©2003 The Mining and Materials Processing Institute of Japan
水蒸気圧下の岩石の強度特性 *
鄭 海 植
1
尾 原 祐 三2
菅 原 勝 彦3
The Strength of Rock under Water Vapor Pressure by Hae-Sik JEONG a , Yuzo OBARA b * and Katsuhiko SUGAWARA b a. Graduate School of Engineering, Kumamoto University
b. Department of Civil Engineering, Kumamoto University, 2-39-1 Kurokami, Kumamoto 860-8555, Japan (*Corresponding author : E-mail [email protected])
In order to investigate the environmental dependence on strength of rock, uniaxial compression test and Bra- zilian test under water vapor environment were conducted on Kumamoto andesite and Kitagishima granite. Tests were carried out under various water vapor pressures, which are controlled in special chambers, at a constant strain rate. The results obtained by the uniaxial compression test and Brazilian test are follows:
The Young’s moduli are almost constant with the change of water vapor pressure. On the other hand, the water vapor pressure largely affects the uniaxial compressive strength and the tensile strength of rock. Namely, the strengths of rock increase with decreasing water vapor pressure.
The relationships between uniaxial compressive strength S c , tensile strength S t and water vapor pressure p can be represents by the following equation: long S c - N c log p and long S t - N t log p, where N c and N t are the inclination of lines.
Comparing the above equations based on the test results with equation (5), the stress corrosion indexes are obtained as 24 in Kumamoto andesite and 62 in Kitagishima granite on uniaxial compression test, then 58 in Kuma- moto andesite on Brazilian test. It is discussed that the difference between the stress corrosion indexes obtained from uniaxial compression test and Brazilian test is caused by the stress state within rock specimen in each test.
The estimation method of long term-strength of rock is shown according to equation (8), then the long-term strength of Kumamoto andesite and Kitagishima granite can be estimated concretely, that is, uniaxial compressive strengths of Kumamoto andesite and Kitagishima granite after 1000 years are estimated 75% and 89% of uniaxial compressive strengths at the present time respectively.
KEY WORDS : Rock, Water Vapor Pressure, Uniaxial Compressive Strength, Tensile Strength, Stress Corrosion Index, Long-term Strength
1.緒 言
最近,
LPG
やLNG
などの各種燃料の貯蔵施設や揚水式地下発 電所のような地下岩盤構造物が建設されてきている。また,2030
年代を目途に,地下深部において高レベル放射性廃棄物の地層 処分施設の建設・操業が計画されており,その施設の使用期間 は核種の安全性が保障される数千年から数万年が前提となって いる1)
