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財政支出の民需誘発効果について

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(1)

財政支出の民需誘発効果について

著者名(日) 三平 剛

雑誌名 経済論集

巻 31

号 1

ページ 141‑165

発行年 2005‑12

URL http://id.nii.ac.jp/1060/00001693/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

東洋大学「経済論集」 31巻1号 2005年12月

財政支出の民需誘発効果について

三 平

1.はじめに

2.公共投資の民需誘発効果 3.財政支出の民需誘発効果

4.民需誘発効果低下の要因と改革の評価 5.おわりに

補論 公共投資の生産力効果について 参考文献

1.はじめに

 小泉内閣が誕生し、わが国の財政運営が財政構造改革へと舵を切ってから、4年が経過した。こ の間、政府は2010年代初頭のプライマリーバランス黒字化を目標として歳出の抑制に取り組んでき

た。

 ただし、財政の「構造改革」は、こうした「量」の改革だけではない。財政の「質(中身)」の 改革も含むものである1。財政の健全化に向けて財政支出を減らさざるを得ない我が国の状況の中 で、限られた支出で最大の効果を発揮するよう、財政支出の質を改めていくことが必要となってい

る。

 財政支出の効果については、これまで主として2つのタイプの分析が行われてきた。1つは財政 支出の乗数効果に関する分析であり2、もう1つは財政支出(特に公共投資)の生産力効果に関す る分析である3。第1の乗数効果の分析は、財政支出が経済の需要側に及ぼす影響を分析するもの であるが、ここで効果の大小を決めるのは基本的に財政支出の「量」であり、その「質(中身)」

1

ワ︼3

 このことは、政府の改革方針を示す一連の「骨太の方針」にも明記されている。例えば、閣議決定

[2001]p.12。

 例えば、堀・鈴木・萱園[1998]、堀・青木[2004]、村田・斉藤ほか[2005]。

 例えば、浅子・常木ほか[1994]、三井・太田編〔1995]、吉野・中島[1999〕、吉野[2000],塩路[2000]、三 井[2000]、田中[2001]など。なお、こうした生産力効果の計測は本論文の直接の目的ではないが、公共投資 の地域間配分の特徴の分析に用いるため、筆者も生産関数の推定による分析を行っている(補論参照)。

(3)

にはあまり関心は払われない。一方、生産力効果の分析では、政府が公共投資により道路等のイン フラを整備することで、経済の生産力がどの程度増大するかを分析する。したがって、こちらは財 政支出(公共投資)の質(中身)が関心の対象となるが、それが経済の供給側に及ぼす影響を分析 するものである。したがって、これまでの研究は、財政支出の質(中身)が経済の需要側に与える 影響については、あまり対象とはしてこなかったと言える。

 しかしながら、政府の財政支出の質(中身)は、当然経済の需要側にも影響を及ぼす。例えば、

公共投資によって有用性の高い道路や港湾などが整備されれば、それが呼び水となって工場の新規 立地や生産設備の増強など民間の投資需要も生まれると考えられるが、有用性の低い道路等の場合 にはそうした需要誘発効果も薄いであろう。また、公園・街路整備や治安維持などの政府支出に よって都市環境が整備されれば、民間の住宅需要等にも影響を与えると考えられる。財政支出の質 を向上させ、こうした財政の民需誘発効果を高めることは、今後財政支出を減らしていかざるを得 ない中で、量の縮小の影響を最小限に抑えるために必要である4。本論文では、これまであまり分 析の対象とされてこなかった、財政支出の民需誘発効果について実証分析を行う。

 以下では、第2節においてまず公共投資に焦点を絞ってその民需誘発効果を検証する。分析は、

基本的に時系列データを用いたVARモデルにより、公共投資に対する民間の投資需要の反応を計 測することにより行うが、都道府県別のクロスセクション・データを用いた検証も行う。第3節で は、分析対象を財政支出全体に拡大し、その民需誘発効果を見る。第2、3節の分析からは、財政 支出の民需誘発効果は近年低下してきていることが示される。第4節では、こうした民需誘発効果 の低下の要因を分析し、それを踏まえた上で、最近の歳出の質(中身)の改革の評価を試みる。

2.公共投資の民需誘発効果

 公共投資の民需誘発効果については、先に述べたようにこれまであまり分析が行われてこなかっ たが、数少ない既存の分析例として、三井・竹澤・河内[1995]、内閣府[2001]、初岡・中居ほか

[2000]等がある。三井・竹澤・河内[1995]は、公共投資を説明変数に含む民間投資関数と収益率関 数を推定し、公共投資が収益率上昇を通じて民間投資を増大させる「クラウディング・イン」効果 を計測している。推定された関数を基にしたシミュレーションによれば、公共投資の増加は短期的 にはクラウディング・アウトにより民間投資を減少させるが、中長期的にはクラウディング・イン 効果が上回り民間投資を増大させるとの結果となっている。期間を分けた分析では、1955〜70年度

4 政府も、財政の質の改善による民需誘発効果の向上を財政構造改革の重要な柱として位置づけている。例  えば、前掲閣議決定[2001]p.12参照。なお財政支出の質の改善により民間需要を創出し、量的な削減を補  うという考え方は、「骨太の方針」など政府の経済財政運営の基本方針を審議する経済財政諮問会議の委員  を努める吉川洋東京大学教授の持論である。吉川[1999]第7章を参照。

(4)

