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(1)

太陽電池用フタロシアニンの合成とそのサイクリックボルタモグラム

日大生産工(院) ○古谷 直樹 日大生産工 坂本 恵一

1

緒言

低炭素社会が重視される今日では太陽電池の 開発が活発であり、特にデバイス製法が簡便で 廉価であるほか柔軟性、着色性などを持たせる ことが可能な色素増感太陽電池の実用化が期待 されている。

色素増感太陽電池用増感色素は、ルテニウム

(Ru)系色素、クマリン系色素およびポルフィリン

系色素などが知られている。その中でも

Ru

系色 素での光変換効率は

11.3%と報告されている 1)

しかし、

Ru

は希少で高価であるという難点から、

原料が豊富で比較的安価に製作できる有機系色 素の研究が台頭しつつある。

有機系色素として

Torres 2)

らは、光や熱に安定 でポルフィリン類縁体であるフタロシアニン

(PC)を用いた色素増感太陽電池に関して報告し

ている。しかし

PC

の増感作用が可視光領域での 強い吸収波長を利用していることから、変換効

率は約

3%と低いことが現状である。

PC

を用いた色素増感太陽電池の変換効率を向 上させる方法として、可視光から近赤外領域に 吸収を持たせることが高効率化を達成できると 考えられている。

そこで本研究では、ノン-ペリフェラル位に

S-

フェニル置換基を導入することで、近赤外領域 に極大吸収波長を持たせたオクタチオフェニル

PC

誘導体を合成し、その分光学的特性および電

気化学的特性を検討した

3,4)

2

実験

オクタチオフェニル

PC

誘導体(3)は

Scheme 1

に示したように、3段階で合成した。

フタロニトリル-3,6-ジトリフラート(1)は、

3,6-

ジヒドロキシフタロニトリルにジクロロメタン 溶媒中ピリジン存在下-72℃にて、トリフルオロ メタンスルホン酸無水物を滴下した後、常温で

24 h

反応を行うことによってヒドロキシル基の 水素をスルホン基とした。ついで、フタロニト リル-3,6-ジチオフェニル誘導体(2)は

1

をジメチ ルスルホキシド溶媒中、炭酸カリウム存在下で チオフェノール類と

24 h

常温にて反応すること で合成した。

目的化合物の

3

は、2を用いて塩基性触媒の

1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン存在下、

PC

の中心金属に相当する金属塩とともに

1-ペン

タノール溶媒中にて

24 h

加熱還流することによ って合成した。

3

結果と考察

1

は収率約

70%の白色針状結晶として得られ

た。2は、末端置換基をメチル基(a)、メトキシ 基(b) および

tert-ブチル基(c)とした 3

種類のも のを、それぞれ収率約

50%の黄色固体として得

た。

目的化合物である

3

は末端置換基によらず収率

10%の黒色固体として得られ、クロロホルム、

Synthesis and cyclic voltammograms of phthalocyanines for solar cells Naoki FURUYA, Keiichi SAKAMOTO

Scheme 1

−日本大学生産工学部第43回学術講演会(2010-12-4)−

― 155 ―

5-74

(2)

Table 1 UV-Vis spectral date of 3

3a 3b 3c

Co 780 5.13 784 5.15 780 5.11 Ni 795 5.10 802 4.81 810 5.18 Cu 805 5.19 808 4.97 805 5.31 Zn 796 5.26 799 4.94 794 5.30 Pb 859 5.14 862 5.06 856 5.15

λ

max

/nm log ε Central

metal

In Chloroform at 10

-5

mol/L

Table 3 Redox potential date of 3a, 3b, 3c

0 0.5 1 1.5 2

400 500 600 700 800 900

A b s. / a .u .

Wavelength / nm

H Co Ni Cu Zn Pb 2

ルエンおよび

o-ジクロロベンゼンなどの各種溶

媒に可溶であり、その溶液は赤色を呈していた。

Fig. 1

に中心金属の異なる

3c

UV-Vis

スペク トルを示した。PC

HOMO-LUMO

間の

π-π*

移に起因する極大吸収波長である

Q

帯が

650 nm

付近に現れることが知られている。3c

Q

帯は

800 nm

付近でレッドシフトしており、中心金属

Pb

としたもので顕著で、

850 nm

付近まで達し ていた。

Table 1

3c

のスペクトルデータをまとめて示

した。3

UV-Vis

スペクトルは、末端置換基の

違いにかかわらず中心金属によってほぼ同様の 傾向を示した。さらに

UV-Vis

スペクトルから、

3

は可視領域に強い吸収を持たないことがわか った。このことから複数の色素を組み合わせた 色素増感太陽電池への利用が期待できる。

Fig. 2

H 2 -3a

のサイクリックボルタモグラム

(CV)を示した。

H 2 -3a,3b,3c

2

段階の可逆の酸化波と

2

段階 の可逆の還元波が観測されたこれらの酸化還

元波は、中心に金属が存在しないことから

PC

に由来するものと考えられる。

Table 3

に、

3a, 3b, 3c

の酸化還元電位を示した。

PC

に中心金属を導入した

3a,3c

CV

では、

H 2 -3a,3c

と同様に

PC

環に由来する

2

段階の可逆 な酸化波および

2

段階の可逆な還元波が観測さ れた。また

H 2 -3a,3b,3c

と比較すると電位は、中 心金属が配位することによって負方向にシフト していること確認できるほか、

3

の末端置換基が 異なっていても中心の金属が同じであれば、ほ ぼ同じ電位のピークとなることを確認できた。

得られた

CV

の第一酸化波と還元波の電位差

HOMO-LUMO

間のエネルギーギャップとし

て表すことができる。このことから、3

PC

由来の酸化還元電位は、中心金属が配位するこ とで中心金属から

PC

環への電子授受が生じて いると推察できる。

CV

の結果から、合成した

3

PC

環で可逆の 酸化還元反応が行われていると推測できるため

3

を色素増感太陽電池用色素として使用する場 合、

3

の標準酸化還元電位がヨウ化物イオンの標 準酸化還元電位より上であればヨウ化物イオン から電子を引き抜くことが可能である。

4

参考文献

1)F.Gao, S.M.Zakeeruddin, M.Gratzel et al. : J. Am. Chem. Soc 2008, 130 , 10720-10728 2)J.J.Cid, M.K.Nazeeruddin, T.Torres et al. :

Angew.Chem.Int.Ed 2007, 46 , 8358-8362 3)K.Sakamoto,E.Ohno-Okumura,T.kato,

H.soga: J Porphyrins Phthalocyanines 2010, 14 , 47-54

4)T.Fukuda,T.Biuajima,N.Kobayashi:

J. Am. Chem. Soc 2010, 132 , 6278-6279 Fig. 1 UV-Vis spectra of 3c

Fig. 2 Cyclic voltammograms of H

2

-3a in o-Dichlorobenzene with 0.1 M tetrabutylammonium perchlorate. Sweep rate=50 mVs-1

― 156 ―

Fig. 2 Cyclic voltammograms of H 2 -3a in o-Dichlorobenzene with  0.1 M tetrabutylammonium perchlorate

参照

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