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日本交通学会執筆要項

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交通学研究 第 60 号 (研究論文)

東アフリカにおけるクロスボーダー回廊の貨物輸送実態と課題

花岡 伸也(東京工業大学)

1

川崎 智也(東京工業大学)

2 要旨 東アフリカには内陸国4ヶ国と沿岸国2ヶ国があり、ケニアのモンバサ港を起点とする北部回廊と、タンザニアのダルエスサ ラーム港を起点とする中央回廊の2つのクロスボーダー回廊によって沿岸国と内陸国が接続されている。内陸国4ヶ国はいずれ も両クロスボーダー回廊を利用できることから、内陸国の貨物輸送に対して北部回廊と中央回廊は競争関係にある。しかし、 その実態は明らかになっていない。本研究では、各国の貨物輸送に関わるステークホルダーへの現地インタビュー調査と文献 調査により、貨物輸送状況、各国の貨物輸送実態と課題、クロスボーダー輸送円滑化に向けた地域内連携の取り組みについて 分析し、両クロスボーダー回廊における貨物輸送の実態と課題を明らかにした。 Key Words: クロスボーダー回廊、貨物輸送、東アフリカ、インタビュー調査 1.はじめに 内陸国は陸に囲まれており、貨物を海上輸送するには隣接する沿岸国の港湾を利用しなくてはならない。内陸 国が2つ以上の沿岸国の港湾を利用できる場合、費用、時間、越境利便性、信頼性、品目特性などの様々な輸送条 件によって港湾が選択されており、その際、貨物は内陸国と沿岸国間に跨がるクロスボーダー回廊を用いて輸送 されることが多い(Bunker 2001)。 東アフリカ地域には、沿岸国としてケニア、タンザニア、内陸国としてウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、コン ゴ民主共和国(東部)があり、ケニアのモンバサ港を起点とする北部回廊と、タンザニアのダルエスサラーム港 を起点とする中央回廊の2つのクロスボーダー回廊によって、沿岸国と内陸国が接続されている。図1に北部回廊 と中央回廊の主要道路ルート、港湾、各国の主要都市を示す。両回廊ともに道路だけでなく鉄道も整備されてお り、北部回廊はケニアからウガンダまで接続している。中央回廊はタンザニア国内のみ鉄道があり、ネットワー クは道路と異なる。内陸国4ヶ国はいずれも両クロスボーダー回廊を利用できることから、内陸国の貨物輸送に対 して北部回廊と中央回廊は競争関係にある。しかし、その実態は明らかになっていない。また、各国のクロスボ ーダー貨物輸送に関わるステークホルダーは、それぞれの利益、目的、立場等に応じて、各回廊の貨物輸送に影 響を与えていると考えられる。そこで本研究では、貨物輸送に関わるステークホルダーへの現地インタビュー調 査と文献調査により、貨物輸送状況を3.1項で、各国の輸送実態と課題を3.2.1項で、クロスボーダー輸送円滑化に 向けた地域内連携の取り組みを3.2.2項で分析し、両回廊の貨物輸送実態と課題を明らかにすることを目的とする。 ∗2016 年 10 月 31 日初原稿受理、2017 年 1 月 28 日採択。 本論文のタイトルは、研究報告会発表時の予稿タイトル「東アフリカのクロスボーダー回廊における貨物輸送実態とステーク ホルダーの役割」とは異なる。 1問合せ先。〒152-8550 東京都目黒区大岡山2-12-1 東京工業大学准教授 花岡伸也。 E-mail: hanaoka@ide.titech.ac.jp 2問合せ先。〒152-8550 東京都目黒区大岡山2-12-1 東京工業大学助教 川崎智也。 E-mail: kawasaki@ide.titech.ac.jp

