岩石の時間依存性劣化過程の 室内試験による分析
岡﨑 健治
1*・丹羽 廣海
2・村山 秀幸
2・伊東 佳彦
1・笹谷 輝勝
2・倉橋 稔幸
11土木研究所寒地土木研究所(〒062-8602 北海道札幌市豊平区平岸一条三丁目1-34)
2株式会社フジタ技術センター(〒243-0125 神奈川県厚木市小野2025-1)
*E-mail: [email protected]
筆者らは,岩石の時間依存性を有する劣化過程を明らかにするため,熱水変質を受けた安山岩質地山の 道路トンネルで実施したボーリングのコアを掘削直後から亀裂の発生や劣化の進行状況を目視観察した.
また,三軸圧縮試験装置による水圧の繰り返し後のP波速度の測定,浸水による亀裂の進展状況をX線CT 装置で撮影した.目視観察の結果,亀裂は掘削後から数日までに増加し,その後,緩やかに増加または収 束したため,一定時間経過後の再観察によって岩石の劣化を短期に評価できる場合のあることがわかった.
また,水圧の繰り返し作用は亀裂を進展させ,コアの物理的性質を変化させた.浸水後のコアは潜在的な 亀裂が顕在化し,亀裂沿いに細片化が進んだ後,岩石全体が細片化した.その過程をX線CT画像で捉えた.
Key Words : tunnel,rock property,time-dependent behavior process, X-ray CT image
1. はじめに
トンネル建設では,支保工の設置後や開通後など,一 定の時間が経過後に様々な変状を起こす場合がある1)~5). これらの変状は,おもに盤ぶくれや側壁の押出しであり,
施工や維持管理での課題となっている.このような変状 が生じたトンネルでは,施工時に従来の膨張性地山の判 定6) や掘削にともなう内空変位量の増加などの問題が発 生していない場合でも,その後,いわゆる時間依存性を 有するような変状が生じる場合があり,その発生を施工 時や維持管理段階において早期に評価予測する方法の構 築が不可欠となっている.
これまで筆者ら7) は,完成後に変状が生じたトンネル において,その施工記録や地質調査結果から変状発生に 関する地質状況と鉱物学的な特徴を整理し,岩石の劣化 や膨張の予測において,従来の膨張性の判定とあわせて,
岩石に含まれる鉱物の組み合わせを加味することが有効 になる場合のあることを示した.また,本トンネル周辺 の熱水変質を受けた地山でのボーリングコアは,経年変 化で劣化膨張が著しいことが判明したことから,ボーリ ングコアの性状変化を継続的に目視観察した結果,比較 的早期に再観察することで,中長期的に岩石が劣化する 範囲を特定できる場合のあることを明らかにしている.
本報告では,北海道の熱水変質を受けた安山岩質地山 に建設された国道トンネルの供用中に変状が発生した区 間において,地質状況の確認を目的としたボーリング調 査を実施し,そのコアを掘削直後から劣化の進行や亀裂 発生の状態変化を観察,三軸圧縮試験装置で水圧を繰り 返し作用させた後の岩石の超音波伝播速度の変化,浸水 後の状態変化をX線CT装置で撮影した結果をもとに,時 間依存性を有する岩石の劣化の過程を分析した結果につ いて述べる.
2. 調査と試験の概要
(1)トンネルの地質と変状
本調査は,代替え新トンネルの開通により供用停止と なった旧国道トンネル(延長1.9km)を対象とした.
本トンネルのおもな地質は,安山岩質の凝灰角礫岩,
自破砕溶岩および安山岩溶岩である.地山は中~アルカ リ性の熱水変質を受けており,スメクタイトなどの膨潤 性粘土鉱物を多く含むことが特徴的である.
本トンネルでは,完成から数年後にインバートや側壁 の押出しなどの変状が5区間で顕在化し,急激な路盤隆 起が確認され,数次にわたる対策工が施工された.また,
第 44 回岩盤力学に関するシンポジウム講演集 公益社団法人土木学会 2016 年1月 講演番号 44
30年以上にわたり緩慢な変状が長期的に継続した.
(2)ボーリング調査とコア観察
本調査では,変状の著しかった区間において,地質の 確認と岩石の経時的な劣化の進行状況を把握するため,
同一断面内で鉛直方向に30m,水平方向に40mのボーリ ング調査をそれぞれ1孔実施した.また,ボーリングコ アの劣化の進行を把握するため,目視で確認できる亀裂 の発生数に着目し,掘削直後から17~25日間継続して,
岩級区分8) に応じてコア1mごとに本数を記録した.岩級 区分は,コアの硬軟,形状および割れ目の状態からCH, CM,CL,Dの4区分とした.
