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オンライン授業の可能性と課題

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Academic year: 2022

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立教大学 教職課程 2022 年 1 月

1 はじめに

教員養成課程の履修生にとって,模擬授業を 初めとする体験的学びや実技や活動を伴う演習 は,授業実践力を養う上で重要な役割を果たす

(JACET 教育問題研究会 , 2017)。筆者が担当 する英語科教育法の授業においても,学んだ専 門的な知識や理論を実際の授業指導に応用でき る力を履修生に身に付けさせるため,実践的知 識と技術を習得するプロセスや体験を通した学 びを重視してきた。また語学の授業指導におい ては,発音やスピーキング指導ほか音声を伴う 活動を指導できるスキルを体験的に身に付ける ことも不可欠である。この様な授業指導力の育 成は,対面による授業指導を前提としているこ とは言うまでもない。

だが,状況は一変した。新型コロナ感染拡大 を受けて,勤務先の教職課程もまた,対面では なくオンライン授業を余儀なくされた。また,

多くの大学でオンライン授業が続いていた昨年 10 月には,中教審初等中等教育分科会教員養 成部会から「教職課程における教師の ICT 活 用指導力充実に向けた取組について」(2020)

が出されていた。新学習指導要領が目指す,主 体的な学びを実現する上で,学びの質の向上を めざす ICT 教育への期待は大きい。さらに新 型コロナの影響で,GIGA スクール構想による 端末導入は急ピッチで進み,校種を問わず現場

での ICT 活用が加速化している。大半の履修 生が翌年度予定している教育実習では,オンラ インで授業を行う可能性もゼロではない。ICT 活用指導力は明らかに,教職課程履修生に求め られる重要な授業指導力の 1 つになってきた。

この様な状況を前に,筆者は担当している英 語科教育法 IB の指導で行ってきた授業計画や 内容,指導方法を,オンライン授業実施の観点 からあらためて見直した。オンライン授業では,

どのような形で実践的な演習や体験的な活動を 行えばいいのか。また授業で重視している履修 生同士のやり取りや学び合い,さらに個々の成 長を促す振り返りは,どう進めるべきか。昨年 度 1 年間,筆者自身,試行錯誤しながら行った オンライン授業の経験や取り組みを踏まえ,オ ンライン授業の特長を活かし弱点を補う指導や 支援を検討し,内容の重点化と活動の焦点化を 図った。さらにオンライン授業を,履修生が ICT 活用と指導技術の向上を図る機会と位置 づけ,ICT を使う体験的学習を適宜組み込み ながら,模擬授業を含む全 14 回のオンライン 授業を実施した。

本研究では,このような経緯で行った英語科 教育法のオンライン授業を,履修生はどのよう に受け止めていたか,かれらの意識と学びを 探った。オンライン授業の前後で,履修生の学 びにはどのような変容があり,また授業内容や

オンライン授業の可能性と課題

-英語科教育法における授業実践を通して-

吉住 香織

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体験的指導は彼らのどのような学びにつながっ ていたのか,について質問紙調査結果に基づ いて明らかにすると共に,結果をふまえ,ICT 活用を含むオンライン授業の課題と可能性につ いて考えたい。

2 研究の目的

本研究は,ICT 活用も視野に入れて行った 英語科教育法のオンライン授業指導や支援を,

履修生がどう受け止めたか,調査結果に基づい て履修生の意識と学びを明らかにすることで,

オンライン授業の可能性と課題を探ることを目 的とする。

3 方法 3.1 対象者

本研究に参加したのは,首都圏の大学にある 教職課程に在籍し,筆者が担当する「英語科教 育法 IB」を受講した 3 年生 6 名,4 年生 1 名,

計 7 名である。

3.2 方法

2021 年 7 月,春学期の授業が全て終了した 段階で,Google form を利用した質問紙調査を 行った。実施者(=筆者)は,「英語科教育法 IB」の授業の中で調査の主旨と内容を説明し た。振り返りを兼ねた調査のため十分な時間が 必要と考え,提出期限は数日後に設定し送信提 出してもらった。質問は,ICT 活用に直接関 わる内容と,オンラインで実施した「英語科教 育法 IB」に関する内容に大別される。具体的 には,前半は ICT 活用に直接関わる内容で,1)

