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総説 JJMRM 2020; J-STAGE 早期公開 doi: /jjmrm Arterial spin labeling(asl) による脳灌流イメージング 藤原康博 1, 石田翔太 2, 木村浩彦 3 1 熊本大学大学院生命科学研究部医用画像科学講座 2 福井大

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(1)

キーワード magnetic resonance imaging(MRI), arterial spin labeling(ASL), perfusion, cerebral blood ‰ow doi:10.2463/jjmrm.20201719

総 説

Arterial spin labeling(ASL)による脳灌流イメージング

藤 原 康 博1, 石 田 翔 太2, 木 村 浩 彦3

1熊本大学大学院生命科学研究部医用画像科学講座

2福井大学医学部附属病院放射線部

3福井大学医学部病態解析医学放射線医学領域

は じ め に

脳は恒常性を維持するために,酸素やグル コースなどの栄養素の供給を受け,老廃物を排 除している.これらの供給は血流によって行わ れ,血液の毛細血管床への輸送プロセスを灌流

(perfusion)と呼ぶ.灌流は組織の代謝変化の 指標として,脳血管障害や脳腫瘍に代表される さまざまな疾患の診断や治療効果の判定などの 評価に用いられている.灌流は,広義には血管 内の血液の移動すなわち血流と同義語として扱 われるが,狭義には毛細血管床から組織内への 水の動態を指す用語として用いられ,単位時間 に 単 位 容 積 の 組 織 に 輸 送 さ れ る 血 液 量

(regional cerebral blood ‰ow : CBF)として定 義される.

Magnetic resonance imaging

MRI

) に お ける脳灌流の代表的な測定法には,dynamic

susceptibility contrast( DSC

) と

arterial spin labeling

(ASL)の

2

つが挙げられる.DSCは,

spin echo

ま た は

gradient echo

型 の

echo pla- nar imaging(EPI)を用いてダイナミック撮

像を行い,ガドリニウム(Gd)造影剤が通過 する際の局所の磁化率変化に伴う位相変化から 濃度を推定する1),2).これにより,局所脳血液 量 (

regional cerebral blood volume : CBV

),

局 所 脳 血 流 量 (

regional cerebral blood ‰ow : CBF),局所平均通過時間などの血行力学的パ

ラメタが取得可能で,最も一般的に普及してい る.

ASL

は,脳組織に供給される動脈血のスピ

ンを磁気的に標識し,これをトレーサ(追跡子)

として利用する3).このため,Gd造影剤が不 要で腎性全身性線維症などの副作用のリスクが なく放射線被曝もないことから4),腎機能障害 者や小児などを含めた幅広い被験者を対象に繰 り返し利用可能な特徴がある.ASLは非侵襲 的に灌流測定ができる利点がある反面,他の方 法 と 比 較 し て 原 理 的 に 画 像 の

signal-to-noise ratio(SNR)が低いため,長期間にわたり研

究開発が進められていたが臨床への導入は遅れ ていた.近年,パルスシーケンスの技術進歩と 高磁場装置や高感度フェーズドアレイコイルな どのハードウエアの普及によって,実用的な時 間で高い

SNR

が得られるようになったことで 臨床利用の機運が高まった.

2015

年に

Alsop

らの専門家グループによっ て臨床利用のためのコンセンサスペーパーが出 版され,その中で臨床に混乱をきたす複雑な技 術的オプションをできるだけ排除し,一定水準 の画質を安定的に得るための推奨技術やパラメ タなどを提案し,シンプルな標準利用法を示し た5).主要な

MR

装置メーカーは,これに準じ たパルスシーケンスの提供を開始し,多くの施 設で利用可能になった6).これまでに,さまざ まな脳神経疾患の診断に対する

ASL

の臨床的 有用性が多数報告され,灌流の測定技術の一つ として画像診断に大きな役割を果たしている.

本稿では,ASLを用いた灌流の測定法と定 量化についてレビューする.さらに,最近の

ASL

の技術開発の動向についても紹介する.

(2)

2020622日受理 202073日改訂

Fig. 1. Labeling locations of the CASL/pCASL and PASL and pulse sequence diagram of the pCASL ASLのイメージング原理

はじめに,ASLのイメージングの概要を説 明する.ASLでは,血液の水分子を磁気的に 標識(ラベル)するために,撮像領域よりも上 流側の頸部領域において移動する血液の磁化を 反転させる(Fig. 1a).ラベルされた血液スピ ンは,血流によって毛細血管床へと移動し,組 織中の水分子と交換することで組織の磁化を変 化させる.このタイミングで信号収集を行うこ とで,灌流の多寡を反映した画像が得られる.

ただし,実際には画像中で灌流由来の信号は静

止組織の

1程度と小さく,脳組織に由来した

信号が大半を占めている.そのため,ラベルを 行った画像とは別にラベル操作を行わないコン トロール画像を撮像し,それらを差分すること で組織灌流に由来した信号のみを画像化し,こ れを灌流強調像(perfusion weighted image)

としている.また,低い

SNR

を補うためにラ ベル画像とコントロール画像の撮像を交互に繰 り返し,加算平均を行う.

ASL

の撮像は,時系列に◯ラベル,◯

post- labeling delay(PLD),◯

信号収集の

3

つセク ションで構成される(Fig. 1b).ラベルは

RF

パルスと勾配磁場の組み合わせによって行わ

れ , そ の 印 加 方 法 に よ っ て

pulsed ASL

(PASL), continuous ASL (CASL), pseudo-

continuous ASL

(pCASL)の

3

つに分類され る.

