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2013 年前期分         制御工学第一ノート

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(1)

制御工学第一 ノート 2013 年前期分

               

熊本大学工学部 情報電気電子工学科 担当教員 教授 松永 信智

修正: 

March 25, 2013, Rev.1.5

(2)

目 次

はじめに 4

制御工学第一(前期)のシラバス

. . . . 4

制御工学第二(後期)のシラバス

. . . . 6

1回 自動制御の歴史と目的 8 1.1

自動制御の歴史

. . . . 8

1.2

制御対象の記述と制御の目的

. . . . 9

2回 ラプラス変換と逆ラプラス変換の基礎  14 2.1

微分方程式とラプラス変換の概要

. . . . 14

2.2

ラプラス変換の定義

. . . . 16

2.3

代表的な関数のラプラス変換

. . . . 17

2.3.1

ステップ関数のラプラス変換

. . . . 17

2.3.2

指数関数のラプラス変換

. . . . 17

2.3.3 t

のべき乗

×

指数関数のラプラス変換

. . . . 17

2.3.4 δ(t)

のラプラス変換

. . . . 19

2.3.5 sin(ωt)

のラプラス変換

. . . . 20

2.3.6

ラプラス変換表

. . . . 21

2.4

ラプラス変換と逆ラプラス変換の主な性質

. . . . 23

2.4.1

線形性

. . . . 23

2.4.2

微分と積分

. . . . 23

2.4.3

時間シフト

. . . . 25

2.4.4

初期値の定理・最終値の定理

. . . . 26

2.4.5

ラプラス変換の特徴のまとめ

. . . . 26

3回 微分方程式の解法 28 3.1

求積法

. . . . 29

3.2

ラプラス変換による方法

. . . . 31

3.3

部分分数展開

. . . . 32

3.3.1

ヘビサイトの方法-

D(s)

に重根がない場合

. . . . 32

3.3.2

ヘビサイトの方法-

D(s)

に重根がある場合

. . . . 35

(3)

3.5.1

単位ステップ入力(v

i(t) =u(t)),

初期値

vo(0) = 0

の場合

. . . 38

3.5.2

単位ランプ入力(v

i(t) =t),

初期値

vo(0) = 0

の場合

. . . . 39

3.5.3

単位ステップ入力(v

i(t) =u(t)),

初期値

vo(0) =v0

の場合

. . 40

4回 制御対象のモデル化 41 4.1

機械系の運動方程式

. . . . 41

4.2

機械系における作用と反作用

. . . . 43

4.3

電気と機械のアナロジー

. . . . 45

4.4

線形近似

. . . . 46

4.4.1

機械系の微分方程式

. . . . 46

4.4.2

水位系の微分方程式

. . . . 47

4.5

重力の影響

. . . . 49

5回 伝達関数とその定義 50 5.1

伝達関数の特徴

. . . . 50

5.2

初期値の扱い

. . . . 52

5.3

伝達関数の導出の手順

. . . . 53

6回 時間領域の伝達関数の計算―畳み込み積分 54 6.1

時間領域での要素

G(s)

の応答計算

. . . . 54

6.2

矩形波による畳み込み積分

. . . . 57

6.2.1

ラプラス変換に基づく方法

. . . . 57

6.2.2

畳み込み積分の定義式に基づく方法

. . . . 59

6.3 s

領域での畳み込み積分

. . . . 61

7回 微分方程式とブロック線図 63 7.1

微分方程式をブロック線図に変換する

. . . . 63

7.2

ブロック線図の等価変換

. . . . 66

7.2.1

直列結合

. . . . 66

7.2.2

並列結合

. . . . 67

7.2.3

フィードバック結合

. . . . 68

7.2.4

加え合わせ点の結合,分離・移動

. . . . 68

8回 伝達関数の一般形と要素 71 8.1

伝達関数の一般系

. . . . 71

8.2

伝達関数の要素

. . . . 72

8.2.1

比例要素

. . . . 72

8.2.2

積分要素

. . . . 72

(4)