履修生の ICT 教育という言葉に対する認知,2)

中学・高校の英語授業における履修生の ICT 活用経験と受け止め,3)英語授業への ICT 活 用に対する意識の 3 テーマ,後半は 4) . 大学 でのオンライン授業に対する受け止め 5)「英 語科教育法 IB」のオンライン授業に対する受 け止め 6) 自分達が行ったオンライン模擬授業 に対する受け止め 7) 模擬授業リハーサルに対 する受け止め,の 4 テーマの計 7 テーマについ て,関連する計 12 個の質問項目が用意された。

回答は主に 5 件法の選択式で答える形式だが,

内容に応じて回答の理由を記述することも求め た。なお,本研究の目的に直接合致していない 質問項目については,本稿では取り上げていな い。

3.3 授業の概要

3.3.1 オンライン授業の概要:本研究が対象 とするのは,筆者が兼任講師として勤務する大 学で 2021 年 4 月から同年 7 月までの期間に担 当した「英語科教育法 IB」(春学期・2 単位)

である。本科目は,中学・高等学校の英語科教 員免許状の取得するための必修科目である。授 業の対象は中学・高校の英語教員を目指す教職 課程の履修生で,春学期には「英語科教育法 IB」を,秋学期には「英語科教育法 IB 演習」を,

いずれも必修科目として履修する。原則として 両学期ともに同じ履修生が履修するので,授業 は秋学期の演習への応用を視野にいれ 1 年間を 見通して進める必要がある。14 回全ての授業 で,双方向・リアルタイム,ZOOM を使用し たオンライン授業を行った。授業の目的は,オ ンライン・対面を問わず変わらない。英語の授 業指導に必要な基本的な知識や指導技能の習得

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を通した履修生の授業実践力の向上である。毎 回 100 分間,今年度春学期計 14 回の「英語科 教育法 IB」の授業で扱った主な授業テーマは,

「中学・高校英語指導の目的と教師の役割」,「学 習指導要領と教材分析」,「授業設計と技能統 合」,「ICT の活用例を含むモデル授業の分析 と研究」,「指導者による ICT 活用のオンライ ン授業体験」 ,「模擬授業に向けて:指導案の立 案の観点と作成」,「teacher talk を含む授業指 導の基本的スキル」に加え,「Pre-reading」か ら「Post reading」まで各指導段階別の指導と して特に,「Oral introduction:指導のねらい とポイント」,「発問の工夫と内容理解」,「文 法項目の指導を含む explanation」,「音読,お よびインテイクのための活動と指導」,「アウ トプットをめざす活動と指導」である。また,

新教材を,ビジュアル・エイズも利用しなが ら,英語での口頭のやり取りを通して導入する Oral introduction 段階の模擬授業(1 人約 15 分)

を 3 回にわたって実施した。

本授業がこれまで重視してきた 3 つの学び−

1)討論や体験的活動,協同学習を通した学び,

2)履修生同士の学び,さらに 3)模擬授業を 通した省察的な学び,を促すためにできる指導 や支援のあり方を検討することが,筆者がオン ライン授業指導を行うに当たっての最大の課題 であった。昨年度の自身のオンライン授業指導 経験や学生を対象にしたオンライン授業につい てのアンケート調査結果(山口和範 , 2020;神 田外語大学 , 2021)を踏まえ,ICT 活用力を含 めてオンライン授業の特長を活かすと共に,オ ンラインの弱点を補うためにできる支援と指導 のあり方について検討した。

3.3.2 オンライン授業の指導と工夫

実際に行った授業実践ポイントと具体的な工 夫点について報告する。オンライン授業指導に 伴う課題に対応するため,特に以下の点を重視 して授業や支援を行った。

1)やり取りや学び合い,履修生同士の交流を 支援する環境作り

意見交換やフィードバックが自由にできる雰 囲気作りは学び合いに不可欠で参加意欲にもつ ながる。短時間でもブレイクアウトを毎授業数 回利用し,バーチャルな授業空間でも互いの顔 を見ながら積極的にやり取りができるような活 動や討論をとりいれ,また授業外でも履修生同 士が交流できるよう関係作りに配慮した。