亀裂の発生数は,まず,その実測値に対して岩級区分 ごとに,Yを亀裂発生数,Xを経過時間とした非線形最 小自乗法による予測式(Y=aIn(X)+b:対数近似)を1m ごとに設定し,定数aとbの平均値から岩級区分ごとの亀 裂発生の推定式を作成した.次に,この推定式に,これ までの類似岩石の長期観察調査7) によってコアの劣化範 囲が拡大しなくなった状態を確認した日数(ボーリング 掘削から586日後)を入力して収束値を求めた.さらに,
亀裂の発生数は,掘削直後から比較的初期に増加し,そ の後緩やかに増加または収束することから,ボーリング コアの観察結果をもとに,掘削後から比較的初期の特定 の経過日数を設定し,その経過日数の亀裂発生数を計算 し,収束値との割合を求めた.
(3)岩石の室内試験
a)水圧繰り返し後の物理強度特性の整理
岩石の劣化は,試料中に含まれるスメクタイトが水分 と接触して膨潤することで進行すると考えられる.この ため,水圧を繰り返し作用させることで岩石内の亀裂を 進展させ,亀裂沿いに存在するスメクタイトへ水分を供 給することで時間依存性を有する劣化を再現するための 試験を実施した.試験では,ボーリングコアを三軸圧縮 試験装置に設置し,飽和させた後,側圧を加えた.側圧 を加えることで通常の飽和作業(水浸など)より高い飽 和度を得られることを期待した.また,通常では水と接 触しないごく微細なマイクロクラックに存在するスメク タイトへの水分供給を期待した.側圧は 0MPa(通水時 のみ),0.1MPa,0.2MPa,0.4MPaおよび 0.8MPaを加え た.加圧時間は,30分とし,加圧後に試料を試験装置 から取り出してP波速度を測定した.
b)浸水による亀裂発生の状態変化
試験では,1~2cmの立方体に成形したコアを容器内 で浸水させて,経時的な亀裂の発生状況をMicro focus X- ray CT scanner(Toscaner301300μhd)によって複数の断面 のCT画像を撮影した.CT画像は,浸水前,浸水1時間 後,浸水6時間後および浸水24時間後に撮影した.CT
画像は色が明るいほど高密度,低いほど低密度で表示し ている.よって,画像で白い部分は相対的に高密度な部 分,逆に黒い部分は空気であるため,亀裂や空隙などに 相当する.なお,本スキャナーから得られるCT画像の CT値は,あくまで相対的な密度コントラストとして扱 った.なお,CT画像の解像度は25~30μm程度である.
3. 調査・試験結果
(1)ボーリング調査
図-1にボーリング調査結果である柱状図,岩級区分,
RQD(10),速度検層および掘削直後の初期亀裂と観察終 了時に確認した亀裂数を示す.また,写真-1に掘削直後 のコアを示す.
まず,ボーリング調査で確認した地質は,鉛直孔では 深度25mまでが凝灰角礫岩,それ以深が安山岩である.
また,水平孔では深度7mまでが凝灰角礫岩,それ以深 が安山岩である.掘削直後のコアの変質状態は,亀裂に 沿って変質するもの,岩芯を残すもの,岩芯まで変質が 進んだものが所々に確認され,強度や性状が不均質にな っている(写真-1).また,時間経過後に亀裂が密集し て発生した箇所では,コアの膨張を生じた箇所も確認し た.RQD(10)は,岩級区分がCH~CM級で概ね80%以上と 高く,CL~D級で概ね70%以下の傾向がみられる.一方,
初期亀裂数は,CL級の安山岩を除いて1m当たり4~8本 と大きな違いはないが,最終亀裂数との比を求めた場合,
CH~CM級では2.0未満であるが,CL~D級では2.0以上と なり,岩級区分に応じた違いを確認した9) .
次に,図-2に岩級区分に応じた亀裂数の平均値の経時 変化を示す.亀裂の発生数は,CH,CM,D,CL級の順に 少なくなる傾向がみられる.初期の亀裂数が多い場合,
その後の発生数も多くなる傾向がみられる.また,亀裂 は比較的初期の段階で多く発生し,その後,緩やかまた は収束するように変化する傾向を示している.この傾向 は,掘削直後から概ね5日後までに亀裂が増加する傾向 として捉えることができる.以上のことから,掘削直後 のコアの観察結果とあわせて,一定の時間が経過した後 にコアを再観察することで,長期的な亀裂の発生による 岩石の劣化を評価予測できる場合があるといえる.
