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( 148 ) 小野雅司, ほか WBGT) は熱中症リスクの有効な温度指標の一つであり, 我が国でも, 産業衛生分野を中心に広く活用されている (ISO-7243; 日本工業規格 Z8504). また, 日最高気温よりも日最高 WBGT の方が熱中症発生と強い関連性を示すとの報告もある ( 星ほか

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(1)

通常観測気象要素を用いた WBGT(湿球黒球温度)の推定

Estimation of wet-bulb globe temperature using generally measured

meteorological indices

小野 雅司

1

,登内 道彦

2

Masaji Ono

1

, Michihiko Tonouchi

2

1国立環境研究所・環境健康研究センター 2気象業務支援センター

1National Institute for Environmental Studies 2Japan Meteorological Business Support Center

(受付 2012 年 9 月 25 日/受理 2013 月 10 月 15 日) 我々は気象庁の協力を得て,国内 6 都市(気象台)において 2007 年より黒球温度の連続観測を行い, WBGT(湿球黒球温度)を算出,ホームページより公開してきた.これらの観測データを元に,黒球温 度,湿球温度を使わず通常気象要素のみにより WBGT を簡便に推定する方法を提案する. 乾球温度,相対湿度,全天日射量,風速,及び,これら気象要素を組み合わせた乾球温度×相対湿度, 全天日射量の二次項を用いることにより極めて高い精度で WBGT を推定できる式を得た.また,異な る都市,異なる年度のデータを用いて求めた推定式は,同一都市・同一年度のデータを用いて求めた推 定式と比較して,ほぼ同程度の推定精度が得られ(推定誤差 1.0°C 以内:98.3~99.8%),全国共通の WBGT 推定式としての使用が可能と考えられる. キーワード:WBGT,黒球温度,推定モデル,通常観測気象要素

We have been measuring globe temperature continuously at meteorological stations in six cities in Japan from 2007 with the cooperation of Japan Meteorological Agency. From the analysis of data observed at those stations for three years, 2007–2009, we propose a wet-bulb globe temperature (WBGT) estimation equation using only generally and widely measured meteorological indices; they are dry-bulb temperature (Ta), relative humidity (RH), solar radiation (SR) and wind speed (WS). In addition to these, we used following two indices; they are product of dry-bulb temperature by relative humidity (Ta×RH) and square of solar radiation (SR2).

We obtained the WBGT estimating equation, and it can be applied for different years and for different cities with very small bias. Using this equation, we can estimate WBGT with 1.0°C or less bias with 98.3~99.8% confidence for six cities and for three years.

Key words: WBGT, globe temperature, estimation model, generally measured meteorological indices

緒  言

夏季の高温環境による健康被害は地球規模で深 刻な課題となっており,2003 年にヨーロッパを 襲った熱波は 5 万人を超える超過死亡をもたらし た(Klinenberg, 2002; Center for Disease Control and Prevention, USA; Kirch, et al., 2005).我が国におい

ても 2010 年には,全国で 5 万 6 千人を超える熱中 症患者が病院へ救急搬送され,熱中症及び関連疾 患による死亡は 1,745 人に達した(総務省消防庁; 厚生労働省). 熱中症のリスクを示す指標として多くの温度指 標が提案されている(Katharine, 2012).その中で も, 湿 球 黒 球 温 度(wet-bulb globe temperature:

(2)

WBGT)は熱中症リスクの有効な温度指標の一つ であり,我が国でも,産業衛生分野を中心に広く 活用されている(ISO-7243;日本工業規格 Z8504). また,日最高気温よりも日最高 WBGT の方が熱中 症発生と強い関連性を示すとの報告もある(星ほ か,2007). ところで,WBGT は乾球温度,湿球温度,黒球 温度により定義される(Yaglou and Minard, 1957) が,日本では黒球温度は通常の気象要素としては 観測されていない.他の国においてもほぼ同様と 考えられる.日本生気象学会においても,熱中症 予防指針の中で,気温,相対湿度から WBGT を推 定する換算表を示しているが,全ての場面で十分 な精度を保証するものではないとの注意が付され ている(日本生気象学会). 環境省では 2007 年より全国 6 都市の気象台に おいて黒球温度の連続観測を行い,WBGT を算出 し,“暑さ指数”としてホームページより発信し活 用を図っている(環境省).我々は,本観測におい て得られたデータに基づいて,通常の気象要素の みから WBGT を推定する方法を検討することと した.通常観測気象要素のみを用いて WBGT 推定 が可能となれば,より多くの場面での利用が可能 となり,熱中症予防に役立つと考える. WBGT に関しては,現在の算出式を見直し,人 体の熱平衡式から求めるべきとの意見(持田,佐 古井,2011)もあるが,本稿では Yaglou らが式 (1)により定義した WBGT の簡易推定法を提案す る. 今回提案する推定式は 6 都市気象台における観 測結果に基づく,一般的な環境下での WBGT を推 定するものであり,市街地など異なる条件下での 適用については今後の検討課題と考えている.な お,本稿においては,湿球温度は強制通風条件で 観測された湿度等から計算しており,Yaglou らが 用いた自然湿球温度と弱風時に差が生じることに 留意されたい.