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図1 東アフリカ地域における北部回廊と中央回廊の主要道路ルートと港湾・都市 2.調査方法 2.1 インタビュー調査 2015年3月にケニア、ウガンダ、ブルンジの3ヶ国、同9月にタンザニア、ルワンダの2ヶ国を訪問し、合計41の ステークホルダーに対してインタビュー調査を実施した。表1にインタビュー調査対象のステークホルダーを国 別に示す。道路・港湾・鉄道にかかわる政府機関(G)と民間運営会社(P)、フォワーダー(F)、荷主(S)、援助機関(D) がその対象で、国名の下の数値はステークホルダー数である。2015年3月には、ウガンダの首都カンパラからケニ アの首都ナイロビの間の北部回廊を走行し、通過したマラバ国境でもインタビューを実施した。また、同9月には ルワンダとタンザニアの国境であるルスモを訪問し、運用状況を調査した。現地での各機関へのアポイントメン トは、国際協力機構(JICA)の現地事務所の協力を得た。筆者らがインタビュー目的と質問項目をJICAに伝え、 その目的に関連した組織に対し、各国のJICA事務所がアポイントメントを取った。フォワーダーや荷主は、その 国を代表する組織を選択した。 表1 インタビュー調査対象一覧 ウガンダ (7) ルワンダ (9) ブルンジ (10) ケニア (7) タンザニア (8) 調査日 2015 年 3 月 12-14 日 2015 年 9 月 17-19 日 2015 年 3 月 9-10 日 2015 年 3 月16-17 日 2015 年 9 月 21-22 日 インタ ビュー 先 1.Ministry of Works and Transport(G) 2.Uganda Revenue Authority (URA)(G) 3.URA Border Office(G)

4.Rift Valley Railways (RVR)(P) 5.Uganda Clearing Industry and Forwarding Association(F) 6.3WM(S) 7.JICA Uganda Office(D) 1.Ministry of Infrastructure(G) 2.Ministry of Trade and Industry (Industry)(G) 3.Ministry of Trade and Industry (Trade)(G) 4.Rwanda Revenue Authority(G) 5.Rusumo Border(G) 6.Magerwa(P) 7.Rwanda Freight Forwarders Association(F) 8.Akagera Motors(S) 9.JICA Rwanda Office(D) 1.Maritime Authority(G) 2.Customs Operations(G) 3.Ministry of the EAC Affairs(G)

4.Ministry of Transport, Public Works and Equipment(G) 5.Roads Agency(G) 6.Lake Tanganyika Authority(G) 7.Freight Operations in Airport(P) 8.SOBUGEA(P) 9.Africa Logistics, Bollore(F) 10.JICA Burundi Field Office(D) 1.Ministry of Transport and Infrastructure(G) 2.Kenya Revenue Authority(G) 3.Kenya International Freight & Warehousing Association(F) 4.Intra Speed Arcpro(F) 5.World Bank(D) 6.TradeMark East Africa(D) 7.JICA Kenya Office(D)

1.Surface and Marin Transport Regulatory Authority(G) 2.Ministry of Works(G) 3.Ministry of Transport(G) 4.Tanzania Railway Limited(G) 5.Tanzania Port Authority(G) 6.Tanzania Freight Forward Association(F) 7.Central Corridor Transit Transport Facilitation Agency(D) 8.JICA Tanzania Office(D)