8.2.6

むだ時間

. . . . 76

9回 基本的な伝達関数の過渡応答 78 9.1

積分器の過渡応答

. . . . 78

9.2

一次遅れ要素の過渡応答

. . . . 78

9.3

二次遅れ要素の過渡応答

. . . . 81

9.3.1

インパルス応答

. . . . 82

9.3.2

インディシャル応答

. . . . 83

9.4

各種応答波形のまとめ

. . . . 87

10回 閉ループ系の過渡応答 88 10.1

伝達関数の極

. . . . 88

10.2

極の配置と過渡応答波形

. . . . 90

10.3

零点とその影響

. . . . 91

11回 制御工学第一の復習 94 11.1

微分方程式とラプラス変換

. . . . 94

11.2

伝達関数とブロック図

. . . . 95

11.3 s

領域での畳み込み積分

. . . . 95

11.4

制御系とその特性

. . . . 96

11.5

制御工学第一の流れ

. . . . 98

(5)

はじめに

本冊子は,(熊本大学情報電気電子工学科)2 年時,制御工学第一および第二の授業の ために執筆したものである。本学科では,2年時前期にモデリングと伝達関数を中心 とした制御工学第一を,後期に設計論を中心とした制御工学第二を開講している。ま ず,本講義において公開しているシラバスを紹介することで,本講義の目標・目的を 示す。

各シラバスを列記するが,前期で数学とモデリングの基礎を,後期で分析・設計の基 礎を行う。工学の正確な理解のためには数学が不可欠であり,それは電力,コンピュー タ,回路など分野を問わない。

制御工学第一のシラバス

◆バックグラウンド

制御技術はあらゆる産業に用いられてわが国の経済成長を支えた基幹技術である。産 業界の様々なシステムを動的システムとして統一的に捉え,目的を達成していく制御 手法を身につけることは,科学的な物の見方と問題解決の素養を養う上で重要である。

本講義では,このようなシステム的な問題解決の入門として,物理システムの動特性 を表現してその特性を数理的に解析するために有用な伝達関数の概念に基づく制御工 学の基本について理解することを目的とする。

◆学習の目標

(1)

実際の動的システムの挙動を常微分方程式で記述できる。

(2)

システムを伝達関数で記述でき、代表的な系の動特性を解析する。

(3)

簡単なフィードバック制御系が設計でき,その動特性の特徴を理解する。

◆目標

物理的なシステムを数学的なモデルで表現すること,および数理的に解析・設計する ための基本的な手法をフィードバック制御理論の基礎として学習する。

(15 回分の実施予定)

(6)

3.

ラプラス変換と逆ラプラス変換

4.

ラプラス変換と逆ラプラス変換の主な性質

5.

微分方程式の解法

6.

制御対象のモデル化

7.

伝達関数の定義

8.

伝達関数の応用

9.

畳み込み積分

10.

微分方程式とブロック線図

11.

ブロック線図の等価変換

12.

伝達関数の一般型

13.

基本的な伝達関数と要素

14.

フィードバック制御系の過渡応答

15.

まとめ

このノートの使い方

授業では教科書の説明ではなく,ノートの流れに沿った授業をします。皆さんは,講 義をきき,ノートの空白部を埋めていけば授業のポイントが分かり易くなります。

予習

まず,ノートを事前に印刷しノートを読んで,どんなことを勉強するか簡単にフォ ローしてください。

授業

授業のノートを取りながら理解ください。

復習

教科書のどこが,授業されたかを見直してください。教科書の例題を理解のため に解いてください。試験問題は,教科書を中心として選定します。

教科書はもちろん予習や授業で引用しますが,主に事後の復習に使つて行きます。特 に,このノートを完成させるための「復習」に使ってください。

教科書は平易な「制御工学を利用する立場で書かれた教科書」をあえて選定してま

す。授業は,あるとき細かい説明をしますが,学生は全体のストーリを常に意識して

(7)

