Title
酸化亜鉛型色素増感太陽電池の高効率・高再現作製プロセ
スの開発( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
屋根, 剛
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第439号
Issue Date
2013-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/47938
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。43 -氏 名 ( 本 籍 ) 学 位 の 種 類 学 位 授 与 番 号 学 位 授 与 日 付 専 攻 学 位 論 文 題 目 学位論文審査委員 屋 根 剛(奈良県) 博 士(工学) 甲第 439 号 平成 25 年 3 月 25 日 環境エネルギーシステム専攻 酸化亜鉛型色素増感太陽電池の高効率、高再現作製プロセスの開発
(Development of high performance and highly reproducible fabrication process of zinc oxide type dye-sensitized solar cell)
(主 査)教 授 守 富 寛
(副 査)教 授 松 居 正 樹 教 授 杉 浦 隆 教 授 吉 田 司
(山形大学) 論 文 内 容 の 要 旨
色素増感太陽電池(Dye-sensitized solar cell、DSSC)は、低価格な次世代型太陽電池として期待されて おり、その中でも酸化亜鉛(ZnO)を光電極に用いた DSSC は、一般に用いられている酸化チタンを用いた DSSC に比べて低温で作製可能なことから、ガラス基板に比べて安価な樹脂基材が使用可能となる。これに より、さらなる低価格化、およびフレキシブル化、軽量化による可搬性の向上が期待できるため、DSSC の 普及に貢献できると考えられる。ZnO 型 DSSC の開発を進めるためには、ZnO 多孔質薄膜の成膜条件や増 感色素の探索などを行う必要があり、これらを効率的に行うには、高い再現性で、高エネルギー変換効率が 得られるZnO 多孔質薄膜の成膜方法と DSSC 作製方法の確立が重要となる。また、DSSC の普及を促進す るには、樹脂基板および大型化への応用展開が必要である。そこで、本論文では ZnO 多孔質薄膜成膜法に ついて2 つの方法を検討し、高効率・高再現性を備えた DSSC 作製プロセスの確立と、その樹脂基板、大型 モジュールへの応用展開を行った。 第1 章は序論であり、本論文の学術的背景と目的・目標について述べた。 第2 章、第 3 章では、酸化亜鉛ナノ微粒子を用いた塗布成膜法についての検討を行った。第 2 章では、ZnO 多孔質薄膜を高再現に得る手法としてスクリーン印刷法を用い、得られた ZnO 多孔質薄膜を用いて作製し たDSSC の光電変換性能を評価することで最適化を行った。その結果、分散性を向上させると同時にチキソ 性のある低粘性比の酸化亜鉛ナノ微粒子ペーストがスクリーン印刷に適していることを見いだした。さらに、 スクリーン印刷の諸条件を最適化することで、クラックが無く平滑で均一性の高い ZnO 多孔質薄膜を得る ことに成功した。得られた ZnO 多孔質薄膜は、均一性が向上し、微粒子同士の接着が改善されたことで変 換効率を含むすべての光電変換性能が向上すると共に、再現性も向上することがわかり、スクリーン印刷法 を用いた高効率・高再現を兼ね備えたZnO 多孔質薄膜成膜プロセスおよび DSSC 作製プロセスを確立する ことができた。 第3 章では、第 2 章で開発したセル作製プロセスの樹脂フィルム基板および大型化した樹脂フィルムモジ ュールへの適用を検討した。インジウムドープ酸化スズ(ITO)膜付き樹脂フィルム基板を用いて、第 2 章 で開発したスクリーン印刷を用いたセル作製プロセスでミニチュアセルを作製したところ、従来用いていた フッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜付きガラス基板に比べ光電変換性能は低下した。この原因を、電流-電圧 測定などの分析手段を用いて究明した結果、DSSC 作製プロセスに問題はなく、基板自体の性能に原因があ ることが明らかとなった。また、モジュールにも開発した作製プロセスは適用可能であることを明らかにし、 開発したDSSC 作製プロセスの樹脂基板および大型モジュールへの応用展開が可能であることを示した。 第4 章から第 6 章では、ZnO のカソード電解析出による成膜法(電析法)についての検討を行った。第 4 章では、電析法による ZnO 多孔質薄膜の成膜において、高生産性と高再現性を兼ね備えるプロセスの検討 を行った。回転ディスク電極(RDE)方式を用いることで高再現性が得られるが、円形の成膜形状、RDE の回転中心と成膜中心の一致の二つの条件を満たさなければならないことがわかった。この結果を基に、生 産性の向上を目的として八個のRDE を同一の電解槽に備えた電析装置を設計、作製することを試みた。評 価の結果、作製した八連式RDE の動作には全く問題が無く、この装置を用いて成膜された ZnO 多孔質薄膜 はほぼ同一と見なせるほど再現性が高いことが明らかとなり、電析法による高再現成膜手法を確立すること ができた。
