キーワード magnetic resonance imaging(MRI), arterial spin labeling(ASL), perfusion, cerebral blood ‰ow doi:10.2463/jjmrm.20201719
総 説
Arterial spin labeling(ASL)による脳灌流イメージング
藤 原 康 博1, 石 田 翔 太2, 木 村 浩 彦3
1熊本大学大学院生命科学研究部医用画像科学講座
2福井大学医学部附属病院放射線部
3福井大学医学部病態解析医学放射線医学領域
は じ め に
脳は恒常性を維持するために,酸素やグル コースなどの栄養素の供給を受け,老廃物を排 除している.これらの供給は血流によって行わ れ,血液の毛細血管床への輸送プロセスを灌流
(perfusion)と呼ぶ.灌流は組織の代謝変化の 指標として,脳血管障害や脳腫瘍に代表される さまざまな疾患の診断や治療効果の判定などの 評価に用いられている.灌流は,広義には血管 内の血液の移動すなわち血流と同義語として扱 われるが,狭義には毛細血管床から組織内への 水の動態を指す用語として用いられ,単位時間 に 単 位 容 積 の 組 織 に 輸 送 さ れ る 血 液 量
(regional cerebral blood ‰ow : CBF)として定 義される.
Magnetic resonance imaging
(MRI
) に お ける脳灌流の代表的な測定法には,dynamicsusceptibility contrast( DSC
) とarterial spin labeling
(ASL)の2
つが挙げられる.DSCは,spin echo
ま た はgradient echo
型 のecho pla- nar imaging(EPI)を用いてダイナミック撮
像を行い,ガドリニウム(Gd)造影剤が通過 する際の局所の磁化率変化に伴う位相変化から 濃度を推定する1),2).これにより,局所脳血液 量 (regional cerebral blood volume : CBV
),局 所 脳 血 流 量 (
regional cerebral blood ‰ow : CBF),局所平均通過時間などの血行力学的パ
ラメタが取得可能で,最も一般的に普及してい る.ASL
は,脳組織に供給される動脈血のスピンを磁気的に標識し,これをトレーサ(追跡子)
として利用する3).このため,Gd造影剤が不 要で腎性全身性線維症などの副作用のリスクが なく放射線被曝もないことから4),腎機能障害 者や小児などを含めた幅広い被験者を対象に繰 り返し利用可能な特徴がある.ASLは非侵襲 的に灌流測定ができる利点がある反面,他の方 法 と 比 較 し て 原 理 的 に 画 像 の
signal-to-noise ratio(SNR)が低いため,長期間にわたり研
究開発が進められていたが臨床への導入は遅れ ていた.近年,パルスシーケンスの技術進歩と 高磁場装置や高感度フェーズドアレイコイルな どのハードウエアの普及によって,実用的な時 間で高いSNR
が得られるようになったことで 臨床利用の機運が高まった.2015
年にAlsop
らの専門家グループによっ て臨床利用のためのコンセンサスペーパーが出 版され,その中で臨床に混乱をきたす複雑な技 術的オプションをできるだけ排除し,一定水準 の画質を安定的に得るための推奨技術やパラメ タなどを提案し,シンプルな標準利用法を示し た5).主要なMR
装置メーカーは,これに準じ たパルスシーケンスの提供を開始し,多くの施 設で利用可能になった6).これまでに,さまざ まな脳神経疾患の診断に対するASL
の臨床的 有用性が多数報告され,灌流の測定技術の一つ として画像診断に大きな役割を果たしている.本稿では,ASLを用いた灌流の測定法と定 量化についてレビューする.さらに,最近の
ASL
の技術開発の動向についても紹介する.2020年6月22日受理 2020年7月3日改訂
Fig. 1. Labeling locations of the CASL/pCASL and PASL and pulse sequence diagram of the pCASL ASLのイメージング原理
はじめに,ASLのイメージングの概要を説 明する.ASLでは,血液の水分子を磁気的に 標識(ラベル)するために,撮像領域よりも上 流側の頸部領域において移動する血液の磁化を 反転させる(Fig. 1a).ラベルされた血液スピ ンは,血流によって毛細血管床へと移動し,組 織中の水分子と交換することで組織の磁化を変 化させる.このタイミングで信号収集を行うこ とで,灌流の多寡を反映した画像が得られる.
