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Vol.24 No.1 原子力バックエンド研究

巻頭言

1

地層処分の文脈のなかでの地下の理解

2016 年度バックエンド部会長 亀井 玄人

3 月末をもってバックエンド部会長の任期を終えました.この間,ご指導,ご協力いただきましたすべての皆さまに 紙面を借りて厚く御礼申し上げます.私のような者が巻頭言など僭越の極みなのですが,慣例とのことでご容赦いただ けましたら幸いです.

産業革命以降,エネルギーの消費は爆発的に増大しました.長い人類の歴史からみれば最近のことです.原子力の利 用はさらに近く,我々の世代に始まったことです.たしかに便利で快適にはなりました.寿命も延びました.しかし,

放射性廃棄物を発生させました.これについては,大量にエネルギーを消費し,その恩恵を受けた我々の世代が対策を 講じ,後々の世代に負担をかけないようにしようとする考えがありますが,倫理として当然なことと思われます.そし て,このための方法が地層処分です.地層(岩盤)の持つ機能を活用すれば,人間の積極的な関与に頼らずとも十分に 安全を確保できる見込みがある,すなわち受動的安全系が構築できる見込みがあるので,後世に過度の負担をかけずに すむということです.

話が飛躍するのですが,私は小学生のとき,父とともに岐阜県の瑞浪で化石採集をやりました.砂岩を割ると貝化石 が現れました.2000万年くらい前の地層なのですが,それほどの時間を経て現れた貝化石のみずみずしさに胸を打たれ ました.砂に埋まった貝にしてみれば,2000万年ぶりに見る太陽の光であったことでしょう.このようなことがあって,

私はこのタイムマシンの旅行のような地質学という学問に魅せられたのですが,地層には永久と言っていいような時間 にわたって物を閉じ込める機能があることを実感しました.経験に拠るこのような感覚は,地質学を学び,フィールド 調査に明け暮れた者にはおそらく共通的なものではないでしょうか.

ところで,日本は北欧や北米のような大陸と違って変動帯に位置し,地質学的に安定ではないので地層処分は無理だ ろうという意見もあります.しかし,10億年このかた安定だったような地層でなければ処分はできないということでは ありません.地層処分の文脈における地質環境の安定性とは,処分システムの設計上の必要性やその安全評価の対象領 域として妥当と考えられる程度の時間的・空間的範囲における安定性のことです.地層処分では,このような意味での 安定な地層がまず選ばれ,それに期待される閉じ込め機能に加え,さらに安全性を確実なものにすべく人工バリアが設 けられます.大きさとして数メートル規模の人工バリアに,数百メートル規模の地層が載ることとなるわけです.この ような処分システムの設計や評価のためのモデル開発は,室内試験の結果などに基づいて行われてきました.今後,こ れらが地下環境に適用できるのか調べておくことが必要で,地質環境と,処分システムの設計及び安全評価との協同的 研究が不可欠です.まずこの点で,地下研究施設の役割は大きいと思われます.他方,このシステムの構成要素として の地層には物質の閉じ込め機能が期待できるとはいえ,そうした機能の根拠となりうる地下での現象については,知ら れていないこともあります.この観点での現象の理解を深め,その成果をまた設計や評価モデルの確証や改良につなげ ていくべきで,研究の場として,深部地下の直接的データが得られる地下研究施設の価値は高いと考えます.

結局のところ,地層処分の目標は,社会の合意形成と言ってもよいでしょう.国民の間に理解が進み,危険なもの,

不気味なものという意識が薄れ,安心感が醸成されていくためにはどうすればよいでしょうか.豊かなコミュニケーシ ョンが展開され,たがいに理解が深まっていくことが基本的なプロセスかと思います.ステークホルダーの意思決定が 科学的根拠によらず,風評に強く影響されるようなこととならないよう,こうしたプロセスにおいて,バックエンド部 会員をはじめとする研究者,技術者には正しい情報発信の使命があると考えます.このためにも,地層処分の文脈にお ける地下の理解は急がれる課題であると考えます.

(2017年4月)

(2)

原子力バックエンド研究 June 2017

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原子力バックエンド研究 June 2010

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