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ファロー四徴症術後患者における運動負荷時呼吸パターソの検討

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日本小児循環器学会雑誌 9巻5号631〜638頁(1994年)

ファロー四徴症術後患者における運動負荷時呼吸パターソの検討

(平成5年10月18日受付)

(平成5年12月21日受理)

多田羅勝義 久保 雅宏

徳島大学医学部小児科

 松岡  優  早淵 康信  後ロ ユリ  黒田 泰弘

key words:ファロー四徴症,運動負荷,呼吸パターソ

      要  旨

 ファP一四徴症術後患者の運動負荷時の呼吸パターンを検討した.10歳から16歳までの13例の患者(男 子9名,女子4名)を対象としてBruceのプロトコールによるトレッドミル運動負荷を行った.患者と 年齢,身長,体重をマッチさせた男子30名,女子33名をコントロールとした.呼吸数,一回i換気量,分 時換気量いずれも運動負荷前値は両群間に差はなかったが,最高値はいずれもファロー四徴症術後群が 小であった.運動負荷中の呼吸数,一回換気量,分時換気量の負荷前値に対する比の時系列変化を求め た.13例中2例に分時換気量時系列変化異常を認めた.いずれも運動負荷の最終段階で分時換気量が急 激に増加するパターンであった.運動時心機能異常が残存するファロー四徴症術後患者でも運動時呼吸 パターン異常を呈する症例は少なく,運動能のリミティングファクターにはなりにくいと思われた.

      緒  言

 心疾患患者では運動負荷時,拘束性肺疾患の患者と 同様の呼吸応答異常を呈する症例のあることが知られ ている.Grant等1)は先天性心疾患術後患者における 肺循環障害が運動時呼吸応答異常を引き起こすと報告 している.このような開心術後における肺循環障害は ファロー四徴症根治手術後にも報告2)3)されている.ま た,心疾患術後患者においては胸郭変形等により同様 の現象が認められる可能性がある.

 一方,ファロー四徴症術後症例では運動時心機能異 常を呈するとの報告4ト8)がある.また,我々も運動負荷 時の酸素摂取量,心拍数時系列変化の異常が認められ る例があることを報告9)した.このような呼吸,循環器 系の異常が術後患者の運動時にどのような形でリミ ティソグファクターとなり得るかは興味ある問題であ る.また患者の運動指導においても重要なポイントと

なる.

 もしファロー四徴症術後患者に上記のような呼吸機

別刷請求先:(〒770)徳島市蔵本町3 −18−15      徳島大学医学部小児科   多田羅勝義

能異常が存在すれば,運動時呼吸パターンの異常とし て検出可能ではないかと思われる.そこで今回我々は ファロー四徴症術後患者の運動負荷時の呼吸パターン の異常について検討した.

      方  法

 対象:対象は徳島大学小児科で経過観察中のファ ロー四徴症術後患者13例(男子9名,女子4名)とし た(表1).対象中,日常生活において臨床的に問題に なる症状を訴える症例はいなかった.検査時年齢は9 歳から17歳であった(平均±標準偏差:男子13.0±3.4 歳,女子11.4±2.7歳).対象と年齢をマッチさせた男 子30例,女子33例をコントロールとした.対象とコン

トロール間に身長,体重に有意差はなかった.

 運動負荷試験実施に先立ち,患老及びその家族に同 検査の意義を説明し,検査実施に関する同意を得た.

 運動負荷試験:運動負荷はBruce法に従いトレッ ドミルで実施した.呼気ガス分析器はMMC 4400fc

(Sensormedics社製)を用いた.測定は一呼吸毎に行 い,15秒毎の平均値として出力した.ガス収集はマス クによって行った.マスク装着後2分間立位にした後,

2分間負荷前の計測を行った.また負荷終了後5分間

(2)

表1 対象

ID 性別 年齢(歳) 術後年数 (年) 手術時年齢 (歳) 身長

(cm)

体重(kg) 酸素摂取量/体重 時系列変化異常*

心拍数 時系列変化異常*

1

M

9 5 4 125 22

2

M

16 6 10 159 46

3

M

11 8 3 132 31

4

M

17 10 7 168 76

5

M

]0 6 4 131 26

6

M

15 11 5 149 40

7

M

16 9 8 169 60

8

M

14 12 2 158 40

9

M

9 5 3 122 21

10 F 11 6 5 139 33

11 F 15 11 4 161 59

一 十

12 F 10 8 2 133 24

13 F 8 5 3 126 22

一 一

Mean±SD 12.4±3.3 7.8±2.5 4.7±2.4 143.9±17.2 38.5±17.4

*:文献9)

座位にて回復期の計測を実施した.検査時には他に心 電図をモニターした.心拍数はRR間隔により算出し,

呼気ガス分析データと同様に15秒毎の平均値として出

力した.

