平成30年度 東京都環境科学研究所 公開研究発表会
都内事業所の省エネルギー推進に向けた 研究について
2019年1月10日(木)
(公財)東京都環境公社 東京都環境科学研究所 次世代エネルギー研究科
片野 博明・藤井 康平
発表内容
1. 研究の背景 2. 研究の目的 3. 研究の進め方
4. 都内中小規模事業所のエネルギーデータ分析
・都内中小規模事業所のエネルギー消費傾向
・オフィスの省エネポテンシャル
5. 都有事業所のエネルギーデータ分析
・都有事業所のエネルギー使用の概況
・オフィスの省エネポテンシャル
6. 都内中小規模事業所と都有事業所の オフィスの省エネポテンシャルの比較 7. まとめと今後の展望
片野発表
藤井発表
研究の背景
▼COP21でパリ協定が採択:「2℃目標」
⇒ 世界有数の大都市である東京の取組みは極めて重要
2030年までに
>温室効果ガス排出量を2000年比30%削減
>エネルギー消費量を2000年比38%削減
>再生可能エネルギーによる電力利用割合30%程度
本研究はエネルギー消費量の削減に着目
東京都の目標:スマートエネルギー都市の実現
213 257
148 160
186
187 196
263
243 129
97
58
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900
1990 ~~ 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
エネルギー消費量(PJ) *1PJ=1,000TJ=100万GJ
運輸部門 家庭部門 業務部門 産業部門
635 802
698
研究の背景:都内のエネルギー消費量推移
▼業務・家庭部門の削減は停滞気味
⇒ 目標達成にはこの2部門の削減が必要不可欠
2030年目標:497PJ
(2000年比38%削減)
出典:東京都環境局(2018)『都における最終エネルギー消費及び温室効果ガス排出量総合調査(2015(平成27)年度実績)』
及び「都内の最終エネルギー消費及び温室効果ガス排出量(2016年度速報値)」をもとに作成
研究の背景:都内業務部門のエネルギー消費量 用途別構成比
▼オフィスの割合が大きい
⇒ オフィスの省エネに着目する必要性
54.4 53.6 58.4 60.7
8.6 9.4
8.6 8.4
6.9 6.9
7.0 7.6
5.9 5.2
4.8 4.6
5.3 5.8 5.4 5.5
1.5 1.6 1.3 1.1
17.4 17.5 14.5 12.1
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2000 2005 2010 2015
オフィス 飲食店 学校 病院・医療施設等 ホテル・旅館等 百貨店 その他
出典:東京都環境局(2018)『都における最終エネルギー消費及び温室効果ガス排出量総合調査(2015(平成27)年度実績)』をもとに作成
研究の目的
① 都内事業所のエネルギー消費傾向は どうなっているか?
② 都内事業所に省エネの余地は 残されているか?
③ 都内事業所において省エネを推進する要因、
阻害する要因は何か?