財政支出の民需誘発効果について

までの高度成長期に比べて、1971〜87年度にはクラウディング・イン効果が低下していることも示 されている。内閣府[2001]は、都道府県別のデータを用いて、公共投資と新規の工場立地数との関 係を調べている。それによると、88年度には弱いながらも公共投資が多い県ほど工場立地数が多く なるという相関関係が見られ、公共投資によるインフラ整備が呼び水となって民間の工場新設など の設備投資が誘発されていたことが観察されるが、98年度にはこうした関係は見出せなくなってい る。初岡・中居ほか[2000]は、高速道路について、建設された年と1日あたりの交通量との関係を 調べ、最近建設された高速道路ほど交通量が少なくなっていることを見出している。いずれの分析 においても、過去には公共投資が民間投資や工場立地、自動車交通量などの民間の活動を誘発する 効果は高かったが、近年ではそうした効果が薄れていることが示されている。

 本論文では、主にVARモデルの推定によって、財政支出の民需誘発効果を分析する。その際、

上記先行研究により時代とともに民需誘発効果が低下していることが示唆されていることを踏まえ、

いくつかに期間を分けて分析を行う。本節では、財政支出のうち公共投資に焦点を絞って分析を行 い、次節で財政支出全般についても見ることとする。

 推定するVARモデルは、公共投資、金利、民間設備投資、 GDPの4変数からなるモデルである。

外生性の順序は、公共投資が最も外生的に先決されるとし、次いで金利、民間設備投資、GDPの順 とした。これにより、公共投資→民間設備投資→GDPという民需誘発効果のほか、公共投資→金 利→民間設備投資というクラウディング・アウト効果、公共投資→GDPという乗数効果も併せて 推定に含めることができる。モデルのラグ数は3期で統一し゜、推定は、60〜70年代、80年代、90 年代以降の3期間に分割して行った。用いたデータは、公共投資、民間設備投資、GDPはそれぞ れSNAの公的固定資本形成、民間企業設備、国内総支出(いずれも実質・季節調整済系列を対数 化)6、金利は長期の貸出約定平均金利である7。

 まず、推定されたVARについて、モデル全体の妥当性を確認しておこう。図1は、推定された VARモデルによるインパルス応答関数を示している。これは、 VARに含まれる変数に外生的な ショックが生じた場合に、他の変数がどのように反応するかを見たものである。例えば、左端の列 の上から4番目のグラフは、公共投資が外生的に増加した場合のGDPの反応を示している。これ によると、60〜70年代には、公共投資の増加がGDPを増大させる効果を持っていたことがわかる。

グラフには、±2標準偏差の信頼区間を併せて示しているが、それを見てもこの反応が有意である ことがわかる。一方、80年代以降については反応が有意ではなくなっている。公共投資の乗数効果

一〇戸O︻イ

 赤池情報量基準によれば2期が採択されるケースが多かったが、念のため1期分の情報を加え、本論文に おける以下の分析も含め、全ての推定において3期で統一した。

 60〜70年代の推定には68SNA、80年代以降の推定には93SNAを用いている。

 データの連続性の制約から、60〜70年代の推定には全国銀行、80年代以降の推定には都市銀行のデータを 用いている。

(5)

図1 4変数VARモデルによるインパルス応答

(D1960〜70年代

〔ショック〕

公共投資 金利 民間設備投資

GDP

公共投資

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金利

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民間設備投資

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(2)1980年代

〔ショック〕

公共投資 金利 民間設備投資

GDP

公共投資金利

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(6)

財政支出の民需誘発効果について

(3)1990年代以降

〔ショック〕

公共投資金利民間設備投資

︹反応︺

GDP

公共投資 金利 民間設備投資

GDP

(備考) 1.公共投資、金利、民間設備投資、GDPの4変数VARによる1標準偏差相当のショックに対する     インパルス応答関数。点線は±2標準偏差の信頼区間を示す。16四半期後までの応答を提示。

    2.使用したデータは、公共投資、民間設備投資、GDPはそれぞれ内閣府「国民経済計算」の公的相     固定資本形成、民間企業設備、国内総支出(いずれも実質・季節調整済、対数値×100。60〜70年代     の推定には68SNA、80年代以降の推定には93SNAを使用)。金利は日本銀行「金融経済統計」の貸     出約定平均金利(長期、%)。VARのラグ数は3期。

が近年低下してきているのではないかとの議論があるが、ここでの推定結果はそれを支持するもの となっている。

 ただし、このGDPの反応については、直接的な乗数効果以外にも、他の経路を通じた影響も含 まれている点に留意が必要である。例えば、公共投資がインフラ整備を通じて民間の設備投資を活 発化させる効果を有していたとすれば、公共投資に誘発されて民間設備投資が増加し、それが今度 は乗数過程を経てGDPを増加させるという経路も考えられる。そこでこの経路について見てみる と、まず、民間設備投資→GDPについては、(設備投資がGDPの構成要素であるから当然とも考 えられるが)いずれの期間でも正の反応が見られる。しかし、公共投資→民間設備投資については、

60〜70年代には正の反応が見られるが、80年代以降は有意な反応は観察されなくなっている。した がって、公共投資のGDP刺激効果が低下していることには、単純な乗数の低下だけでなく、公共 投資の民需誘発効果が低下していることも影響していると考えられる。このことは、公共投資の質

(7)

の改善により民需誘発効果を回復させることができれば、公共投資の景気刺激効果も回復する可能 性があることを示している。財政状況により公共投資の減少が避けられない中で、このことは政策 的に重要な含意である。

 次に、金利の公共投資に対する反応を見てみると、80年代を除いて金利が上昇するという反応は 見られない(むしろ逆に低下の反応も見られる)。このことは、日本銀行が金利水準を平準化する ように金融政策を運営していた(金利上昇が生じた場合に金融を緩和して金利の上昇を抑制してい た)結果、政府の財政政策による金利への影響がアコモデートされていたものと考えられる8。ま た、金利が上昇した場合の民間設備投資の反応を見ても、80年代までは負の反応を示しているが、

