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資料 3 一億総活躍社会のための 教育費負担の軽減 小林雅之東京大学大学総合教育研究センター 1

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(1)

一億総活躍社会のための

教育費負担の軽減

小林雅之 東京大学 大学総合教育研究センター

1

資料3

(2)

報告内容

一億総活躍社会と教育費の負担の軽減

少子化と教育費負担

所得階層による進学格差

教育費負担の現状

授業料減免の問題点と給付型奨学金

貸与奨学金の問題点と所得連動型奨学金返還制

度の拡充

国立大学の役割と財務の問題

政策的インプリケーション

2

(3)

一億総活躍社会の実現のため

の教育費負担の軽減

少子化の改善のための家計の教育費負担の軽減(参考資料)

教育の機会均等のための教育費負担の軽減

教育の機会均等は社会経済的機会の均等の前提条件

教育機会の均等は憲法、教育基本法、世界人権宣言、国際人

権規約などで定められた最重要の理念(参考資料)

教育の機会の格差は、社会経済的格差を生み、世代間の社会

階層の再生産を助長する(参考資料)(貧困の連鎖,こうした社会

では、将来に対して希望を持つことが難しい。(希望格差社会

(山田 2004))

人材の浪費を防ぎ、すべての国民が将来に希望が持ち活躍す

る社会の実現のための教育費負担の軽減

3

(4)

社会経済的格差と教育の格差

教育の格差の解消(教育機会の均等)は社会経済的格差の解

消の前提条件

逆に、社会経済的格差は、教育の格差(進学格差)に影響を与

える。

4つの媒介要因

学力(参考資料)

経済力

学習環境

アスピレーション

経済力による格差(教育費負担力の格差)は政策により是

正が可能

4

(5)

5

高等教育機会の均等と格差

教育機会の均等 教育の最重要な理念  社会経済的機会の平等の必要条件  人材の有効な活用

高等教育政策でも最重要な理念

しかし、現実の政策では具体的な政策に乏しい

地域間格差の是正

育英奨学政策

現実には様々な高等教育機会の格差

男女別格差(参考資料、女子の急激な4年制大学進学と短大進学の減 少)

地域間格差(参考資料、東京と鹿児島で大学進学率30%以上の差)

所得階層間格差

(6)

所得階層別高卒者の進路の比較

2006年と2012年

私立大学進学率には大きな格差、国公立大学進学率の格差は拡大

CRUMP2006年調査 2012年高卒者保護者調査 私立大学進学率 400万円以下 20.4% 1,050万円以上 42.5% 国公立大学進学率 400万円以下 7.4% 1,050万円以上 20.4% 私立大学進学率 400万円以下 23.6% 1,000万円以上 49.7% 国公立大学進学率 400万円以下 9.2% 1,050万円以上 12.0% 文部科学省科学研究費基盤(B)「教育費負担と学生に対 する経済的支援のあり方に関する実証研究」(小林雅之研 究代表)、サンプル数は、1,064 学術創成科研(金子元久研究代表) 東京大学・大学経 営・政策センター、サンプル数は4,000

6

(7)

成績別所得階層別大学進学率の比較

CRUMP2006調査 2012年高卒者保護者調査 中3成績上位者は2006年には所得階層にかかわらず大学進学、しかし、2012年 には格差が生じている。低所得層でも子どもの教育費を負担している「無理する 家計」の無理が続かない可能性

7

文部科学省科学研究費基盤(B)「教育費負担と学生に対 する経済的支援のあり方に関する実証研究」(小林雅之研 究代表)、サンプル数は、1,064 学術創成科研(金子元久研究代表) 東京大学・大学経 営・政策センター、サンプル数は4,000

(8)

教育費の家計負担

8

2,238万円 1,529万円 1,283万円 1,125万円 774万円 766万円 (出典)文部科学省調べ。 (注)教育費には、授業料などの学校教育費や学校給食費、学校外活動費が含まれる。

