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資 料 食材の物性に及ぼす影響から見た市販とろみ調整食品の分類 中村愛美 * 1, 吉田智 * 2, 西郊靖子 * 3, 林静子 * 4, 鈴木靖志 * 1 * 1 サラヤ株式会社バイオケミカル研究所 * 2 サラヤ株式会社栄養ケア推進室 * 3 横浜市立大学付属病院リハビリテーション科 * 4 湘

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(1)

Ⅰ.緒  言

………

 嚥下困難者等は,飲料や食材等の粘度を調整するため の製剤,いわゆる「とろみ調整食品」を利用する。とろ み調整食品を利用することで,咽頭での飲み込み速度を 下げ,誤嚥を防ぐ1,2)。しかし,それらを使用する患者 も,病状は人によって異なることから,一人一人につい て適した物性の「とろみ」を調整することが理想的と考 えられている3)。アメリカでは,NationalDysphagiaDiet Task Forceが発行した「the NationalDysphagiaDiet」に て,粘度によって4つの区分に分けられている(thin, nectar-like,honey-like,spoon-thick)4)。しかし,Garciaら の報告から,同じ粘度の区分でも,とろみ調整食品に よって添加量や粘性状態は異なることが示されている5)。  日本でも,とろみ調整食品を添加した後の粘性状態を 表す一般的な表現方法として「ポタージュ状」や「ジャ ム状」など,粘度のある食材を目安として用いることが 多い。しかし,一口にジャムと言っても様々な物性の ジャムが存在し,各目安について一定の定義や共通認識 があるとは言いがたい状況にある。さらには,とろみ調 整食品の種類によって,同じ「ポタージュ状」であって

も粘度の高いもの,テクスチャーが異なるもの,口当た りが異なるもの等があることも報告されている5~7)。ま た,現在市場にあるとろみ調整食品を主要なとろみ成分 の種類に基づいて,3つの範疇に分類する方法が一般的 に利用されている。ここでのとろみ成分は「デンプン」

および「増粘多糖類」であり,「増粘多糖類」の中でも特 にグアーガムとキサンタンガムが主要な成分であるが,

デンプンを主体としたとろみ調整食品を第1世代,グ アーガムを主体としたとろみ調整食品を第2世代,キサ ンタンガムを主体としたとろみ調整食品を第3世代とす る分類法も頻繁に使われる8,9)。しかし,このような分類 は製造者側の観点に比重をおいてなされているため,同 一の範疇に分類されるとろみ調整食品であっても実使用 に際して適用した食材の物性特徴に及ぼす影響が大きく 異なる場合もあると考えられる。特に最近では,牛乳や 濃厚流動食のとろみ付けに特化した製品やお茶のとろみ 付けに特化した製品も販売されている。このような動向 は,実使用に則した分類がとろみ調整食品を使用する側 の観点では重要であることを示している。そこで,各種 市販とろみ調整食品が様々な食材の物性に与える特徴を 総括的に解析してとろみ調整食品の特徴を機能および性

栄養学雑誌 Vol.70No.1 59~70(2012)

Copyright© THE JAPANESE SOCIETY OF NUTRITION AND DIETETICS 59

食材の物性に及ぼす影響から見た市販とろみ 調整食品の分類

中村 愛美 *

,吉田  智 *

,西郊 靖子 *

,林  静子 *

,鈴木 靖志 *

*サラヤ株式会社バイオケミカル研究所 *サラヤ株式会社栄養ケア推進室 

*横浜市立大学付属病院リハビリテーション科 *湘南ホスピタル栄養科 

………

【目的】 デンプン系,グアーガム系,キサンタンガム系およびその他の各種市販とろみ調整食品が緑茶,牛乳,オレンジジュースおよび 味噌汁に与える影響を物性面から解析し,性能に基づくとろみ調整食品の分類を行うことを目的とした。

【方法】15種類のとろみ調整食品を4種類の食材に溶解して調製した各種とろみ液の粘度およびテクスチャーを測定し,とろみ調整食品 の機能性を反映する指標として,粘度力価,添加時および安定時粘度ばらつき,初期粘度発現率および付着性を算出した。さらにこれ ら5つの指標を用いて主成分分析およびクラスター分析を行った。

【結果】 粘度力価は4種の食材すべてについてグアーガム系が大きかった。添加時および安定時の粘度のばらつきはとろみ調整食品の種 類と食材の組合せによって傾向が異なった。初期粘度発現率は食材によって特徴があり,緑茶ではキサンタンガム系が,オレンジジュー スではデンプン系が高い値を示した。付着性は4種の食材すべてについてデンプン系が大きかった。5つの指標を用いて食材別に主成 分分析を行なうと,とろみ成分による分類とは異なる分布を示した。一方,全食材の5つの指標を説明変数にとり,クラスター分析を 行った結果,とろみ成分に応じたクラスターが形成された。

【結論】 市販とろみ調整食品が食材の物性に及ぼす影響をもとに分類を行なうと,各とろみ剤の特徴が食材の種類によって異なることが 明らかとなった。したがって,とろみを付与する食材や目的に応じて適切な製品を選択することが重要である。

栄養学雑誌,Vol.70 No.1 592 70(2012)

キーワード: とろみ調整食品,主成分分析,クラスター分析

連絡先:鈴木靖志 〒582-0028 大阪府柏原市玉手町24-12 サラヤ株式会社バイオケミカル研究所          電話 072-977-8000 FAX 072-977-2224 E-mail [email protected]

………

(2)

能の点から評価することを試みた。具体的には15種の市 販とろみ調整食品を,4種の食材に添加して各種物性を 測定し,物性値に基づいて,機能性を反映する複数の指 標を定め,個々の製品の機能特性を客観的に数値化する ことを試みた。また,多変量解析の手法を適用し,複数 の指標を総合的に解析することにより,製品の総括的な 特徴を基にした分類を行った。

Ⅱ.方  法

………

1.試   料

 本研究では,代表的な市販とろみ調整食品15種類を選 択して試験に用いた。デンプン系とろみ調整食品(デン プン系)3種をそれぞれA,B,C,グアーガム系とろみ調 整食品(グアーガム系)3種をそれぞれD,E,F,キサン タンガム系とろみ調整食品(キサンタンガム系)6種を それぞれG,H,I,J,K,L,その他(牛乳・濃厚流動食用)

