論文内容要旨(甲)
論文題名
Combined neuroprotective effects of propofol and
dexmedetomidine on endoplasmic reticulum stress-mediated apoptosis in SH-SY5Y cells
和文名 SH-SY5Y 細胞においてプロポフォールとデクスメデトミジンの の併用はタプシガルギンによる小胞体ストレス誘発性アポトーシ
スを抑制する
掲載雑誌名
The Showa University Journal of Medical Sciences Vol28, No3, 2016 年 掲載予定
病理系 薬理学(医科薬理学分野)専攻 染井 將行
従来より、鎮静にはベンゾジアゼピン系の薬剤が用いられてきたが、ベン ゾジアゼピン系の薬剤はせん妄を増加させることから、現在では使用を避 けるべきであるとされている。
プロポフォールは GABA 受容体作動性の薬剤で、全身麻酔や鎮静のため に用いられている。デクスメデトミジンは
α2 受容体刺激薬であり、呼吸
抑制が少なく、鎮静効果だけでなく鎮痛効果も持つ。プロポフォールとデ クスメデトミジンはせん妄が少なく、現在では人工呼吸中の患者の鎮静な どで広く用いられている。手術中に遭遇する虚血・再灌流では小胞体ストレス関連性アポトーシス を起こすことが知られている。プロポフォールとデクスメデトミジンは共 に単独での使用で虚血下での神経細胞保護効果があることが知られてい る。この二剤は単独だけでなく併用でも使用されているが、二剤を併用し た基礎的な細胞保護効果に関する研究はほとんど行われていない。本研究 はプロポフォールとデクスメデトミジンの併用が小胞体ストレス誘発性 アポトーシスを抑制するかを神経芽細胞腫である SH-SY5Y 細胞を用いて
調べたものである。
小胞体ストレスを誘発するためにはタプシガルギン(1μM)を用い、プロ ポフォール(1μM)とデクスメデトミジン(1nM,10nM,100nM)の単独処置、二 剤併用でのアポトーシス抑制効果を比較した。
タプシガルギン処置により caspase-3 活性、caspase-4 活性、CHOP、eIF2α リン酸化、細胞内 Ca2+濃度は有意に上昇したが、臨床使用濃度に近い濃度 のプロポフォールとデクスメデトミジンの処置で抑制された。またプロポ フォールとデクスメデトミジン(10nM)の併用では単独処置よりも有意な 抑制が認められた。
デクスメデトミジンによる caspase 活性、小胞体ストレス応答マーカー、
細胞内 Ca2+濃度の抑制は
α
2 受容体阻害薬であるアチパメゾール、cAMP 阻 害薬の処置によって阻害された。本研究の結果からデクスメデトミジンはα
2 受容体を介し細胞内 cAMP 濃度の上昇を抑制することで、小胞体内の Ca2+濃度の低下を抑制し、小胞体ストレスを抑制すると考えられた。これらの結果から、臨床使用に近い濃度でのプロポフォールとデクスメ デトミジンの併用は小胞体ストレス誘発性アポトーシスを抑制し、細胞保 護効果を発揮することが示された。