写真-1 掘削直後のコアの状態(鉛直孔・採取深度 25~30m)
0 20 40 60 80 1
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
深度(m)
□ 初期亀裂
■ 最終亀裂
0 20 40 60 80
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40
深度(m)
□ 初期亀裂
■ 最終亀裂 (水平孔)
(鉛直孔)
岩級区分
■CH
■CM
■CL
■D
図-1 ボーリング調査の結果
表-1 亀裂発生数の予測式
発生割合
a b Y5 Y586 Y5/Y586
CH 9 0.73 4.26 5.4 8.9 0.61 YCH=0.73ln(X)+4.26
CM 27 1.13 8.34 10.2 15.5 0.65 YCM=1.13ln(X)+8.34
CL 18 3.42 14.69 20.2 36.5 0.55 YCL=3.42ln(X)+14.69
D 12 2.40 12.16 16.0 27.5 0.58 YD =2.40ln(X)+12.16
岩級区分 データ数
(m)
近似式の定数 Y:観察日数に応じた
亀裂発生数の予測値 亀裂発生数の予測式
(X:観察日数)
図-2 岩級区分に応じた亀裂数の平均値の経時変化
図-3 水圧繰り返し試験結果
(2)亀裂発生数と予測式
表-1に亀裂発生数の予測式を示す.経過日数(X)を パラメータとして,亀裂発生数を計算した場合,CH, CM,D,CL級の順に発生数が多い傾向が確認できる.こ こで,D級については,軟質な状態であったことから亀 裂の発生が比較的少ない理由であると考えられる.
次に,586日後の亀裂発生数に対する5日後の値は55~
65%であったことがわかる.以上のことから,本調査地 での岩石は,比較的早い段階で最終的な亀裂の半数以上 が発生することが確認され,その予測式としては,非線 形最小自乗法の対数近似で整合することがわかった.
(3)水圧繰り返し試験
図-3に水圧繰り返し試験の結果を示す.試験を実施し た3試料のうち,2試料は初期の水圧作用の段階で,大き な亀裂が発生したことから計測不能となった.一方,深 度19.2mから採取した試料は,7回目までの水圧繰り返し 作用後に亀裂が発生した.初期に3.5km/sであった弾性波 速度が7回目の加圧後に3.0km/sである初期の85%までに 低下した.以上のことから水圧の繰り返し作用によって,
亀裂が進展し,そのことで岩石の物理的性質が変化し,
P波速度も減少するものと推測できる.
試験前 試験後
写真-2 試験前後の試料の状態と浸水時間に応じた岩石 内部の亀裂の進展状況
(4)浸水状態での亀裂発生状況
写真-2に試験前後の試料の状態と,浸水時間に応じた 岩石内部の亀裂の進展状況を示す.試料は,最終的には,
細片化したが,浸水から24時間後までの亀裂の発生状況 を確認することができた.まず,浸水1時間後には,比 較的大きな亀裂が写真の左上端部で発生した.浸水6時 間後,上部右方向に亀裂が進展するとともに,亀裂沿い に細片化が進行する状況が確認できる.浸水24時間後で は,岩石全体に亀裂が複数発生し,脆弱な状態になって いる様子が伺える.このように,浸水させることで,岩 石の内部の崩壊する様子を捉えることができた.また,
亀裂は,大きく発生した亀裂面から細片化が進むことが 確認できた.
0 5 10 15 20 25 30 35 40
0 5 10 15 20 25
亀裂数
経過日数 CH 平均
CM 平均 CL 平均 D 平均 全体平均
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0
0 2 4 6 8 10 12
P波速度
加圧回数(回)
BH1(8.85) BH1(38.30) BH2(19.20)
浸⽔前
浸⽔1時間後
浸⽔6時間後
浸⽔24時間後
4. まとめ
本報告の知見をまとめると次のとおりである.
1) コアにおける亀裂の発生数を観察した結果,CHで 最も少なく,以下,CM,D,CL級の順に少ない傾向 を確認した.また,初期の亀裂数が多い場合,その 後の発生数も多いことがわかった.
