氏 名 授 与 し た 学 位 専攻分野の名称 学 位 授 与 番 号 学位授与の日付 学位授与の要件
学位論文の題目 論 文 審 査 委 員
栗田 恵理佳 博 士 歯 学
博甲第6385号 令和3年3月25日
医歯薬学総合研究科機能再生・再建科学専攻
(学位規則第4条第1項該当)
水素混合気泡液の開発とマウス培養細胞への影響に関する研究 久保田 聡 教授 仲野 道代 教授 小橋 基 准教授
学位論文内容の要旨
【緒 言】
水素は直接的あるいは間接的に抗酸化作用を有していることから、酸化ストレスを減少させる効果を有し ていることが知られている。水素は抗酸化作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、抗アポトーシス作用など の作用があることが報告されている。臨床的には、様々な病態に対する水素の効果が報告されており、今後、
水素療法は発展する可能性が示唆されている。水素を生体に作用させるには、主に水素ガスを吸入する方法 と水素水を飲水する方法がある。水素ガスを吸入する方法については投与環境が限定されており、また、水 素水を飲水する方法では、長時間持続的に作用させることは困難であり、有効な水素量を組織に供給できる かどうかが課題である。そこで、水素ガスを含有した気泡液を水素のデリバリー担体として開発し、その物 性と培養細胞への影響を検討した。
【材料と方法】
先行研究に準じ、加温した緩衝液に界面活性剤とゲル化剤を混入し、均一に溶解するまで撹拌し、粘性気 泡液製造装置を用いて、気体をSPG膜に通気させて気泡液を作製した。気体には、コントロール混合ガス(窒 素75.1%+酸素19.9%+二酸化炭素5%)とそれに水素を加えた水素混合ガス(窒素73.8%+酸素19.9%+二 酸化炭素5%+水素1.3%)を用い、それぞれのガスを含有した気泡液をコントロール混合気泡液および水素 混合気泡液とした。
気泡液の物性の評価として、気泡液の投影像を画像解析を行うことで、気泡径の範囲と平均気泡径、および 気泡のボイド率を算出し、経時的変化を調べた。また、室温での水素混合気泡液の放出水素濃度を高感度可 燃性ガス検知器で測定した。さらに、水素混合気泡液から水相に溶解した水素濃度を生体ガス測定システム を用いて測定した。また別に、培養用シャーレに気泡液を入れ、37℃に保温した状態で、シャーレ面積に対 する気泡の占有率を、画像イメージ解析ソフトを用いて算出した。
酸化ストレスによる培養細胞(RAW264.7)の生存率に対する水素混合気泡液の影響を調べるために、
細胞に過酸化水素水を加え、コントロール混合気泡液または水素混合気泡液を添加し、24時間後の細胞生 存率を比較した。さらに抗酸化作用を証明するために、培養細胞にtert-ブチルヒドロペルオキシド(TBH
P)を加え、コントロール混合気泡液または水素混合気泡液を添加し、ROS産生細胞の割合をフローサイト
メトリー解析を用いて比較した。
統計学的分析には、two-way analysis of variance (ANOVA)およびBonferrroni’s multiple compar isons test、またはone- analysis ANOVAおよびTukey’s multiple comparisons testを用いた。有意水 準は5%未満とした。
【結 果】
水素混合気泡液とコントロール混合気泡液の平均気泡径は、経時的に小さくなる傾向で、ボイド率は、
4時間後までは維持されていたが、1週間後には気泡は消失していた。水素混合気泡液から放出された水素 の濃度は作製後10分でピークになり、その後徐々に放出量は減少していたが、短くても60分間は放出して いた。水素混合気泡液から水相に溶解した水素濃度は、10分後が最も高く、その後徐々に低下したが、90 分後までは水素濃度は大気中より高かった。水素混合気泡液は、37℃で保温状態で10分後には、シャーレ 上の約70%の占有率になっており、気泡は徐々に崩壊し、120分後には10%程度まで低下していた。水素 混合気泡液とコントロール混合気泡液の両群間で気泡残存率に有意差は認められなかった。
過酸化水素水による酸化ストレスによる培養細胞に対して、水素混合気泡液を添加した細胞は、コント ロール混合気泡液を添加した細胞と比較して生存率が有意に高くなっていた。また、TBHPによるROS産 生細胞の割合は、コントロール混合気泡液を添加した細胞と比較して、水素混合気泡液を添加した細胞で は低かった。
【考 察】
本研究で開発した気泡液の特徴として、先行研究のものよりも気泡径が比較的小さく、気泡の保持時間が 短いことが示された。しかし、大量の水素を放出し、接触している水相にも有効な濃度の水素が溶解してお り、酸化ストレスによる細胞死を抑制し生存率を高めることが証明された。短時間の作用であっても細胞生 存率を上昇させる作用があったことは、臨床応用する上で、意義のある結果であると考えられた。
【結 論】
持続的に水素を放出する水素混合気泡液を開発した。この水素混合気泡液を過酸化水素などによる酸化 ストレスを負荷した培養細胞に作用させた結果、抗酸化作用を示し、細胞生存率を高めた。よって、この水 素混合気泡液は、局所的に水素を作用させる担体として、皮膚や口腔粘膜に応用することが可能ではないか と示唆された。