博 士 ( 医 学 ) 小 野 雄 司
学 位 論 文 題 名
上部消化管超音波内視鏡検査時における midazolam と 低用 量midazolam 併用 propofol の 鎮静効果 の比較試験
学位論文内容の要旨
背景
上部消化管内視鏡を鎮静下に施行することは近年一般的に行われている。内視鏡時の鎮静で はbenzodiazepine がもっとも用しヽられてきた薬剤であるが、時としてbenzodiazepine による 鎮静が困難な症例が存在する。近年、propofol による鎮静の安全性と有効性が種々報告され ており、またbenzodiazepine によ る鎮静が難しい患者にpropofol がその代替薬剤として有 効と推測されている。
Propofol はその詳細な作用機序は不明であるが、アルコールやベンゾジァゼピンと独立した GABA 受容 体 に作 用し てい ると 考え られ てお り、 多量 飲酒者などで鎮静が困難な場合、
benzodiazepine の代替としてpropofol の使用が提案されている。しかし、propofol による鎮 静は投与量が多くなると呼吸抑制が強く出現し、米国麻酔学会では麻酔科医の管理下にて行う ことを推奨している。一方で、propofol に少量のmidazolam を併用することで相互作用によ り propofol の 投 与 量 を 減量 する こと がで き、 安全 性が 向上 す ると ぃう 報告 もあ る。
本研究では、上部消化管超音波内視鏡検査(EUS) において、内視鏡検査時に一般的に用い られる benzodiazepine 、 midazolam による鎮静と、低用量miefazolam 併用propofol による鎮 静の有用性と安全性を比較した。
対象と方法 対象
2004 年6 月より2005 年6 月までの間に北海道大学病院光学医療診療部においてEUS を行った 外来患者153 名のうち、 ASA 分類にて1 または2 と判断され、同意を得られた77 名の患者を対象 とした。すべての患者より詳細な病歴を聴取し、血液検査を行った。Drinking Index は生涯飲 酒量を定量化するものであり、以下のように計算した。日本酒180ml 、焼酎120ml 、ウイスキー 70ml 、あるいはビール720ml を一単位とし、一週間の飲酒量を合算し、年数をかけたものを Drinking Index (DI) とした。
患 者を 無 作為 に低 用量 midazolam 併 用 propofol による鎮静 を行う群( P 群、37 名)と midazolam 単剤による鎮静を行う群 (M 群、40 名)に分けた。Drinking Index にて 700DI 以上 の患者をheavy alcohol 群とし、700DI 未満をlow alcohol 群として、両者間にて比較を行った (M 群:low alcohol 群29 名、heavy alcohol 群11 名、 P 群:low alcohol 群30 名、heavy alcohol 群7 名)。すべての検査は熟練した内視鏡医3 名によって施行され、医師または看護師が介助を 行った。
薬剤投与
すべての患者は上腕に血管留置針を留置し覚醒まで、生理食塩水の持続点滴を行った。薬剤 の投与は内視鏡施行医の指示のもとに行った。鎮静深度はRamsey Sedation Scale にて2 から3 を目標に行った。検査開始時より覚醒まで自動監視装置によルモニターし、合併症の有無をチ エッ クし た 。す べて の患 者に 検査 開始 時よ り酸 素を 経鼻にて 21/min の量を投与した。
M 群:
鎮静開始時にmidazolam を4mg 静脈投与を行った。鎮静が十分な場合に内視鏡を挿入した。
内視鏡挿入前あるいは挿入中に鎮 静が不充分と判断された場合はmidazolam を2mg 静脈投与
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に よ り 追 加 し た 。 患 者 が80才 以 上 、 ま た は 体 重 が50kg以 下 の 場 合 は そ れ ぞ れ 半 量 を 投 与し た 。 P群:
鎮 静 開 始 時 にmidazolamを2mg投 与 し 、 そ の2分 後 にpropofolを10mg投 与 し た 。 十 分 な 鎮 静 が 得 ら れ た ら 内 視 鏡 を 挿 入 し 検 査 を 行 っ た 。 内 視 鏡 挿 入 前 あ る い は 挿 入 中 に 鎮静 が 不 充 分 と 判 断 さ れ た 場 合 はpropofolを10mgず つ 追 加 投 与 を お こ な っ た 。 患 者 が80才 以 上 、 ま た は体 重が50kg以下の 場合は それぞ れ半 量を投 与した 。
判定
す べ て の 患 者 はEUS終 了 後 、 内 視 鏡 部 内 の り カ バ リ ー ベ ッ ド に 移 動 し 、 覚 醒 ま で 観 察 し た 。 検 査 施 行 中 と 同 様 に 自 動 監 視 装 置 に て モ ニ タ ー さ れ た 。 覚 醒 に つ い て はStroopの も の を改 変 し たColor WordTestをEUSの前 後に 施行し 、覚醒 の指標 とし た。