(9)

日本の教育費の家計負担は高等教育で最も重い

9

(10)

教育費負担

3つの主義と教育観

公的 負担 親負担 本人 負担

日本・韓国

スウェーデン

アメリカ・オーストラリア

教育は社会が支える=教 育費負担の福祉国家主義 教育費負担の 家族主義 親が子どもの 教育に責任を 持つ 教育費負担 の個人主義 中国 イギリス (注)矢野 2012年を元に筆者修正

10

(11)

高等教育費負担の各国比較

日本の重い家計負担

(12)

授業料と可処分所得月額の比の推移

授業料に対する家計負担は年々増加、「無理する家計」の無理は 続かない恐れ

(13)

潜在的進学者数の推計

経済的理由で進学が困難 給付奨学金がもらえたら進学 高卒後の進路 「就職 15.9%」(2012年度学校基本調査では16.8%) 「経済的に進学が難しかった」「できれば4年制大学に進学してほしかった」 (保護者調査2012) とてもあてはまる 3.0% あてはまる8.3% 計11.3% 2012年度高卒者数105万人*就職率(16%)*11.3%=1.9万人 経済的理由で4年制大学へ進学できなかった者1.9万人と推計 万人

13

学術創成科研(金子元久研究代表) 東京大学・大学経営・政策センター、サンプル 数は4,000、文部科学省科学研究費基盤(B)「教育費負担と学生に対する経済的支 援のあり方に関する実証研究」(小林雅之研究代表)、サンプル数は、1,064 進学したくてもできなかった者は年間6から7万人 調査せず

(14)

一億総活躍社会のための教育

費負担の軽減の意義

所得や地域間格差が拡大すれば「無理する家計」の無理が続かず教

育機会の格差の固定化さらに拡大する恐れ

教育機会の均等化政策あるいは少子化対策として,教育費の家計負

担を軽減することは大きな意味

将来の教育費に対する負担感が強く,子どものファイナンシャル・プラ

ンを立てにくい状況にある。子どもの将来に希望をもたせること,とりわ

け明るい将来見通しを示すことが重要

このためにも,教育費負担を軽減することによって少子化を緩和し教育

機会を保証することは重要である。

教育費負担の軽減のためには,将来を見通したファイナンシャル・プラ

ンを立てられるような経済的支援が効果的。

14

(15)

家計の教育費負担の軽減策

学費の無償・低授業料

給付奨学金(

grants, scholarships) 公的制度なし(大学院

のみ)

授業料減免

貸与奨学金(

student loans)

貸与奨学金の返済猶予・免除

補助(

allowances) 子育て,成人学習など

ワークスタディ,

TA,RA

15

(16)

授業料減免制度は設置者別に

大きく異なっている

(17)

ローンの拡大だけでは学生支援としては不十

分で所得連動型返還制度の導入が効果的

日本学生支援機構奨学金の急激な増加

(参考資料)

ローン負担問題やローン回避問題の発生(英米豪中日とも)

低所得層ほどローン負担感は強い

(参考資料)

ローンの未返済に対するペナルティの強化の傾向にありローン

回避傾向が低所得層で強くなる

情報ギャップのため、ローンに対して認識や詳しい知識がない

(各国とも問題化)

早急に、より柔軟な所得連動型に拡充する必要がある(文部科

学省「学生への経済的支援に関する検討会」報告) 2014年8月

29日、2015年10月より文部科学省「所得連動型奨学金返還制度

有識者会議」において審議中。

17

(18)

国立大学は地域の高等教育機会を提供、しか

し、その役割は専門分野と地域によって大きく

異なる

18

大学名 設置者 学部 高知 国立 理 農 医 教育 人文 高知県立 公立 看護 社会福祉 文化 高知工科 公立 工 経済・マネ ジメント 鳥取看護 私立 看護 健康栄養 鳥取 国立 工 農 医 地域 鳥取環境 公立 環境 経営 島根 国立 総合理工 生物資源 科学 医 教育 法文 島根県立 公立 看護 総合政策 地方では国立あるいは公立大学が唯一の高等教育機会を提供している県 もある。人文・社会系を改廃することには大きな問題がある。