PASL

は,頚部の広い領域に対して単一の

inversion recovery( IR)パルスを印加するこ

とで領域内の血液スピンの磁化を反転させる

(Fig. 1a).広範囲を均一に反転させる必要性 か ら

frequency oŠset corrected inversion

(FOCI)パルスなどの断熱パルスが用いられ る7).PASLは,シンプルでハードウエアの制 約 が 少 な く

magnetization transfer( MT) 効

果の影響が小さい利点があり,これまで

echo- planar imaging and signal targeting with alter- nating radiofrequency

(EPISTAR)や

‰ow- sensitive alternating inversion recovery

(FAIR)など改良された多くの方法が提案さ

れている8)~10).しかしながら,ラベルする血

液スピンのボーラスサイズが

IR

パルスの印加 領 域 に よ っ て 制 限 さ れ る た め ,SNRの 面 で

pCASL

に劣る.したがって,現在は灌流画像

としての利用は限られており,おもに

MR an- giography

の目的に利用されることが多い11)

CASL

は,頚部のある断面に対して頭尾方向 に勾配磁場を設定し一定強度の

RF

パルス(連

(3)

Fig. 2. Representative ASL images of a healthy subject 続波)を印加すると,移動する血液スピン自身

が感じる有効磁場が変化することによって磁化 が反転する(Fig. 1a)12).これを

‰ow-induced adiabatic inversion

と呼ぶ.脳組織に近い位置 で一定時間連続的にラベルを行うことが可能な ため,PASLよりも高い

SNR

が得られるが,

連続波の利用には専用のハードウエアが必要で あ り , さ ら に

MT

効 果 や

speciˆc absorption rate(SAR)を増大させる課題があるため臨床

利用が困難であった.

pCASL

は,前述した

2

つのラベル技術の課

題を解決する技術である.CASLと同様に頸部 にラベル面を設定し,連続波の代わりに

500

ms程度の間隔で

RF

パルスと勾配磁場パルス を間歇的に印加することで,CASLと同様に移 動する血液スピンの磁化を反転させる13).コ ントロール画像の撮像は,ラベル画像と

MT

効果の差が生じないように

RF

パルスの極性を 交互に変化させる.pCASLは,SARを低減し

ながら

80程度の高い効率で安定したラベル

が可能で,これにより

SNR

と再現性の高い画 像が得られるようになった(Fig. 2).これが

ASL

普及の技術的ブレイクスルーとなり,現 在では

ASL

の標準的なラベル技術として臨床 利用が推奨されている5)

ラベルを行う断面と実際の撮像領域は位置が 異なるため,ラベルされた血液スピンが組織の

毛細血管床レベルに到達するには一定の時間を 要する.この時間は血流速度や血管支配域など によって異なるが,灰白質では

1

秒,白質で は

2

秒程度である14).したがって,毛細血管 床レベルにラベルされたスピンが分布した状態 で信号収集を行うために,ラベル終了後から信 号収集までに待ち時間を設定する.この時間を

post-labeling delay( PLD)と呼び,高齢者を

対象とした撮像では

PLD

2

秒に設定するこ とが推奨されている5)

PLD

が長いほど到達 時間(arterial transit time : ATT)の影響によ る信号変化を小さくできるが,血液スピンの

T

1緩和によってラベル効果が減少し

SNR

が低 下するため,PLDの効果と

SNR

はトレードオ フの関係にある.高磁場ほど血液の

T

1値が延 長することから,3.0Tの利用はラベル効果の 持続に寄与し,SNR向上に有利となる.

脳実質や脳脊髄液に由来した信号は,原理的 にはラベル画像とコントロール画像との差分に よって相殺されるため画像に影響を与えない.

しかしながら,わずかな体動や脳脊髄液の拍動 などがアーチファクトを生じ,画質を劣化させ る原因となる.これを改善するため,ラベルの 前後に

90

度または

180

度パルスを数回印加 し,それぞれの組織の縦磁化が

null

に近いタ イミングで信号収集することで,T1値が異な る さ ま ざ ま な 組 織 か ら の 信 号 を 抑 制 で き る

(4)

(Fig. 1).このようなプリパルスを背景信号抑 制 (

background suppression) と 呼 び , ASL

SNR

向 上 に 大 き な 役 割 を 果 た し て い る15),16)

血液スピンの

T

1緩和中の磁化変化を観測す る必要から,信号収集は高速性が求められる.

従 来は

2D single shot EPI

が用 いら れて いた が,近年ではセグメントに分割した

3D rapid acquisition relaxation enhanced

(RARE)や

3D gradient and spin echo

(GRASE)による信 号収集が可能である13),16)~19).3D収集は,各 スライスで

PLD

の差を生じない利点があり,

背景信号抑制と組み合わせることで

SNR

を大 きく改善する20).特に

3D RARE

k

空間を スパイラルトラジェクトリで収集を組み合わせ た撮像法では,k空間中心のオーバーサンプリ ングとリードアウト時間を短縮できることに よって,3D GRASEよりも

SNR

が高くスラ イス方向のボケを生じにくい21)

これまでに述べた

pCASL,背景信号抑制,

3D

収集を組み合わせたパルスシーケンスに

3.0T

装置および高感度なフェーズドアレイコ イルなどのハードウエアを用いて

ASL

を撮像 することによって

SNR

が格段に向上し,3分 程度で臨床利用可能な灌流強調像が得られるよ うになった.臨床利用の標準ガイドが示されこ とにより,ベンダー間や施設間の標準化が進ん でいる5)

定 量 化

1. Kinetic model

CBF

の標準的な測定法である

positron emis- sion tomography

PET) や single photon emission computed tomography(SPECT)な

どの核医学的手法22),23)と同様に,ASLによっ て計測した信号から

CBF

を定量可能である.

ASL

信 号 ( 任 意 単 位 ) を

CBF( mL

/100 g/

min)に変換するには,計測した灌流信号を組

織のプロトン密度に対して正規化し,kinetic

model(Fig. 3)を適用する

24).これまで様々 なモデルが提案されているが25)~28),モデルの 単 純 さ や 未 知 パ ラ メ タ の 少 な さ か ら

1

コ ン パートメントモデルが一般的に使用されるた

め,本稿では

1

コンパートメントモデルを用 いた定量法について解説する29)

Bloch

方程式から

kinetic model

の解を導出 す る に は 以 下 の

3

つ の 前 提 条 件 が 必 要 に な る.

