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プロセス開発支援反応装置における 石炭液化反応の速度論的研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 池 田 耕 一

学 位 論 文 題 名

プロセス開発支援反応装置における 石炭液化反応の速度論的研究

学位論文内容の要旨

  石炭は地球上に大量かつ広範囲に 賦存する.石炭液化油は,中長期的には需給逼迫が不可避で 地域 的に も偏 在 し, 現在 にお いて も価格変動の大きい石油を徐々に 補完する液体燃料や化学原 料と して 極め て 重要 であ り, 古く から研究開発が進められてきた. 我が国では,二度の石油危 機 を 契 機 に 瀝 青 炭 の 液 化を 目的 とす るNEDOLブ ロセ スの 開発 が推 進 され ,基 盤研 究,ltjdプ ロセス開発支援装置(Process Supporting Unit: PSUと略称)ブロセスや150t/dバイロットプラ ント プロ セス に よる 運転 研究 が実 施され,現在開発研究は大型実証 プラントや商用プラントの 概念 設計 ,経 済 性の 詳細 評価 ,海 外への技術協カなどの実用化に向 けた検討の段階へ移行して いる .こ のよ う な液 化プ ロセ スを さらに最適化していくためには, 最終的な液化生成物による 経済的な評価ばかりではなく,一層 科学的な反応プロセス設計が必要であり,,そのためには液 化反 応過 程に お ける 変化 を詳 細に 把握し,評価することが重要な課 題である.石炭液化反応機 構や 反応 速度 の 研究 は, これ まで 主に小型の回分式反応装置を用い た実験から得られた結果を 解析 して 行わ れ てき たが ,高 温高 圧の流通式反応装置における流動 ,加熱条件でこれらを検討 した研究はきわめて少ない.

  そこで本研究は,高温高圧流通式 反応装置における液化反応の進行状況を明らかにすることを 目的 とし ,上 記lt/d PSUの予 熱器 と3基直 列 の反 応器 から 構成され る液化反応工程において反 応器 から のス ラ リー の直 接採 取試 料の分析,ガスホールドアップの 測定などの実験を行い,結 果を 速度 論的 に 解析 して ,液 化反 応工程設計に関する工学的知見を 得た.本論文はその成果を 纏めたものである.

  第1章は序 論であり,石炭液化反応に関する既往の研究と技術開発 の経緯について概括し,本 研究の背景と目的について述ぺたも のである.

  第2章で は,PSU液 化反 応工 程の 予熱 器の みを 用い た予 熱器 単独 運転 実 験を 行い ,予 熱器出 口の生成物の収率や組成に基づいて 予熱器内の反応進行を評価した結果を記述した.すなわち,

予熱 器で は石炭スラリーを常温から約410℃まで昇温する間に,液化 反応残渣であるテトラヒド ロ フ ラ ン 不 溶 性 有 機 質 成分(IOM)や含 酸素 基の 分解 反応 と同 時に , 硫化 鉄触 媒の 形態 変化 反 応が 急速 に進 行 する こと を明 らか にしている.また,予熱器内のス ラリー実滞留時間を,スラ リー 供給 開始 時 の予 熱器 内圧 力損 失の経時変化から求めることを試 み,これまで測定が困難と されてきた実滞留時間を初めて明ら かにした.

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  第3章 で は ,PSU液 化 反 応 器 内 に おけ る液 化油 の気 液分 配状 態を 検討 した 結果 を記 述 した . まず ,反 応器 下流 の高 温分 離器 にお いて 気液 組成 を 測定 し, 液化 油の 気相お よび液相への分配 比を 求め ,液 化油 留分 の分 配比 は軽 質な 留分 ほど 高い値を示し,全留分の分配比が0.01〜1.0の 範囲 にあ るこ とを 明ら かに した .っ ぎに ,反 応器 内 スラ リー の直 接採 取実験 を行い,固形分の 濃 縮 状 況 か ら 反 応 器 内 液 化 油 の 気 液分 配状 態を 解析 し, 反応 器内 にお ける 液化 油の 蒸 発率 が 70wt%以 上に も達 する ことを明らかにした.また,反応温度や反応器へのガス とスラリーの供給 速 度 比(GIL)が 高い 場合 には , 液化 油の 蒸発 が促 進し ,実 スラ リー 流速 が減 少す るた め ,ス ラ   リーの実滞留時間が長くなることを明らかにした.