制御工学第二のシラバス

また,関連項目として,2年後期の制御後第二のシラバスを示す。

制御後第二は後期で,システム設計に重点を移しフィードバックの設計法を示す。制 御工学第一,同第二の一連の学習の中で簡単な制御系設計ができるようになる。

◆バックグラウンド

制御技術はあらゆる産業に用いられてわが国の経済成長を支えた基幹技術である。産 業界の様々なシステムを動的システムとして統一的に捉え、目的を達成していく制御 手法を身につけることは、科学的な物の見方と問題解決の素養を養う上で重要である。

本講義では、 「制御工学第一」に続き、自動制御の基礎的事項について、とくに古典制 御理論に基づく問題の捉え方と解決法を理解し、システムの評価や所望のシステムを 実現する設計手法を学ぶ。

◆学習の目標

(1)

代表的なシステムの周波数応答特性を理解する。

(2)

システムの応答性、安定性が分析できる。

(3)

簡単なフィードバック制御系が設計でき、その動特性の特徴を理解する。

◆目標

制御の基礎概念を復習後、フィードバック制御系の特性解析と設計法を根底に流れる 考え方に重点を置いて、古典制御理論としての体系化された内容を取り扱う。制御工 学第二では,システム解析に重点をおいて講義し,簡便なフィードバック制御法につ いて説明する。

(15 回分の実施予定)

1.

ガイダンス

2.

システムの極と零点

3.

安定性の定義

4.

ラウス・フルビッツの安定判別法

5.

周波数応答

6.

ベクトル軌跡の基礎

7.

ベクトル軌跡

(8)

11.

ボード線図の応用

12.

制御系の定常偏差

13.

極配置法

14. PID

制御

15.

まとめ

◆参考文献

「システムと制御 第2版 上・下」高橋安人 著,岩波書店

「モデリングとフィードバック制御」古田勝久他著,東京電機大学出版局

「自動制御」,水上憲夫,朝倉書店

◆関連科目

この講義は古典制御理論のみの構成になっているが,3年次で開講される「制御系設 計論」で扱われる現代制御理論により,制御工学の基礎ができるので,この講義の後 に「制御系設計論」の履修することを勧める。

関数論,微分方程式などに関する知識が必要であり,関連する科目として,物理学

第一,電磁気学,電気回路

I,電気回路II

を履修することが望ましく,また、制御工学

第二,微分方程式,フーリエ解析,制御系設計論,情報機械システム,生態情報シス

テムなどと関連している。

(9)

1 回 自動制御の歴史と目的

1.1

自動制御の歴史

人類は,水や火など自然の動力を利用してきたことはよく知られており,早くもギ リシャ時代のクテシビオスの水時計,ヘロンの酒つぎなどのからくりには自然力を利 用して一定の時間を刻んだり,動力を利用するからくりが使用されていた。このよう な知識は,古くは数学者や神学者,職人や技師などの限られた中で経験として継承さ れてきた。

その後,1700 年代に商工業が劇的に発展すると,石炭を利用した蒸気機関が発明さ れるといままでどおりの伝統的な手法では対応が困難になってきた。1776 年にワット が蒸気機関の改良を行ったが,蒸気機関に接続する負荷の状況により回転数が一定に ならないため,紡績工場などの大量生産の現場から工夫がもとめられていた。1788 年 に,ワットは回転数が下がると蒸気量を増やすバタフライ弁制御機構,すなわち自動 調速機(ガバナ)を考案した。図

1.1

にガバナの構成を示す。

1.1:

ガバナの例

(10)

2.

遠心力で錘が上がる

3.

スリーブが上昇する(てこの原理でバタフライ弁に伝達)

4.

バタフライ弁を閉じる

5.

上記の量が減る

6.