のとろみ調整食品(その他)3種をそれぞれM,N,Oと 表記する。とろみ調整食品の分類は原材料の表示と濃厚 流動食に対する適性についての表示から推定した。原材 料に増粘多糖類が含まれない場合はデンプン系,デンプ ンと増粘多糖類の両方が含まれる場合はグアーガム系,

デンプンが含まれない場合はキサンタンガム系とし,濃 厚流動食にもとろみがつけられることを特徴としている ものはその他に分類した。また,食材は緑茶,牛乳,オ レンジジュースおよび味噌汁を用いた。成分的に特徴の 異なる食材を試験することによって,個々のとろみ調整 食品の性能を詳細に検討する目的で選定した。すなわち,

頻繁にとろみ調整に利用され,可溶性固形分含量の低い

食材として緑茶を,たんぱく質と脂質を含みカルシウム の補給源である食材として牛乳を,有機酸を多く含む食 材としてオレンジジュースを,塩濃度の高い食材として 味噌汁を選択した。供試とろみ調整食品とその会社名,

原材料名を表1に,供試食材とその会社名,原材料名,

電気伝導度およびpHを表2に示す。

2.食材の電気伝導度およびpHの測定

 4種類の食材について導電率計(Standard TDScan40 Tester,Eutech instruments)を用いて電気伝導度を,pH メーター(Twin pH waterproofcompactpH meterB-212,

堀場製作所)を用いてpHを測定した。

3.粘 度 測 定 1)測定試料の調製法

 試料の調製および測定時の温度は,介護現場の実情に 則して緑茶では 40°C,牛乳では 20°C,オレンジジュー スでは 10°C,味噌汁では 40°Cとした。とろみ調整食品

60 栄養学雑誌

60

表1 供試とろみ調整食品A~Oの原材料 原   材   料 会社

商品名 分  類

加工澱粉,デキストリン S社

A

デンプン系 B F社 とうもろこし,マルトデキストリン でん粉,デキストリン

K社 C

デキストリン,増粘多糖類,でん粉 FC社

D

グアーガム系 E N社 デキストリン,でん粉,増粘多糖類

でん粉(馬鈴薯),増粘多糖類,デキストリン M社

F

デキストリン,増粘多糖類 SA社

G

キサンタンガム系

デキストリン,増粘剤(キサンタンガム),乳酸Ca,クエン酸三Na KU社

H

デキストリン,増粘多糖類,pH調整剤 FC社

I

デキストリン,増粘多糖類,塩化カリウム,甘味料(スクラロース)

L社 J

デキストリン,増粘多糖類 NU社

K

デキストリン,増粘多糖類,塩化カリウム N社

L

デキストリン,増粘多糖類,塩化カリウム SA社

M

そ の 他 N A社 デキストリン,イヌリン,増粘多糖類,塩化カリウム デキストリン,増粘多糖類,グルコン酸Na

N社 O

表2 供試食材の原材料,電気伝導度およびpH 電気伝導度 pH

(mS/cm) 原材料

会社 食 材

6.6   600

緑茶,ビタミンC I社

緑  茶

6.6 7,000

生乳 ME社 牛  乳

4 7,000

IZ社 オレンジ オレンジ

ジュース

5.5 23,000

米みそ,風味原 料(そうだかつ お節粉末,かつ お 節 粉 末),砂 糖,食塩,酵母 エキス,調味料

(アミノ酸等)

AS社 味 噌 汁

(3)

Vol.70No.

を添加してから60分後に下記粘度測定条件にて 4,000~

5,500mPa・sとなるように各食材への添加量を調整した

(表3)。この粘度域はプレーンヨーグルトの実測値をも とにしており,中粘度域に相当する。プレーンヨーグル トは,均一なペースト状であり,嚥下機能や摂食機能に 障害を持つ人のリハビリテーションの初期における訓練 食としてよく用いられる8,10)。食材 90mlを内径 40mm の規格瓶に充填し,恒温槽に静置して温度調整した後,

とろみ調整食品の製品ごとに決めた添加量分を加えると 同時に,スパーテルを用いて1秒間に3回転の速さで30 秒間撹拌し,恒温槽へ戻した。全てのとろみ調整食品と 食材の組み合わせについて,試料は3個ずつ調製し,物 性測定に供した。

 2)BL型回転粘度計による粘度の測定

 各試料の粘度の経時変化を以下の方法で検討した。と ろみ調整食品添加直後(0分),および添加後5,10,15,

20,30,60,120分用の試料を3個ずつ調製し,B型回転 粘度計(BL型,東機産業(株))を用い,12rpmにおけ る60秒後の指度を読み取り,換算定数を乗じて見かけの 粘度を求めた。ローターは,No.3およびNo.4を使用し た。なお,1個の試料につき測定回数は1回とした。恒 温槽の温度調整は設定温度 ±0.2°Cの範囲で制御し,室 温に置かれた粘度計にて測定を行った。恒温槽の試料を 取り出してから2分以内に測定を終了することにより,

測定前後の試料の温度変動を設定温度 ±1°Cの範囲内に 制御して測定を行った。

3)機能性を反映する指標の算出法

 粘度測定値からとろみ調整食品の機能性を反映する指 標として以下の①~④項目について算出した。

①粘度力価(mPa・s/g):とろみ調整食品の添加量に対 する60分後の粘度を粘度力価とした。

②添加時粘度ばらつき(%):3個の試料のとろみ調整 食品添加10分後の粘度測定値を,添加60分後の平均 粘度測定値で除して,100を乗じた値から標準偏差を 求め,「とろみ調整操作による添加時粘度のばらつ き」の指標とした。

③安定時粘度ばらつき(%):3個の試料のとろみ調整 食品添加120分後の粘度測定値を,添加60分後の平均 粘度測定値で除して,100を乗じた値から標準偏差を 求め「とろみ調整操作による安定時粘度のばらつき」

の指標とした。

④初期粘度発現率(%):とろみ調整食品添加5分後の 粘度を60分後の粘度で除して,100を乗じた値を「粘 度発現性」の指標として算出した。とろみ調整食品 添加後の,より早い段階での粘度発現率を比較する

