算数教育における類似探求授業の研究
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(2) は じ め に. ある調査は,「考えるカが育っていない」,「算数・数学に対する意欲が高くない」とい う児童・生徒の実態を指摘している。. 上述のような実態の改善に向け,学校現場の教師たちは,平成14年度実施の新学習指導 要領のもと,児童の考えを生かしたり,児童の活動を積極的に取り入れたりする等して, 児童主体の授業になるよう心掛けている。. そして,筆者を含め多くの教師たちは,児童の変容から,自ら考えようとする児童,算 数が好きな児童が増えてきていることに手応えを感じている。. しかし,その反面,筆者の周りの多くの教師たちは,「児童が様々に考えても,本時に 学ぶべきことは決まっているので,最後には教師が児童に教えなければならない。ならば, 初めから教えても同じではないか。むしろその方が,時間が有効に使えるのではないか。」 という疑問をもっている。. 筆者は,兵庫教育大学に来てすぐ,指導教官の暗谷眞也先生から,構成主義について学 んだ。そして,主体的な学びがあるように算数教育を改革していくためには,r知識は教 師の伝達によって受け取られるもの」というパラダイムから,「知識は自ら構成すること. によって獲得するもの」というパラダイムに変換し,構成主義の立場に立った授業を行っ ていくことが大切であることを知った。. さらに,構成主義を実現する授業の1つとして類似探求授業があることを知った。しか し,授業の成果は報告されてきているものの,類似探求授業は開発されたばかりのため,. 類似探求授業における類似性認知のメカニズムや教師による様々な工夫の妥当性等,理論 的な研究はあまりなされていないことを知った。. そこで,上述のような研究を行っていけば,類似探求授業がより改善できるのではない かと考え,「算数教育における類似探求授業の研究」をテーマとして,研究を行った。. 2005年12月 川 下孝幸.
(3) 目. 次. はじめに. 第1章 算数教育の現状と本研究の目的… D・・・・・・・・・・・・… 第1節 算数教育の現状と課題 ・・・・・・… ◎・・・・・・・… 9. 1 算数教育の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 2 算数教育の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 9 第2節 本研究の目的と本論文の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・…. 1 本研究の目的 ・・・・・・・… 9・・・・・… 9・・… 2 本論文の構成 … 9・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 第1節 類似探求授業の概要 ・. 1 類似探求授業の特徴 ・ 2 類似探求授業の展開 ・ 第2節 類似探求授業の意義 ・. 第3章 類似探求授業における類似性認知のメカニズム・・・・・・・・・… 第1節 認知科学における類似性の研究 ・・・・・・・・・・・・・・…. 1.構造整列理論 ・・9・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 2.類似探求授業における類似性 ・・・・・・・・・・・・・・・… 3.類似探求授業における類似性の認知 ・・・・・・・・・・・・… 4.類似性を探求する効果 ・・・・・・・・・・・・・・… 。●●● 第2節 認知科学における洞察の研究 ・・・・・・・・・・・・・・・…. 1.洞察問題 … 9・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 2.制約 ・・・・・・・・… 9・・・・・・… 6・・… ■・ 3.類似探求授業における制約 ・・・・・・・・・・・・・・・・… 4. γ同察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … D ・ ・ ・ ・ ・ ・ … . 。 . 。 . 。 . . .. 5.類似探求授業における洞察 ・・・・・・・・・・・・・・・・… 6.洞察までの時間的な個人差 ・・・・・・・・・・・・・・・・… 7.類似探求授業の経験による個人差 ・・・・・・・・・・・・・…. ﹁⊥−. 第2章 類似探求授業の概要と意義.
(4) 第4章 類似探求授業における指導の手だて ・・・・・・・・・・・・… 第1節 「整列可能な差異jと「整列不可能な差異」を考慮した指導の手だて. 類似探求授業における「整列可能な差異」と「整列不可能な差異」 1.. 2つの概念の同時構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 2. 第2節 「地」を考慮した指導の手だて ・・・・・・・・・・・・・…. 類似探求授業におけるr地」 ・・・・・・・・・・・・・・… 1. 「地」に関する調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 2.. 第3節 類似探求授業の難易と指導の手だて ・・・・・・・・・・・…. r一次の関係の対応付け」とr高次の関係の対応付け」 ・・… 1. r知覚的類似性」と「概念的類似性」 ・・・・・・・・・・… 2. 第4節 rクイズの特性」を考慮した指導の手だて ・・・・・・・・・… 「クイズの特性」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 1,. 類似探求授業における「クイズの特性」 ・・・・・・・・・… 2.. 第5章 学校現場における指導の工夫 …. ● ● ● ● ● ● 0 ● ● ● ● O O ● ● ●. 第1節 類似探求授業の実践分析 ・…. ● ● ● ● ● ●. 1 類似探求授業の傾向 ・・・…. ● ● ● ● ● o ● ● ● ● ● ■ ● ● ● ●. 2 教師による様々な工夫 ・・…. ● ● ● ● ● ● 9 ● ● ● ● ● ●. 第2節 他教科・領域における類似探求授業. ■ ● ● ● o ■. o o ● ● ■. ● ● ● 0 ● ●. 第6章 本研究のまとめと今後の課題 ・・. ■ ■ o ● ● ● ● ● ■ ■ ● ● ● ● ● ■ o. 第1節 本研究のまとめ ・・・・…. ● ● ● 0 ● ● ●. 各章のまとめ ・・・・・… 1.. ● ● ● ● ● ● ●. 全体的なまとめ ・・・・… 2.. ● ● ・ . ■ .. 第2節 今後の課題 ・・・・・・…. ■ ■ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ■ ● ● ● ● ●. 類似性認知のメカニズムに関して 1. 指導の手だてに関して ・… 2.. おわりに. ● o ■ ● . ●. ● ● ● ● o ● ●. 0 ● ● ● O ■. ● ● ● ■. ● ● 9 0 ● ● ● ●. 0 ● ● ● ■ ■ ●. ● ● . ● o ● ● ●. 0 ● ● ● ● ● ● O O ● ● ● ● ● ● O ● ■ ● O ●. 引用・参考文献. ● ● ● o. g o ● , ● ● ● , , ● ● , g o o ● g o , ● 0 9 , , ● , o. 付録 「類似探求授業」の教材例. ● ● ● ● ■ o ● ● ● o ■ ● ●. ・…. 58 59 59 61 64. 67 68 68 70 71 71 71. 72 73. 9・・9 76.
(5) 第. 1. 出早. 算数教育の現状と本研究の目的 本章では,まず,算数教育の現状と課題を述べる。次に,それらを踏まえて,本研究の 目的と本論文の構成を述べる。. 本章の構成は,以下の通りである。. 第1節 算数教育の現状と課題 1.算数教育の現状 2.算数教育の課題. 第2節 本研究の目的と本論文の構成 1.本研究の目的. 2.本論文の構成. 1.