①カメラ・オン,可能な範囲で全員がミュー ト解除の形で授業の実施。

②ペア・グループ活動に指導者も適宜加わり,

全体協議での共有も重視。

③履修生間の意見交換や情報共有に Google classroom クラスコメントを利用。

2)技術習熟と不安軽減のためオンラインの長 所や ICT の効果的活用の指導と体験

①模擬授業 2 日前昼休みに希望者参加のリ ハーサル。授業改善と機器操作を支援

②模擬授業に役立つ技術を通常授業で体験

< 例 > スライド , 写真 , 図表や動画映像等 ビジュアルエイズ効果

③ICT 活用の授業モデルや効果的な ICT 活 用技術を学ぶ機会の提供

<例> Google アプリケーション活用法,

現職教員や前年度の実例提示

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④Google form を利用した模擬授業当日の フィードバック・コメントの共有

3)オンライン授業の弱点や英語特有の活動,

対面授業との違いをふまえた指導

①オンライン授業の弱点を補う指導を助言

< 例 > 反応の拾い方 , 指示方法 , ジェス チャー , 疑似机間指導

②スライド共有を続けず対面に戻る為の工夫 を指導

< 例 > 紙媒体(単語カードワークシート)

活用 , ホワイトボード併用

③英語授業指導に不可欠な音声指導の方法を 助言

< 例 > タイムラグが生じる弱点を踏まえ た口頭練習方法

④対面授業指導に必要なスキルを指導

< 例 >> 立ち位置 , 板書(文字サイズ・色・

構成), 発声 , 視線 , 机間指導

⑤スライドを黒板に見立てるデモンストレー ション

⑥接続不良ほか不測の事態対応に備えた準備

< 例 > 指導者が代わりにスライド操作

4 結果

結果を報告したい。データは,今回の研究目 的に合わせて設定した 7 つのテーマについて用 意された計 11 個の質問に対する回答である。

回答は,5 件法による選択式の記号回答と,回 答を選択した理由を述べる記述回答の 2 種類で ある。記号回答による数量データについては,

全体の傾向を把握するための円グラフや平均値 を示した。また記述回答による質的データにつ

いては,内容のキーワードに注目して各記述に 含まれていた共通テーマと異なるテーマに分 け,複数の履修生が共通に挙げていた内容と異 なる内容それぞれについて,内容のポイントと 関連して挙がっていたキーワード(下線部)を 示した。目的に合わせて設定した 7 テーマに 沿って結果を報告する。

4.1 履修生の ICT 教育という言葉に対する認知度

「ICT 教育」という言葉に対する認知度を把 握するため質問 1 では,今回授業で紹介される 以前に,「ICT 教育」という言葉を聞いたこと があるかを聞いた。「ある」と回答した履修生 は 4 名で,「ない」と回答した 3 名を僅かに上 回り,回答者全体の 57.1%であった。

4.2(.2)中学・高校での ICT を活用した英語 授業経験に対する履修生の受け止め

中学・高校それぞれの ICT 活用英語授業経 験を,履修生がどのように受け止めているか,

を尋ねた質問 3 と 5 に,履修生はそれぞれ,ア)

「大いに経験した」,イ)「ある程度経験した」,ウ)

「どちらとも言えない」エ)「余り経験していな い」,オ)「全く経験していない」から 1 つずつ 選び回答した。中学の平均値は 2.86 であった。

「全く経験していない」と回答した履修生はい なかったものの,「余り経験していない」と回 答した履修生が過半数を越える 4 名で,「大い に経験した」と回答したのは 1 名だけだった。

高校の平均値は中学より高い 3.14 だった。回 答にはバラツキがあり,「全く経験していない」

と回答した履修生が 2 名(= 28.6%)いた一方で,

「大いに」あるいは「ある程度」経験したと回

(5)

答した履修生も 3 名(= 42.9% )いた。

4.3 中学・高校の英語授業における ICT 活用に 対する履修生の意識

質問 6 では,ICT を英語の授業で活用して いくことに対する考えを聞いた。履修生は,ア)

「大いに利用したい」,イ)「ある程度利用した い」,ウ)「どちらとも言えない」,エ)「あまり 取り入れたくない」,オ)「全く取り入れたくな い」から 1 つを選択して回答した。平均値は 4.57 で,「大いに利用したい」を選んだ回答者が 4 名,