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主な質問項目は、1)各国から主要港湾へのアクセス状況(選択港湾、経路、国境、ボトルネック等)、2)道路・ 鉄道の整備状況・整備スキーム、3)沿岸国のインフラ整備に対する内陸国側の要望・影響、4)内陸国貨物の沿岸 国内輸送の取扱、5)クロスボーダー輸送を円滑にする取組(インフラ、税関、制度等)、6)国境での貨物輸送円滑 化の取組、7)輸送貨物の種類と輸送手段であり、ステークホルダーの立場や返答に応じて質問内容を変更した。 2.2 文献調査 現地インタビュー調査で入手した文献や東アフリカの物資輸送に関連する文献を精読し、両回廊および港湾の 実態を示す統計や制度的枠組みを調べた。 3.分析結果 3.1 両回廊の貨物輸送状況 ケニアのモンバサ港およびタンザニアのダルエスサラーム港について、両港湾管理者へのインタビュー調査で 入手した年次報告書より、両港から自国および内陸国への2014年輸出入貨物取扱量を表2と表3に示す。輸出の 「その他」には、その港湾を経由する国際トランジット貨物を含む。まず言えるのは、輸入量が輸出量よりも大 きいことであり、両港とも輸出量は輸入量の2割未満である。これは開発途上国の貿易構造として一般的である。 また、ルワンダやブルンジのような小国では、沿岸国の港湾からの輸出はごく少量であることがわかる。 モンバサ港の輸入ではウガンダが約25%と大きなシェアを占めている。UN Comtradeを用いて輸入国を調べる と、近年のウガンダのケニアからの輸入割合は金額ベースで10~15%であり、その他の多くは隣接国ではなく、 さらにダルエスサラーム港の取扱量もごく少量であることから、ウガンダの輸入はモンバサ港に大きく依存して いることがわかる。北部回廊がウガンダ貨物輸送の大動脈になっているのである。また、ウガンダの北には南ス ーダンがあり、南スーダンにとっての主要港もモンバサ港となっている。Kenya International Freight & Warehousing Associationによると、南スーダンへの輸入貨物の多くは内戦後の復興に必要な建設資材、セメント、国連による人 道支援物資であり、カンパラまで鉄道輸送されることも多い。タンザニア北部地域も、ダルエスサラーム港より 距離が近いモンバサ港を利用している。

タンザニアは南部で内陸国のザンビアと接しており、ダルエスサラーム港から道路や鉄道を通じて貨物が輸送 されている。Tanzania Freight Forward Associationによると、ザンビアはタンザニアの真南に位置する沿岸国モザン ビークのベイラ港も利用できるが、輸送費用が高いため利用されておらず、ダルエスサラーム港がザンビアの主 要港となっている。同じくタンザニア南部で接している内陸国マラウィの輸入貨物も、少量だがダルエスサラー ム港で取り扱っている。コンゴ民主共和国にとってもダルエスサラーム港が主たる貿易港であり、特に輸出量は 全体の約2割を占めている。 表2 モンバサ港輸出入別国別2014年貨物取扱量 表3 ダルエスサラーム港輸出入別国別2014年貨物取扱量 [単位:1000トン] [単位:1000トン]

出所:Kenya Ports Authority (2015) 出所:Tanzania Port Authority (2015)

ケニア 14,090 67.8% 2861 73.9% ウガンダ 5,132 24.7% 389 10.0% 南スーダン 696 3.3% 64 1.7% コンゴ民主 383 1.8% 24 0.6% ルワンダ 221 1.1% 14 0.4% タンザニア 173 0.8% 14 0.4% ブルンジ 78 0.4% 0 0.0% その他 4 0.0% 505 13.0% 合計 20,777 3,871 輸入 輸出 タンザニア 7,958 67.6% 1,084 47.2% ザンビア 1,549 13.2% 281 12.2% コンゴ民主 1,073 9.1% 504 21.9% ルワンダ 609 5.2% 21 0.9% ブルンジ 298 2.5% 16 0.7% マラウィ 77 0.7% 0 0.0% ウガンダ 86 0.7% 2 0.1% その他 114 1.0% 390 17.0% 合計 11,764 2,298 輸入 輸出