これらを明らかにし、
効果的な省エネ政策の展開へ
研究の進め方
省エネ行動に関するアンケート実施 エネルギーデータを用いた現状分析
計量分析等により、省エネ行動に影響を与える要因推定
「エネルギーデータを用いた現状分析」のうち、
特にオフィスに焦点を当てて紹介
2018年度
2019年度から2020年度
研究の進め方:都内中小規模事業所のエネルギーデータ分析
▼エネルギーデータを分析
・地球温暖化対策報告書
・省エネ診断報告書
都内中小規模事業所のエネルギー消費傾向、
省エネポテンシャルを把握
※中小規模事業所
⇒ エネルギー消費量1,500kL/年(原油換算)未満
研究の進め方:エネルギーデータの内容について
データ名 報告書提出の流れ データ内容 データ数 地球温暖化
対策報告書
(温対報告書)
「中小規模事業所」
↓
「東京都」
現状の エネルギー
使用量等
約34,000 事業所
(年間)
省エネ診断 報告書
「東京都」
「クール・ネット東京」
↓
「中小規模事業所」
有効な 省エネ対策と
その効果等
約3,000 事業所
(累積)
※クール・ネット東京
⇒ 「東京都地球温暖化防止活動推進センター」の愛称
※地球温暖化防止活動推進センター
⇒ 「地球温暖化対策の推進に関する法律」第38条に規定され、
地球温暖化防止活動の推進を図ることを目的とする民法法人等の中から一つを、
都道府県知事が指定するもの
温対報告書の分析結果:都内中小規模事業所のエネルギー消費傾向
▼用途毎にエネルギー消費傾向が異なる
エネルギー消費量(総量)(TJ/年)
エネルギー消費原単位(平均)( MJ /m
2年)
テナントビル
(オフィス系・ 1万m2以上)
テナントビル
(オフィス系・3千~ 1万m2) テナントビル
(オフィス系・3千m2未満)
自社ビル
(オフィス系)
物販店
(コンビニ)
飲食店
(中華料理・ラーメン)
2016年度
実績
省エネポテンシャルの推計方法
・現状からどの程度、エネルギー消費量削減の 余地があるかを、数値で示したもの
① 個別の省エネ対策の効果積み上げによる推計
(ミクロ視点)
② エネルギーデータを用いた統計的推計
(マクロ視点)
⇒ 今回は ②の方法で推計
「省エネポテンシャル」とは?
「省エネポテンシャル」の推計方法
温対報告書の分析結果:オフィスの省エネポテンシャルの推計
0 50 100 150
0 110 220 330 440 550 660 770 880 990 1100 1210 1320 1430 1540 1650 1760 1870 1980 2090 2200 2310 2420 2530 2640 2750 2860 2970 3080 3190 3300 次の級
事業所数
0 50 100 150
0 110 220 330 440 550 660 770 880 990 1100 1210 1320 1430 1540 1650 1760 1870 1980 2090 2200 2310 2420 2530 2640 2750 2860 2970 3080 3190 3300 次の級
事業所数
エネルギー消費原単位(MJ/m
2年)
テナントビル
(1万m
2以上)
(n=652)
テナントビル
(3千m
2未満)
(n=1,222)
1,433
(中央値)
1,507
(中央値)
2016年度 エネルギー消費原単位の 実績
中央値まで 省エネしたと仮定
エネルギー消費原単位の 中央値まで
省エネしたと仮定
分類
エネルギー 消費量
(TJ/年)
省エネ ポテンシャル
(TJ/年)
分類中のエネルギー 消費量に占める
省エネポテンシャルの割合 テナントビル
(1万m
2以上)
(n=652) 16,923 1,889 11.2%
テナントビル
(3千~1万m
2)
(n=1,614)
13,788 2,125 15.4%
テナントビル
(3千m
2未満)
(n=1,222) 3,336 697 20.9%
自社ビル
(n=1,662) 5,791 1,332 23.0%
合計 39,838 6,043 15.2%
▼規模が小さいほど、省エネポテンシャルの割合が大きい
▼規模に起因する要因が考えられ、検証が必要
温対報告書の分析結果:オフィスの省エネポテンシャルの推計
2016年度実績より推計
4.0 5.3 4.9 3.6
1.0 0.4 0.4 1.3
8.0
14.5 10.9 8.1
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 自社ビル(n=503)
テナントビル(3千m 未満)(n=534)
テナントビル(3千~1万m )(n=235)
テナントビル(1万m 以上)(n=55)
省エネ診断報告書の分析結果:省エネ効果積み上げ
▼10%を超える省エネ余地が残されている
省エネ率(%)
運用改善 設備改善
(投資回収3年以内)
設備改善
(投資回収3年超え)
13.0
13.0
16.2
20.2
2008年度~2018年度 診断結果
2
2
2
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 自社ビル(n=503)
テナントビル(3千m 未満)(n=534)
テナントビル(3千~1万m )(n=235)
テナントビル(1万m 以上)(n=55)