 運動負荷終了は被験者が継続不可能と訴えた時点と

した.

 解析方法:一回換気量,呼吸数,分時換気量の負荷 前値,最高値を男女別に求めた.負荷前値とは負荷前

2分間の測定値の平均値とした.さらに一回換気量,

呼吸数,分時換気量の運動負荷前値(以下負荷前値)

に対する最高値の比を患者群,コントロール群で男女 別に比較検討した.

 運動負荷中の一回換気量,呼吸数,分時換気量の時 系列変化を検討するにあたり,年齢,体格の違いによ る差を考慮するため,各指標を負荷前値に対する比(以 下負荷前値比)で現した.次ぎにコントロール群の結 果からそれらの時系列変化標準曲線を男女別に求め た.標準曲線作成にはすでに報告した酸素摂取量,心 拍数時系列変化標準曲線作成法と同様の手法1°)を用い た.患者群の検討に先立ち,コントロール群の被験者 とは別の正常者(10歳,17歳)を用い,負荷前値に対 する比を用いる同方法の妥当性を視覚的に評価した.

 個々の術後患者の評価は各時系列変化曲線と標準曲 線とのパターンの比較によって行った.分時換気量の 時系列変化に異常を認めた例では,負荷前値,最高値 をそれぞれコントロール群から求めた年齢,分時換気 量回帰直線上にプロットし検討した.

 各測定値は平均±標準偏差で表わし,両群間の比較 はMann Whitney U検定で行った.危険率0.05以下

(p<0,05)を有意とした.

      結  果

 運動持続時間:男子では患者群546±85秒,コント ロール群1,053±216秒,女子では患者群546±87秒,コ ントロール群956±174秒と,いずれもコントロール群 が有意に長かった(p<0.05).

 負荷前値,最高値:呼吸数,一回換気量,分時換気 量の負荷前値,最高値を男女別に表2に示した.男女 とも負荷前値はいずれも患者群,コントロール群間で 有意差を認めなかった.最高値についてはすべて患者 群がコントロール群よりも低かった(p〈0.05).

 最高値/負荷前値比:呼吸数,一回換気量,分時換気 量の最高値/負荷前値比を表3に示した.コントP一ル 群における最高値は負荷前値に対し,呼吸数が平均約 4倍,同じく一回換気量,分時換気量はそれぞれ約3 倍,9倍であった.これは男女ともほぼ同様の値であっ た.また,同比は一回換気量については男女とも患者 群,コントロール群間で有意差を認めなかった.しか し,呼吸数,分時換気量はいずれも男女とも患者群が コソトロール群よりも少なかった(p<O.05).

 標準曲線:呼吸数,一回換気量,分時換気量の負荷 前値比標準曲線上に17歳と10歳の2名の被験者の結果 を重ねて図1に示した.いずれの場合も2名の結果は ほぼ標準曲線の95%信頼区間内で変化を示した.

 患者群13例中各指標の時系列変化曲線のパターソが

(3)

平成6年4月1日 633−(19)

表2 呼吸数,一回換気量,分時換気量の負荷前値,最高値

呼吸数 回換気量(ml) 分時換気量(]/min)

負荷前値 最高値 負荷前値 最高値 負荷前値 最高値

患者群  男子(n=9)

 女子(n=4)

21.6±4.9 20.8±6.7

48.0±7.0 46.8±4.4

443±199 360±131

1087±528 909±469

9.7±4.3 6.9±1.3

43.7±18.6 37.8±14.8 コントロール群

男子(n=30)

女子(n=33)