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モンバサ港にとってのウガンダと南スーダン、ダルエスサラーム港にとってのザンビアとコンゴ民主共和国は、 両港湾にとって重要な背後圏となっている。特にタンザニアでのインタビュー調査では、官民に限らず複数のス テークホルダーが自国以外の背後圏貨物需要を意識しており、大切なマーケットであることを強調していた。一 方、背後圏となる内陸国側から見ると、ウガンダはモンバサ港に依存しているものの、ルワンダとブルンジは、 ケニア、タンザニア、ウガンダなど隣接する近隣国からの輸入割合が高い。モンバサ港やダルエスサラーム港で の貨物取扱量が比較的少量なのは、貿易国も影響しているのである。両回廊の輸送条件が改善されれば、ルワン ダとブルンジの貿易国の構成が変わり、両港湾をより多く利用するようになる可能性もある。 次に、内陸国4ヶ国における輸出入量を合計した両港湾の貨物取扱量の近年の推移について、国別に図2から図 5に示す。ウガンダはほとんどの輸出入貨物をモンバサ港で取り扱っており、ダルエスサラーム港はごくわずか である。一方、コンゴ民主共和国、ルワンダ、ブルンジの3ヶ国はダルエスサラーム港の取扱量の方が多い。コン ゴ民主共和国とルワンダの場合、モンバサ港での取扱量はほぼ一定であるが、ダルエスサラーム港での取扱量が 増えている。ブルンジのみ、絶対量は少ないながらもモンバサ港での貨物量が増量傾向にある。 図2 ウガンダ輸出入貨物の港湾取扱量の推移 図3 コンゴ民主輸出入貨物の港湾取扱量の推移 図4 ルワンダ輸出入貨物の港湾取扱量の推移 図5 ブルンジ輸出入貨物の港湾取扱量の推移 注1: 図2から図5の単位は1000トン。

注2:図2から図5の出所はKenya Ports Authority Annual ReviewとTanzania Port Authority Handbook

USAID(2011)は、ウガンダのカンパラ、ルワンダのキガリ、ブルンジのブジュンブラ、コンゴ民主共和国の ゴマを対象に、両港湾までの距離並びに2010年時点の輸送費用・輸送時間を、輸出入別・貨物タイプ別(コンテ ナ・ドライバルク・液体燃料)に推計している。本研究では、USAID(2011)がまとめたこれらの輸送費用・輸 送時間の推計値から、主要な輸送手段である道路のケースを抽出し、図2から図5の港湾取扱量との比較から回 廊選択要因を考察する。 まずカンパラは、中央回廊は鉄道+湖上のみのケースを示しており、その場合において北部回廊の道路距離 (1180km)よりも約400km長く、高費用かつ長時間である。この条件下では、北部回廊のモンバサ港の貨物量が 多いのは当然である。次にキガリでは、道路距離は中央回廊が1495km、北部回廊が1661kmである。ただし、輸送 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 2010 2011 2012 2013 2014 モンバサ ダルエスサラーム 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2010 2011 2012 2013 2014 モンバサ ダルエスサラーム 0 100 200 300 400 500 600 700 800 2010 2011 2012 2013 2014 モンバサ ダルエスサラーム 0 50 100 150 200 250 300 350 400 2010 2011 2012 2013 2014 モンバサ ダルエスサラーム