2) 亀裂の発生数は,比較的初期の段階で多く,その後,
緩やかまたは収束するように変化する傾向を示して た.亀裂発生数の予測式を作成し,経過日数(X)
をパラメータとして,亀裂発生数を計算した結果,
586日後の値に対する5日後の亀裂発生数は55~65%
であった.このことから,本調査地での岩石では,
比較的早い段階で最終的な亀裂発生数の半数以上が 発生することがわかった.
3) 水圧を繰り返し作用させて超音波伝搬速度を測定し た結果,初期に3.5km/sであった弾性波速度が7回目 の水圧の繰り返し作用後に3.0km/sとなり,初期の 85%までに低下した.このことから水圧の繰り返し 作用によって,岩石の物理的性質が変化することを 確認できた.
4) 浸水状態において岩石の状態が変化する様子をX線 CT画像で撮影した結果,岩石は,大きく発生した 亀裂面から細片化が進み,その後,岩石全体が細片 化する状況を確認した.
5. おわりに
本調査の結果,本地区の岩石における時間依存性を有 する劣化を評価するためには,一定時間経過後に岩石を 再観察することが必要であり,また,浸水や水圧の繰り 返し作用は,亀裂の経時的な進展によって岩石の劣化を 促進させ,物理的性質を変化させることがわかった.
今後は,時間依存性を有する岩石の長期的な劣化を予 測するため,岩石の特徴,試験および評価方法に関する 分析をさらに進めていきたい.
謝辞:本調査試験では「トンネルの変状調査計測技術に 関する検討委員会」(委員長:北海道大学大学院児玉淳 一准教授)から多くの貴重なご意見を賜りました.また,
現地調査にあたり,国土交通省北海道開発局の関係各位 に多大なるご協力を賜りました.X線CT画像の撮影では,
北海道大学大学院福田大祐助教に,ご指導頂きました.
ここに深謝致します.なお,本調査試験は,国土交通省 建設技術研究開発助成制度「変状を伴う老朽化トンネル の地質評価・診断技術の開発」の補助金で実施しました.
参考文献
1) 土木学会岩盤力学委員会:トンネルの変状メカニズム
(変状事例集),pp.214-269,2003.
2) 土木学会:山岳トンネルのインバート,トンネルライ ブラリー第25号,pp.295-319,2013.
3) 中田正夫,伊藤 洋:供用中トンネルにおける変状と 対策・上信越自動車道路浅間山トンネル,トンネルと 地下,vol.31,4,pp.7-14,2000.
4) 渡邊康夫,監郷一博,鈴木 尊:供用中の新幹線トン ネルで発生した路盤隆起の原因とその対策,トンネル と地下,vol.38,9,pp.7-16,2007.
5) 二瓶益臣,中曽根茂樹,生杉嘉良:トンネル覆工と路 面変状の保全対策検討事例(一般国道 46 号仙岩トン ネ ル ) , 土 木 学 会 土 木 技 術 者 実 践 論 文 集 ,Vol.1, pp.23-31,2010.
6) 土木学会:トンネル標準示方書山岳工法,2006. 7) 岡﨑健治,丹羽廣海,村山秀幸,伊東佳彦:変質安山
岩の経年劣化と鉱物学的特徴,土木学会第 43 回岩盤 力学に関するシンポジウム講演集,pp.170-175,2015. 8) 日本建設情報総合センター:ボーリング柱状図作成要
領(案),1999.
9) 岡﨑健治,伊東佳彦,丹羽廣海,村山秀幸:時間依存 性の劣化を伴う岩石の評価方法に関する検討例,土木 学会第 70回年次学術講演会講演集,pp.495-496,2015.
CASE STUDY BY LABORATORY TEST OF THE TIME-DEPENDENT BEHAVIOR PROCESS OF THE ROCK
Kenji OKAZAKI, Hiroumi NIWA, Hideyuki MURAYAMA, Yoshihiko ITO, Terukatsu SASAYA and Toshiyuki KURAHASHI
The authors observed the rock core of the andesite with hydrothermal alteration which was obtained in the national highway tunnel site in Hokkaido, Japan. The P-wave velocity of the rock core was also measured after repetition of the water pressure and photographed the change of occurrence of the crack in the water by the X-rays CT device. As a results, the outbreak of the many cracks in the rock core increased in a five days after digging, thus the re-observation of the outbreak cracks in rock core indicated the possibility that evaluate the deterioration of the rock in a short term. The change in the outbreak of the cracks inside of the rock specimen during soaking in the water was grasped by X-rays images.