必ずしも有意ではない。したがって、公共投資を増加した場合の金利上昇によるクラウディング・

アウトについては、日本においてはそれほど大きくはなかったと考えられる。

 最後に、金利上昇に対するGDPの反応を見ると、80年代までは有意に負の反応を示しており、

金融政策が効果を持っていたことが示されている。ただし、90年代以降には有意な反応は認められ ない。90年代以降は、歴史的な低金利状況における金利のゼロ下限の制約(あるいは流動性の罠)

や、不良債権問題による金融の機能不全により、金融政策の有効性が薄れていたことを示唆してい ると考えられよう。

 以上見たように、推定されたVARモデルは経済理論や当時の日本経済の状況から見て想定され る反応を示しており、分析に用いるモデルとして妥当なものであると考えられる。そこで、次にこ のVARを用いて、本論文の主題である公共投資が民間設備投資に与えた民需誘発効果についてさ らに詳しく見てみよう。

 図2は、公共投資が1%増加したときに民間の設備投資がどのように反応するかを、3つの推定 期間について比較したものである9。すなわち、民需誘発効果が時間と共にどのように変化してき たかを示している。これを見ると、60〜70年代には、公共投資が1%増加すると、1〜2年後に最 大時で0.7%程度、民間の設備投資が増加するという関係があったことが見て取れる。このことか

ら、60〜70年代の公共投資にはインフラ整備を通じて民間設備投資を誘発する効果が存在していた と言える。しかし、80年代以降には、こうした誘発効果は確認されなくなる(むしろ逆に公共投資 が増えると民間設備投資は減少する様子も伺えるが、先に見たように有意ではない)。

 このように、時代とともに公共投資の民需誘発効果が低下してきている背景には、インフラ整備 の進展があると考えられる。60〜70年代には、まだ十分にインフラが整備されていない状況が存在

8

9

 60〜70年代や90年代に金利がむしろ負の反応を示しているのは、単にアコモデートするだけでなく、政府 の財政政策の拡張(縮小)に歩調を合わせて日銀も金融政策を緩和(引締め)していたことを示唆している とも考えられる。

 先の図1では1標準偏差相当のショックに対する反応を見たが、ここでは、異なる推定期間について反応 の大小を比較するため、公共投資の1%相当のショックに対する反応を示すよう標準化してある。

(8)

財政支出の民需誘発効果について

図2 公共投資の民間設備投資誘発効果(4変数VAR)

公共投資を196増やした時の民間設備投資の反応   (%)

 O.8  0.6  0.4  0.2  0.O

 −O.2

1ili /

   90年代以降

12345678910111213141516

 −一一一一一一一レ  時間経過        (四半期後)

(備考) 公共投資、金利、民間設備投資、GDPの4変数VARによる1%相当の公共投資増加ショックに対     する民間設備投資のインパルス応答関数

し、公共投資によるインフラ整備の効果が大きかったと考えられるが、インフラの整備が進展する につれて、必要性や効果の高い未整備のインフラは少なくなり、追加的なインフラ整備の効果も逓 減してきたと考えられる。また、近年ではインフラとしての効果や必要性よりも景気対策や地域間 の所得再分配の観点から公共投資が行われるようになってきたことも、民需誘発効果を低下させる 要因となってきたと考えられる。これらの要因については、第4節で改めて検証する。

 民間企業の設備投資以外にも、民間の住宅投資に対する民需誘発効果について、同様に4変数 VARによる分析を行った。推定したモデルは、先のモデルの民間設備投資を民間住宅投資(SNA の民間住宅、実質・季節調整済、対数化)に代えたものである。

 図3は、推定されたモデルにより公共投資に対する住宅投資の反応を期間ごとに比較したもので ある(モデル全体の振舞いについては省略する)。住宅投資についても、60〜70年代には、公共投 資が1%増加すると1〜2年後に住宅投資が0.5%強増加する反応を見せており、公共投資による 誘発効果が働いていたことがわかる。その後、80年代には設備投資と同様に誘発効果が弱まってい るが、住宅投資の場合は90年代以降に誘発効果が回復を見せてきている点が興味深い10。わが国で は生産基盤のインフラに比べ生活関連のインフラの整備が遅れていたことが指摘されており、生活 関連インフラについては近年に至るまで整備の必要性や有用性が高かったと考えられることや、90

10@なお、グラフが複雑になるので図には示していないが、±2標準偏差の信頼区間では、60〜70年代と90年  代以降の正の反応は有意であるが、80年代の負の反応は有意ではない。

(9)

反応

図3 公共投資の民間住宅投資誘発効果(4変数VAR)

(%)

1、0

 0,5

 0.0

 −05

一1.0

公共投資を1%増やした時の民間住宅投資の反応

 60〜70年代

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\、。年代以降

         一15

      12345678910111213141516

       −一一一一一一→・ 時間経過        (四半期後)

(備考) 公共投資、金利、民間住宅投資、GDPの4変数VARによる1%相当の公共投資増加ショックに対     する民間住宅投資のインパルス応答関数

年代に入って社会資本整備も生活重視の視点が打出され、生活関連資本の整備に重点が置かれるよ うになってきたことなどが関係しているのではないかと考えられる11。

 次に、より単純な2変数のVARモデル(公共投資と民間設備投資、公共投資と住宅投資)に よって、上記の結果の頑健性を検証しておこう。図4は、4変数VARの場合と同様に、推定期間 を60〜70年代、80年代、90年代以降の3つに分け、それぞれの期間における民間設備投資と民間住 宅投資の公共投資に対する反応を見たものである。4変数VARの場合と同様に、60〜70年代には 設備投資、住宅投資とも民需誘発効果が働いていたこと、80年代に入るといずれも誘発効果が弱 まっていることが示されている。住宅投資については90年代以降に誘発効果の回復が見られる点も、