ただし,実際には画像中で灌流由来の信号は静
止組織の
1程度と小さく,脳組織に由来した
信号が大半を占めている.そのため,ラベルを 行った画像とは別にラベル操作を行わないコン トロール画像を撮像し,それらを差分すること で組織灌流に由来した信号のみを画像化し,こ れを灌流強調像(perfusion weighted image)
としている.また,低い
SNR
を補うためにラ ベル画像とコントロール画像の撮像を交互に繰 り返し,加算平均を行う.ASL
の撮像は,時系列に◯ラベル,◯post- labeling delay(PLD),◯
信号収集の3
つセク ションで構成される(Fig. 1b).ラベルはRF
パルスと勾配磁場の組み合わせによって行われ , そ の 印 加 方 法 に よ っ て
pulsed ASL
(PASL), continuous ASL (CASL), pseudo-continuous ASL
(pCASL)の3
つに分類され る.PASL
は,頚部の広い領域に対して単一のinversion recovery( IR)パルスを印加するこ
とで領域内の血液スピンの磁化を反転させる(Fig. 1a).広範囲を均一に反転させる必要性 か ら
frequency oŠset corrected inversion
(FOCI)パルスなどの断熱パルスが用いられ る7).PASLは,シンプルでハードウエアの制 約 が 少 な く
magnetization transfer( MT) 効
果の影響が小さい利点があり,これまでecho- planar imaging and signal targeting with alter- nating radiofrequency
(EPISTAR)や‰ow- sensitive alternating inversion recovery
(FAIR)など改良された多くの方法が提案されている8)~10).しかしながら,ラベルする血
液スピンのボーラスサイズが
IR
パルスの印加 領 域 に よ っ て 制 限 さ れ る た め ,SNRの 面 でpCASL
に劣る.したがって,現在は灌流画像としての利用は限られており,おもに
MR an- giography
の目的に利用されることが多い11).CASL
は,頚部のある断面に対して頭尾方向 に勾配磁場を設定し一定強度のRF
パルス(連Fig. 2. Representative ASL images of a healthy subject 続波)を印加すると,移動する血液スピン自身
が感じる有効磁場が変化することによって磁化 が反転する(Fig. 1a)12).これを
‰ow-induced adiabatic inversion
と呼ぶ.脳組織に近い位置 で一定時間連続的にラベルを行うことが可能な ため,PASLよりも高いSNR
が得られるが,連続波の利用には専用のハードウエアが必要で あ り , さ ら に
MT
効 果 やspeciˆc absorption rate(SAR)を増大させる課題があるため臨床
利用が困難であった.pCASL
は,前述した2
つのラベル技術の課題を解決する技術である.CASLと同様に頸部 にラベル面を設定し,連続波の代わりに
500
ms程度の間隔でRF
パルスと勾配磁場パルス を間歇的に印加することで,CASLと同様に移 動する血液スピンの磁化を反転させる13).コ ントロール画像の撮像は,ラベル画像とMT
効果の差が生じないようにRF
パルスの極性を 交互に変化させる.pCASLは,SARを低減しながら
80程度の高い効率で安定したラベル
が可能で,これにより
SNR
と再現性の高い画 像が得られるようになった(Fig. 2).これがASL
普及の技術的ブレイクスルーとなり,現 在ではASL
の標準的なラベル技術として臨床 利用が推奨されている5).ラベルを行う断面と実際の撮像領域は位置が 異なるため,ラベルされた血液スピンが組織の
毛細血管床レベルに到達するには一定の時間を 要する.この時間は血流速度や血管支配域など によって異なるが,灰白質では
1
秒,白質で は2
秒程度である14).したがって,毛細血管 床レベルにラベルされたスピンが分布した状態 で信号収集を行うために,ラベル終了後から信 号収集までに待ち時間を設定する.この時間をpost-labeling delay( PLD)と呼び,高齢者を
対象とした撮像ではPLD
を2
秒に設定するこ とが推奨されている5).PLD
が長いほど到達 時間(arterial transit time : ATT)の影響によ る信号変化を小さくできるが,血液スピンのT
1緩和によってラベル効果が減少しSNR
が低 下するため,PLDの効果とSNR
はトレードオ フの関係にある.高磁場ほど血液のT
1値が延 長することから,3.0Tの利用はラベル効果の 持続に寄与し,SNR向上に有利となる.脳実質や脳脊髄液に由来した信号は,原理的 にはラベル画像とコントロール画像との差分に よって相殺されるため画像に影響を与えない.
しかしながら,わずかな体動や脳脊髄液の拍動 などがアーチファクトを生じ,画質を劣化させ る原因となる.これを改善するため,ラベルの 前後に
90
度または180
度パルスを数回印加 し,それぞれの組織の縦磁化がnull
に近いタ イミングで信号収集することで,T1値が異な る さ ま ざ ま な 組 織 か ら の 信 号 を 抑 制 で き る(Fig. 1).このようなプリパルスを背景信号抑 制 (
background suppression) と 呼 び , ASL
のSNR
向 上 に 大 き な 役 割 を 果 た し て い る15),16).血液スピンの
T
1緩和中の磁化変化を観測す る必要から,信号収集は高速性が求められる.従 来は
2D single shot EPI
が用 いら れて いた が,近年ではセグメントに分割した3D rapid acquisition relaxation enhanced
(RARE)や3D gradient and spin echo
(GRASE)による信 号収集が可能である13),16)~19).3D収集は,各 スライスでPLD
の差を生じない利点があり,背景信号抑制と組み合わせることで
SNR
を大 きく改善する20).特に3D RARE
とk
空間を スパイラルトラジェクトリで収集を組み合わせ た撮像法では,k空間中心のオーバーサンプリ ングとリードアウト時間を短縮できることに よって,3D GRASEよりもSNR
が高くスラ イス方向のボケを生じにくい21).これまでに述べた
pCASL,背景信号抑制,
3D
収集を組み合わせたパルスシーケンスに3.0T
装置および高感度なフェーズドアレイコ イルなどのハードウエアを用いてASL
を撮像 することによってSNR
が格段に向上し,3分 程度で臨床利用可能な灌流強調像が得られるよ うになった.臨床利用の標準ガイドが示されこ とにより,ベンダー間や施設間の標準化が進ん でいる5).定 量 化
1. Kinetic model
CBF
の標準的な測定法であるpositron emis- sion tomography
(PET) や single photon emission computed tomography(SPECT)な
どの核医学的手法22),23)と同様に,ASLによっ て計測した信号からCBF
を定量可能である.ASL
信 号 ( 任 意 単 位 ) をCBF( mL
/100 g/min)に変換するには,計測した灌流信号を組
織のプロトン密度に対して正規化し,kineticmodel(Fig. 3)を適用する
24).これまで様々 なモデルが提案されているが25)~28),モデルの 単 純 さ や 未 知 パ ラ メ タ の 少 な さ か ら1
コ ン パートメントモデルが一般的に使用されるため,本稿では
1
コンパートメントモデルを用 いた定量法について解説する29).Bloch
方程式からkinetic model
の解を導出 す る に は 以 下 の3
つ の 前 提 条 件 が 必 要 に な る.◯ 血液中のラベルスピンは毛細血管床で即座 に脳組織のスピンと交換する.
