大学院教育へのレギュラトリーサイエンス導入の試み
化学生物総合管理 第 5 巻第 2 号 (2009.12) 117-118 頁 受理日:2009 年 12 月 28 日
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【巻頭言】
大学院教育へのレギュラトリーサイエンス導入の試み
竹山 春子
早稲田大学 先進理工学研究科 生命医科学専攻
理系大学院への進学率は、修士課程(博士前期課程)と比べて博士課程(博 士後期課程)では減少が続いている。多くの大学で博士課程の定員が充足でき ない状況の中、定員の削減に踏み切る大学も今後増えると思われる。中・高校 生の理科離れが世界的な話題となって久しいが、理科系の大学を目指し、学問 を修め、研究というものを経験した学生が研究者を目指すべく博士課程に進む ことを選択しないのは、ある意味で社会の状況を反映しているとも言える。マ スメディア等でもたびたび取り上げられるように、博士号を取得してもそれを 生かす道が狭い(就職がない)のであろう。博士号を取得した若手研究者と社 会が彼らに期待する資質との間にずれが生じていること、博士号を取得した者 が進むべき道を自身で狭めてしまっていることも一因かと思われる。大学のポ ジションが減少する中、任期付きが当たり前になりつつある現状に、さらなる 追い打ちとして政府の研究費見直しに伴う大幅削減は大きな影響を及ぼすこと は必至であろう。大学では、研究だけでなくマネージメント能力など幅広い能 力を持つ研究者を育成して社会に送り込むべく様々な試みを行っているが、ま だまだその成果は肌で実感できるほどにはなっていない。開発型研究を基盤に 進んできた博士課程では育成できなかった人材が、今後の社会では必要となっ ている。
国公私を通じ複数の大学が大学院研究科等を共同で設置し、多様で特色ある 教育研究を推進できるよう、文部科学省は大学設置基準の省令改正を平成 20 年 度に行った。これを受けて早稲田大学では、平成 22 年度から国立大学法人東京 農工大学と共同先進健康科学専攻、東京女子医科大学と共同先端生命医科学専 攻、東京都市大学と共同原子力専攻を設置することになった。特に、共同先進 健康科学専攻と共同先端生命医科学専攻は、博士課程後期のみの専攻であり、
健康科学分野、医療分野のレギュラトリーサイエンス教育をそれぞれ特徴とし たカリキュラムを組んでいる。私が併任することになる共同先進健康科学専攻 では、研究開発型の人材育成から研究開発とともにルールメイキングのできる 人材育成をめざし、健康科学の重要な3分野として生命科学、環境科学、食科
大学院教育へのレギュラトリーサイエンス導入の試み
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学の領域研究を進めつつ、これらの分野に不可欠な社会規範を習熟するために 6 つの基軸科目(化学物質総合管理学、感染症総合管理学、リスク評価学、ハザ ード評価学、食農環境総合管理学、生活環境総合管理学)を設置した。社会で 活用されうる技術を開発するためにも社会の規範を知ること、さらにはそれら 規範を策定する側になるための知識を得ることは重要であり、今までとは違う ワンランク上の人材を育成することをミッションとしている。本学会の先生方 には、基軸科目の設置ではご協力をいただき何とかスタートできるところまで は来ている。
また、早稲田大学では、平成 21 年度から博士課程(後期)では実質授業料が 無料化された。より多くの学生が博士課程に進み易くするための総長の英断で ある。今後、多様な領域で活躍できる人材の育成を学部教育にも広げていく出 発点が切られた。