ミクロ経済学
II(2) 比較優位による分業の利益
丹野忠晋
拓殖大学政経学部 2018 年 10 月 3 日
ミクロ経済学 II 2 2 2018/10/3
復習
生産可能性フロンティアとは生産要素を効 率的に使ったときの生産物の組み合わせ
生産可能性フロンティアの傾きは機会費用
生産可能性フロンティアは外側にシフトす ることは豊かになる
絶対優位とは他に比べてある財をより効率 的に生産できることを意味
ある財が他国と比べ相対的な費用が低い場 合にその国はその財に比較優位があると言 う
数学のけいこ:傾き
直線は,右上がり,右下がり,急,平らと いう様々なある方向へ進む傾向を持つ
直線の傾斜の度合いを傾きという
例えば,点 (2,8) から点 (3,6) を通る直線の傾 き
● ヨコの変化 =3-2=1 ● タテの変化 =6-8=-2 タテの
変化傾き=
ヨコの 変化
ミクロ経済学 II 2
2018/10/3 3
タテの変化 6 -8 -2
傾き= =
= = -2
ヨコの変化 3 - 2
数学のけいこ:傾き
2 傾きが正 → 右上がり ( 赤 )
傾きが0 → 水平 ( 黄 )
傾きが負 → 右下がり ( 青 )
傾きが無限大に近づく → 垂直 ( 紫 )
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2018/10/3 4
数学のけいこ:絶対値
絶対値は数の大きさを表す
言わば原点からの距離です
プラスやゼロはそのまま,マイナスは符号を取る
3の絶対値は3.記号で |3|=3 と書きます
例えば, |0|=0 , |-4|=4
傾きの絶対値が大きくなると直線は急になる
赤よりも青が急だ!
傾きプラス 傾きマイナス
一番にならなくても大丈夫
トレードオフの存在は他人に依存する
交換は人々を豊かにする
自分の機会費用は分かった
優秀な人はインセンティブで金持ちに
能力のない人はどう生きていく?
能力のある人も 24 時間しかない
人々の活動の機会費用は異なっている
その違いが選択のヒントを与える
その鍵を教えてくれるのが比較優位
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分業と貿易
社会が豊かになるカギは分業 (division of labor)
アダム・スミスのピンの例
国家間でも同様に分業を行っている
日本はサウジアラビアから原油を輸入
日本はアメリカに自動車を輸出
企業間でも同様
ユニクロは中国,ベトナム,バングラデシュ,イン ドネシアに生産パートナーを持っている.リンク
分業と特化
日本は自動車を作りつつ原油採掘に精を出すこ とはしない
個人,国家,企業は各々自分の得意な分野で活 動を行っている.これを特化という
特化とはある特定の部分に重点を置くこと
ある分野に秀でている人=絶対優位を持ってい る人がいる.そうじゃない人も大丈夫!
これから示す比較優位を持つ活動に特化して,
交換を行うことにより人々の暮らしは良くなる
2018/10/3 ミクロ経済学 II 2 8
浦島太郎と桃太郎がサンマとマツタケを作 る
浦島太郎と桃太郎がいるサンマとマツタケを捕る
浦島太郎がサンマだけを捕れば 32 匹,マツタケだ けを 8 個取ることができる
同様に桃太郎がサンマだけを捕れば 48 匹,マツタ ケだけを捕れば 24 個
桃太郎は全てに秀でている
マツタケ ( 個 ) サンマ ( 匹 )
浦島太郎 8 32
桃太郎 24 48
浦島太郎の存在 意義は?