◯ 脳組織に流入するスピンと脳組織のスピン の縦磁化は十分に混和する.
◯ 灌流によって脳組織のT1値(T1t)が変化 する(T1t→T1app
,
[1/T1app=1/T1t+f/l]).まず条件◯のもと,脳組織の縦磁化は動静脈血 の流入出によって時間変化し,Bloch方程式か ら,
dM(t)
dt =M0-M(t) T1t
+f(Ma(t)-M[(t)) …(1)
となる.
ここで,M0は熱平衡状態における脳組織の 縦磁化,M(t) は時間tにおける脳組織の縦磁 化,T1tは脳組織のT1値,fは灌流,Ma(t) は 組織に流入する動脈血の縦磁化,M[(t) は組織 から流出する静脈血の縦磁化である.
さらに条件◯◯のもと,kinetic modelの解 は,
DM(t)=0 (t<da) ………(2
1)
DM(t)=2M0l abT1appf
×
[
exp(
-Tda1a)
-exp(
-T1appt)]
(da<t<da+t) ………(2
2)
DM(t)=2M0l abT1appf・exp
(
-Tt1a)
×
[
exp(
daT+t-t1app)
-exp(
dTa-t1app)]
(da+t<t) ………(2
3)
で与えられる.ここで,DMは
ASL
で取得した灌流画像に おける信号強度,daはATT(ラベルスピンが
ラベル面から組織に到達するまでの時間),a はラベル効率,bは背景信号抑制効率,lは血 液分配係数,T1appは脳組織の見かけのT1値で ある.Fig. 3. Kinetic curves of the single-compartment model(1CM).(a, c, e, g, i)1CM withT1a
and
T1app,
(b, d, f,h) 1CM with
T1a. A solid line presents a reference condition
(CBF=50 mL/100 g/min, ATT=1.0 s,LD=3.0 s,
T1a=1.65 s,T1t=1.2 s). The variables of each kinetic curve are :(a, b)ATT,
(c, d)CBF,
(e, f)LD,
(g, h)T1a, and
(i)T1t.
これをfについて解き,mL/g/sから
mL/ 100 g/min
への単位変換係数(6000)を乗じると,CBFATT-corrected
=6000・ lDM(t)
2abT
1appM0×
exp
(
Tda1a)
― [exp(
-max(w-dT1appa, 0) )
-exp
(
-max(w+t-dT1app a, 0) )]
……(3)
となり,CBF(mL/100 g/min)が得られる.
モデル簡略化のために式(2)においてT1app= T1aとすると,ラベルスピンの血液から組織へ の流入・交換を仮定しない
1
コンパートメン トモデルを用いて以下の式で表せる.DM(t)=0 (t<da) ………(4
1)
DM(t)=2M0l abT1af
×
[
exp(
-Td1aa)
-exp(
-Tt1a)]
(da<t<da+t) ………(4
2)
DM(t)=2M0l abT1af・exp
(
-Tt1a)
×
[
exp(
Tt1a)
-1]
(da+t<t) ……(4
3)
このとき,ラベルスピンは収集時に組織内に は流入しておらず,局所の微小血管内に分布し ているとみなす.これをfについて解くと,CBF=6000・lDM(t)
2abT
1aM0×
exp
(
Td1aa)
― [exp(
-max(w-dT1a a, 0) )
-exp
(
-max(w+t-dT1a a, 0) )]
…(5)
となる.ここで,PLDを組織の最大
ATT
よ りも長く設定すれば,式(5)からdaを消去でき るため,CBF=6000・ lDM(t)
2abT
1aM0・
exp
(
Tw1a)
1-exp (-Tt1a)
…(6)
となり,理論上は
ATT
計測を必要とせずに正 確なCBF
が算出可能となる.したがって,ATTを補正した
CBF(式(3),
(5))とATT
を補正しないCBF(式(6))は
厳密に区別する必要がある.式(6)から求めら れるCBF
はモデル簡略化によっ て数式上はATT
の影響を無視しているが,1点のPLD
で 撮像したASL
画像はATT
の影響を受けたコ ントラストを呈するためCBF
もATT
の影響 を受ける.ATT計測を省略した1
コンパート メントモデルはあくまでも便宜的なものに過ぎ ず,ASLを使用して正確にCBF
の定量を行う にはATT
計測が必要不可欠である.2. ATT
ATT
とは,ラベルスピンがラベル面から脳 組織に到達するまでの時間であり,病態・年 齢 ・ 血 管 支 配 領 域 で 大 き く 異 な る . 通 常 のASL
撮像ではPLD
を1
点しか収集しないため(single-delay ASL),PLDの設定が
CBF
の測 定精度に大きく影響する.短すぎるPLD
では 組織にラベルスピンが到達せず,長いPLD
で はラベル未到達の問題は解消できるがATT
の 短い組織においてSNR
が著しく低下する.式(4)のモデルは血管内から組織へのラベル スピンの流入を仮定していないため(T1app= T1a),ASL信号は,ラベル開始から画像収集 までのT1aによる緩和のみを考慮すればよい.