「利用したい」を選んだ回答者が 3 名で,それ 以外の回答を選んだ履修生はいなかった。「利 用したい」理由として複数の履修生の記述に挙 がっていた共通の内容のポイント,また関連し て挙がっていたキーワード(下線部)は以下の 通りであった。

1) 生徒への興味・動機づけ:大半の履修生が 印象に残る,集中力が見込まれる,興味を ひきつけるなど,生徒の興味や動機づけに 繋がる点を理由に挙げていた。

2) ビジュアル・エイズや視覚的情報の提供:

動画,イラスト,映像,写真,映画などの 例が挙がり,自身の経験から紙媒体より効 果的,記憶に残る,との指摘もあった。

3) 情報化社会に於ける ICT の必要性:現代社 会に ICT の利用や教育は欠かせない,必須,

必ず必要になるスキル,中学・高校で学ん でいる間にある程度などが記されていた。

4.4 授業を受講する前の大学のオンライン授業 に対する受け止め

質問 7 では春学期開始前のオンライン授業に

対する気持ちを聞き,履修生は,ア)「とても 楽しみ」,イ)「楽しみ」,ウ)「どちらとも言え ない」,エ)「心配」,オ)「とても心配」の中か ら 1 つを選択して回答した。平均値は 3.0 で,ア)

~オ)まで全ての選択肢に回答者がいた(表 1)。

理由として挙げられていた記述内容を,肯定的 な理由(=「楽しみ」)と否定的な理由(=「心配」)

の 2 つに分け,それぞれ書かれていた内容のポ イントとキーワード(下線部)を以下に示した。

1) 肯定的に考える理由:実践的な内容を学べ る点での有益性と共に,前年度 1 年間の経 験から便利さ,手軽さや空間的にリラック ス出来る点を挙げていた。

2) 否定的に考える理由:授業に集中出来ない,

積極的に参加できないのではないか,うし ろめたさや生活のリズムが崩れる心配,授 業への姿勢にマイナスの影響を与えること への懸念,ネット接続や苦手など機器・技 術的な面での心配も挙がっていた。

4.5 授業を受講した後の英語科教育法 IB のオ ンライン授業に対する受け止め

質問 9 では,筆者が行った「英語科教育法 IB」のオンライン授業を,履修生がどう受け 止めたかを聞いた。履修生は ア)とても良かっ た,イ)良かった,ウ) どちらとも言えない,

エ)良くなかった,オ)とても悪かったから 1 つ選択して回答した。履修生全員が「よかった」

以上を選択し(表 2),平均は 4.29 だった。理 由とした記述した内容のポイントとキーワード

(下線部)は以下の通りであった。

1) リアルタイム・双方向で進められたこと:

やり取りがあるので,通常の授業に近い感

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覚で参加できて集中できたこと,また授業 を受けようという大切なマインドセットや 参加意欲につながった点が挙がっていた。

2) 互いに顔が見えること:コミュニケーショ ンが取れる点や対面授業と同じ様な空気感 などが挙げられていた。顔を見ながら模擬 授業ができた点を評価した記述もあった。

3) 意見交換やディスカッションのやり易さ:

意見交換できることを理由に挙げた回答が 複数あり楽しんで授業を受け,より多くの 人の考えを知ることができた点が挙げられ た。マイクを通すと声が聞きやすいのでメ モが取りやすいと点が挙がっていた。

4) ICT 教育の体験:最終的に ICT 教育に触れ るよい機会になったとの記述もあった。

ア)とても良かった:28.64%

イ)良かった:71.4%

<表 2 >授業を受講した後のオンラインによる「英語科教育法 IB」に対する受け止め ア)とても楽しみ:14.3%

イ)楽しみ:14.3%

ウ)どちらとも  言えない:42.9%

エ)心配:14.3%

<表 1 > 授業を受講する前のオンライン授業に対する受け止め

オ)とても 心配:14.3%

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4.6.1 模擬授業実施前 のオンライン模擬授業に 対する受け止め

質問 10 ではオンライン模擬授業を実施する 前の気持ちを聞いた。履修生は,ア)「とても 楽しみ」,イ)「楽しみ」,ウ)「どちらとも言え ない」,エ)「心配」,オ)「とても心配」の中か ら 1 つを選んで回答した。平均は 2.14,ウ)を 選んだ 1 名を除く全員が(85.7%)「心配」を選 んでいた(表 3)。理由として挙げられた内容 について,ポイントと関連して挙げられていた キーワードを以下に示す。以下 4 点全てに関し て,複数の記述があった。