4変数のときと同様である。

        

 2変数VARによる分析では、設備投資や住宅投資の誘発効果だけでなく、公共投資と雇用の2 変数VARも推定し、公共投資が雇用を誘発する効果についても分析を行った。公共投資が効果的 なインフラ整備に用いられていれば、産業の発展へとつながり、雇用の創出・増加をもたらすと考 えられる。しかし、いわゆる無駄な公共投資が行われた場合にはこうした雇用誘発効果は少ないと 考えられる。

 分析結果を見ると、やはり60〜70年代に比べて90年代以降では雇用誘発効果も低下している。な お、80年代については、推定結果は公共投資の増加の約1年後から永久的に雇用が増え続けるとい

u 1992年には「生活大国5力年計画」が閣議決定され、94年に改定された「公共投資基本計画」では、「生  活・環境・福祉・文化機能」に係る公共投資の割合を60%台前半に増加することとされた。

(10)

      財政支出の民需誘発効果について

       図4 公共投資の民需・雇用誘発効果(2変数VAR)

(1)民間設備投資に対する誘発効果

      公共投資を1%増やした時の民間設備投資の反応       。.1%)

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       −O.2

      90年代以降        一 o・4      、        −06

       −O.8

      1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16        −一一一一一一レ  時間経過        (四半期後)

(備考) 公共投資、民間設備投資の2変数VARによる1%相当の公共投資増加ショックに対する民間設備投      資のインパルス応答関数

(2)民間住宅投資に対する誘発効果

       公共投資を1%増やした時の民間住宅投資の反応       (%)

      反1 O

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       −2。L__一一一__=1二」

      12345678910111213141516

       −一一一一一一一レ  時間経過        (四半期後)

(備考) 公共投資、民間住宅投資の2変数VARによる1%相当の公共投資増加ショックに対する民間住宅投     資のインパルス応答関数

(11)

(3)雇用に対する誘発効果

公共投資を1%増やした時の雇用の反応   (%)

  0.3応0,25

0.2

0.15

0.1

0.05

0

一〇.05

80年代   \

/6°〜7°年代

12345678910111213141516

−一一一一一一一戟@ 時間経過        (四半期後)

(備考) 公共投資、雇用(総務省「労働力調査」の雇用者数)の2変数VARによる1%相当の公共投資増加      ショックに対する雇用のインパルス応答関数

図5 産業基盤投資の民間設備投資誘発効果(都道府県別)

(万円)

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一人当たり産業基盤投資額(80年度)

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一人当たり産業基盤投資額(00年度)

備考)1.内閣府「県民経済計算」、総務省「行政投資実績」より作成     2.*は5%水準で有意であることを示す

(12)

財政支出の民需誘発効果について

う不自然な振舞いを示している。80年代の推定はサンプル数が最も少ないこともあり、推定精度が 悪く信頼性がやや劣るということかもしれない。実際、グラフが複雑になるので図には示していな いが、±2標準偏差の信頼区間をとってみると、反応が有意なのは60〜70年代のみであり、80年代 および90年代以降の反応は有意ではない。

 以上、公共投資の民需・雇用誘発効果について、時系列データを用いた分析を行ってきたが、都 道府県別のクロスセクション・データを用いて、別の面からも誘発効果を検証しておこう。具体的 には、都道府県別の1人あたりの公共投資額と、その翌年の1人あたりの民間設備投資額や民間住 宅投資額との相関関係を見る。公共投資が民間の投資を誘発する効果が大きければ、公共投資が多

く行われた都道府県では、その翌年以降に民間の投資が増えるであろう。したがって、誘発効果が強 ければ、都道府県別の公共投資額と翌年の民間投資額との間に正の相関が見出されるはずである12。

図6 生活基盤投資の民間住宅投資誘発効果(都道府県別)

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一人当たり生活基盤投資額(00年度)

(備考) 1.内閣府「県民経済計算」、総務省「行政投資実績」より作成     2、*は5%水準で有意であることを示す

t2  公共投資の翌年の民間投資額との相関関係を見ているのは、公共投資が民間投資を誘発するまでのタイム ラグを1年と想定しているためである。先のVARの分析において、民間投資が公共投資の1〜2年後に増 加する反応を見せていることから、この想定は妥当と考えられる。なお、念のためタイムラグを2年とり、

公共投資とその翌々年の民間投資との関係についても分析を行ったが、結果に変化は生じなかった。

(13)

逆に、誘発効果の薄い公共投資がなされていれば、そうした正の相関は確認されない。

 図5は、都道府県別の生産基盤公共投資額とその翌年の民間設備投資額を示したものである。

1970年度には必ずしも有意ではないものの両者の関係は正の傾きを示しており、誘発効果が働いて いた可能性があるが、80年度以降はむしろ負の傾きとなっており、政府による生産基盤投資が民間 の設備投資活動に結びつかなくなっていることが示されている。

 図6は同様に、都道府県別の生活基盤公共投資額と翌年の民間住宅投資額との関係を見たもので ある。住宅投資については、1970年度には両者の間に有意な正の相関が見られており、政府の生活 基盤投資が民間の住宅投資を誘発する効果が存在していたことが示されている。さらに、有意な相 関は90年度まで確認できる。先にも述べたように、わが国では産業基盤よりも生活関連のインフラ 整備が立ち遅れていたために、比較的後期の年代においても、整備の必要性が高い状況が続いてい たことによると考えられる。ただし、2000年度においては生活基盤投資についても住宅投資を誘発 する関係が有意に観察されなくなっており、誘発効果の低下を示唆している。