1.方法

1.1 WBGT 観測値 1)WBGT

屋外の湿球黒球温度(wet-bulb globe temperature: WBGT)は式(1)で定義される(Yaglou and Minard, 1957). WBGT=0.7×Tw+0.2×Tg+0.1×Ta (1) ここで,Tw=自然通風湿球温度,Tg=黒球温度, Ta=自然通風乾球温度 2)黒球温度観測 気象庁の協力を得て,6 気象台(東京,名古屋, 新潟,大阪,広島,福岡)において,2007 年より (広島地方気象台は 2008 年より)黒球温度の連続 観測を実施した.6 気象台の概要を表 1 に示した. 黒球温度観測には各気象台の露場に設置した 6 インチ黒球温度計(クリマテック社製,南向き高 さ 1.5 m に設置)を使用した.併せて,各気象台 で観測された乾球温度,相対湿度,全天日射量(10 分間日射量の平均),風速(10 分間平均風速),露 点温度,地上気圧を入手した. 3)WBGT 参照値の算出 1)に示したように WBGT 算出には黒球温度に 加えて,自然気流に暴露された湿球温度,乾球温 度を用いることとなっている(ISO-7243)が,自 然湿球温度は,実際の観測を行っていないこと, 熱放射や気流の影響を強く受け,観測場所の周囲 の環境,観測に用いる機器および機器の設置条件 等により観測値に差が生じ,通常の気象要素から 推定することは難しいことから,自然通風湿球温 度の代替値として気温と湿度から精度良く推定可 能な強制通風湿球温度を用いた.同様に,自然通 風乾球温度(放射は遮った条件で観測)について も代替値として強制通風乾球温度を用いた.

Table 1. Location of the six meteorological stations

City meteorological station Latitude Longitude Altitude Tokyo Tokyo Central Meteorological Station 35°41.2' 139°45.9' 7 m Niigata Niigata Local Meteorological Station 37°54.6' 139°03.1' 2 m Nagoya Nagoya Local Meteorological Station 35°10.0' 136°58.1' 51 m Osaka Osaka Central Meteorological Station 34°40.7' 135°31.3' 23 m Hiroshima Hiroshima Local Meteorological Station 34°23.7' 132°27.9' 4 m Fukuoka Fukuoka Central Meteorological Station 33°34.8' 130°22.6' 3 m

(3)

なお,黒球温度と乾球温度については実測値を 使用したが,湿球温度については,乾球温度(Tw),

露点温度(Td),地上気圧(p)を用いて,下式

(Iribarne and Godson, 1981)により求めた. 一次推計: Tw(1)=(Ta×f×p+Td×s)/(f×p+s) s=(es−ed)/(Ta−Td) es=exp(C0−C1×Ta−C2/Ta) ed=exp(C0−C1×Td−C2/Td) C0=26.66082, C1=0.0091379024, C2=6106.396 f=0.0006355(K−1)=Cp/(L×ε), Cp=1004(JK−1kg−1), L=2.54×106(Jkg−1), ε=0.622 二次推計: Tw(2)=Tw(1)−de/der de=f×p×(Ta−Tw(1))−(ew−ed) der=ew×(C1−C2/Tw(1)2)−f×p Tw(i)の推定誤差が 0.1°C 未満になるまで二次推 計式を繰り返し,この時の推定値を Twとした.こ のようにして求めた湿球温度と乾球温度,黒球温 度を使用して,式(1)により WBGT を求め,参 照値(WBGT 観測値)とした. 1.2 通常観測気象要素による WBGT 推定 本論文の目的は,黒球温度,湿球温度が通常の 気象要素として観測されていない現状を踏まえ, 通常観測気象要素のみを用いて WBGT を推定す る方法を提案することである.具体的には,乾球 温度,相対湿度,全天日射量,風速,及びそれら を組み合わせた変数を用いた. 解析には,6 気象台で実施した 2007 年から 2009 年の観測値(時別値)を用いた.なお,1.1 3)に 述べたように,式(1)による WBGT 値算出にお いては自然湿球温度,自然乾球温度の代替値とし て強制通風湿球温度,強制通風乾球温度を用いた. また,比較的高台に位置し,周囲の建築物等の影 響が最も少ない名古屋地方気象台の 2008 年の データを標準とし,他地点・他年度のデータとの 比較を行った結果を中心に解析を進めた.

2.結果

2.1 6 気象台における通常観測気象要素を用いた WBGT 推定 乾球温度,相対湿度,乾球温度×相対湿度,全 天日射量,風速を説明変数として重回帰により WBGT 推定式を求めた.なお,考察に示すように, 湿球温度は乾球温度,相対湿度に加えて乾球温度 ×相対湿度により線形近似されることから,説明 変数として乾球温度×相対湿度を加えた.解析に は,6 気象台における 2007 年から 2009 年までの 3 年間の時別値を用いた. なお,季節別(夏季,冬季),時刻別(日中,夜 間)の解析を併せて行ったが,いずれのデータセッ トを用いた場合にも極めて似通った結果が得られ たことから,以下の解析には全年,全日のデータ を用いた. 1)名古屋における WBGT 推定 比較的高台に位置し,建築物等による太陽の遮 蔽の影響が最も小さいと考えられる名古屋地方気 象台の 2008 年データを用いて WBGT 推定を行 い,以下の推定式を得た. WBGT=0.718×Ta+0.0316×RH+0.00321×Ta×RH +4.363×SR−0.0502×WS−3.623 (2) ここで,Ta:乾球温度(°C),RH:相対湿度 (%),SR:全天日射量(kW/m2),WS:風速(m/s). 図 1 に式(2)による推定値と観測値の相関を示 した.両者の相関は極めて大きく(r2=0.998),推 定誤差の 97.6% が ±1°C 以内であった. 2)誤差分析 次に,式(2)により得られた推定値と観測値の 差(推定誤差)について,各気象要素との関連を