1) 技術面の不安:オンラインが苦手,パワー ポイント作成になれていない,機器の操作 がスムーズにいくか,などの不安が挙げら れていた。

2) 対面授業でないことへの違和感:オンライ ン授業でのテンションや反応がイメージで きない,あるいは,生徒の反応を直に見る ことができない点に加えオンラインは模擬 授業に相当しないという記述もあった。

3) 意欲・心理面の心配:テンションが上がら ない,感情の変化が無い等が挙がった。

4) 未経験:中・高でオンライン授業経験が無 い点や初めて実施する不安が挙がった。

4.6.2 模擬授業実施後の自分のオンライン模擬 授業に対する受け止め

質問 11 では,リアルタイム・双方向のオン ライン模擬授業を実施後,履修生自身がどう受 け止めたか,を聞いた。履修生は,ア)とても 良かった,イ)ある程度良かった,ウ)どちら とも言えない,エ)あまり良くなかった,オ)

とても悪かった,から 1 つ選んで回答した。平 均は 4.14 で,履修生全員が「ある程度よかった」

以上を選択していた(表 4)。以下,理由とし て主に挙げられていた内容のポイントとキー ワード(下線部)を示す。

1) 互いの反応,表情が見えること:普段は意 識しない表情を見ざるを得ない点や自分の 状態と相手の反応がわかることなどが複数 指摘された。また温かい空気が作られた,

あるいはオンライン授業を意識して自分の 表情や相槌を大袈裟」の記述もあった。

2) 授業を客観的に捉えることができること:

自分や相手の反応を客観視できたや,反省 する際によかったことを挙げ,さらに改善 点を見いだした,との記述もあった。

3) ICT 教育の体験ができたこと:映像資料が 共有しやすい,あるいはパワーポイントの 効果的な作り方を学んだ等,普段出来ない 経験ができたことを複数が挙げていた。

4) 対面授業への応用の心配:対面授業に応用 できるかを心配する回答があった。

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オ)どちらとも言えない:14.3%

エ)心配だった:85.7%

<表 3 > 模擬授業実施前のオンラインによる模擬授業に対する受け止め

ア)とても良かった:14.3%

<表 4 > 模擬授業実施後,自分のオンライン模擬授業に対する受け止め

イ)ある程度良かった:85.7%

イ)ある程度良かった:28.6%

<表 5 > 模擬授業実施後の、他の履修生の模擬授業に対する受け止め

ア)とても良かった:71.4%

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4.6.3 模擬授業実施後,他の履修生のオンライ ン模擬授業に対する受け止め

質問 12 では他の履修生のオンライン模擬授 業をどう受け止めたかを聞いた。履修生は ア)

とても良かった,イ)ある程度良かった,ウ)

どちらとも言えない,エ)あまり良くなかっ た,オ)とても悪かった,の中から 1 つ選んで 回答した。平均は 4.71 で,履修生全員が「あ る程度よかった」以上を選択した(表 5)。選 択した回答に対する理由のポイントとキーワー ド(下線部)を以下に示す。

1) 指導法等の学び:着眼点,ICT の活用法や 指導技術,工夫等学んだ内容が挙げられた。

2) 違う視点への気づき:生徒役・教師役の立 場を変えた視点や学びが言及されていた。

3) 自分自身の振り返り:自分と異なる指導や 授業に刺激を受け,自分のためになる点と 共に至らなさに気付くきっかけになったこ とへの言及もあった。

4) 対面以上の臨場感:目の前にいる感覚や授 業の分かり易さなどが挙げられていた。

4.7 授業外に履修生への支援として行ったリ ハーサル実施に対する受け止め

質問 13 では大半が未経験であるオンライン 模擬授業への支援として授業外に行ったリハー サルに対する履修生の受け止めを聞いた。ア)

とても良かった,イ)ある程度良かった,ウ)

どちらとも言えない,エ)あまり良くなかった,

オ)とても悪かった,から履修生は 1 つを選ん で回答した。平均は 5.0 で,履修生全員が「と てもよかった」を選択した。回答に対する理由 のポイントとキーワード(下線部)を示す。

