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3.1 はじめに

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3.1 はじめに

前章において,表層からの硬さ分布から,せん断ひずみ層の深さを測定した.その結果,中心部と 比較して表層部の硬さが大きいこと,せん断ひずみ層の深さが線径によらず一定であることを示した.

これらの知見から,せん断ひずみ層は線材の引張り強さに影響を与えることが考えられる 1).また,

せん断ひずみ層の深さが一定であることから,線径が細くなるほど,せん断ひずみ層が占める面積割 合が増加し,せん断ひずみ層が引張り強さに与える影響も大きくなることが考えられる.そこで,本 章では,せん断ひずみ層が線材の引張り強さに与えている影響を検討することにした.

実際にせん断ひずみ層を除去した場合の引張り強さの推移から,せん断ひずみ層の引張り強さを算 出する方法を考案した.せん断ひずみ層除去方法として電解研磨に着目し,細線材用の引張り試験機 も作成した.3.2節では,それらの方法について詳述した.3.3節では,減面率16%における1パス伸 線材のせん断ひずみ層の引張り強さについて説明した.3.4節では,せん断ひずみ層以外に線材の引張 り強さに影響を与える要因であると考えられる,ひずみ時効および残留応力とせん断ひずみ層との関 係について言及した.3.5節では,せん断ひずみ層が線材の引張り強さに与える影響と線径の関係を検 討した.最後に3.6節で本章を総括している.

3.2 実験方法

せん断ひずみ層が材料の引張り強さに与える影響を検討するには,表層にせん断ひずみ層を持つ線 材と,それを除去した線材の引張り強さを比較することが最適であるといえる.そこで,伸線した線 材のせん断ひずみ層を徐々に除去しつつ,引張り試験する方法を考案した.以下に,この方法を説明 する.

3.2.1 せん断ひずみ層の除去方法について

せん断ひずみ層の引張り強さを測定するためには,せん断ひずみ層の有無以外の条件(例えば内部 組織など)は全く同じである供試材を準備することが重要である.そのためには,伸線した線材のせ ん断ひずみ層(表層部)を内部組織変化をともなわずに除去することが必要である.一般的な材料除 去方法の一覧をTable 3.1に示す.大別して,機械的,物理的,化学的の3種類がある.まず,細線材 では,幾何学的寸法が小さいために,切削・研削などの機械的な除去方法は適用できない.つぎにFIB

(集束イオンビーム)による物理的除去は,除去量がナノオーダーの深さで制御できるという利点が ある.しかし,本実験のように数十μm オーダーの深さを除去する場合には,加工時間がかかり過ぎ てしまう.また,FIB は平面を対象としているため,線材表面のように曲面を加工する場合には,線 表面全体を均一に除去することが困難であるなどの点から本実験には不適当である.最後に化学的除 去について検討する.主な方法として,化学研磨と電解研磨がある.両者とも同じ原理で材料を除去 する方法である.このうち,電解研磨法では,付加する電圧を制御することによって,研磨量の制御 が容易である.また,化学研磨では,研磨状態のわずかな違いによって,研磨中であっても刻々と材 料と研磨液の電位差が変化し,同時に研磨量も変化してしまう.一方,電解研磨では電位差を固定す るので,研磨量の変化がなく安定した研磨が可能である.以上の観点から,本実験では電解研磨法を 用いることにした.

(2)

Table 3.1 Method of removing surface layer

Genre

Mechanical

Physical

Chemical

Method Grinding Polishing

Feature

Chemical Polishing Electro Polishing

Difficult to be used for micro-order specimen

Remove material with nano-order Focused Ion Beam

Difficult to remove surface layer of wire evenly

Easier to control removed quantity than chemical polishing

Polishing is faster than chemical polishing Remove surface layer of wire evenly Genre

Mechanical

Physical

Chemical

Method Grinding Polishing

Feature

Chemical Polishing Electro Polishing

Difficult to be used for micro-order specimen

Remove material with nano-order Focused Ion Beam

Difficult to remove surface layer of wire evenly

Easier to control removed quantity than chemical polishing

Polishing is faster than chemical polishing Remove surface layer of wire evenly

本実験では,電解液としてリン酸と硫酸の混合液を使用した.混合比は,体積比でリン酸と硫酸が それぞれ 9:1 の割合である.電解研磨中では,陰極に鉛,陽極に試験サンプルである SWRM6を設 置した(Fig. 3.1 参照)23. リン酸の電離を式(3.1)に,陰極と陽極での反応を式(3.2),(3.3)

に示す.