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費用は距離に比例して中央回廊の方が低いものの、輸送時間は北部回廊の方が短い。コンテナだけでなく、ドラ イバルクや液体燃料でも同様である。ブジュンブラでは、道路距離は中央回廊が1567km、北部回廊が1903kmと 300km以上の差がある。しかし、ここでもキガリと同様、輸送費用は中央回廊の方が低いものの、輸送時間は北 部回廊の方が短い。ゴマも、道路距離は中央回廊が1640km、北部回廊が1811kmの状況で、中央回廊が低費用、北 部回廊が短時間という関係にあり、キガリやブジュンブラと同様である。USAID(2011)の推計値の詳細を見る と北部回廊の輸送時間が短い理由は港湾にあり、モンバサ港の滞留時間はダルエスサラーム港よりも短い。また、 定期コンテナ航路数はモンバサ港が7つ、ダルエスサラーム港が4つある(オーシャンコマース 2014)。このように、 モンバサ港の方が、滞留時間は短く航路数も多いことから、輸送費用が高くとも利用されていると考えられる。 コンゴ民主共和国(図3)やブルンジ(図5)については、中央回廊すなわちダルエスサラーム港の貨物量が モンバサ港を大きく上回っている。USAID(2011)の推計した輸送費用から、ダルエスサラーム港の取扱量が多 いのは妥当と考えられる。しかし、ルワンダ(図4)の2010年時点で、モンバサ港とダルエスサラーム港の貨物 取扱量がほぼ同じであった理由は何だろうか。ルワンダのMinistry of Infrastructureへのインタビュー時に入手した 資料(Argent 2015)によると、金額ベースの推移で輸入は2008年まで、また輸出は2010年まで、両港の金額はほ ぼ同額であったことからデータの間違いではない。インタビューでルワンダの複数の政府機関が指摘したのは、 ケニア・ウガンダ・ルワンダの政府間の関係であり、この3ヶ国はCoalition of the Willing(有志連合)を結んでい るため、ルワンダ政府として北部回廊利用を推奨しているとのことである。例えば、電子IDに登録すれば、パス ポートなしでドライバーはこの3ヶ国間を移動可能である。3ヶ国共通ビザも発行している。しかし、近年、タン ザニア国内の中央回廊の舗装状況が改善されており、かつ低費用なことから民間事業者は中央回廊を好むように なり、貨物量増加の一因となっている。 3.2 インタビュー調査結果 3.2.1 国別の実態と課題 ここでは、各国のステークホルダーへのインタビューで得られた、クロスボーダー回廊に関わる特徴的な実態 について、課題を中心にまとめる。 (1) ウガンダ

Uganda Clearing Industry and Forwarding Associationによると、北部回廊のケニア領内は交通警察によるチェック ポイントが多く、賄賂を要求されることがある。ウガンダも含めたEAC域内のトランジット貨物は、規定上、モ ンバサ港と国境で積載量や書類などをチェックすれば十分なはずだが、トランジット貨物もチェックポイントで 検査対象となっている。北部回廊のケニア領土内には橋秤(weigh bridge)が9箇所ある。ウガンダの荷主または荷 受人は、賄賂の要求は避けられないものと考えており、輸送費用の一部とすることを余儀なくされている。同じ くUganda Clearing Industry and Forwarding Associationによると、モンバサ港から北部回廊の起点となる幹線道路の 入口まで約8kmほどであるが、この間のモンバサ市内で渋滞が慢性化している。6時間で通過できれば良い方で通 常は約12時間かかる。モンバサ-ナイロビ間の道路所要時間が約8時間であることを考慮すれば、モンバサ市内移 動時間削減は必須である。Ministry of Works and Transportによると、ビクトリア湖の湖上輸送もわずかに利用され ているが貨物用船舶は一隻しかない。タンザニアのSUMATRAのインタビュー結果と合わせると、ダルエスサラ ームからタンザニア領土内のムアンザまで鉄道輸送し、ムアンザ港からカンパラに近いベル港までビクトリア湖 内を湖上輸送するルートがあるが、ベル港の容量が小さいこともあり、ほとんど利用されていない。

(2) ルワンダ

Rwanda Freight Forwarders Associationによると、ルワンダのフォワーダーにとって、タンザニアの就労許可証の 取得が問題である。東アフリカ共同体(EAC : East African Community)のプロトコル上では、ルワンダ関係者がタ ンザニアの就労許可証を取得する必要はないが、実際は取得しなくてはならない。また、ルワンダやウガンダは コンテナ使用のデポジットとして、1コンテナにつき2000~4000USDをタンザニアとケニアに現金で支払う必要

