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幼児の保育場面における対人行動の発達

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幼児の保育場面における対人行動の発達

著者 玉木 直美

雑誌名 東京家政大学生活科学研究所研究報告

巻 6

ページ 47‑62

発行年 1983‑03

出版者 東京家政大学

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009748/

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幼児の保育場面における対人行動の発達

玉 木 直 美*

Development of Interpersonal Relations    in Early Child Education

Naomi TAMAKI

はじめに

 子どもが,生まれ初めてかかわる人について 真仁田昭氏は, 『その生物的な生命の維持に関 係のある種々な欲求の充足との関連においてで ある。子どもは,誕生と同時に,その欲求の充 足のすべてを外部に依存する。特にそれは,保 護的に注意深くかかわってくれる母親が,その 代行者の存在に依存しているのである(p.18)。』

と指摘するように母親である。子どもは,母親 との間に信頼関係を成立させ,次に母親を除い た家族へと対人関係を広げる。乳児期を経て幼 児期に入ると子どもは,歩行と言語の獲得によ って生活空間が拡大される。これによって,同 年輩の子どもとの生活が展開し始める。おとな の遊びと相違する子どもの遊びは,生活そのも のである。幼児は,その遊びの中で対人行動を 発達させる。

 そこで,私は集団保育の経験のない同年齢の 幼児が,母親を含む集団の中でどのような行動 をとるかを観察することによって,そこから幼 児の対人行動をとらえるべき本研究を計画する。

*東京家政大学生活科学研究所研修生

1 研究目的

 本研究は,初めて集団保育を経験する家庭児 が,集団保育の経験をどのように自己の中にと

り入れていくか,その過程を対人行動の発達の 面から明らかにしようとするものである。

 初めての場所で,初めて出会う他児とそして,

初めて出会う保育者とどのようなかかわりあい 行動を展開するかについて行動観察を行なうも のである。

 幼児期の対人行動は,家庭内における両親や きょうだいとの関係を経て,子ども同士の対人 行動へと発達していく。幼児の生活空間の拡大

とともに対人行動の相手も家庭外の他の人へと 移っていく。また,幼児期は,言語や運動の発 達に伴い同年輩の幼児との遊びが可能になる。

幼児の遊びは,傍観的なひとり遊び→平行遊び

→連合・協同遊びへと発展していくものである。

 遊びの組織化の状況を年齢との関係で見ると 2才の幼児は,他児から独立してひとりで遊ぶ 形態が多い。しかし,他児から完全に独立して いる遊びばかりではなく,他児の存在によって 遊びが活発化する場合もある。他児の存在によ って遊びが活発化する場合の他児との関係は,

相互に交渉のない,いわゆる平行遊びと呼ぼれ る形態をとることが多い。3才になると他児と

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の関係は,より積極的になる。しかし,他児と の関係のきっかけとなるものは,物理的な距離 の近さである。その他の要因は,特に大きな結 果をもたないのがこの年齢の特徴である。4才 になると2才・3才の経験を通して特定の子ど もとの交渉が楽しくなり親密になっていく。3 人くらいからなる集団の中で遊ぶことができる

ようになる。

 子ども同士の対人行動の発達には,以上のよ うな形態上の発達が認められる。

 本研究は,保育室において子どもが母親・保 育者・他児の三者とどのようにかかわりあいを 展開するかを観察することにより,対人行動の 発達過程を明らかにしようとするものである。

〈母親対子ども〉

 集団保育における幼児と母親について見た場 合,幼児は集団に慣れるまでSecure−Baseと

して母親を使うことが予想される。これは,子 どもがあまり馴染みでない状況にいるために感 じる不安を母親の近くにいることで解消しよう とするための行動と考えられる。集団での諸 々の体験を通し,その場に馴じむこと,即ち物 理的な空間,保育者,他児に対して不安を感じ なくなることにより幼児の関心は,母親の存在 そのものから他のものへと拡大していくと考え

られる。

 本研究は,前半は母子同室で保育を行い,後 半は原則として母子分離を行なった状況で保育 を行なう。

 観察の観点は以下の通りである。

 ①母親のもとを離れるきっかけは何であるか。

 ②母親のもとへ戻るきっかけは何であるか。

 ③母親にはたらきかける対人行動のレベル。

〈保育者対子ども〉

 子どもが初めて出会うおとな,ことに子ども に積極的にはたらきかけてくれる保育者に対し てどのような行動をとっていくかを観察する。

 子どもは,家庭内において母親と関係をすで

に成立させている。そこで,子どもが初めて出 会う他者との関係を成立させる場合,関係が成 立している母親と類似した役割や機能を備えて いる他者とのかかわりが容易であろうと思われ る。観察場面において母親と類似した役割や機 能を備えている他者とは,保育者である。そこ で子どもは観察場面においては,母親についで 保育者にはたらきかける頻度が高いものと予想 している。また,観察後半の母子分離の状況下 でも母親の代理として,保育者に頻繁にはたら きかけるものと思われる。さらに,子どもが保 育者にはたらきかける対人行動レベルは,他児 に対するよりもより直接的なものであろうと予 想している。