◯ 血液中のラベルスピンは毛細血管床で即座 に脳組織のスピンと交換する.

◯ 脳組織に流入するスピンと脳組織のスピン の縦磁化は十分に混和する.

◯ 灌流によって脳組織のT1値(T1t)が変化 する(T1t→T1app

,

[1/T1app=1/T1t+f/l]).

まず条件◯のもと,脳組織の縦磁化は動静脈血 の流入出によって時間変化し,Bloch方程式か ら,

dM(t)

dt =M0-M(t) T1t

+f(Ma(t)-M[(t)) …(1)

となる.

ここで,M0は熱平衡状態における脳組織の 縦磁化,M(t) は時間tにおける脳組織の縦磁 化,T1tは脳組織のT1値,fは灌流,Ma(t) は 組織に流入する動脈血の縦磁化,M[(t) は組織 から流出する静脈血の縦磁化である.

さらに条件◯◯のもと,kinetic modelの解 は,

DM(t)=0 (t<da) ………(2

1)

DM(t)=2M0

l abT1appf

×

[

exp

(

Tda1a

)

-exp

(

T1appt

)]

(da<t<da+t) ………(2

2)

DM(t)=2M0

l abT1appf・exp

(

Tt1a

)

×

[

exp

(

daT+t-t1app

)

-exp

(

dTa-t1app

)]

(da+t<t) ………(2

3)

で与えられる.

ここで,DMは

ASL

で取得した灌流画像に おける信号強度,da

ATT(ラベルスピンが

ラベル面から組織に到達するまでの時間),a はラベル効率,bは背景信号抑制効率,lは血 液分配係数,T1appは脳組織の見かけのT1値で ある.

(5)

Fig. 3. Kinetic curves of the single-compartment model(1CM).(a, c, e, g, i)1CM withT1a

and

T1app

,

(b, d, f,

h) 1CM with

T1a

. A solid line presents a reference condition

(CBF=50 mL/100 g/min, ATT=1.0 s,

LD=3.0 s,

T1a=1.65 s,T1t=1.2 s). The variables of each kinetic curve are :(a, b)

ATT,

(c, d)

CBF,

(e, f)

LD,

(g, h)T1a

, and

(i)T1t

.

これをfについて解き,mL/g/sから

mL/ 100 g/min

への単位変換係数(6000)を乗じると,

(6)

CBFATT-corrected

=6000・ lDM(t)

2abT

1appM0

×

exp

(

Tda1a

)

― [

exp

(

max(w-dT1appa

, 0) )

-exp

(

max(w+t-dT1app a

, 0) )]

……(3)

となり,CBF(mL/100 g/min)が得られる.

モデル簡略化のために式(2)においてT1app= T1aとすると,ラベルスピンの血液から組織へ の流入・交換を仮定しない

1

コンパートメン トモデルを用いて以下の式で表せる.

DM(t)=0 (t<da) ………(4

1)

DM(t)=2M0

l abT1af

×

[

exp

(

Td1aa

)

-exp

(

Tt1a

)]

(da<t<da+t) ………(4

2)

DM(t)=2M0

l abT1af・exp

(

Tt1a

)

×

[

exp

(

Tt1a

)

-1

]

(da+t<t) ……(4

3)

このとき,ラベルスピンは収集時に組織内に は流入しておらず,局所の微小血管内に分布し ているとみなす.これをfについて解くと,

CBF=6000・lDM(t)

2abT

1aM0

×

exp

(

Td1aa

)

― [

exp

(

max(w-dT1a a

, 0) )

-exp

(

max(w+t-dT1a a

, 0) )]

…(5)

となる.ここで,PLDを組織の最大

ATT

よ りも長く設定すれば,式(5)からdaを消去でき るため,

CBF=6000・ lDM(t)

2abT

1aM0

exp

(

Tw1a

)

1-exp (

Tt1a

)

…(6)

となり,理論上は

ATT

計測を必要とせずに正 確な

CBF

が算出可能となる.

したがって,ATTを補正した

CBF(式(3),

(5))と

ATT

を補正しない

CBF(式(6))は

厳密に区別する必要がある.式(6)から求めら れる

CBF

はモデル簡略化によっ て数式上は

ATT

の影響を無視しているが,1点の

PLD

で 撮像した

ASL

画像は

ATT

の影響を受けたコ ントラストを呈するため

CBF

ATT

の影響 を受ける.ATT計測を省略した

1

コンパート メントモデルはあくまでも便宜的なものに過ぎ ず,ASLを使用して正確に

CBF

の定量を行う には

ATT

計測が必要不可欠である.

2. ATT

ATT

とは,ラベルスピンがラベル面から脳 組織に到達するまでの時間であり,病態・年 齢 ・ 血 管 支 配 領 域 で 大 き く 異 な る . 通 常 の

ASL

撮像では

PLD

1

点しか収集しないため

(single-delay ASL),PLDの設定が

CBF

の測 定精度に大きく影響する.短すぎる

PLD

では 組織にラベルスピンが到達せず,長い

PLD

で はラベル未到達の問題は解消できるが

ATT

の 短い組織において

SNR

が著しく低下する.

式(4)のモデルは血管内から組織へのラベル スピンの流入を仮定していないため(T1app= T1a),ASL信号は,ラベル開始から画像収集 までのT1aによる緩和のみを考慮すればよい.

実際には,ラベルスピンが組織に流入すると T1値が短縮するため血管内よりもラベルが早 く緩和する(T1app<T1a).式(2)のモデルはラ ベルが組織に到達するまではT1aで緩和し,組 織 に流 入 後はT1appで 緩 和す る と仮 定 して い る.すなわち,ラベル開始から信号収集までの 間にラベルがT1aとT1appで緩和した時間の割 合が

ATT

によって変化するため,計測される

ASL

信 号 は

ATT

の 影 響 を 受 け る こ と に な る.したがって,式(2)は式(4)よりも生体灌 流 に 近 い モ デ ル で あ る が , 算 出 さ れ る

CBF

(式(3))は

ATT

の影響を大きく受けるため,

(7)

このモデルの利用には

ATT

の計測および補正 が必須となる.