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がある。コンテナを返却しても難癖をつけてデポジットの一部を回収されることがあり、全額返金されるとは限 らない。ケニア、タンザニアの場合、デポジット額はルワンダやウガンダより少なく、公平な環境が保たれてい るとは言い難い。 (3) ブルンジ 首都ブジュンブラはタンガニーカ湖に面していることから(図1参照)、内陸国ながらMaritime Authorityがある。 Maritime Authorityによると、タンガニーカ湖はタンザニア、ザンビア、コンゴ民主共和国にも面しており、タンザ ニア領土のキゴマ港からブジュンブラ港間のフェリーによる湖上輸送が週に3、4便ある。キゴマはタンザニアの Tanzania Railway Limited (TRL)が運営している鉄道によりダルエスサラームと繋がっており、鉄道と湖上によるイ ンターモーダル輸送が可能である。しかし、TRLの鉄道インフラ設備やワゴン車・貨車の状態悪化のため、ほと んど活用されていない。フォワーダーAfrica Logistics, Bolloreは、2007年までこのルートによる輸入を利用してい たが、道路と比較して輸送時間が長すぎるため、それ以降は利用していない。またMinistry of the EAC Affairsによ ると、ブジュンブラ湖の湖上輸送が利用されない理由の一つに安全性の問題があり、荷主がそのリスクを避けて いる。ただし、ザンビアからセメントなどの重量物の輸入で湖上輸送も利用されている。タンガニーカ湖上輸送 のポテンシャルはあることから、JICAがブジュンブラ港改修計画を2014年から実施している。

(4) ケニア

中国資本により、標準軌による貨物鉄道路線の整備が進められている。まずモンバサ-ナイロビ間が建設され、 段階的にカンパラまで延伸される予定である(JICA 2016)。Rift Valley Railways (RVR)が運営している既存の鉄道 は狭軌であり、両者の連携はない。ケニアとウガンダを繋ぐ鉄道は民営化されており、RVRが2009年から25年契 約で運営している。RVRによると、カンパラからモンバサ港まで往復共に1日2便運行されている。鉄道設備や貨 物車両の老朽化が進み、貨車数も不足していることもあり、モンバサ港から内陸輸送される際の鉄道のシェアは、 World Bankによると約5%に過ぎない。鉄道は重量物や液体などの危険物輸送で活用されている。 (5) タンザニア 中央回廊のタンザニア領土内には、橋秤が数多くあり(ルワンダのステークホルダーによると7箇所、同タンザ ニアによると9箇所)、輸送時間増加の一因となっている。JICA Tanzania Officeによると、ダルエスサラーム港から の鉄道輸送量のシェアは約5%とのことである。タンザニアの鉄道会社は、国内北部・西部の複数のネットワーク を担うTRLと、ダルエスサラームからザンビアに接続する1路線を持つTanzania-Zambia Railway Authority (TAZARA)の2つがあり、TRLとTAZARAの軌間は異なる。鉄道の規制官庁であるSUMATRAはTRLのみを担当し ており、TAZARAに対して規制する権限がない。TRLによると、TRLは1997年に民営化されたがインドの運営会 社が資金投入するまで10年を要し、その間に投資は実施されなかったため鉄道インフラの質が悪化した。2009年 には運営会社の資本を国が買い戻したものの、この間に鉄道貨物輸送量は激減してしまった。現在は主に穀物や 肥料の輸送に用いられている。 3.2.2 地域内連携の取り組み 東アフリカ共同体(EAC)は、ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、南スーダンの6ヶ国で構 成されている。EACなど複数国が関与する組織では、3.2.1項でまとめた各国の課題について地域内連携を図って いる。ここでは、地域レベルで実施されているクロスボーダー輸送円滑化の取り組みについてまとめる。

(1) East African Community(EAC)

EACは域内の貿易自由化促進のため、2010 年までに域内関税の撤廃、対外共通関税の導入、域内共通の原産地 規則の導入を終えた(日本貿易振興機構 2011)。実際、UN Comtradeで調べると、ルワンダやブルンジは域内輸出 入が2割を超えている。 EAC加盟国のドライバーは、年間登録料の支払いによりEAC内を自由に走行できる。ただし、他国を通行する 際にはトラックの通行料を毎回支払う必要があり、2国間で互いに定めている。例えば、タンザニア・ブルンジの 間は、他国を通行する際に1回あたり152USDを互いに支払う必要がある。タンザニア・ルワンダ間も同じく