 観察の観点は,以下の通りである。

 ①保育者にはたらきかける割合。

 ②保育者にはたらきかける対人行動のレベル。

〈他児対子ども〉

 子ども同士のかかわり合いは,子ども自身の これまでの生活体験によって諸々に相違すると 考えられる。子ども同士の関係は,「母親対子 ども」や「保育者対子ども」のようなおとなと 子どもの関係でないことは,言うまでもない。

養育者又は,それに代わる者と子どもというタ テのつながりではなく,ヨコのつながりである。

即ち,おとなと子どもの関係のように子どもの 気持を察したり,子どもの行動を介護する立場 ではない。観察場面において,子どもから他者 へはたらきかける場合に他児に対しては,一番 困難が伴うものであろうと予想している。また,

対人行動のレベルの点でも間接的なものが多い と予想している。

 そこで,本研究では集団保育の経験のない子 どもを週に1度の集団保育の場を通して,子ど も同士のかかわりあいがどのように変化してい くかを観察し,対人行動の発達過程を明らかに しようとするものである。

 観察の観点は,以下の通りである。

 ①他児にはたらきかける割合。

(4)

②他児にはたらきかける対人行動のレベル。

2 研究方法

(1)対象者

 対象者は,表1の幼児8名とその母親である。

(5)資料の処理方法

 観察終了後,VTRに録画したビデオテープ にビデオタイマーを使用し,1秒単位でタイム を入れる。これは,観察者による記録との照合 を図るためと子どもの行動をより詳細に分析す るための客観的手がかりとするためである。

表1 対  象  児 氏  名( )はイニシャル

観察開始時の年齢 深 瀬健 吾 (K・F) 2:8

浅 野 英 司 (E・1) 2:10 越 前 直 樹 (N・E) 2:11 高 梨 登士郎 (T・T) 3:2 大 森 え み (E・0) 2:9 菊 地理子 (M・K) 2:9 下 山 真 鈴 (M・S) 2:11 渡 井 絢 子 (A・W) 3:4 平  均  年  齢 2:11

(2)観察期間・時間

 昭和57年10月9日から,同年12月11日の毎週 土曜日(9回)。午前10時から11時30分までの 約1時間30分。

(3)観察場所

 東京家政大学第4本館(児童館)2階にある

集団治療室。

④観察手続

 幼児8名とその母親は,観察時間が開始する 午前10時前後に入室する。保育者は,子どもが 入室する以前から保育室内で待機している。保 育者は,積極的に子どもにはたらきかけ,子ど もを遊びに参加させる。子どもが初めて保育室 に入室した際の状態を観察するために子どもが,

保育室に入室すると同時にVTRを作動させる。

ヵメラは,保育に支障のない室内の一隅に固定 し,子どもの活動全体を写すようにする。VT Rによる記録と観察者による記録の2つの方法 を併用する。VTR観察者は,保育室内に同室

しカメラの映像の中で死角に当たる部分の行動 観察を行なう。なお,観察者は,本研究者であ る玉木があたる。

 本研究では,子どもが自発的に他者へはたら きかける初発行動についてのみ分析を行なう。

それ故,他者からのはたらきかけに対する子ど もの反応行動は含まれない。これは,子ども自 身のはたらきかけそのものを観察するためであ

○カテゴリーについて くはたらきかけの相手〉

 はたらきかけの相手については,子どもが自 らはたらきかけた相手が,集団保育に参加して いる子ども自身の母親,保育者,他児,保育者

と他児の二者集団(以下保育者と他児と記す),

他児の母親と他児の二者集団(以下他児の母親 と他児と記す)のいずれかになされたものかを チェックする。

〈対人行動のレベル〉

 対人行動のレベルは, 「注目」,「接近」,「接 触」の3点である。さらに「接触」については,

その方法について「物を介した接触」,「言語的 接触」,「身体的接触」のいずれであるかにチェ

ックする。

 「注目」とは,他者をじっと見つめる行動を 意味し,単なる一幣は含まない。

 「接近」とは,他者へ近づいていく行動である。

 「接触」とは,他者に対して何らかの方法で 接触することを意味する。

 「物を介した接触」とは,他者に対して物を 与える。または渡すというように対人行動の中 で,物が非常に大きな役割をもっている接触で

ある。

 「言語的接触」とは,他者に対して声をかけ

(5)

たり,名前を呼ぶ場合など言語が大きな役割を もつ接触である。

 「身体的接触」とは,他者と手をつなぐ,体 に触れる,抱きつくなど身体的接触が大きな役 割をもつ接触である。

 2つの行動が同時になされる場合には,その 対人行動レベルの高い方をチェックすることで

ダブルチェックは避ける。

<母親のもとを離れるきっかけ,母親のもとへ 戻るきっかけ〉

 子どもが自ら母親のもとを離れるきっかけと なるものが,「物」・「保育者」・「他児」・「他児 の母親と他児」のいずれであるかをチェックす る。また,1度子どもが自ら母親ももとを離れ た後,再び母親のもとへ戻るきっかけとなるも のが,「他児とのトラブル」・「保育者とのトラ ブル」・「母親への物の呈示」・「母親へ援助を求 める」・「瞬間的接触」のいずれであるかをチェ ックする。「瞬間的接触」とは観察場面からは 母親のもとへ戻る外的要因が見当らないが,子