二人の生産可能性フロンティアを重ねてみ
マツタケ
る
( 個 )
サンマ ( 匹 )
0 32
8
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2018/10/3 10
16 A
48 24
24
C 桃太郎の生産可能性フロンティア
浦島太郎の生産可能性フ ロンティア
桃太郎は浦島太郎が生産できる ものは生産できる.生産可能 性フロンティアの傾きが違う
浦島太郎の生産可能性フロンティア
マツタケ ( 個 )
サンマ ( 匹 )
0 32
8 4
16
生産可能性フロンティアの傾きの大きさ ( 絶対値 ) は機会費用を意味した
A
B
A 点から B 点への変化
傾きの大 きさは
1 4
タテの変化 4 - 8 - 4 1
傾き= = = = -
ヨコの変化 16 - 0 16 4
桃太郎の生産可能性フロンティア
マツタケ ( 個 )
サンマ ( 匹 )
0 48
24
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2018/10/3 12
12
24 C
D
C 点から D 点への変化
傾きの大 きさは
1 2
タテの変化 12 -24 -12 1
傾き= = = = -
ヨコの変化 24 - 0 24 2
両者の機会費用の違い
浦島太郎の生産可能性フロンティアの傾きの大き さは 1/4
サンマを 1 匹増やすためにはマツタケを1/4個 犠牲にしなければならない
桃太郎の生産可能性フロンティアの傾きの大きさ は 1/2
サンマを 1 匹増やすためにはマツタケを1/2個 犠牲にしなければならない
浦島太郎のサンマの機会費用<
桃太郎のサンマの機会費用
当初は自給自足していた桃太郎達
最初は浦島太郎と桃太郎は自分でサンマとマツタケを 採って消費していたとしよう
交換はしていないケース
例えば,各々半分のサンマとマツタケを採っていたと しよう
浦島太郎は B 点で生産.サンマ 16 匹,マツタケ 4 個
桃太郎は D 点で生産.サンマ 24 匹,マツタケ 12 個
サンマは合計 40 匹,マツタケは合計 16 個採れる
この場合は自給自足という.生産と消費は等しい
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浦島太郎の生産可能性フロンティア
マツタケ ( 個 )
サンマ ( 匹 )
0 32
8 4
16 A
B
浦島太郎の当初の生産と消費
桃太郎の生産可能性フロンティア
マツタケ ( 個 )
サンマ ( 匹 )
0
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2018/10/3 16
48 24
12
24 C
D
桃太郎の当初の生産と消費
桃太郎は両方の財に絶対優位にあ
る
桃太郎は浦島太郎よりもサンマとマツタケの両方 についてより多くの収穫を得ることができる桃太郎はサンマだけを採れば 48 匹.浦島は 32 匹
桃太郎はマツタケだけを採れば 24 個.浦島は 8 個
この時,桃太郎は両方の財に絶対優位にある
ある財を生産するのにより少ない投入量しか必要 がない生産者は,その財の生産に関して絶対優位 を持っているという
二人の生産可能性フロンティアを重ねてみ
マツタケ
る
( 個 )
サンマ ( 匹 )
0 32
8
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4
16 A
B
48 24
12
24 C
D
桃太郎の生産可能性フロンティア
浦島太郎の
生産可能性フロンティア
マツタケの機会費用は桃太郎の方が低 い
桃太郎は両方の財の生産が得意なので浦島太郎は何もすることがない?
浦島太郎の得意な活動は何だろう?
桃太郎よりも機会費用が低いサンマを採ることだ
反対に桃太郎のマツタケを採ることの機会費用は浦 島太郎よりも低い
桃太郎は 1 匹のサンマを採るために1/2個のマツ タケの収穫を諦めていた
逆に,桃太郎は 1 個のマツタケを増やすにはサンマ を 2 匹諦めなければならない
サンマの量:マツタケの量=1:1/2=2:1
サンマ 1 匹が 2 匹になったら,マツタケは1/2個 を 2 倍する.マツタケは 1 個
浦島太郎は 1 匹のサンマを採るために1/4個のマ ツタケの収穫を諦めていた
逆に,浦島太郎は 1 個のマツタケを増やすにはサン マを4匹諦めなければならない
サンマの量:マツタケの量=1:1/4=4:1
サンマ 1 匹が 4 匹になったら,マツタケは1/4個 を4倍する.マツタケは 1 個
2018/10/3 ミクロ経済学 II 2 20
マツタケの機会費用は桃太郎の方が低
い
桃太郎のマツタケの機会費用は2 <
浦島太郎のマツタケの機会費用は 4
桃太郎はマツタケの生産に比較優位を持っている
一方,浦島太郎はサンマ生産に比較優位を持つ
機会費用の比較
機会費用
マツタケ生産 (1 個 ) サンマ生産 (1 匹 )
浦島太郎 4 1/4
桃太郎 2 1/2
言い換えると機会費用の低い財に生産者は比較優位を持つ
一人の生産者が両方の財に比較優位を持つことはありえな い ( 同じ機会費用を持つことはある )
計算したようにある財の機会費用は,他方の財の機会費用 の逆数となっている
浦島太郎:1/4→4,桃太郎:1/2→2
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比較優位
ある財を生産するのに他の財をより少ししか諦め ない生産者は,その財の生産に関して比較優位を 持っているという
二人が同じ機会費用を持っていない限り,一人がある財 に比較優位を持ち,他方が残りの財に比較優位を持つ
つまり,浦島太郎はサンマ漁に,桃太郎はマツタケ狩り に比較優位を持っている
浦島太郎はサンマ漁に専念して,桃太郎はマツタケ狩り に専念して交換することに合意!
その後,両者で各々の獲物を交換することにより両者は 豊かになれる
ある活動に専念することを特化という
比較優位と特化
新しい生産パターン,交換,消費を考える
浦島太郎がサンマを 32 匹採る.
マツタケは採らない. E 点とする
桃太郎はサンマを 12 匹採る.