Fig. 1. Correlation between observed and estimated WBGT —Nagoya, 2008—

(4)

検討した.図 2 に示すように,推定誤差は全天日 射量の二次項と強い相関を示した(SR2:r2=0.469). そこで,WBGT 推定式の説明変数に全天日射量の 二次項(SR2)を追加し,式(3)を得た. WBGT=0.735×Ta+0.0374×RH+0.00292×Ta×RH +7.619×SR−4.557×SR2−0.0572×WS−4.064 (3) 図 3 に二つの推定式による推定誤差の分布を示 した.全天日射量の二次項(SR2)を加えた式(3) では全天日射量の二次項を加えていない式(2)と 比べて推定誤差は小さく,両者の ±1.0°C,±0.5°C, ±0.1°C 以 内 の 割 合 は 99.8%(97.6%),92.7% (88.4%),33.0%(25.7%)であった. 3)6 気象台における WBGT 推定式 名古屋を除く 5 気象台についても,説明変数に 全天日射量の二次項を加えた 6 変数による推定式 を求め,表 2 に示した.各都市間のパラメータの 違いは十分に小さかった.

Table 2. Parameters of the estimation equation for six cities—2008—

Nagoya Tokyo Niigata Osaka Hiroshima Fukuoka dry temperature (Ta: °C) 0.735 0.727 0.751 0.706 0.714 0.723 relative humidity (RH: %) 0.0374 0.0371 0.0382 0.0289 0.0291 0.0318 Ta×RH 0.00292 0.00295 0.00261 0.00327 0.00311 0.00295 soral radistion (SR: kW/m2) 7.619 4.933 6.103 7.105 6.812 7.438 SR2 −4.557 −1.853 −3.447 −3.690 −3.650 −4.119 wind speed (WS: m/s) −0.0572 −0.0511 −0.0223 −0.0587 −0.0329 −0.0300 intercept −4.064 −3.877 −4.040 −3.407 −3.326 −3.536

Fig. 3. Distribution of estimation error in two models; with and without SR2

(5)

2.2 モデル検証 次に,同一都市における年度間の比較,及び都 市間の比較を行った. 1)年度間の比較 表 3 に,名古屋地方気象台の 2007 年~2009 年 のデータを用いて得られた推定式を 2008 年の データに適用して得られた WBGT 推定誤差を示 した. 2007 年,2009 年のデータから求めた推定式を 2008 年データに適用した時の推定誤差は,同一年 度(2008 年)のデータから求めた推定式を使って 得られた推定誤差とほぼ同じ分布を示し,推定誤 差の平均(標準偏差)は 2007 年 0.017°C(0.278°C), 2008 年 0°C(0.276°C),2009 年 0.019°C(0.277°C) であった. 2)都市間の比較 表 4 に,名古屋を除く 5 都市の 2008 年のデータ を用いて得られた推定式を名古屋の 2008 年の データに適用した時の推定誤差を示した. 東京,新潟,大阪,広島,福岡のデータから求 めた推定式を名古屋のデータに適用した時の推定 誤差は,同一都市(名古屋)のデータから求めた 推定式を使って得られた推定誤差とほぼ同程度で あった.推定誤差が ±1.0°C,±0.5°C,±0.1°C 以内 の割合は,5 都市のデータから求めた推定式によ るものが 97.1~99.6%(名古屋 99.8%),81.5~91.0%

Table 4. Comparison of estimation errorss for six cities

estimation equations decided by each city are applied for Nagoya

estimation error city used for deciding estimation equation

Tokyo Nagoya Niigata Osaka Hiroshima Fukuoka −1.0°C≦ ≦+1.0°C 97.1% 99.8% 98.5% 99.6% 99.3% 98.9% −0.5°C≦ ≦+0.5°C 81.5% 92.7% 87.2% 91.0% 87.5% 87.7% −0.1°C≦ ≦+0.1°C 27.2% 33.0% 33.9% 29.7% 30.3% 29.0% average −0.109°C 0°C −0.034°C 0.004°C 0.094°C 0.100°C s.d. 0.388°C 0.276°C 0.332°C 0.296°C 0.313°C 0.317°C

Table 3. Comparison of the estimation errors for 3 years at Nagoya

estimation equations decided by each year are applied for 2008

estimation error year used for deciding estimation equation 2007 2008 2009 −1.0°C≦ ≦+1.0°C 99.7% 99.8% 99.7% −0.5°C≦ ≦+0.5°C 92.4% 92.7% 92.5% −0.1°C≦ ≦+0.1°C 32.6% 33.0% 32.4% average 0.017°C 0°C 0.019°C s.d. 0.278°C 0.276°C 0.277°C

(6)

(92.7%),27.1~33.2%(33.0%)であった.また推 定誤差の平均は,東京 −0.109°C,新潟 −0.034°C, 大阪 +0.004°C,広島 +0.094°C 福岡 +0.100°C で あった. 図 4 に名古屋と東京,図 5 に名古屋と広島,福 岡の推定誤差の分布を示した.わずかではあるが, 東京の推定式は名古屋の観測値と比較して過小, 広島,福岡の推定式は過大な推定をしていること が示された(表 4 参照).