どもが心理的安心感を求めるために母親のもと へ戻って来るような接触である。

〈遊びの形態〉

 子どもの遊びの形態は,「ひとり遊び」,「平 行遊び」,「グループ遊び」のいずれであるかを 明らかにする。

 「ひとり遊び」とは,玩具や遊具を使用して,

ひとりで遊びを楽しんでいる場合を意味する。

 「平行遊び」とは,他児の近くで遊んでいる 表2 子どものはたらきかけの相手

が,相互に交渉のない場合を意味する。

 「グループ遊び」とは,他児と同じ遊びをな し,相互に交渉のある場合を意味する。

なお,数値の検定にはが検定を用いる。

3 結  果

 行動観察のための保育は,9回行なったが,

第6回目と第9回目は,他の回と保育状況が著 しく異なっているために分析の段階ではずす。

そのため7回の結果について報告する。

 1 はたらきかけの相手

 子どもが生活空間の中ではたらきかける相手 は,子どもにとってより身近な存在である他者 から始まり,次第により広い生活空間を共有す る他者への拡大していくものと考えられる。子 どもにとってより身近な他者とは,即ち母親で ある。子どもは,母親以外の他者に対しても生 活空間,生活体験を共有することで他者に馴染 み,興味を覚え,より積極的に対人関係を広げ ていくことが予想される。対象年齢が低い子ど もの場合には,共有する生活空間の中に母親以 外の他者として保育者と他児が存在する状況で は,母親的役割をとりやすい保育者とのかかわ りが他児とのかかわりよりも容易に展開される であろう。保育者へかかわることが可能になっ た次の段階では,保育者と他児に対して対人関 係を広げ,その次の段階で他児に対する対人行 動へと発達していくことが予想される。

       N(%)

相手      回 1 2 3 4 5 7 8 前 半 後 半

単      独 94(18。9) 82(19.9) 73(16.7) 33(13.1) 69(16.5) 46(12.5) 95(17,5) 492(16.8) 282(17.6) 210(15.8)

母      親 150(30.1) 151(36.7) 154(35.2) 92(36,7) 108(25.9) 55(14.9) ll7(2L5) 827(28.2) 547(34.2) 280(21.1)

保  育  者 120(24.1) 37(9.0) 46(10.5) 55(21.9) 87(20.9) 124(33.6) 192(35.3) 661(22。6) 258(16.1) 403(30.3>

他      児 63(12.7) 47(11.4) 52(11.9) 21(8.4) 41(9。8) 37(10.0) 64(11.8) 325(11,1) 183(11.4) 142(10.7)

保育者と他児 59(11.8) 40(9.7) 56(12.8) 34(13.5) 104(24.9) 93(25.2) 50(9.2) 436(14。9) 189(11.8) 247(18.6)

他児の母親と他児 12(2。4) 55(13.3) 57(13.0) 16(6.4) 8(1。9) 14(3,8) 26(4.8) 188(6.4) 140(8.8> 48(3.6)

498 412 438 251 417 369 544 2929 1599 1330

(6、9回は除く)

(6)

 表2は,子どもがはたらきかけた相手別にそ の頻度と比率をまとめたものである。

〈初回〉

 初回は,子どもが母親にはたらきかける比率 が,全体の約30%oを占めている。保育者へのは

たらきかけは・2体の緩である.観及び保 育者と他児へのはたらきかけの比率は,ほぼ同 じである。母親及び保育者へのはたらきかけと 比較して,保育者と他児へのはたらきかけは,

低い比率となっている。他児の母親と他児への はたらきかけは,非常に低い比率を示している。

 子どものはたらきかけの相手は,子ども自身 の母親に集中しているのが特徴的といえる。

〈2回目〉

 初回と同様に,子どもの母親へのはたらきか けの比率が30%を上まわっている。保育者への はたらきかけは,初回に比較して有意な減少を

示している(x2=36. 086, P〈O. OOI)。その比率

は,保育者と他児へのはたらきかけの比率とほ ぼ同じである。他児の母親と他児へのはたらき かけは,有意な増加を示し(x2=38.453,p〈

0.001),この比率は他児へのはたらきかけと類 似している。初回では低い比率で出現していた 他児の母親と他児へのはたらきかけが有意に減

少している(x2=36, 086, P<O. OOI)。他児への

関心は母親を介在した間接的関係の中で認めら

れる。

〈3回目〉

 第3回目では,依然として母親へのはたらき かけは,他者へのはたらきかけに比較して高い。

母親を除く他者に対する子どもからのはたらき かけは,ほぼ類似した傾向を示している。

〈4回目〉

 これまでと同様に母親へのはたらきかけが高 比率で出現している。第3回目と比較すると保 育者へのはたらきかけが有意な増加を示してい る(x2=16.605,P<0.001)。また,他児の母親 と他児へのはたらきかけは,有意な減少を示し