(6) 第1節 算数教育の現状と課題 本節では,まず,算数教育の現状について述べ,次に,算数教育の課題について述べる。. 1.算数教育の現状 教育課程審議会答申(1998)では,r学習が受け身で覚えることは得意だが,自ら調べ 判断し,自分なりの考えをもち,それを表現するカが十分育っていない」,「算数・数学 や理科の学習について(中略),積極的に学習しようとする意欲等が諸外国に比べ高くは ない」等の児童・生徒の実態が指摘された。そして,算数,数学科改善の基本方針の中で,. 「算数・数学を通して考えるカを育てること」が重要なねらいの1つとして,また,「学 ぶことの楽しさや充実感を味わうこと」が内容の改善の1つとして挙げられた。. 上述の基本方針を受け,小学校において,新学習指導要領が,平成14年度(2002年度). より実施されている。筆者(小学校の教師)を含め,現場の教師たちは,これまで,児童 が考える場が少なく,教え込みがちになっていた授業を反省し,児童の考えを生かしたり,. 児童の活動を積極的に取り入れたりして,児童主体の授業になるよう心掛けている。それ. は,表1−1,表1−2の国立教育政策研究所による平成15年度小・中学校教育課程実施 状況調査において,児童主体の授業に関わる質問に対し,教師の70%以上が肯定的に回答 したことからも伺うことができる。. 表1−1 平成15年度小・中学校教育課程実施状況調査(教師質問紙調査,算数・数学)結果 設問2 (4) 「算数の授業を展開する中で,児童の多様な考えやつまずきを生か した授業を行っていますか。」 教師 r行っている方だ」またはrどち r行っていない方だ」またはrど かといえば行っている方だ」. 6学年担当 5学年担当. らかといえば行っていない方だ」. 13.6% 12.4%. 85.9% 87.1%. 表1−2 平成15年度小・中学校教育課程実施状況調査(教師質問紙調査,算数・数学)結果 設問2(8) 「作業的・体験的な活動を取り入れた授業を行っていますか。」 「行っている方だ」または「どち 「行っていない方だ」または「ど 教師 かといえば行っている方だ」. 6学年担当 5学年担当. らかといえば行っていない方だ」. 21.0% 25.8%. 78.4% 73.7%. 一2一.
(7) そして,筆者は,自ら考えようとする児童,算数が好きな児童が増えてきていることに 手応えを感じている。児童の変容は,小・中学校教育課程実施状況調査の平成13年度と平. 成15年度を比較すると(表1−3,表1−4),それぞれの質問に対し,10ポイント以上 肯定的な解答が増えていることからも明らかであり,おそらく,多くの教師たちが同じよ うに感じていると考えられる。. 表1−3 小・中学校教育課程実施状況調査(児童・生徒質問紙調査,算数・数学)の比較 設問2(9) 「算数の問題がとけたとき,別なとき方を考えようとしていますか。」 「そうしている」または「どちら 「そうしていない」または「どち 6学年 といえばそうしている」. 13年度 15年度. かといえばそうしていない」. 56.8% 47.6%. 39.0% 51.8%. 表1−4 小・中学校教育課程実施状況調査(児童・生徒質問紙調査,算数・数学)の比較 設問1(1) 「算数の勉強が好きですか。」. 6学年. 「そう思う」または「どちらかと えばそう思う」. 13年度 15年度. 「そう思わない」または「どちら といえばそう思わない」. 47.8% 36.8%. 47.3% 59.2%. しかし,児童主体の授業を認めている反面,筆者の周りの多くの教師たちは,「児童が 様々に考えても,本時に学ぶべきことは決まっているので,最後には教師が児童に教えな ければならない。ならば,初めから教えても同じではないか。むしろその方が,時間が有. 効に使えるのではないか。」という疑問をもっている。筆者の周りでは,よくこの疑問が 話題となる。. 一3一.
(8) 2.算数教育の課題 中原(1999)は,主体的な学びがあるように算数教育を改革するためには,算数教育の パラダイムの転換が必要であると指摘している。つまり,「知識は教師の伝達によって受 け取られるもの」というパラダイムから,「知識は自ら構成することによって獲得するも の」という構成主義の立場に立ったパラダイムヘの変換を求めているのである。そして,. 中原(1999)は,「知識は教師の伝達によって受け取られるもの」というパラダイムをも. っ教師が意外と多いことを指摘している。教師が前述のような疑問を感じるのは,教師が もっパラダイムと構成主義の立場に立ったパラダイムとの間にギャップが生じているため. だと考えられる。その結果,活動する時問や考える時間は増えているものの,最後は教師 が教えるという形の授業が多く行われているのである。. ここまで述べてきたことから,算数教育の課題は,教師のパラダイムを変換し,構成主 義の立場に立った授業を行っていくことと捉えることができる。. 現在,構成主義による様々な授業が行われている。本論文で述べる類似探求授業も構成 主義を実現する授業の1つである。類似探求授業は,児童に類似性を考えさせることによ. って,教師が知識を伝達するのではなく,児童が自らそれを構成することができる授業で ある(詳しくは,第2章参照)。. 一4一.
(9) 第2節 本研究の目的と本論文の構成 前節では,算数教育の現状と課題について述べた。本節では,それらを踏まえて,本研 究の目的と本論文の構成について述ぺる。. 1.本研究の目的 前節では,算数教育の現状から,教師のパラダイムを変換し,構成主義の立場に立った 授業を行っていくことが算数教育の課題であること,構成主義の立場に立った授業の1っ として類似探求授業があることを述べた。. しかし,類似探求授業は提案されてから数年しか経っておらず,教師が,その経験から,. 様々な工夫を考え,それを取り入れて実践しているのが現状で,教師による様々な工夫が,. 児童の類似性認知を促進したり,意欲を高めたりする手だてとなっていることを裏付ける. 理論的研究はなされていない。また,類似探求授業の意義が明確にされているとはいえな い。. そこで,本研究では,これらのことを踏まえて,以下の3点を研究の目的とした。. ① 類似探求授業の意義を明らかにする。. ②類似探求授業における類似性認知のメカニズムを明らかにする。 ③ 類似探求授業における指導の手だてを提案する。. ①に関しては,類似探求授業の特徴,認知科学の分野における研究,クイズに関する研 究をもとに述べる。. ②に関しては,認知科学の分野における類似性の研究や洞察の研究をもとに述べる。. ③に関しては,認知科学の分野における研究,クイズに関する研究,児童に対しての調 査,実践記録をもとに述べる。. なお,類似探求授業は,算数科だけでなく,数学科や他教科・領域においても実践可能 であるが,本論文では,算数科を中心に論じていく。. 一5一.