18。5±5.7 17.4±4.5

63.4±13.4 60.⑪±9.7

623±228 519±127

1665±479 1437±284

10.6±2.3 8.8±2.6

90、1±26.2 77.0±18.9

P値

 男子  女子

ns ns

<0.05

〈0.05

ns ns

<0.05

〈0.05

ns ns

〈0.05

<0.05 表示は平均値±標準偏差,ns:not significant

表3 呼吸数,一回換気量,分時換気量の最高値/

 負荷前値比

呼吸数 回換気量 分時換気量

患者群

男子 2.3±0.4 2.5±0.6 4.9±2.1

(n=9) (1.9〜3) (2〜3.9) (3.1〜9.7)

女子 2.4±0.7 2.5±0.5 5.5±1.8

(n=4) (1.8〜3.5) (2〜2.9) (4.1〜8.1)

コントロール群

男子 3.7±1.3 2.8±0.7 8.6±2.1

(n=30) (2〜7.9) (L3〜4.6) (5.4〜12.6)

女子 3.7±1、1 2.9±0.6 92±2.9

(n=33) (2.3〜7.1) (1.4〜3.9) (52〜15.1)

P値

男子 <0.05 ns <0.05

女子 <⑪.05 ns 〈0.05

表示は平均値±標準偏差,()は範囲,ns:not significant

異常と判定された症例は2例であった.異常例の結果 を図2,3に示した.

 異常例1(17歳男子)では分時換気量の増加がステー ジIIIに入って急激になった.しかし呼吸数増加は標準 曲線に沿っており,むしろ一回換気量増加に依存した ものであった.呼吸数の負荷前値,最高値はそれぞれ 18回/分および44回/分,一回換気量は556mlおよび 1,675m1,そして分時換気量は11L/分および72L/分で あった.

 異常例2(15歳女子)でも同様に分時換気量はステー ジIIIに入って急激に増加した.この増加は呼吸数の増 加に由来したものであった.呼吸数の負荷前値,最高 値はそれぞれ13回/分および44回/分s一回換気量は337 ml,1,400mlそして分時換気量は7.8L/分,57.OL/分 であった,

 異常例1,2の分時換気量の負荷前値,最高値を,

コントロール群から求めた年齢,分時換気量回帰直線 上にプロットし,図4,5に示した.いずれの症例で

も分時換気量負荷前値はコントロール群と大差がな

かった.

 残り11例ではいずれも標準曲線の95%信頼区間に 沿った変化を示し,正常と判定した.

      考  察

 一般に,呼吸機能測定値は被験者の年齢,性,体格 等によって大きく変動する.さらに肺気量はその予測 値算出法をみても明らかなように体重で除すといった 単純な標準化ができない.この事実は身体が質的にも,

量的にも著明に変化する小児期の呼吸機能評価を困難 にしている.運動負荷時の一回換気量,分時換気量等 を評価する際にも当然この点が非常に大きな問題とな る.そこで従来最大一回換気量については肺活量に対 する比,最大分時換気量は最大換気量に対する比を用 いるといった評価法11)がとられてきた.しかしJones 等12)は最大一回換気量/肺活量比は肺活量が小さいと 小さい比をとり,肺活量が大きいと大きくなり,小児 から成人までの広い範囲で用いるには問題があると報 告している.また,最大換気量は小児のスパイロメト

リーのなかでも最も実施が難しいとされており,正常 予測値の60%であっても異常でない場合すらある 3).

 そこで我々は運動負荷前値に対する比で負荷値を評 価する試みを行った.このような評価方法を行うため には,評価を受ける群間で負荷前値に差がないという 前提が必要であるが,我々の結果では負荷前値は両群 間で差がなかった.しかし呼吸器疾患患者においては,

死腔量/一回換気量の比が大きいこと14),あるいは低酸 素血症,高二酸化炭素血症等による呼吸のドライブが,

(4)

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4

3

2

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180 360 540 720 900 1080

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1260 Time

図1 運動負荷中の呼吸数(A),一回換気量(B),分時換気量(C)の時系列変化.

 それぞれ負荷前値に対する比で表わしている.曲線はコントロール群から求めた  95%信頼区間,○は17歳(身長161cm,体重50kg),・は10歳(身長138cm,体重30kg)

 の被験者の記録いずれもほぼ95%信頼区間内に入っていることがわかる.

安静時においても分時換気量を増加させているといわ れている15).したがって同方法による評価を行うにあ たっては取り扱う疾患群を考慮する必要がある.この

点を考慮しておけぽ,同方法は小児の年齢,体格に伴 う各指標の変動を排除できると判断した.