ため,5分後の粘度を用いた。

4.テクスチャー測定

 テクスチャー特性の測定は厚生労働省が定めた,えん 下障害者用食品の許可基準11)に基づいて行った。すなわ ち,粘度測定用試料と同様の方法で3個ずつ調製した試 料を直径 40mmの容器に,高さ 15mmに充填し,測定 に供した。測定は,レオメーター(SUN RHEO METER CR-500DX((株)サン科学))により,直径 20mmのプラン ジャーを用い,定速運動方式により圧縮速度 10mm/sec, クリアランス 5mmで行った。得られたテクスチャー記録 曲線より,プランジャー面積を考慮し,かたさ(N/m) および付着エネルギー(J/m)を算出した。

 指標⑤付着性(J/m・N):一般にとろみ調整食品でとろ みをつけた食材においては,かたくなるほど付着エネル ギーも大きくなる性質があることから,かたさの因子を 除外して「べたつき」を数値化するため,とろみ調整食 品を添加してから60分後の,各溶液の付着エネルギーを,

かたさ(N/m)×100の値で除して,100N/mあたりの 付着エネルギーを求め,付着性とした。

5.統 計 解 析

 機能性に関する指標①~⑤を説明変数として主成分分 析によるマッピングを行った。本解析には統計解析ソフ ト「多変量解析 Version 1.18」(© 神田公生)を使用し,

相関行列による主成分分析を行った(信頼度95%)。第一 主成分と第二主成分のスコアによる描画はExcel2003を 用いて行った。また,各指標を正規化し,ユークリッド 距離/ウォード法によるクラスター分析を行い,デンド ログラムによる分類表示を行った。本解析には統計解析 ソフトRバージョン2.8.1(R Foundation,Vienna,Austria) を使用した。測定値平均の群間比較に関しては一元配置 の分散分析を行い,Tukeyの多重比較にて検定し,p< 0.05を有意差ありと判定した。

Ⅲ.結  果

………

1.食材の電気伝導度およびpH

 本報で用いた4種類の食材について実測した電気伝導 度とpHを表2に示す。緑茶,牛乳,オレンジジュース,

味 噌 汁 の 順 に,電 気 伝 導 度 は 600,7,000,7,000,

23,000mS/cm,pHは6.6,6.6,4.0,5.5であった。

2.添加量および粘度力価の比較

 各食材にとろみ調整食品を溶解し,とろみ調整食品添 加から60分後の粘度が 4,000~5,500mPa・sとなるよう に調整した時の溶液 100mlあたりの添加量(g)および 粘度力価(mPa・s/g)を表3に示す。

61 61

(4)

 とろみ調整食品の分類別に粘度力価の高いものから順 位づけをすると4種類すべての食材についてグアーガム 系,キサンタンガム系,デンプン系の順番となり,粘度 力価に関してはとろみ成分による分類ごとに一定の傾向 が見られ,特に緑茶と牛乳において有意差が認められた。

オレンジジュースと味噌汁についてはグアーガム系とデ ンプン系,キサンタンガム系とデンプン系の間に有意差 が認められた。また,キサンタンガム系のなかで,Iにつ いては,グアーガム系と同程度の高い粘度力価を示した。

その他のMは牛乳ではグアーガム系と同程度の粘度力価 を示したが,緑茶ではキサンタンガムと同程度,オレン ジジュースと味噌汁ではデンプン系よりも高く,キサン タンガム系よりも低い粘度力価を示した。Nは,緑茶,

オレンジジュースおよび味噌汁ではデンプン系よりも高 く,キサンタンガム系よりも低く,牛乳ではグアーガム 系と同程度の粘度力価を示した。Oは,牛乳ではグアー ガム系と同程度で,緑茶と味噌汁ではデンプン系と同程 度の粘度力価を示した。とろみ成分による分類別で食材 間の粘度力価を比較すると,キサンタンガム系では緑茶 が最も低く,オレンジジュースが最も高く,有意差が認 められ,それ以外の食材間での有意差は認められなかっ た。

3.粘度安定性

 とろみ調整食品添加時(10分)の粘度ばらつきを各と ろみ調整食品,および食材について算出した結果を表4 に示す。10%以上のばらつきを示したのは緑茶ではキサ ンタンガム系のK,牛乳ではグアーガム系のDとE,キ サンタンガム系のG ~ L,オレンジジュースではデンプン 系のAとC,キサンタンガム系のI以外,味噌汁ではキ サンタンガム系のG~Iであり,キサンタンガム系のばら つきが大きい傾向が認められた。それに対し,その他で はM,N,Oとも4種類の食材全てにおいて10%未満の ばらつきであった。とろみ成分分類ごとの平均値で食材 別に比較すると緑茶と味噌汁の添加時粘度ばらつきは全 てのとろみ成分分類で10%未満であった。牛乳は添加時 ばらつきの大きい順にキサンタンガム系が25%,グアー ガム系が11%およびデンプン系が6%であった。オレン ジジュースは添加時ばらつきの大きい順にデンプン系が 30%,キサンタンガム系が15%およびグアーガム系が 7%であった。添加時ばらつきは,牛乳では,デンプン 系がキサンタンガム系に対して有意に低い値を示し,キ サンタンガム系では牛乳が緑茶と味噌汁に対して有意に 高く,オレンジジュースは緑茶に対して有意に高い値を 示した。