実際には,ラベルスピンが組織に流入すると T1値が短縮するため血管内よりもラベルが早 く緩和する(T1app<T1a).式(2)のモデルはラ ベルが組織に到達するまではT1aで緩和し,組 織 に流 入 後はT1appで 緩 和す る と仮 定 して い る.すなわち,ラベル開始から信号収集までの 間にラベルがT1aとT1appで緩和した時間の割 合が
ATT
によって変化するため,計測されるASL
信 号 はATT
の 影 響 を 受 け る こ と に な る.したがって,式(2)は式(4)よりも生体灌 流 に 近 い モ デ ル で あ る が , 算 出 さ れ るCBF
(式(3))は
ATT
の影響を大きく受けるため,このモデルの利用には
ATT
の計測および補正 が必須となる.ATT
は血行動態を反映する機能情報である が,CBFの定量において最も重要な補正係数 として利用される.特にATT
が著明に延長す る脳血管障害(もやもや病,内頚動脈狭窄/閉 塞 症 ) で はATT
の 計 測 ・ 補 正 が 必 要 で あ る30).前述のとおり,コンセンサスペーパー においてsingle-delay ASL
の推奨条件が示さ れているが,single-delay ASLではPLD
が1
点しかないため,ボクセルごとに異なるATT
の影響を完全には0
にできない.ATTの影響 を排除するには,ATT自体を計測し補正を行 う必要がある.ATT
計測には複数の異なるPLD
で撮像し たASL
画像が必要で (multi-delay ASL),そ の 算 出 に はsignal-weighted delay
(WD
) 法31)~33)やmodel ˆtting
30),34),35) が 使 用 さ れ る.ASLは,原理的にSNR
と時間分解能が低 いため,model ˆttingの適用は頑健性に問題が ある.WD
法は,ある範囲のATT
に対して1
次 モーメント(式(7))を求めて変換関数とし,WD
の実測値と理論値を比較してATT
を算出 する.WD(da)=
[ ∑i=1n
wi・DM(da
,
wi)] [ ∑i=1n
DM(da
,
wi)]
…………(7)ここで,wiは
i
番目のPLD,DM(d
a,
wi) はPLD
とATT
がそれぞれwi,
daのASL
信号で ある.WD
法によるATT
計測は,CBFとM0の影 響を受けないため頑健性が高く,計算コストが 小さい31).さらに,臨床例での使用も報告されている32),33).計測可能な
ATT
の範囲は,PLD
に よ っ て 決 定 さ れ る た め ,multi-delay ASL
における最大と最小PLD
の選択は重要で ある.3. Multi-delay ASL
複数の
PLD
を取得するmulti-delay ASL
に は 大 別 す る と3
種 類 の 方 法 が あ る .1)Se- quential type
30),31), 2) Look-Locker type
36),37),
3
)Time-encode type
(Hadamard-encodedASL)
35),38),39)で あ る .Look-Locker type は 後 半に収集した画像のSNR
が著しく低下するた め 臨 床 利 用 は 難 し い . こ こ で はSequential type
について説明し,Time-encode typeにつ いては別のセクションで説明する.一 般 的 に は , ま ず
multi-delay ASL
か らATT
を計測し,その後ATT
を補正したCBF
を 算 出 す る .Multi-delay ASL
の 撮 像 か らCBF
定 量 ま で の 流 れ をFig. 4
に 示 す .Se- quential type
(Fig. 5a)はラベル時間(label-ing duration : LD
) を 固 定 し , 複 数 の 異 な るPLD
を使用する方法である.Multi-delay ASL の中で最もシンプルで一般的に用いられてい る.PLDを変更する以外の特別な操作が不要 なため,臨床用シーケンスで撮像可能である が,設定するPLD
の数に応じて撮像時間が延 長する.その問題を軽減するために低分解能のmulti-delay ASL
を事前に撮像してATT
計測 を行い,これを高分解能で撮像したASL
画像 に適用してATT
を補正する方法が報告されて いる31).4. ASL
によるCBF
定量化の課題1
コンパートメントモデルは他のモデルと比 較してパラメタ数が少ないが,1度の撮像で全 パラメタ(ラベル効率[a],背景信号抑制効 率 [b], 組 織 のT1値 [T1t], 血 液 のT1値[T1a],到達時間[da],血液分配係数[l])は 測定できない.一般的には,ラベル効率[a=
0.85]
13),背景信号抑制効率[b=0.75]15),血 液のT1値[T1a=1.65 s]40),血液分配係数[l=0.9]41)は文献値が使用される.組織のT1値 計測31)は比較的簡便で,組織のT1値計測の重 要性も報告されているが42),実際には測定せ ずに
3.0T
ではT1app=T1t=1.2 sとする場合が多い43)~45).これらのパラメタは
CBF
の定量性に影響し,固定値の使用はバイアスの原因と なる.本来は被験者および撮像ごとの計測が望 ましいが,現実的に臨床で使用できる確立した 方法はない.各パラメタ測定の最新手法が報告 されており,CBFの定量性を向上させるため の研究・開発が進んでいる46),47).さらに,M0
を得るために取得するプロトン密度強調像にも 標準的な撮像法はない.ASL信号およびプロ
Fig. 4. Flowchart of CBF quantiˆcation using multi-delay ASL. First, ASL, proton density(PD), and T1
- weighted
(T1w) images are obtained using a multi-delay sequence. Subsequently, the T
1map is com- puted using the PD and T
1w images. Next, we can calculate ATT on a voxel-by-voxel basis with the signal-weighted delay method. Finally, the CBF map is calculated using T
1and ATT maps to com- pensate for these parameters.