(19)

地域ごとに大きく異なる大学進学者

の残留率(流出率)

19

国公私立 大学計 国立大学 国立大学は地方の高等教育機会の提供に大きな役割を果たしている

(20)

国立大学授業料の予測

財務省財政制度等審議会平成27年10月26日の報告に基づき、自己収入を 毎年1.6%増加させるために、授業料収入を毎年約3.5%増加させると仮定して 試算。元の数字は各国立大学法人の平成25年度決算書による。

平成32年度の国立大学の平均授業料 約68万円(現在53万円)

しかし、各国立大学ごとに状況は大きく異なる

小樽商科大学 約61万円(毎年1.7%増加)

島根大学 約65万円(毎年2.4%増加)

東京大学 約91万円(毎年8%増加)

東京大学(毎年4%増加、産学連携・寄付収入を毎年1%増加) 約71万円

いずれも低所得層の教育費負担に効果のある授業料減免分は含まれてい ない。

国立大学間や学部間で格差が拡大する恐れ(マタイ効果「富める者はますます 富み、貧しき者はますます貧しくなる)

専門分野や地域を考えた政策が必要

20

(21)

政策的インプリケーション

 教育費の家計負担の重さが少子化の原因の一つ  地域別や所得階層別に高等教育進学率には大きな差がある。教育を通じて、親の社会階層が子どもの社 会階層を規定する階層の再生産が起こっている。こうした社会では、将来に対して希望を持つことが難しい。  わが国では「無理する家計」が所得が低くても子どもの進学を可能にして、こうした教育による社会階層の 再生産を緩和してきた。特に子どもの学力が高い場合。  しかし、教育費の高騰と社会経済的格差の拡大によって、こうした「無理する家計」の無理が続かなくなる 恐れがある。総活躍のためには、将来に希望をもてるファイナンシャル・プランを提示できることが重要。  潜在的な高等教育進学希望者(進学できなかった者)は毎年1から6万人と推計され、個人的にも社会的に も人材の浪費の恐れがある。  教育の格差の是正のためには、教育費の公的負担が必要である。そのためには、国民に教育に税を使う ことを十分に納得してもらうことが最重要課題。それには教育の社会経済的効果を示すことが重要。  現在の授業料減免制度は設置者別に大きく異なっており、その統一あるいは給付奨学金の創設が必要。  教育費の公的負担をあまり増やさずに教育費の家計負担を軽減する方法として所得連動型奨学金があり、 その制度の改善が重要。  国立大学間や学部間で格差が拡大する恐れ(マタイ効果「富める者はますます富み、貧しき者はますます 貧しくなる)、専門分野や地域を考えた政策が必要。  教育費の費用負担を教育問題だけでなく、福祉や医療など総合的な費用負担との観点から検討する必要。

21

(22)

参考資料

 少子化の要因としての教育費負担の重さ  教育機会の均等(憲法、教育基本法、国際人権規約、世界人権宣言)  学力の所得階層差と教育を媒介にした階層の再生産  高等教育人口の推移、男女別設置者別進学者数、都道府県別大学・国立大学進学率、 ブロック別大学進学者の残留率・流入率  所得階層別学費の負担の内訳  子どもの教育段階別家計の貯蓄率  経済的理由で困難な者が給付奨学金があれば進学する者の数の推計  経済成長と教育水準  教育費の負担論(公的負担と私的負担)と教育費の公的負担の根拠  教育の社会経済的効果  年齢別教育費負担策  教育費の受益者負担論  日本学生支援機構奨学生数の推移  所得階層別ローン回避傾向  所得連動型ローンと各国の例及び返還免除制度  教育再生実行会議第8次提言  参考文献

22

(23)

少子化の原因の一つとしての

教育費負担の重さ

23

少子化の原因の一つとして教育費負担の重さは各種の調査から明らか(伊藤

(2004)、新谷 (2005)、鈴木他(2007)、山口(2005)など)。

(出典)国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査」((H22) 子どもの数の予定が理想を下回る、夫婦における理由は、子育てや教育にお金がかかること(複数回答、60.4%) である。 注:対象は予定子ども数が理想子ども数を下回る初婚どうしの夫婦.予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦の割合は 32.7%.