62 栄養学雑誌

62

表3 とろみ調整食品を添加した食材の 100mlあたりの添加量(g)と粘度力価 *(mPa・s/g) 味 噌 汁 オレンジジュース

牛  乳 緑  茶

とろみ調整食品

粘度力価 添加量

粘度力価 添加量

粘度力価 添加量

粘度力価 添加量

1,206 4.0

 940 5.2

1,070 4.6

 640 7.6

A デンプン系

 948 5.7

 935 5.6

1,106 4.9

 767 6.1

B

 649 8.3

 686 7.7

 977 5.5

 550 8.5

C

934± 279b 854± 145b

1,051± 67c 652± 109c

平均

2,185 2.1

3,194 1.6

2,820 1.6

2,837 1.7

D

グアーガム系 E 1.6 2,833 1.7 2,869 1.6 3,044 2.1 2,529 3,507 1.5

3,695 1.4

3,627 1.3

3,129 1.4

F

2,740± 686a  3,311± 341a

3,105± 452a 2,933± 170a

平均

2,068 2.4

2,385 2.2

1,977 2.7

1,833 2.8

G

キサンタン ガム系

2,182 2.3

2,286 2.1

1,946 2.4

1,829 2.7

H

3,195 1.7

3,741 1.4

3,067 1.7

2,337 1.9

I

1,676 3.0

2,389 2.0

1,937 2.7

1,700 2.6

J

2,418 2.0

2,695 1.9

2,106 2.2

1,908 2.4

K

2,024 2.5

2,460 2.0

2,061 2.4

1,786 2.8

L

2,261± 518ayz 2,659± 548ay

2,182± 439byz 1,899± 225bz

平均

1,511 2.8

2,117 2.3

3,017 1.8

1,769 2.6

M

そ の 他 N 4.0 1,204 1.8 2,839 2.5 1,896 3.0 1,419  993 5.1

1,170 3.5

2,835 1.7

 942 5.0

O

*とろみ調整食品A~Oの粘度力価は平均値(n=3)

平均:平均値±標準偏差

平均値の群間比較は一元配置分散分析を行い,Tukeyの多重比較により有意差の検定をした。

縦列において異なる文字間(a~c),および横列において異なる文字間(y,z)に5%水準の有意差があることを示す。

(5)

Vol.70No.

63 63

表4 とろみ調整食品を添加した食材の添加時粘度(10分)のばらつき *(%)

オレンジ 味噌汁 牛 乳 ジュース

緑 茶 とろみ調整食品

7 34

8 A 9

デンプン系 B 2 4 8 9

2 48

5 7

C

6± 4 30± 20

6± 2b 6± 4

平均

6 6

18 D 5

グアーガム系 E 4 13 8 2

6 7

2 6

F

5± 2 7± 1

11± 8ab 5± 1

平均

11 16

35 G 3

キサンタンガム系

10 15

14 2

H

10 6

19 4

I

5 13

19 8

J

9 16

28 K 10

1 26

32 1

L

8± 4yz 15± 6xy

25± 8ax 5± 4z

平均

4 6

4 8

M

そ の 他 N 2 4 3 7

7 4

7 8

O

*とろみ調整食品A~Oの数値は平均値(n=3)

平均:平均値±標準偏差

平均値の群間比較は一元配置分散分析を行い,Tukeyの多重比較により有意差の検定をした。

縦列において異なる文字間(a,b),および横列において異なる文字間(x,y,z)に5%水準の 有意差があることを示す。

表5 とろみ調整食品を添加した食材の安定時粘度(120分)のばらつき *(%)

オレンジ 味噌汁 牛 乳 ジュース

緑 茶 とろみ調整食品

4 22

13 A 14

デンプン系 B 8 15 4 4

6 26

10 14

C

5± 1 17± 12

13± 3 12± 4

平均

24 8

27 D 7

グアーガム系 E 8 12 13 24

1 5

5 2

F

16± 13 9± 4

15± 11 6± 3

平均

7 10

6 G 2

キサンタンガム系

10 11

13 7

H

3 2

16 12

I

11 6

14 7

J

5 2

12 K 8

3 4

6 5

L

7± 3 6± 4

11± 4 7± 3

平均

8 10

3 6

M

そ の 他 N 6 3 5 4

18 3

3 2

O

*とろみ調整食品A~Oの数値は平均値(n=3)

平均:平均値±標準偏差

(6)

 安定時(120分)の粘度ばらつき(表5)は,とろみ成 分分類ごとの平均で比べると,10%未満となったのは,

緑茶とオレンジジュースではグアーガム系とキサンタン ガム系,味噌汁ではデンプン系とキサンタンガム系,緑 茶と牛乳ではその他であった。とろみ調整食品を単品ご とに比較すると,4種類全ての食材に対して安定時ばら つきが10%未満となったのはグアーガム系のF,キサン タンガム系のL,その他のNのみであった。しかし,安 定時ばらつきは食材間およびとろみ成分分類間に有意差 は認められなかった。

4.初期粘度発現率

 4種類の食材について初期粘度発現率を表6に示す。

 初期粘度発現率は,緑茶においては,キサンタンガム 系がデンプン系およびグアーガム系よりも,オレンジ ジュースにおいてはデンプン系がグアーガム系およびキ サンタンガム系よりも有意に高い値を示し,味噌汁にお いてはキサンタンガム系がデンプン系に対して有意に低 い値を示したが,牛乳においてはとろみ成分分類間に有 意差は認められなかった。このように,初期粘度発現率 を基準にしてとろみ成分分類間の性能を比較すると食材 による特徴があることが示された。また,各とろみ成分

分類において食材間の初期粘度発現率を比較すると,デ ンプン系ではオレンジジュースと味噌汁が牛乳に対して 有意に高く,グアーガム系では緑茶と味噌汁が牛乳とオ レンジジュースに対して有意に高く,キサンタンガム系 では全ての食材間に有意差が認められ,高いほうから緑 茶,味噌汁,オレンジジュース,牛乳の順であった。

5.付 着 性

 付着性の結果を表7に示す。付着性は,緑茶,オレン ジジュースおよび味噌汁では,キサンタンガム系が低く,

デンプン系が高い結果となった。その中で,味噌汁のグ アーガム系およびキサンタンガム系がデンプン系よりも 低値を示し,有意差が認められた。キサンタンガム系で は緑茶が他の食材に対して有意に高い付着性を示した。

6.多変量解析

 機能性指標①~⑤を説明変数とした主成分分析により 得られた第一主成分(PC1)をx軸,第二主成分(PC2)

をy軸に取り,各とろみ調整食品の主成分スコアをもと にしたマッピングを図1に示す。どの食材においても,

デンプン系は,他のとろみ調整食品とは異なる領域にプ ロットされたが,グアーガム系およびキサンタンガム系 は,それぞれにグループ化されなかった。

64 栄養学雑誌

64

表6 とろみ調整食品を添加した食材の初期粘度発現率 *(%)

オレンジ 味噌汁 牛 乳 ジュース

緑 茶 とろみ調整食品

110 74

42 85

A

デンプン系 B 56 11 85 93

81 80

23 47

C

95± 15ay 80± 6ay

25± 16z 63± 20byz

平均

69 30

11 67

D

グアーガム系 E 75 37 35 92

77 15

8 50

F

79± 12aby 27± 10bz

19± 16z 64± 13by

平均

67 29

15 106

G

キサンタンガム系

59 36

18 H 103

58 14

7 95

I

61 27

16 95

J

68 37

19 108

K

71 32

28 L 106

64± 5bx 29± 8by

17± 7z 102± 6aw

平均

37 17

11 83

M

そ の 他 N 72 27 33 53

44 65

42 O 34

*とろみ調整食品A~Oの数値は平均値(n=3)

平均:平均値±標準偏差

平均値の群間比較は一元配置分散分析を行い,Tukeyの多重比較により有意差の検定をした。

縦列において異なる文字間(a,b),および横列において異なる文字間(w~z)に5%水準の有意 差があることを示す。

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Vol.70No.