  第4章 では ,3基 の反 応器 が直 列連 結さ れて いる 液 化反 応工 程反 応器 の第一 反応器のみを用い た反 応器1基 運転 実験 結 果を 述べ た. すな わち ,第一反応器出口の生成物収率 や組成を測定し,

結果 に基 づい て液 化反 応の 進行 を検 討し ,3基 の反応器を用いた通常運転で生 成する液化油の約 95% 以上 は第 一反 応器 において生成し,第二およぴ第三反応器では主に液化油 の軽質化による炭 化水 素ガ スの 生成 反応 が起こることを明らかにした.また,反応温度や(れを 増大した場合は,

反応 器内 スラ リー 実滞 留時 間も 長く なり ,反 応を 促 進さ せる 要因 とな ること を明らかにした・

  第5章で は, 第2章 およ ぴ第4章で 述べ た種 々の 条件 にお ける 実験 から 得ら れた 予熱 器 およ び 反 応 器 にお ける 液化 反応 の進 行を ,IOMの変 化に 着目 した 速度 論的 に解 析し ,評 価し た 結果 を 記述 した .ま ず, 予熱 器に おけ る反 応進 行に つい て は, 予熱 器に おけ るスラ リー実滞留時間,

昇 温 条 件お よぴ 第一 反応 器に おけ るIOMの減 少に 関す る反 応速 度バ ラメ ータ を用 いて , 予熱 器 内IOM残存 率の 変化 を推 算し た .推 算し た変 化を 実測 した 変化 と比 較し 結果 ,無 水無 灰 基準 の IOM重 量 分 率 の 推 算 値 は 実 測 値 を 約35wt% も下 回の で, 予 熱器 内のIOMの減 少は 第一 反 応器 内 1の 減少 とは 異な るこ と を明 らか にし た. さら に, この よう な液 化反 応初 期過程におけるIOMの 急激 な減 少を ,石 炭が 反応 性の 高い 成分 と低 い成 分 から 成る と考 えた 反応モ デルにより説明す   る こと を試 み, 夕ニ トハルム炭の場合の高反応性成分分率は約3'wt%である ことを明らかにし た.っぎに,第一反応器における反応の進行について は,反応器内流体の完全混合を仮定し,IOM の 反 応 率 とNAT法 に よ る ス ラ リ ー 実滞 留時 間の 測定 値に 基 づい て,IOMの反 応速 度定 数 を解 析   した.その結果,反応温度が高くなると反応速度定数と滞留時間の増加により,(}几が大きくな   る と主 に滞 留時 間の 増加 によ りIOMの反 応が 促進されることを明らかにした .また,反応速度 定 数 の 温度 依存 性か ら, 第一 反応 器に おけ るIOMの反 応に 関す る見 掛け 活性 化エ ネル ギ ーは 約 87kJ/molで ある こと を 見出 した .第 二お よび 第三反応器における反応進行に ついては,第一反 応器 出口 にお ける 固形 分残 存率 と第 一反 応器 にお け る固 形分 減少 の反 応速度 定数を用い,完全 混合 槽列 モデ ルと 逐次 不可 逆反 応モ デル を仮 定し , 第三 反応 器出 口に おける 固形分残存率を推 算し た. その 結果 ,推 算値 が実 測値 より 小さ いこ と から ,重 質炭 化水 素化合 物の軽質化反応で ある 液化 反応 と同 時に 生成 物の 重質 化反 応も 起こ る こと を見 いだ し, 液化反 応後期過程におけ   る 反応 解析 には 逆反 応についても考慮する必要があることを明らかにした. さらに,以上のよ   う な 解 析 結 果 に 基 づ い て , 液 化 反 応 過 程 に お け る 石 炭 液 化 反 応 モ デ ル を 提 示 し て い る .     第6章は,本研究で得 られた成果を総括したものである.