トン信号は,収集シーケンス(スピンエコー 系,グラジエントエコー系)の信号特性の影響 を受ける48).これらの様々な課題はあるもの の,ASLで測定した
CBF
は15O-H
2O PET
で 測定されたCBF
と強い相関を示し,臨床利用 に 十 分 な 精 度 を も つ こ と が 報 告 さ れ て い る49)~51).臨 床 応 用
臨床の現場では,通常シーケンスに加えその
場で灌流信号が非侵襲的に簡便に得られる点に 利用価値があると考えられる.具体的な症例を 提示する.
ASL
画像の臨床応用の領域として急性期脳 梗塞の病態の描出に利用可能なことが挙げられ る52).脳梗塞の虚血中心やペナンブラはASL
で低信号に,逆に再開通領域や贅沢灌流領域は 高信号に描出される.Fig. 6は,超急性期の脳 梗塞の症例で左の被殻,島皮質の一部が拡散強 調像で高信号を呈しているが,ASLでは中大 脳動脈支配領域は広範囲に低信号に描出されてFig. 5. Schematic diagrams of multi-delay ASL with three PLDs.(a)Sequential type and(b)time-encode type.
いる.MRAにて,左内頸動脈の描出がされて おらず,左内頸動脈起始部の閉塞であった症例 である.超急性期脳梗塞の所見である.ASL では,左中大脳動脈支配領域の血流が低下して おり,拡散強調像による高信号の範囲と一致せ ず,いわゆる
diŠusion-perfusion mismatch
で ありペナンブラを含む領域と考えられる.血栓 溶解療法,血栓回収後のMRA
では再開通し,ASL
でも抹消の信号の改善が得られている.被殻,島皮質の一部の高信号領域は,おそらく 再開通後の血管拡張を伴う高灌流に相当すると 考えられる.
ASL
による腫瘍診断の有用性についても,これまでに多くの報告がある,特に悪性度の高 い膠芽腫では低悪性度のものと比較して
ASL
で高信号となる報告が多い.Fig. 7は多形膠芽 腫の症例で,右頭頂葉に中心壊死を伴ったリン グ状増強を伴う腫瘤を認める.ASLでも病変 部は不整な高灌流に描出され,病変周囲の浮腫 の領域は,逆に低灌流に描出されており,浮腫状態の病態にあうものと思われる.この
ASL
の信号が腫瘍のgrade
に利用できるとの報告 は当初より多く53),造影されない腫瘍部分の 灌流の多寡を評価するのに利用できるとの報告 もある54).さらに
ASL
画像の臨床応用は,脳血管障害 や脳腫瘍以外にも多くの領域に応用を広げてき ている55).脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻など のシャント疾患では,シャントされたスピンが 静脈洞系に分布して高信号に描出されるため,時に病変の診断のきっかけとなることもある.
梗塞様の症状で発症し得る,てんかん後変化,
可逆性後頭葉白質脳症,脳炎/脳症,片頭痛な どの病態で
ASL
高灌流の状況などから梗塞の 除外ができ,鑑別の一助となることもある.こ れらのように様々な病態でASL
画像の利用価 値は高く,今後のシーケンスの更なる発展が期 待される.Fig. 6. Representative ASL images in a case of hyperacute cerebral infarction. Case : A man in his 40s. Right hemiplegia, dysarthria. MR images at 2.5 h of onset : a)DWI, b)ASL image, c)MRA. After rtPA and endovas- cular treatment, the vessel was recanalized 4 h and 14 min later. The bottom row shows follow-up MR images (day 3): d)DWI, e)ASL image, and f)MRA.
最近の技術開発の動向
1. Time-encoded multi-delay
(Hadamard-en-coded multi-delay)
前述した
multi-delay ASL
のうちSequential type
では,撮像を設定したPLD
の数だけ繰り 返すため時間効率が悪い.このため,近年に時 間効率の良いTime-encode type
が提案された(Fig. 5b)38).Time-encode typeは,ラベル画 像とコントロール画像の撮像を単純に繰り返す の で は な く , 符 号 化 (
encoding
) と 復 号(decoding)によって,コントロールとラベル の組み合わせを異なる複数の
PLD
において効 率よく収集する手法である.符号化には,全要 素が1
と-1で構成され,各行が互いに直交で ある正方行列(2n×2n : n∈N)のアダマール 行列(式(8))を使用する56).H4=
┌│
││
││
└
1 1 1 1
1
-1
1
-1
1 1
-1
-1
1
-1
-1
1
┐│
││
││
┘
………(8
1)
H8=
┌│
││
││
││
││
││
│└
1 1 1 1 1 1 1 1
1
-1
1
-1
1
-1
1
-1
1 1
-1
-1
1 1
-1
-1
1
-1
-1
1 1
-1
-1
1
1 1 1 1
-1
-1
-1
-1
1
-1
1
-1
-1
1
-1
1
1 1
-1
-1
-1
-1
1 1
1
-1
-1
1
-1
1 1
-1
┐│
││
││
││
││
││
│┘
……(8
2)
このとき,コントロールとラベルはそれぞれ1
と-1,もしくは-1と1
に対応する.ただ し,アダマール行列の1
列目は全要素が1
と なり,コントロールとラベルの組み合わせが成 立しないため使用しない.したがって,ASL に利用するアダマール行列は2n×2n-1
の行 列となり,設定可能なPLD
の数は3, 7, 11
とFig. 7. Representative ASL images in the brain tumor. Case : A man in his 80s. Left insu‹cient palsy developed and was diagnosed as glioblastoma. a)DWI, b)FLAIR image, c)T2
-weighted image, d) T
1-weighted image after contrast administration, e) ASL-CBF map, and f) fusion image of the ASL-CBF map on the T
1- weighted image).
