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博士課程用(甲)

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(様式4)

学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨

伊藤 謙治 印 Identification of genes associated with the astrocyte-specific gene Gfap during astrocyte differentiation

(アストロサイト分化過程におけるアストロサイト特異的遺伝子 Gfap と会合する遺伝子の同定)

神経幹細胞から中枢神経系を構成するニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトなどの異なる細胞種への 分化過程は、サイトカインなどの細胞外因子や、エピジェネティクなゲノム修飾などにより厳密に制御されている。一 方、DNAメチル化などのエピジェネテックなゲノム修飾に加えて、遺伝子座の核内空間配置も遺伝子発現の制御に重要 であることが指摘されている。特に異なる遺伝子座間の会合は、転写の抑制や活性化に重要であることが様々な細胞種 で明らかにされている。しかしながら、神経幹細胞の分化過程における関与の有無、そしてその意義は不明である。そ こで著者は、神経幹細胞からアストロサイトへの分化過程において、アストロサイト特異的遺伝子Glial fibrillary acidic

protein(Gfap)の遺伝子座と会合する遺伝子座を同定し、その会合がどのように変化するのか、またその変化が遺伝子

の発現ならびにアストロサイト分化にどのような影響をもたらすのかを解析し、神経幹細胞の分化制御を新規観点から 検討することを目的として研究を行った。

実験には、胎生後期(14.5日)のマウス終脳より神経幹細胞 (NPCs) 、および神経幹細胞にleukemia inhibitory factor

(LIF)を加えてアストロサイトへ分化誘導した細胞 (LIF+) およびLIFを添加せずに培養した細胞 (LIF-) を調製した。

これらの細胞を用いて、遺伝子座の会合の網羅的解析手法であるenhanced circular chromosome conformation capture

(e4C)法を改良したe4C変法を行った。その結果、全ての細胞種でGfapがコードされている11番染色体の102 Mb周辺で 多くの会合部位を見出したが、11番染色体以外でも会合部位は存在していた。各細胞種で約1,000の遺伝子がGfapと会合 する可能性のある候補遺伝子として同定された。アストロサイト分化過程で転写が増強するとともにGfapと会合する遺 伝子を探索するために、同細胞種を用いた遺伝子発現アレイを施行しe4C変法と結果を比較した。その結果、Gfapと同様 にLIF+特異的に発現が増加し、かつGfapと会合する13の遺伝子を同定した。

同定した13の遺伝子の中から、神経系での重要な役割を指摘されている5遺伝子 (Ogn, Osmr, Ecrg4, A2m, Gab1) を選出し、

定量的RT-PCR法にて、これらの遺伝子の発現量がLIF+で増加していることを確認した。さらにGfapと5遺伝子それぞれ

に対しDNA fluorescence in situ hybridization (FISH)を施行し、5つ全ての遺伝子がLIF+で特異的にGfapと会合しているこ とを確認した。一方、陰性コントロール遺伝子AhnakとNme8ではそのような変化は認められなかった。

現在は会合の意義および機構を明らかにするため、上記5遺伝子のうちOsmrに注目して解析を進めている。OsmrはLIF と同じIL-6ファミリーのサイトカインであるOncostatin M (OSM) の受容体であり、Gfapの発現にも重要な役割を果たし ている。GfapとOsmrの遺伝子座の会合と両遺伝子の転写活性の関連をより詳細に調べるために、神経幹細胞にLIFを加え て24時間毎に、時間経過を追って両遺伝子の発現量をpre mRNAレベルで解析した。その結果、両遺伝子ともにLIFによ る刺激後72時間で転写量が増大することがわかった。DNA FISHによる解析では、これらの遺伝子座が会合する割合も 同様に72時間後に増加していた。会合が転写に与える影響を検討する目的で、Gfap の転写産物に対するRNA FISH と

GfapとOsmrに対するDNA FISHを同時に施行したところ、Osmrと会合しているGfapアリルの方が会合していないアリル

よりも、mRNAを発現している頻度が有意に高かった (論文準備中)。

以上より、アストロサイト分化過程でGfapと会合する遺伝子が明らかになった。また、少なくともその一部の会合は、

転写活性と関連している可能性が示唆された。現在、会合の分子機構について更に検討中である。

参照

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