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都市域における微量金属の湿性沈着量の経年変化と水銀の降水への取り込み

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Academic year: 2021

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主要な研究成果

背 景

大気中の微量物質に起因する人の健康リスクを評価する上で、微量物質が地表に沈着した後、食物連鎖を通 して食物に濃縮され、それを人が摂取することによるリスク(経口リスク)が重要となっている。そのリスク を評価するためには、まず地表への沈着量を明らかにする必要がある。大気中の化学物質の沈着には、降水に よる湿性沈着とガスや粒子が直接地表に到達する乾性沈着の二つがある。わが国では、これまでに水銀等の微 量物質の沈着量が長期間にわたって継続的にモニタリングされた事例はない。このため、それらの沈着量のレ ベルや経年変化については不明である。

目 的

東京都狛江市(図-1)における 4 年間(2000 ∼ 2003 年)の観測により、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、銅 (Cu)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)および亜鉛(Zn)の湿性沈着量の経年変化と Hg の降水への取り込みに関 する実態を明らかにする。

主な成果

1.微量金属の湿性沈着量の経年変化とその要因 Hg、Cd、Pb および Zn の湿性沈着量は、大気中の濃度変化と調和して経年的に低下する傾向にあった。 特に、Hg と Pb の湿性沈着量の低下は顕著であった(図-2)。当所は、これまでに大気中の Pb 同位体比や Pb と他の微量金属との濃度比がごみ焼却施設(清掃工場)排ガス中の値と一致することなどを根拠に、 Pb をはじめ Hg、Cd、Zn は主として周辺の清掃工場から排出されていることを明らかにしている。東京 23 区内の清掃工場からの Hg とばいじんの排出量を推計した結果、それらの量は大気汚染防止対策の進展に より経年的に低下していることがわかった(図-3)。したがって、Hg、Cd、Pb および Zn の湿性沈着量の 低下は、清掃工場からの排出量の減少に起因するものである* 1 2.降水への粒子状Hgとガス状Hgの取り込み 降水中にガス状および粒子状で取り込まれる Hg について、微量金属の洗浄比(=降水中濃度/大気中 濃度)を基に、湿性沈着量における粒子状 Hg の寄与率を評価した* 2。その結果、降水に取り込まれた Hg の約 30 ∼ 60 %は粒子状 Hg であり、ガス状 Hg とほぼ同様な寄与率であることがわかった(表-1)。これよ り、Hg の湿性沈着において降水への粒子状 Hg とガス状 Hg の取り込みが、共に重要な役割を果たしている と評価できる。

今後の展開

水銀等微量金属の健康リスクを評価する上で、大気から水域への沈着とその後の魚介類への濃縮が重要な経 路となるため、東京湾をモデル水域として湾内への湿性および乾性沈着量の実態を明らかにする。 主担当者 環境科学研究所 大気環境領域 上席研究員 坂田 昌弘 関連報告書 「都市域における微量金属の湿性沈着量の経年変化と水銀の降水への取り込み」電力中央研 究所報告: T03015(2004 年 3 月) 34

都市域における微量金属の湿性沈着量の経年変化と

水銀の降水への取り込み

* 1 :Cu と Mn については、清掃工場は主要な発生源ではないため、そこからの排出量の低下に起因する大気中濃度 や湿性沈着量の低下は小さかった。 * 2 :粒子状 Hg の洗浄比は他の微量金属(全て粒子状で存在)と同じと仮定して、その沈着量(=洗浄比×降水量× 大気中濃度)を算出した。

(2)

C.エネルギーと環境の調和

35 年 *大気中濃度が測定された4-12月間の合計沈着量(2001年は、大気中濃度未測定) 微量金属 の洗浄比 Hg(p)の湿性沈着量 (計算値)*, μg m-2 Hg(p)の 寄与率, % 12.8 7.3 4.5 48 58 32 2000 2002 2003 112±32 170±49 122±15 図-1 東京都狛江市の位置と調査地点の10 km圏内における清掃工場の分布(数字は焼却規模、t day-1 本調査地点の周辺には多くの大規模な清掃工場が存在する(10 km圏内:9ヵ所)。 図-2 水銀と鉛の月別湿性沈着量と年間湿性沈着量の変化(2002年の沈着量は、1∼3月が未測定であるため推定値) HgとPbの湿性沈着量は、降水量が低下する冬季に減少する季節変化を繰返しながら、経年的に低下している ことがわかる。2000年を基準とする湿性沈着量の年低下率は、いずれも16%であった。 図-3 東京23区内の全清掃工場からの水銀とばいじんの排出量の経年変化   (2002年度の排出量は、ほぼ全てのデータが検出限界以下であるため算出不能) 表-1 水銀の湿性沈着量における粒子状水銀(Hg(p))の寄与率 排ガス中のHgとばいじんの年平均濃度が 公表されている東京23区内の清掃工場(17 −20ヵ所)におけるそれらの排出量を推計 した。2001年度の排出量は1997年度に比べ て、Hgでは約1/3、ばいじんでは約1/5ま で低下した。 Hg以外の微量金属の洗浄比は、お互いに類似 した値を示した。この洗浄比を基に算出された 各年の粒子状Hgの湿性沈着量(前頁脚注*2参 照)は、Hgの湿性沈着量(実測値)の32∼58 %に相当した。

参照

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