Fig. 8. Hadamard matrix used in the time-encoded ASL. Upper and lower rows present 3 and 7 delay Hadamard matrices, respectively.(a)Standard,(b)T1
-compensation, and
(c)free-lunch. C and L in the Hadamard matrix denote ``Control'' and ``Label,'' respectively.
なる(Fig. 8).これを
ASL
に応用し,1つの 長いラベルボーラスを複数の小さいボーラス(サブボーラス)に分割して,サブボーラスご とにコントロールとラベルを切り替えて符号化
した画像を収集する.符号化に使用するラベル ボーラスはアダマール行列の各行に一致し,こ れを繰り返すことで最終的にアダマール行列の すべての行に対応するように符号化画像を収集
する.アダマール符号化された一連の画像収集 後に復号を行い,サブボーラスごとの異なる
PLD
画像を再構成する.復号するときには,符号化画像に係数を乗じて各サブボーラスの
ASL
画像を再構成する.適切な係数を使用す ると対象のサブボーラスではコントロールとラ ベルの差分が成り立つが,それ以外のサブボー ラスでは計算結果が0
となりASL
画像は再構 成 さ れ な い .Fig. 5b に お い てsub-bolus1
のASL
画 像 を 再 構 成 す る 場 合 は , 符 号 化 画 像(◯,◯,◯,◯)に対して◯-◯-◯+◯と なる係数を使用して復号する57).この時ラベ ルを
L,コントロールを C
とすると,sub-bo-lus1
はL-C- C+L=2DM,sub-bolus2
はL
-L-C+C=0,sub-bolus3は
L-C-L+C=
0
となり,sub-bolus1だけが再構成される.残 りのサブボーラスに関しても,それぞれの適切 な係数を使用すると同様の処理ができ,対象と しているサブボーラスのASL
画像だけが再構 成できる.Sequential type
で は 各PLD
のLD
とPLD
は自由に設定できるが,Time-encode typeで は各サブボーラスのLD
とPLD
の設定は互い に制約関係にあり,パラメタ設定の自由度が低 い.LDとPLD
はATT
やCBF
の測定におい て 特 に 重 要 な パ ラ メ タ で あ る に も か か わ ら ず14),Time-encode typeでは各サブボーラス の条件を個別に最適化できない.したがって,Time-encode type
で撮像した各ボーラスのLD
とPLD
は 必ず しもSequential type
と同 じ条 件にはならない.ここで,Time-encode typeで
3
点のPLD
のASL
画像を取得する場合をSequential type
と 比較して考える(Fig. 5).Sequential typeで はラベルとコントロールの画像の撮像を合計6
回(PLD数×2)行う必要があるが,Time-en-code type
では4
回(PLD数+1)で全ての撮 像が完了する.PLDを7
点にした場合,Se-quential type
とTime-encode type
ではそれぞ れ14
回 と8
回 の 撮 像 が 必 要 に な る た め ,Time-encode type
の時間効率の良さは明らか で あ る . さ ら に ,Time-encode type
はSe- quential type
よりも雑音伝播が小さくSNR
が 高い35).一方,撮像中に1
度でも体動などのアーチファクトが生じると,復号後の全画像に その影響が伝播するため
Sequential type
より も体動の影響を受けやすい.また,Time-en-code type
は1
つの長いラベルボーラスを複数 のサブボーラスに分割するため,PLD数の増 加は時間分解能を向上させるが,各サブボーラ ス のLD
が 短 縮 す る こと か らSNR
を 低 下 さ せ,結果的にATT
やCBF
の測定精度を低下 させる58).Time-encode type
によるATT
やCBF
のパ ラメタ推定の精度を向上させるために,様々な サブボーラスのLD
とPLD
の設定方法(ボー ラスデザイン)が提案されている34).サブボー ラスを等分割に設定するStandard
型,血液の T1(T1a)緩和の影響を補償し,各サブボーラ スのSNR
を等価にする目的のT1-compensa- tion
型 , そ し て 従 来 のsingle-delay ASL
のPLD(空き時間)に符号化の過程を追加する Free-lunch
型がある(Fig. 8).様々なボーラ スデザインが報告されているが,最適な方法は 明らかになっていない.ATT
およびCBF
の 測定精度は各サブボーラスのSNR
の影響を強 く受けるため,各サブボーラスのASL
画像が 十分なSNR
を保持できる方法を選ぶ必要があ る.我々の経験では,Time-encode typeだけ を単独で使用する場合の臨床利用において最も 合理的で頑健な方法は,撮像時間やサブボーラスの
SNR,体動への頑健性などの観点から,
Standard
型で3
つのPLD
を利用する方法であ ると考えている.さらに,PLD数の増加によ るサブボーラスのSNR
低下というTime-en- code type
の 問 題 点 を 軽 減 す る 方 法 と し て ,Hadamard multi-delay
による3
つのPLD
の収 集に長いLD
と長いPLD
によるsingle-delay ASL
を 組 み 合 わ せ る 方 法 が 報 告 さ れ て い る58).以上から,Time-encode typeは撮像の 時間効率やSNR
が向上する反面,時間分解能 や各サブボーラスのSNR
のトレードオフが存 在するため,これらの特徴を理解して適切な撮 像条件を設定する必要がある.2. Vascular crusher
による血管内信号の抑制 前述のようにpCASL
で得られるASL
画像 はATT
にも依存するため,大血管の高度狭窄 や側副血行路などを介した灌流によってATT
Fig. 9. Comparison of ASL images without vessel suppression(a), with MSDE(b), and with DANTE(c).