(10) 2.本論文の構成 本論文は,6っの章から成る。 本章では,まず,教師がもつパラダイムと構成主義の立場に立ったパラダイムとの間に ギャップが生じているという算数教育の現状を述べた。. 次に,「教師のパラダイムを変換し,構成主義の立場に立った授業を行っていくこと」. が,算数教育の課題であること,そして,構成主義を実現する授業の1つとして,類似探 求授業があることを述べた。. これらのことを踏まえて,本研究の目的を述べ,研究方法として,認知科学の分野にお ける研究やクイズに関する研究の考察,児童に対する調査結果や実践記録の分析を行うこ とを述べた。. 第2章では,類似探求授業の概要を例を挙げて示す。また,類似探求授業の意義を明確 にする。. 第3章では,まず,認知科学の分野における類似性の研究をもとに,類似探求授業にお いて,児童が類似性を認知するメカニズムを明らかにする。次に,認知科学の分野におけ る洞察の研究をもとに,児童が,初期に認知した類似性を教師が意図する類似性に変容さ せていくメカニズムを明らかにする。. 第4章では,類似性の研究をもとに,類似探求授業において,教師が意図する類似性の. 認知を促進する指導の手だてを提案する。また,クイズに関する研究をもとに,児童の学 習意欲を喚起する指導の手だてを提案する。. 第5章では,類似探求授業の実践記録をもとに,学校現場における指導の工夫を例示す る。また,他教科・領域においても,類似探求授業を実践することが可能であることを述 べる。. 第6章では,本研究をまとめ,今後の課題を述べる。. 一6一.
(11) 第 2 章 類似探求授業の概要と意義 本章では,まず,類似探求授業の概要を述べる。次に,類似探求授業の意義を述べる。 本章の構成は,以下の通りである。. 第1節 類似探求授業の概要. 1.類似探求授業の特徴 2.類似探求授業の展開. 第2節 類似探求授業の意義. 一7.
(12) 第1節 類似探求授業の概要 本節では,類似探求授業の特徴と展開を具体例を示しながら述べていく。. 1.類似探求授業の特徴 類似探求授業は,類似性を認知するという思考活動を通して,児童・生徒が主体的に算 数・数学の概念を構成するという授業であり,崎谷らによって開発された(崎谷他,2004)。. 算数における類似探求授業では,初めに基にす. よび,それと算数的に似ているものと似ていない. 図2−1. ∠]. るもの(数,図形,数量関係等の算数的素材)お. 似ている. 殴にするもの). 遡い. ものをそれぞれ例示し(図形,数量関係の場合は 1っずつ,数の場合は3つずつ程度),類似性を考. (似ているもの). えさせる。この時点では,類似性を認知できない. 児童や,教師が意図する類似性と異なった類似性 を認知する児童が見られる。そこで,引き続き,. (概念の名称). ※()の中は実際には板書」ない. 一』. 似ているものと似ていないものを提示することで,. / \似ていない1. 基にするものと似ているものの問だけに共通する 類似性を児童に認知させる。. 例えば,直角三角形の概念構成を目的とした類. △l. 似探求授業では,教師は,初めに,図2−1のよ. li. うな提示を行い,類似性を考えさせる。次に,図. るものと似ているものの間だけに共通する類似性. を認知させる。そして,ほとんどの児童が類似性. ﹂﹄叉. 2−2のように提示を続けていくことで,基にす. 図2−3 似ている /. \偲ていないI. を認知したところで,図2−3のように「1つの 角が直角である」という類似性を学級で共有させ,. 直角三角形という名称を教える。児童が「1つの 角が直角である」という類似性を認知したという. 1つの角が直角 直角三角形. 1 ㌧ ド P に ヒ 1 _一 員. ._」. ことは,直角三角形の概念を児童が自ら構成したということである。. 類似性の認知は,崎谷ら(1998)が指摘するように,目常生活でよく使われる認知活動. であり,誰しもそれを行うことができるにもかかわらず,算数・数学教育で,それが意識 的に活用されているとは思えない。こうした児童・生徒にとって馴染み深い認知活動を授. 一8一.
(13) 業の中心に据えているところに類似探求授業の特徴がある。. 一9.
(14) 2.類似探求授業の展開 類似探求授業の展開を2つの例で示す。なお,類似探求授業を実践する時の参考になる よう,教材例を巻末に掲載する。 (1)二等辺三角形の概念構成. 「教師や児童の活動」と「指導上の留意点」を示す。. 指導上の留意点と提示の様子. 教師や児童の活動. (基にするもの). ①類似探求授業の概説. にている. T r似ているかな,似ていないかなの. (似ているもの). 授業をします。まず,先生がここ(基. にするもの)に三角形を示します。. (概念の名称). 次に,ここ(似ているもの)にその. ※()の中は実際には板書しない. 三角形と似ている三角形を,ここ(似. ていないもの)にその三角形と似て. ・どこが似ているかが分かっても,クラス全員. いない三角形をそれぞれ示しますか が分かるまで口に出さないことを約束する。 ら,どこが似ているかを考えましょ う。」. ②例示と熟考. ・似ているものと似. 丁「さあ,先生が似ているものと似て ていないものの例示. いないものを1つずっ示しました。 は同数で,児童・生. にている. にていない. △. マ. どこが似ているかをよく考えましょ 徒がよく考えれば類 う。」. 似性が認知できると 思われる数だけ例示する。 ・例示後,考える時間を十分にとる。. ③児童による分類と正誤の確認. ・児童は自分で似て. T rでは,真ん中に置いたこの三角形 いる理由を見付けて. にている. にていない. △ Aマ. はどちらの仲間になりますか。」. 分類するであろうが,. C「似ている。」. 教師の分類を知るこ. C「似ていない。」. とによって,教師が. T「これは似ている三角形です。」. どのように分類しようとしているかを考えるよ うに促す。. ・分類後,再度,考える時間をとって,自分の 考えが正しいかどうかを検討させる。. 10一.
(15) ④③の継続. 分類活動が単調に. T r次に,この三角形はどちらの仲間 ならないように,以 になりますか。」. 下のような工夫をす. C「似ている。」. る。これらは,個々. C「似ていない。」. の児童が類似性が認. △. にている にていない. △△がマヤ ー▽. T「これは似ていない(または,似て 知できたかどうかの評価としても使える。 いる)三角形です。」. ・似ている仲間と似ていない仲間の例をノート. にかかせる(後の分類活動にこれを利用しても よい。)。. ・知覚的類似性に関するものは,実際は似てい. ないが,見た目には似ているように見えるもの. (例えば,2辺の長さが微妙に違う三角形)を 示し,似ているかどうかを検証させる。等 ⑤類似性の発表とクラス全体での共有 丁「多くの人が,どこが似ているかが. ・多くの児童が類似. 分かったようなので,似ている仲間 性を認知できた頃を に共通する性質を発表しましょう。」 見計らって,類似性 C類似性を発表する。. ム. にている にていない. △△が㌃》. を発表させる。 ニ等辺三角形. T「似ている仲間をかいたプリントを ・知覚的類似性に関するものは,クラスで共有 配りますから,みんなが発表した性 する前に,実測や操作等によって検証する。 質が本当かどうかを確かめてくださ. ・2つの角の大きさが等しいことや2つに折り. い。」. 曲げるとぴったり重なること(線対称)等,様々. C類似性を検証する。. な類似性が発表された場合,2つの角が等しい. C類似性をクラス全体で共有する。. こと等,後続の学習内容については,後にそれ. T rみんなが気付いた,2辺の長さが を詳しく学習することを予告する。 等しい三角形を二等辺三角形と言い ます。」. ・確認問題を解くこ. 二等辺三角形を見つけましょう. (構成内容)をより 確かなものにする。. ▽返. とで,類似性の認知. ③ムト. ⑥ 確認問題の解決. ・知覚的類似性に関 するものは, 2辺の長さが微妙に違う三角形等. 微妙なものも用意しておく。. 11.