回転数が下がる

その後,ガバナで用いられたフィードバック制御の概念は様々な利用がされていく が,高圧蒸気により不安定になる新たな問題も発生してきた。この大きな原因は,制 御に関する統一的な理論(数学的な解析や設計)が整備されてなかったためである。そ の後,1877 年のラウスの安定理論,1895 年のフルビッツの安定理論が発表された。ま た,1900 年代に入ると蒸気から電気式に変換し,電気制御に対応すする制御理論が提 案されてくる。1930 年にボードの提案した負帰還増幅器がその代表である。1932 にナ イキストの安定理論,1952 年にエバンスによる根軌跡法を確立した。このような制御 に関する理論を古典制御理論と呼ぶ。

第二次世界大戦がはじまると,ミサイルなどのさらに高度な制御が求められることと なる。1948 年にウイナーが動物と機械における制御と通信に関するサイバネティクス 理論を提案している。1956 年にはポントリヤギンによる最大原理が提案されると,最 適制御の研究が盛んとなり,これらの研究は古典制御に対して現代制御理論と呼ばれ る。その後,コンピュータの時代になり,現代数学を駆使した制御系設計論の研究が 盛んになり,現在に至っている。

制御工学は,システムの安定性・最適性を追い求めており,ある物に対する設計ノ ウハウというよりは数学をベースとする学問である。従って,全く違う物であっても 数学的に同じ構造を持つ物は同じ解になるのが特徴である。

1.2

制御対象の記述と制御の目的

自動制御とは, 「ある目的に適合する操作を自動的に行うこと」であり,それを行う ものが自動制御装置である。ある物を思い通りに操作するためには,まず制御対象(制 御を行う対象物,機械など)の構造や制御系の機能を把握する必要がある。

1.2

に温度「調節係のおじさん」による自動制御の例を示す。教室内の温度を

20

度に保つようにおじさんが温水弁を寒いときは開け,暑いときは閉める。おじさんが

室外にいる場合は屋外温度をモニタして適度に調節する。しかし,外気温の変化,日

射,風,窓の開閉,学生の数など条件によって,調整のしかたが異なる。このような

条件の変化を外乱と呼ぶ。図

1.2

の制御例を図的に表現したものを図

1.3

に示す。おじ

さんの目標の温度を設定し,室内温度を調整する制御法はフィードフォワード制御と

(11)

ݺᬔ ኵἿ᫊ᫌኵἿ᫊ᫌ

ݺᬔ

៣௟ЛἿ ݰ๟༝

ἛἩἦὤ

ࠓᄀἿ ἛἩἦὤ α௝

1.2:

調節係のおじさん:その1

༝๣७ ௖࠱

༝ॄផ Υ

ἛἩἦὤ

Ԟিࡠᡈ

 Ỉὶ㔞㻌

 ᗘィᣦ♧䠖㻌

ᘚ㛤ᗘ㻌 ᧯స㔞 ไᚚ㔞

┠ᶆ್

Ԟি᜷ᑔ

እ஘

x )

(t

r r-x

ไᚚ೫ᕪ x(t)

༝๣७ ௖࠱

20Υ

䠇 䠇

ἛἩἦὤ Ԟিࡠᡈ

 Ỉὶ㔞㻌

ᘚ㛤ᗘ㻌 ᧯స㔞 ไᚚ㔞

┠ᶆ್

Ԟি᜷ᑔ

እ஘

) (t r

) (t x

༝ॄផ

1.3:

フィードフォワード制御

rx

を制御偏差と呼ぶ。ここでは,先ほど述べた外乱がどの様なものかは関係なく,

単に室内温度の上下動により一定温度に出来ることに気がつく。図

1.4

の制御例を図 的に表現したものを図

1.5

に示す。教室温度が高くなると弁を閉め,低くなると弁を開 ける。 「弁を開ける→温度計が上がる」といったように情報が一回りする。このような フィードバック制御を負のフィードバックと呼ぶ。