ATT

は血行動態を反映する機能情報である が,CBFの定量において最も重要な補正係数 として利用される.特に

ATT

が著明に延長す る脳血管障害(もやもや病,内頚動脈狭窄/閉 塞 症 ) で は

ATT

の 計 測 ・ 補 正 が 必 要 で あ る30).前述のとおり,コンセンサスペーパー において

single-delay ASL

の推奨条件が示さ れているが,single-delay ASLでは

PLD

1

点しかないため,ボクセルごとに異なる

ATT

の影響を完全には

0

にできない.ATTの影響 を排除するには,ATT自体を計測し補正を行 う必要がある.

ATT

計測には複数の異なる

PLD

で撮像し た

ASL

画像が必要で (multi-delay ASL),そ の 算 出 に は

signal-weighted delay

WD

) 法31)~33)

model ˆtting

30),34),35) が 使 用 さ れ る.ASLは,原理的に

SNR

と時間分解能が低 いため,model ˆttingの適用は頑健性に問題が ある.

WD

法は,ある範囲の

ATT

に対して

1

次 モーメント(式(7))を求めて変換関数とし,

WD

の実測値と理論値を比較して

ATT

を算出 する.

WD(da)=

[

i=1n

wi・DM(da

,

wi)

] [

i=1n

DM(da

,

wi)

]

…………(7)

ここで,wi

i

番目の

PLD,DM(d

a

,

wi) は

PLD

ATT

がそれぞれwi

,

da

ASL

信号で ある.

WD

法による

ATT

計測は,CBFとM0の影 響を受けないため頑健性が高く,計算コストが 小さい31).さらに,臨床例での使用も報告さ

れている32),33).計測可能な

ATT

の範囲は,

PLD

に よ っ て 決 定 さ れ る た め ,

multi-delay ASL

における最大と最小

PLD

の選択は重要で ある.

3. Multi-delay ASL

複数の

PLD

を取得する

multi-delay ASL

に は 大 別 す る と

3

種 類 の 方 法 が あ る .1)

Se- quential type

30),31)

, 2) Look-Locker type

36),37)

,

3

)

Time-encode type

(Hadamard-encoded

ASL)

35),38),39)で あ る .Look-Locker type は 後 半に収集した画像の

SNR

が著しく低下するた め 臨 床 利 用 は 難 し い . こ こ で は

Sequential type

について説明し,Time-encode typeにつ いては別のセクションで説明する.

一 般 的 に は , ま ず

multi-delay ASL

か ら

ATT

を計測し,その後

ATT

を補正した

CBF

を 算 出 す る .

Multi-delay ASL

の 撮 像 か ら

CBF

定 量 ま で の 流 れ を

Fig. 4

に 示 す .

Se- quential type

(Fig. 5a)はラベル時間(label-

ing duration : LD

) を 固 定 し , 複 数 の 異 な る

PLD

を使用する方法である.Multi-delay ASL の中で最もシンプルで一般的に用いられてい る.PLDを変更する以外の特別な操作が不要 なため,臨床用シーケンスで撮像可能である が,設定する

PLD

の数に応じて撮像時間が延 長する.その問題を軽減するために低分解能の

multi-delay ASL

を事前に撮像して

ATT

計測 を行い,これを高分解能で撮像した

ASL

画像 に適用して

ATT

を補正する方法が報告されて いる31)

4. ASL

による

CBF

定量化の課題

1

コンパートメントモデルは他のモデルと比 較してパラメタ数が少ないが,1度の撮像で全 パラメタ(ラベル効率[a],背景信号抑制効 率 [b], 組 織 のT1値 [T1t], 血 液 のT1

[T1a],到達時間[da],血液分配係数[l])は 測定できない.一般的には,ラベル効率[a=

0.85]

13),背景信号抑制効率[b=0.75]15),血 液のT1値[T1a=1.65 s]40),血液分配係数[l

=0.9]41)は文献値が使用される.組織のT1値 計測31)は比較的簡便で,組織のT1値計測の重 要性も報告されているが42),実際には測定せ ずに

3.0T

ではT1app=T1t=1.2 sとする場合が

多い43)~45).これらのパラメタは

CBF

の定量

性に影響し,固定値の使用はバイアスの原因と なる.本来は被験者および撮像ごとの計測が望 ましいが,現実的に臨床で使用できる確立した 方法はない.各パラメタ測定の最新手法が報告 されており,CBFの定量性を向上させるため の研究・開発が進んでいる46),47).さらに,M0

を得るために取得するプロトン密度強調像にも 標準的な撮像法はない.ASL信号およびプロ

(8)

Fig. 4. Flowchart of CBF quantiˆcation using multi-delay ASL. First, ASL, proton density(PD), and T1

- weighted

(T1

w) images are obtained using a multi-delay sequence. Subsequently, the T

1

map is com- puted using the PD and T

1

w images. Next, we can calculate ATT on a voxel-by-voxel basis with the signal-weighted delay method. Finally, the CBF map is calculated using T

1

and ATT maps to com- pensate for these parameters.

トン信号は,収集シーケンス(スピンエコー 系,グラジエントエコー系)の信号特性の影響 を受ける48).これらの様々な課題はあるもの の,ASLで測定した

CBF

15

O-H

2

O PET

で 測定された

CBF

と強い相関を示し,臨床利用 に 十 分 な 精 度 を も つ こ と が 報 告 さ れ て い る49)~51)

臨 床 応 用

臨床の現場では,通常シーケンスに加えその

場で灌流信号が非侵襲的に簡便に得られる点に 利用価値があると考えられる.具体的な症例を 提示する.