ている(x2=7. 425, P<0.05)。

 子どもがはたらきかける相手として,母親の 次に保育者が選ばれる傾向があらわれてきたこ

とが,大きな特徴としてあげることができる。

〈5回目〉

 第5回目では,子どもから保育者と他児への はたらきかけが有意な増加を示し(x2=12. 411,

P<0.001),母親へのはたらきかけが有意な減 少を示している。

 これによって子どもが,母親,保育者,保育 者と他児のそれぞれにはたらきかける比率はほ ぼ同じである。なお,保育者及び,保育者と他 児に対してはたらきかけを比率を加えると約46

%を占め,母親へのそれよりも高い。このこと は,子どもが保育者に対して,より積極的なか かわりをもつにいたったことを示している。

〈7回目〉

 初回から第5回目のいずれにおいても子ども の母親に対するはたらきかけが,他者へのはた らきかけよりも高い比率で出現していたのに対 して,今回は保育者へのはたらきかけが33. 6%

という高い比率で出現しているのが大きな特徴 である。この回では,母親が別室に移動し,空 間的な母子分離を行なっている。しかしながら,

子どもが母親を必要とする時は,いつでも母親 のもとへ行くことができる。このような状況で 保育者へのはたらきかけが増加していることは

(x2=16.182, P<O. OOI),先に予想したように 保育者は,子どもの対人行動の発達過程におい て,他児に優先して関係が展開される存在であ ることを示している。

〈8回目〉

 第8回目では,第7回目と同様に子どもから 保育者にはたらきかける比率は,35.3%oと高い 数値を示している。一方,第7回目で高い比率 で出現していた保育者と他児に対するはたらき かけが有意な減少を示している(が=42.674,P

<O.・OOI)。母親へのはたらきかけは,有意な増 加を示している(x2 =6.268,p<O. 05)。

次に子どものはたらきかけの相手を初回から

(7)

4回目までを前半とし,5回目以降を後半とし てその変化についてみる。

 特に相手をもたない単独行動は,前半と後半 における差は認められない。いずれの回におい てもほぼ安定した比率を示しており,この傾向 は,本研究対象年齢の子どもの行動傾向である。

 母親に対するはたらきかけは,前半から後半 にかけて有意な減少を示している(x2 ・37.378,

p〈O. OO1)。

 他児に対するはたらきかけは,前半と後半の 間に有意な差は認められない。

 保育者と他児に対するはたらきかけは,前半 から後半にかけて有意な増加を示している(x2

=26.122,p<0.001)。

 他児の母親と他児に対するはたらきかけは,

前半から後半にかけて有意な減少を示している

(x2=32.016, p<α001)。

 このような,母親にはたらきかける比率の減 少,保育者及び保育者と他児へはたらきかける 比率の増加は,はたらきかけの対象が母親から 保育者,さらに保育者とかかわっている他児へ

と変化していくことを明白に示しているという ことである。

皿 対人行動のレベル

 子どもがものとかかわる過程には,まずもの そのものの存在に気づくことによって生じる注

目行動がある。注目の対象に対して積極的興味 が喚起される場合には,その対象との間隔を縮 めるための接近行動が生じる。その対象に対し

表3 母親に対する対人行動レベル

てさらに強い興味と関心がはたらく場合には,

そのものと直接かかわる行動が生じる。対人関 係の成立過程においても同じような行動の変容 が予想される。

 表3から表7は,子どもが自らはたらきかけ を行なったそれぞれの相手に対する「注目」・

「接近」・「接触」の変化についてみたものである。

 なお,接触行動は,その段階によって「物を 介した接触」・「言語的接触」・「身体的接触」に 分類される。

 子どもとの関係が成立していない段階でのも っとも緊張度の低い…接触の方法は,相手に物を 呈示することによってかかわりをもつ「物を介

した接触」である。次いで,「言語的接触」で ある。もっとも緊張度が高いが,受容された場 合には,もっとも安定感が得られるのが「身体 的接触」であると考えられる。つまり関係が成 立するまでの過程では, 「身体的接触」の出現 がもっとも低いと考えられる。

 しかしながら,すでに関係が成立している母 親に対しては,初回では「身体的接触」がもっ

とも高い比率を占めるものと考えられる。一方,

子どもとの関係が成立していない他示との接触 の仕方は, 「物を介した接触」が高い比率を占 めるものと考えられる。

〈母親に対する対人行動〉

 表3は,子どもから母親に対してはたらきか けた対人行動の頻度とその比率をまとめたもの

である。

N(%)

レベル     回 1 2 3 4 5 7 8 前 半 後 半半

注      目 28(18.7) 53(35.1) 45(29.2) 31(33.7) 23(21.3) 23(41.8) 31(26.5) 234(28.3) 157(28.7) 77(27.5)

接      近 7(4.7) 0(0) 0(0) 0(0) 3(2,8) 3(5.5) 2(L7) 15(1.8) 7(1.3) 8(2.9)

115(76.7) 98(64.9) 109(70.8) 61(66.3) 82(75.9) 29(52.7) 84(71。8) 578(69.9) 383(70.0) 195(69.6)

40(26.7) 32(21.2) 27(17.5) 22(23.9) 33(30.6) 11(20.0) 9(7.7) 174(21.0> 121(22.1) 53(18.9)

接触

30(20.0) 40(26.5) 55(35。7) 28(30。4) 38(35.2) 15(27.3) 50(42.7) 256(31.0) 153(28.0) 103(36.8)