評価
覚 醒 が 確 認 さ れ た 後 、 そ れ ぞ れ の 患 者 は 検 査 全 体 に っ い てdiscomfonお よ びsatisfactionを V|suaIAnalogScale( ヽ′AS;0.0〜10.0)(図1) にて評価を行った。内視鏡検査施行医および介助者 は そ れ ぞ れ 独 立 に 患 者 に つ い てcooperationお よ びtoleranceに つ いて 、 ′ASにて 評 価 を 行 った 。 結果
薬剤 投与量 と検査 施行時 間
M群 で は 、midazolamの 総 量 は7.1土2.6mgで あ っ た 。P群 で はmidazoIamを1.8土0.4mg、 propofotを54.9土25.9mg使 用 し た 。heavyalcohoI群 お よ びlowalcohoI群 と も 、 薬 剤 の 投 与 量は 統計学 的に差 がなか った 。
内視 鏡検査 時間 はM群 で32.4土4.8分、P群 で28.8土4.1分で あった (pく0.001)。検査終了後より 覚醒 までの 時間は、M群で59.8土29.0分、P群で24.2土20.7分で、有意にP群で短かった(pく0.001)。
患者 の評価
患 者 に よ る 評 価 で は 、M群 のdisComfonは0.8土0.5、satisfactionは0.8士0.4で 、P群 で は discomfonは1.2土0.8、satisfaCtionは0.9土0.5で あ っ た 。M群 とP群 の 間 でdiscomfon、 satisfaCtionに 統 計 学 的 に 有 意 な 差 は 認 め な か っ た 。 ま た 、M群 およ びP群 の 双方 に お い て 、low alcohoI群とheavya|C0hol群の 比較で は、 有意な 差を認 めなか った 。
内視 鏡施行 医と介 助者の 評価
内 視 鏡 施 行 医 お よ び 介 助 者 の 双 方 に お い て 、C00perationお よ びtoleranceの 両 方 の 評 価 と もM群 に 比 べ 、P群 が 有 意 に 良 か っ た 。M群 の |owalcohoI群 とheavya|C0ho| 群 の 比 較 で は c00peration、toIeranceと も 、 施 行 医 、 介 助 者 両 方 の 評 価 で 有 意 な差 は な か っ た。P群 に お いて も 、IowalC0hol群 とheavyalcohoI群 の 比 較 で 施 行 医 、 介 助 者 両 方 の 評 価 で 有 意 な 差 は 無 か っ た。
安全 性
M群 に お い て 検 査 中 に 高 血 圧 症 を 発 症 し た 患 者 が 一 名 い た 。 後 遺 症 な く 改 善 し 、 こ の 他 に 特 記す べき合 併症は 認めな かっ た。
考察
本 研 究 で はpropofo| は 鎮 静 が 遷 延 す る こ と な く よ り 速 や か に 覚 醒 を 促 す こ と を 示 し 、 こ の 点でmidaz01amに比し より安 全で あると 推測さ れた。
今 回 の 臨 床 試 験 で は 施 行 医 お よ び 介 助 者 の 評 価 に よ る とM群 とP群 の 間 に 有 意 差 を も っ てP群 が高 い評価 を得た 。
Drinkinglndexに よ る 比 較 に て 差 を 認 め な か っ た . こ れ は 鎮 静 深 度 は 施 行 医 が 評 価 す る 事 か ら 、 客 観 性 に 欠 け る こ と が ー 因 と 考 え ら れ る 。 ま た 、 本 臨 床 研 究 は 内 視 鏡 医 の 練 度、 検 査 の 質 そ の も の が 患 者 のdiscomfonやsatisfactionに 影 響 す る 可 能 性 が 考 え ら れ た 。 P群 の 鎮 静 か ら の 早 い 回 復 時 間 は 、 病 院 の 施 設 面 、 人 員 面 で よ い 影 響 を 与 え る こ と が 考 え ら れ る 。 ま た 、 本 臨 床 試 験 で 内 視 鏡 医 の み の 管 理 でbenzodiazepineと 同 様 に 低 用 量midazolam 併 用propofolの 鎮 静 を 安 全 に 施 行 で き た こ と は 、 あ ら た な コ ス ト の 発 生 を 生 ま ず に す む と 考 えら れた。
結語
EUS時 の 低 用 量midaz01am併 用propofoIに よ る 鎮 静 は ,midaz01am単 剤 に よ る 鎮 静 に 比 べ 覚 醒 時 間 ,cooperation,toleranCeの 点 で 有 用 で あっ た , し た がっ てpropofoIの 投 与 お よ び 鎮 静 の 管 理 をbenzodiazepineと 同 様 に 内 視 鏡 施 行 医 管 理 下 で 安 全 に 行 え る と 考 え ら れ ,propof01 併用 による コスト の増加 は抑 えるこ とがで きると 考え られた .
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