3.考察

3.1 強制通風式湿球温度,乾球温度と自然通風式 湿球温度,乾球温度の差 本研究では,推定の対象となる参照 WBGT 値 を,気象庁が観測する乾球温度と独自に観測した 黒球温度に加えて,同じく気象庁が観測する強制 通風式湿球温度を用いて式(1)により定義した. Yaglou の式では自然通風式湿球温度,乾球温度を 用いることとなっているが,前述したとおり自然 通風下での湿球温度,乾球温度の通常観測が行わ れていないこと,環境省事業においても観測を 行っていないこと,さらには熱放射や風の影響の ため通常気象観測要素から精度よく推定すること が困難であることから,代替値として,強制通風 式湿球温度,乾球温度を用いることとした.以下 に,強制通風式湿球温度,乾球温度と自然通風式 湿球温度,乾球温度の差,及び WBGT 値に与える 影響について検討した. 推定式を求める基準とした名古屋の 2008 年 データについて,自然通風式湿球温度として近藤 (2009)の式を,強制通風式湿球温度として Iribarne らの式を用い,観測条件として日射に曝露した場 合と輻射を完全に遮蔽した場合について,両者の 比較を行った.なお,自然湿球温度の熱収支につ いては補足に示した. 自然湿球温度の熱収支は「水環境の気象学」(近 藤,1994),「近藤純正ホームページ」研究の指針 (K17.暑熱環境と黒球温度)(近藤,2006)http:// www.asahi-net.or.jp/~rk7j-kndu/kenkyu/kenkyu00. html)において検討されている.また,本計算に 用いた熱交換係数は Kondo(1967)による.自然 湿球温度計の感部は ISO-7243 に示される円柱型 感部を直径 1.2 cm の球形感部に置き換えた条件 で推定を行った. 図 6 に日射に曝露した場合の,自然通風式湿球 温度,強制通風式湿球温度から求めた WBGT の差 の分布を示した.本来の自然通風式湿球温度を用 い た 場 合 に 比 べ る と 平 均 で 0.54°C(0.22°C ~ 2.55°C,標準偏差 0.18°C)低く推定していること となった.なお,夏季(5 月~9 月)に限ってみる と,平 均 で 0.49°C(0.23°C ~2.30°C,標 準 偏 差 0.16°C)であった.Yaglou の式に示された自然通 風式湿球温度は観測条件に大きく依存することか ら,一意に決めることは困難であり,ここでは近 藤の式を比較の対照とした.その結果,誤差は 0.5°C 前後で,1°C を超える割合は 2.1%(夏季に 限定すれば 1.1%)と,気象予報の精度等を勘案す れば十分な精度と考えられる.また,輻射を完全 に遮蔽した場合においては,平均で 0.10°C とほぼ 無視できる誤差であった.なお,両者の差が大き くなるのは弱風時(風速 1 m/sec 以下)であるこ とが指摘されている(近藤,2009). 乾球温度については,ISO-7243 に定める放射を 遮った条件での乾球温度は,自然通風式と強制通

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風式の差は十分に小さく(0.1°C 未満)無視でき ると考えられる. 気象庁気象測器検定試験センターでは,自然通 風型と強制通風型のシェルターの比較観測を行っ ており(Aoshima T. et al., 2010),自然通風下の観 測値は強制通風型観測値(気象庁観測値)よりも 高くなり,8 月の最高気温で,その温度差は 0.1~ 1.4°C になると報告されている.以上のことから, 強制通風式湿球温度を用いて求めた WBGT を参 照値として決定した本 WBGT 推定式(式 3)は, 0.5°C 程度のバイアスを持つものの,Yaglou の提 案する WBGT の推定式として十分な精度を持つ と考える. 3.2 説明変数について 湿球温度,黒球温度の定義から,乾球温度,湿 球温度,黒球温度による式(1)で定義される WBGT の説明変数として乾球温度に加えて相対 湿度,全天日射量,風速を採用することは当然と 考えられる.また,日本工業規格 JIS-Z8806 に乾 球温度,湿球温度,相対湿度の関係が示されてい るが,それによれば,湿球温度が気温,相対湿度, 気温×相対湿度の線形関数として近似可能であ る.このような背景から,本稿では,WBGT の説 明変数として,乾球温度,相対湿度,乾球温度× 相対湿度,全天日射量,風速の 5 変数を初期変数 として用いることとした. 次に,これら 5 変数による推定式から得られた 推定誤差について検討した結果,全天日射量の二 次項と強い相関が認められたため,全天日射量の 二次項を説明変数に加えて WBGT 推定式を決定 した.全天日射量の二次項を加えることにより推 定誤差(名古屋,2008 年)の標準偏差(0.43°C→ 0.26°C),中央値(0.034°C→−0.010°C),±1.0°C 以 内(97.6%→99.8%),±0.5°C 以内(84.4%→92.7%), ±0.1°C 以内(25.7%→33.0%)と,いずれも大幅な 推定精度の改善が見られた.このように,全天日 射量の二次項が WBGT に関係していることが示 されたが,メカニズムについては今後の検討課題 としたい. 3.3 モデル検証 (1)年度間の差異 表 3 に,名古屋について,2007 年,2008 年, 2009 年のデータから求めた推定式を 2008 年デー タに適用した時の推定誤差を示したが,異なる年 度(2007 年,2009 年)のデータから求めた推定式 による推定誤差は,同一年度(2008 年)のデータ から求めた推定式による推定誤差とほとんど違い は見られなかった.他都市についてもほぼ同様の 結果が得られており,同一都市については異なる 年度についても同一の推定式を適用することが可 能と考えた(表 6 参照). (2)都市間の差異 次に,各都市のデータから求めた推定式を名古 屋のデータに適用した時の推定誤差の比較によ り,都市間の相違について検討した. 東京のデータから求めた推定式についてみる と,推定誤差は名古屋のデータから求めた推定式 による推定誤差と比較して幅広い分布を示し,推

