平成 28 年度
石垣市美ら星ゲート構築事前調査事業
報 告 書
平成 29 年 3 月
1 目次 Ⅰ.業務概要 ... 5 Ⅰ-1.業務目的 ... 5 Ⅰ-2.業務の概要 ... 5 Ⅱ.与条件整理 ... 6 Ⅱ-1.基礎情報 ... 6 1) 上位計画 ... 6 2) 施設設置の目的 ... 6 3) 計画地・建物概要 ... 6 4) 計画範囲 ... 7 Ⅱ-2.観光客状況 ... 9 1) 石垣島に訪れる観光客の特徴 ... 9 2) 八重山入域者数と客船利用者数 ... 9 3) 石垣港離島ターミナルの利用客 ... 12 Ⅱ-3.石垣島星空関連施設 ... 13 1) 石垣島天文台 ... 13 2) 南の島の星まつり ... 13 3) 石垣やいま村「星空ビレッジ」 ... 13 4) 星空ツアー ... 13 5) NPO 法人八重山星の会 ... 15 6) 星空スポット ... 15 Ⅲ.類似施設調査 ... 16 Ⅲ-1.全国のプラネタリウム ... 16 Ⅲ-2.民間施設 ... 16
1) PLANETARIUM Starry Café (民間施設、同規模、設置環境の類似性) ... 16
2) コニカミノルタプラネタリウム”満天” in Sunshine City (民間施設、特別シート の類似性) ... 17 3) コニカミノルタプラネタリウム”天空” in 東京スカイツリータウン® (民間施設) 18 4) 石垣やいま村星空ビレッジ(石垣島の星空を観光資源にしている施設) ... 19 5) スタービレッジ阿智 (星空を観光資源にしている株式会社) ... 19 Ⅲ-3.公共施設 ... 20 1) 牧志駅前ほしぞら公民館 (番組制作、設置環境の類似性) ... 20 2) 科学技術館 シンラドーム (同規模、3D 投影、設置環境の類似性) ... 20 3) 平塚博物館 (設置環境の類似性) ... 20
2 4) 国立天文台 4D2U ドームシアター (規模、4D2U) ... 21 5) 石垣島天文台 (4D2U) ... 22 6) 海洋文化館プラネタリウム(番組制作) ... 22 Ⅲ-4.総論 ... 23 1) 料金設定と来館者数について ... 23 2) 番組について ... 23 3) 施設について ... 23 4) まとめ ... 23 Ⅳ.プラネタリウム調査・検討 ... 25 Ⅳ-1.プラネタリウム施設の構成 ... 25 1) 機器名称の確認 ... 25 2) プラネタリウムの機器構成 ... 25 3) プラネタリウムと投影装置 ... 26 Ⅳ-2.ドームの検討 ... 27 1) ドーム形状 ... 27 2) ドーム設置方法 ... 29 3) ドームサイズ ... 30 4) ドームスクリーン ... 30 5) 客席 ... 32 Ⅳ-3.導入設備・映像技術の調査 ... 34 1) プラネタリウム納入施設調査 ... 34 2) メーカー調査 ... 36 3) 導入機器の検討 ... 45 4) 立体視の導入 ... 51 5) 4D2U の導入 ... 53 Ⅳ-4.導入設備仕様と維持管理 ... 55 1) 導入設備の仕様 ... 55 2) 機器の維持管理 ... 56 3) 維持管理費用の例 ... 57 4) プラネタリウム機器の製作・設置工程・施工区分 ... 60 Ⅳ-5.番組制作 ... 62 1) オリジナルプラネタリウム番組 ... 62 2) オリジナル全天周映像 ... 64 3) 制作費削減手法 ... 64 Ⅴ.コンテンツの検討 ... 65 Ⅴ-1.コンテンツの検討 ... 65
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1) プラネタリウム ... 65
2) 4D2U:4 次元デジタル宇宙(4-Dimensional Digital Universe) ... 66
3) 全天周映像 ... 66 4) VR(virtual reality) ... 66 5) その他 ... 66 Ⅴ-2.上映スケジュール案 ... 68 Ⅵ.集客・拡散・連携の検討 ... 69 Ⅵ-1.集客要素の追加 ... 69 1) 観光客の星空への関心 ... 69 2) 石垣市民の星空への関心 ... 69 3) 集客要素の追加 ... 69 Ⅵ-2.拡散手法 ... 71 1) インターネット ... 71 2) ポスター・パンフレット ... 72 3) メディア(TV、雑誌) ... 72 Ⅵ-3.連携の可能性の検討 ... 73 1) 企業、団体等との連携 ... 73 2) 星空ツアーとの連携 ... 74 3) 島外の星空関連施設との連携 ... 74 4) まとめ ... 74 Ⅶ.基本計画及び基本設計の検討・策定 ... 75 Ⅶ-1.基本計画 ... 75 1) 基本方針 ... 75 2) コンセプト ... 75 3) 導入機能 ... 75 4) 施設計画の要点 ... 75 5) 動線計画 ... 76 6) 基本設計案 ... 77 Ⅷ.ビジネスモデルの検討 ... 78 Ⅷ-1.ビジネスモデルの検討 ... 78 1) 事業手法の整理 ... 78 2) 事例紹介 ... 79 3) 事業期間 ... 80 4) 事業方式の検討 ... 81 5) 発注方式の検討 ... 83
4 Ⅷ-2.収支検討 ... 84 1) ドーム利用形態の設定 ... 84 2) 利用者数の設定 ... 84 3) 収入 ... 84 4) 支出 ... 85 5) 事業収支案 ... 86 6) 参考:運営スケジュール案 ... 89 7) その他の収益の確保 ... 90 8) 効率的な運営 ... 90 Ⅷ-3.まとめ ... 91
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Ⅰ.業務概要
Ⅰ-1.業務目的
本業務は、「星の島石垣」を観光資源として定着させるために、石垣・八重山諸島の星の玄関口 である石垣港離島ターミナルの「とぅもーるネットセンター石垣」を活用し、国内外から訪れる観光客 に向けて既に観光資源として定着しているエメラルドグリーンの海やサンゴ礁に加え、石垣・八重 山諸島で見られる星空や八重山諸島に残る星にまつわる民話や唄、生活に密着していた様子な どを紹介し、石垣島の魅力を広く発信するための複合施設としてプラネタリウムや 4D2U 等を導入 した「美ら星ゲート」を構築するための調査業務を目的とする。Ⅰ-2.業務の概要
業務名:石垣市美ら星ゲート構築事前調査事業 発注者:石垣市企画部 業務実施項目:表Ⅰ-2-1 の通り 表 Ⅰ- 2-1 業務実施項目 一覧 業務実施項目 数量 摘要 1.計画準備 一式 2.コンテツ内容の検討調査 一式 3.美ら星ゲート検討委員会の設置・開催 一式 3 回程度 4.基本計画及び基本設計の検討・策定 一式 5.美ら島ゲートビジネスモデルの検討 一式 6.ユニークポイントの設定 一式 7.報告書作成 一式6
Ⅱ.与条件整理
Ⅱ-1.基礎情報