ここで,図

1.3

のフィードフォワード制御と図

1.5

のフィードバック制御を比べてみ

よう。フィードフォワードは外乱が測定できその特性が既知な場合は制御できるが,教

室のような外乱が定量的に測定出来ない場合は不向きである。陽が射したり・外気温

が下がったりしても,フィードバックでは情報が一回りすることで外乱の影響を自動

的に抑制する。外乱が測定できない未知の外乱であっても,気にしなくて良い。

(12)

ݰΌ

៣௟ЛἿ ἛἩἦὤ ἛἩἦὤ

1.4:

調節係のおじさん:その2

制御量

y:温度や角度など制御したい量

目標値

r:外部から与えられる指令値であり,制御量の目標となる値

検出量

ym

:制御対象から検出される量

検出信号

w:温度計など検出器から得られる量

操作量

um

:操作器の動く量

操作信号

u:操作器の動きを指示する信号

外乱

d:制御量の変動を引き起こすような操作量以外の信号

観測雑音

dm

:検出器に加わる雑音

もし,制御対象の重さや摩擦など物理パラメータがわかっていれば,現代科学を駆使

すれば微分方程式を使ってさらに細かな数学モデルを記述することも可能であり,ま

た内部でおこる化学反応がわかれば化学反応モデルを作ることも可能であろう。しか

し,制御対象の把握のためには,その把握のための労力を考えると,制御目的を達成

しうる限りできるだけ単純にすることが望ましい。以後,制御対象の構造や特徴を記

(13)

ᘚ㛤ᗘ ᧯స㔞 ไᚚ㔞

༝ॄផ እ஘

༝๣७ ௖࠱

䠇 䠇

 Ỉὶ㔞

ᘚ㛤ᗘ ᧯స㔞 ไᚚ㔞

┠ᶆ್

ἛἩἦὤ Ԟিࡠᡈ

 Ỉὶ㔞

Ԟি᜷ᑔ

እ஘

Ԟি᜷ᑔ

ἛἩἦὤ ᘚ㛤ᗘ ᧯స㔞 ไᚚ㔞

┠ᶆ್

༝๣७ ௖࠱

20℃

Ԟিࡠᡈ

 Ỉὶ㔞

) (t

r rx

ไᚚ೫ᕪ x(t)

༝ॄផ

Ԟিࡠᡈ

 ᗘィᣦ♧䠖

) (t

r x

Ԟি᜷ᑔ

x

1.5:

フィードバック制御

1.6:

一般的な制御対象

所望の特性を得るためのもっとも簡単な制御則はオン・オフ制御である。例えば,図

1.7

に示すようにプ部屋の温度を検出し,エアコンによるフィードバック制御を行う。

オン・オフ制御は,目標値との温度の誤差

e=ry

を求め,その誤差の符号に対して 操作する方法であり,もっとも簡単なコントローラ

C

を次式に示す。

u=

K <0 , y > r

0 , y = 0

+K >0 , y < r

(1.1)

このように,e <

0

のとき

u >0,e >0

のとき

u <0

とすることで

e

0

になる。

定性的には,上記のようなフィードバックをほどこすことにより所望の特性を得る

ことが可能ではあるが,必ずしも上記のような簡便な制御で室温制御ができるとは限

らない。

(14)

y

r t

t

u +K

-K

1.7:

簡単なオンオフ制御の例

れ数学的な記述されたコントローラと,制御対象を示す。

[O] = [C]×[P] (1.2)

本講義では,制御工学の基礎として,伝達関数で記述された

[P]

に対して,位相進み遅 れ補償や

PID

などのコントローラ

[C]

を設計することで,例えば目標値に対して定常 偏差を

0

とするような目標

[O]

を達成するような基本的な設計ができることを目的とし ている。

制御対象P の記述:

 制御対象を,伝達関数として表現する

コントローラCの設計:

 制御系の分析手法,制御対象

[P]

のモデルに対し

C

をどの ように設計するか?

