) 一当科治療後,他科又は他院に転じて治療を継続した例ー ※外科入院中に放射線治療を受けたのは外科所属とした. ※外科と他施設で共同治療の場合は外科所属とした. 年度 外継続科で 転内科科に 放射線科 整形外科科 他転院院に 外帰国国に に転科 に転 553 11 2 1 54 11 2 3 1 55 22 1 2 56 27 5 2 3 57 12 3 3 58 8 4 1 1 l 1 合(%計〉 (7911.7) (112.66) (6.8 3) (01 .8) (71.08) (0.1 8)
(
東
主
三
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ニ
ア
)
これら2
例 の 如 く , 診 断 未 確 定 の 時 期 に 開 胸 生 検を行なって発見される早期肺癌は今後増加する と思われる.V
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I.肺癌治療グループの確立と 呼 吸 器 外 科 の 立 場 肺 癌 治 療 が , 手 術 , 制 癌 剤 , 放 射 線 の3者によ り 支 え ら れ て い る こ と は 他 部 位 癌 と 同 様 で あ る が,特に治療成績が思わしくない肺癌に於いては, 手術以外の治療も非常に重要で、ある.表12は最近 5年間の127例について,外科退院後の状況を示す が3
割は治療の主体が外科以外に移っている. 手 術 後 も 外 科 で 縦 続 治 療 し て い る 症 例 中 約3
割 は 内科又は放射線科で並行治療している. 各 科 , 各 分 野 が 次 第 に 専 門 化 し つ つ あ る と 同 時 に各々の守備範囲が明らかになりつつあり,一診 療科で肺癌診療の全てを行うことは不可能となっ てきている.それだけに各科の特徴を生かした協 力体制を確立することが必要である. 東 京 女 子 医 大 に 於 け る 肺 癌 治 療 は , 内 科 , 放 射 線 科 , 病 理 学 教 室 , 外 科 等 が , 合 同 の 症 例 検 討 会 を定期的に行なっており, 日常臨床でも緊密な連 絡をとり合っているが,それにより高度の肺癌治 療と各科のレベルアップが出来ると考えている. さらに転移性肺癌については,何らかの癌治療を 行なっている全科が関与する問題であり,これら の各科の協力と理解も不可欠である. -128 そ の 中 で 我 々 外 科 の 立 場 , あ る い は 使 命 は , 可 及 的 に 術 後 機 能 を 維 持 し つ つ , 完 全 な 廓 清 を 目 指 した安全な手術と管理を確立することにあると考 えている.I
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結 語 現 在 の 肺 癌 治 療 の 実 態 と 問 題 点 に つ き , 教 室 例 により検討し,さらに多少の文献的考察も加えた. そして,最近の治療成績は年々向上しつつある が,それにしても進行癌については依然として悲 惨 な 状 況 に あ り , 根 本 的 に は , 早 期 発 見 早 期 治 療 が必要なことを強調した. 稿を終るに臨み,今回のシンポジウムにて発表の機 会を与えて下さった女子医学会会長の吉岡守正教授, 座長の小林誠一郎教授に深甚なる謝意、を表します. 又日頃肺癌治療に関して様々に御指導御鞭縫頂い ている恩師織畑秀夫教授,呼吸器内科の滝沢敬夫教 授,金野公郎教授,放射線科の重回帝子教授,病理学 教室の梶田 昭教授および,これら教室の諸先生方に 心より御礼申し上げます. 文 献 1)石川七郎ーほか・日本胸部外科学会30年の歩み. 第30回日本胸部外科学会 (1977)2
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日本TNM
分類肺癌委員会:全国集計よりみた 肺 癌 治 療 成 績 の 年 次 的 向 上 . 癌 の 臨 床 27 217-223 (1981) 3)鈴木 忠・ほか・外科的呼吸器疾患.第 1報.最 近の外科的胸部疾患の流れと,それにおける肺癌 の比重,及び発見の動機による手術評価の検討. 東女医大誌 538-18 (1983) 4)黒石哲生・富永祐民・広瀬かおる目日本における がん死亡ー厚生省人口動態統計資料から一.癌の 臨床 27421-517 (1981) 5)藤本伊三郎・ほか:日本におけるがんの羅患一全 国地域がん登録資料から一.癌の臨床 27 517 -536 (1981) 6)飯沼武,舘野之男・ほかわが国における癌擢 患の将来動向-2000年までの予測 .癌の臨床 27 : 101-107(1981) 7)青木国雄:日本人のがんの将来予測とこれからの がん対策.公衆衛生 43452-459 (1979) 8)白石昌嵩・有本弘子.がん患者発生数の将来推計. 厚生省がん研究53ー7報告書 159-182(1980) 9)栗原登,早川武彦.肺癌増加の疫学的観察.肺 癌 22153-164(1982) 10)瀬本三雄世界各国のがん死亡 46か国における 部位別癌訂正死亡率(1975).癌 の 臨 床 27395~420 (1981) 11)富 永 祐 民 , 環 境 因 子 . 現 代 医 療 15765~769 (1983) 12)中尾 丞・ほか・肺癌切除症例の予後を左右する 因子の多変量解析.第35回日本胸部外科学会総会, 名古屋(1982) 13)半沢儒・ほか.早期肺癌切除例の臨床病理学的 検討.第35回日本胸部外科学会総会名古屋(1982) 14)松島伸治・ほか.非切除N2肺癌〔試験開胸も含む〉 の検討.第35回 日 本 胸 部 外 科 学 会 総 会 名 古 屋 (1982) 15)船津秀夫:進行肺癌の合併治療.今日の臨床外科 1879~91 メジカノレビュー社東京(1980) 16)成毛詔夫:外科治療.Medicina 12 1822~ 1824 (1975) 17)鈴木千賀志:肺癌治療の現況と将来の展望ー外科 治療を中心に .日胸 35 1 ~ 11(1976) 18)山 口 豊 ・ ほ か 第 凹 期 肺 癌 切 除 と 併 療 法 の 検 討.日外会誌 77(臨時増刊号)1261 (1976) 19)橋本邦久・赤荻栄一・仲田 祐・ほか:切除遠隔 成績と予後に関連する因子.外科Mook,No. 25 肺癌 156~162金 原 出 版 東 京 ( 1982) 20)於保健吉・斉藤雄ニ・加藤治文・ほか:早期肺癌 治療成績.外科MookNo. 25 肺癌 38~45 金原 出 版 東 京 (1982) 21)後藤有人・瀬口頼久・豊平 謙 期 肺 癌 の 治 療 成績.肺癌 1911~16 (1979) 22)岩 喬・渡辺洋字.進行肺癌に対する補助療法 併用による拡大手術の成績とその意義.肺癌 21 427~437 (1981) 23)末舛恵一.姉癌外科治療の動向.外科Mook,No. 25,肺癌 30~37 金原出版東京(1982) 24)鈴木 患・織畑秀夫・ほか:肺癌の初診時自覚症 状 と 進 展 度 及 び 手 術 評 価 の 検 討 . 日 胸 外 会 誌 30(臨時増刊号) 1788 (1982) 25)成毛詔夫:肺がんの拡大進展と外科手術の相関. 日外会誌 68 1607~ 1620 (1967) 26)松村公人・佐藤展将・山口 豊 :