44 -第5 章では、第 4 章で開発した八連式 RDE 成膜装置を用いた高再現性 DSSC 作製プロセスの開発を行っ た。電析法により得られるZnO 多孔質膜中の不純物や膜に吸着する有機物が DSSC の光電変換性能を低下 させることを見いだし、その対処方法を明らかにした。また、ミニチュアセルの構造と作製方法の改良を行 い、密閉型構造とそれに対応したセル組み立て方法を開発することにより、従来法では、変換効率4.40 %、 平均値に対する標準偏差の割合(変動係数)17.0 %であったものが、標準偏差 5.12 %、変動係数 2.6 %とな り、高効率と高再現性の両方を達成することができた。 第6 章では、樹脂フィルム基板を用いたモジュールへの応用を目的として、大型基板電析装置の検討を行 った。大型基板では回転により生じる層流を用いて電析液を基板表面に供給するRDE 方式より、ポンプな どの送液手段を用いて供給する噴流方式の方が適していることを見いだし、この方式を用いた大型電析装置 を開発した。評価の結果、作製した大型電析装置を用いて成膜したZnO 多孔質薄膜は RDE 方式で作製した ものとほぼ同様の形状を示すことが明らかとなった。さらに得られた膜と第3 章で確立したモジュール作製 プロセスを用いて、モジュールを作製したところ、モジュールが動作することが確認でき、樹脂基板および モジュールにも開発した作製プロセスが適用可能であることが明らかとなった。 第7 章では、第 2 章から第 6 章までの検討を総括し、本研究の目的の一つである高効率・高再現性 DSSC 作製プロセスの確立を、2 種類の成膜方法で達成し、もう一つの目的である樹脂基板および大型化への展開 も開発したDSSC 作製プロセスが適用可能であることから、本研究の目的はすべて達成したと結論づけた。 論文審査結果の要旨
色素増感太陽電池(Dye-sensitized solar cell、DSSC)は、低価格な次世代型太陽光電池として期待されており、そ の中でも酸化亜鉛(ZnO)を光電極に用いた DSSC は、低温で製膜可能なことから、ガラス基板に比べて安価な樹 脂基材が使用可能となるという特徴を持つ。ZnO 型 DSSC の開発を進めるためには、ZnO 多孔質薄膜の成膜条件 や増感色素の探索などを行う必要があり、これらを効率的に行うために、高い再現性を持ち、高効率が得られる ZnO 多孔質薄膜の成膜方法と DSSC 作製方法の確立が重要となる。また、DSSC の普及を促進するには、樹脂基 板および大型化への応用展開が必要である。そこで、本論文ではスクリーン印刷法およびカソード電析法の2 種類 のZnO 多孔質薄膜成膜法を用いた高効率・高再現性を備えた DSSC 作製プロセスの確立と、その樹脂基板、大型 モジュールへの応用展開についての検討を行っている。 まず、酸化亜鉛ナノ微粒子を用いた塗布成膜法について高再現に得る手法として、スクリーン印刷法の検討を行 い、揮発性を抑え分散性を向上させると同時にチキソ性のある低粘性比の酸化亜鉛ナノ微粒子ペーストがスクリー ン印刷に適していることを見いだしている。さらに、スクリーン印刷の諸条件を最適化することで、クラックが無く平滑 で均一性の高いZnO 多孔質薄膜を得ることに成功している。得られた ZnO 多孔質薄膜は、均一性が向上し、微粒 子同士の接着が改善されたことで変換効率を含むすべての光電変換性能が向上すると共に、再現性も向上するこ とを確認し、スクリーン印刷法を用いた高効率・高再現を兼ね備えたZnO 多孔質薄膜成膜プロセスおよび DSSC 作 製プロセスを確立している。また、樹脂フィルム基板および大型化した樹脂フィルムモジュールへの適用を検討し、 スクリーン印刷法を用いた多孔質薄膜作製法が、樹脂フィルムを用いた大型モジュールにも適用可能であることを 明らかにしている。 次に、ZnO のカソード電解析出による成膜法(電析法)について、高生産性と高再現性を兼ね備えるプロセスの 開発、検討を行っている。作用極に回転ディスク電極(RDE)方式を用いることで高再現性が得られるが、そのため には円形の成膜形状、RDE の回転中心と成膜中心の一致の二つの条件を満たさなければならないことを明らかに した。その結果を基に、生産性の向上を目的として八個のRDE を同一の電解槽に備えた電析装置を設計、作製し、 電析法による高再現成膜手法を確立している。 さらに、樹脂フィルム基板を用いたモジュールへの応用を目的として、大型基板電析装置の検討を行っている。 大型基板では回転により生じる層流を用いて電析液を基板表面に供給するRDE 方式より、ポンプなどの送液手 段を用いて供給する噴流方式の方が適していることを見いだし、この方式を用いた大型電析装置を開発している。 作製した大型電析装置を用いて成膜したZnO 多孔質薄膜は、RDE 方式で作製したものとほぼ同様の形状を示 し、樹脂基板および大型化したモジュールにもこの作製プロセスが適用可能であることが明らかにしている。 以上、本論文ではスクリーン印刷法および電析法による色素増感太陽電池用の酸化亜鉛多孔質薄膜の高再 現性製膜に成功するとともに、セルの組み立て工程の改善による高効率化、プラスチック基板を用いた大型 化などに成功している。査読付き学術誌に2編の論文が掲載されており、論文審査は合格とした。
45 -最終試験結果の要旨 2 月 5 日に約 1 時間余りにわたって最終試験を実施した。約 40 分のプレゼンテーションとそれに続いて 質疑を行った。スクリーン印刷法および電析法による酸化亜鉛型色素増感太陽電池(DSSC)の高再現性製 膜およびセルの組み立て工程の改善による高効率化、プラスチック基板を用いた大型化などについて報告さ れた。また、質問、コメントに対しても的確な回答がなされた。この色素増感型太陽電池作製プロセスの高 効率・高再現性作製プロセスの開発は学位論文にふさわしい内容を含むと判断された。 以上のことから、最終試験に合格とした。