45(30.0) 26(17.2) 27(17.5)

11︵12.0︶︑

11(10.2) 3(5.5) 25(21.4) 148(17.9) 109(19.9) 39(13.9)

150 151 154 92 108 55 117 827 547 280

(6、9回は除く)

(8)

表4 保育者に対する対人行動レベル N(%)

1 2 3 4 5 7 8 前 半 後 半

注      目 60(50.0) 12(32。4) 12(26.1) 17(30.9) 31(35.6) 30(24.2) 42(21.9) 204(30.9) 101(39.1) 103(25.6)

接      近 10(8.3) 4(10.8) 3(6,5) 6(10.9) 18(20.7) 22(17,7) 47(24.5) 110(16.6) 23(8.9) 87(21.6)

50(41.7) 21(56.8) 31(67.4) 32(58.2) 38(43.7) 72(58.1) 103(53.6) 347(52.5) 134(51.9) 213(52.9)

接触

17(14.2) 6(16.2) 11(23.9) 6(10.9) 15(17.2) 10(8.1) 7(3.9) 72(10,9) 40(15.5) 32(7.9)

27(22.5) 12(32,4) 20(43.5) 16(29.1) 22(25.3) 57(46.0) 90(46.i) 244(36.9) 75(29.1) 169(41.9)

6(5.0) 3(8.1) 0(0 ) 10(18,2) 1(1.1) 5(4.0) 6(3.1) 31(4.7) 19(7.4) 12(3.0)

120 37 46 55 87 124 192 661 258 403

(6、9回は除く)

 全観察を通して「接触」が非常に高い比率で出 現しているが,徐々に減少する傾向が認められ

る。

 初回から4回目までの前半と5回目以降の後

半とを比較すると,「注目」・「接近」・「接触」

ともに大きな変化は認められない。接触の方法 についてみると「言語的接触」は,前半から後 半にかけて有意な増加を示している(x2=8.678,

P<0.01)。「身体的接触」と「物を介した接触」

は,大きな変化は認められない

〈保育者に対する対人行動〉

 表4は,子どもから保育者に対してはたらき かけた対人行動の頻度とその比率をまとめたも のである。

 保育者に対する対人行動のレベルは,初回で は,「注目」が全行動の約50%の比率であった のに対し,第2回目以降は「接触」の比率が全 行動の約50%の比率で出現している。 「注目」

が第2回以降,減少する傾向を示しているのに 対し,「接触」が増加する傾向を示している。

「接近」は,観察を追うに従って増加する傾向 を示している。初回では,「注目」・「接触」の 占める割合が大きく, 「接近」は非常に低い比 率での出現にとどまっている。

 接触の方法についてみると全観察を通して

「言語的接触」が高い比率で出現している。

「物を介した接触」と「身体的接触」は,観察 を追うに従って減少する傾向を示している。

 初回から4回目までの前半と5回目以降の後

半とを比較すると,「注目」・「接近」は有意な減 少を示している(x2 ・24.618,ρ<0.001・x2=

18.212,p<O. OOI)。 「接触」は,有意な差が認 められない。接触の方法については, 「言語的 接触が有意な増加を示している(が=21.826,p

<0、001)。 「物を介した接触」・「身体的接触」

は,有意な減少を示している(x2 =10. 997,p<

0LO1・x2==7.383,p<0.05)。

 以上のことから保育者に対する対人行動は,

「注目」から「接触」へと発達していることが わかる。また,接触の方法は, 「言語的接触」

の占める割合が大きいということは,本研究の 対象年齢の子どもが,言語的発達期にあるとい うことも関連してくるのであろう。この結果か ら前に述べた予想は,ある程度支持されたと言 ってよいであろう。

〈他児に対する対人行動〉

 表5は,子どもから他児に対してはたらきか けた対人行動の頻度とその比率をまとめたもの

である。

 全観察を通して,第8回目以外では,「注目」

が60〜70%前後の高い比率で出現している。そ れは,保育者に対する「注目」と類似した傾向 にあるが,他児に対する「注目」の方が高い比

率を占ている(x2=83.144, P<O・ OOI)。「接近」・

「接触」には,ほとんど変化が認められない。

しかし,第8回目では,「注目」の比率が,他の 回の約参こ減少しその比率は「接触」と肌

となっている。

(9)

表5 他児に対する対人行動レベル N(%)

        回レベル

1 2 3 4 5 7 8 前 半 後 半

注      目 49(77.8) 28(59.6) 29(55.8) 13(61.9) 30(73.2) 26(70.3) 24(37.5) 199(61.2) 119(65.0) 80(56.3)

接      近 6(9.5) 9(19.1) 3(5。8) 3(14.3) 5(12.2) 8(2L6) 16(25.0)  一T0(15,4) 21(11.5) 29(20。4>

8(12.7) 10(21.3) 20(38.5) 5(23.8) 6(14.6) 3(8.1) 24(37.5) 76(23.4) 43(23.5) 33(23.2)

6(9.5) 5(10.6> 9(17.3) 4(19.0) 4(9.8) 0(0) 10(15.6) 38(11.7) 24(13.1) 14(9.9)