3.財政支出の民需誘発効果

 前節では、公共投資に対象を絞って、その民需・雇用誘発効果を見てきたが、本節では財政支出 全般について、同様に誘発効果の有無や大小を分析することにする。

 公共投資の場合には、インフラ整備を通じて民間の設備投資や住宅投資を促す効果を見てきたが、

財政支出一般について見る場合には、それ以外にも多様な経路を通じてさまざまな民間需要を誘発 することが考えられる。例えば、年金や社会保障の給付が消費を増加させたり、生活関連の行政 サービスや教育・文化への政府支出が民間の関連する支出を促したりといったこともあり得るだろ

う。そこで、こうした広範な効果を捉えるために、財政支出一般について分析するにあたっては、

まず、財政支出全体(SNAの政府最終消費支出+公的固定資本形成+政府在庫品増加)と民間需 要全体(SNAの民間最終消費支出+民間住宅+民間企業設備+民間在庫品増加)の2変数のVAR を用いて、広く民間需要全体に与える誘発効果を分析することとする。その上で、同様に2変数 VARの手法を用いて、民間の消費支出、住宅投資、設備投資それぞれに与えた誘発効果について 個々に見ていくこととする13。

 図7は、推定されたVARモデルを用いて、財政支出を1%増加した場合の民間需要全体の反応 を推計したものである。これを見ると、60〜70年代には、財政支出1%の増加が0.5%程度の民間 需要の増加を誘発する効果が存在していたが、90年代以降には誘発効果が低下している(なお、80

13@公共投資の分析で行った4変数VARに比べて単純な2変数VARモデルを用いるのは、公共投資の場合と  異なり民間需要に影響を与える経路・構造が特定しにくいためである。

(14)

       財政支出の民需誘発効果について

年代については、サンプル数の問題からか、いつまでも民間需要が増え続けるという信頼性を欠く 結果となっている。実際、信頼区間で見ても80年代の反応は有意ではない)。

 次に、財政支出を1%増加した場合の雇用誘発効果を見たのが図8である。60〜70年代には、財 政支出が1%増加すると雇用者数が0.1%程度増加するという関係が見られたが、90年代以降には

        図7 財政支出全体の民間需要全体に対する誘発効果(2変数VAR)

      公的支出が1%増えたときの民間需要全体の反応        (%)

       0.7        0.6          反応

      ↑……々∴…

       li;

      1 2  3  4  5  6 7  8 9 10 11 12 13 14 15 16

       −)  時間経過       (四半期後)

(備考) 財政支出、民間需要の2変数VARによる1%相当の財政支出増加ショックに対する民間需要のイン     パルス応答関数

      図8 財政支出全体の雇用誘発効果(2変数VAR)

      公的支出が1%増えたときの雇用の反応        (%)

  0.5 反応   0.4

 →

  0.3

  0.2

 ∴

80年代y

      12345678910111213141516

       −一■一一一一一一一→  時間経過      (四半期後)

(備考) 財政支出、雇用の2変数VARによる1%相当の財政支出増加ショックに対する雇用のインパルス応     答関数

(15)

そうした雇用誘発効果はほとんど見られなくなっている(80年代については雇用が増加し続けると いう信頼性を欠く結果となっている)。したがって、財政支出一般についても、民需・雇用誘発効 果ともに60〜70年代には存在したが近年では誘発効果は低下しているという、公共投資で見た場合 と同様の結果となっている。

 図9は、民間需要の項目ごとに、財政支出に対する反応を見たものである。まず、60〜70年代に ついての推定結果を見ると、設備投資や住宅投資だけでなく、民間消費支出についても誘発効果の

図9 財政支出全体の各民需項目に対する誘発効果(2変数VAR)

60〜70年代

  公的支出が1%増えたときの 各民間需要項目の反応(60〜70年代)

(%)

 12 応 10

 0.8

 06  04  02

 00

12345678910111213141516

−一一一一一一一一一一一一一戟@時間経過   (四半期後)

90年代以降

  公的支出が1%増えたときの 各民間需要項目の反応(90年代以降)

(%)

ξ1:

 15

 1.0

 05

1ii

 住宅投資

消費

設備投資

= i .−−

12345678910111213141516

−一一一一一一

r時間経過 (畔期後)

(備考) 財政支出と各民間需要項目(消費、設備投資、住宅投資)の2変数VARによる1%相当の財政支出     増加ショックに対する各民間需要項目のインパルス応答関数

(16)

財政支出の民需誘発効果について

存在が確認される(図には掲げていないが、信頼区間で見ても有意である)。すなわち、財政支出 の増加による各種の行政サービスの充実が民間の消費を喚起する効果を持っていたと考えられる14。

設備投資と住宅投資についても、60〜70年代には財政支出全体で見ても誘発効果が確認される。こ こで分析対象としている財政支出全体の中には公共投資も含まれるので、前節の結果を考えれば予 想される結果と言えるかもしれない。ただし、公共投資が財政支出全体に占める割合がそれほど大 きくないことを考えれば(2003年度で約24%)、公共投資以外の財政支出による行政サービスの充 実も、設備投資や住宅投資に対して誘発効果を有していたと考えて良いだろう。

 次いで、90年代以降についての分析結果を見ると、消費と設備投資については、いずれも60〜70 年代に比べて誘発効果が低下している。設備投資については、90年代以降には財政支出が増加する と民間の設備投資がむしろ減少する様子も見られる。一方、住宅投資についてはむしろ90年代以降 誘発効果が強まっている可能性も示されている。設備投資や住宅投資についての結果は、前節の公 共投資の場合と符合する結果となっている。

 以上、財政支出全体について見た場合にも、総じて公共投資に関する分析と同様、住宅投資を除 いて、60〜70年代に存在した民需や雇用の誘発効果が近年になって弱まっていると言うことができ るだろう。