 呼吸パターソは呼気ガス収集用のマスク等の死腔量

(5)

平成6年4月1日 635−(21)

A

6

5

4

3

2

1

0

0      180     360     540     720     900     1080    1260

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B

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25

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B

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C

11

0      180      360      540      720     900     1080     1260

       T|rne(sec)

図2 異常例1(17歳男子)における運動負荷中の呼  吸数(A),一回換気量(B),分時換気量(C)の時  系列変化.Stage IIIに入って分時換気量が急激に増  加している.

や再呼吸量にも影響されること11)16)を考慮すれぽ,肺 容量の少ない年少児を扱う場合は注意が必要である.

さらに呼気ガス収集用のマスクは運動時の振動に耐え 得るために相当きつく顔面に密着させる必要がある.

このため測定値は特に小児で大きく修飾される.また,

呼気ガス分析を併用せずとも運動負荷試験を行うとい うことだけで被験者に大きな心理的影響を与える.こ の影響も小児においては顕著に認められる.したがっ て,運動負荷前の呼吸数,一回換気量,分時換気量も 当然この影響を受けており,いわゆる安静時の値とは

C

15

10

0      180     360     540     720     900 1080     1260 Tim6(8㏄}

図3 異常例2(15歳女子)における運動負荷中の呼  吸数(A),一回換気量(B),分時換気量(C)の時  系列変化.同じくStage IIIに入って分時換気量が  急激に増加している.

異なるものと考えなくてはならない.Polgar等17)のま とめた小児における一回換気量,呼吸数と我々の結果 を比較してみると,時代,人種等の違いはあるものの,

回換気量はいずれも我々の結果の方が大きかった.

方,呼吸数に関しては一定の傾向がなかった.いず れにせよ我々の値はあくまで運動負荷試験の際の負荷 前値であるとの認識が必要である.

 健康人の運動時の呼吸パターンは,軽〜中等度の負 荷量では,一回換気量の増加が主で,呼吸数の増加の 関与は少なく,さらに負荷量が強くなると,一回換気 量増加は肺活量の50%あたりでにぶくなり,呼吸数の

(6)

L/min 20 18

16

14

12

10

一.一.afLll−一,,,, li:

9101112131415161718

         Age

L/min 13 12

11

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10    11    12    13    14    15   16    17   18

         Age

L/min 160

140

120

100

80

60

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9    10   11   12   t3   14   15   16   17   18

         Age

図4 コントロール群(男子)から求めた分時換気量,

 年齢の回帰曲線曲線は平均値の95%信頼区間.上  段は負荷前値,下段は最高値.●は異常例1,0は

 コン ト ローノレ.

L/min 120 110 00 90 80 70 60 50 ω 30

  10    11   12    13    14    15    16    17    18

       Age

図5 コントロール群(女子)から求めた分時換気量,

 年齢の回帰曲線.曲線は平均値の95%信頼区間.上  段は負荷前値,下段は最高値.●は異常例2,0は

 コン ト 1コーノレ.

増加で換気量を増やすようになるといわれている18).

 一方,運動中換気量は,

 VE=863VCO2/PaCO2(1−VD/VT)で示される11).

すなわち運動中の換気量は,(1)二酸化炭素排泄量,

(2)運動中の動脈血二酸化炭素分圧,(3)運動中の死 腔換気率(生理学的死腔量と一回換気量の比)の3つ の因子によって決定される.ここで二酸化炭素排泄量 は運動負荷量に相当すると考えられる.健康人では死 腔換気率は運動と共に大きく減少する19).ところがあ

る種の病態ではこの死腔換気率減少が認められない か,まったく変化しないことがある.そのような病態 の1つは運動による換気血流比の不均衡分布の増悪で ある.これは慢性肺疾患患者で問題になるが,肺血管 床の破裂,閉塞でも起こり得るといわれている2°).

Grant等21)は,核医学検査によりファロー四徴症術後 患者に肺循環障害を証明した過去の報告2)3)に基づき 運動負荷の際のガス交換の異常を肺循環障害に起因し

た換気血流不均衡分布によるものと考察した.彼等が 根拠としたガス交換異常は酸素,二酸化炭素に対する 換気等量の増加,呼気および呼気終末二酸化炭素分圧 の低下であり,同時にみられた酸素飽和度の低下とい う所見を加味し前述の結論を導き出している.また二 酸化炭素排泄量が0.6L/minという負荷強度で,患者 群の分時換気量がコントロール群よりも高かったとし ている.Grant等の結果は単一段階負荷における定常 状態で得られたものであるが,最高値を比較するもの ではないという観点からすると,我々の異常例の分時 換気量時系列変化の異常は彼等の結果と矛盾するもの ではないと考えられる.