接   触

1(1.6) 2(4.3) 9(17.3) 1(4.8) 2(4.9) 3(8.1) 13(20.3) 31(9.5) 13(7.1) 18(12,7)

1(1.6) 3(6.4) 2(3.8) 0(0) 0(0) 0(0) 1(1.6) 7(2.2) 6(3.3) 1(0.7)

63 47 52 21 41 37 64 325 183 142

(6、9回は除く)

 初回とそれ以降の観察とを比較すると,初回 は,「注目」が77.8%という非常に高い比率で 出現しているが,第2回目以降は,「注目」が 子どもの全行動に占める割合が大きいものの比 率は,低くなっている。これは,子どもの他児 に対する対人行動が, 「注目」から「接触」へ

と移行しつつある傾向を示しているといえる。

 接触の方法は, 「身体的接触」が低い比率で 出現している。 「言語的接触」と「物を介した 接触」には,波状上昇傾向が見られる。

 初回から4回目までの前半と5回目以降の後

半とを比較すると,「注目」・「接近」・「接触」

ともに有意な差は認められない。接触の方法に ついては, 「物を介した接触」・「言語的接触」

・「身体的接触」のいずれも有意な差は認めら れない。

 以上のことから子どもの他児に対する対人行 動が, 「注目」から「接近」,「接触」へ変化し ていくという明白な関連は見い出されていない。

しかし,「注目」の減少と「接触」のわずかな

表6 保育者と他児に対する対人行動レベル

がらも増加しつつある傾向は,対人行動の発達 へと向かう前兆と考えてよいであろう。

〈保育者と他児に対する対人行動〉

 表6は,子どもから保育者と他児の二者集団 に対してはたらきかけた対人行動の頻度とその 比率をまとめたものである。

 全観察を通して,第7回目を除いて「注目」

が高い比率で出現している。 「接近」は,第4 回目の出現率が2.9%と非常に低い以外は,ほ ぼ安定した比率で出現している。「接触」は,

他の回に比較して初回においては,低い出現率 を示しているが,回を追うに従って波状上昇傾 向が認められる。

 接触の方法は, 「言語的接触」の出現率が非 常に低い。 「身体的接触」は,全観察を通じて 1度も出現していない。一方, 「物を介した接 触」は,高い比率で出現している。

 初回から4回目までの前半と5回目以降の後 半とを比較すると,行動レベル及び接触の方法

N(%)

        回レベル

1 2 3 4 5 7 8 前 半 後 半

注      目 39(66.1) 21(52.5) 27(482) 20(58.8) 59(56.7) 35(37.6) 22(44.0) 223(51.1) 107(56.6) 116(47.0》

接      近 12(20.3) 9(22,5) 12(21.4) 1(2.9) 21(20.2) 12(12.9) 14(28.0) 81(18.6) 34(18.0) 47(19.0)

8(13.6) 10(25.0) 17(30.4) 13(38.2) 24(23.1) 46(49.5) 14(28.0) 132(30.3) 48(25,4) 84(34.0)

7(1L9) 8(20.0) 17(30.4) 13(38.2) 23(22,1) 45(48.4) 13(26.0) 126(28.9) 45(23.8) 81(32.8)

接   触

1(1.7) 2(5。0) 0(0 > 0(0) 1(1.0) 1(1.1) 1(2,0) 6(L4) 3(1.6) 3(L2)

0(0) 0(0 0(0 ) 0(0) 0(0) 0(0) 0(0 ) 0(0 ) 0(0) 0(0)

59 40 56 34 104 93 50 436 189 247

(10)

ともに前半と後半との間に有意な差は認められ

ない。

 以上のことから子どもの対人行動の接触方法 の1つである「物を介した接触」は,他の2つ の接触方法よりも他者に対しての容易なはたら きかけの手段である。一方, 「身体的接触」は,

かなり他者との関係が親密にならなければ,出 現しない行動であるといえよう。

〈他児の母親と他児に対する対人行動〉

 表7は,子どもから他児の母親と他児の二者

「接近」は,有意な差が認められない。

 接触の方法については,いずれの場合も有意 な差が認められない。

 以上のことから他児の母親と他児に対する対 人行動は, 「注目」から「接触」へと段階をた

どるといえよう。

<母親への対人行動と母親を除く他者への対人 行動の比較〉

 子どもから母親と保育者に対してはたらきか ける対人行動を比較すると「注目」については,

表7 他児の母親と他児に対する対人行動レベル       N(%)

      回レベル

1 2 3 4 5 7 8 前 半 後 半

注      目 7(58.3) 35(63.6) 31(54.4) 7(43.8) 7(87.5) 3(21.4) 12(46.2) 102(54.3)

80(57.1) 22(45.8>

接      近 3(25.0) 13(23.6) 18(31.6) 3(18.8) 1(12.5) 0(0) 5(19.2) 43(22.9) 37(26.4) 6(12.5)

2(16。7) 7(12.7) 8(4.0) 6(37.5) 0(0) 11(78.6) 9(34.6) 43(22.9) 23(16.4) 20(41.7)

2(16.7) 7(12.7) 6(10.5) 6(37.5) 0(0) 11(78.6) 8(30.8) 40(21.3) 21(15.0) 19(39.6)