4.民需誘発効果低下の要因と改革の評価

 以上、財政支出全体について見ても、公共投資について見ても、過去60〜70年代には政府の支出 が呼び水となって民間の需要や雇用が誘発される効果が存在したが、近年ではそうした民需・雇用 誘発効果が低下してきていることが示された。これは、財政支出の質が低下していること、すなわ ち財政支出の中身が効果的なものではなくなってきたことを意味している15。本節では、こうした 財政の質の低下をもたらした要因を分析するとともに、財政の質の改善に向けた最近の政府の取り 組みについて評価を試みる。

 財政支出の民需誘発効果が低下している第1の要因として、インフラの整備や行政サービスの充 実が進んできたことがあげられる。すなわち、インフラが未整備な状況では追加的なインフラ整備 の効果は大きいが、インフラの整備が進むにつれて効果は逓減すると考えられる。わが国のインフ ラの整備状況が、各種の指標(例えば、高速道路延長や道路舗装率、下水道整備率など)で見て進

N

15

 もちろん、こうした行政サービスの充実による消費誘発効果以外にも、単純に乗数効果による消費拡大

(政府支出の支払いを受けて所得が増大した者による消費の拡大)も分析結果に含まれていると考えられる。

 財政支出の質の低下は、数多く行われている公共投資の生産力効果の分析において、公共投資の限界生産 力が年代とともに低下していることによっても示されている。例えば、三井・太田[1995](第3章)や、田 中[2001](第3章)を参照。同様の結果は、筆者による分析(補論参照)によっても得られている。

(17)

んできていることは、財務省[2005]や木下[2005]などに示されている通りである。行政サービスに ついても同様に、行政サービスが充実していない段階では追加的なサービス提供の効果は大きいが、

充実するにつれてその限界効果は逓減すると考えられる。

 第2に、近年の財政支出が、その使途本来の目的や効果よりも、近年では景気安定化や所得再分 配を重視して行われてきたことが挙げられる。政府の財政支出には、①資源配分機能、②所得再分 配機能、③景気安定化機能の3つがあるとされる。このうち、①の資源配分機能は、公共財など、

市場では適切に資源が配分されないが経済の発展にとって必要性や有用性の高い分野に対して、政 府が財政支出を通じて資源配分を行うものである。したがって、この資源配分機能の観点からは、

必要性や効果の高い分野や地域に財政支出を行うほど望ましい。しかし、これはしばしば②の所得 再分配機能の観点や③の景気安定化の観点と対立する。例えば、資源配分の観点から見て必要性や 効果の高い地域に公共投資等を配分することと、所得再分配の観点から所得の低い地域に公共投資 や財政支出を重点的に配分することが、たまたま一致するということは考えにくい。

 図10は、都道府県別に見た公共投資の配分と1人あたり県民所得の関係を見たものである。これ を見ると、1960年代においては両者の間に明確な関係は見られなかったが、90年代においては明ら かに所得の低い県に対して多くの公共投資が行われるようになってきている。これは、90年代にお いては、公共投資によるインフラ整備の効果それ自体よりも、地域間の所得格差是正の手段として 公共投資の配分が行われてきたことを示唆している。

図10 1人あたり県民所得と公共投資配分の関係(都道府県別)

(万円)

10

     舷眼ポ令ひ山掲くー

1960年代

◆◆ 寸

・s.、・

  Rt◆

20    30    40 一人あたり県民所得

50

(万円)

 50  45  40

類 35

# 30 コ 25 掲 20

1 15

 10

 5  0

(万円)

1990年代

150   300

一人あたり県民所得

450

(万円)

(備考)内閣府「県民経済計算」より作成

(18)

財政支出の民需誘発効果について

図11公共投資の生産力効果と公共投資配分の関係(都道府県別、2001年度)

0,40

O.35

0.30

0.25

O.20

0.15

0.10

0.05

0.00

   公共投資の    生産力効果\

(万円1。

       曇舞㌶w

全国平均

50

40

30

20

10

0

四咲蝶咲咲咲咲咲咲咲咲咲嵩三咲咲唾蝶味咲咲咲咲咲嫉笹笹帳咲ヨ咲咲咲味味咲味蝶咲咲蝶咲咲咲咲岨咲 痩儀時寒田迷廟宴K嘘用繰候熊醍ヨミ#詔硫叫匿景酬賦羅騒{墜{田繕爵願ヨ廟口岨三襲景臣融蜜笹求窒駅繋 碧虹孤仰轟ヨ撃忘9§踏鱈十桜障漆掴㎏煙ヨ帽督霞劇1|隈怯・K蝋販!嘘虜匿Hヨ鯉脚劇伽巨照世帽迷→く仰圏景

(備考) 内閣府「県民経済計算」「民間企業資本ストック」「日本の社会資本」等より作成(詳細は補論参      照)

図12公共投資の生産力効果と公共投資配分の関係(都道府県別散布図)

1975年度 2001年度

25「

0      5      0      5      02       1       1︵圧円︶踊慰額執⊃翼掲くF

     ◆   ◆     ◆◆

  ◆◆◆◆◆

ジ寄.ぱ・

_.一

ー°.︐°°°LI°°°°

60@ 50  40  30

    ︵圧R︶籾舷頼報

ひ尖20

 10r

0

◆◆◆

      ◆       $     ◆   ◆ ◆◆◆     φ●︑:ぐ◆◆4◆亀$.