(16) (2)約数の概念構成(類似探求授業を経験したことのある学級) 「教師の発言や活動」と「児童の発言や活動」を示す。. 教師の発言丁や活動〈〉 児童の発言Cや活動〈> ①類似探求授業の概説 丁 似ているかな・似ていないかなの授業を C やった。 します。. C どこが似ているかが分かっても,全. T この授業の約束は何でしたか。. 員が分かるまで言わないことです。. T そうでしたね。今日は,先生がr数」を C はい。 示しますから,どこが似ているかを考えま しよう。. 板書. 幽. 醐]. l l l. 〈黒板に類似探求授業の図を作成する。〉. ず . L=則. ②例示と熟考 丁 基にするものは30です。 〈カードを提示しながら話す(以下全て)。〉. CC. T 2は似ていますが,13は似ていません。 数の場合はこれだけでは難しいですね。 T そこで,もう1つ。10は似ていますが, 25は似ていません。 C う一ん? T どうですか。〈児童の様子を伺う。〉 T それでは,もう1つ。3は似ていますが, 8は似ていません。 たぶん分かった。 T さあ,似ているものと似ていないものを う一ん,分からないなあ。 3っずつ示しました。どこが似ているかな, 考えましょう。 〈児童の様子を見ながら3分程度待つ。〉 ③児童による分類と正誤の確認 丁 では,4と5は,一方は似ていますが, C 5が似ていると思います(A児)。 もう一方は似ていません。どちらが似てい ると思いますか。. T さあ,どこが似ているかな。もう一度考 えてみましょう。. ド . コロロロ. 一12一. コしヨ. 人。. 皿倒. T みんなに聞いてみよう。15が似ているで, 16が似ていないと思う人。 T 16が似ているで,15が似ていないと思う C はい。(O人). 國 囹園. 15が似ていて,16が似ていない。 16が似ていて,15が似ていない。 はい。(O人). 阿勘匙. 〈中央にカードを貼る(右図参照)。〉. CCC. ④③の継続 丁 では,15と16は,どちらになりますか。. C 分かった。 C 難しいな。. 、劇]. たね。実は先生もそう分けるっもりでした。 〈児童のつぶやきを取り上げる。〉 〈カードを移動する(右図参照)。〉. 画 國囹 圃. 丁 今,Aさんが,5が似ていると言いまし. 鑑些㌫剛幽. 〈中央にカードを貼る(右図参照)。〉.
(17) 〈カードを移動(右図参照)。>. C 6は似ていて, 11は似ていない。. C 6は似ていて, 100は似ていない。. C 1は似ていて, 7は似ていない。. 一㎜. 」. 〈ノートにかき込む。〉. 館歯圏. 導により把握する。〉 丁 発表しましょう。. 匝. 騨﹂. 丁 多くの子が分かってきたようですね。 今度は,似ているものと似ていないものを 1つずつノートにかいてみましょう。 〈児童が類似性を認知しているかを机問指. 匙馴﹂. 丁 多くの人が思っているように,15が似て C やっぱりそうだ。 分かったよ。 いるで16が似ていないに入ります。. 圃. C 似ているものはもうないです。. C はい。(O人) 「雨「 画 「. T どこが似ているかが分かった人。 丁 悩んでいる人にヒントを出しましょう。 〈似ているもののカードを並び替える。〉. ⑤類似性の発表とクラス全体での共有 丁 どこが似ているかが分かったようなの C 似ている数は横に並んでいる2つの で,似ている仲間に共通する性質を発表し 数をかけると30ができる。例えば,2 ましょう。. に15をかけると30。. C 30を似ている数で割ると割り切れる。 似ていないものは割り切れない。 C よく似ていると思います。. 〈実際には,時問をかけて共有していく。〉. C 言い方は違うけど同じことだと思い. ㌫厨纏. T 2つの意見が出たけどどうですか。. ます。. T そうですね。ここに出てきた基にする ものと似ているものの1,2,3,5,6,. 圓. 10,15,30は全て,30を割り切る数ですね。 このような数を30の約数といいます。. 囲. 〈概念を板書する。〉. 〈圃というカードを示し,基にする C 確かに,基にするものと似ているも ものと似ているもの,似ていないものを□ のは30÷□に当てはめたとき割り切れ に当てはめて確認する。〉. る。. C 30÷4は割り切れるけど,商が小数 になるものは,約数ではないんだね。 C 整数だけで考えるんだね。 C 割り切る数はもうないよ。 り 22 1よ. ,,た. に行う。>. 1 ーを ナ . 付 C C. ⑥ 確認問題の解決 丁 12の約数をノートにかきましょう。 〈25,40,35,13の約数についても同様. . 13一. 3,4,6,12だね。. 2,6,3,4の順番に見.
(18) 第2節 類似探求授業の意義 本節では,類似探求授業の意義を,分類視点の焦点化,思考の対象の明確化,学習効率. の向上,学習意欲の喚起の4つの観点から述べる。. (1) 分類視点の焦点化. 類似探求授業は,1つの算数的素材を提示し,それと似ているものと似ていないものを 例示することによって,分類視点をある程度,焦点化することができる。. 4る. 一い. 2て. 類似探求授業において,図2−4のような提示を. 図似. 例えば,二等辺三角形の概念構成を目的とした. 行えば,基にするものが鈍角三角形であるのに対 して,似ているものが鋭角三角形であるにもかか. わらず似ており,似ていないものが鈍角三角形で あるにもかかわらず似ていないことから,「直角よ. り大きいかどがある三角形が似ているものではな いか」という分類視点が排除され,それ以外の分類視点に焦点化することができる。. それに対し,これまで小学校で行われてきた,児童による自由な分類活動を組み込んだ 授業では,児童が,様々な視点から分類するため,なかなか教師が意図する分類を行わな いという問題点があった。例えば,二等辺三角形の概念構成を目的とした授業において,. 角形に分けた」等,様々な視点から分類する。そ. 形 角. ている仲間に分けた」,r小さな三角形と大きな三. 一ごつ. 自由に分類させると,児童は,r赤色のひごが入っ. 三 な ろ い ろ。 いう ,よ てし つま 使み 5をて. た4種類のひごで様々な三角形を作らせ,それを・. 図. 2ひ乍. 図2−5のように,児童に長さごとに色分けされ. 赤色. 黄色 青色. li川1川1. ち. 緑色 IIIII. こで,分類視点を2辺相等に集約したい教師は, 苦し紛れに,「辺の長さ(あるいは色の種類の数). に目を付けて分けてみよう。」と発言していた。これでは,分類視点を教師が与えている ため,二等辺三角形の概念を児童が自ら構成したとはいえなかった。. 類似探求授業は分類視点を焦点化するため,自由な分類活動を組み込んだ授業における こうした問題点を解決することができるのである。. 14一.