制御対象

P

の設計に関しては,前期の制御工学第一で,C の設計に関しては後期の制

御工学第二で講義する。制御工学第一,第二で扱う代表的なフィードバックコントロー

ラを図

1.8

に示すが,まずこのブロック線図を憶えて欲しい。

(15)

2 回 ラプラス変換と逆ラプラス変換 の基礎 

制御対象をモデリングする際には,微分方程式で記述する。微分方程式を解く際に ラプラス変換の威力が発揮される。

ラプラス変換を使う目的は,積分を陽に扱わずに楽に求解することができることに あろう。本章の目的は,ラプラス変換の定義を明らかにし,代表的なラプラス変換の 事例を示す。なお,試験においては,ラプラス変換表は与えないので,最終的には最 小限の暗記が必要である。

2.1

微分方程式とラプラス変換の概要

いま,図

2.1

に示す簡単な電気回路を考える。

2.1:

簡単な

RC

回路

図の電流

i

は次の微分方程式で記述される。

i(t) = Cdv

dt (2.1)

Ri(t) +v(t) = E (2.2)

定常状態で,

dq(t)

dt = 0

なので

vs(t) = E。

他方,過渡状態で

dv(t)

(16)

積分すると

logvt(t) = 1

RCt+c (2.5)

vt(t) = AeRC1 t (2.6)

t→ ∞

vt(t)

0

に収束するので,v

(t) =vt(t) +vs(t)

とおくと

v(t) = E+AeRC1 t (2.7)

t= 0

v = 0

なので,A

=E

よって

v(t) = vt(t) +vs(t) =E(1eRC1 t) (2.8) i(t) = Cdv

dt = E

ReRC1 t (2.9)

この常微分方程式をラプラス変換で解く方法を示す。なお,詳細は第3回で説明す るが,変換の簡便さを体感してほしい。E を定電圧

E

のステップ入力として,式

(2.2)

の初期値

0

でラプラス変換すると

RCsV(s) +V(s) = E s

V(s) = E

s(RCs+ 1)

= E

s RCE RCs+ 1

逆ラプラス変換すると,

v(t) = L1(E

s)− L1( E

s+RC1 ) = E(1eRC1 t) (2.10) i(t) =Cdv

dt = E

ReRC1 t (2.11)

上記のように,ラプラス変換により微分方程式を代数方程式に変換することで,微分

方程式を簡単に解くことができる。以下,ラプラス変換の定義と代表的なラプラス変

換について述べる。

(17)

2.2

ラプラス変換の定義

ラプラス変換を定義する前に,理解を容易にするためにまずフーリエ変換を定義す る。任意の周期関数は三角関数の和で表されることが知られており,フーリエ級数と して知られている。

f(t) = 1 2a0+

n=1

(ancosnωt+bnsinnωt) (2.12)

ここで,三角関数をオイラー表示すると,上式は

f(t) =

−∞

Cnejnωt (2.13)

と表すことができる。非周期関数に対しては,周期

T

まで拡張し,各周波数を無 限小にすることで,次のフーリエ積分を得る。

f(t) = 1

−∞{

−∞f(t)ejnωtdt}ejnωt (2.14)

上式の括弧内はフーリエ変換と呼ばれ

F(jw) =

−∞f(t)ejnωtdt (2.15)

フーリエ変換

F(jω)

により,時間関数

f(t)

は周波数領域で変換でき,周波数成分の解 析に用いることができる。

しかし,時間領域関数

f(t)

が周期関数であればよいが,ステップ関数のような時間 関数の場合には

F(jw)

は発散する。そこで,時間関数

f(t)

γ(t) =eσt (0t)

を導 入する。

f(t)γ(t) = 1

−∞{

−∞f(t)γ(t)ejnωtdt}ejnωt (2.16)