1)上位計画 石垣市では、市で定める観光基本計画で星空を観光資源とした取り組みを行っている。具 体的には、2002 年から毎年夏に「南の島の星まつり」が開催され、2006 年に「いしがき島星空 宣言」を制定発表、2016 年 5 月には国内初の「星空保護区」を目指すための国際ダークスカイ 協会による現地視察が行われるなど、「星の島石垣」として積極的な取り組みを行っている。 「美ら星ゲート」は、石垣市で定める下記の計画で位置づけられたものである。 ・石垣市観光基本計画〔改訂版〕 平成 28 年 3 月 ・石垣市地域創生総合戦略 平成 28 年 3 月 2)施設設置の目的 「美ら星ゲート」は観光客に八重山の星空を知ってもらうことを目的とした施設であり、観光客 が訪れる場所でなければその魅力を伝えることができない。石垣島の代表的な星に関する施 設である石垣島天文台に訪れている観光客はすでに星に興味のある人であり、その観光客に は既に石垣島の星の魅力は十分に伝わっている。「美ら星ゲート」は石垣島の星の魅力をまだ 知らない観光客にその魅力を伝え、それを持ち帰り、周囲に広めてもらう事を目的としている。 離島ターミナルを訪れる星の魅力にまだ気がついていない観光客に八重山の星空を知っても らう機会を与えるために、離島ターミナルを訪れる人に必要とされるものを提供する事で立ち寄 るきっかけを与え、星の魅力を伝える場にしていく。 3)計画地・建物概要 (1)計画地概要 住所:沖縄県石垣市美崎町1 用途地域:準工業地域 防火地域:なし その他:臨港地区、景観計画区域(市街地景観域)、風景地区(わくわくみなと交 流地区) (2)建物概要 施設名称:石垣港離島ターミナル 構造規模:鉄筋コンクリート造 地上 2 階建て 建築年月:2007 年 1 月(2007 年 1 月 31 日より供用開始) 延べ床面積:5239.00 ㎡ 施設所有者:石垣市7 施設管理者:石垣市建設部港湾課 建物用途:その他 消防用途:令別表(10)車両の停車場・船舶・航空機の発着場 開館時間:6 時~21 時(店舗等の営業時間は 6 時 30 分~18 時半頃まで) 4)計画範囲 石垣港離島ターミナルは、2007 年に開所した八重山各諸島をつなぐアクセス拠点として島 内外の人々に利用されている施設である。施設には高速船の運航会社のほか、オプショナル ツアー等を案内する旅行会社、物販店舗、飲食店舗等が入居しているほか、銀行 ATM や観 光情報紹介コーナー(パンフレット棚)、コインロッカーなどが整備されている。また、離島ターミ ナルに併設して第 1 駐車場、第 2 駐車場あわせて約 360 台の駐車場が整備されている。第 1 駐車場はターミナルの目の前と認識しやすく利用しやすい位置にあることから、利用率が高く なっている。 石垣港離島ターミナル案内図
8 「美ら星ゲート」の計画範囲は、「とぅもーるネットセンター石垣」が使用している 1 階 378 ㎡、 2 階(管理室 A40 ㎡+管理室 B62 ㎡)の合計 480 ㎡である。 なお、計画案の提案においては、2階へのアクセススロープや 2 階の有効活用を含めた提 案を行う。 1 階平面図 2 階平面図 管理室 A 管理室 B
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Ⅱ-2.観光客状況
1) 石垣島に訪れる観光客の特徴 石垣島に訪れる観光客の特徴について、沖縄県文化観光スポーツ部が実施した「H25 戦略 的リピーター創造事業」の調査結果と、旅行会社等へのヒアリングをふまえて分析すると、以下 のような特徴が見られることがわかった。 ・ 石垣島(八重山諸島)を訪れている観光客はリピーターが 8 割を占める。 ・ リピーターはお気に入りの場所(八重山諸島のどれかの島)にまっすぐ向かい、同じ場所を 何度も訪れる。 ・ 旅行形態として、旅行回数が少ないと団体旅行・パッケージ旅行者が多く、旅行回数が増え るほどに個人旅行・フリープランで訪れる観光客が増える。 ・ インターネットを使って個人旅行で訪れる観光客が多くを占める。 ・ 石垣島の春~秋の観光客は 20 代~30 代の女性が最も多く、平日より休日のほうが観光客 は増加する。 ・ 石垣島の冬の観光客は 20 代~30 代の女性が最も多いが春~秋の期間と比べると減少す る。それに代わり 60 代が増加するとともに、平日と休日の観光客数の差が小さい。 ・ 10 月の観光客は修学旅行客が多い。 ・ 観光客の居住地の約半数が関東地方であり、その中でも東京都からの観光客数の割合が 過半数を占める。 ・ 石垣島を訪れる観光客は昼と夜で人数の増減が少ない(石垣市で 1 日過ごす)。 ・ 竹富町は昼の人数が増え、夜減少する(石垣島から日帰りで訪れる)。 ・ 朝、石垣島から離島へ向かい、午後~夕方に石垣島に戻るケースが多い(離島で宿泊せず、 石垣島に宿泊する割合が高い)。 2) 八重山入域者数と客船利用者数 八重山入域者数と客船利用者数について平成 25 年 1 月~平成 27 年 12 月の 3 年間につ いて調査を行った。八重山入域者数は石垣市ホームページで公表されている石垣空港・石垣 港入域者調べより、客船利用者数については石垣市建設部港湾課から離島ターミナルを発着 している客船会社3社の船舶人員乗降数データを受領し整理した。 八重山入域者数は空路と海路により算出されており、平成 26、27 年は年間に訪れる観光客 数が 110 万人を超えている。平成 28 年も平成 27 年の 9 月までの人数と比較してそれより多 いペースで推移していることから、同数以上の入域者数が見込まれる。 客船利用者数は乗込みと上陸で構成されており、あわせて年間で 220 万人以上が利用して いる。客船利用者の内訳としては、石垣市や離島の住民の通勤・通学の利用は少数で、大多 数を観光客数が占めている。 客船利用者数を月別に見ると、1 月,6 月,12 月は利用が減少し、3 月、8 月、9 月の利用が 多くなっている。この増減については観光客数の増減と比例している。10 入域者数と客船利用者数を比較すると、入域者数のピークは 8 月だが、客船利用者数のピ ークは 3 月となっており、利用者数のピークに違いが生じている。これは 3 月に増える団体旅 行客(農協旅行や卒業旅行等)の離島周遊ツアーによるものと考えられる。団体旅行では、1 日(約 8 時間)で離島 3~4 島を巡るツアーがパッケージとして組み込まれているものもあり、船 の時間によっては石垣港を中心に離島へ行き来するものもあることから、同じ人が石垣港を何 度も利用するケースが発生する。このため、利用者数が大幅に増えているものと考えられる。 過去 3 年間の入域者数と客船利用者数を以下に示す。 平成 27 年入域者数・客船利用者数 平成 27 年 (2015) 入域者数 客船利用者数 総入域者数 観光客数 客船利用者数 乗込 上陸 1 月 78,642 56,872 168,322 84,493 83,829 2 月 88,339 67,964 175,594 87,387 88,207 3 月 120,262 95,226 223,809 106,793 117,016 4 月 120,310 107,137 200,157 100,755 99,402 5 月 104,846 90,513 184,810 93,215 91,595 6 月 115,803 100,569 160,362 80,512 79,850 7 月 121,453 106,700 191,395 94,442 96,953 8 月 122,919 106,441 197,391 96,962 100,429 9 月 121,921 106,140 204,249 101,482 102,767 10 月 123,079 106,876 203,718 99,193 104,525 11 月 102,726 88,667 194,845 96,794 98,051 12 月 87,119 73,215 155,714 81,116 74,598 合計 1,307,419 1,106,320 2,260,366 1,123,144 1,137,222