。地下に空洞を掘削すると空洞周辺の岩盤は,短期的には,初期 応力,幾何形状,岩盤の力学的特性などに応じた応力状態となっ て安定する。一方,空洞の長期使用に関しては,短期的に安定し た応力状態と岩盤の長期強度を考慮して空洞設計がなされるべき で,岩石のクリープ試験結果に基づいた構成方程式が提案され,
岩石の長期強度が検討されている
2)
。しかし,応力下におかれた 岩盤はクリープだけでなく,周辺の環境の影響を受けて強度劣化 すると考えられる。とくに,地下には地下水が存在しているため,地下空間は高湿度の環境と考えられる。これまでの研究によると,
ケイ素を主成分とするガラス,セラミックス,岩石などは強度以 下の応力が作用しているときにでも,空気中の水蒸気によってき 裂先端で応力腐食が発生し,この結果,き裂の緩進展現象が起き て岩石が破壊することが知られている
3)-6)
。また,Obara et al.7)
,Jeong and Obara 8)
,鄭・尾原9)
は,非大気環境下において,岩石 の1
軸圧縮試験および圧裂試験を実施し,応力腐食を最も促進す る物質は水蒸気であることを明らかにするとともに,水蒸気環境 下の強度は水蒸気がほとんど存在しない環境下におけるそれの6
~
8
割であることを示している。したがって,大気中の水蒸気の 存在は岩石の強度を低下させることが明らかであるので,岩石周 辺環境の水蒸気圧の影響を考慮した長期強度の評価法の確立が望 まれる。そこで,本研究では熊本安山岩と北木島花崗岩を用いて様々な 水蒸気圧下で
1
軸圧縮試験および圧裂試験を行い,岩石の力学的 挙動と水蒸気圧の変化による強度特性について検討する。また,得られた強度と水蒸気の関係から応力腐食指数を求め,他の研究 者の研究結果と比較・検討する。さらに,求めた応力腐食指数を 用い,佐野
10)
の理論に基づいて,岩石の長期強度について具体的 に検討する。∝ ∝
* 2002年
8
月14
日受付 12月13
日受理1. 熊本大学大学院生 自然科学研究科 環境共生科学専攻 博士後期課程 2. 普通会員 工博 熊本大学教授 工学部 環境システム工学科 3. 普通会員 工博 熊本大学教授 大学院 自然科学研究科 [
著者連絡先] FAX 096-342-3686 (
熊本大・尾原)
E-mail:[email protected]
キーワード:岩石,水蒸気圧,1軸圧縮強度,引張強度,応力腐食,長期強度
イ酸塩質鉱物である岩石においても,水による応力腐食が発生す ることを多くの研究者が実験的に確かめている
14)-17)
。Evans 18)
はFig.1
に示すように,き裂の進展速度と応力拡大係数の関係に
3
つの領域があることを示している。とくに,領域I
に おけるその速度は,き裂先端における応力腐食の反応速度によっ て制御されており,次式に示すような水の水酸イオンOH -
と二酸 化ケイ素( )
の化学反応によってき裂がゆっくり進展 すると考えられている19)
。……… (1)
Wiederhorn 20)
はガラスを用いて行った多くの実験によって反応式
(1)
はき裂先端での水酸化イオン[OH - ]
の濃度とSi - O
の有効 濃度[ C ]
に関係するとし,き裂の進展速度を次式で与えた。ここで,kはボルツマン定数,Tは絶対温度,hはプランク定数,
n
は化学反応の次数, は自由エネルギーの変化量,R
は気体定 数である。この[OH - ]
の濃度は水蒸気圧で表現することができ21)22)
,Martin 23)
は岩石のように不均質な物体におけるき裂の進展速度を次のように表現した。
……… (3) ここで,pは水蒸気の分圧,E
*
は活性化エネルギー,nwは反応次 数,n
は応力腐食指数であり, はき裂先端付近での最大引張応力 である。式(3)
を基礎に一定のひずみ速度下での1
軸圧縮試験に おける岩石の一軸圧縮強度は次式で表されている24)
。なお,nw
= 1
となると,nはDT (double torsion)
試験によって求め られる応力腐食指数とほぼ一致し11) 23)
,次式のような関係が成立Chamber A
には5
つのポート,ガス導入バルブ,ベローズ付きフランジが取り付けられている。5 つのポートはひずみゲージの 出力取り出し用が
2
つ,真空計の取り付け部が2
つ,残りのポー トには排気用バルブが取り付けられている。Chamber B
には,2
つ のポート,ガス導入バルブ,べローズ付きフランジが取り付けら れている。また,チェンバーの表面には温度制御用のヒーターが 設置されている。2 つのポートには,圧力測定器の取り付け部と 排気用のバルブが取り付けられている。チェンバー内の圧力は,Chamber A
では低真空をピラニー真空計,高真空をペニング真空計を用いて測定され,
Chamber B
では高信頼型圧力変換器(
スパッ タゲージ式)
により測定される。チェンバー内の空気と水蒸気とを入れ替えるために低真空用の ロータリーポンプと高真空用のターボ分子ポンプが用いられる。
これらのポンプはチェンバーの排気用のバルブとフレキシブル チューブによって連結されている。
本研究で使用した供試体は,熊本安山岩と北木島花崗岩である。
安山岩はほぼ等方均質であるので
25)
,岩石ブロックから任意の1
方向にコアボーリングを行った。一方,花崗岩は直交異方性を示 すことを考慮し,岩石ブロックからのコアボーリングの方向はRiftSi O Si
≡ − − ≡
[ ≡ Si O Si − − ≡ ] + OH
−⇔ ≡ Si O −
−+ [ ≡ Si OH − ]
……… (2)
[ ] [ ]
* kT OH
nexp( / )
v C G RT
h
−∆
≠= −
∆ G
≠exp( * / )
nw n
v ∝ p − E kT σ
lσ
l………
(4)
log log
1
c
n
wS p
∝ − n +
Fig.1 Relation of crack velocity and stress intensity factor.