1) 気付きと学び:フィードバックや助言で課 題や足りないものに気付き活かせる。

2) 自他の成長や変容からの学び:リハーサル 後の成長やどう改善したか確認し学ぶ。

3) 不安の解消:機器操作や技術的なトラブル を防ぎ,また最終確認ができたことでベス トな状態で臨める安心感を感じた不安を解 消できている。

5 考察

結果を分析し,各テーマに沿って考察を述べ たい。

5.1 ICT 概念の認知度

「ICT 教育」という言葉に対する認知度は回 答者全体の 57.1%だった。3 年前に行われた同 様の調査結果 51%(吉住 a, 2018)と較べると 微増したとは言え,認知度が高いとは言い難い。

この数字が実態を反映しているのか,あるいは 単なる用語の認知度の問題なのか,はこの段階 では判断できないが,中・高時代の ICT 活用 授業経験に対する履修生の受け止めの結果から は,より前者に近いことが読み取れる。

5.2 中学・高校で ICT を活用した英語授業経験 に対する履修生の受け止め

履修生の ICT 授業経験に対する受け止めを 示す平均値は,中学が 2.86,高校が 3.14 とか なり低く,履修生の ICT 経験があまり豊かで ないことが分かる。また中学が高校より低かっ た点は 3 年前の調査結果と変わらない上,大半 の履修生は中学で ICT 授業を経験していない,

と受け止めていることがわかる。一方高校につ いては,3 年前の 2.21(吉住 a, 2018)と較べる

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と増えている。だが高校の場合,エ)「余り経 験していない」以外の全ての選択肢に回答者が おり,学校によってかなり違いがあることが想 像できる。

5.3 中学・高校の英語授業に ICT を活用するこ とに対する意識

履修生の ICT 活用授業体験が限られていた にもかかわらず,中学や高校の英語授業に ICT を活用することを履修生全員が好意的に捉えて いた。この点は大いに注目できる。履修生の世 代は,IT 環境に日常的に親しんでおり,ICT の授業活用が有効である , と抵抗なく想像でき るのであろう。4.57 という極めて高い数値から,

たとえ ICT 活用授業の経験が乏しくても,履 修生は授業での ICT 活用を前向きに受け止め,

その効果的活用に意欲をもっていることがわか る。言葉の認知度は低くても ICT 教育の重要 性をすでに認識している履修生に必要な学習 は,授業の中でどのように ICT 教育を取り入 れていけばいいか,授業場面を想定したより具 体的な内容や指導法を実際に考えさせ,また体 験させていくことと言えよう。

5.4 大学のオンライン授業や模擬授業に対する 本授業受講前(4 月段階)の受け止め 授業開始前のオンライン授業に対する履修生 の受け止めを示す平均値(3.0)は,低めで回 答にもバラツキがあった。約 1 年にわたって受 講してきた大学のオンライン授業に対する受け 止め方は受講生間で差があることが読み取れ る。否定的な受け止めの理由回答からは,対面 授業でないことへの漠然とした不安や不満,学

習意欲ほか,精神的にもマイナスの影響を与え ていることが窺える。オンライン授業を否定的 に捉える傾向は,オンライン模擬授業に対して も同様だった。実施前のオンライン模擬授業に 対する履修生の受け止めは,平均 2.14,という 極端に低い数値に示されていた。理由記述は,

履修生の大半(85.7%)が対面ではない未経験 のオンライン模擬授業実施に違和感を抱き,技 術的な面を心配し,またテンションが上がらな いといった意欲面でも不安や問題を感じていた ことを伝えている。だが一方で,履修生の ICT 活用授業に対する姿勢は前述した通り前向きで ある。結果が示すオンライン授業や模擬授業へ の否定的な捉え方は,不安材料さえ解消できれ ば,指導や支援次第で変わることがあり得る,

ということを示唆しているとも解釈できよう。

5.5 大学のオンライン授業や模擬授業に対する 本授業受講後(7 月)の受け止め

結果が明らかにした通り,オンラインでの授 業や模擬授業に対する履修生の否定的な受け止 めは学期末の 7 月段階になると,それぞれよい 方向に変化していた。まず,受講した「英語科 教育法 IB」のオンライン授業をどう受け止め たか,の回答結果に注目したい。リアルタイム・