11 平成 26 年入域者数・客船利用者数 平成 25 年入域者数・客船利用者数 平成 26 年 (2014) 入域者数 客船利用者数 総入域者数 観光客数 客船利用者数 乗込 上陸 1 月 77,910 56,279 161,761 80,341 81,420 2 月 89,339 69,052 178,884 89,619 89,265 3 月 112,879 87,176 236,306 115,104 121,202 4 月 118,247 109,166 198,128 98,946 99,182 5 月 114,681 104,178 174,466 87,188 87,278 6 月 114,483 103,208 165,983 82,902 83,081 7 月 127,226 116,114 195,838 96,356 99,482 8 月 144,739 131,055 209,973 103,507 106,466 9 月 130,865 119,504 207,591 102,811 104,780 10 月 108,300 90,862 188,728 93,455 95,273 11 月 85,053 68,152 183,811 91,577 92,234 12 月 78,556 61,567 158,601 82,034 76,567 合計 1,302,278 1,116,313 2,260,070 1,123,840 1,136,230 平成 25 年 (2013) 入域者数 客船利用者数 総入域者数 観光客数 客船利用者数 乗込 上陸 1 月 60,008 43,737 150,056 74,816 75,240 2 月 65,018 49,942 167,986 82,411 85,575 3 月 99,413 77,309 230,439 113,539 116,900 4 月 92,580 84,828 195,717 99,481 96,236 5 月 78,957 70,940 169,820 85,194 84,626 6 月 86,215 77,080 159,758 79,485 80,273 7 月 111,870 101,836 177,545 88,449 89,096 8 月 126,940 113,876 219,846 110,578 109,268 9 月 116,720 105,114 210,340 108,061 102,279 10 月 101,906 83,296 178,994 89,806 89,188 11 月 83,273 66,618 186,178 93,003 93,175 12 月 79,634 62,448 154,531 78,237 76,294 合計 1,102,534 937,024 2,201,210 1,103,060 1,098,150
12 3) 石垣港離島ターミナルの利用客 石垣港離島ターミナルからは竹富島、西表島、小浜島、黒島、鳩間島、波照間島への高速 船が運航している。最も本数が多く運航しているのが竹富島で、1 日に 32 便が運航しており、 待ち時間は 30 分未満となっている。次いで西表島(大原港)、小浜島へも 1 日に 20 便前後が 運航しており、待ち時間 60 分未満で各島へ移動することが可能となっている。 客船利用者のほとんどは観光客であり、朝 9 時までに出発する高速船の利用者が多く、9 時 を過ぎると石垣空港に到着する飛行機の時間に合わせて観光客が訪れる。乗降客の 7 割近く を午前 10 時 30 分までの利用に集中していることに注意が必要である。 施設の開館時間は 6 時~21 時だが、高速船の運行が 18 時 30 分頃に終了するとともに人 の流れがなくなることから他店舗の営業も終了となり、各店舗はシャッターが下ろされ、18 時頃 から 21 時までの間は閑散とした状況となっている。 駐車場についての利用状況も離島ターミナル利用者の動向と同じく、午前中の駐車場利用 率が高くなっており、午後は比較的余裕が見られる。 9 月 8 日(木)11 時頃の様子 9 月 28 日(水)20 時頃の様子 石垣港離島ターミナルの現況写真
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Ⅱ-3.石垣島星空関連施設
島内には石垣島天文台のほか、「星空」を観光資源にした施設、団体等が存在している。すで にある石垣島の星空に関する施設やイベント等について調査を行った。 1) 石垣島天文台 国立天文台水沢 VLBI 観測所の観測点のひとつである VERA 石垣局(電波望遠鏡)が設置 されており、その後、沖縄県をはじめとして石垣市や石垣市の青少年からの要請を受け、光学 式天体望遠鏡の設置へと施設の拡充が進み、2006 年 4 月に石垣島天文台が開設された。九 州・沖縄地方最大となる口径 105cm の光学赤外線反射望遠鏡の設置・運用がなされる観測研 究施設としては、日本最西南端に位置している。同天文台は国立天文台の研究観測施設であ り、石垣市、石垣市教育委員会、琉球大学、石垣青少年の家、NPO 法人八重山星の会の 6 者 間の協議に基づき運営される、新しいタイプの天文台である。 天体望遠鏡は研究観測のほか、八重山星の会による一般観望会が開催される。施設には 200 インチの平面スクリーンが設置されており、休館日を除く毎日 2 回、一般に向けて無料で解 説員による生解説で 4D2U の上映を行っている。平成 27 年には年間来場者数が 13,900 人を 迎えた、石垣島の観光スポットである。 2) 南の島の星まつり 2002 年 5 月に石垣島に VERA 電波観測局が完成したことをきっかけに、2002 年 8 月の旧 暦の七夕(=伝統的七夕)の時期に合わせて南の島の星まつりが開催された。ライトダウンによ る星空観望をメインとしたイベントとして始まったが、2 年目から VERA 電波観測局の公開や記 念講演、夕涼みライブが行われるようになり、平成 28 年 8 月の開催で 15 年目を迎えている。南 の島の星まつりは石垣市民主導で始まった、石垣島天文台、NPO 法人八重山星の会、石垣市 を中核メンバーとして企画広報等を行っている手作りイベントである。 3) 石垣やいま村「星空ビレッジ」 石垣やいま村は、離島ターミナルより車で 20 分ほどに位置する豊かな自然を背景に、旧き良 き八重山の家並みを再現したテーマパークである。星空観測に適した立地特性を持つこともあ り、JTB 沖縄が「星空ビレッジ」を提案し、JTB 沖縄の企画・主導で実現した期間限定イベント (2016 年 7 月 1 日~2016 年 10 月 2 日)である。出資の多くを JTB 沖縄が、一部を JTB 八重山 会と石垣やいま村が負担している。らくがきプラネタリウムや星のかけら探しなど参加者が自ら 行動して楽しむ他、星空鑑賞が行われた。本企画は 10 月 2 日を持って終了しているが、11 月 より土日祝日のみ開催されている。 4) 星空ツアー 石垣島に訪れる観光客向けの夜のレジャーとして、星空ツアーやナイトツアーがある。これら の多くはホテルのアクティビティとして実施されているが、ツアーを行っている企業等の中には14 ネイチャーツアーのひとつとして星空ツアーを行っているところもあれば、星空ツアーだけを行 っているところもあるなどさまざまである。 星空観測は年間を通じて行われているが、11 月〜3 月の秋冬シーズンの夜は曇り空になるこ とが多く、特に 12〜1 月は週 5 日が曇り空という天気となる。5〜6 月は梅雨のシーズンというこ ともあり、もっとも星がきれいに見られる 7 月〜10 月のみ開催しているツアーもある。星空ツアー の所要時間は平均して 1 時間程度で、星空を見上げながらの星空解説や、星空写真撮影会な どを行っており、観測場所は明かりの少ない山間部やビーチのほか、クルージングツアーもある。 ツアー会社で双眼鏡や天体望遠鏡を用意するなど、星空をより堪能できるような設備が整えら れている。 ツアーの送迎については、ツアー用のバスを用意し、参加者の泊まるホテルや離島ターミナ ルを集合場所として送迎を行っているものから、現地集合となっているものなどさまざまである。 参加費用も送迎の有無や観測する場所等によって異なっており、ツアー参加者の石垣島での 過ごし方にあわせてツアーを選択することが可能となっている。 星空ツアーの例 名称 主催者 時間、観測場所、費用 ティンガーラ(天の川)ク ルーズ (有)ぷしぃぬしま石垣店 1 時間、カタマランやクルーザでクル ージング 5,000 円/人 星空浴ツアー 星空ツーリズム株式会社 1 時間、石垣島星空ファーム、大人 3,800 円、小人 2,500 円(有料送迎バ スの運航あり) 1 時間+バス送迎往復 90 分、星空保 護区認定候補エリアで催行、大人 6,500 円、小人 3,500 円 しゃにしゃに星空ツアー 石垣島ビーチホテルサン シャイン 45 分、ホテル敷地内、2,000 円(宿泊 者 1,800 円) フサキ美ら星さんぽ フサキリゾートヴィレッジ 1 時間、フサキビーチ、大人 2,000 円、小人 1,700 円 天の川・スタークルーズ 石垣島マリンサービス 90 分、クルーザによるクルージング、 7,000 円/人 南の島の星空ツアー ㈱石垣島トラベルセンター 2 時間、オープンバス、3,500 円/人 星空ツアー りんぱな 2 時間、大人 3,500 円、小人 3,000 円、幼児 500 円 星空シュノーケル&ナイ トヒーリング ダイバーズネット石垣島 2 時間半、大人 7,980 円、小人 7,000 円