K
0: Stress corrosion limit, K
Ic: Critical stress intensity factor. Fig.2 Photograph of the vacuum chamber : (a) for low pressure ; (b) for high pressure.
(a)
(b)
面に垂直な方向とした。
1
軸圧縮試験用の供試体は直径D = 35mm
, 長さL = 70mm
,圧裂試験用のそれはD = 35mm
,長さL = 20mm
に 成形し,端面の仕上げ精度は0.01mm
以下である。なお,圧裂試 験では熊本安山岩のみを用いた。供試体中の水分を完全に取り除くために,約
197
℃の炉の中で 供試体を強制乾燥させた。1
軸圧縮用供試体の乾燥期間中の弾性 波速度と単位体積重量の変化をFig.3
に示す。最も収束の遅い花 崗岩の弾性波伝播速度でも約30
日を経過するとある一定値に収束 していることがわかる。そこで,乾燥期間を1
軸圧縮試験用供試 体は約80
日間,圧裂試験用のそれは約30
日間と定めた。なお,熊本安山岩と北木島花崗岩の弾性波伝播速度と単位体積重量はそ れぞれ平均
2.9km/s
,2.0km/s
および24.3kN/m 3
と25.5kN/m 3
である。4.実験方法
高圧用の
chamber B
内に1
軸圧縮用供試体をセットした様子をFig.4
に示す。1
軸圧縮試験では上下の載荷棒の間に直接供試体が置かれる。一方,圧裂試験では圧裂用冶具に供試体が置かれ,そ れが載荷棒の間にセットされる。低圧用
chamber A
の基本構造は 高圧用とほぼ同じである。この詳細はObara et al. 26)
,鄭・尾原9)
の論文を参照されたい。実験中のチェンバー内の圧力変化を
Fig.5
に示す。低圧および 高圧の実験ともに,まず,チェンバー内に供試体をセットし,真 空ポンプを用いてチェンバー内の空気を排気した後,新たに任意 の圧力の水蒸気環境を作り出し,1
軸圧縮試験および圧裂試験を 行った。具体的には,低圧の場合は,Fig.5(a)
に示すように,チェ ンバー内の圧力が10 -3 Pa
以下になったことを確認した後,ガス導入バルブより蒸留水を注入し,飽和水蒸気圧とする。その後ポン プを作動させてチェンバー内の圧力を所定の水蒸気圧に制御し,
この状態を
24
時間保持した後に1
軸圧縮試験および圧裂試験を実 施した。一方,
Fig.5(b)
に示した高圧の場合,チェンバー内の圧力を飽和水蒸気圧にするまでは低圧の場合と同様である。この状態で供試 体は載荷棒から大気圧と飽和水蒸気圧との差圧分の応力を受けて いる。この後,チェンバーの下部に取り付けられたヒーターによ りチェンバーを熱し,内部温度を上昇させて所定の水蒸気圧にし て一定時間保持した後,
1
軸圧縮試験および圧裂試験を実施した。この操作において,温度が上昇すると水蒸気圧が高くなり,載荷 棒が取り付けられているフランジが浮き上がる。このために,温 度とともに上昇するチェンバー内の水蒸気圧に相当する荷重を逐 次材料試験機で与え,その浮き上がりを防止した。
1
軸圧縮試験および圧裂試験はそれぞれ500kN
および100kN
の サーボコントロール式MTS
材料試験機を用いて実施し,載荷は一 定のひずみ速度になるように変位制御で行った。1
軸圧縮試験で は,高温となるためひずみゲージを貼付することができなかった ので,供試体のひずみをアクチュエータの変位によって以下のよ うに補正した。すなわち,供試体と同じ寸法の軟鋼の円柱を用意 し,それをチェンバー内にセットして載荷し,アクチュエータお よびチェンバーで構成された系の剛性を求めた。この剛性を用い て試験中に測定された変位から供試体の変位を算定し,この値を 供試体長さL
で除してひずみとした。また,荷重P
を供試体断面 積で除して圧縮応力とした。一方,圧裂試験においては,荷重P
を計測し,2P/ DL
に代入して引張応力を算定した。また,変位は 材料試験機の変位計を用いて測定し,載荷軸方向の供試体の直径 変化とした。π
Fig.5 Change of the pressure in the chamber during the test: (a) Chamber A for low pressure ; (b) Chamber B for high pressure.