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定誤差の平均値は名古屋の観測値よりも 0.109°C 低かった(図 4,表 4).東京では,乾球温度,相 対湿度,風速,黒球温度の観測は東京管区気象台 の露場において行われているが,全天日射量の観 測は近くの北の丸公園で行われている.東京管区 気象台は東京の中心大手町に位置し,近年周辺に 高層の建築物が増えてきたことから,季節によっ て異なるが,午後 2 時半から 5 時前後にかけて観 測場所が日陰となる.一方,全天日射計は日中日 陰になることのない場所に設置されている.今回 提案したモデルで結果変数とした WBGT は東京 管区気象台の露場で観測された“乾球温度”,“黒 球温度”および乾球温度,露点温度,地上気圧か ら計算された“湿球湿度”を用いて計算されたも のである.一方,説明変数の一つである全天日射 量は建築物の影響を受けない北の丸公園で観測さ れたものである.そのため,同一条件で観測され た値を用いた場合に比べ,全天日射量の係数が小 さくなり,名古屋のデータに適用して得られた WBGT 推定値が観測値と比較して小さくなった と考えられる.そこで,日陰の影響を除くため, 14 時~17 時のデータを除いたデータのみを用い て検証した.表 5 には,2007 年~2009 年の東京及 び名古屋のデータを用いて,全日のデータ及び 14 時~17 時を除くデータから求めた 6 推定式を 2008 年の名古屋データに適用した時の推定誤差 の平均値を示した.名古屋については,全データ を用いた場合の推定誤差と 14 時~17 時のデータ を除いた場合の推定誤差の差は極めて小さかった (0.004°C:0.012°C→0.008°C)が,東京については 14 時~17 時のデータを除いた場合の推定誤差は 全データを用いた場合の推定誤差から大きく改善 した(0.056°C:−0.100°C→−0.044°C).このこと から,東京のデータから求めた推定式による推定 誤差が大きくかつ負の値に偏ったことの原因の一 つとして,東京管区気象台の露場が一定時間日陰 になることが考えられた.なお,同様の結果は東 京のデータから得られた推定式を新潟,大阪,広 島,福岡のデータに適用した時にも観察された. さらに,東京以外の気象台観測データから求めた 推定式を東京のデータに適用した場合に逆の結果 (推定>観測値)が得られており,東京気象台の観 測条件が原因であることを裏付ける結果であった (表 6).また,推定誤差は全天日射量に関係する ことから,季節,時刻により明瞭な違いが見られ た. 図 5 に示したように,広島,福岡の推定誤差に ついては,名古屋の推定誤差と比較して,分布の 幅については大きな相違は見られなかったもの の,平均値は 0.1°C 程度高かった.しかしながら, 現時点では,東京のようにその原因を明らかにす ることは出来ていない. 参考として,6 都市,3 年間すべての組み合わせ について,推計誤差(平均,標準偏差)を表 6 に 示した. 3.4 これまでに提案されたモデルとの比較 これまでにも,湿球温度,黒球温度を使わずに WBGT を推定する方法がいくつか提案されてい る.中井らは,乾球温度,相対湿度,乾球温度× 相対湿度を説明変数とした線形モデルを提案して いるが,日射量(輻射熱)が考慮されていないた め,日中に大きなバイアスが認められる(中井ほ か,2000).一方,村山,Gaspar は物理モデルに

Table 5. Estimation errors in two models applied for Tokyo and Nagoya —estimation equations decided by each city and year are applied for 2008, Nagoya—

* figures show average of the error

(1) all day (2) without 14:00–17:00 (2)–(1)

Tokyo 2007 −0.090°C −0.034°C 0.057°C 2008 −0.109°C −0.051°C 0.058°C 2009 −0.101°C −0.048°C 0.053°C average −0.100°C −0.044°C 0.056°C Nagoya 2007 0.017°C 0.012°C −0.005°C 2008 0°C 0°C 0°C 2009 0.019°C 0.013°C −0.006°C average 0.012°C 0.008°C −0.004°C

(9)