であり,両辺に

γ1(t)

をかけて整理すると

f(t) = 1

−∞{

−∞f(t)e(σ+jnω)tdt}e(σ+jnω)t (2.17)

上式に,s

=σ+jnω,jdω =ds

を代入すると

f(t) = 1 2πj

σ+

σ−∞ {

−∞f(t)estdt}estds (2.18)

括弧の中に注目し,f

(t) = 0, t >0

の関数に対して

F(s) =

0

f(t)estdt (2.19)

を定義することができる。上式は,時間関数

f(t)

のラプラス変換であり

F(s) =L[f(t)]

と表す。

(18)

2.3

代表的な関数のラプラス変換

2.3.1

ステップ関数のラプラス変換

ステップ関数とは

t0

で一定値

c

となる関数。

f(t) = c, t0 (2.21)

L[f(t)] =

0

cestdt (2.22)

= [c

sest]0 = 0(c

s) =c1

s (2.23)

2.3.2

指数関数のラプラス変換

f(t) = cept

t0 (2.24)

L[f(t)] =

0

ceptestdt=

0

ce(sp)tdt (2.25)

= [ c

spe(sp)t]0 = 0( c

ps) = c

sp (2.26)

なお,p

= 0

のとき

f(t) = ce0 =c

は,L

[f(t)] = c

s

となり(2.23)の結果に一致する。

2.3.3 t

のべき乗

×

指数関数のラプラス変換

f(t) =tkept

t0 (2.27)

下記の部分積分を利用する。

h(t)g(t)dx=h(t)g(t) h(t)g(t)dt (2.28)

h(t) = tk 1

(sp)

(sp)t

(19)

定義式より,

L[f(t)] =

0

(tkept)estdt(=

0

h(t)g(t)dt) = [h(t)g(t)]0

0

h(t)g(t)dt

= [tk 1

(sp)e(sp)t]0

0

ktk1 1

(sp)e(sp)tdt

= Ik (2.29)

[tk 1

(sp)e(sp)t]0 = 0

であるので,

Ik =

0

ktk1 1

(sp)e(sp)tdt (2.30)

とおく。

他方,(2.27) で

k1

の場合を計算すると,

Ik1 =

0

(tk1ept)estdt =

0

tk1e(sp)tdt (2.31)

また,(2.30) の右辺を

Ik1

で記述すると

Ik =

0

ktk1 1

(sp)e(sp)tdt

= k

(sp)

0

tk1e(sp)tdt= k

spIk1

(2.32)

の漸化式を得る。いま,k

= 0

の場合は,f

(t) = t0ept = ept

より

L[ept] = 1

sp (式

(2.26)) なので,

I0 = 1

sp (2.33)

以下,k

= 1

から

(2.32)

より求めると,

I1 = 1

spI0 = 1

(sp)2 (2.34)

I2 = 2 1

spI1 = 2×1

(sp)3 (2.35)

I3 = 3 1

spI2 = 3×2×1

(sp)4 (2.36)

Ik = k 1

spIk1 = k!

(sp)k+1 (2.37)

(20)

2.3.4 δ(t)

のラプラス変換

デルタ関数のラプラス変換はいくつかの導出法があるが,本講義では,次の定義を 用いて導出する方法を示す。ほかの方法は成書を参考のこと。矩形波の幅を

∆T

とし て,次の関数を考える。

f(t) =

1

∆T, ∆T > t >0 0, otherwise

(2.39)

面積が

1

の方形波を考える(図

2.2)。幅∆T

が無限小,高さが無限大の波形を

δ

関数 と呼ぶ。このラプラス変換を求めると,

L[f(t)] =

∆T

0

1

∆Testdt (2.40)

= [est

s∆T ]∆T0 = es∆T (e0)

s∆T = 1es∆T s∆T

L[δ(t)] = lim

∆T0

1es∆T s∆T 0

0 (2.41)