Dissociation bath

e - e -

Fe 2+

Fe 2+

H

+

H

+

H

+

H

+

H

2

SWRM6 Pb

Dissociation bath

e - e -

Fe 2+

Fe 2+

H

+

H

+

H

+

H

+

H

2

Dissociation bath

e - e -

Fe 2+

Fe 2+

H

+

H

+

H

+

H

+

H

2

Dissociation bath

e - e -

Fe 2+

Fe 2+

H

+

H

+

H

+

H

+

H

2

SWRM6 Pb

Fig. 3.1 Electro polishing method

4H

3

PO

4

→ 12H

+

+4PO

43-

(3.1)

12H

+

+12e

-

→ 6H

2

(3.2)

4PO

43-

+4Fe → 2Fe

2

P

2

O

7

+ 12e

-

+ O

2

(3.3)

(3)

上式からわかるように陰極では水素が,陽極では酸素が発生する.陽極で発生する酸素は気泡とな って試料に付着し,研磨を抑制する.したがって,電解研磨中は気泡を試料表面から除去する必要が ある.また,研磨時間が経過すると,重力の影響を受けて,電解液中のイオン濃度が下方で濃く,上 方で薄くなり,鉛直方向で不均一になる.線材を鉛直に設置した場合,気泡とイオン濃度の影響で線 材がテーパ状になり,不均一な研磨となってしまう(Fig. 3.2 参照).

Polished unevenly

High density of ion Bubble

Fig. 3.2 Shape of specimen after polishing in normal direction

そこで,本研究ではFig. 3.3 に示す電解研磨機を自作した.イオン濃度の不均一が研磨に与える影 響を除外するため,水平方向に設置し線材をチャック部ごと研磨液を満たした水槽に浸し,さらに線 材に回転を加え,遠心力によって気泡を除去し,気泡の影響も除外した.陰極の鉛板を水槽の底に設 置し,線材を陽極として電解研磨を施した.

Wire Motor

Fig. 3.3 Electro polihing machine

(4)

線材への回転の加え方をFig. 3.4に模式的に示す.モータで軸を回転させてベルトによって同期的 に線材の両端に回転を伝える.線材に加えた回転数は1000 rpmである.

Motor

Wire

Belt Belt

Fig. 3.4 Schematic figure of method for rotating wire of electro polihing machine

Fig. 3.5に線材のチャック方法を示す.前述のように,線材をチャック部ごと研磨液に浸すため,腐

食防止の観点から,研磨液に接する機械部分はステンレス鋼,チャック部はアクリル樹脂を用いた.

チャック部は線材固定用と研磨機固定用の2部品であり,線材固定部では内径のo-リングで線材を固 定した.細線材の場合は同材量のD = 1 mmの線材に接着して研磨機に固定する.研磨機固定部内で は,線材の一端が金属片に接し,機械内部に設置されたリード線によって電流を流した.

o-ring

Positive pole Lead wire

Wire

Fig. 3.5 Schematic figure of method for chucking wire of electro polihing machine

電解研磨法による線径の変化をFig. 3.6に示す.線径測定は拡大鏡を使用して,50 mmに切り出し た線材を回転させつつ,長手方向に20箇所の線径を測定した.研磨前後で線径のバラツキは変化して いないことが確認できる. Fig. 3.7に内部組織の状態を示す.平均結晶粒径dAVEを算出すると,研磨

(5)

前において39.2 μm,研磨後において35.2 μmとなり,電解研磨による内部組織の変化はほとんどない ことが確認された.以上の結果から,本研究の実験に適合した試験片を作成できると判断し,せん断 ひずみ層の除去方法として電解研磨法を利用することにした.

0.15 0.18 0.21 0.24 0.27 0.30

0 5 10 15 20 25

Past time during electro polishing te/min

Diameter after electro-polishing D/mm

Fig. 3.6 Distribution of diameter in each wire after electro polishing

(a) Before electro polishing

300 μm 300 μm

(b) After electro polishing Fig. 3.7 Micro structure before and after electro polishing

Fig. 3.6の結果より研磨量と研磨時間の関係を求めると,式(3.4)に示すようになる.この計算式から

所定線径までの研磨時間を算出し,研磨量を制御した.

t

e

= 2.5・πL

e

(D

02

-D

12

)/I

e (3.4)

t

e

: Polishing time

D

1

 : Diameter after polishing D

0

: Original diameter

I

e

: Amperage during polishing

L

e

: Length of sample

(6)

3.2.2 引張り試験法について

引張り試験には,細線材の強さを高精度で測定するため,高精度低容量ロードセルを用いた引張り 試験機を自作した.この引張り試験では500 N,50 N,5 Nの3種類の容量のロードセルを交換可能な 設計となっており,供試材の線径や,加工履歴などによって最適な容量のロードセルを選択する.本 測定では,500 Nのロードセルを選択した.測定精度は0.19 Nであるため,D = 0.30 mmの線材では,