(19) (2) 思考の対象の明確化. 類似探求授業は,何を考えればよいのかという思考の対象を明確にすることができる。 っまり,教師が,「これは,似ていますか,似ていませんか。」,「どこが似ていますか。」. と問いかけることにより,全ての児童が,類似性を考えればよいということを理解するの. である。それに対し,これまで行われてきた授業では,「考えてみましょう。」という教 師の問いかけに対し,何を考えればよいかが分からず困惑する児童の姿がしばしば見られ. た。例えば,図2−5の二等辺三角形の概念構成を目的とした授業において,「作った三 角形を仲間分けしてみましょう。」と教師が問いかけたとき,児童は何を考えればよいの かが分からず,r幾つに分けてもいいのですか。」,rどのように分けてもいいのですか。」 といった質問を多くした。. 類似探求授業は,思考の対象を明確にすることで,全ての児童が,類似性を考えればよ いということを理解し,それを考えようとするのである。. (3) 学習効率の向上. 四辺形と台形の概念構成を目的とした類似探求授. 似てい6. 時に構成することが可能であるかや,その他にど のような例が挙げられるかについては,第4章,. \1以Lい’6い1 唱 ,. 1唱llIlF. 一. 業はその一例である(どのような場合に概念を同. 第1節で述べる。)。児童は,類似性を考える中で,. /. Il台髭_」1. 平行四辺形. 「似ているものは平行な辺が2組だが,似ていないものは1組である」という差異に気付 き,平行四辺形と台形の概念を同時に構成する。. このように,類似探求授業を行うことによって,学習効率が向上する場合があるのであ る。. 一15一.
(20) (4) 学習意欲の喚起. 既に述べた3っの意義は認知面に関するものであるのに対し,以下に述べる意義は,情 意面に関するものである。. 類似探求授業は,楽しさを感じることができる授業であるといえる。なぜなら,児童が,. 『教師が,r似ているかな,似ていないかなの授業をしましょう。」と発言すると,児童 は,「やった。」と喜ぶ。』,『算数が苦手で普段の授業への参加が消極的な児童が,類似探. 求授業には積極的に取り組む。』,『「類似探求授業はクイズのようで楽しい。」という感想 を述べる。』といった姿を見せるからである。. では,何故,楽しさを感じることができるのであろうか。 まず,類似探求授業は構成主義の立場に立った児童主体の授業であることが挙げられる。. 小学校学習指導要領解説算数編(1999)で述べられているように,児童は,自らの主体的 な活動によって意味がよく分かったときや,自分で問題を解決することができたときは楽 しさを感じるのである。. 次に,類似探求授業は,人々を夢中にさせるrクイズの特性」を備えていることが挙げ られる。rクイズの特性」とは何であるかについては,第4章,第4節で述べていく。. 一16一.
(21) 第 3 章. 類似探求授業における類似性認知のメカニズム 本章では,認知科学の分野における類似性の研究や洞察の研究をもとに,類似探求授業 において,児童がどのように教師が意図する類似性を認知するのか。そのメカニズムを明 らかにする。. 本章の構成は,以下の通りである。. 第1節 認知科学における類似性の研究. 1.構造整列理論 2.類似探求授業における類似性. 3.類似探求授業における類似性の認知. 4.類似性を探求する効果. 第2節 認知科学における洞察の研究 1.洞察問題. 2.制約 3.類似探求授業における制約. 4.洞察 5.類似探求授業における洞察. 6.洞察までの時間的な個人差 7.類似探求授業の経験による個人差. 17一.
(22) 第1節 認知科学における類似性の研究 本節では,類似性認知のメカニズムに関わる構造整列理論の概要を述べ,類似探求授業 において,児童がどのように類似性を認知するのかを明らかにする。. 1.構造整列理論 人がどのように類似性を認知するのかについては古くから様々なアプローチが試みられ てきており,70年代後半からはそのモデル化がなされてきた。伝統的モデルとして,多次. 元尺度モデルに代表される幾何学的モデルや,Tverskyの対比モデルに代表される特徴モ デルを挙げることができる。これらの伝統的モデルは,比較を行う中で,比較する刺激(刺. 激とは,物や場面等,比較されるもののこと)の表象が柔軟に変化することを認めていな かった。最近では,類似性の認知が伝統的モデルでは説明できないことを示す知見が多く 出されている(スペンサーニスミス・ゴールドストーン,2001)。. マークマン(2001)の構造整列理論では,類似性を認知するとき,比較者は,比較する刺. 激の表象間で整列を行うとしている。この理論は,現在多くの研究者に支持されている。 以下,マークマン(2001)を参考にして,構造整列理論の概要を説明する。. 図3−1刺激(a〉と(b)(マークマン,2001より). 図3−2 表象(a)と(b) (マークマン,2001より). ・8. o. cAUSE 《ND. 与える. CAUSE 同情す. 瓦ND. 鰯剛. 轡. f毛. し、. ’ ド P. 團 [薩. 男. もワている. 木. 性. 性. 女. 食 物 木. 陰 トラツク. 1女性の』萬性. さ累ざまな属憾 (a〉. b. o. CAUSE A丙D. CAUSE AND. 与える ワている. 同情する 要ける. 』↓ヤ馳. 含む{∼にある,. 女. 性. リ. ス. 食ぺ物. 女性の郷性 さまざまな属性 (b〕. 18一. 木. 穴.