(24)

教育における格差=教育機会の不均等

(結果の不平等)、教育機会均等の定義

 教育の機会均等=公正に関する価値概念、価値に関する概念のため、一義的には定義され ず、さまざまな概念

 国際連合の1946年「世界人権宣言」(Universal Declaration of Human Rights)「第26条 高 等教育は、能力に応じ、すべての者に等しく開放されていなければならない.」

 1966年「国際人権規約」(International Covenant on Economic, Social and Cultural Rights) 「第13条第2項C 高等教育は,すべての適当な方法により、とくに、無償教育の漸進的な導入 により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」  憲法第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受 ける権利を有する。  教育基本法第4条第1項 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与え られなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上 差別されない。  2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、 教育上必要な支援を講じなければならない。  3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、 奨学の措置を講じなければならない。

24

(25)

家庭の経済状況と学力の関連

25

(26)

教育を媒介とした

社会階層の再生産

26

父親教育年数 本人教育年数 父親職業威信 スコア 本人職業威信 スコア 0.349 0.406 -0.047 0.197 0.524 0.248 出典:吉川徹『学歴と格差・不平等』東京大学出版会 r=0.337

(27)

27

(28)

男女別高等教育機関別進学者

数の推移

28

(29)

29

都道府県別大学進学率の推移

(30)

都道府県別国立大学進学率の

推移

30

(31)

ブロック別私立大学地元残留率

の推移

31

(32)

ブロック別私立大学地元出身者

率の推移

32

(33)

所得階層別学費の負担割合

「高校生の保護者調査」2013年度

33

(出典)小林雅之(研究代表)「教育費負担と学生に対する経済的支援野在り方に関する実証 研究」(科研基盤(B))

(34)

子どもの年齢別家計の貯蓄率

総務省「家計調査」

子ども1人 子ども2人

(35)

潜在的進学者数の推計

経済的に困難で給付型奨学金があれば進学

35 少なくても一部は人材の浪費(ウェステッジ)と考えられる。

35

学術創成科研(金子元久研究代表) 東京大学・大学経営・政策センター、サンプル数は4,000、文部科 学省科学研究費基盤(B)「教育費負担と学生に対する経済的支援のあり方に関する実証研究」(小林 雅之研究代表)、サンプル数は、1,064

(36)

教育水準と

GNP 1960

その後の

GDPと公的教育費の推移

日本は1960年にはGNPに比して教育水準の高い例外的な国 その後GDPの成長に教育費の増加が追いつかなかった

Japan

Bowman, M. J. & Anderson, C. Arnold (1968) Concerning the role of education in development, in: UNESCO (Ed.) The reading in the economics of education. 0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 3,000,000 3,500,000 1960 1963 1966 1969 1972 1975 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 政府負担計 家計負担計

36

(37)

誰が教育費を負担するのか

誰が教育費を負担するのかは教育費の負担論(Cost

Sharing)と呼ばれる。

教育費の負担論は、教育財源の確保のためにも重要な問

題。

教育費の負担は、公的負担と私的負担に大別される。

私的負担は、家計負担と民間負担に大別される。

家計負担は親(保護者)負担と子(学生本人)負担に大別さ

れる。

37

(38)