ASL

画像の臨床応用の領域として急性期脳 梗塞の病態の描出に利用可能なことが挙げられ る52).脳梗塞の虚血中心やペナンブラは

ASL

で低信号に,逆に再開通領域や贅沢灌流領域は 高信号に描出される.Fig. 6は,超急性期の脳 梗塞の症例で左の被殻,島皮質の一部が拡散強 調像で高信号を呈しているが,ASLでは中大 脳動脈支配領域は広範囲に低信号に描出されて

(9)

Fig. 5. Schematic diagrams of multi-delay ASL with three PLDs.(a)Sequential type and(b)time-encode type.

いる.MRAにて,左内頸動脈の描出がされて おらず,左内頸動脈起始部の閉塞であった症例 である.超急性期脳梗塞の所見である.ASL では,左中大脳動脈支配領域の血流が低下して おり,拡散強調像による高信号の範囲と一致せ ず,いわゆる

diŠusion-perfusion mismatch

で ありペナンブラを含む領域と考えられる.血栓 溶解療法,血栓回収後の

MRA

では再開通し,

ASL

でも抹消の信号の改善が得られている.

被殻,島皮質の一部の高信号領域は,おそらく 再開通後の血管拡張を伴う高灌流に相当すると 考えられる.

ASL

による腫瘍診断の有用性についても,

これまでに多くの報告がある,特に悪性度の高 い膠芽腫では低悪性度のものと比較して

ASL

で高信号となる報告が多い.Fig. 7は多形膠芽 腫の症例で,右頭頂葉に中心壊死を伴ったリン グ状増強を伴う腫瘤を認める.ASLでも病変 部は不整な高灌流に描出され,病変周囲の浮腫 の領域は,逆に低灌流に描出されており,浮腫

状態の病態にあうものと思われる.この

ASL

の信号が腫瘍の

grade

に利用できるとの報告 は当初より多く53),造影されない腫瘍部分の 灌流の多寡を評価するのに利用できるとの報告 もある54)

さらに

ASL

画像の臨床応用は,脳血管障害 や脳腫瘍以外にも多くの領域に応用を広げてき ている55).脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻など のシャント疾患では,シャントされたスピンが 静脈洞系に分布して高信号に描出されるため,

時に病変の診断のきっかけとなることもある.

梗塞様の症状で発症し得る,てんかん後変化,

可逆性後頭葉白質脳症,脳炎/脳症,片頭痛な どの病態で

ASL

高灌流の状況などから梗塞の 除外ができ,鑑別の一助となることもある.こ れらのように様々な病態で

ASL

画像の利用価 値は高く,今後のシーケンスの更なる発展が期 待される.

(10)

Fig. 6. Representative ASL images in a case of hyperacute cerebral infarction. Case : A man in his 40s. Right hemiplegia, dysarthria. MR images at 2.5 h of onset : a)DWI, b)ASL image, c)MRA. After rtPA and endovas- cular treatment, the vessel was recanalized 4 h and 14 min later. The bottom row shows follow-up MR images (day 3): d)DWI, e)ASL image, and f)MRA.

最近の技術開発の動向

1. Time-encoded multi-delay

(Hadamard-en-

coded multi-delay)

前述した

multi-delay ASL

のうち

Sequential type

では,撮像を設定した

PLD

の数だけ繰り 返すため時間効率が悪い.このため,近年に時 間効率の良い

Time-encode type

が提案された

(Fig. 5b)38).Time-encode typeは,ラベル画 像とコントロール画像の撮像を単純に繰り返す の で は な く , 符 号 化 (

encoding

) と 復 号

(decoding)によって,コントロールとラベル の組み合わせを異なる複数の

PLD

において効 率よく収集する手法である.符号化には,全要 素が

1

と-1で構成され,各行が互いに直交で ある正方行列(2n×2n : n∈N)のアダマール 行列(式(8))を使用する56)

H4

┌│

││

││

1 1 1 1

1

-1

1

-1

1 1

-1

-1

1

-1

-1

1

┐│

││

││

………(8

1)

H8

┌│

││

││

││

││

││

│└

1 1 1 1 1 1 1 1

1

-1

1

-1

1

-1

1

-1

1 1

-1

-1

1 1

-1

-1

1

-1

-1

1 1

-1

-1

1

1 1 1 1

-1

-1

-1

-1

1

-1

1

-1

-1

1

-1

1

1 1

-1

-1

-1

-1

1 1

1

-1

-1

1

-1

1 1

-1

┐│

││

││

││

││

││

│┘

……(8

2)

このとき,コントロールとラベルはそれぞれ

1

と-1,もしくは-1と

1

に対応する.ただ し,アダマール行列の

1

列目は全要素が

1

と なり,コントロールとラベルの組み合わせが成 立しないため使用しない.したがって,ASL に利用するアダマール行列は

2n×2n-1

の行 列となり,設定可能な

PLD

の数は

3, 7, 11

(11)

Fig. 7. Representative ASL images in the brain tumor. Case : A man in his 80s. Left insu‹cient palsy developed and was diagnosed as glioblastoma. a)DWI, b)FLAIR image, c)T2

-weighted image, d) T

1

-weighted image after contrast administration, e) ASL-CBF map, and f) fusion image of the ASL-CBF map on the T

1

- weighted image).

Fig. 8. Hadamard matrix used in the time-encoded ASL. Upper and lower rows present 3 and 7 delay Hadamard matrices, respectively.(a)Standard,(b)T1

-compensation, and

(c)

free-lunch. C and L in the Hadamard matrix denote ``Control'' and ``Label,'' respectively.