 換気パターンをさらに呼吸数,一回換気量と分けて 検討すると,異常例2では各ステージ開始直後に呼吸 数が急激に増加した.一方,一回換気量はそれに呼応 して減少,いわゆるrapid shallowパターンを示して いた.このような呼吸パターソは呼吸筋特に吸気筋の

(7)

平成6年4月1日

疲労時に認められると言われている22).しかし同症例 では異常パターンが運動開始直後,または強度を増強

させた直後に見られているため,このような病態は考 えにくかった.さらに,その時点の呼気終末二酸化炭 素分圧,分時換気量が正常なことからみると単なる過 呼吸によるものでもなかった.また,その反応時間か らみるとこの現象は神経性刺激によるものと思われ た.体液性刺激すなわち二酸化炭素に対する換気応 答はトレーニング等によって変化することが報告23)さ れているが神経性刺激がこれらの影響を受けるかどう かは不明である,しかし著者の経験によれぽ日常まっ たく運動をしない被験者で時にこのような現象がみら れる.詳細は不明であるが,日頃の運動習慣,あるい は検査に対する慣れがこの所見の原因ではないかと考 えている.これに対し,最終段階での呼吸数の急激な 増加は分時換気量の増加を伴っており,そのメカニズ ムは前者と異なったものと考えられた.また,同時期 の一回換気量はほとんど増加しておらず,すでに限界 に達していたと考えられた.しかし最終段階での呼吸 数は44回/分と必ずしも同年齢のコントP一ル群と比 べて多いとは言えず,呼吸機能が運動のリミティソグ

ファクターとなったとは言い切れなかった.

 一方,異常例1の分時換気量増加は呼吸数増加とい うよりも一回換気量増加に伴ったものであった.さら に一回換気量はプラトーではなく,呼吸器能に関して はまだ余裕があるのではないかと判断した.同症例も 異常例2と同様心拍数,酸素摂取量時系列変化パター ン異常を示した症例9)であり,運動のリミティング ファクターとしては心機能ではなかったかと考えられ

る.

 当初我々はファロー四徴症術後患者特に運動負荷時 心機能異常例では呼吸パターンの異常を示す例が相当 あるのではないかと予想した.しかし分時換気量等の 時系列変化で見る限り,予想外に異常例は少なかった.

もっともこの結果は,これらの患者が日常生活におい て呼吸困難を訴えることがまったくなかったことを支 持するものとも考えられる.しかし今回の結果は,ファ P一四徴症術後患者に運動時呼吸機能異常がないとい うこととを意味するものではない,あくまで運動のリ ミティングファクターになるような呼吸機能異常は少 なかったと結論すべきであろうと思われた.

      文  献

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Ventilatory Response to Exercise in Patients after Surgery for Tetralogy of Fallot Katsunori Tatara, Suguru Matsuoka, Yasunobu Hayabuchi, Masahiro Kubo,

       Yuri Ushiroguchi and Yasuhiro Kuroda

     Department of Pediatrics, School of Medicine, University of Tokushima

   Exercise ventilatory pattern was examined in patients with prior history of surgical repair for tetralogy of Fallot. Using the Bruce protocol,we evaluated the time course of ventilation in 13 patients

(aged 10 to 16 yr). Sixty−three children, matched with the study group for age, size and sex, served as control subjects. Although there was no difference between the two groups in resting breathing frequency, tidal volume and minute ventilation, the patients group had significantly lower values than the control subjects for peak breathing frequency, tidal volume and minute ventilation. Calculating the ratios of the values of breathing frequency, tidal volume and minute ventilation during exercise to those of rest, we evaluated the time course of these values. Among the 13 patients, two had an abnormal pattern of minute ventilation, which showed a rapid increase in the final stage. As there were only a few patients after surgery for tetralogy of Fallot who showed an abnormal pattern of ventilation, it appears that ventilation may not be a significant limiting factor for exercise in these patlents.

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