0

0.2     0.4     0、6

 公共投資の限界生産力

O、8 0 0,1      0.2     0.3

 公共投資の限界生産力

0.4

(備考) 内閣府「県民経済計算」「民間企業資本ストック」「日本の社会資本」等より作成(詳細は補論参      照)

(19)

 図11は、都道府県別に見た公共投資の生産力効果(公共投資によるインフラ整備が経済の生産力 を増加させる効果)と、実際の公共投資の配分を見たものであるが、これを見る限り、公共投資の 配分が効果の大小に応じてなされているとは言い難い。むしろ、効果の高い東京都や都市圏におい ては1人あたりで見た公共投資の配分が少なく、逆に効果の低い島根県や高知県などに多く配分さ れていることがわかる。公共投資の地域別配分が、財政の資源配分機能から見て望ましい配分とは 逆に、効果の低い地域にむしろ多く配分されていることは、散布図で見ると一層明確となる(図 12)。1975年の時点でも効果の低い地域へ多く配分される傾向が現れ始めているが、2001年度では 両者の間によりはっきりと負の相関が見られる。こうした結果が生じるのは、公共投資によるイン フラ整備の効果それ自体よりも、先に見たように、所得の低い地域に対する所得再分配の手段とし て公共投資が用いられてきた結果であると考えられる。

 また、景気安定化のために公共投資や財政支出が拡大してきたことが、財政の質を低下させてき たことも考えられる。マクロ経済学の観点からは、景気回復のためには、その中身いかんに関わら ず、できるだけ多くの財政支出を行うことが重要となる。しかし、このことは資源配分の面から見 ると、ややもすると必要性や効果を無視したまま無駄な財政支出を拡大することとなる。特に90年 代には数次にわたる景気対策によって公共投資の規模は大きく拡大してきたが、これにより効果の 薄い公共投資まで実施されるようになったことは否めないだろう。国の公共投資関連経費の予算額 は、80年代はおよそ7兆円前後で推移していたが、93年度には2倍強の15兆円程度となっている

図13 国の公共投資関連予算の推移  (兆円)

16 「一 一一…

14

12

10

8

6

4

2

99 152

  0

   8°8182838485868788899°919293949596979899°°°1°2°3㌣殿)

(備考)国の公共事業関係費の推移。財務省『財政統計』、2004,05年度政府予算案により作成。

142

149 ■補正

露当初

128 122

112 115

105 99100 89

83

s 7

×

7フ

∨,

7

A

︑b

(20)

財政支出の民需誘発効果について

(図13)。しかし、資源配分の観点から見れば、日本経済にとって必要な公共投資の量が80年代に 比べて急に2倍以上となったとは考えにくい。景気安定化の観点を重視して急激に公共投資予算の 規模を拡大したために、必要性の薄い無駄な事業まで実施されるようになったと考えるのが妥当で

ある。

 それでは、小泉改革後の財政構造改革への転換によって、低下してきた財政の質は改善へと向 かっているのであろうか。すなわち、財政支出の民需誘発効果や生産力効果は改善してきているの であろうか。これに直接答えるには、未だデータが不足しているといわざるを得ない。しかしなが ら、ここでは、現時点で得られるデータから可能な限り、小泉改革による財政の質の改善への取り 組みについて評価を行うこととしよう。

 まず、財政の質を改善するためには、財政の中身を、単にこれまで通り維持するのではなく、効 果の低いものは思い切って削減する一方で、効果の高いものへと重点化していかなければならない。

したがって、財政の質の改善への取り組みは、財政支出の配分の変化に現れてくるはずである。そ こで、財政支出の分野別の配分の変化を、3種類の指標でみたものが図14である。いずれも、主要 経費別分類で見た国の一般歳出予算の配分変化のばらつき、すなわち、予算配分のメリハリ度を示 す指標となっている。メリハリ度1は、主要経費別16に見た予算の伸び率の分散をとったものであ る。したがって、主要経費別予算の伸び率のばらつきが大きいほど、この指標で見たメリハリ度は

図14 国の一般歳出予算のメリハリ

ーーーー

332211   ︸﹈ー 隔⁚

一般歳出の 伸び率(右目盛)

      (%)

       二ll三…〔7

       メリハリ度1]:

        メリハリ度[

      −…  ゴ^『… …(茸度)3

(備考) 財務省r財政統計』、2004, 05年度政府予算案により作成。

L+1@社会保障関係費、文教及び科学振興費、恩給関係費、防衛関係費、公共事業関係費、経済協力費、中小企  業関係費、エネルギー対策費、食料安定供給関係費の9の経費分類別。

(21)

大きくなっている。メリハリ度Hは、主要経費別の予算の伸び率の偏差平方を、各経費が予算全体 に占める割合でウェイト付けしたものである。したがって、メリハリ度1と同様に主要経費別予算 の伸び率のばらつきを示すが、メリハリ度1の分散が偏差平方を単純平均したものであるのに対し て、メリハリ度Hは各経費のウェイトを考慮したものとなっている。式で示すと、以下の通りであ

る17。

メリハリ度H一Σ芸(△E△ElEE)2

        1      1

ただし、E、は各主要経費別の予算額、 Eは全体の合計予算額

 メリハリ度皿は、主要経費別に見た予算の伸び率のうち、最大の伸び率と最小の伸び率との差を 見たものである。メリハリ度1〜皿のいずれの指標で見ても、小泉内閣下で財政構造改革へと転換

してから初めての予算編成となった2002年度予算において、一般歳出の伸びをマイナスに抑える中 で、それまでと比較して際立ってメリハリのついた予算編成が行われたことが示されている。その 後はメリハリ度はやや低下しているが、一般歳出の伸びを抑えつつ相対的に見てメリハリ度の高い 予算編成を維持していると言える。

図15 公共投資の機能別配分シェアの変化

100%

90%・

80%

70%

60%

50%

40%

30%

20%

10%

0%

rt斗一..」

  @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@ @ 

@一

70    75    80    85    90    95    00    01

し・.1..L

難 02

住宅都市環境

下水道水道 廃棄物処理等 農業農村整備

港湾空港鉄道等 治山治水

道路

03  04    (年度)