空調設定温度の適正化 照度の適正化 空調設備の点検・清掃 その他
省エネ診断報告書の分析結果:運用改善効果内訳
▼「空調設定温度の適正化」「照度の適正化」
「空調設備の点検・清掃」による効果が大きい
省エネ率(%)
2008年度~2018年度 診断結果
2
2
2
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 自社ビル(n=503)
テナントビル(3千m 未満)(n=534)
テナントビル(3千~1万m )(n=235)
テナントビル(1万m 以上)(n=55)
高効率空調設備の導入 高効率照明器具の導入 高効率変圧器の導入 その他
省エネ診断報告書の分析結果:設備改善効果内訳
▼「空調設備」「照明器具」の高効率化 による効果が大きい
省エネ率(%)
2008年度~2018年度 診断結果
2
2
2
都有事業所について
■計画の対象
知事部局等(教育庁、警視庁、東京消防庁等を含む)
*公営企業局(交通局、水道局、下水道局)は対象外
■エネルギー消費量に関する目標値
2019年度において、2000年度比25%削減
(2014年度比6%削減)
スマートエネルギー都庁行動計画
◎知事部局等約3,300事業所のエネルギーデータから、
現状の把握と省エネポテンシャルを推計
都有事業所のエネルギー消費量推移
(輸送系燃料の使用量は除く)
▼東日本大震災以降、エネルギー消費量はほぼ横ばい
18,437 18,878 18,424 17,908 17,484 18,475 18,124 18,401 18,209 12,692 13,304 13,821
11,732 11,979 11,969 11,730 11,701 11,887
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
エネルギー消費量(GJ)
公営企業局 知事部局等
知事部局等:40%
⇒ こちらに着目
知事部局等の事業所用途別エネルギー消費量の割合(2016年)
▼構成比は民間事業所と大きく異なる
警察・消防 25.5%
病院・医療 19.4%
文化・スポーツ 13.8%
学校 13.4%
オフィス(都庁舎除く)
3.9%
東京都庁舎 3.6%
テナントビル 3.5%
研究・試験機関 3.2%
公園 2.1%
その他 11.6%
<オフィス規模の内訳(229事業所)>
1万m2以上 :8事業所 3千~1万m2:60事業所 3千m2未満 :161事業所
事業所用途別 1事業所あたりのエネルギー消費量とエネルギー消費原単位
(2016年)
警察・消防
病院・医療施設等
文化・スポーツ施設
学校
オフィス(都庁舎除く)
研究・試験機関
テナントビル 公園
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
0 20 40 60 80 100 120 140
エネルギー消費原単位(MJ/m2 年)
エネルギー消費量(TJ/年)
代表的な事業所用途の特色(2016年)
事業所用途 事業所数 延床面積
(m2)
エネルギー 消費量
(TJ/年)
全エネルギー 消費量に占める
割合
エネルギー 消費原単位
(MJ/m2年)
知事部局等全体
3,280 11,109,206 11,887 100% 1,070
警察・消防
2,170 2,006,758 3,032 25.5% 1,511
病院・医療
26 790,690 2,311 19.4% 2,922
学校
278 3,560,954 1,594 13.4% 462
オフィス(都庁舎除く)
229 583,151 467 3.9% 800
◎警察・消防
・「警察署」「交番・派出所」「消防署」「消防団」など
→同じ用途の事業所が多数まとまっており、対策を波及させやすい
◎病院・医療
・「病院」など → 1事業所当たりの面積・エネルギー消費量・消費原単位が大きい
◎学校
・「高校」「特別支援学校」「看護学校」など
→用途全体の総延床面積は大きいが、1施設当たり面積・エネルギー消費原単位は小さい
⇒事業所用途の特性に応じた省エネルギー対策の必要性
知事部局等中小規模オフィスの
エネルギー消費量・エネルギー消費原単位の推移
688
611 657
524 529 550
484 479 467
1,152
1,025 1,080
895
903 933
813 803 800
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
0 100 200 300 400 500 600 700 800
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
エネルギー消費原単位(MJ/m2 )
エネルギー消費量(TJ)
エネルギー消費量 エネルギー消費原単位
▼2008年以降、エネルギー消費量・エネルギー消費原単位とも減少傾向
▼ただし、東日本大震災以降、その減少幅はやや停滞気味
知事部局等の総エネルギー消費の約4%に相当
知事部局等中小規模オフィスの省エネポテンシャル推計
▼都庁舎を除く中小規模オフィス229事業所(2016年)のエネルギー消費原単位の 中央値は610MJ/m
2→ 610MJ/m
2を超える事業所が、中央値まで省エネしたと 仮定すると、全体としてどの程度エネルギー消費量の削減が可能だろうか?