双方向,かつ授業指導や支援方法を工夫しなが ら実施した本オンライン授業に対して,履修生 全員が「よかった」以上を選択し,肯定的に受 け止めていた。履修生の理由記述は,本授業前 後のオンライン授業に対する履修生の評価の上 昇(3.0 → 4.29)が示す意識変容の背景と共に,

彼らがオンライン授業に何を求めているかを理 解する手がかりを与えてくれる。授業後の受け

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止めには,当初履修生がオンライン授業や模擬 授業に対して抱いていた「不安」や「懸念」に 類する言葉は見当たらない。代わりに記述され ていたのは,グループ活動も含めて互いの顔を 見ながら,やり取りを重視して進められたオン ライン授業に,履修生は「対面授業と同じ様な 空気感」を抱いたこと,あるいは,授業に対す る前向きな「マインドセット」や集中,意欲喚 起につながっていた,ということだった。授業 計画時に柱の 1 つに組み込んだ心理面での支援 が有効に働いた好例と言ってよいだろう。

さらにオンラインで行った模擬授業に対する 履修生の受け止めについても,実施前と後とで は,同様に大きく変化した。未経験のオンライ ン模擬授業に対して大半の履修生は心理・技術 両面で当初不安を感じ,実施前の受け止めの平 均値は 2.14 であったが,実施後は一気に 4.14 に上昇した。その劇的とも言える上昇を支えた のは,例えば履修者全員が平均 5.0 という最高 評価を付けた授業外のリハーサルやオンライン に伴う ICT の活用,互いの反応や対面の様な 雰囲気,さらに自分の指導を客観視することか ら得た学びであったことが,記述回答から読み 取れる。技術面の不安解消に加え,自他の改善 点を共有できる雰囲気作りが,オンライン授業 では尚更重要である点を指摘しておきたい。

他の履修生のオンライン模擬授業に対しても 履修生はやはり同様に,4.71 という高い満足度 を示した。理由記述からは,日頃から授業で学 び合いを促していくことが,互いの成長と授業 改善に寄与し,さらなるやる気を引き出してい ることが読み取れる。

オンライン授業のメリットとデメリット(岩

瀧 , 2020)を踏まえた技術指導に加え,互いの 表情や反応を確認できる形で体験を伴う活動や やり取りを意識的に取り入れることが,意見交 換できる雰囲気を醸成し,履修生の学びを後押 しできる。筆者が行った授業指導や支援とささ やかな工夫の積み重ねは一定の成果を上げたと 言ってよいだろう。

だが,自他のオンライン模擬授業に対する履 修生の高い評価が,そのまま彼らの模擬授業や 学びの質の高さを示しているわけではない。美 しい画像や目を引く鮮やかなアニメーション切 り替えが瞬時にできるスライド利用が多用され るオンライン模擬授業は,教室空間でも同様の 授業が出来ると履修生を錯覚させてしまいがち だ。スライド画面や操作に気を取られれば,個 別の生徒の反応に気づき辛く,集中していない 生徒や十分理解できない生徒からのサインを見 逃す可能性もある。オンライン授業で学び合っ た内容の全てが対面授業に活かせるわけではな い。今回の結果はまた,オンライン授業や模擬 授業の限界と課題を示していると言える。カメ ラやマイク・オンの状態だけで生徒の様々な反 応に臨機応変に対応することは難しい。オンラ インの特徴を踏まえ,グループ・ペア活動で生 徒の声をどう拾うか,「集中を維持する板書・

指示の工夫」(加藤,2021:26)や視覚情報の 提示法など,場面や状況に応じた支援や実践面 での細やかな対応力も必要であろう。オンライ ン・対面を問わず,授業をより批判的・俯瞰的 に見る力を育てていくことが重要であること を,あらためて強調しておきたい。

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6 まとめ

本研究の目的は,ICT 活用も視野に入れて 行った英語科教育法のオンライン授業指導に対 する履修生の意識と学びを明らかにし,オンラ イン授業の可能性と課題を探ることにあった。