    以 上の よう に, 本研 究は ,lWプロ セス 開発 支援 装置 (PSU)プ ロセ スの 予熱 器と 反 応器 に おけ る反 応進 行を 評価 する ため に必 要な 諸量 を測 定 し, これ らの 解析 結果に 基づいて液化反応

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モデルを構築し,150 t/dバイロットプラントプロセスとその操作条件の設計に資する工学的知 見を明らかにしたものである.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

プロセス開発支援反応装置における 石炭液化反応の速度論的研究

  地球 上に 大量 かつ 広範 囲に 賦存 する 石炭 か ら水素化反応により得られる 液化油は,中長期的 に は需 給逼 迫が 不可 避で 地域 的に も偏 在し , 価格変動の大きい石油を徐々 に補完する燃料や化 学 原料 とし て極 めて 重要 であ る. 我が 国で は ,二度の石油危機を契機とし て瀝青炭の液化を目 的 と す るNEDOLブ ロ セ ス の 開 発 が 推 進 され ,基 盤研 究,lt/dプロ セス 開発 支援 装 置(Process Supporting Unit:PSUと 略記 )プ ロセ スや150t/dパイロットプラントプロ セスによる運転研究 が 実施 され ,実 用化 に向 けた 検討 段階 ヘ移 行 している.このような石炭液 化プロセスをさらに 最適化していくために は,液化生成物の経済的な評価ぱかりではナょく,.プロセスを科学的に設 計 する こと が必 要で あり ,そ のた めに は液 化 反応過程における変化を詳細 に把握し,評価する こ とが 重要 な課 題で ある .こ れま で, 石炭 の 液化反応機構や反応速度の研 究は主に小型回分式 反 応装 置を 用い た実 験か ら得 られ た結 果を 解 析して行われてきたが,高温 高圧の流通式反応装 置 にお ける 流動 ,加 熱条 件で これ らを 検討 し た研究はきわめて少ない.そ こで,本研究では高 温 高圧 流通 式反 応装 置に おけ る液 化反 応の 進 行状況を明らかにすることを 目的とし,上記lt/d PSUプ ロ セ スの 予熱 器と3基直 列反 応器 から 構成 され る液 化反 応工 程に おい て反 応 器か らス ラ リ ーを 直接 採取 して 得た 試料 の分 析, ガス ホ ールドアヅプの測定などの結 果を速度論的に解析 し て , 設 計 に 関 す る 工 学 的 基 礎 知 見 を 蓄 積 し た . 本 論 文 は そ の 成果 を纏 めた も ので ある ・   第1章は 序論 で あり ,石 炭液 化反 応に 関す る既 往の 研究 と技 術開 発の 経 緯について概括し,

本研究の背景と目的に ついて述べている・

第2章 で は , 液 化 反 応 工 程 の 予 熱 器 の みを 用い た予 熱器 単独 運転 実験 を行 い, 予 熱器 出口 の 生成物の収率や組成に 基づいて予熱器内の反応進行を評価した結果を記述して いる.すなわち,

予 熱器 では 石炭 スラ リー を昇 温す る間 に, 液 化反応残渣であるテトラヒド ロフラン不溶性有機 質 成分 (以 下,IOMと 略記 )や 合酸 素基 の分 解反 応と 同時 に, 硫化 鉄触 媒 の形態変化反応が急

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俊 彦 夫 英 郎         一 忠 正 隆     潤 葉 井 田 部 千 荒 増 服 林 授 授

、 授

授 授

   

   

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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速 に進 行 する こと を明 らか にし てい る. また ,予熱器内スラリー圧力損失を測定し ,その経時 変化 から予熱器内スラリー実滞留時間を初めて明らかにして いる.

  第3章 では , 液化 反応 工程 の第 一反 応器 のみ を用 いた 反応 器1基 運転 実験 結果 につ いて 述べ て いる . 第一 反応 器出 口の 生成 物収 率や 組成 を測定し,結果に基づいて液化反応の 進行度を検 討 し,3基の 反応 器を 用い た通 常運 転 で生 成す る液 化油 の約95% 以上 は第一反応器 において生 成 し, 第 二お よぴ 第三 反応 器で は主 に液 化油 の軽質化による炭化水素ガスの生成反 応が起こる こ とを 明 らか にし てい る. また ,反 応温 度やG/Lを 増大 した 場合 は, 反応器内スラ リー実滞留 時 間 も 長 く な り , 反 応 を 促 進 さ せ る 要 因 と な る こ と を 明 ら か に し て い る ・   第4章 では ,液 化反 応器 内に おけ る 液化 油の 気液 相へ の分 配状 態を 検討した結果 を記述して いる .まず,反応器下流の高温分離器において気液分配組成 を測定し,気相への分配比を求め,