 緑茶におけるPC1とPC2の寄与率はそれぞれ38.4%

と24.1%であった。PC1は正方向に行くほど粘度力価が 低く,安定時粘度ばらつきが大きく,付着性が高い,PC2 は,正方向に行くほど,初期粘度発現性が高く,添加時 粘度ばらつきが小さいことを反映する成分である。緑茶 の場合,グアーガム系およびキサンタンガム系は,ほぼ 軸の中心にプロットされたが,グアーガム系のFとその 他のOは,他の製品とは離れた位置にプロットされた。

Fに関しては,付着性が極めて低く,Oに関しては,初 期粘度発現性が低いことを反映していた。

 牛乳におけるPC1とPC2の寄与率はそれぞれ40.2%

と26.0%であった。PC1は正方向に行くほど粘度力価が 高く,付着性が低い,PC2は,正方向に行くほど初期粘度 発現性が高いことを反映する成分である。牛乳において は,特にPC1の値で,グアーガム系以外はとろみ成分の 分類ごとにグループ化された。また,グアーガム系のE は初期粘度発現性が他のグアーガム系と比較して良好で あることから,PC2の正方向にプロットされ,キサンタ ンガム系のIは,初期粘度発現性が低いことから,PC2 の負方向にプロットされた。

 オレンジジュースにおける寄与率はPC1とPC2でそれ ぞれ60.1%と27.5%であった。PC1は正方向に行くほど 粘度力価が高く,添加時及び安定時の粘度ばらつきが小 さく,初期粘度発現性が低い,PC2は正方向に行くほど 付着性が低いことを反映する成分である。オレンジ ジュースにおいては,グアーガム系とキサンタンガム系 は比較的近い位置にプロットされたのに対して,デンプ ン系およびその他のOは明らかに違う位置にプロットさ れた。また,デンプン系のBは他のデンプン系と比較し て付着性が明らかに高く,粘度のばらつきが小さいこと から,異なる領域にプロットされた。

 味噌汁における寄与率はPC1とPC2でそれぞれ38.5%

と24.7%であった。PC1は正方向に行くほど粘度力価が 低く,初期粘度発現性と付着性が高い成分であり,PC2 は正方向に行くほど添加時粘度ばらつきが大きく,安定 時粘度ばらつきが小さいことを反映する成分である。味 噌汁においては,グアーガム系のFとキサンタンガム系 が近い位置にプロットされたが,これは,他のグアーガ ム系と比較して,付着性が低いことと安定時の粘度のば らつきが小さいことを反映している。

65 65

表7 とろみ調整食品を添加した食材の付着性 *(J/m・N) オレンジ 味噌汁 牛 乳 ジュース

緑 茶 とろみ調整食品

31 16

19 A 32

デンプン系 B 25 32 47 47

39 19

17 36

C

39± 8a 27± 17

23± 8 31± 6

平均§

23 19

15 D 31

グアーガム系 E 28 16 15 20

9 13

7 8

F

17± 7b 16± 3

13± 5 22± 13

平均§

14 12

11 G 20

キサンタンガム系

15 9

18 18

H

16 10

16 20

I

14 11

13 20

J

14 17

14 K 18

16 15

17 23

L

15± 1bz 12± 3z

15± 3z 20± 2y

平均§

10 11

7 9

M

そ の 他 N 11 6 10 10

14 18

6 12

O

*付着性:100N/mあたりの付着エネルギー(J/m・N)

とろみ調整食品A~Oの数値は平均値(n=3)

平均:平均値±標準偏差

§平均値の群間比較は一元配置分散分析を行い,Tukeyの多重比較により有意差の検定をした。

縦列において異なる文字間(a,b),および横列において異なる文字間(y,z)に5%水準の有 意差があることを示す。

(8)

66 栄養学雑誌

66

図2 食材の物性からみたとろみ調整食品のクラスター解析による分類 説明変数:機能性指標①~⑤は図1と同じ。■はデンプン系(A,B,C),滑

はグ アーガム系(D,E,F),○はキサンタンガム系(G,H,I,J,K,L),◇はその他

(M,N,O)のとろみ調整食品を示す。

図1 とろみ調整食品を添加した食材の物性に関する主成分分析によるマッピング

PC1:第一主成分,PC2:第二主成分。矢線:因子負荷量ベクトル。①粘度力価,②添加時粘度ばらつき,③安 定時粘度ばらつき,④初期粘度発現率,⑤付着性,■はデンプン系(A,B,C),滑

はグアーガム系(D,E,F),○

はキサンタンガム系(G,H,I,J,K,L),◇はその他(M,N,O)のとろみ調整食品を示す。

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Vol.70No.