接   触

0(0) 0(0 ) 2(3.5) 0(0) 0(0 ) 0(0 ) 1(3.8) 3(1.6) 2(1.4) 1(2.1)

0(0) 0(0 ) 0(0) 0(0 ) 0(0) 0(0 ) 0(0) 0(0 ) 0(0 ) 0(0)

12 55 57 16 8 14 26 188 140 48

(6、9回は除く)

集団に対してはたらきかけた対人行動の頻度と その比率をまとめたものである。

 全観察を通して, 「注目」が第7回目を除い て常に高い比率で出現している。

 「注目」は,初回から第5回目までは増加す る傾向が見られるが,第7回目からは徐々に減 少する傾向が見られる。 「接近」は,観察を追 うに従って減少する傾向が認められ,第7回目 では出現していない。

 接触の方法については, 「言語的接触」がご くわずかな比率で出現し, 「身体的接触」は,

全観察を通じて出現していない。 「物を介した 接触」の出現が目立つということは,子どもか ら他者に対する接触行動のもっとも初歩的な行 動であることがわかる。

 初回から4回目までの前半と5回目以降の後 半とを接較すると,「注目」は有意な減少を示

している(x2 ・= 13. 829,P〈0.01)。「接触」は,有 意な増加を示している(x2=12.906, p<O. OOI)。

両者の間に有意な差は認められない。 「接近」

については,両者の間に有意な差は認められな い。「接近」については,保育者へのはたらき かけの方が有意に多い(が=104.966,p<O. OO1)。

 母親と他児への対人行動を比較すると「注目」

・「接近」ともに他児へはたらきかける場合が有

意に多い(x2=107.884, p<O. OOI・x2=80. 707, p

<0.001)。

 母親への対人行動と保育者と他児の二者集団 への対人行動を比較すると「注目」・「接近」は,

保育者と他児の二者集団へはたらきかける場

合が有意に多い ◎2=64.563,p<O. OO1・x2.・

114.24,」ク〈O.001)。

 母親への対人行動と他児の母親と他児への二 者集団への対人行動を比較すると「注目」・「接 近」は,他児の母親と他児にはたらきかける場 合が有意に多い(が=46.617,p<0. OO1・x2=

126. 08,p<0.001)。一方,「接触」は,母親へ はたらきかける場合が有意に多い(x2 =142.589,

一55一

(11)

p<O. OO1)。

 以上のことから「注目」・「接近」は,母親に対 するよりも他者に対する場合の方が多く,「接 触」は,他者のいずれよりも母親に対する場合 が多いことが認められる。このように,すでに 子どもとの関係が成立している母親に対する対 人行動とまだ関係が成立していない他者に対す

る対人行動は,質的に異なる様相を呈している。

皿 母親のもとを離れるきっかけ,母親のもと へ戻るきっかけ

 子どもが初めての場所や初めて出会う他者に 対して慣れるまでは,母親を中心とした行動を

とるものと思われる。しかし,子どもがそこに 存在する物や他者に対して興味や関心を覚える ことで母親のもとから離れ,行動するものと思 われる。また,精神的安定を得るために再び母 親のもとへ戻って来ることもあろう。このよう な行動をくり返していくことで,母親の必要度 が減少し,そこに存在する物や他者への興味や 関心が高まり,長い時間母親と距離をもった状 況で行動を持続するものと考えられる。

 そこで,ここでは子どもが母親のもとを離れ るきっかけ及び,再び母親のもとへ戻るきっか けを頻度をもって測定し検討する。

〈母親のもとを離れるきっかけ〉

 表8は,母親のもとを離れるきっかけが,保 育室内にある玩具や遊具のような「物」である か,保育室に同室している「保育者」・「他児」・

表8 母親のもとを離れるきっかけ

「保育者と他児」・「他児の母親と他児」のいず れかであるかの頻度をもって測定し,並びにそ の比率をまとめたものである。

〈初回〉

 初回では,母親のもとを離れるきっかけは

「物」が59.8%と高い比率で出現している。子 どもの興味や関心が「物」に集中していること がわかる。また,「保育者」・「保育者と他児」の 両者と比較して,「他児」・「他児の母親と他児」

は,非常に低い比率である。

〈2回目〉

 第2回目は, 「保育者と他児」の場合が高い 比率を示している。初回では高い比率で出現し ていた「物」が,今回は「保育者」とほぼ同率 の出現になっている。「他児」・「他児の母親と 他児」は,初回と同様非常に低くなっている。

初回と第2回目を比較すると「物」は,有意な

減少を示している(x2=15. 601, p<O. OOI)。一 方, 「保育者と他児」は,有意に増加を示して いる(x2=20.476,p<0.001)。

〈3回目〉

 第3回目は,母親のもとを離れるきっかけと して「物」カ・・全体の結の割合を占めてV・る・

初回からこれまでと同様に「他児」は,非常に 低い出現にとどまり,「他児の母親と他児」は,

出現がない。前回と比較すると「物」は,有意 な増加を示している⑰2=6.393,p<0.05)。ま た, 「保育者と他児」は,有意な減少を示して いる(κ2=6.629,p<O.05)。