T abl e 6. E stim at ion error s in six cit ie s an d th ree ye ar s aver ag e (s.d.) cit y an d yea r a pplie d es ti m ati on equa tio n ci ty and yea r us ed f o r de ci ding e st ima ti on equa tion T o k y o N agoya Niig ara O saka H iroshim a Fukuoka 2007 2008 2009 2 007 2 008 2 009 2007 2008 2009 2007 2008 2009 200 8 200 9 2007 2008 2009 T o kyo 2007 0. 000 − 0 .025 − 0 .021 0. 098 0. 078 0. 098 0.07 6 0 .078 0.067 0. 062 0. 098 0. 138 0.2 0 5 0 .1 72 0 .153 0 .200 0 .221 (0.35 4) (0.35 9 ) (0.362 ) (0. 448) (0. 451) (0. 439) (0. 385) (0.3 87) (0.3 76) (0 .444) (0 .448) (0 .442) (0. 434) (0. 412) (0.41 7 ) (0.47 8) (0.419 ) 2008 0 .029 0. 000 0 .009 0. 124 0. 102 0. 124 0.07 3 0 .072 0.067 0. 089 0. 124 0. 152 0. 21 1 0 .1 76 0 .154 0 .202 0 .220 (0.36 4 ) (0.36 0) (0.363 ) (0. 443) (0. 444) (0. 433) (0. 383) (0.3 84) (0.3 79) (0 .441) (0 .446) (0 .437) (0. 437) (0. 412) (0.42 1 ) (0.47 7) (0.421 ) 2009 0 .013 − 0 .009 0. 000 0. 1 1 1 0 .090 0 .1 1 2 0 .07 5 0.076 0.066 0. 074 0. 108 0. 142 0.2 0 3 0 .1 70 0 .149 0 .196 0 .213 (0.41 0 ) (0.40 7) (0.404 ) (0. 507) (0. 508) (0. 496) (0. 441) (0.4 42) (0.4 33) (0 .504) (0 .509) (0 .499) (0. 498) (0. 473) (0.48 1 ) (0.54 2) (0.484 ) Na goya 2007 − 0 .108 − 0 .126 − 0. 1 1 8 0. 000 − 0. 017 0. 002 − 0.04 5 − 0.039 − 0.056 − 0. 046 − 0. 013 0. 028 0.0 7 8 0 .0 48 0 .022 0 .083 0 .095 (0.40 2 ) (0.38 6) (0.419 ) (0. 280) (0. 281) (0. 282) (0. 330) (0.3 30) (0.3 48) (0 .292) (0 .296) (0. 3 1 1 ) (0. 309) (0. 315) (0.31 4 ) (0.31 6) (0.309 ) 2008 − 0 .090 − 0 .109 − 0 .101 0. 017 0. 000 0. 019 − 0.03 2 − 0.025 − 0.042 − 0. 028 0. 004 0. 045 0.0 9 4 0 .0 63 0 .036 0 .100 0. 1 1 0 (0.40 8 ) (0.38 8) (0.421 ) (0. 278) (0. 276) (0. 277) (0. 333) (0.3 32) (0.3 53) (0 .292) (0 .296) (0 .308) (0. 313) (0. 317) (0.31 9 ) (0.31 7) (0. 3 1 1 ) 2009 − 0. 1 1 2 − 0 .127 − 0. 1 1 9 − 0. 001 − 0. 019 0. 000 − 0.04 3 − 0.037 − 0.055 − 0. 045 − 0. 012 0. 031 0.0 8 2 0 .0 51 0 .025 0 .087 0 .096 (0.40 1 ) (0.38 4) (0.415 ) (0. 291) (0. 290) (0. 289) (0. 335) (0.3 35) (0.3 52) (0 .303) (0 .308) (0 .321) (0. 323) (0. 325) (0.32 6 ) (0.33 4) (0.320 ) Ni iga ta 2007 − 0 .006 − 0 .051 − 0 .042 0. 039 0. 027 0. 045 0.00 0 0.008 0.004 − 0. 016 0. 016 0. 056 0.1 0 6 0 .0 86 0 .056 0. 1 1 1 0 .148 (0.30 2 ) (0.30 0) (0.320 ) (0. 327) (0. 332) (0. 324) (0. 270) (0.2 71) (0.2 73) (0 .331) (0 .335) (0 .325) (0. 306) (0. 294) (0.29 2 ) (0.34 1) (0.299 ) 2008 − 0 .019 − 0 .064 − 0 .057 0. 032 0. 020 0. 037 − 0.00 9 0.000 − 0.005 − 0. 022 0. 009 0. 050 0.1 0 1 0 .0 79 0 .049 0 .109 0 .143 (0.31 0 ) (0.31 0) (0.330 ) (0. 341) (0. 346) (0. 339) (0. 280) (0.2 79) (0.2 82) (0 .343) (0 .347) (0 .332) (0. 313) (0. 300) (0.29 9 ) (0.34 6) (0.305 ) 2009 − 0 .009 − 0 .056 − 0 .048 0. 041 0. 028 0. 046 − 0.00 5 0 .004 0.000 − 0. 013 0. 018 0. 057 0.1 0 7 0 .0 85 0 .055 0. 1 1 3 0 .148 (0.33 5 ) (0.33 7) (0.353 ) (0. 380) (0. 385) (0. 377) (0. 314) (0.3 15) (0.3 12) (0 .383) (0 .387) (0 .376) (0. 355) (0. 341) (0.34 0 ) (0.39 2) (0.347 ) Osa k a 2007 − 0 .077 − 0 .087 − 0 .074 0. 051 0. 033 0. 054 − 0.01 4 − 0.012 − 0.030 0. 000 0. 031 0. 063 0.1 0 7 0 .0 74 0 .047 0 .108 0. 1 1 5 (0.40 5 ) (0.39 1) (0.423 ) (0. 312) (0. 314) (0. 313) (0. 351) (0.3 48) (0.3 65) (0 .302) (0 .302) (0 .308) (0. 310) (0. 315) (0.31 6 ) (0.31 4) (0.312 ) 2008 − 0 .093 − 0 .104 − 0 .090 0. 024 0. 007 0. 028 − 0.04 1 − 0.037 − 0.054 − 0. 030 0. 000 0. 034 0.0 7 5 0 .0 44 0 .014 0 .079 0 .086 (0.42 7 ) (0.41 4) (0.445 ) (0. 335) (0. 336) (0. 336) (0. 376) (0.3 73) (0.3 90) (0 .323) (0 .323) (0 .327) (0. 330) (0. 336) (0.33 8 ) (0.33 2) (0.334 ) 2009 − 0 .131 − 0 .141 − 0 .126 − 0.01 1 − 0. 028 − 0. 007 − 0.07 4 − 0.070 − 0.089 − 0. 065 − 0. 035 0. 000 0.0 4 1 0 .0 10 − 0 .019 0 .044 0 .051 (0.43 3 ) (0.41 3) (0.443 ) (0. 355) (0. 355) (0. 354) (0. 381) (0.3 76) (0.3 96) (0 .336) (0 .335) (0 .331) (0. 338) (0. 340) (0.34 5 ) (0.34 2) (0.342 ) Hi roshim a 2008 − 0 .166 − 0 .195 − 0 .194 − 0. 082 − 0. 092 − 0. 077 − 0.10 4 − 0.093 − 0. 1 1 0 − 0. 140 − 0. 108 − 0. 055 0.0 00 − 0.0 2 2 − 0 .049 0 .012 0 .042 (0.41 2 ) (0.39 8) (0.428 ) (0. 340) (0. 343) (0. 342) (0. 355) (0.3 53) (0.3 68) (0 .330) (0 .330) (0 .327) (0. 319) (0. 323) (0.32 2 ) (0.32 9) (0.323 ) 2009 − 0 .150 − 0 .175 − 0 .173 − 0. 067 − 0. 078 − 0. 062 − 0.08 4 − 0.074 − 0.092 − 0. 120 − 0. 086 − 0. 033 0.0 2 3 0.0 00 − 0 .027 0 .032 0 .060 (0.39 5 ) (0.37 9) (0.405 ) (0. 358) (0. 359) (0. 356) (0. 351) (0.3 48) (0.3 61) (0 .347) (0 .347) (0 .339) (0. 331) (0. 328) (0.32 9 ) (0.35 0) (0.331 ) Fuku oka 2007 − 0. 1 1 2 − 0 .129 − 0. 1 1 8 0 .002 − 0. 012 0. 007 − 0.06 0 − 0.058 − 0.073 − 0. 051 − 0. 019 0. 013 0.0 5 7 0 .0 28 0. 000 0 .056 0 .074 (0.36 4 ) (0.35 6) (0.387 ) (0. 317) (0. 322) (0. 319) (0. 3 1 1 ) (0.3 07) (0.3 19) (0 .305) (0 .305) (0 .304) (0. 292) (0. 291) (0.29 0) (0.31 2 ) (0.292 ) 2008 − 0 .144 − 0 .171 − 0 .158 − 0. 051 − 0. 065 − 0. 045 − 0. 1 1 8 − 0. 1 1 7 − 0.126 − 0. 101 − 0. 069 − 0. 041 0.0 0 2 − 0.0 2 6 − 0 .055 0. 000 0 .022 (0.45 5 ) (0.44 4) (0.481 ) (0. 350) (0. 354) (0. 357) (0. 386) (0.3 80) (0.4 01) (0 .335) (0 .333) (0 .332) (0. 330) (0. 341) (0.34 0 ) (0.32 0) (0.335 ) 2009 − 0 .166 − 0 .183 − 0 .168 − 0. 075 − 0. 089 − 0. 067 − 0.12 8 − 0.125 − 0.139 − 0. 125 − 0. 094 − 0. 059 − 0.0 1 7 − 0.0 4 3 − 0 .073 − 0 .021 0. 000 (0.38 3 ) (0.37 5) (0.408 ) (0. 323) (0. 325) (0. 324) (0. 329) (0.3 24) (0.3 39) (0 .313) (0 .313) (0 .313) (0. 304) (0. 304) (0.30 3 ) (0.31 7) (0.301 )