(23) 構造整列理論において,刺激の表象は,刺激を構成する要素同士が互いにどのように結 び付いているかに関する情報を含んでおり,構造化されたものである。なお,刺激の要素 は,事物を表す対象,対象間や関係問等を結びっける関係,色・形・重さ・大きさ等対象 の性質を表す属性からなる(鈴木,1996)。前ぺ一ジ図3−2の(a)と(b)は,図3−1の 刺激(a)と刺激(b)の表象をそれぞれ図示したものである。例えば,図3−2の表象(a)は,. 対象である男性と女性が「同情する」という関係で結び付いている。同様にして,女性と 食物が「必要とする」という関係で,男性と食物が「もっている」という関係で,男性と 女性と食物が「与える」という関係で結び付いている。さらに,それらの関係は,「AND」. やrCAUSE」といった関係で結び付いている。また,表象(a)では,rよい」という男性の 属性だけが具体化されている。つまり,比較者は,図3−1の(a)の刺激を見て,「食べ物 を持ったよい男性が,食べ物を必要としている女性に同情して,女性に食べ物を与えてい. る。また,トラックは木の陰にある。」と理解しているのである。ただし,刺激の表象は. 比較者によって異なるため,別の比較者の表象は別なものとなる。また,同一の比較者で あっても,刺激の表象は,時問と共に変化していく。. 整列とは,表象問の要素に対応付けを行うことである。対応付けは,並列結合性と1対. 1写像という2つの制約(制約については次節の2参照)にもとづいて行われる。 並列結合性とは,2っの関係が対応する場合,その関係を形成する要素同士も対応する という制約である。例えば,図3−2の表象(a)と表象(b)で,r与える」という関係が対 応した場合,表象(a)の男性という対象に対し表象(b)の女性という対象が対応する。なぜ. なら,どちらも「与える」という関係の行為者であるからである。また,同様の理由から, 表象(a)の女性には表象(b)のリスが,表象(a)の食物には表象(b)の食べ物が対応する。. 1対1写像とは,一方の表象の要素が,他方の表象の要素と高々一つとしか対応しない という制約である。例えば,図3−2の表象(a)の女性に対し,表象(b)の女性とリスの両 方が対応することはない。. これらの制約にもとづいて,表象間の対応付けが行われるが,複数の整列が存在する場 合がある。例えば,図3−2の表象(a)と表象(b)の間の整列には,次ぺ一ジの図3−3の. ように2通りの整列が存在する。なぜなら,図3−2の表象(a)の女性は,属性が共通し ていることから,表象(b)の女性を対応させることもできる(属性の対応付け)が,「与え. るjという関係が共通していることから,並列結合性の制約により,表象(b)のリスを対. 応させることもできる(関係の対応付け)。しかし,1対1写像の制約により,表象(a)の. 女性に対し,表象(b〉の女性とリスの両方は対応しないため,属性の対応付けと関係の対. 19一.
(24) 応付けのどちらか一方だけを保持して対応付けを行う。その結果,2通りの整列ができる のである。つまり,「与える」を含め,共通する関係を保持して対応付けを行っているの. が図3−3の(a)であり,共通する属性を保持して対応付けを行っているのが図3−3の (b)である。. なお,一般的に,1っの要素の対応物を求 められ,その候補を2つ以上認知していると. 図3−3. 2通りの整列(マークマン,2001より). き,関係の対応付けによる対応物を,属性の. CAUSE. 対応付けによる対応物より優先して選択する. AND 与える CAUSE. 傾向性が強い。これをシステム性の制約とい う。例えば,図3−3の(a)と(b)の2通りの 対応付けを行った比較者は,刺激(a)の女性の. もっている. 同情する. A∼D. よい 隈描. 対応物として,刺激(b)の女性ではなく,リス を選ぶ傾向性が強い。. 男性1! 女牲! 食物1!. 女性1 リ ス 食物2. (a)閨係保持的な対応 木 陰. また,図3−3(a)の対応付けにおいて,男 女性Lノ 性2. 男リ. 性1と女性1は対応物である。このように,. 性1. 食物1! 物2. 木11. 2. トラックノ. ゴ. 異なる要素の対応物のことを整列可能な差異 女性の属性. という。一方,図3−3(a)の対応付けにおい て,トラックは対応物をもたない(そのため,. さまざまむ属性 ‘b)属性保持的な対疏;. トラックは3−3(a)に表記されていない。)。. このように,対応物をもたない差異を整列不可能な差異という(整列可能な差異と整列不 可能な差異については第4章,第1節で詳しく述べる。)。. そして,マークマン(2001)は,類似性には,表象の共通点とその共通点より生じる整 列可能な差異が関わっているとしている。したがって,類似性は,比較を行う前から決ま. っているのではなく,比較者の表象が関わっており,比較者ごとで表象が異なるため,認 知する類似性も比較者ごとで異なる。また,構造整列理論では,比較を行う中で,表象が 柔軟に変化することを認めている。同一の比較者であっても,認知する類似性は,時問と 共に変化する。. 一20一.
(25) 2.類似探求授業における類似性 前述のように,構造整列理論において,類似性は,比較者ごとで異なるものとして捉え られ,刺激間の類似性が何であるのかについて,あらかじめ決められていない(ただし,. 類似性の認知については,人間に共通する傾向性があることが分かっており,類似探求授 業における提示物に関しての示唆を得ることができる。詳しくは,第4章で述べる。)。. では,類似探求授業において,児童に認知させたい類似性とは何であろうか。これは,. 基にするものと似ているもの全ての間だけに存在する共通点のことである(詳しくは第4. 章,第2節で述べるが,「地」の影響を考慮して,この類似性の定義が厳密でない場合も ある。)。これを,児童が探求する過程で認知する様々な類似性と区別するために,「教師 が意図する類似性」とする。. 一21一.
(26) 3.類似探求授業における類似性の認知 構造整列理論をもとに,類似探求授業において,教師が意図する類似性を認知するまで の間に,どのような思考活動が行われているのかを明らかにする。. まず,図3−4のような等しい比の概念構成を目的とした類似探求授業を考えてみる。. 最初の例示において,児童の基にするものと似ているものの表象は,図3−5の上図と中 図のようであり,これらを下図のように対応付けることにより,rココアとミルクが同じ」. 図3−4. や「混ぜているところが同じ」という類似性を認 知する。しかし,基にするものと似ていないもの. 似ている. ココア ミルク. ロ ラうアブ ラ. 團. / \似ていない. の間でも,同様の対応付けができることから,そ ココア ミルク. マロハラヤアり ぼド. れらの類似性が,教師が意図する類似性とは異な. 國. ることが明らかになる。そこで,さらに類似性を 考えていく中で,図3−6の上図と中図のように,. 図3−6. 図3−5. 基にするもの A脚D. 基にするもの. 二対象 つ関係 =コ属性 入っている. ココア. 50mI. 倍であ CAUSE. CAUSE. っている 入っている. 入っている. 二ニコ対象 =コ属性. 入っている. ココア. 70mI. ココア ミルク 入れ物. ミルク 入れ物. 100mI. 50ml 100ml. 饗50ml. 似ているもの. 似ているもの. ¢〉関係. AND 混ざる. ND 混ざる. AND 倍て1,あ CAUSE. CAUSE. AND 混ざる. ND 混ざる. っている 入っている. 入っている. ココア ミルク 入れ物. ミルク 入れ物. 140mI. 70mI 140ml 対応付け. 対応付け. 2窪OmI. ⑩ 「倍であ!l CAUSE. CAUSE. AND 入っている. AND 混ざる. 混ざる. っている 入っている. 入っている. ココア1. ミルク1. ココア2. ミルク2. 入れ物1 入れ物2. ココア1. コア2. 一22一. ミルク1. ルク2. 入れ物1. れ物2.