DANTE can be applied at a higher strength than MSDE because of its ability to uniformly suppress the large ves- sel signals.
が延長した領域では,血管内に血液スピンが留 まった状態で信号収集されることになり,これ がアーチファクトとして
CBF
を過大または過 小評価する.血管内スピンの信号は,励起パル ス直後にvascular crusher gradient
を印加した り ,motion-sensitized driven equilibrium
(MSDE)モジュールを導入することで抑制できる59)~61).MSDEモジュールは,勾配磁場の
印加方向に移動するスピンの位相を分散させる ことで信号抑制を行う技術である62).カット オフ速度は
bipolar gradient
(BPG)の強度を 変更する速度エンコードパラメタ(VENC)の 設定によって決定され,一般的にはB
0方向に対して
4 cm/s
程度に設定し,これよりも速い流 速 成 分 を 有 す る ス ピ ン の 信 号 を 抑 制 す る63).この
MSDE
モジュールの導入によって 血管内スピンに由来するアーチファクトが抑制 され,画像のSNR
は低下するが正確な灌流評 価が可能になる(Fig. 9).また,VENCを小 さくするほどmacrovascular
領域の信号が抑制 されるため,観測される信号はmicrovascula- ture
に近い領域のスピンを反映することにな る.MSDE
は,血管内信号の抑制技術としてさ まざまなパルスシーケンスに用いられている が,渦電流の発生やB
0/B1の不均一によって抑 制 効 果 が 不 均 一 に な る こ と が 知 ら れ て い る64).ASLは,元来SNR
が低いためこれらの 影響を大きく受けやすい.この課題を解決する 方法として,delay alternating with nutation fortailored excitation
(DANTE)が提案されている65).DANTEは,低い
FA
と勾配磁場の組み 合わせによって移動スピンの位相分散を生じさ せる技術で,血管内スピンの信号を均一に抑制 できる66)(Fig. 9).渦電流やB
1不均一の影響 を受けにくいことから,MSDEよりも印加強 度を厳密に調整可能なため,macrovascularだ け で な くmicrovascular
ス ピ ン の 信 号 も 抑 制 し , 組 織 内 の ス ピ ン を 観 測 で き る67). さ ら に,DANTEを異なる複数の条件で印加した 画像から局所のmacrovascuar
スピンのマッピ ングが可能であり,血行力学的動態の評価に役 立つ可能性がある67).本セクションで説明した
vascular crusher
を 利用することによって,血管内に残存した血液 スピンに起因するアーチファクトを低減できる ため,ASLの重要なオプションである.たと えば,脳腫瘍では血管内信号の抑制が腫瘍内部 の灌流評価の精度を向上させる.一方,血管内 に 滞 留 し た 血 液 ス ピ ン か ら の 信 号 自 体 が ,ATT
の遅延や動静脈のシャントを示す重要な 臨床情報でもあるため,現時点ではvascular
crusher
のデフォルトではなく,オプションとしての利用が推奨されている5).
3. Velocity selective ASL
(VSASL), Accelera-tion selective ASL
(AccASL)pCASL
は,現時点で最も信頼性が高く頑健な技術であると考えられている5).しかし,前 述したように
PLD
とSNR
はトレードオフの 関係にあり,前述したいずれのラベル技術を用 いた場合でもATT
の影響を完全に排除するこ とはできない.特にATT
が著しく延長する病Fig. 10. Pulse sequence diagrams for pCASL, single-velocity selective, dual-velocity selective, and acceleration selective ASL.
態では,ASLによる
CBF
の精度は低下する.この問題を解決する新しいアプローチとして
VSASL
が 提 案 さ れ て い る68)~71).pCASL
な ど,一般に用いられるASL
は撮像領域から離 れた位置でラベルを行うのに対して,VSASL はスピンの流速に基づいて領域非選択的にラベ ルを行う.すなわち撮像領域の毛細血管床に近 いレベルの血液スピンを直接ラベル可能なこと から,ASLで問題となるATT
の影響を極め て小さく,かつ均一化できることが最大の利点 である70).このため,VSASLはもやもや病な どの低速で側副血行路を介した灌流評価への応 用が期待されている72).VSASLは3
つに大別 されるが,ここではそれらの技術について紹介 する.それぞれのパルスシーケンスダイアグラ ムをFig. 10
に示す73).1) single VSASL
VSASL
のラベルは,Fig. 10に示すようにmotion-sensitized gradient
(MSG)に類似した2
組のBPG
を用いて,カットオフ値以上の流 速成分をもつ血液スピンの位相は分散すること で磁化が飽和し,それ以外の磁化を90
度パル スでz
軸に戻す68).また,コントロール画像の 撮像ではBPG
を与えないで収集を行うため,すべてのスピンの磁化が
Z
軸に戻る.この単 一 モ ジ ュ ー ル を 使 用 し たVSASL
はsingle
VSASL
と呼ばれ,ラベルは動静脈を区別できないため
CBV
を反映した信号が得られる73).2) dual VSASL
dual VSASL
は,静脈血が毛細血管床から移 動するに従って加速する特性を利用して,信号 収集の直前に2
番目の流速選択モジュールを 追加し,カットオフ値以上の速度を持ったスピンのラベルを回避することで,結果的に動脈血 スピンのみをラベルする69).2番目のラベルモ ジュール追加によって
T
2と拡散の影響を受け るが,CBFを定量可能で灰白質では15O H
2O PET
と同様のCBF