(備考) 財務省『財政統計』、2004年度政府予算案により作成。

t7@これは、労働力の分野別移動の活発度等を表すためにしばしば用いられる指標を応用したものである。

(22)

財政支出の民需誘発効果について

 公共投資だけを取り出してみた場合にも、その中身の変化を示唆するデータが現れてきている。

図15は、公共投資の分野別配分の変化を見たものである。分野別配分のシェアは、80年代から長年 にわたり大きく変わらなかったものが、2001年度以降多少の変化を見せるようになってきている。

なお、この背景には、財政構造改革下での歳出の中身の改革の取り組み18に加えて、省庁再編によ り縦割りの弊害がある程度緩和されたこともあると考えられる。

 以上から、最近の財政構造改革の下で、それ以前と比較して相対的には財政や公共投資の中身を 変える取り組みが行われてきたといえる。ただし、そうした中身の変化が、財政支出の質の改善、

すなわち本論文で分析してきた民需誘発効果や生産力効果の向上をもたらすものであったのかどう かについては、未だ確たることは言えない。今後のデータの蓄積を待つ必要がある。

5.おわりに

 本論文では、これまであまり分析の対象となってこなかった、財政支出の質(中身)が経済の需 要側に与える効果、すなわち、財政支出の民需誘発効果について分析を行った。その結果、公共投 資だけに限って見た場合でも、財政支出全体で見た場合でも、政府支出が民間需要を誘発する効果 は近年低下していることが明らかとなった。このことは、財政支出の質が近年低下してきたことを 示している。

 財政支出の質が低下してきた背景には、その本来の支出目的における効果よりも、所得再分配や 景気対策の観点を重視して財政支出を行うようになってきたことがある。例えば、都道府県別の データで見ると、公共投資は1人あたり県民所得の低い県ほど多く配分されていることがわかる。

この結果、公共投資の生産力効果との関係で見ると、むしろ効果の低い県ほど公共投資の配分が多 くなるという、資源配分上は望ましくない配分が行われる1ととなっている。

 財政支出を抑制せざるを得ないわが国の状況の中で、その質を改善し、少ない財政支出で多くの 民間需要を創出させることは重要な課題である。政府も財政構造改革下で単なる量の削減だけでな く中身の改善にも取り組んでいる様子がデータからも見受けられるが、それが民需誘発効果や生産 力効果の改善に結びつくものであるかどうかは未だ不明であり、今後現れてくる結果に注目したい。

18  例えば、重点4分野(①人間力の向上・発揮一教育・文化,科学技術,IT、②個性と工夫に満ちた魅力あ る都市と地方、③公平で安心な高齢化社会・少子化対策、④循環型社会の構築・地球環境問題への対応)へ の配分の集中や、いわゆる「5兆減、2兆増(一般歳出を3兆円減らす必要がある場合に、単純に3兆減ら すのではなく、不要なものを5兆削り効果があるものは2兆増やす)」といった取り組みが行われている。

(23)

〈補論:公共投資の生産力効果について〉

 公共投資の生産力効果については、本文でも触れた通り、これまでにも数多くの分析がなされて いる。これらの研究では、分析者によって用いる分析手法やデータが異なるものの、概ね以下の4 点については共通する結果が得られている。すなわち、①公共投資による社会資本の整備が経済の 生産力を拡大する効果は有意に認められる、②ただし、そうした生産力効果(公共投資の限界生産 力)は、社会資本の整備が進むにつれて年々低下してきている、③公共投資による社会資本整備と 民間の投資とを比較すると、公共投資よりも民間投資の方が限界生産力が高い、④地域別に見ると、

地方圏よりも都市圏の方が社会資本の限界生産力は高い。

 著者も、公共投資の生産力効果と地域別配分との関係を検証するため(本文図11、12)に、改め て生産力効果の推定を行ったが、その際にも同様の結果を得ている。ここに、それらの結果を、分 析に用いたデータや手法とともに記しておく。

(1)生産関数の推定

 公共投資の生産力効果の検証は、社会資本を生産要素に含む生産関数を、都道府県別のパネル・

データを用いて推定することにより行った。推定にはコブ・ダグラス型生産関数を用いた。すなわ ち、推定式は以下の通りである。

 Y=AL tKfiG・v

 ⇔  |nY= ]nA十α1nL十!3 1nK十71nG

但し、Y:総生産、 A:全要素生産性、 L:労働投入、 K:民間資本、 G:社会資本

推定は、1975〜2001年度のデータを用い、固定効果モデルにより行った。推定結果は、表補一1に 示す通りである。社会資本の係数(γ)が有意に正であるので、公共投資により社会資本を整備す ると経済の総生産が増加するという生産力効果が確認される。労働投入や民間資本の係数(α,

β)も有意に正となっている19。

       表 補一1    α

0 702 (26 848)

  β

0 442(22 955)

  γ

0 073(4 753)

A(lj R一

〇997

(備考) 1.都道府県別パネル・データによる生産関数の推定結果()内はt値。

   2.推定期間は1975〜2001年度。固定効果モデルによる推定。

   3.実質県内総生産が欠損している標本は除いて推定。民間資本、社会資本は前年度末(当年度期     首)の値を使用。

19@推定に際して、係数に、労働投入と民間資本に関する規模の収穫一定(α+β=1)、または社会資本も  含めた収穫一定(α+β+γ=1)の制約を課して推定することも考えられるが、Wald検定によりこれら  の係数制約は棄却されたため、ここでは制約なしの推定結果を採用した。ただし、こうした制約を課して推  定した場合でも、結果に大きな違いは生じない。

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