 さらに,全ての食材について,指標①~⑤の結果を説 明変数としてユークリッド距離を算出し,ウォード法に てクラスター解析を行い,とろみ調整食品を分類した結 果を図2に示す。この場合にはとろみの主要成分に応じ たクラスターが形成されているが,唯一,グアーガム系 のFはその他(牛乳・濃厚流動食用)のクラスターに含 まれた。

Ⅳ.考  察

………

 様々な食材に対するとろみの付き方は食材の電気伝導 度やpHの影響を受けると考えられる。電気伝導度は電 解質の濃度を反映しているが,今回用いた食材の中でも 緑茶と味噌汁では40倍弱の差があり(表2),この影響を 強く受けるタイプのとろみ調整食品やとろみ機能性指標 もあると推察される。pHも食材によって4.0~6.6と大 きな幅があり(表2),とろみのつき方に影響を及ぼす可 能性がある。温度の因子に関しては,Garciaら12)が,増 粘多糖類を主体としたとろみ調整食品では,温度による 粘度の差はほとんど見られなかったのに対し,デンプン を主体としたとろみ調整食品では,有意に粘度の差が見 られたと報告している。したがって,本報では各食材が 提供される実際の温度設定を用い,温度の影響も加味さ れ,臨床に則した状況下でのとろみ物性の測定を行った。

 粘度力価は,どの食材においてもグアーガム系が最大 であったが(表3),キサンタンガム系のIはグアーガム 系と同程度であった。この理由はいくつか考えられるが,

製品中の増粘多糖類の配合割合が多い可能性や,キサン タンガムの中でも分子量の大きな原料を使用している可 能性,またはキサンタンガム以外の増粘多糖類が配合さ れている可能性等が考えられる。Milasらの報告による と13),分子量3.1×10~7.0×10のキサンタンガムにお いて,分子量が大きいほど粘度が高くなることが示され ている。また,キサンタンガム以外の増粘剤を配合して いる場合,例えば,キサンタンガムとローカストビーン ガムを併用した場合,キサンタンガムの側鎖がローカス トビーンガムの主鎖との分子間相互作用を起こすために,

非ニュートン流体かつシュードプラスチックな性質を持 つ,高い粘度の溶液となることが報告されている14)。ま た,牛乳においては,M,N,Oも,グアーガム系と同 程度の粘度力価であった。これらのとろみ調整食品は商 品特長から見ても特に乳成分と反応して粘度を上昇させ る必要があると考えられ,カラギーナンのような増粘多 糖類を多く含むことによって,このような特徴を発揮さ せていると推察される。

 また,同じとろみ調整食品であっても,食材が異なれ ば,同じ粘度に調整するための添加量が異なり,最大約 3.3%(Oの場合)も異なることが示された(表3)。高 橋らは,溶液中の糖がかたさを増大させ,酸がかたさを 低下させることを報告しており15),食材中の成分がかた さやその他の物性に影響を及ぼすことが知られている。

今回使用した4種類の食材は糖や酸だけでなく,タンパ ク質濃度,脂質濃度,電気伝導度,pHなども異なること から,これらの要因が粘度力価に影響を及ぼしていると 考えられる。

 とろみ調整食品添加から10分後の粘度のばらつきはと ろみ調整食品や食材の性質にも影響を受けるが,とろみ 調整食品の投入方法と混ぜ方などが特に強く影響してい ると考えられる。逆に120分後でのばらつきについては,

とろみ調整食品の種類や,とろみ調整食品を添加する食 材の性質に依存する部分が大きいと考えられる。例えば,

Hamletらは,デンプンを主体としたとろみ調整食品をリ ンゴジュースに添加してから30分以上経過しても,粘度 が上昇し続けると報告している16)。このような性質は粘 度発現性のばらつきに影響するものと考えられる。とろ み調整をするたびに粘度がばらつくような商品は実用上,

非常に扱いにくく,目的とした粘度の溶液を提供できて いない可能性も高く,極端な場合には事故につながる可 能性も否定できない。

 緑茶に関しては,デンプン系では,安定時粘度のばら つきが,グアーガム系およびキサンタンガム系より大き い傾向にあった(表5)。Sopadeらの報告によると,デ ンプン,グアーガムおよびキサンタンガムを主体とした とろみ調整食品で比較すると,キサンタンガム系が最も 水の吸収量が多く,拡散速度定数は増粘多糖類を主成分 としたとろみ調整食品の方が,デンプンを主体としたと ろみ調整食品より高いことを示している17)。デンプン系 は,吸水量が少なく,拡散速度定数が低いうえに,添加 量も多く必要なことから安定的に粘度を発現させるのが 難しいと考えられる。

 牛乳に関しては,デンプン系の添加時粘度ばらつきは,

グアーガム系およびキサンタンガム系のとろみ調整食品 と比較して小さいことが示されたが(表4),デンプン系 に関してだけ見ると緑茶と牛乳は同程度にばらついてい ることから,グアーガム系およびキサンタンガム系の牛 乳との相性が緑茶との相性よりも悪いことを反映してい ると考えられる。グアーガム系の中では,Fのばらつき が添加時および安定時とも小さかった(表4,表5)。F はグアーガム系であるが,本研究における物性特徴を基 にしたクラスター解析ではその他のクラスターに分類さ

67 67

(10)

れることから,グアーガム以外の増粘多糖類の配合が物 性特徴に大きな影響を及ぼしている可能性があると推察 される。グアーガムと相乗効果を発揮する増粘多糖類と してキサンタンガムがあげられる。この2種類の増粘多 糖類を併用すると,溶液中で安定な構造となり,相乗的 に粘度が高まることが知られており18),製品中の増粘多 糖類の割合を低くすることが可能である。仮に少ない増 粘多糖類を溶液に膨潤させていると考えると粘度発現性 のばらつきは小さくなることが容易に推測できる。本実 験では,Fは全ての食材について,添加時および安定時 とも粘度のばらつきが10%未満の値を示したので,調製 ごとのばらつきの少ない製品といえる。

 初期粘度発現率は,緑茶では高く,味噌汁,オレンジ ジュース,牛乳の順に低下する傾向が見られ,特に緑茶 のキサンタンガム系が高かった(表6)。Garciaら5)は,

オレンジジュースや牛乳において,デンプン主体のとろ み調整食品で調整した溶液が最も粘度が高かったと報告 しており,その理由として,牛乳には,とろみ調整食品 との相互作用が見られるようなミネラルや他の成分が含 まれているために,溶液の粘度が高くなったと推察して いる。可溶性成分の少ない緑茶のような食材は,とろみ 成分の膨潤を阻害する成分も少ないため粘度が出やすく,