Fig.3 Changes of P-wave velocity and unit weight of the specimen during drying.
Fig.4 Schematic diagram of the set up of a specimen in the chamber B for
high pressure.
得られた応力・軸ひずみ線図を
Fig.6
に示す。なお,図では圧 縮応力を正,圧縮ひずみを正として定めている。応力・軸ひずみ 線図においては,応力レベルが低い場合,温度が増加するととも に同様の応力レベルに対してひずみの量が多くなり,応力レベル が高くなって現れる直線部分の傾きもわずかに緩くなっているこついては温度の影響は考慮しないこととした。
5・2 1
軸圧縮試験安山岩と花崗岩を用いた水蒸気環境下における
1
軸圧縮試験の 条件と結果をTable 1
にまとめた。熊本安山岩は16
個の供試体を 用い,チェンバー内圧力を5 × 10 -1 ~ 10 6 Pa
,ひずみ速度を0.68
×
10 -6 ~ 10.3 × 10 -6 /s
とした。北木島花崗岩は14
個の供試体を 用い,チェンバー内圧力は1 × 10 -3 ~ 10 2 Pa
,ひずみ速度は約1
×
10 -6 /s
である。Fig.6 Stress-axial strain curves of uniaxial compression test under atmospheric environment at various temperatures using Kumamoto andesite.
Table 1 Conditions and results of uniaxial compression test.
Fig.7 Uniaxial compressive strength and Young’s modulus at each
temperature.
5
つの供試体についての応力・軸ひずみ線図をFig.8
に示す。な お,図では圧縮応力および圧縮ひずみを正としている。安山岩で の応力・軸ひずみ線図は供試体2
を除いてほぼ直線的であるもの の,花崗岩では低い応力レベルにおいて下に凸の非線形の挙動を 示している。さらに,両岩石ともチェンバー内の水蒸気圧が低く なるとともに破壊強度は高くなっている。熊本安山岩の実験後の破壊形態を示すと
Fig.9
のようである。破壊形態は次の
2
つに大別される。すなわち,①1
つあるいは2
つ のせん断破壊面を持つ破壊と②供試体の表面剥離を伴う破壊である。
Table 1
にはその破壊形態を数値で区別して示している。①と②の破壊形態が見られる供試体の中でほぼ同じ水蒸気圧で行われ た供試体
8
と9
の強度を比較してみると,形態②の方が形態①よ り約11%
小さい。これは,巨視的破壊前に表面剥離が発生し,有 効断面積が減少した結果,強度が小さくなったと考えられる。な お,花崗岩においては,破壊形態②が観測されることが少なかっ たので,破壊形態①について示している。次に,両岩石において破壊強度の
50%
の応力における接線ヤン グ率E
と水蒸気圧の関係を示すとFig.10
のようである。安山岩お よび花崗岩ともに,水蒸気圧の影響はほとんど見られずほぼ一定 の値を示し,その値は熊本安山岩では約16GPa
,北木島花崗岩では約
44GPa
である。このように水蒸気圧の変化によってヤング率はあまり変化しないことが明らかとなった。
Fig.8 Stress-axial strain curves of uniaxial compression test : (a) Kumamoto andesite ; (b) Kitagishima granite.
Fig.9 Failure of specimen : (a) Failure with 1 or 2 shear planes ; (b) Failure with tension failure and shear planes.
(a) (b)
Fig.10 Young's modulus with the water vapor pressure.
Table 2 Conditions and results of Brazilian test.