教育の公的負担の根拠

 教育機会の均等(憲法第26条、教育基本法第4条)  格差是正+人材の浪費(ウェステッジ)の緩和  進学格差(家計所得階層間、地域間、男女間等)  大学中退 20%は経済的要因(文部科学省調査)  人材養成・経済成長 生産性の向上・効率化  世界人権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約A規約第13条)  高等教育の漸進的な無償  教育の社会・経済効果(外部効果)  価格に表されない効果、スピルオーバー効果(近隣効果)  周囲の者の生産性の向上  健康増進・犯罪減少  労働移動・ミスマッチの緩和  少子化の緩和  市場機構に委ねると外部性の分だけ需給は過少になる(誰も費用を負担しないため、外部効果 の分だけ公的負担する必要  準公共財としての教育  非排除性 利用者から料金を徴収できない  非競合性 利用者の増加によって追加費用が発生しない

38

(39)

公的教育投資の費用便益分析

三菱総研「教育改革の推進のための総合的調査研究」2010年)

(40)

大学の社会経済的効果と外部効果

 大学が地域経済に及ぼす影響に関しては、アメリカでは古くから計測、大きな効果 があることが示されているが、地域の範囲の定義、効果の測定など、技術的な問題 も残されている(Siegfried, Sanderson and McHenry 2004)。

 日本でも国立大学の効果の推定(島 2009)や、富山大学、徳島大学、長崎大学が それぞれの地域に対する経済効果は1,000億円を超えるという推定もだされている (日本経済研究所 2011)。  高等教育を受けた者が受けていない者に及ぼす外部効果(スピルオーバー効果あ るいは近隣効果)があることは、アメリカの実証研究の結果で示されている.(Lange and Topel 2006のレビュー)  外部効果の例  大卒労働者の供給の1パーセントの増加は、高校中退者の賃金を1.9パーセント、高 卒労働者の賃金を 1.6 パーセント、大卒労働者の賃金を0.4 パーセント増加させる。 (Moretti Enrico, Estimating the social return to higher education: evidence from longitudinal and repeated cross-sectional data, Journal of Econometrics 121 (2004) 175–212)

(41)

大卒の社会経済的効果の試算例

(42)

42

(43)

43

(44)

年齢層別の教育費の負担軽減策

44

(45)

教育費負担軽減と出産傾向の変化

(46)

教育費の受益者負担論

社会も受益者(外部効果)

→「受益者負担」ではなく「私的負担」

高等教育の外部経済は,あまり大きくない。

高等教育の私的便益は社会的便益より大きい。

高等教育の私的収益率>社会的収益率

 イギリス デアリング・レポート(1997)で授業料導入のエビデンスとされた

費用と便益にみあう費用負担をすべきである

 しかし、教育の費用と便益は,専攻によって大きく異なる

 オーストラリアの高等教育貢献拠出金制度(Higher Education Contribution Scheme)は、この考え方に基づく

批判 私的負担のみであれば社会的貢献は不要となる

(47)

日本学生支援機構奨学生数の推移

47

(48)

奨学金を申請しなかった理由

低所得層ほど返済の不安

文部科学省科学研究費基盤(B)「教育費負担と学生に対する経済的支援のあり方 に関する実証研究」(小林雅之研究代表)、サンプル数は、1,064 21.7% 18.1% 12.2% 13.6% 5.4% 34.8% 26.4% 26.7% 19.3% 14.3% 10.9% 12.5% 4.4% 3.4% 1.8% 4.3% 9.7% 12.2% 28.4% 39.3% 28.3% 33.3% 44.4% 35.2% 39.3% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% -400 450-600 625-800 825-1025 1050-将来、返済できるか不安 よく知らなかったから 成績の基準に達しなかった 収入が高すぎた 必要ない 家計所得(万円)

48

(49)

ローンの負担を軽減させ,回収率を上げる

卒業後の所得に応じて返済、低所得ほど負担が少ない

6つの要素

所得に応じた返済額(所得の一定の割合)

一定所得以下での返済猶予

一定期間あるいは年齢で帳消しルール

利子補給

その他の考慮すべき要因(家族人数など)