逆に牛乳のように様々な成分が含まれている食材はとろ み成分の性能発現に影響を及ぼすことが知られているが,

それに加えてとろみ調整食品中のとろみ成分が膨潤しに くく,初期粘度発現率が低下すると考えられる。オレン ジジュースでの初期粘度発現率はデンプン系が高い値を 示した。Garciaら12)のデータではオレンジジュースのデ ンプン系の粘度は10分後から30分後の間に20%程度上昇 することから,最初の10分の間に80%程度まで粘度が発 現していると考えられる。我々の結果は5分で60分の粘 度の80%を発現していることから,5~10分という初期 段階での粘度発現率はGarciaらの結果と同等レベルと考 えられる。味噌汁では,デンプン系およびグアーガム系 の初期粘度発現率が高い傾向にあった。Shoら19)による と,キサンタンガムは,0.005M以上のNaCl溶液中で は,ダブルへリックス構造がほとんど崩れ,粘度に影響 が見られる。味噌汁は緑茶と比べて塩濃度の高い溶液で あり,電気伝導度は高かった。したがって,味噌汁中で は増粘多糖類の構造も崩れやすい環境にあると推察され る。このような分子構造上の不安定化が初期粘度発現率 に影響している可能性があると考えられる。

 付着性は高いほうからデンプン系,グアーガム系,キ サンタンガム系の順であったが,例外としてグアーガム 系Fはキサンタンガム系よりも低い付着性を示した(表

7)。Fは原材料表示からの推定ではグアーガム系である が,添加時および安定時のばらつきも小さく,グアーガ ム以外の増粘剤として,例えばキサンタンガムなどが配 合されている可能性が考えられる。これらの増粘剤を併 用することで,溶液の粘弾性に変化が見られ20),付着性 にも影響を及ぼしたと考えられる。また,付着性はデン プン系の中で,AとCは比較的似た挙動を示し,緑茶と 味噌汁で高い傾向があり,Bは緑茶が最も低く,オレン ジジュースと味噌汁で高い傾向を示した(表7)。Bは,

AとCよりも粘度測定時の目盛りが安定するのに時間が かかったことからチクソトロピー性が高いと考えられ,

また,溶かす際に最もダマになりにくかった。特にオレ ンジジュースにおいて,AとCで添加時および安定時の 粘度のばらつきが大きくなっているが,Bはばらつきが きわめて小さくなっていることからも,AとCより膨潤 しやすいことが示唆される。このように,Bの膨潤度合 いが大きいことが,牛乳,オレンジジュースおよび味噌 汁の付着性を高くしている可能性も考えられる。

 高橋ら21,22)は,かたさを 5×10N/mにそろえた場合 の付着性は,水溶液の場合,キサンタンガム系が有意に 小さく,次にデンプン系が小さく,グアーガム系が最も 大きいと報告している。今回の結果では,グアーガム系 の方がデンプン系よりも付着性は低く,特に味噌汁では デンプン系の付着性はグアーガム系およびキサンタンガ ム系よりも有意に高い結果となった。高橋らは水溶液を 用いて付着性を測定しているが,我々は食材を用いてお り,使用した溶液の特性が付着性の発現に影響している 可能性が考えられる。また,高橋らはとろみ調整食品添 加から30分後に付着性を測定しているが,我々はとろみ 調整食品添加から60分後に測定している。特にデンプン は添加後の経過時間,溶液の種類および調製温度によっ て膨潤状態が異なる可能性があり,付着性の傾向に差が みられた可能性があると推察される。

 今回の測定結果を元に算出した5つの指標を説明変数 として,食材別に主成分分析を行ったところ,どの食材 においても,デンプン系は,他のとろみ調整食品と大き く異なる位置にプロットされたが,グアーガム系および キサンタンガム系では,とろみ成分分類に応じてはグ ループ化されなかった。(図1)。しかし,全ての食材に ついて5つの指標を説明変数としてクラスター分析を行 うと,とろみ調整食品Fを除き,とろみの主要成分別に 明確なクラスターを形成した(図2)。すなわち,総括的 に物性特徴を統計処理すると,とろみ成分による分類分 けに応じたクラスターが形成されることが確認された。

これらの結果より,全体的な物性評価ではとろみ成分に

68 栄養学雑誌

68

(11)

Vol.70No.

よってグループ化が可能であるが,食材別のマッピング は異なっており,とろみを付与する食材や目的によって,

適切なとろみ調整食品を選択することが必要と考えられ る。

Ⅴ.結  論

………

 市販とろみ調整食品が食材の物性に及ぼす影響をもと に分類を行なうと,各とろみ剤の特徴が食材の種類に よって異なることが明らかとなった。したがって,とろ みを付与する食材や目的に応じて適切な製品を選択する ことが重要である。

利益相反

 利益相反に相当する事項はない。

文  献

………

1) O’Gara,J.A.:Dietary adjustmentsand nutritionalther- apy during treatmentfororal-pharyngealdysphagia, Dysphagia,4,209–212(1990)

2) Kuhlemeier,K.V.,Palmer,J.B.,Rosenberg,D.:Effect ofliquid bolusconsistency and delivery method on aspira- tion and pharyngealretention in dysphagiapatients, Dysphagia,16,119–122(2001)

3) Penman,J.P.,Thomson,M.:A review ofthe textured dietsdeveloped forthe managementofdysphagia,J. Hum.Nutr.Diet.,11,51–60(1998)

4) NationalDysphagiaTask Force:Nationaldysphagia diet:Standardization foroptimalcare(2002)American DieteticAssociation,Chicago,IL

5) Garcia,J.M.,Chambers,E.,Matta,Z.,etal.:Viscosity measurementsofnectar-and honey-thick liquids:product, liquid,and time comparisons,Dysphagia,20,325–335

(2005)

6) Matta,Z.,Chambers,E.,Garcia,J.M.,etal.:Sensory characteristicsofbeveragesprepared with commercial thickenersused fordysphagiadiets,J.Am.Diet.Assoc., 106,1049–1054(2006)

7) 出戸綾子,江頭文江,栢下 淳:キサンタンガム系の 市販とろみ調整食品の使用方法に関する研究─液体に添 加する場合─,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 誌,12,197–206(2008)

8) 大越ひろ:トロミ調整食品の基礎知識と使うときに気

をつけたいこと,臨牀看護,35,506–511(2009)

9) 出戸綾子,山縣誉志江,栢下 淳:各種市販トロミ調 整食品の物性に及ぼす温度の影響,県立広島大学人間文 化学部紀要,2,39–47(2007)

10) 尾本和彦:小児の摂食障害─脳発達障害児の摂食指導に おける食物調理の重要性─,臨床栄養,83,46–51(1993)