結果からは,オンライン授業指導のメリット とデメリットを踏まえた支援や指導が,心理・

技術両面から履修生を支え,ICT 活用やオン ライン授業指導に対する履修生の前向きな姿勢 を引き出すと共に,履修生の授業力に対する学 びを深めることができたことが明らかになっ た。オンライン授業の弱点を補うために履修生 と協力して進めた取り組みは,一定の成果を上 げたと言ってよいだろう。とりわけ,オンライ ン授業であっても,教師の成長に欠かせない「内 省的な振り返り」(吉住 b,2018:27 )や「学び 合い」(津田 , 2021)を促すことが可能である,

ということは,今後の授業指導や協同的学びを 考える上で示唆に富む。

しかしながら,今回の研究は参加人数や期間 が限られており,一般化するのに足る十分な材 料を提供できるまでには至らなかった。春学期 のオンライン授業指導の成果と課題が今後どの ような形で各履修生の授業指導力の向上に活か されるのか,継続的な研究が必要であろう。さ らに今求められている ICT 教育充実の観点か らオンライン授業の可能性を考えるためには,

機器や施設の充実や教員研修の保障など,現場 の実態を踏まえた環境整備にも目を向け,ま たそれぞれの教室環境に応じて,例えば「ICT 型情報提示」(豊嶋 , 2021:p28)方法の様な多 様な指導技術の検討も求められよう。本研究か ら得られた成果と示唆を踏まえ,また急ピッチ

で進められている GIGA スクール環境の授業 が新たに求める授業指導力(正頭 , 2021)を視 野に入れながら,今後も引き続き,履修生の学 びと成長を促す効果的なオンライン授業指導の あり方について研究していきたい。

2021 年度の秋学期,担当する「英語科教育 法 IB 演習」では漸く対面授業が可能になった。

春学期と同じ顔ぶれの履修生が,今回初めて直 接顔を合わせることになったが,和気藹々とし た雰囲気はオンライン授業時と変わらない。10 月半ばに開始した模擬授業では,立ち位置や発 声など初めての経験に戸惑いながらも,大きな スクリーンに作り込んだスライドを手際よく提 示する一方で,色分けされた板書やマグネット を貼った単語カードも用意していた。ICT 活 用と板書とを見事に使い分ける力はまさに,オ ンライン模擬授業で習熟した彼らの ICT 活用 力を示す。オンライン授業で授業外のリハーサ ルや活動にも精力的に参加していた履修生たち は,対面授業においても変わらず,より質の高 い模擬授業を目指す努力と学び合いを続けてい る。

引用文献

岩瀧大樹(2021)オンライン授業における ロールプレイングの導入とその検証−教 職課程科目「教育相談」での実践を通じて

−『教職研究』35, pp.61-71, file:///C:/Use rs/kao_y/Downloads/AA11752885_35_06.

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加藤茂太(2021)どんな生徒にもやさしい集 中を維持する板書・指示の工夫『英語教育』

2021 年 9 月号 大修館

(13)

神田外語大学(2020)「2020 年度後期授業終 了時のオンライン授業に関する学生アン ケート集計結果について」 https://www.

kandagaigo.ac.jp/kuis/news/129158/

JACET 教育問題研究会(2017)「行動志向 の英語科教育の行動と実践‒教師は成長す る‒」三修社

正頭英和(2021)ICT 時代に教師に必要な 力『英語教育』2021 年 5 月号 pp 6-7 大修 館

中央教育審議会初等中等教育分科会教員養 成部会 (2020)「教職課程における教師の ICT 活用指導力充実に向けた取組につい て」(2020 年 10 月)

豊嶋正貴(2021)ICT 型情報提示の注意点『英 語教育』2021 年 9 月号 pp 29-30 大修館

山口和範(2020). オンライン授業に関す る学生意識調査(立教大学経営学部調 査)経営学部データアナリティクスラボ

=202009 学生の調査オンライン授業に関す る学生意識調査の結果 https://www.rikk yo.ac.jp/news/2020/09/mknpps000001bg 3b.html

吉 住 香 織 a(2018)「 英 語 授 業 指 導 と ICT 教育に関する一考察: 教職課程履修生の ICT 英語授業経験と ICT 教育への意識を 探る」神田外語大学『言語メディア教育 研究センター年報』pp 61-75

吉住香織 b(2018)「教職課程履修生の省 察と成長に関する考察:模擬授業指導へ の『言語教師のポートフォリオ』の活用」

JACET 教育問題研究会『言語教師教育』

vol.5 No1 pp 27-46

参照

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