(27) 表象が精緻なものに変化し,下図のように対応付けることにより,「ミルクの量がココア の量の2倍になっている」や「ココアミルクの味が同じ」という類似性を認知する。そし て,認知した類似性が,基にするものと似ているもの全ての間だけに存在する共通点であ ることが明らかになる。このようにして,児童は教師が意図する類似性を認知していると 考えられる。. 次に,別の類似探求授業の場合について考えるが,その前に,対象と属性を改めて捉え 直す。. 対象とは事物を表すものであることを前に述べたが,事物は事物から構成されている場 合があり,比較者が何を対象とするかは,一概にはいえず,類似性を考える中で変化して いる場合がある。例えば,二等辺三角形の概念構成を行う類似探求授業において,児童は 無意識の中で,三角形そのものを対象として,「色が同じではないか」と考えたり,三角 形を構成する各辺を対象として,「辺の長さが同じではないか」と考えたりしている。も ちろん,教師が意図する類似性を認知するためには,ここでは,各辺を対象として考える 必要がある。. 属性とは対象の性質を表すものであることを先に述べたが,それは,色や形,大きさの ように,小学校入学時には誰もが認知できる性質と,直角のように,小学校での学習の結. 果として認知できる性質がある。つまり,属性は,全ての者に共通するのではなく,比較 者によって異なるのである。例えば,赤い八つ切り画用紙を見たとき,多くの者は,色,. 形,大きさという属性を認知するが,直角なかどがあるという属性は直角を学習した者だ けが認知する。類似探求授業においては,該当学年の児童にとって,何が属性なのかを考 えておく必要がある。. 上述のように,対象と属性を改めて捉え直すと,属性の対応付けによって教師が意図す る類似性を認知する場合と,関係の対応付けによって教師が意図する類似性を認知する場 合がある。そこで,それぞれの場合に分けて,説明を行う。. 一23一.
(28) (1)属性の対応付けによって,教師が意図する類似性を認知する場合. 図3−7のような直角三角形の概念構成を目的 とした類似探求授業において,児童は,各かどを. 図3−7[\ 似ている. 対象とし,その属性である直角(該当学年の児童. 似ていない. △4. にとって既習)を対応付けることにより,教師が 意図する類似性を認知する。. (2)関係の対応付けによって,教師が意図する類似性を認知する場合. 図3−8のような二等辺三角形の概念構成を目. 図3−8. 的とした類似探求授業において,児童は,各辺を. 似ている. 対象とし,長さが等しいという関係を対応付ける ことにより,教師が意図する類似性を認知する。. 図3−9のような倍数の概念構成を目的とした. 似ていない. ▲一. 図3−9 24似ている 似ていない. 類似探求授業(ここでは,代表して3の倍数を取 り上げている。)において,児童は,提示されてい. という関係を対応付けることにより,教師が意図. 31 4 4. 浮かべる必要がある)を対象とし,整数倍である. 12. 933. る整数と3(3は表示はされていないため,思い. する類似性を認知する。. なお,多くの児童は,初め,提示されている整 数を対象とし,その属性である九九の3の段の答え(該当学年の児童にとって既習)を対. 応付けることにより,「似ているものは,3の段の九九の答えである」という類似性を認 知すると考えられる。この類似性は,教師が意図する類似性ではないが,児童にとってヒ ントとなっている。. 一24一.
(29) 4.類似性を探求する効果 前述のように,類似探求授業において,属性の対応付けによって教師が意図する類似性 を認知する場合と,関係の対応付けによって教師が意図する類似性を認知する場合がある. が,類似探求授業の多くにおいて,教師が意図する類似性の認知には,関係の対応付けが. 求められる。ところが,子どもにとっては,属性の対応付けに比べ,関係の対応付けの方 が難しい(ゲントナー他,2000)。では,どのようにすると,関係の対応付けを行うこと ができるのであろうか。. Markman&Gentner(1993b)は,人は刺激の類似性を考えることで関係に注目が集まるこ とを実験により明らかにしている。具体的には,図3−1の刺激(a)と刺激(b)において, 2つの刺激を単に提示され,刺激(a)の女性の対応物を刺激(b)から選択するように求めら. れた被験者の多くは,「与える」という関係に注目しなかったため,刺激(b)の女性を選ん. だが,2つの刺激の類似性の程度を9段階評価(「よく似ている」と感じれば9,「全く 似ていない」と感じれば1)し,その後,刺激(a)の女性の対応物を刺激(b)から選択する. ように求められた被験者の多くは,「与える」という関係に注目したため,システム性の 制約により,刺激(b)のリスを選んだのである。また,大西ら(2001)は,対応物を求める. までの時間の影響を排除するため,時間を揃えて同様の実験を行い,結果が同じであるこ とを明らかにしている。これは,スペンサーニスミスら(2001)が指摘するように,類似性 を探求する中で,表象が精緻なものに変化することを意味する。. また,スペンサー=スミスら(2001)は,比較する対象の数が増えることで,時問的に 早く関係が発見できるという予測をしている。彼らは,被験者にr飾る一質素な」という. 1組の単語のペアを示したときと,r飾る一質素な」およびr混ぜる一純粋な」という2組 の単語のペアを示したときでは,後者の方が時間的に早く単語のペアの関係(ここでは反 対語)に気付くであろうと述べている。このとき,関係に気付くまでの時間は,「飾る一質. 素な」だけを提示したときの時間と「混ぜる一純粋な」だけを提示したときの時間のより 早い方と同じになるのではなく,そのどちらの時間よりも早くなるとしている。これは,. 2組の単語ペアを示しても認知的負担は大きくならないだけでなく,彼らの言葉を借りれ. ば,「状況が互いに情報を与えあい,単独の状況を考えるだけでは,生まれ得なかった表 象を構築している。」(P,32)ということである。. 上述より,複数の提示物を比較しながら類似性を考えていくという類似探求授業は,比 較を行う中で,提示物の表象が精緻なものに変化するため,関係の対応付けを行いやすく する効果があるといえる。. 25一.
(30) 第2節 認知科学における洞察の研究 前節では,児童は,表象を精緻なものに変化させることで,教師が意図する類似性を認 知することを明らかにした。. しかし,実際に類似探求授業を行うと,同じような知識をもっているにも関わらず,教 師が意図する類似性をすぐにひらめき認知する児童と,認知に時間がかかる児童が見られ る。このような時間的な個人差は,提示物をどのように表象するかや,表象を精緻なもの に変化させるとき,誤った制約の働きが強くそこからぬけ出せないこと等が原因と考えら. れる。本節では,ひらめきがおこるプロセスに関わる洞察の研究をもとに,類似性の認知 に時問的な個人差が生じる理由を述べていく。. 1.洞察問題 現在,認知科学の分野においては,「洞察問題」を通して,洞察の研究がなされている。. 洞察問題とは,その解法にひらめき,発想の転換が必要な問題である(鈴木,2001)。. 例えば,図3−10に示した「Tパズル」は洞察問題である。Tパズルは,図3−10の左 側4っのピースを用いてTの形を作るという問題であり,一見簡単そうである(図3−10 の一番右は答えであり,実際には示されない。)。 図3一喋0. 図3−11 30 似ていない、 似ている っているのであろうか。例えば,概数の概念構成 を目的とした図3−11の類似探求授業を考えてみ る。ある児童は,類似性を「2で割り切れる数で はないか」と考えたり,「十の位の数と一の位の数. の和に秘密があるのではないか」と考えたりして. 28 34 31. 25 29. 37 23 21. 40. 3. .」 失敗を繰り返す。しかし,ある時に突然,数の大. 一. きさに目が向き,r基にするものと似ているものは,30や30に近い数である」という類似. 性を認知する。このことから,詳しくは後に述べるが,類似探求授業は洞察が関わってい ると捉えることができる。. 洞察についての研究は,90年代ごろから盛んになっている。洞察のメカニズムを明らか. 一26一.