(10)

より黒球温度,湿球温度を求め,それを使って WBGT を計算する方法を提案している(村山ほ か,2000; Gaspar et al., 2009).彼らのモデルは比 較的良好な推定値を与えるが,黒球温度,湿球温 度の計算が難解なため,広く一般で使用するには 難点があると言える. Moran は WBGT に 変 わ る 指 標 と し て environmental stress index(ESI)を提案している. そこでは,Ta, RH, SR, Ta×RH, 1/(0.1+SR) を説明 変数として用い,良好な推定値を得ている.しか しながら,今回我々が提案した推定式と比較する と,推定誤差がやや大きいことが確認された (Moran et al., 2001). 3.5 本推定式の適用範囲について 本推定式算出に用いた 6 気象台の 3 年間のデー タ(時別値)の範囲は,気温についてみると −3.9°C ~38.2°C であり,気温と相対湿度の組み合わせで みると,気温 0°C 未満で相対湿度 44% から 92%, 気温 35°C 以上で相対湿度 28% から 52% であっ た.本観測範囲では,WBGT 推定誤差には若干の バラツキはみられるものの,気温あるいは気温と 湿度の組み合わせとの間に一定の傾向は見られ ず,低温あるいは高温になるに従って推定誤差の 平均,分散が大きくなるといった傾向は認められ なかった.このことから,解析に用いた気温範囲 を超えたとしても推定誤差が急激に変化する(本 推定式が適用できなくなる)とは考えにくく,今 回の観測範囲から大きく外れる北海道・東北地方 の冬季を除き,広く適用が可能と考えられる.換 言すれば,熱中症発症の危険度を示す夏季の指標 としては現状では日本全国に適用可能と考える.