15 星空ツアーに訪れる観光客の構成のうち、男女比でみると、女性が 7 割ほどを占めており、 女性グループによる参加率が高い。また、石垣島の日暮れのタイミングからツアーの開始が 21 時からと遅い時間の開催であることや、暗闇に瞬く星空と静穏なひと時を提供したいという主催 者側の意向もあり、小学生未満の参加を受け付けていないツアーもある。 ツアー内容の一例をあげると、天の川が見られる方角にリクライニングチェアがセットされ、参 加者は他の参加者との一定の距離を保ちつつグループごとにスペースが確保されて星空を見 上げる。解説員は静かな口調で夏の大三角や流れ星の見つけ方などの簡単な説明にとどめ、 ゆったりと満天の星空を鑑賞する。参加者は、静寂な場所でただ星空を眺めることを目的として おり、詳しい解説は必要とされていない。 5) NPO 法人八重山星の会 2000 年より石垣市内在住者の星が好きな有志が集まり結成され、2004 年に法人化された NPO 法人である。2001 年から開催されている南の島の星まつりの発起組織であり、現在も星ま つりの際に星空解説などを行っている。 八重山(沖縄本島含む)で呼ばれている星の名前やそのいわれなどの調査や、八重山で見 える星座、一部が見える星座、見えない星座などを観測し、正しい情報を伝えるなど、星空にま つわるさまざまな活動を行っている。 6) 星空スポット 星空ツアーは、明かりの少ない場所をツアー会社独自に選んで観望会が行われており、ホテ ルの敷地内や民有地(さとうきび畑など)の一部、海岸などを主な観測場所としている。誰でも 自由に星空を観測できる場所としては、於茂登岳のふもとに位置する大本小学校や、展望台が 整備されているバンナ公園、名蔵ダムのほか、明かりを発する建物が少ない海も観測場所に適 しており、名蔵湾周辺や川平石崎半島などがある。 流星群などの天体ショーの時期には、天体に興味のある市民が気軽に石垣島で観測に適し た明かりの少ない場所に赴き、石垣島の星空に親しんでいる。 石垣島は大きな島ではないが南部と北部では天気も異なり、南部で晴れていても北部・山間 部では曇り空や雨天といったことも少なくない。季節や天候も見て観測場所を選べるのは石垣 島での星空観測の魅力のひとつとなっている。
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Ⅲ.類似施設調査
Ⅲ-1.全国のプラネタリウム
全国で、大小さまざまな規模で 300 館を超えるプラネタリウム施設があるといわれている。このう ち確認できた 269 施設について、公的施設など非営利施設(以下、公共施設という)と、民間施 設など営利施設(以下、民間施設という)に分けてそのドームサイズについて調査すると、以下の ような結果となった。 公共施設のドームサイズは大きさにばらつきがみられる。小規模な施設については、青少年自 然の家や養護施設など福祉や行政サービスの目的による施設であることがうかがわれる。反対に 大規模なものは文化的活動に注力していることを誇示するバルーン的な意図があるのではないだ ろうか。民間施設では、極端に大きな施設はなく、平均すると直径 10m程度となっている。 本調査では、既存施設の特徴から「美ら星ゲート」の参考となる調査項目(設置環境や規模など) を絞り、各施設についてそのポイントを中心に調査を行った。Ⅲ-2.民間施設
1) PLANETARIUM Starry Café (民間施設、同規模、設置環境の類似性)
羽田空港国際線ターミナルにある施設で、プラネタリウム投影や全天周映像を鑑賞しながら 食事やアルコールを楽しむことができる飲食店である。飛行機と船の違いはあるが、出発を待 つ客や到着した客が滞留する施設内にプラネタリウムを設置する共通点を持つ。 羽田空港国際線ターミナルの計画時はマッサージ店を想定していたが、外国人、特に欧米 人にはマッサージに馴染みがないため、プラネタリウムを鑑賞できる飲食店舗となったとの経緯 がある。 7 時から 23 時まで営業を行っており、飲食料金とは別にプラネタリウムの鑑賞に一人当たり 大人(中学生以上)520 円、子供(2 歳以上)310 円が必要で、鑑賞のみの入店は行っておらず、 客単価は 1,380 円程である。 13% 45% 16% 17% 9% 公的施設など非営利施設の場合 ( 256施設) 公、d<7.5 公、7.5≦d< 12.5(10m前後) 公、12.5≦d< 17.5(15m前後) 公、17.5≦d< 22.5(20m前後) 公、22.5≦d 31% 23% 31% 15%0% 民間施設など営利施設の場合 (13施設) 民、d<7.5 民、7.5≦d< 12.5(10m前後) 民、12.5≦d< 17.5(15m前後) 民、17.5≦d< 22.5(20m前後) 民、22.5≦d
17 傾斜型ドーム直径 10m、客席数 50 席とい う規模で、運営を行っている飲食店舗の店 員が 1 日に数回、3 分程度の季節の星空解 説をしている以外は星に限定せず歴史や世 界の観光地などを紹介するショート番組が休 む間なく流されている。星空を映す番組(15 分程度)時のみ入退場の制限があるが、そ れ以外の映像の上映時の出入りは自由とな っている。物語や解説は日本語の説明のみ で、番組によっては英語の字幕で対応して いる以外は音楽と映像の組み合わせによる番組が多く、言語の問題はほとんど生じていないよ うである。 「美ら星ゲート」は自立運営を目指していることから、民間が運営するプラネタリウム施設は採 算性の確保の面で参考となる。また、この施設はドームサイズや客席数についても類似しており、 本計画の関係者が規模や雰囲気を実感する施設として相応しい。 プラネタリウムを目的とし、上映されている番組の内容に関心を持つ観光客に対しては番組 内容の充実を図ることは集客に対して効果的な取り組みとなるが、「美ら星ゲート」が認知される までの間は、離島ターミナルに移動を目的として訪れる観光客が番組の内容に関心を持ってい ることを期待することはできない。そのような観光客に対しては、プラネタリウムの魅力を前面に 押し出して主張するだけでなく、集客を補うために飲食施設と組み合わせる発想は重要な対策 の一つである。 2) コニカミノルタプラネタリウム”満天” in Sunshine City (民間施設、特別シートの類似 性) 池袋駅のサンシャインシティの屋上階にあ る、プラネタリウム投影設備メーカーであるコ ニカミノルタプラネタリウム株式会社の直営施 設である。池袋、サンシャインという比較的年 齢層の若い人が集まる地域にある施設に設 置されており、それに合わせて来館者の年齢 層が若いという特徴がある。主要な客層は 20 代~30 代が全体の 75%を占め、男女比は男 性 30%、女性 70%となっている。 調査にあたり、若者に人気のあるミュージ シャンとのコラボレーション番組(平日 13:00~13:40)を鑑賞した。当日の来館者の年齢層は大 学生くらいが多く、186 席ある座席の 25%程度の来場者数であったが、土休日は満席になると
PLANETARIUM Starry Café (DEECE HP より)
