主要な研究成果
背 景
大気汚染物質排出量の増加が著しい東アジアでは、2001 年に東アジア酸性雨モニタリング網 EANET(事務
局:酸性雨研究センター)が正式に稼動し、汚染物質の大気中濃度と沈着量の監視が続けられている。こうし
た観測結果をモデルにより解析し、汚染物質の起源や国・地域間の流入出量を推定する研究は、以前から多く
の研究機関が独自に進めてきた。だが、各機関が推定したわが国への酸性雨原因物質の流入量には幅があった。
こうしたモデル間の不整合の原因を解明するため、当研究所と国際応用システム分析研究所 IIASA は、1998
年、モデルの比較計算を行う国際プロジェクト MICS-Asia(Model Intercomparison Study in East Asia)を
立ち上げた。現在、MICS-Asia はフェーズ 2 に入り、対象を酸性物質から粒子状物質に広げている。
目 的
引き続き MICS-Asia に参画し、越境大気汚染モデルの比較計算の要綱を作成する。また、MICS-Asia に提出
された計算結果を、粒子状物質(硫酸塩、硝酸塩)と関連ガス成分(二酸化硫黄、オゾン)の大気中濃度に着
目して解析し、参加モデル間の整合性を評価するとともに、当所モデルの予測性能を評価する。
主な成果
1. MICS-Asia計算要綱の作成とモデルの参加状況
当研究所と IIASA は、酸性雨研究センターとともに、MICS-Asia フェーズ 2 の計算要綱を作成した。モデ
ル自体の比較を行うために、計算に必要な入力データ(気象、汚染物質排出量分布、領域境界の濃度)を用
意して、その使用を強く推奨することとした。評価領域は図 1 に示す範囲とし、2001 年 3 月、7 月、12 月、
2002 年 3 月の毎日について汚染物質の濃度と沈着量の分布の計算結果を提出するよう求めた。これまでに当
研究所のほか、6 研究機関(ソウル大学、香港環境保護局、アイオワ大学、スウェーデン気象水象研究所、
酸性雨研究センター、京都大学)から計算結果が提出された。EANET
が軌道に乗り始めた中で、MICS-Asia は観測データを解析・評価するプロジェクトとして拡充が期待されている。
2. 参加モデルの整合性と当研究所モデルの性能
(1)EANET や当研究所の観測結果と比較したところ(図 2、3)、MICS-Asia 参加モデルは全般的に硫酸塩
とオゾンに対する予測精度が高く、モデル間の整合性も高かった。二酸化硫黄については、発生源付近
を除いてどのモデルも観測値に近い濃度を予測した。しかし硝酸塩については、観測値の再現性、モデ
ル間の整合性ともに低かった。こうしたモデル間の不整合は、境界濃度の与え方、鉛直方向の計算格子
間隔の取り方、硝酸塩の生成過程とガス・粒子分配過程の扱いなどに原因があると考えられた。
(2)当研究所のモデル(各図中の M-7)は観測濃度に対する再現性が高く、とりわけ硫酸塩に対する予測濃
度が高かった(図 2、3)。当所モデルは、MICS-Asia 参加モデルの中で大気境界層内の鉛直計算格子間
隔が最も密であり、これが高い予測性能につながったと考えられた。
今後の展開
今回示された不整合の要因について詳しく解析するとともに、わが国への越境大気汚染の影響を評価する。
主担当者 環境科学研究所 化学環境領域 主任研究員 速水 洋
関連報告書 「東アジア大気質モデル比較試験(MICS-Asia)の解析結果─粒子状物質と関連ガス成分の
地表付近濃度の解析─」電力中央研究所報告: V04024(2005 年 6 月)
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東アジアを対象とした越境大気汚染モデルの性能比較
(MICS-Asia)
2.環境/地域環境問題への対応
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0
2
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0 4 8 12 16
0
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16
0 4 8 12 16
M-1 M-3 M-4 M-5 M-6 M-7
2001年3 月
最大値
M-7
平均値
最小値
観測値
硫酸塩 [ g m- 3
]
硝酸塩 [ g m- 3
]
オゾン [ppb]
二酸化硫黄 [ppb]
-15
-5
5
15
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75 85 95 105 115 125 135 145 155
-15
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75 85 95 105 115 125 135 145 155
M-3,4
M-5
M-2
M-7
M-1
M-6
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37
4342
Fukue
度
緯
経度
観測濃度
硫酸塩 [ -3]
硝酸塩
[ -3]
SO2[ppb] O3[ppb]
1: 2
1:1
2:1
度
濃
算
計
度
濃
図1 MICS-Asiaの対象領域(外枠)と、計算結果
を提出したモデル(M-番号。当所モデルはM-7)の
計算領域。
▲は、環境省などによる東アジア酸性雨モニタリン
グ網(EANET)の観測地点を示す。
図2 EANET観測地点の月平均濃度に対するMCIS-Asia参加モデル(当所モデルはM-7)の計算結果
図3 当所が長崎県五島市(福江島)において測定した汚染物質濃度と、MICS-Asia参加モデル
(当所モデルはM-7)が予測した濃度(平均、最大、最小)の比較