マツタケは 18 個採る. F 点とする
サンマは合計 44 匹,マツタケは合計 18 個採れる
この時,自給自足の場合よりも両財の生産量は多 くなる
2018/10/3 ミクロ経済学 II 2 24
新しい浦島太郎と桃太郎の生産
浦島太郎の生産可能性フロンティアと新たな
マツタケ
生産
( 個 )
サンマ ( 匹 )
0 32
8 4
16 A
B
浦島太郎の新しい生産
浦島太郎の
生産可能性フロンティア
E
桃太郎の生産可能性フロンティアと新しい
マツタケ
生産
( 個 )
サンマ ( 匹 )
0
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48 24
12
24 C
D 桃太郎の生産可能性フロンティア
桃太郎の新しい生産
F
12 18
浦島太郎のサンマ 15 匹と桃太郎のマツタケ 5 個の交 換したとしよう!
浦島太郎はサンマを 32 匹採っているが,そのうち 15 匹を桃太郎に与える
その見返りとして桃太郎から 5 個のマツタケを貰う
反対に,桃太郎はマツタケを 18 個採っているが,そ のうち. 5 個のマツタケを浦島太郎に与える
その見返りとして浦島太郎から 15 匹のサンマを貰う
浦島太郎と桃太郎の交換
浦島太郎のサンマの消費は 15 匹を桃太郎に与えたから,新 しい消費は
32-15= 17 ( 匹 )
浦島太郎は桃太郎から 5 個のマツタケを貰ったから 0+5= 5 ( 個 )
桃太郎はサンマを 12 匹採っていたが,浦島太郎から 15 匹 のサンマを貰うから新しい消費は
12+15=27 ( 匹 )
桃太郎はマツタケを 5 個浦島太郎に与えたから 18-5= 13( 個 )
2018/10/3 ミクロ経済学 II 2 28
浦島太郎と桃太郎の新しい消費
浦島太郎の生産可能性フロンティアと新たな
マツタケ
生産
( 個 )
サンマ ( 匹 )
0 32
8
4
16 A
B
浦島太郎の新しい生産
浦島太郎の
生産可能性フロンティア
E G
5
17
浦島太郎の新しい消費
桃太郎の生産可能性フロンティアと新しい
マツタケ
生産
( 個 )
サンマ ( 匹 )
0
ミクロ経済学 II 2
2018/10/3 30
48 24
12
24 C
D
桃太郎の生産可能性フロンティア
桃太郎の新しい生産 F
12
18 H 桃太郎の新しい消費
27 13
浦島太郎の新しい消費点 G(17,5) では,サンマの 17 匹 消費し,マツタケを 5 個消費している
点 G は彼の生産可能性フロンティアの外側にある
取引からの利益は,サンマ +1 ,マツタケ +1
桃太郎の新しい消費点 H(27,13) では,サンマの 27 匹消 費し,マツタケを 13 個消費している
点 H は彼の生産可能性フロンティアの外側にある
取引からの利益は,サンマ +3 ,マツタケ +1
浦島太郎と桃太郎の新しい消費
絶対優位がなくとも比較優位を活かすことによって両 者は利益を得た
交換によって人々が自分の比較優位にある活動に専念で きる ( 特化できる ) ので,交換が社会のすべての人々に 利益をもたらす
浦島太郎のサンマ 15 匹と桃太郎のマツタケ 5 個の交換を 行っていた
マツタケ 1 個あたりサンマ 3 匹の交換比率
この交換比率は,浦島太郎と桃太郎のマツタケの機会費 用の中間の値である
2018/10/3 ミクロ経済学 II 2 32
比較優位,特化,交換
浦島太郎のマツタケの機会費用は 4
桃太郎のマツタケの機会費用は 2
交換比率が 3 であれば,浦島太郎は,交換比率は自分の機 会費用よりも低いので,マツタケを諦めてサンマと交換 するだろう
一方,桃太郎は,自分の機会費用の方が低いのでマツタ ケを多く作って交換するだろう
もし両者の機会費用よりも高い交換比率だったら両者が マツタケを売ろうとするだろう
その時買い手は誰もいないので取引は成立しない
比較優位,特化,交換
大学教授はコピー取りも上手いが,助手さんに任せ ている
芸能人はクルマの運転ができるが付き人に任せる
結婚したら家事に専念するのも比較優位で説明可能
アメリカは日本より自動車生産が上手いかも知れな いが,食料生産に比較優位を持つ
よって,日本は自動車を輸出して,アメリカから牛 肉を輸入する
2018/10/3 ミクロ経済学 II 2 34
比較優位は個人の活動にも適用可能
復習
ある活動に絶対優位を持つとは,他の人 ( 国 ) に比 べて効率的に生産できることを意味する
各人 ( 国 ) に絶対優位にある財があるとは限らない
ある財の生産が他人 ( 国 ) と比べ機会費用が低い場 合にその人 ( 国 ) はその財の生産に比較優位がある と言う
各人 ( 国 ) が比較優位にある財に特化して交換 ( 貿 易 ) することによって両人 ( 国 ) は利益を得る
その交換比率は各人の機会費用の中間にある