なる(Fig. 8).これを

ASL

に応用し,1つの 長いラベルボーラスを複数の小さいボーラス

(サブボーラス)に分割して,サブボーラスご とにコントロールとラベルを切り替えて符号化

した画像を収集する.符号化に使用するラベル ボーラスはアダマール行列の各行に一致し,こ れを繰り返すことで最終的にアダマール行列の すべての行に対応するように符号化画像を収集

(12)

する.アダマール符号化された一連の画像収集 後に復号を行い,サブボーラスごとの異なる

PLD

画像を再構成する.復号するときには,

符号化画像に係数を乗じて各サブボーラスの

ASL

画像を再構成する.適切な係数を使用す ると対象のサブボーラスではコントロールとラ ベルの差分が成り立つが,それ以外のサブボー ラスでは計算結果が

0

となり

ASL

画像は再構 成 さ れ な い .Fig. 5b に お い て

sub-bolus1

ASL

画 像 を 再 構 成 す る 場 合 は , 符 号 化 画 像

(◯,◯,◯,◯)に対して◯-◯-◯+◯と なる係数を使用して復号する57).この時ラベ ルを

L,コントロールを C

とすると,sub-bo-

lus1

L-C- C+L=2DM,sub-bolus2

L

-L-C+C=0,sub-bolus3は

L-C-L+C=

0

となり,sub-bolus1だけが再構成される.残 りのサブボーラスに関しても,それぞれの適切 な係数を使用すると同様の処理ができ,対象と しているサブボーラスの

ASL

画像だけが再構 成できる.

Sequential type

で は 各

PLD

LD

PLD

は自由に設定できるが,Time-encode typeで は各サブボーラスの

LD

PLD

の設定は互い に制約関係にあり,パラメタ設定の自由度が低 い.LDと

PLD

ATT

CBF

の測定におい て 特 に 重 要 な パ ラ メ タ で あ る に も か か わ ら ず14),Time-encode typeでは各サブボーラス の条件を個別に最適化できない.したがって,

Time-encode type

で撮像した各ボーラスの

LD

PLD

は 必ず しも

Sequential type

と同 じ条 件にはならない.

ここで,Time-encode typeで

3

点の

PLD

ASL

画像を取得する場合を

Sequential type

と 比較して考える(Fig. 5).Sequential typeで はラベルとコントロールの画像の撮像を合計

6

回(PLD数×2)行う必要があるが,Time-en-

code type

では

4

回(PLD数+1)で全ての撮 像が完了する.PLDを

7

点にした場合,Se-

quential type

Time-encode type

ではそれぞ れ

14

回 と

8

回 の 撮 像 が 必 要 に な る た め ,

Time-encode type

の時間効率の良さは明らか で あ る . さ ら に ,

Time-encode type

Se- quential type

よりも雑音伝播が小さく

SNR

が 高い35).一方,撮像中に

1

度でも体動などの

アーチファクトが生じると,復号後の全画像に その影響が伝播するため

Sequential type

より も体動の影響を受けやすい.また,Time-en-

code type

1

つの長いラベルボーラスを複数 のサブボーラスに分割するため,PLD数の増 加は時間分解能を向上させるが,各サブボーラ ス の

LD

が 短 縮 す る こと か ら

SNR

を 低 下 さ せ,結果的に

ATT

CBF

の測定精度を低下 させる58)

Time-encode type

による

ATT

CBF

のパ ラメタ推定の精度を向上させるために,様々な サブボーラスの

LD

PLD

の設定方法(ボー ラスデザイン)が提案されている34).サブボー ラスを等分割に設定する

Standard

型,血液の T1(T1a)緩和の影響を補償し,各サブボーラ スの

SNR

を等価にする目的のT1

-compensa- tion

型 , そ し て 従 来 の

single-delay ASL

PLD(空き時間)に符号化の過程を追加する Free-lunch

型がある(Fig. 8).様々なボーラ スデザインが報告されているが,最適な方法は 明らかになっていない.

ATT

および

CBF

の 測定精度は各サブボーラスの

SNR

の影響を強 く受けるため,各サブボーラスの

ASL

画像が 十分な

SNR

を保持できる方法を選ぶ必要があ る.我々の経験では,Time-encode typeだけ を単独で使用する場合の臨床利用において最も 合理的で頑健な方法は,撮像時間やサブボーラ

スの

SNR,体動への頑健性などの観点から,

Standard

型で

3

つの

PLD

を利用する方法であ ると考えている.さらに,PLD数の増加によ るサブボーラスの

SNR

低下という

Time-en- code type

の 問 題 点 を 軽 減 す る 方 法 と し て ,

Hadamard multi-delay

による

3

つの

PLD

の収 集に長い

LD

と長い

PLD

による

single-delay ASL

を 組 み 合 わ せ る 方 法 が 報 告 さ れ て い る58).以上から,Time-encode typeは撮像の 時間効率や

SNR

が向上する反面,時間分解能 や各サブボーラスの

SNR

のトレードオフが存 在するため,これらの特徴を理解して適切な撮 像条件を設定する必要がある.

2. Vascular crusher

による血管内信号の抑制 前述のように

pCASL

で得られる

ASL

画像 は

ATT

にも依存するため,大血管の高度狭窄 や側副血行路などを介した灌流によって

ATT

(13)

Fig. 9. Comparison of ASL images without vessel suppression(a), with MSDE(b), and with DANTE(c).

DANTE can be applied at a higher strength than MSDE because of its ability to uniformly suppress the large ves- sel signals.

が延長した領域では,血管内に血液スピンが留 まった状態で信号収集されることになり,これ がアーチファクトとして

CBF

を過大または過 小評価する.血管内スピンの信号は,励起パル ス直後に

vascular crusher gradient

を印加した り ,

motion-sensitized driven equilibrium

(MSDE)モジュールを導入することで抑制で

きる59)~61).MSDEモジュールは,勾配磁場の

印加方向に移動するスピンの位相を分散させる ことで信号抑制を行う技術である62).カット オフ速度は

bipolar gradient

(BPG)の強度を 変更する速度エンコードパラメタ(VENC)の 設定によって決定され,一般的には

B

0方向に

対して

4 cm/s

程度に設定し,これよりも速い

流 速 成 分 を 有 す る ス ピ ン の 信 号 を 抑 制 す る63).この

MSDE

モジュールの導入によって 血管内スピンに由来するアーチファクトが抑制 され,画像の

SNR

は低下するが正確な灌流評 価が可能になる(Fig. 9).また,VENCを小 さくするほど

macrovascular

領域の信号が抑制 されるため,観測される信号は

microvascula- ture

に近い領域のスピンを反映することにな る.