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152USDである。しかし、ルワンダのトラックによるウガンダ内、ケニア内の通行料はそれぞれ160USD、200USD であり、ルワンダのMinistry of Trade and Industry (Trade)によると、両国とも輸送距離に応じて算出するCOMESA Rateを適用している。ウガンダ、ケニアのトラックのルワンダ通行料は固定の152USDであることから、同省はこ の不均衡を正す必要があると考えている。

(2) TradeMark East Africa (TMEA)

TradeMark East Africa (TMEA) は、英国を中心に欧米8ヶ国の出資によるBasket Fundの援助組織である。各国援 助機関との活動内容の棲み分けとして、EAC全体の地域活性化に焦点を当てている。貿易と交通インフラ分野に 注力しており、輸送費用削減、輸送時間減少により、EAC域外だけでなくEAC域内での貿易活性化をサポートし ている。戦略的活動目的として、①交通インフラ施設改善により市場アクセスの物理的障壁を除外、②貿易に関 する制度的障壁を取り除きビジネス環境を向上、③民間セクターが積極的に活動できる競争環境の構築、の3つを 定めている。③は特徴的で、民間セクターを直接支援する援助機関として活動している。例えば、上述のコンテ ナ使用デポジットの返金未払いの解決策として、EAC政府間の合意の下、保証金の導入を提案している。

(3) Northern Corridor Transit and Transport Coordination Authority (NCTTCA)

北部回廊の関係国の国際機関として、モンバサに事務局を構えるNorthern Corridor Transit and Transport Coordination Authority (NCTTCA)がある。NCTTCAは、EAC各国とコンゴ民主共和国により運営されている。同様 に、中央回廊にはCentral Corridor Transit Transport Facilitation Agency (TTFA)がある。TTFAは、各国の回廊に関わる 政府機関と商工会議所などの民間企業が一堂に集まって課題を共有、議論する場を年2回設けている。これらの国 際機関は回廊ベースでパフォーマンス最大化を目指す主体であり、回廊の運用の効率化を目的としている。なお、 加盟国政府の資金により運営されているが十分な予算を持っておらず、実行力に乏しいのが課題である。

(4) Electronic Cargo Tracking System (ECTS)の導入

Electronic Cargo Tracking System (ECTS)の導入が、EAC地域レベルで進行中である。2009年に試験的に開始され、 2014年に全面的に導入された。これにより貨物輸送状況をリアルタイムで確認可能となった。以前は複数のトラ ックが集団となって税関にエスコートされていたが、ECTSの導入でその必要もなくなり、輸送時間の短縮につな がっている。Tanzania Freight Forward Association は、全てのトラックがECTSに登録すれば橋秤やチェックポイン ト数を減らせるはずであり、登録していないトラックの存在が問題と指摘している。またタンザニアでは、橋秤 削減案として、通関手続、出入国手続、警察チェックポイントなどの機能を備えたOSIS (One Stop Inspection Station) の設置も検討されている。

(5) 通関システム

通関システムは輸出入手続の効率性に大きな影響を与え、各国のRevenue Authorityがその運用に携わっている。 ウガンダ、ルワンダ、ブルンジは、UNCTAD (United Nations Conference on Trade and Development)の開発した ASYCUDA (Automated System for Customs Data)を使っている。ケニアは独自のシステムであるSimba、タンザニア はTANCIS (Tanzania Customs Integrated System)を使っている。