液 化油 留 分の 分配 比は軽質な留分ほど高い値を示し,全 留分に対する比が0.0l〜1.0の範囲にあ る こと を 明ら かに して いる .っ ぎに ,反 応器 内スラリーの直接採取実験を行い,固 形分の濃縮 率 から 反 応器 内液 化油 の分 配比 を解 析し ,反 応器 にお ける 液化 油 の蒸 発率が70wt%以上にも達 する ことを明らかにしている.また,反応温度や反応器へのガスとスラリーの供給速度比(くれ)

が 高い 場 合に は, 液化 油の 蒸発 が促 進し ,実 スラリー流速が減少するため,スラリ ーの実滞留 時間 が長くナょることを明らかにしている.

  第5章 で は , 第2章 お よ ぴ 第4章 で 述べ た 種々 の条 件に おけ る実 験か ら得 た予 熱器 と反 応器 に おけ るIOMの変 化を 速度 論的 に解 析 し, 評価 した 結果 を記 述し てい る.予熱器に おける反応 進 行に つ いて は, スラ リー 実滞 留時 間, 昇温 条件 およ び第 一反 応 器に おけるIOMの 減少に関す る 反 応 速 度 バ ラ メ ー タ を 用 い てIOM残 存 率 の 変 化 を 推 算 し , 実 測し た 変化 と比 較し ,IOM重 量 分 率 の 推 算 値 は 実 測 値 を 約35wt% も下 回る ので ,予 熱器 と第 一反 応 器内 とで はIOMの 減少 速 度が 異 なる こと を明 らか にし てい る. さら に, この よう な液 化 反応 初期過程におけるIOMの 急 激な 減 少を ,石 炭が 反応 性の 高い 成分 と低 い成分から成ると考える反応モデルに より説明す る こと を 試み ,夕 ニト ハル ム炭 の場 合の 高反 応性成分分率は約35wt%であることを 明らかにし て いる . また ,第 →反 応器 につ いて は, 反応 器内 流体 の完 全混 合 を仮 定し,IOMの 反応率と中 性 子減 衰 法に よる スラ リー 実滞 留時 間の 測定 値に基づいて,反応速度定数を解析し た結果,反 応 温度 が 高く なる と反 応速 度定 数と 滞留 時間 の増 加に より ,G/Lが大 きくなると主 に滞留時間 の 増加 に より 液化 反応 が促 進さ れる こと を明 らかにしている.さらに,種々の温度 で得た第一 反 応器 に おけ る反 応速 度定 数を 用い ,完 全混 合槽列モデルと逐次不可逆反応モデル を仮定して 第 二お よ ぴ第 三反 応器 にお ける 反応 進行 を推 算し ,第 三反 応器 出 口に おけるIOM残 存率を推算 し た結 果 ,推 算値 が実 測値 より 低い こと から ,軽質化反応である液化反応と同時に 生成物の重 質 化反 応 も進 行す るこ とを 見い だし ,液 化反 応後期過程における反応解析には逆反 応について も 考慮 す る必 要が ある こと を指 摘し てい る. 最後に,以上のような解析結果に基づ いて石炭液 化反 応モデルを提示している.

  第6章は,本研究で得られた成 果を総括したものである.

,こ れを 要す るに ,著 者は ,l t/dプ ロセ ス開 発支 援装 置(PSU)プ ロセ スの 予熱 器と 反応 器に おけ る反 応進 行を 評価 する ため に必 要な諸畳を測定 し,これらの解析結果に基づいて液化反応

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モデルを構築し,150 t/dバイロットプラントプロセスとその操作条件の設計に資する工学的知 見を明らかにしたもので,その成果は石炭転換工学の発展に貢献するところ大なるものがある.

  よって著 者は,北 海道大学 博士(工学 )の学位 を授与さ れる資格あるものと認める.

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