(31) にするために標準的問題解決アプローチ,活性拡散アプローチ,問題空間検索アプローチ,. 機械論的アプローチ,制約論的アプローチ等が試みられている(鈴木他,2003)。本節に おいては,制約論的アプローチによる研究成果を参考にする。. 一27一.
(32) 2.制約 鈴木(2001)によると,制約とは,「多様な情報,仮説の中から特定のものを選び出す 生体の内的傾向性」(p.165)のことである。制約は,幼児の言語の獲得や類推思考,洞察 問題の解決等,様々な認知機能に関わっている。. 例えば,前節で述べたように,表象間に対応付けを行うときにも,並列結合性,1対1 写像,システム性という3つの制約が働いている。 また,針生ら(2000)は,幼児が新しい言葉の意味を獲得するときの制約の1つとして 事物全体制約を挙げている。例えば,生まれて初めて牛乳の入ったコップを見た児童に, 母親が,「これはコップよ。」と指を指して言ったとき,児童は,「コップという言葉は,. 取っ手の部分でも,中身の牛乳でも,材質のプラスチックでもなく,コップ全体を指す。」. と考える。この例のように,事物全体制約とは,ある事物について新奇な語が発せられた とき,その語はその事物の部分や属性ではなく全体を指すと考える傾向性のことである。. このように,制約は一般的に認知機能にポジティブに働くが,Tパズルの解決において はネガティブに働いてしまう。鈴木(2001)は,洞察問題であるTパズルの解決において,. ピースの置き方に関する制約やピースの接続の仕方に関する制約が働くとしている。ピー. スの置き方に関しては,ピースを机に平行または垂直に置こうとする傾向性とピースを机 に斜めに置こうとする傾向性が存在するが,人は無意識のうちに,それぞれの傾向性に強. 度を設定し選択を行っている。そのとき,強度が. 強い傾向性ほど選択される確率が高い。人は一般 的に,前者の傾向性の強度が強い。よって,ピー. 図3−12. b. a. スの置き方に関する制約とは,ピースを机に平行 または垂直に置こうとする傾向性のことである。. また,ピースの接続の仕方に関する制約とは,で きるだけ角の数が少ない図形を作成しようとする 傾向性のことである(図3−12参照)。. 一28一. 人はbよりもaの接続を頻繁に行う。. なぜなら,接続の結果,aは五角形で あるのに対し,bは八角形であり,aの 方が角数が少ないからである。.
(33) 3.類似探求授業における制約 類似探求授業においては,r似ている」という言葉に関する制約や提示物に関する制約 が働くと考えられる。. 「似ている」という言葉に関しては,それを知覚的類似性と捉える傾向性と概念的類似 性と捉える傾向性が存在する。大人は一般的に,知覚的類似性と概念的類似性を状況に合 わせ柔軟に使い分けている。しかし,幼児は大人よりも知覚的類似性と捉える傾向性の強 度が強いことが明らかになっている(今井,2001)。したがって,低学年の児童を中心と した一部の児童にとって,「似ている」という言葉に関する制約とは,その意味を知覚的. 類似性と捉える傾向性のことである。なお,知覚的類似性とは,視覚,聴覚,触覚等の知 覚に関する類似性のことである.例えば,「マシュマロとスポンジは手触りが似ている」,. 「三角錐と四角錐は見た目が似ている」等である。概念的類似性とは,文字通り概念の類. 似性のことである。例えば,rリンゴとブドウは果物の仲間であるから似ている」やr12 も30も6で割り切れるから似ている」等が概念的類似性である(楠見,2002)。. また,提示物に関する制約とは,提示物の表象を精緻なものに変化させるとき,どの情 報に目を向けていくかという傾向性のことである。推測ではあるが,小学校高学年の児童 は,提示物が図形の時には,角や辺等,図形を構成する部分に目を向ける傾向性が強く,. 提示物が数の時には,提示数の因数や大きさに目を向ける傾向性が強いと思われる。ただ し,提示物に関しての制約は,これまでの制約とは異なり,人間に共通する一般的な傾向 性が存在するわけではなく,児童一人一人の知識や経験等によって異なるように思われる。. 一29一.
(34) 4.洞察 鈴木ら(2003)や三輪ら(2000)は,制約の緩和という観点から洞察を捉えている。そ れはおよそ次のようである。. 問題に出会ったとき,様々な事柄に関して制約が働き,問題を解決しようとする。しか し,誤った制約が働いたときにはインパス(袋小路)に陥る。その後,同じような失敗を. 繰り返すが,しだいに失敗の経験や偶然に起きた解決につながる経験が評価され,支配的 であった傾向性が弱まり,他の傾向性が強まっていく。そして,ある時点でひらめきが起 こる。. 例えば先に述べた図3−10のTパズルにおいて. 図3−10(再掲). は,以下のようなプロセスでひらめきが起こるこ とになる。試行当初は,ピースの置き方に関する. 制約により,ピースをできるだけ机に平行または 垂直に置こうとする。また,ピースの接続の仕方 に関する制約により,ピースの接続によって,できるだけ角の数が少ない図形を作成しよ うとする。そのような誤った制約が働いた結果,試行は失敗の繰り返しとなりインパスに. 陥る。しかし,失敗の繰り返しが評価されることにより,支配的であった上述の制約が弱 められる。また,これらの制約を逸脱するような偶然に起きた置き方がTという形を作る 目的に向かっていると評価されることにより,他の傾向性(例えば,ピースを斜めに置こ. うとする傾向性)の働きが強められる。その結果,ピースを斜めに置くような試行が増え. ていく。そして,そのような試行をヒントとして,「五角形のピースを斜めに置くとよさ そうだ」等のひらめきが起き,解決に至る。. しかし,Tパズルが図3−13のようなピースで. 図3−13. あったなら,人はインパスに陥ることもなく簡単 に解決することができる。なぜなら,図3−10の Tパズル場合と同じ制約がポジティブに働くから. である。よって,図3−13は洞察を必要としない 問題である。. この例のように,洞察問題と洞察を必要としない問題の違いは,制約がポジティブに働 くか,ネガティブに働くかだけの違いであり,制約という観点を用いれば,問題解決のプ ロセスを説明することができる。. 一30一.
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