19
37
54
45
29
11 11
4 5 4
10
0 10 20 30 40 50 60
0~200 200~400 400~600 600~800 800~1000 1000~1200 1200~1400 1400~1600 1600~1800 1800~2000 2000以上
事業所数
エネルギー消費原単位(MJ/m2年)
610
610MJ/m
2まで
省エネしたと仮定
知事部局等中小規模オフィスの省エネポテンシャル
(2016年)
▼エネルギー消費原単位の中央値を基準として 省エネポテンシャルを算出すると、
知事部局等のオフィスは現状のエネルギー消費量の 約36%に相当する省エネポテンシャルを有している
⇒次の課題:この削減をどのように実現していくか
事業所用途
エネルギー 消費量
(TJ/年)
省エネ ポテンシャル
(TJ/年)
事業所用途のエネルギー消費量に 占める省エネポテンシャルの割合
オフィス
(都庁舎除く)467 168 35.9 %
<参考>
消防・警察 3,032 458 15.1 %
病院・医療 2,311 284 12.3 %
学校 1,594 217 13.6 %
中小規模オフィスの省エネポテンシャルの比較(2016年)
▼都内中小規模事業所、都有事業所ともに、延床面積が 小さいオフィスほど高い削減ポテンシャルを有している
⇒規模が小さいほど、省エネが進んでいない要因は何か?
分類
エネルギー消費量(TJ/年)
省エネ ポテンシャル
(TJ/年)
分類中のエネルギー消費量に 占める省エネポテンシャルの割合
都内中小規模事業所
テナントビル
(1万m2以上)16,923 1,889 11.2 % テナントビル
(3千~1万m2)13,788 2,125 15.4 % テナントビル
(3千m2未満)3,336 697 20.9 %
自社ビル 5,791 1,332 23.0 %
都有(知事部局等)事業所
オフィス
(都庁舎除く)467 168 35.9 %
*なお、省エネポテンシャルの推計には様々な方法があるが、今回は現時点で入手できているデータに制約があるため、
事業所カテゴリーごとのエネルギー消費原単位の中央値を基準とした推計を行った。
そのため、推計されたポテンシャルの値は、想定される推計結果のひとつに過ぎない点には注意が必要である。
今後は不足しているデータの収集や個別事例を積み上げることで、ポテンシャル推計の精度を向上させる予定である。
▼本報告では、特に都内の中小規模オフィスに焦点を当て、
エネルギー使用状況の整理と、省エネポテンシャルの 推計を行った。推計からは、規模が小さいほど、省エネ ポテンシャルが高い傾向にあることが明らかになった。
まとめと今後の展望
効果的な省エネ政策の展開へ
▼では、なぜ省エネポテンシャルがあるにも関わらず、
省エネは進まないのだろうか?
また、どうすれば省エネが進むようになるのだろうか?
▼これらの点について今後研究を進め、
要因となりうる各種データの収集やアンケートの実施など、
様々な側面から明らかにする。
ご清聴ありがとうございました
本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究C)
「中小規模事業所における省エネポテンシャルの推計と省エネ推進・阻害要因の定量的分析」
による成果の一部を含みます。