N(%)

        回

ォっかけ 1 2 3 4 5 7 8 前 半 後 半

61(59.8) 17(27.9) 36(49.3) 6(17.1) 20(30.3) ll(30.6) 2(2.8) 153(34.5) 120(44.3) 33(19.1)

保  育  者 26(25.9) 15(24.6) 14(19.2) 13(37.1) 10(15.1) 6(16.7) 16(22。5) 100(22.5) 68(25.1) 32(18.5)

他      児 1(1.0) 2(33.3) 6(8.2) 6(17.1) 9(13.6) 8(22.3) 27(38.0) 59(13.8) 15(5.5) 44(25.5)

保育者と他児 13(12.7) 27(44.3) 17(23.3) 10(28.6) 27(40.9) 11(30.6) 26(36.6) 131(29.5) 67(4.1) 64(37.0)

他児の母親と他児 1(1.0) 0(0 ) 0(0 ) 0(O ) 0(0) 0(0 ) 0(0 ) 1(0.2) 1(0.4) 0(0 )

102 61 53 35 66 36 71 444 271 173

(6、9回は除く)

(12)

〈4回目〉

 第4回目は,これまで比較的高い数値を示し ていた「物」が,「他児」と同率で出現してい る。また,今回は「保育者」・「保育者と他児」

という保育者を介した場合が高い比率で出現し ていることが特徴的である。前回と比較すると

「物」が有意な減少を示している(x2 ・ 10. 304,

P<O.・Ol)。

〈5回目〉

 第5回目は, 「物」と「保育者と他児」が高 い比率で出現し,両者を合計すると全体の約70

%を占めている。一方,「保育者」・「他児」が 約15%前後の比率にとどまり,「他児の母親と 他児」は,出現がない。

〈7回目〉

 第7回目は,「物」・「保育者」・「他児」・「保育 者と他児」のいずれにも比率的には大きなかた

よりは見られない。 「他児の母親と他児」は,

出現がない。第5回目と比較すると「物」が,

有意な増加を示している(♂=7。021,p<O. 05)。

〈8回目〉

 第8回目は,これまで高い数値を示していた

「物」が,2.8%という非常に低い比率での出 現になっている。一方,「他児の母親と他児」が 高い比率で出現し,両者を合計すると全体の約 70%oを上回る。他児を介したきっかけが多くな ってきていることが特徴的である。前回と比較 すると「物」が,有意な減少を示している(X2

=17,220,p<0.001)。

 以上のことから,母親のもとを離れるきっか

表9 母親ものとへ戻るきっかけ

けとして,子どもの興味・関心が「物」であっ たものから,「保育者」へそして,保育者を介 在とした「保育者と他児」へと経過をたどるこ

とが明らかとなる。

〈母親のもとへ戻るきっかけ〉

 母親との間に距離をとって行動していた子ど もが,再び母親のもとへ戻る行動をとる場合に そのきっかけは何であるか。初めての場所や他 者に対する子どもの行動は,はじめのうちは母 親をSecure−Baseとしての行動をとると考え られる。そのため,精神的安定感を求めるため の「瞬間的接触」が多く出現すると思われる。

そして,時間の経過と初めての他者と場所に慣 れるにつれて,そのきっかけは変化していくも のと考えている。

 表9は,母親のもとへ戻るきっかけが,「他 児とのトラブル」・「保育者とのトラブル」・「母 親への物の呈示」・「母親に援助を求める」・「瞬 間的接触」のいずれであるかを頻度をもって測 定し,並びにその比率をまとめたものである。

 全観察を通して,「瞬間的接触」の出現が60

〜80%と高い比率を示している。「母親への物 の呈示」と「母親に援助を求める」は,類似し た傾向を示している。全観察を通して,いずれ のきっかけの場合も有意な変化は認められない。

 以上のことから,本研究における観察対象児 が,まだ母親から離れきれずに精神的安定感を 求める対象として母親を求める年齢といえよう。

また,「他児とのトラブル」の出現が低いこと は,3ケ月間の短い期間の観察のため,子ども

N(%)

        回

ォっかけ 1 2 3 4 5 7 8

前 半 後 半 他児とのトラブル 1(1.0) 1(1。6) 2(2.7) 0(0) 5(7.6) 0(0 ) 2(2,8) 11(2.5) 4(1.5) 7(4.0)

保育者とのトラブル 1(1.0) 0(0) 0(0) 0(0 ) 0(0 > 0(0 ) 0(0) 1(0.2) 1(0.4) 0(0 )

母親へ物の呈示 5(4.9) 8(13.1) 10(13.7) 11(31.4) 13(16.7) 6(16.) 10(14.1) 63(14.2) 34(12.5> 29(16.8)

母親に援助を求める 11(10.8) 3(4.4) 10(13.7) 3(8.6) 6(9.1) 4(1L7) 5(7.0) 42(9.5) 27(10.0) 15(8.7)

瞬間的接触 84(82.4) 49(80.3) 51(70.0) 21(60.0) 42(63.6) 26(72.1) 54(76.1) 327(73.6) 205(75.6) 122(70.5)

102 61 73 35 66 36 71 444 271 173

(6、9回は除⇔

一57一

参照

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