5・3 圧裂試験
19
個の安山岩供試体の圧裂試験の条件と結果をTable 2
にまと めた。チェンバー内圧力は4 × 10 -2 ~ 10 6 Pa
,変位速度は約4.6 × 10 -5 mm/s
である。5
つの供試体の応力・変位線図をFig.11
に示す。なお,図では引張応力および圧縮変位を正としている。チェンバー の内と外の圧力差は
10 3 Pa
であるので,試験開始時にはその差圧 分の応力が供試体に作用している。そこで,チェンバーの寸法を 考慮して差圧に対応する荷重を求めて供試体に作用している引張 応力を算定すると約1.7MPa
であったので,Fig.11
での応力は変位 が零のときにこの値となっている。変位の増加とともにほぼ線形に応力は増加し,水蒸気圧が異 なっていても,その応力履歴に大きな差はない。しかし,引張強 度には水蒸気圧の影響が見られ,
1
軸圧縮試験と同様に水蒸気圧 が低くなると引張強度は大きくなっているようである。6.考 察
熊本安山岩と北木島花崗岩の水蒸気環境下における
1
軸圧縮強 度S
cと水蒸気圧p
との関係を両対数グラフでFig.12
に示す。まず,安山岩では
2
つの破壊形態が観測されたので,それぞれ の破壊形態ごとにマークを代えてプロットしている。水蒸気圧が減少すると
S
cが増加している。また,それぞれの結果に最小二乗 法を適用して直線近似した直線の傾きはともに- 0.04
で等しい。式
(5)
に従うと,直線の傾きは応力腐食に関係しており,破壊形 態によって破壊強度は異なるものの,その傾きが等しいため内部 での応力腐食の程度はほぼ同様であると考えられる。一方,北木島花崗岩においては,結果はわずかにばらついてい るが,安山岩と同様に一本の直線で表すことができる。この直線
の傾きは
- 0.016
であり,応力腐食の程度は熊本安山岩に比較して小さいことがわかる。
Fig.12
に示した近似直線によると,水蒸気圧が減少すると1
軸圧縮強度
S
cは限りなく増加することになるが,実際には,無水環 境のインタクトな岩石の強度に漸近すると考えられる。両岩石の 近似式は次のように書くことができる。………
(6)
ここで,S
c0はp = 1Pa
のときの岩石の1
軸圧縮強度である。また,N
cは直線の傾きであり,式(5)
と比較して応力腐食指数n
を求め ることができる。Fig.12
によると,1
軸圧縮試験における応力腐食 指数は,熊本安山岩で24
,北木島花崗岩で62
であった。次に,圧裂試験における熊本安山岩の引張強度
S
tと水蒸気圧p
の関係を
Fig.13
に示す。実験結果はわずかにばらついているが,1
軸圧縮強度と同様に水蒸気圧の減少に伴って引張強度が増加し ており,次式で近似することができる。………
(7)
ここで,S
t0はp = 1Pa
のときの岩石の引張強度である。また,N
t は直線の傾きであり,引張強度も式(5)
に従うと考えると,N
tか ら引張強度の応力腐食指数を求めることができる。Fig.13
による と,安山岩の圧裂試験での応力腐食指数は58
であり,1
軸圧縮試 験のそれと比較すると大きい。これは圧裂試験による引張強度と 比較して1
軸圧縮強度の方が水蒸気に影響されやすいようである が,さらに多くの実験データを積み重ね,検討することが必要で あろう。さて,水蒸気圧を変化させて行った他の研究者の実験結果
19)
27) 28)
と本論文で得られた実験結果(1
軸圧縮試験における安山岩は
Type
①)
を併せて示すとFig.14
のようである。図中の数字は式(5)
に従って求めた応力腐食指数である。他の研究者の結果は2
ま たは3
つのプロットを直線近似して応力腐食指数を求めたが,広 い範囲で水蒸気圧を変化させた本研究での実験結果も同様に直線 近似が可能であり,式(5)
の妥当性を確認できたと考えられる。主に石英と長石で構成されている熊本安山岩の
1
軸圧縮強度にlog S
c= − N
clog p + log S
c0
log S
t= − N
tlog p + log S
t0
Fig.13 Relationship of tensile strength and water vapor pressure.
Fig.12 Relationships of uniaxial compressive strength and water vapor pressure.
Closed and opened circles represent the results of failure type ① and type
② respectively.
Fig.11 Tensile stress-displacement curves of Brazilian test using
Kumamoto andesite.
おける応力腐食指数は石英のそれにほぼ等しい。一方,北木島花 崗岩の応力腐食指数は
Charles 19)
が求めた花崗岩のそれに比較す ると大きいことがわかる。また,他の研究者のDT
試験によって 求められた応力腐食指数と比較すると,熊本安山岩の応力腐食指 数はWaza et al. 4)
が湯河原安山岩を用いて得られたそれ( n = 26)
と ほぼ一致し,北木島花崗岩の応力腐食指数は奈良ら29)
によって行 われた稲田花崗岩のそれ(
平均n = 58)
とよい一致を示している。さらに,Sano et al.