MSDE

は,血管内信号の抑制技術としてさ まざまなパルスシーケンスに用いられている が,渦電流の発生や

B

0/B1の不均一によって抑 制 効 果 が 不 均 一 に な る こ と が 知 ら れ て い る64).ASLは,元来

SNR

が低いためこれらの 影響を大きく受けやすい.この課題を解決する 方法として,delay alternating with nutation for

tailored excitation

(DANTE)が提案されてい

65).DANTEは,低い

FA

と勾配磁場の組み 合わせによって移動スピンの位相分散を生じさ せる技術で,血管内スピンの信号を均一に抑制 できる66)(Fig. 9).渦電流や

B

1不均一の影響 を受けにくいことから,MSDEよりも印加強 度を厳密に調整可能なため,macrovascularだ け で な く

microvascular

ス ピ ン の 信 号 も 抑 制 し , 組 織 内 の ス ピ ン を 観 測 で き る67). さ ら に,DANTEを異なる複数の条件で印加した 画像から局所の

macrovascuar

スピンのマッピ ングが可能であり,血行力学的動態の評価に役 立つ可能性がある67)

本セクションで説明した

vascular crusher

を 利用することによって,血管内に残存した血液 スピンに起因するアーチファクトを低減できる ため,ASLの重要なオプションである.たと えば,脳腫瘍では血管内信号の抑制が腫瘍内部 の灌流評価の精度を向上させる.一方,血管内 に 滞 留 し た 血 液 ス ピ ン か ら の 信 号 自 体 が ,

ATT

の遅延や動静脈のシャントを示す重要な 臨床情報でもあるため,現時点では

vascular

crusher

のデフォルトではなく,オプションと

しての利用が推奨されている5)

3. Velocity selective ASL

(VSASL), Accelera-

tion selective ASL

(AccASL)

pCASL

は,現時点で最も信頼性が高く頑健

な技術であると考えられている5).しかし,前 述したように

PLD

SNR

はトレードオフの 関係にあり,前述したいずれのラベル技術を用 いた場合でも

ATT

の影響を完全に排除するこ とはできない.特に

ATT

が著しく延長する病

(14)

Fig. 10. Pulse sequence diagrams for pCASL, single-velocity selective, dual-velocity selective, and acceleration selective ASL.

態では,ASLによる

CBF

の精度は低下する.

この問題を解決する新しいアプローチとして

VSASL

が 提 案 さ れ て い る68)~71)

pCASL

な ど,一般に用いられる

ASL

は撮像領域から離 れた位置でラベルを行うのに対して,VSASL はスピンの流速に基づいて領域非選択的にラベ ルを行う.すなわち撮像領域の毛細血管床に近 いレベルの血液スピンを直接ラベル可能なこと から,ASLで問題となる

ATT

の影響を極め て小さく,かつ均一化できることが最大の利点 である70).このため,VSASLはもやもや病な どの低速で側副血行路を介した灌流評価への応 用が期待されている72).VSASLは

3

つに大別 されるが,ここではそれらの技術について紹介 する.それぞれのパルスシーケンスダイアグラ ムを

Fig. 10

に示す73)

1) single VSASL

VSASL

のラベルは,Fig. 10に示すように

motion-sensitized gradient

(MSG)に類似した

2

組の

BPG

を用いて,カットオフ値以上の流 速成分をもつ血液スピンの位相は分散すること で磁化が飽和し,それ以外の磁化を

90

度パル スで

z

軸に戻す68).また,コントロール画像の 撮像では

BPG

を与えないで収集を行うため,

すべてのスピンの磁化が

Z

軸に戻る.この単 一 モ ジ ュ ー ル を 使 用 し た

VSASL

single

VSASL

と呼ばれ,ラベルは動静脈を区別でき

ないため

CBV

を反映した信号が得られる73)

2) dual VSASL

dual VSASL

は,静脈血が毛細血管床から移 動するに従って加速する特性を利用して,信号 収集の直前に

2

番目の流速選択モジュールを 追加し,カットオフ値以上の速度を持ったスピ

(15)

ンのラベルを回避することで,結果的に動脈血 スピンのみをラベルする69).2番目のラベルモ ジュール追加によって

T

2と拡散の影響を受け るが,CBFを定量可能で灰白質では15

O H

2

O PET

と同様の

CBF

が得られることが報告され ている73)

3) AccASL

近年,動脈スピンだけを選択的にラベルする 新 た な 技 術 と し て

AccASL

が 開 発 さ れ

71),74).生理学的に毛細血管床に近いほど血

管径は小さくなるが,その表面積自体は大きく なることから,血流速度は毛細血管床に向かっ て減速し,逆に毛細血管床から流出する静脈血 の流速は増加することが知られている.さら に,動脈の脈動は静脈よりも大きい特徴があ る.AccASLは,この動脈の減速と静脈の加 速の特徴を巧みに利用して,一定速度で移動す るスピンの磁化には影響を与えずに減速する動 脈血スピンの磁化だけを飽和させることでラベ ルを行う.ラベルは,4つの

unipolar gradient

を用いた単一モジュールを用いてカットオフ値 以上で減速する動脈血スピンの位相を分散させ る.これにより得られる信号は,CBFと

CBV

の両方を反映した信号が得られる73)

これらの

VSASL

ATT

の影響を解決でき る点で優れているが,どの方法も飽和効果に よってラベルを行うため,pCASLよりも

SNR

が小さい課題がある.AccASLに関する報告 は限られているものの,毛細血管床レベルのラ ベルが可能で血管構造のねじれや方向に依存し ないことから,他の

VSASL

と比較して多くの ラベルを生成できる利点があるため,SNRの 面で有利と考えられている.

