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低環境負荷社会を実現するための金属負極蓄電池開発

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Academic year: 2021

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低環境負荷社会を実現するための金属負極蓄電池開発

1. はじめに

 原油価格の高騰や東日本大震災を機 に,蓄電池開発の必要性はより高く なった.現在開発が急務である電池は,

①再生可能エネルギーの安定供給や電 力平準化・ピークシェービングのため の大型定置型蓄電池,② HV/EV など 自動車用,小型電子機器用のモバイル 型蓄電池である.現状②の主力はリチ ウムイオン電池であり,さまざまな技 術革新が行われている.一方,①は現 段階では安価な鉛蓄電池が最有力であ るが,深充放電をすると急激に性能が 劣化するうえ根本的に中毒性の問題が ある.これでは鉛蓄電池を用いて高エ ネルギー効率社会が実現されたとして も,環境負荷が増えてしまい本末転倒 になる.そこで筆者らが着目している のは,使い捨てアルカリ電池の負極材 料である亜鉛である.亜鉛は安価,安 全,資源が豊富という特徴を有するた め,大規模定置型用途に適している.

また中毒性もないため,現在の鉛蓄電 池市場を亜鉛蓄電池に置き換えること ができれば,世界的により環境負荷が 低い社会を達成できる.

2. 亜鉛負極の電気析出

 亜鉛負極蓄電池の実用化を阻んでい るのは短サイクル寿命である.その原 因は,放電時には電解液に溶解してい る亜鉛イオンが充電時に電極に析出す る際,その析出が不均一であり,サイ クルを重ねると負極が正極に達して内 部ショートするためである.一般に電 析形態はシステムが平衡に近いほど均 一であるのに対して,平衡から遠くな ると不均一(デンドライト状)に析出 する.本系で平衡性を左右する要素の 一つは,電解液中亜鉛イオン濃度であ る.実際筆者らは,電解液を流動化さ せて濃度場を制御することで,1 500 回の深充放電サイクルを達成するとと もに析出形態遷移の同定パラメータを 見出した(1)(2).しかし,濃度場の定量 測定が困難なこともあり,いまだ詳細 な電析メカニズムの解明には至ってい ない.そこで筆者らは最近,従来流体

工学分野において衝撃波の密度分布評 価 に 開 発 さ れ た BOS(Background  Oriented Schlieren)法を応用するこ とで,亜鉛イオン濃度場の In-situ 定 量評価を試みた.

 図 1に実験電池セルの概略を示す.

厚さ 100 ミクロンの集電体を図のよう に配置し,亜鉛を水平に二次元的に電 析させる.電池セルの底面部に 1 ミク ロンのランダムドットをプリントした 参照画像を設置する.その上を電解液 で満たし充電すると,電極表面におけ る亜鉛イオン濃度が減少し,参照画像 上に濃度境界層が形成される.亜鉛イ オン濃度の減少=電解液密度の減少=

屈折率の減少であるので,顕微鏡で撮 影された参照画像のドット位置は,濃 度変化があった場所で充電前から移動 する.この移動量は流体の密度こう配 に相当するので,画像相関法を用いて 移動量を定量評価することで,その点 における密度こう配を算出できる.さ らに密度のポアソン方程式にこの値を 代入して空間差分法で解き,あらかじ め得られている亜鉛イオン濃度と電解 液の屈折率(密度)の関係式を用いれ ば,亜鉛イオン濃度分布を算出できる.

(BOS 法の詳細については教科書等を ご参照ください.)撮影画像と亜鉛イ オン濃度分布の一例が図 2である.

濃度境界層が可視化されているだけで なく,濃度場が局所定量評価されてい る.また算出された濃度は,Leveque  solution(リベックソリューション)

をもとにした物質移動係数から予測さ れる濃度と近い妥当な値を示した.

 今後はどのような条件でどこから均 一性が崩れるのかを解明していくとと もに,均一に電析させる制御法の開発 も行っていきたいと考えている.制御 法としては充電プロトコルや集電体の 工夫,添加物の添加などが一般的であ るが,いずれも多くの場合経験的なパ ラメータの最適化がなされている.こ れは金属イオン濃度の測定法がなかっ たため,結晶成長に及ぼす各種制御法 の物理的影響を明らかにするのが困難

であったのが一因である.スペースの 都合上詳細は省くが,本手法を用いれ ば,均一析出をする亜鉛イオン濃度を 維持するように充電プロトコルを最適 化したり添加物を加えたりすることが 可能となるため,論理的根拠に基づい た条件変化に適応可能な電析制御法の 確立が可能となる.

3. おわりに

 本研究では亜鉛を対象としている が,金属不均一析出は材料を問わない ユニバーサルな問題である.よって本 研究から得られる知見は,リチウムイ オン電池をはるかに凌駕するエネル ギー密度を達成可能な金属リチウム電 池の研究開発にも役立つものとなる.

近い将来,亜鉛とリチウムの金属負極 蓄電池が実用化され,低環境負荷・高 エネルギー効率社会が来ることを期待 する.

(原稿受付 2014 年 2 月 12 日)

〔伊藤靖仁 名古屋大学〕

●文 献

( 1 )Ito, Y., ほか , An Indicator of Zinc Morphol- ogy Transition in Flowing Alkaline Electro- lyte, J. Power Sources, 211(2012),119- 128.

( 2 )Ito, Y., ほか , Zinc Morphology in Zinc- nickel Flow Assisted Batteries and Impact on Performance, J. Power Sources,

196

(2011), 2340-2345.

参照画像 亜鉛負極

正極 電解液 画像撮影方向

亜鉛析出面

図 1 電池セルの概略図

(a) (b)

50.00 49.75 49.50 49.25 49.00 48.75 48.50 48.25 48.00 47.75 47.50 47.25 47.00 46.75 46.50 46.25 46.00 45.75 45.50 45.25 45.00 205

410 614 819 1 024 1 1

205 410 614 819 1 024

図 2 充電中の電極近傍の撮影画像(a)

と亜鉛イオン濃度分布(b)

─ 86 ─

日本機械学会誌 2014. 5 Vol. 117 No.1146 350

参照

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