EAC諸国の通関システムのインターフェースを果たす目的でSingle Customs Territory (SCT)が導入されており、 現在は特定の品目に適用されている段階である。SCT導入により同じ通関手続を他国で繰り返し実施する必要が なくなり、域内クロスボーダー輸送の手続回数と輸送時間の削減が期待されている。Uganda Revenue Authorityに よると、SCT導入により北部回廊ではウガンダやルワンダ向けのトランジット輸入貨物の通関処理・関税支払を モンバサ港で実施できるようになった。このため、国境や内陸国のICD (Inland Container Depot)での通関処理は不 要になり、国境の運用効率化や通過時間削減に実際に貢献している。ただし、多くの品目にSCTが適用されるよ うになると、輸入時に陸上輸送始点となる港湾で混雑を誘発する可能性がある。ケニアのMinistry of Transport and Infrastructureによると、かつてはモンバサ港でトランジット貨物として偽装申請し、ケニアに関税(30-40%)を支 払うことなく国内に流入する貨物もあった。しかし、SCT導入後、ケニア以外の国への輸入貨物にもモンバサ港 での通関処理が可能になったため、関税未払いは減っている。タンザニアのTanzania Freight Forward Associationに

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よると、コンゴ民主共和国はEAC加盟国ではないが、タンザニアとの二国間協定によりSCTを導入している。し かし、これによりダルエスサラーム港にて事前に関税を支払う必要が生じ、コンゴ民主共和国への密輸が難しく なったため、一部の輸送業者は中央回廊を利用しなくなったとのことである。 4.結論 現地で入手した文献を精査した結果、貨物輸送実態として、ウガンダは北部回廊・モンバサ港にほぼ依存して おり、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国は両回廊を利用しつつも、中央回廊・ダルエスサラーム港を中心 に利用していることがわかった。後者について、USAID(2011)による両回廊の輸送費用・輸送時間の推計値と 比較した結果、短い輸送距離による低輸送費用が回廊の選択の主要因であることもわかった。しかし、北部回廊・ モンバサ港もシェアは低くとも利用されており、これはモンバサ港の相対的に短い滞留時間と航路数の多さに起 因すると考えられる。インタビュー調査からは、道路・鉄道の整備・運営状況、多すぎる橋秤の存在、湖上輸送 状況などが、両回廊の貨物輸送に影響していることが明らかになった。中でも、鉄道設備や貨物車両の質の悪化 により鉄道が利用されていない状態は、回廊利用のボトルネックの一つと言える。また、TradeMark East Africaの ような役割を特化した国際機関、Electronic Cargo Tracking Systemや通関システム共通化の導入が、クロスボーダー 貨物輸送の円滑化に寄与していることを明らかにした。 本研究で得られた結果は、国際協力機構を始めとする援助機関にとって、国境やクロスボーダー回廊など複数 国に跨がる交通インフラ整備指針の参考になる。しかし、クロスボーダー回廊について地域間連携を実施する国 際機関間の関係は明確にできなかった。東アフリカ地域として一体的な政策を推進するには、それをリードする 機関の存在が望ましい。また、各国のステークホルダーの役割や行動目的が貨物輸送量にどのような影響を与え るのかも明らかにしていない。これについては、その行動原理をモデル化する別の研究で取り組む予定である。 謝辞 本研究の現地インタビュー調査は、国際協力機構の全面的な支援により実施できた。特に、「ケニア国・ウガ ンダ国北部回廊物流網整備マスタープラン策定支援プロジェクト」および「ケニア国モンバサゲートシティ総合 都市開発マスタープランプロジェクト」の調査団より、多大なるご協力をいただいた。ここに感謝の意を表す。 また、インタビュー調査のサポートをして頂いた元東京工業大学修士課程の祖田真志氏にも感謝する。 参考文献 オーシャンコマース(2014)『国際輸送ハンドブック 2015 年版』 日本貿易振興機構(2011)『東アフリカ共同体(EAC)の域内統合の進展と企業動向』

Argent, J. (2015), Single Customs Territory (SCT) reform impact on trading across borders, TradeMark East Africa.

Adzigbey, Y., Kmaka, C. and Mitiku, T. N. (2007), Institutional arrangements for transport corridor management in Saharan Africa, Sub-Saharan Africa Transport Policy Program Working Paper 86.

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参照

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