11) 厚生労働省医薬食品局食品安全部長:特別用途食品の 表示許可等について,食安発第0212001号,平成21年2 月12日

12) Garcia,J.M.,Chambers,E.,Matta,Z.,etal.:Serving temperature viscosity measurementsofnectar-and honey- thick liquids,Dysphagia,23,65–75(2008)

13) Milas,M.,Rinaudo,M.,Tinland,B.:The viscosity dependence on concentration,molecularweightand shearrate ofxanthan solution,Polym.Bull.,14,157–164

(1985)

14) Casas,J.A.,Garcia-Ochoa,F.:Viscosity ofsolutionsof xanathan/locustbean gum mixtures,J.Sci.Food Agric., 79,25–31(1999)

15) 高橋智子,丸山彰子,大越ひろ:嚥下補助食品として の増粘剤の利便性について─テクスチャー特性及び官能 評価からの検討─,栄養学雑誌,55,253–262(1997)

16) Hamlet,S.,Choi,J.,Zormeier,M.,etal.:Normaladult swallowing ofliquid and viscousmaterial:Scintigraphic data on bolus transit and oropharyngeal residues, Dysphagia,11,41–47(1996)

17) Sopade,P.A.,Liang,S.,Halley,P.J.,etal.:Moisture absorption characteristicsoffood thickenersused forthe managementofswallowing dysfunctions,Eur.Food Res. Technol.,224,555–560(2007)

18) Casas,J.A.,Mohedano,A.F.,Garcia-Ochoa,F.:Viscos- ity ofguargum and xanthan/guargum mixture solu- tions,J.Sci.Food Agric.,80,1722–1727(2000)

19) Sho,T.,Sato,T.,Norisuye,T.:Viscosity behaviourand persistence length ofsodium xanthan in aqueoussodium chloride,Biophys.Chem.,25,307–313(1986)

20) Schorsh,C.,Garnier,C.,Doublier,J.L.:Viscoelastic propertiesofxanthan/galactomannan mixtures:Compari- son ofguargum with locustbean gum,Carbohydr. Polym.,34,165–175(1997)

21) 高橋智子,大須賀彰子,川野亜紀,他:リング法を用 いた粘稠液状食品の簡便な物性評価の有効性─機器測定 による物性評価との関係─,栄養学雑誌,65,113–122

(2007)

22) 高橋智子,大越ひろ:粘稠な液状食品の飲み込み特性と 力学的特性の関係,日本家政学会誌,50,333–339(1999)

(受付:平成23年2月16日,受理:平成23年12月19日)

69 69

(12)

70 70

Cat egor i z at i on of Commer ci al Thi ckener s on t he Basi s of t hei r Ef f ect s on t he Physi cal Pr opert i es of Foods

Megumi Na ka mur a *

1

, Sa t os hi Yos hi da *

2

, Ya s uko Ni s hi oka *

3

, Shi z uko Ha ya s hi *

4

a nd Ya s us hi A. Suz uki *

1

*1BiochemicalLaboratory,SarayaCo.Ltd.

*2Nutrition Promoting Section,SarayaCo.Ltd.

*3Rehabilitation Department,YokohamaCity University Hospital

*4Nutrition Department,Shonan Hospital

………

ABSTRACT

Objective: To

a na l yz e t he phys i c a l pr oper t i es of gr een t ea , mi l k, or a nge j ui c e, a nd mi s o s oup t hi c kened wi t h s t a r c h- ba s ed, gua r gum- ba s ed, xa nt ha n gum- ba s ed, a nd ot her t hi c kener s a nd c a t egor i z e t hes e t hi c kener s ba s ed on t hei r ef f ec t s on t he phys i c a l pr oper t i es of f oods .

Methods: Thi

c kened s ol ut i ons wer e pr epa r ed by di s s ol v i ng 15 t ypes of t hi c kener s i nt o 4 f oods , a nd t hei r v i s c os i t i es a nd t ext ur es wer e mea s ur ed.

 Fi

v e i ndexes

—v

i s c os i t y, v i s c os i t y v a r i a nc es a t 10 a nd 120 mi n a f t er t he a ddi t i on of t hi c kener s , i ni t i a l v i s c os i t y i nc r ea s e r a t e ( v i s - I R) , a nd a dhes i v enes s

—wer

e c a l c ul a t ed f r om t he mea s ur ed v a l ues .

 Pr

i nc i pl e c omponent a na l ys i s ( PCA) a nd c l us t er a na l ys i s ( CLA) wer e per f or med us i ng t hes e 5 i ndexes .

Results: The

vi scosi t y of each f ood was hi gher wi t h guar gum- based t hi ckener s t han wi t h ot her t hi c kener s .

 Vi

s c os i t y v a r i a nc es wer e dependent on t he f ood/t hi c kener c ombi na t i on.

 Vi

s - I R v a r - i ed dependi ng on t he f ood t ype.

 Gr

een t ea, f or exampl e, had a hi gher vi s - I R f or xant han gum- ba s ed t hi c kener s , whi l e or a nge j ui c e ha d a hi gher v i s - I R f or s t a r c h- ba s ed t hi c kener s .

 Adhes

i v e- nes s was gr eat es t f or s t ar ch- bas ed t hi ckener s r egar dl es s of t he f ood t ype.

 The

di s t r i but i on of t hi ckener s bas ed on t he PCA of each of t he 4 f oods di d not mat ch t hei r cl as s i f i cat i on bas ed on t hi ckeni ng i ngr edi ent s .

 However

, t he CLA obt ai ned us i ng t he 5 i ndexes of al l t he 4 f oods as expl anat or y var i abl es showed t hat t he t hi ckener s cl ust er ed accor di ng t o t hei r t hi ckeni ng i ngr edi ent s .

Conclusion: Ca

t egor i z a t i on of c ommer c i a l t hi c kener s ba s ed on t hei r ef f ec t s on t he phys i c a l pr oper t i es of f oods v a r i es dependi ng on t he f ood t ype.

 Ther

ef or e, i t i s i mpor t a nt t o s el ec t t hi c kener s a ppr opr i - a t e f or a pa r t i c ul a r f ood t ype a nd pur pos e.

J pn. J . Nut r . Di et . ,

70

( 1) 59

~70

( 2012)

Key words:

t hi c kener s , pr i nc i pl e c omponent a na l ys i s , c l us t er a na l ys i s

Research & Field Note

参照

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