18 のことである。料金は一般席で大人 1,200 円、小人 600 円と映画に近い設定となっており、特別 シートやグッズ販売なども含め、昨年度の客単価は 1,290 円程で、年間約 31 万人が訪れるプ ラネタリウム施設である。 来館者の特徴に合わせた番組制作をしており、ミュージシャンや声優とのコラボレーションも その一環である。その他の番組としては、夏休みに上映する子供番組や、19 時頃からは仕事 帰りの大人向けのヒーリング番組(星空、音楽、香り)を用意している。サンシャインシティの営業 時間に合わせた運営時間となっており、最終回は 20 時となっている。 この施設の客席の特徴として、スクリーン傍の鑑賞しにくい席に芝シートや雲シートと呼ばれ る席を用意し、付加価値の高いシートへと転換している。芝シートとは実際の星空を見るときの ように完全に横になって鑑賞できる席で、2 人で 2,900 円と一般席よりも高い料金設定だが、土 日祝日はもとより、平日も事前予約で満席となる盛況ぶりである。 ※ 2016 年 11 月より、大人 1,500 円、小人 750 円、芝・雲シート 2 人 3,500 円に変更 3) コニカミノルタプラネタリウム”天空” in 東京スカイツリータウン® (民間施設) 東京スカイツリーのソラマチにあるコニカミノ ルタプラネタリウム株式会社の2つ目の直営施 設である。同じ直営施設である満天に比べて、 東京スカイツリーを観光の目玉として来館者の 年齢層が幅広いという特徴があるが、その主 要な客層は 20 代~30 代の客層が 7 割を占め ており、男女比は男性 25%、女性 75%となっ ている。 満天同様に上映番組は客層に合わせたミ ュージシャンの起用のほか、アロマの香る癒し をテーマとした作品など、エンターテイメント性の高い作品を上映している。営業は 11 時から 22 時となっており、1 時間に 1 本、40 分程度の番組を上映している。料金は一般席で大人 1,200 円、小人 600 円で満天と同様で、オリジナルアロマやキャラクターグッズ販売なども含め、昨年 度の客単価は 1,190 円程で、年間約 42 万人が訪れるプラネタリウム施設である。 ※ 2016 年 11 月より、大人 1,500 円、小人 750 円に変更 天空(コニカミノルタプラネタリウム㈱より)
19 4) 石垣やいま村星空ビレッジ(石垣島の星空を観光資源にしている施設) 「美ら星ゲート」の取り組みは石垣島の実際の 星空をアピールすることに結びつかねばならな い。従って石垣島で行われている既存の星空に 関するイベント等との連携も必要となる。石垣や いま村星空ビレッジは、JTB の国内ツアーを通じ て発信されているが、石垣市内で観光客に対し て星空を観光資源として扱うという同じ志を持つ ものとして、民間で実施されている星空に関する イベントなどについて、情報交換、運営の連携は 継続的に行われる必要がある。 5) スタービレッジ阿智 (星空を観光資源にしている株式会社) 長野県南部にある阿智村は、元々温泉やスキー、またアルプスに代表される自然が観光資 源の村であった。宿泊人口の減少に危機感を抱いた地元の有志がきっかけとなり、「日本一星 が輝いている場所」に選出されたことや、地元の観光スタッフが星空を楽しんでいることにヒント を得て、新たな観光資源としての星空を定着させることに成功した。 石垣島は観光に関して阿智村ほどの深刻な状況にはないが、既存の観光資源を利用して新 たな観光資源を定着させる取り組みは同じで、成功例として経緯をトレースする必要があると考 える。ヒアリングにより得た要点は以下の通りである。 ・ 自らを含めた有志の行動が全て先んじる。 ・ やみくもに行動するわけではなく、目標を立て実績を上げることで、運営者、連携する他社そ して客の信用を得ることを念頭に置いて行動する。 ・ 旅行会社など連携する他社の賛同を得るために、企画が商品として成立していることを明確 に示す必要がある。その上で、相手にも利益があることを説く。 ・ 何をするにも目的を見失わないことが肝要。阿智村では減少した若者人口を回復することが 目的であり、それと同時に、若者を集めることは情報の拡散力に大きく貢献するため、運営的 にも必須要素になっている。この点は「美ら星ゲート」にも当てはまる。 以上のことを踏まえたポイントとなるテクニックは以下のようになる。 1、 ターゲットを絞る 2、 商品の魅力がターゲットに確実に届くような発信を行う 3、 客が商品に迷うことのない様に、当初の企画が軌道にのるまでは新しい企画は打ち出さ ない。(携帯電話のプランの様に煩雑な商品設定はくれぐれも避けること。) 4、 天候に関係なく客が必ず思い出を持ち帰れる工夫をする。(本計画で言えば、荒天で星 空ツアーができなくても、「美ら星ゲート」で本当の星空がどれだけ魅力的かを印象付け、 もう一度来ようと思わせることが肝要。 星空鑑賞(星空ビレッジ HP より)
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Ⅲ-3.公共施設
1) 牧志駅前ほしぞら公民館 (番組制作、設置環境の類似性) 那覇市牧志駅前にある公民館に併設されたプラネタリウムで、プラネタリウム施設を公民館 講座で使用するほか、都市部という立地条件から学習投影に力を入れた施設である。一般向 けに上映されている番組としては、沖縄の星空の解説などのほかしまくとぅばをテーマにした番 組の上映が行われている。 ドームの大きさは直径 12mと比較的小さく、複合施設の中に設置されていることも類似して おり、主に立地や番組構成を参考にすべく調査した。調査の際には「残したい言葉・伝えたい 想い」の番組を鑑賞した。これは星空を題材にしたものではなく、沖縄本島でもしまくとぅばを話 せる世代の高齢化が進んでおり、失われつつあるしまくとぅばを記録し残す目的で作られた番 組で、しまくとぅばのテンポと相まって独特の雰囲気があるドキュメンタリーになっている。 このほかに、沖縄をテーマにした番組としては「美ら島・星の旅」という沖縄の文化や人々の 生活と、星空とのかかわりを描いたプログラムも上映されている。「美ら星ゲート」にも、星に関す るテーマの他に八重山に残る文化の伝承を目的として、星にまつわる民謡や民話に関わる内 容も求められている。しかし、ウチナーグチやしまくとぅばを主なテーマにした番組ではリピータ ーを獲得することが難しく、来館者を限定することにつながるため、番組づくりの中で盛り込み 方を検討する必要がある。しまくとぅばのための番組を制作することに拘らず、生解説の中でしま くとぅばを用いるような試行錯誤が重要になると思われる。 2) 科学技術館 シンラドーム (同規模、3D 投影、設置環境の類似性) シンラドーム(3D ドームシアター)は、現代から近未来の科学技術や産業技術に関する知識 を広く国民に対して普及・啓発することを目的とした施設である、科学技術館の中にある。入場 料以外にドーム映像を鑑賞するための別途費用は不要で、他の展示と同様にコンテンツの中 の一つという位置づけである。週末に実施されている様々な分野の研究者によるサイエンスショ ーが目玉であり、平日の立体映像投影は、使われていない空間の有効利用に過ぎない。 施設については、傾斜型ドーム 9m という規模で、ドームシアターに至るまでのアプローチや ドームシアターそのものの雰囲気づくりが「美ら星ゲート」の参考になると考える。入口前の空間 (ホワイエ)は紋切り型の設えで、満天や天空などの民間施設に見られるような期待感を持たせる 要素に欠けている。一方ドームは、デザインとしてドームの骨組なども現しにしており、傾斜型ド ームと段床と併せて個性的な空間になっている。 3) 平塚博物館 (設置環境の類似性) 博物館に併設されているプラネタリウムで、博物館のコンテンツの中の一つという位置づけ である。ドームは 3 階にあるが、施設そのものが古いこともあり来館者のためのエレベーターは 設置されておらず、行き帰り共に避難経路を兼ねた階段を利用する動線計画となっている。ま た、バリアフリー対応が十分とは言えず、人の流れにおいても、もぎり等を考慮すると、混乱を避21 けるため入口と出口を分けることが望ましいと感じた。 アプローチの雰囲気作りの点では壁面を飾る展示のみで、体験あるいは体感するという視 点に欠けている。ドームは水平型であり、床もフラットであるため、最新の施設と比較すると古い 施設であることを感じさせ、臨場感も高くはない。 