0/0

の不定形になるので,分母分子を

∆T

で微分して

L[δ(t)] = lim

∆T0

ses∆T s = s

s = 1 (2.42)

㠃✚䠍 ᖜ

→0

㧗䛥→

DT 1

T D

¥

2.2: デルタ関数

(21)

2.3.5 sin(ωt)

のラプラス変換

オイラーの公式は,半径1の場合

ejωt = cos(ωt) +jsin(ωt) (2.43)

となる。

sin(ωt)= ejωtejωt 2j cos(ωt) = ejωt+e−jωt

2

この関係を用いると,sin(ωt) の

L

変換が求まる。

L[sin(ωt)] =

0

sin(ωt)estdt=

0

ejωtejωt

2j estdt (2.44)

= 1 2j[

0

(e(sjω)te(s+jω)t)dt

= 1 2j[ 1

se(sjω)t( 1

s+e(s+jω)t)]0

= 1 2j[ 1

s 1

s+] = 1

2j[(s+jω)(sjω) (s+jω)(sjω) ]

= 1 2j

2jω

s2+ω2 = ω s2+ω2

Re Im

A

|A|sinș

|A|cosș ș

2.3:

オイラーの公式

(22)

2.3.6

ラプラス変換表

基本信号

f(t)

のラプラス変換表を表

2.1

に示す。表において,f

(t)

から右に見て

F(s)

を求めるのがラプラス変換,F

(s)

から

f(t)

を求めるものがラプラス逆変換である。

2.1: Laplace transform table

Item No. f(t) F(s)

1 δ(t) 1

2 u(t) 1

s

3 tu(t) 1

s2

4 tnu(t) n!

sn+1

5 eatu(t) 1

s+a

6 sin(ωt)u(t) ω

s2+ω2

7 cos(ωt)u(t) s

s2+ω2

なお,u(t) は

t0

で大きさ1の関数(単位ステップ応答,後述)である。ラプラス

変換は

t 0

で定義されることに注意する。

(23)

■解析的延長

2.3

節で代表的な関数のラプラス変換を定義したが,少し説明を加える。

下記の無限積分が,少なくとも一つの

s

に対して収束するとき, 「ラプラス変換 可能」であるという。

I =

0

f(t)estdt

Re(s) > a

で積分が収束するが,Re(s)

< a

で収束しない場合,Re(s)

> a

を 収束域と呼ぶ。積分値

I

は,s の関数だが収束域で正則になる。

さらに,関数を収束域の外側に,解析的に延長することができる。そこで,解 析的延長を行い得られる解析関数を,改めて

F(s) =L(f(t))

とおき,f(t) のラ プラス変換とよぶ。

ᏳᐃⅬ ୙ᏳᐃⅬ

⥺ᙧ㏆ఝ

A

Im

Re

཰᮰ᇦ

F(s) I

2.4:

解析的延長

(24)

2.4

ラプラス変換と逆ラプラス変換の主な性質

微分方程式を解くためには,微分や積分などの変換方法および変換の性質について 明らかにする必要がある。

2.4.1

線形性

L[f1(t)] = F1(s) (2.45)

L[f2(t)] = F2(s) (2.46)

のとき,次の式が成立する。

L[f1(t) +f2(t)] = F1(s) +F2(s) (2.47)

また,a が定数のとき

L[af1(t)] =aF1(s) (2.48)

2.4.2

微分と積分

微分

F(s) = L[f(t)] =

0

f(t)estdt (2.49)

g(t) =

estdt=est s h(t) = f(t)

として部分積分法を用いると

F(s) =

0

h(t)g(t)dt (= [h(t)g(t)]0

0

h(t)g(t)dt)

= [f(t)(est

s )]0

0

df(t)

dt (est s )dt

= [f(t)(est

s )]0 + 1 s

0

df(t)

dt estdt (2.50)

参照

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