4. MR ˆngerprinting ASL

MR

指 紋 法 (

MR ˆngerprinting : MRF) は MRI

撮像の新たなフレームワークである75). 疑似ランダム化シーケンスによる信号系列の取 得,Blochシミュレーションによる辞書データ 作成,パターン照合による画像再構成を統合し た技術であり,複数の定量値を同時に計測する こ と が 可 能 で あ る .

MRF

を 利 用 し た

ASL

(MRF-ASL)も報告されている76),77).本稿で は,Suらの報告を紹介する76)

MRF

ASL

は以下の

2

点において技術的

親和性が高い.()

ASL

信号は多数のパラメ タ の 影 響 を 受 け る (

Fig. 3, 式 ( 2

) ) .(  )

MRF

は複数の

TR

に渡って部分的にスピン情 報が保存され,当該

TR

の信号は数

TR

前のス ピン情報を引き継ぐ.ASLで計測する脳組織 の磁化は,数秒前に頭蓋外で標識されたラベル スピン流入によって変調されるため類似性が高 い.

MRF-ASL(Fig. 11)は,一般的な ASL

と 以下の

4

つの点で大きく異なる.◯

PLD

が不 要.MRFではある

TR

のイベント が複数の

TR

に渡って信号系列生成に寄与するため,ラ ベルの到達を待つ必要がない.◯信号系列のパ ターン照合によって

CBF

を推定するためコン トロールとラベルを対にして信号収集する必要 がない.◯

LD(付随的に TR)は疑似ランダ

ム化されている.◯頭蓋内に流入するスピンを 数

TR

に渡って部分的に保存するため,励起パ ルスのフリップ角が

90

度ではない.

Su

らは,異なる

2

つのモデルを使用し,1 コンパートメントモデルは

4

パラメタ(CBF,

ATT,

T1t

, B

1),2コンパートメントモデルは

7

パラメタ(CBF, ATTartery

, ATT

tissue

, blood

volume, travel time,

T1t

, B

1)で辞書作成して いる.辞書作成には

5

時間,パターン照合に よる画像再構成は

2

時間を要する.信号収集 は

EPI

に よ る

1

ス ラ イ ス 撮 像 で 約

3

分 で あ る.この報告では定量値の精度は評価されてい な い が ,

CBF・ ATT

を 既 存 の 手 法 (

single-

delay ASL

Look-Locker PASL

) と 比 較 し た結果や,

MRF-ASL

で計測した

CO

2吸入に よる血行動態の変化が先行研究と一致していた こと,もやもや病における

feasibility study

か ら,MRF-ASLの妥当性を示した.現段階では

proof-of-concept study

に 過 ぎ な い が ,

MRF-

ASL

CBF

の定量化に必要とされる様々なパ ラメタを

1

回の撮像で取得できる可能性があ ることから今後の展開が期待できる.今後は脳 血管障害や脳腫瘍および神経変性疾患などの種 々の疾患に応用し,MRF-ASLで取得した各パ ラメタの定量性や妥当性の評価が必要である.

(16)

Fig. 11. (color online)Pulse sequence diagram and voxel-wise parametric maps.(a)MRF-ASL sequence,(b) single-compartment model, and(c)two-compartment model. Modiˆed from reference76).

お わ り に

ASL

を用いた脳灌流イメージング技術は成 熟しつつある.いくつかの課題は残されている が,推奨条件で撮像を行えば比較的安定した評 価が可能で,今後さらに広く臨床に普及してゆ くと思われる.また,ラベリングモジュール設 計の自由度の高さから,ASLを利用した新た な血行力学的パラメタの取得を目指した研究が 活発に進められており,臨床に新たなアプリ ケーションの導入が期待できる.

文 献

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Perfusion Imaging using Arterial Spin Labeling (ASL)

Yasuhiro FUJIWARA1, Shota ISHIDA2, Hirohiko KIMURA3

1Department of Medical Image Sciences, Faculty of Life Sciences, Kumamoto University 4241 Kuhonji, Chuo-ku, Kumamoto 8620976

2Radiological Center, University of Fukui Hospital

3Department of Radiology, Faculty of Medical Sciences, University of Fukui

Arterial spin labeling

(ASL)

is a method for evaluating perfusion that uses magnetically labeled ar-

terial blood water as an endogenous tracer. Although research and technical development have been

conducted for a long time, introduction of ASL into clinical practice has been delayed because of its

low signal-to-noise ratio

(SNR). In recent years, advances in the pulse sequence and hardware, such

as high static magnetic ˆelds and high-sensitivity phased array coils, have made it possible to obtain

high-SNR ASL images in a clinically acceptable time. In this regard, a consensus paper proposed sim-

ple and standard usage, including recommended techniques and parameters, to obtain a consistent

image quality. Major MR manufacturers oŠered ASL pulse sequences based on this study. Hence,

ASL has been used in clinical practice, and the eŠectiveness in measuring perfusion using ASL has

been reported for the diagnosis of various neurological disorders. This article will review the tech-

nique for perfusion measurement and quantiˆcation and the recent technical progress in ASL.

Fig. 1. Labeling locations of the CASL/pCASL and PASL and pulse sequence diagram of the pCASLASLのイメージング原理はじめに,ASLのイメージングの概要を説明する.ASLでは,血液の水分子を磁気的に標識(ラベル)するために,撮像領域よりも上流側の頸部領域において移動する血液の磁化を反転させる(Fig
Fig. 2. Representative ASL images of a healthy subject続波)を印加すると,移動する血液スピン自身
Fig. 3. Kinetic curves of the single-compartment model (1CM). (a, c, e, g, i) 1CM with T 1a and T 1app , (b, d, f, h) 1CM with T 1a
Fig. 4. Flowchart of CBF quantiˆcation using multi-delay ASL. First, ASL, proton density (PD), and T 1 - -weighted (T 1 w) images are obtained using a multi-delay sequence
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参照

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