本計画においては、入口と出口を分離し、かつ高速船のチケット販売ブースや既存店舗等 の人や物の滞留がある場所からは離して計画すべきである。また、アプローチの雰囲気づくりは 体感する施設であることがうかがい知れるよう、内部の様子が外から知れるようにする工夫や、 十分に活用されていない動線を移動空間に沿って工夫する必要があると考える。また、ドーム については、傾斜型ドームと段床を採用し臨場感のあるものとすることが望ましい。特にシネマ コンプレックスを日常的に経験しているような大都市圏から訪れる観光客には、平面的で眺める だけのものでは物足りない印象を与えてしまう恐れがあるため、施設全体を空間体験として感じ られるようなつくりとし、休日に相応しいイベント性のあるものにする必要があると考える。 4) 国立天文台 4D2U ドームシアター (規模、4D2U) 東京都三鷹にある国立天文台 4D2U ドーム シアターでは、傾斜型の直径 10m のドームスクリ ーンに広がる迫力の全天周立体映像を展開して いる。星空を時間軸も含めて立体的に理解する 取り組みは学術的に重要な意味を持つ。一方で 星座に代表される様に、一般には星空は平面的 な姿で浸透している。4D2U の立体的な星空を 体験できる施設は現在のところ希少であるが、今 後プラネタリウムのスタンダードに発展する可能性もある。規模的にも「美ら星ゲート」と同等であ り、導入の検討をするにあたり参考にする適切な施設である。 4D2U では、解説員はツアーガイドのような存在である。アドリブで自由なルートを辿ることが でき、映像を観るというよりは宇宙旅行を疑似体験している様な感覚に近い。離島も含めた昼間 の石垣島観光→夕べの星空ツアー→夜の 4D2U という流れで石垣島ツアーを捉えると、そこに は宇宙まで行ける旅行というコンセプトも見えてこよう。但し、4D2U の 3D 映像は、ドームであっ ても平面スクリーンであっても印象に大きな差が生じない。 施設調査という視点でドームシアターを捉えると、ドーム規模、収容人数という点で本計画に 近い。それを前提として、フラット床とした場合の特徴は、映像体験の点では大きな差はないが、 簡易的或は旧式のスタイルという印象を受け、イベント性に欠けているように感じる。 国立天文台 HP より
22 5) 石垣島天文台 (4D2U) ここの 4D2U は天体観測ができない場合に利用することも考慮しているため、当初は補足的 な意味合いが強く平面スクリーンに投影して運営されている。現在は、魅力的な生解説が評判 となり、それを目的としたリピーターも訪れている施設である。 国立天文台の施設は全国で数ヶ所しかなく、そのうちの一つが石垣島にあるため、4D2U の 他に「美ら星ゲート」とのさまざまな連携活動を模索するために調査を行った。例えば、オリジナ ルの星空ツアーを企画する際には「美ら星ゲート」がプロローグを担い、天文台での星空観測 につなげるツアーも想定される。また、4D2U はインタラクティブな機能が長所の一つであり、生 解説と映像の操作は不可分の関係にある。従って、「美ら星ゲート」で 4D2U をコンテンツの一 つとして運営する際には天文台からの協力やアドバイスが重要になると考えられる。 「美ら星ゲート」と石垣島天文台は車で 20 分程度と近く、天文台との連携を前提とした場合、 各々の存在意義が希薄になることが懸念される。従って、「美ら星ゲート」に 4D2U 導入する場 合は、天文台とは敢えて違う視点で運営するか、或は天文台の 4D2U 機能を「美ら星ゲート」に 移して運営することを検討すべきだと考える。 6) 海洋文化館プラネタリウム(番組制作) 海洋博公園を構成する施設の一つである。文化施設として天体以外の番組も上映しており、 「美ら星ゲート」の番組作りの参考にしたいと考えている。 施設で所有する番組は、オリジナル番組と番組制作会社から購入する配給番組に大別でき る。オリジナル番組は有識者の意見を参考にしながら残すべき或は伝えるべき内容を具現化し たものと、施設コンセプトに合わせた海洋文化にまつわるものとなっている。配給番組は年に1 本新しい配給番組の上映権を購入し、リピーターに対応している。 オリジナル番組は何年もの間定番となるため、その番組目当てのリピーターはあまり期待で きない。また、別の調査でオリジナル番組の制作費は高価であることが分かっており、多くの本 数を制作することも運営上難しいことから、オリジナル番組は施設のターゲット層に向けた限定 した内容で制作するか、施設のコンセプトに基づいた内容にして繰り返し上映することで、多く の人に確実に伝えることが可能となり、目的を達しやすく効率的と考える。
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Ⅲ-4.総論
1) 料金設定と来館者数について 公共施設は利益を目的としていないため観覧料が安価な設定となっているが、それと比較す ると民間施設は格段に高い。公共施設が 300 円程度(大人一般)なのに対し、民間施設は 1,500 円(大人一般)程度の開きがある。また、公共施設は教育施設としての役割があり、多くの場合、 平日の午前中は学校教育のための時間としており一般に開放されていない。一般向けの番組 についても料金が安いため、比較的安定した来館者数を確保しているが利益という視点で見る と十分とはいえない。それに対して民間施設は人件費等のランニングコストをまかなうための料 金を設定し、集客のある立地に施設を構えることと客層にあわせたコンテンツを提供することで その運営をまかなえるだけの集客を確保しており、黒字運営を実現している。 2) 番組について 公共施設では、大人向け番組と子供向け番組を用意していても、基本的にプラネタリウムを ベースにした番組づくりをしている。制作費用の面から、自前で番組を制作し星空の生解説を 行うなどの工夫をしている。一方民間施設は、プラネタリウムという概念に囚われず、料金に見 合うエンターテインメント性の高い番組づくりをし、夏休みなど子供の集客が多く狙える時期の み子供向け番組を上映するなど、常に話題性を確保できるような試みをしている。またリピータ ー確保のために、人気番組投票に基づいてリバイバル上映なども行っている。 なお、民間施設におけるエンターテインメント性の高さについて述べているが、エンターテイ メントといっても、ミュージシャンとのコラボレーションのようなものもあれば、科学や文化につい てのドキュメンタリーとしてのものもあり、番組の内容によって目指すべきエンターテインメントは 異なる。従って、今後番組作りに特化したさらに具体的な調査検討が必要だと考える。 3) 施設について 公共施設は規模の偏りは少なく、直径 35mと大規模なものから直径 10m 未満の小規模のも のもある。一方民間施設は、映像鑑賞のみで集客する場合は 200 席程度確保できる規模のド ームが多い。Starry café の様に主たる目的が映像鑑賞ではないような場合には 10m程度の小 規模な物でも成り立っている。 4) まとめ ドームシアターの設備については次章以降で触れるが、一点だけ先取りすると、投影機の数 とドーム径の因果関係について、ある程度の傾向はあるが、レンズや光源の性能によって補完 できるため、明確な偏りは現れない。つまり、規模が小さくても複数の投影機を導入することもあ れば、比較的大きなドームでも投影機の数が少ない場合もある。投影機の数を決定する要因は 規模だけではなく 2D、3D の選択や番組の内容とクォリティによっても左右される。しかし、ドー ム径と収容人員については、席の配列である程度補えるが、何れにしても径が大きければ収容24 人員が増やせるのは間違いない。 一方、ランニングコストについては、投影機が増えればそれに伴う機器も増えるため費用も かさむ。公共施設の様に利益追求が目的でないのであれば、ドーム径に拘る必要はないが、 利益追求が前提となる民間施設の場合は、ランニングコストを単価と集客によって賄うため、こ の要件により収容可能人員が概ね算出され、それに伴いドームの大きさも概ね決定されること になる。「美ら星ゲート」は既存施設に設けることからその施設の大きさにより限定され、空間の 大きさが概ね 9m程度となる。天空や満天の様な 16m以上のドームと収容人数には大きく及ば ない。従って、starry café のあり方を基本として計画を練る必要がある。