が得られることが報告され ている73).3) AccASL
近年,動脈スピンだけを選択的にラベルする 新 た な 技 術 と し て
AccASL
が 開 発 さ れた71),74).生理学的に毛細血管床に近いほど血
管径は小さくなるが,その表面積自体は大きく なることから,血流速度は毛細血管床に向かっ て減速し,逆に毛細血管床から流出する静脈血 の流速は増加することが知られている.さら に,動脈の脈動は静脈よりも大きい特徴があ る.AccASLは,この動脈の減速と静脈の加 速の特徴を巧みに利用して,一定速度で移動す るスピンの磁化には影響を与えずに減速する動 脈血スピンの磁化だけを飽和させることでラベ ルを行う.ラベルは,4つの
unipolar gradient
を用いた単一モジュールを用いてカットオフ値 以上で減速する動脈血スピンの位相を分散させ る.これにより得られる信号は,CBFとCBV
の両方を反映した信号が得られる73).これらの
VSASL
はATT
の影響を解決でき る点で優れているが,どの方法も飽和効果に よってラベルを行うため,pCASLよりもSNR
が小さい課題がある.AccASLに関する報告 は限られているものの,毛細血管床レベルのラ ベルが可能で血管構造のねじれや方向に依存し ないことから,他のVSASL
と比較して多くの ラベルを生成できる利点があるため,SNRの 面で有利と考えられている.4. MR ˆngerprinting ASL
MR
指 紋 法 (MR ˆngerprinting : MRF) は MRI
撮像の新たなフレームワークである75). 疑似ランダム化シーケンスによる信号系列の取 得,Blochシミュレーションによる辞書データ 作成,パターン照合による画像再構成を統合し た技術であり,複数の定量値を同時に計測する こ と が 可 能 で あ る .MRF
を 利 用 し たASL
(MRF-ASL)も報告されている76),77).本稿で は,Suらの報告を紹介する76).
MRF
とASL
は以下の2
点において技術的親和性が高い.()
ASL
信号は多数のパラメ タ の 影 響 を 受 け る (Fig. 3, 式 ( 2
) ) .( )MRF
は複数のTR
に渡って部分的にスピン情 報が保存され,当該TR
の信号は数TR
前のス ピン情報を引き継ぐ.ASLで計測する脳組織 の磁化は,数秒前に頭蓋外で標識されたラベル スピン流入によって変調されるため類似性が高 い.MRF-ASL(Fig. 11)は,一般的な ASL
と 以下の4
つの点で大きく異なる.◯PLD
が不 要.MRFではあるTR
のイベント が複数のTR
に渡って信号系列生成に寄与するため,ラ ベルの到達を待つ必要がない.◯信号系列のパ ターン照合によってCBF
を推定するためコン トロールとラベルを対にして信号収集する必要 がない.◯LD(付随的に TR)は疑似ランダ
ム化されている.◯頭蓋内に流入するスピンを 数TR
に渡って部分的に保存するため,励起パ ルスのフリップ角が90
度ではない.Su
らは,異なる2
つのモデルを使用し,1 コンパートメントモデルは4
パラメタ(CBF,ATT,
T1t, B
1+),2コンパートメントモデルは7
パラメタ(CBF, ATTartery, ATT
tissue, blood
volume, travel time,
T1t, B
1+)で辞書作成して いる.辞書作成には5
時間,パターン照合に よる画像再構成は2
時間を要する.信号収集 はEPI
に よ る1
ス ラ イ ス 撮 像 で 約3
分 で あ る.この報告では定量値の精度は評価されてい な い が ,CBF・ ATT
を 既 存 の 手 法 (single-
delay ASL
やLook-Locker PASL
) と 比 較 し た結果や,MRF-ASL
で計測したCO
2吸入に よる血行動態の変化が先行研究と一致していた こと,もやもや病におけるfeasibility study
か ら,MRF-ASLの妥当性を示した.現段階ではproof-of-concept study
に 過 ぎ な い が ,MRF-
ASL
はCBF
の定量化に必要とされる様々なパ ラメタを1
回の撮像で取得できる可能性があ ることから今後の展開が期待できる.今後は脳 血管障害や脳腫瘍および神経変性疾患などの種 々の疾患に応用し,MRF-ASLで取得した各パ ラメタの定量性や妥当性の評価が必要である.Fig. 11. (color online)Pulse sequence diagram and voxel-wise parametric maps.(a)MRF-ASL sequence,(b) single-compartment model, and(c)two-compartment model. Modiˆed from reference76).
お わ り に
ASL
を用いた脳灌流イメージング技術は成 熟しつつある.いくつかの課題は残されている が,推奨条件で撮像を行えば比較的安定した評 価が可能で,今後さらに広く臨床に普及してゆ くと思われる.また,ラベリングモジュール設 計の自由度の高さから,ASLを利用した新た な血行力学的パラメタの取得を目指した研究が 活発に進められており,臨床に新たなアプリ ケーションの導入が期待できる.文 献
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Perfusion Imaging using Arterial Spin Labeling (ASL)
Yasuhiro FUJIWARA1, Shota ISHIDA2, Hirohiko KIMURA3
1Department of Medical Image Sciences, Faculty of Life Sciences, Kumamoto University 4241 Kuhonji, Chuo-ku, Kumamoto 8620976
2Radiological Center, University of Fukui Hospital
3Department of Radiology, Faculty of Medical Sciences, University of Fukui