24)
,John30)
,Peng31)
が応力速度やひずみ速度 を変化させて,砂岩,花崗岩,大理石などを用いて行った1
軸圧 縮試験から求められた応力腐食指数は32
~62
であった。以上の ように,本実験結果はこれらの結果と矛盾せず,本実験の妥当性 を示していると考えられる。さて,高レベル放射性廃棄物の地層処分施設などの長期安定性 を検討するためには数千年後の岩盤強度を評価する必要がある。
そこで,空洞周辺岩盤の応力状態が長期間変化しないと仮定する と,周辺岩盤はクリープ載荷が行われていると考えられる。佐野
10)
は岩石に作用している応力 と破壊に至るまでの時間t
の関係 を応力腐食指数を用いて次式で表している。……… (8) ここで,
B
は定数である。そこで,上式に基づいて応力腐食による長期強度について検討 する。まず,ある岩石を用いて数時間から数日間の短期間のクリー プ試験を行い,その結果を
Fig.15
のようにプロットする32)
。この 岩石の応力腐食指数n
が既知である場合,その点を通って傾き- n
の直線を描くと,その直線が応力腐食に従う長期強度となる。こ の直線を用いると,求めたい期間t *
の強度は図の矢印のようにS
c*
として評価することができる。そこで,本研究で実施した熊本安 山岩と北木島花崗岩の1
軸圧縮試験を短期間のクリープ試験と仮 定しよう。すなわち,クリープ応力を1
軸圧縮強度,破壊までの 時間を1
軸圧縮試験に要した時間と仮定してFig.15
の黒丸のよう にプロットする。この結果から1000
年後の安山岩と花崗岩の強度 を評価するとそれぞれ63.7MPa
と129.7MPa
となった。これは現 在の1
軸圧縮強度のそれぞれ75%
と89%
である。さらに,Sano
33)
によると,ダイレーションひずみがある臨界値 に達したときに,岩石の最終破壊が発生するとしており,このと きクリープ応力を ,最終破壊までの時間をt
cとすると……… (9) が成立する。したがって,クリープ期間で岩石周辺の水蒸気圧環 境が変化すると破壊までの時間も変わる。たとえば,水蒸気圧が 最初の環境の
1/10
になると破壊までの時間は10
倍になることが わかる。したがって,最終破壊までの時間を長くするためには岩 石の周辺環境の水蒸気圧を低く保つことが必要である。上記の検討は応力腐食の影響を考慮した長期強度の評価である が,実際にはより複雑な挙動を示すと考えられるので,今後引き 続き研究を行う予定である。また,水以上に応力腐食を促進させ る物質を発見することができれば,短時間の実験で長期強度の予 測も可能であると考えられるが,これに関しては今後の課題であ る。
7.結 言
水蒸気圧が岩石の強度特性に及ぼす影響を明らかにするために 熊本安山岩と北木島花崗岩を用い,様々な水蒸気圧の下で
1
軸圧 縮試験および圧裂試験を行い,次のような結果が得られた。(1) 熊本安山岩と北木島花崗岩で行われた 1
軸圧縮試験の結果,水蒸気圧の変化によるヤング率の変化はほとんどないが,1 軸圧縮強度には大きく影響を与え,水蒸気圧が減少すると強度は 増加することが明らかとなった。
(2) 熊本安山岩を用いた圧裂試験では,1
軸圧縮試験と同様に引張強度に対して水蒸気圧の影響が見られ,水蒸気圧が減少する とともに強度が増加することが明らかとなった。
(3)
1軸圧縮強度S
cおよび引張強度S
tと水蒸気圧p
の関係はと表されることを明らかにした。ここに,
N
c ,N
tは直線の傾きで ある。(4)
1軸圧縮試験から得られた結果を上式で近似し,その結果 と式(5)
を比較して求めた応力腐食指数は,熊本安山岩で24,北
木島花崗岩で62
であった。一方,熊本安山岩の圧裂試験結果から 得られた応力腐食指数は58
であり,1
軸圧縮試験のそれと比較す ると大きい。(5) 式 (8)
に基づいて短期間のクリープ試験の結果から応力腐食による岩石の長期強度の予測法を示し,熊本安山岩および北木