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Ⅳ.プラネタリウム調査・検討
Ⅳ-1.プラネタリウム施設の構成
1) 機器名称の確認 デジタル式のプラネタリウムの普及が進む中、必然的に従来型のプラネタリウムと区別する必 要性が生じ、前者を「光学式プラネタリウム」、後者を「デジタルプラネタリウム」と呼び区別して おり、本報告書でも同様の扱いとした。また、デジタルプラネタリウムが作り出す星々を投影する ための投影装置(ビデオプロジェクターとコンピュータからなる投影装置)を「全天周デジタル投 影装置」として、その機能や性能などを調査、検討することとした。 なお、「デジタルプラネタリウム」と「全天周デジタル投影装置」を総称してデジタルプラネタリ ウムと呼ぶこともあるが、本計画では「デジタルプラネタリウム」をソフトウエアと位置づけ、それら を映し出す「全天周デジタル投影装置」は八重山の美しい海、空などの自然、伝統、文化など を投影する重要な役割を負うため、分けて扱う。 2) プラネタリウムの機器構成 ここに掲げるものは一般的なプラネタリウム施設の機器構成を例に示すもので、「美ら星ゲート」 の計画とは異なる場合もあるが、プラネタリウム設備の機器構成は、周辺機器を含めて以下の 通りである。 ①光学式プラネタリウム(制御装 置(主にコンピュータ)含む) ②デジタルプラネタリウム ③全天周デジタル投影装置(画 像生成送出用、制御用コンピ ュータ及びビデオプロジェクタ ー) ④操作卓 ⑤音響装置(上記機器からの音 声出力を再生する) ⑥演出用照明装置( LED 光源 RGBW) ※ 図は一般的なプラネタリウ ム施設計画と関係機器の配置計 画を示す。26 3) プラネタリウムと投影装置 光学式プラネタリウム、デジタルプラネタリウム、全天周デジタル投影装置のシステム構成を以 下に示す。 種類 機器構成・概要 光学式プラネタリウム ・プラネタリウム投影機本体 ・機器の動作、光源の調光などを行う制御装置(主にコンピュータ) デジタルプラネタリウム ・ソフトウエア 全天周デジタル投影装置 ・画像を生成し、プロジェクターへ送り出すコンピュータ ・制御用コンピュータ ・ビデオプロジェクター 操作卓 ・各種機器や照明、音響を操作
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Ⅳ-2.ドームの検討
「美ら星ゲート」に設置するドームの仕様について、以下の仕様とする。検討の経緯につ いては各項を参照されたい。 項目 仕様 1)ドーム形状 傾斜型ドーム 2)ドーム設置方法 自立式 3)ドームサイズ 9.0m 4)ドームスクリーン アルミパンチング、白色塗装 反射率:50%~65% 開口率:14~17% 5) 客席 一方向配列、変則的座席配置 1) ドーム形状 プラネタリウムドームは半球を水平に設置することが基本であったが、1980 年代、全天周映 像装置と光学式プラネタリウム投影機を併設する考えが生まれ、臨場感や距離感などの映像が 持つ効果を最大限に引き出せる傾斜型プラネタリウム施設が誕生した。 現在、プラネタリウム施設には、水平型、傾斜型のドームと平面型が存在しており、それぞれ の特徴について整理する。 (1)水平型ドーム 水平型ドームとは、半球の下端を水平線と見立 てて水平に設置したもので、地上から見上げる天球 (星空)を半球と置き換えたものである。 ドームを見上げる感覚が実際に星空を見上げる 感覚に近いため、プラネタリウム投影に適したドーム 形式といえる。鑑賞の際は一般的にリクライニングシートで仰向けに近い状態で視線を上方に 向けて見上げるように星空を鑑賞するスタイルとなる。水平型ドームは人の出入りを考慮して 出入口の高さより上に水平線を設定する必要があり、観客の目線からドームを見上げると、現 実の水平線の位置より上方となる。臨場感や没入感、距離感、浮遊感などの投影効果を狙う 4D2U や全天周映像では、見上げるより前方を向いた姿勢での鑑賞の方がよりその効果を感 じることから、物足りなさを感じる。 (2)傾斜型ドーム 傾斜型ドームとは、半球のドームを傾けて設置し、水平線より下の視界を再現できるように したものである。全天周映像で得られる迫力や臨場感、距離感といった投影効果を観客に伝 えることを目的に発展してきたドーム形式である。座席は水平の床に配置する場合と、ドーム の傾斜にあわせて床に段を設けて座席を配置する場合があるが、いずれの場合も視線は前 星空投影28 方に向けて鑑賞する。 プラネタリウムの星空投影では、半球を傾けて設 置しているため、水平線を観客の目線とほぼ同じ高 さに設けることができ、かつ、水平線より下方にも映 像が投影されることから、4D2U や全天周映像などの 投影に際しては水平ドームスクリーンより高い投影 効果(臨場感や没入感、距離感、浮遊感など)が得 られる。一方、後方の星空の一部が欠けて見えない など、地上から見上げる天球(星空)と異なる条件と なるため、投影に工夫を必要とする場面もある。しか し、星空の下での公演、民芸や三線の実演、発表会 等に活用しやすい室内計画が可能で、さらに、観覧者と出 演 者が空間を共有し一体感を感じ、交流する空間を作り上げることで両者の記憶に残る「場」と することができることから、傾斜型ドームは利点が多い。 (3)平面型 平面型とは、壁面(垂直面)に投影するタイプ のものであり、一般的な映画館と同じ形態のもので ある。プラネタリウム投影では、平面デジタルプラ ネタリウムのみ対応できる形式であり、全天周の投 影はできないことから、方位を重視した星空の動き や太陽の動き等、立体的な学習(天球上での星々 の動き)を行う投影には不向きである。映像投影では、大型スクリーンを使用することで、臨場 感のある映像を投影することができ、3D など前方からの動きを体感することで投影に適してい る。 (4)ドーム形状別特徴比較 3種類のドーム形状を、機器や各種コンテンツ、上映番組種別などについてその効果を比 較すると以下のようになる。「美ら星ゲート」では、効果的な使用・演出が可能な傾斜型ドーム を導入するものとする。 ドーム形状別の特徴 種別 項目 水平型ドーム 傾斜型ドーム 平面型 機材 光学式プラネタリウム ◎ ◎ × デジタルプラネタリウム ◎ ◎ 〇 星空 星座解説 ◎ ◎ 〇 星空再現、星空解説 ◎ 〇 × 全天周映像 星空投影 星空を投影できない部分
29 宇宙 天文現象再現 等 ◎ ◎ 〇 4D2Uの投影 〇 ◎ 〇 宇宙空間 浮遊感 〇 ◎ × 恒星間飛行 移動感 〇 ◎ △ 活用する講演、解説 〇 ◎ 〇 映像 全天周映像 〇 ◎ × 臨場感・迫力 〇 ◎ × 距離感 〇 ◎ × 没入感 〇 ◎ × 施設 多目的活用 〇 ◎ △ 講演会 〇 ◎ △ 芸能、民話(実演) 〇 ◎ △ 市民活用 〇 ◎ △ ◎:効果的な使用・演出が可能 〇:使用可能、問題は生じない Δ:施設設計に配慮が必要 ×:使用することは出来ない、使用には問題があり不向き 2) ドーム設置方法 ドームを屋内に設置する方法には、吊下式、自立式、移動式の 3 つの方法がある。それぞれ の設置方法と特徴を整理する。 (1)吊下げ式 建物の構造体(柱や梁など)を利用して、それ に取り付ける方法である。ドームを構成する構造 体の軽量化を図ることが出来るが、建物と一体と なるため、地震などの影響を受けやすい。 ドームの設置を前提とした新築の建物と違 い、既存建物に設置する場合は、どこにドームを 取り付ける支持を出すことができるかどうか、構造の確認および検討が必要となるうえ、支持 位置によりドームの配置が限定されるなど、レイアウト検討への影響も大きい。 (2)自立式 ドームの構造体そのものを自立させた置き型 のものである。建物と干渉することなくドームが 完結しているため、配置に自由度が高く安定性 があり、地震等の外力からの影響にも強く長期 間にわたりその球面精度を維持することが出来