源泉徴収あるいは類似の方法

各国の所得連動型ローンはこの6つの要素を組み合わせている

上記の要素を変えることにより返済額は変化し、返済期間も変わる。

所得の把握と源泉徴収のため、国税当局の協力が不可欠。

所得連動型ローン

Income Contingent Loan

(50)

各国の所得変動型ローン

オーストラリア イギリス アメリカ 名称 HECS 授業料ローンと生 活費ローン 所得基礎返済ロー ン(IBR, Pay As You Earn) 返済額 所得から下記の金 額を引いた額に所 得に応じる返済率 をかけた額(前払い 10%割引) 所得から下記の金 額を引いた額の 9% 所得から下記の金 額を引いた額に、 所得と家族人数に 応じて0から10% 返済猶予最高額 51,309ドル 16,365ポンド 家族人数に応じて 10,000〜50,000ド ル 徴収方法 源泉徴収 源泉徴収 小切手等 政府補助 物価上昇率(実質 利子率ゼロ) 物価上昇率+0〜 3% なし(有利子) 返済免除 本人死亡 30年間または65歳 20年間または公的 サービス10年

(51)

 豪HECS、イギリス,アメリカなどで採用されている  卒業後,所得に応じて支払う  返済額 英 所得の0~3.6%((所得-2.1万ポンド)*9%)  豪HECS 所得の0~8%  一定額以下の所得場合,返済を猶予(英は約360万円、豪は約470万円、米は家族人数 に応じて1から5万ドル)  一定期間や一定年齢で返済を免除する場合も(英、米)  豪と英では個人の所得のみが返済の基準(配偶者の所得などは考慮されない)。米では 家族人数が考慮される。  所得から源泉徴収される場合が多い(豪・英)  英は2011年まではインフレスライド分のみで実質的には無利子  英は2012年度より一部所得に応じて有利子化(0から3%)  アメリカでは所得連動型は人気がない(全体の1割以下)  高利子負担のため(6.8%から7.9%、特例として3.4%(2011)から4.66%(2014)の措置)  周知不足  デフォルトの返済プランは標準型(10年返済)のため、学生はこれを選択しやすい

各国の所得連動型返済

51

(52)

HECS-HELP 2014

費用だけではなく将来の所得に基づく返済額

(注)1豪ドル=91.5円として計算

Data: Commonwealth of Australia, 2013 HECS-HELP Commonwealth supported places information for 2014

バンド 専攻分野 学生貢献分(万円) バンド1 人文科学,教養・学芸(Arts), 行 動科学,心理学、社会学,外国語, 映像・芸術学,教育学,看護学 0 – 55.3 バンド2 コンピュータ,人間環境学(built environment),保健科学,工学, 測量学,農学、数学,統計学,理 学 0 – 78.8 バンド3 法律,歯学,医学,獣医学,会計 学,商学,経営管理,経済学 0 – 92.2

52

(53)

所得連動型返還制度の拡充

53

平成24年度より日本学生支援機構第1種奨学金に導入 申請時の家計支持者年収300万円以下

(54)

返済免除制度

各国とも導入されているのが,一定の条件を満たした時にローンの返済を減免 する制度

イギリスでは30年間返済した後の残額は帳消しにされるほか,ローンを給付奨 学金に変更し実質的に減免になる制度や教師や看護職になる場合にも給付奨 学金が支給される。

オーストラリアでも,数学と科学が国家優先バンドとなり,HECSの金額が低く設 定されている。さらにこれらに関連した職に就いた場合,返済額が減額される などの優遇措置がある。幼児教育と看護職も同様の手当がなされている(2014 年度より変更)。

中国でも,教員や特定地域で特定の職業に就いた場合には授業料免除等の 制度がある。

アメリカでも,所得基礎型ローンなどでは,10年間公的職業に就いた場合, ローンの残額の返済は免除される。その他の場合には20年で帳消しになる。

中国でも,教員や特定地域で特定の職業に就いた場合には授業料免除などの 制度がある。

こうした仕組みのない我が国ときわめて対照的である。

54

(55)