結  語

日本国内 6 都市で 3 年間に渡って実施した黒球 温度の連続観測データを元に,通常観測されてい る気象要素のみを用いて WBGT を高精度で推定 する式を提案した. 提案した推定式では,説明変数として乾球温度, 相対湿度,乾球温度×相対湿度,全天日射量,全 天日射量の二次項,風速を用いた.このようにし て求めた推定式は,推定式を求めたデータについ てはもちろん,異なる年度,異なる都市のデータ についても推定誤差は極めて小さく,全国共通の 推定式として用いることが可能であることが示さ れた.

謝  辞

本研究で用いたデータは,環境省の事業(国立 環境研究所,気象業務支援センターが受託・実施) において収集されたものである.

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補  足

自然湿度温度の熱収支については,「水環境の気 象学」(近藤,1994),「近藤純正ホームページ」研 究の指針(K17.暑熱環境と黒球温度)(近藤, 2006)(http://www.asahi-net.or.jp/~rk7j-kndu/kenkyu/ kenkyu00.html)において検討されている.また, 本計算に用いた熱交換係数は Kondo(1967)によ る. 温度計の球に入射するエネルギー R は,直達日 射量が球の断面積,そのほかのエネルギーは球の 表面積に依存することから,太陽日射の直達成分 を I,散乱成分を Sd,地表面からの反射成分を Su, 大気からの赤外放射量を Ld,地表面の赤外放射量 を Luとしたとき以下の式で表わされる. R=α[I/4+(Sd+Su)/2]+b[(Ld+Lu)/2] ここで,α:温度計のアルベド(0.3 とした), b:温度計の黒体度(0.96 とした). 一方,黒球から放出されたり奪われたりするエ ネルギーは,湿球温度を Tw(n)(K)としたとき, 湿球温度計が放射するエネルギー量 σTw(n)4(σ:ス テファンボルツマン定数=5.67×10−8W/m2k4),風や 自然対流により奪われる顕熱 H,水蒸気の蒸発に 伴って奪われる潜熱 ιE であり,熱平衡に達したと きには, R−σTw(n)4−H−ιE=0 となる.この平衡式を σTw(n)4≒σTa4+l (Tw(n)−Ta)(l は Taと Tw’n)の中間温度における σT4の勾配)で 近似し,平衡温度 Tw(n)を求める. なお,顕熱 H,冷却係数 ChU,および,潜熱 ιE は,以下の式による. H=CpρChU (Tw(n)−Ta) ここで,Cpρ:空気の体積熱容量(1 気圧,20°C で 1.21×103J/K⋅m3 Ch:顕熱の輸送係数,U:風速(m/s),Tw(n):湿 球温度(K),Ta:気温(K) ChU=(a/d)×N ここで,a:空気の分子温度拡散係数(1 気圧 20°C で 2.12×10−5m2/s d:球の直径(m) N=C1+C2Re*(1/2)(強制対流と自然対流の効果を含 むヌッセル数) Re*(1/2)={Re2+(C 3/C2)4×Gr}(1/4) Re=U×d/ν(レイノルズ数) U:風速(m/s),ν:空気の動粘性係数(=1.51× 10−5m2/s Gr=g(Tw(n)−Ta)×d3/(T aν2) (グラスホッフ数) g:重力加速度(=9.8 kg⋅m/s2 球に対する熱交換係数 C1~C3,初期値は C1=2, C2=0.6,C3=0.46 ιE=LρChUβ(qsat−q) ここで,L:気化の潜熱(2.5×106J/Kg),ρ:空 気の密度(1.21 Kg/m3 β:蒸発効率(=1.03) qsat:湿球温度 Tw(n) における飽和水蒸気圧(hPa) q:周囲の空気(温度 Ta)の水蒸気圧(hPa) また,全天日射量 S と,太陽日射の直達成分 I, 散乱成分 Sd の関係は,太陽の天頂角を θ(deg) と したとき,S=Sd+I×cos(θ) の関係にあり,Lu は設定 した地表面温度における赤外放射,大気放射 Ldは 以下の式による. Ld=(0.74+0.19x+0.07x2σT a4 ここで,σ:ステファンボルツマン定数,Ta:気 温(K)

x=Log10 wTOP(wTOP:有効水蒸気全量(cm)) Log10 wTOP=0.0315×Tdew−0.1836(Tdew:露点温度

(K))

Corresponding Author Address: Masaji ONO, National Institute for Environmental Studies, 16-2, Onogawa, Tsukuba, Ibaraki 305-8506, Japan

E-mail: [email protected]

別刷請求先:〒305–8506 茨城県つくば市小野川 16–2 国立環境研究所環境健康研究センター

Table 1.  Location of the six meteorological stations
Fig. 1.  Correlation between observed and estimated WBGT
Fig. 3.  Distribution of estimation error in two models; with and without SR 2 Fig. 2
Fig. 4.  Distribution of th estimation errors in Tokyo and Nagoya
+3

参照

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