30 る。既存建物への設置の場合の構造への影響については主に床荷重について構造の確認 および検討が必要となる。 (3)移動式 建物に常設で設置するものではなく、いつでもどこでも空間さえ確保できれば設置可能 な簡易ドームである。ドームには、エアードームや組み立て式等があり、移動式を常設として 使用することも可能である。学校やその他の施設へ出向いて投影することができることから、 病院や介護施設などプラネタリウム施設へ赴くことのできない人がいるところで上映すること が可能となる。しかし、常設としてだけではなく、移動式としての利用をもかねて設置するとし た場合、投影機器が限定される。 (4)ドーム設置方式と投影機の関係 3種類のドーム設置方式と投影機の関係を以下に示す。本施設では、既存施設への設 置の自由度の確保から、自立式を採用するものとする。 ドーム設置方式と投影機の関係 検討項目 吊下げ式 自立式 移動式 既存施設への設置の自由度 × 〇 〇 投影機による制限 分割投影 〇 〇 △ 単眼式投影 〇 〇 〇 ○:適している △:設置に条件があるが投影可能 ×:適していない 3) ドームサイズ 既存建物の図面の確認及び現地調査を行った結果、床面積より高さがドームサイズに影響 を与えることがわかった。ドームの最も高い位置が既存建物の梁と干渉せず、かつ上部施工時 の余裕を持つこと、フロアへの座席の設置等を考慮した球芯の高さの設定などを検討した結果、 最大で直径 9.5mのドームの設置が可能であることがわかった。 ドームの平面計画においては、ドームへのアプローチや各種設備、「美ら星ゲート」を構成す る諸室が運営上重要な役割を担うため、総合的な調整が必要となる。直径 9.5m のドーム場合、 梁との干渉を避ける必要があることから位置が固定されてしまう。このため、梁の位置に影響を 受けず自由にドームの位置を調整可能にするために、直径 9.0mのドームが最適なサイズであ ると判断した。 4) ドームスクリーン 星空や映像を投影するスクリーンをドームの内側の仕上げとして設置する。このスクリーンの 素材にはボードに塗装仕上げを施したもの、アルミパンチングに塗装仕上げを施したものとある。 球状の空間は音が反響してしまい、音響の面で良い空間であるとは言いがたい。特に、ボード
31 に塗装仕上げとした場合は音が吸収されず、反響していつまでも前に発した音が残り、音が交 錯して非常に聞き取りにくい空間となる。アルミパンチングは、穴を通してドームの後ろ側に音が 抜けていくことから、ドームの後ろの空間に吸音をしっかり施すことで、音響対策をとることが可 能となる。本検討では、音響の面を考慮して、アルミパンチングを使用することを前提とする。反 射率とアルミパンチングの開口率については以下にて検討するが、塗装の仕上げは映像を映 すことを前提として、完全艶消しの白色、継ぎ目は貼り合わせの見えないシームレス処理で仕 上げることとする。 (1)反射率 星空投影と全天周映像の投影にはスクリーンの仕上げの反射率が重要なポイントであり、 それぞれの場合で求められる反射率は異なる。反射率は暗いものを映すときその数字が大 きいほどくっきりとした星を映すことができる。映像など比較的明るいものを映すときなどはそ の数字は小さい方が好ましい。 星空投影では、より現実に近い星空を再現するため、コントラストを高くすることが求めら れ、反射率は 80%のものが必要となる。一方、全天周映像の場合、ドーム形状において高 い反射率にするとスクリーン相互反射が映像のコントラストを低下させる等の悪い影響が現 れるため、反射率 40%と比較的低いものが望ましい。どちらも満足感を得られる反射率とし て、50%~65%程度とする事例が多い。これは、星空投影と全天周映像の両者が求める反 射率の中間的な値である。 反射率は使用する投影機器類の性能と密接に関係する。最終的な反射率の設定につ いては、設置する機器の仕様や性能により異なることから、機器にあう反射率を検討し、最 終決定することとなる。 (2)開孔率 先に述べたとおり、ドーム内空間は音響的な空間として良い条件ではない。そのため、ス クリーン表面に開けられた小さな孔の割合(開孔率)がその改善に重要な役割を負う。これ は、小さな孔から音をスクリーン裏へ逃がすことでスクリーン面での音の反響の影響を少なく する効果をもたらすためである。これまでは開孔率 10%から 22%程度の値が採用されてい るが、最近の施工事例を見ると、14%から 17%としているところが多い。開孔率は、機器の 仕様や性能、機器メーカーによる考え方によるところが大きいため、投影機器とのバランスを 見て最終決定することとなる。 孔径は塗装前で 1.5mm~2.0mm が使用されることが多く、配列にもいくつかのパターン がある。開孔率は単位面積当たりの孔の面積の割合を指す。
32 開孔率 10.1% 孔径 2mm 開孔率 17.4% 孔径 2mm 開孔率 17.4% 孔径 1.5mm 開孔率参考図 5) 客席 プラネタリウム施設では一般に、星空を見上げやすいリクライニング機構を持つ座席が設置さ れていることが多い。座席配列は、中央にプラネタリウム投影機を配置して、同芯円に配置する 方式と、全員が一方向へ向く一方向配列、自由に好きな場所で眺めることができる変則的座席 配置がある。 (1)同芯円配列 プラネタリウム機器を取り囲む同芯円状に座席を配置する方 式で、プラネタリウム投影のみを目的とした当初の施設のほとん どがこの配列であった。 この配列は、星空を(半球のドームスクリーン)どの座席から もほぼ同等に見上げることが出来、プラネタリウム投影に適した 配列として長く採用されてきた。一方、学習投影、解説用の映 像の投影、また、全天周映像の投影では客席の向きが一定し ていないことから席によって見える星空が異なり、説明しにくいなど、不都合な状況が生まれ る。 この配列は水平型ドームに限定されることもあり、現在は同芯円配列を導入する施設は少 ない。 (2)一方向配列 同芯円配列で生じた不都合な状況や問題を解決するため に一方向配列が考え出された。一方向配列によって、プラネ タリウム番組の効率的な投影や全天周映像の併設を可能にし たほか、各種の公演や演奏会などドーム空間を多目的に利用 することができる。一方向配列をさらに発展させ、前方を見や すくするために緩やかな段床を採用する場合もある。水平型、 傾斜型どちらのドーム形状においても採用可能であることから 採用例が増えている。
33 (3)変則的座席配置 星空を自由な格好で好きな時間に楽しみたい、そうした要望はあるものの、さまざまな要 因から実現している施設は少ない。これは、既存のプラネタリウム施設の多くが教育を目的と し学校教育の一部を担う施設であるという背景も影響しているものと思われる。 「美ら星ゲート」は教育を目的としておらず、観覧者が自由な格好、楽な姿勢で過ごせる 場所として、床に寝転ぶ、椅子に座る、カウンターに寄りかかる(立ち見)など、今までの座席 配置、ドーム空間の使い方にこだわらない室内計画を検討し、可能性を探る。これは、離島 ターミナル特有の施設利用者を想定した活用計画で、コンテンツ計画と連動するものである。 客船の待ち時間に短時間でも八重山で見られる星空に親しみ、心を休め、番組を見る、観 覧者自身が観覧時間を決めることが出来、自由な姿勢で星空や映像などのコンテンツを楽 しめる等、新しい発想によるものである。変則的座席はドームの特徴を最大限に生かした新 たな施設活用への一つの提案であり、世界で唯一のドームスクリーン空間実現への可能性 を探るものである。 参考図 ・星空の下での演奏や実演のスペース ・観客が自由な格好で星空を楽しむスペース ・プラネタリウム用リクライニングシート 楽な姿勢で星空を見ることが出来る。 ・カウンター席 飲み物を飲みながらの星空 新しい発想で星空を楽しむ
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