教育再生実行会議第8次提言

 幼児教育の段階的無償化及び子ども・子育て支援新制度に基づく幼児教育等の質 の向上 約1兆円  3歳から5歳児の幼児教育を無償化  子ども・子育て支援新制度に基づく、幼児教育・保育・子育て支援の更なる「質 の向上」(職 員の配置や処遇の改善等)  高等学校教育段階における教育費負担軽減 約 0.5 兆円  授業料以外の負担の一層の軽減(高校生等奨学給付金の拡充)  授業料負担の一層の軽減(高等学校等就学支援金の拡充) 等  高等教育段階における教育費負担軽減 約 0.7 兆円  大学生等における奨学金の充実(有利子奨学の完全無利子化、より柔軟な所得連動返還 型奨学金制度の導入等)  大学生、専門学校生等の授業料等負担の軽減  フリースクールを含めあらゆる子供の教育機会を確保するための支援

55

(56)

参考文献

伊藤りさ 「我が国の家計における教育費負担」国立国会図書館調査及び立法考査局 編 『少子化・高齢化とその対策 総合調査報告書』 90-102頁 2004年。

小林雅之 2014年「高等教育の「グランドデザイン」 ー教育費負担の観点から」 『大学 マネジメント』 10, 4, 24-28頁。

小林雅之 2014年「奨学金制度の課題と在り方」 『個人金融』 9, 1, 23−30頁。

小林雅之 2014年「大学授業料と奨学金の現状と課題」 『ねざす』 53, 31−37頁。

小林雅之 2014年「進学の格差の拡大と学生支援のあり方」 『生活協同組合研究』 456, 29-36頁。

小林雅之 2014年「大学授業料と奨学金の現状と戦略」 『大学時報』 353, 30-35頁。

小林雅之 2013年「大学の教育費負担 —誰が教育を支えるのか」広田照幸他編『大学 とコスト』岩波書店。

小林雅之 2013年「教育費『誰が負担』議論を」日本経済新聞 2013年9月30日。

小林雅之 2013年「国際的に見た教育費負担」『IDE 現代の高等教育』 No. 555 特集 高等教育と費用負担 13-18頁。

小林雅之 2012年「家計負担と奨学金・授業料」日本高等教育学会編 『高等教育研 究』 第15集, 115-134頁。

小林雅之 2010年「学費・奨学金政策への提言」 『大学マネジメント』 18-23頁。

小林雅之 2010年「学費と奨学金」 『IDE −現代の高等教育』 520, 18-23頁。

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参考文献 2

 小林雅之 2010年「今後における学生への経済的支援のあり方 −諸外国と比較して-」 『大学 と学生』 第88号。  小林雅之 2009年 『大学進学の機会』 東京大学出版会。  小林雅之 2008年 『進学格差』 筑摩書房。  小林雅之編 2012年『教育機会均等への挑戦 −授業料・奨学金の8カ国比較』東信堂。  小林雅之・劉文君 2013〜2014年「大学の財務基盤の強化のために」(1)から(4)『IDE 現代 の高等教育』  小林雅之・劉文君 2013年『オバマ政権の学生支援改革』東京大学・大学総合教育研究センター 。  文部科学省先導的大学改革推進委託事業(小林雅之編) 2014年『高等教育機関の進学時の 家計負担に関する調査研究』東京大学 。  新谷由里子 「親の教育費負担意識と少子化」 『人口問題研究』 61, 3, 20-38頁 2005年。  鈴木俊裕他 2007年 『教育費が少子化にあたえる影響』慶應義塾大学樋口美雄研究会社会保 証班。  山口一男 2005年 『少子化の決定要因と具体的対策』経済産業研究所。  山田昌弘 2004年『希望格差社会 ー負け組の絶望感が日本を引き裂く』筑摩書房。

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参照

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