±2.5 MPaの精度となる.焼鈍した材料の引張り強さが300 MPaであるので,測定誤差としては±1%

未満であり,高精度な測定である.また,変位測定には画像センサを使用した.画像センサは CCD カメラにより映像を取込み,画素変化から変位測定する.引張り試験機の動力は電動モーターであり,

ボールネジによって回転を引張り力に変換している.Fig. 3.8に引張り試験機と画像センサを,Table 3.2に仕様を示す.カメラ倍率を最大にした場合では,測定精度は4 μmとなる.本研究では標点間距

離を3 mm(本実験では標点間距離を線径の約10倍の3 mmとした)としているので,測定可能な最

小ひずみεminは0.0013となる.よって,この測定方法では,弾性域の測定には適していない.しかし,

総ひずみεTが10%以上となる塑性域では問題ないと考え,伸びの測定に利用することにした.

Camera

Test piece Load cell

Motor

Fig. 3.8 Tensile test machine and camera sensor

Table 3.2 Specification of tensile test machine and camera sensor

Load-cell capacity C

L

N

Load-cell accuracy A

L

N

Measurement accuracy of displacement A

d

mm Strain rate

Δε

%/sec

Gage length L

g

mm

500

±0.18

3.00 0.11

±0.004

Load-cell capacity C

L

N

Load-cell accuracy A

L

N

Measurement accuracy of displacement A

d

mm Strain rate

Δε

%/sec

Gage length L

g

mm

500

±0.18

3.00 0.11

±0.004

供試材は前章と同じ低炭素鋼SWRM6を使用した.引張り試験に用いた供試材,および引張り試験 機のチャック部拡大図をFig. 3.9に示す.細線材の引張り試験片では,平行部を作製することが不可 能であるため,チャック部で受けるキズの影響が無視できない.そこで,Fig. 3.9に示すように線材の チャック部は切出した紙に線材を挟んで接着し,チャック部で受けるキズを防止した.また,紙に接 着する部分は線材の一部であり,残りの部分は黒丸で示したように線材に紙を接着しなかった.線全 体を紙で接着すると,引張り試験中に接着剤が剥がれ線材の滑りが発生することがある.これを防止

(7)

するために紙を接着しない部分の線材を直接チャックする方法とした.引張り試験機に装着後,図の 上部分,黒線で示した箇所を切断し,引張り荷重が線材にのみに負荷されるようにした.チャック部 の影響を小さくし,線材のみに負荷されるように工夫しているため,標点間内で破断する確率が高く,

真の引張り特性を測定できる.線材の伸び変位は,図に示したスリット間は標点間とし,先に示した 画像センサを用いて,スリット間距離の変化から測定した.

3.3 伸線加工による表層部の引張り強さ向上

最初に,直径0.30 mmの焼鈍材と,この線材を減面率16%で1パス伸線した直径0.275 mmの線材 において,表層部を除去した場合の引張り強さ推移をFig. 3.10,3.11に示す.このグラフでは縦軸は 引張り強さ

σ

B,横軸は電解研磨後の直径 Dを示している.

Fig. 3.9 Specimen of tensile test and magnification of chuck area

3mm Cut after setting

Gage length Magnification of chuck

A

A’

(8)

Fig. 3.10 Tensile strength of annealed wire after electro-polishing 0

50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3

Surface Center

Diameter after electro-polishing D/μm Tensile strength σB/MPa

D

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3

A B

0.180 mm

Surface Center

Diameter after electro-polishing D/mm Tensile strength σB/MPa

S

D 338 MPa

0.133 mm 0.210 mm

a = 72.8

Fig. 3.11 Tensile strength of 1 pass drawn wire after electro-polishing

Fig. 3.10より,焼鈍材では表層を除去した場合でも,引張り強さに変化が見られず,線全体で一定

の引張り強さであることが確認された.また,この結果より,電解研磨が線材の引張り強さに影響を 与えないことが確認できた.一方,Fig. 3.11 に示すように1パス伸線材では,表層部を除去すると,

引張り強さが減少している.電解研磨による線材の引張り強さ変化はないので,この結果は表層部の 引張り強さが高いため,その表層部を除去したことによって引張り強さが減少したと考えられる.こ れは,前章の硬さ試験の傾向と一致する.焼鈍材と1パス伸線材の結果比較から,表層部における引 張り強さの上昇は,伸線加工によって発現していることが観察された.1 パス伸線材の実験結果にお いて,せん断ひずみ層の深さを検討する.第2章で示したように,硬さ試験の結果では,表層から中 心にかけて硬さ値が減少し,ある深さで硬さ値は一定になった.引張り試験でも中心部の引張り強さ は一定になっていると仮定し,硬さ試験結果と同様にせん断ひずみ層の深さを測定することにした.

(9)

Fig. 3.11に示したグラフにおいて,黒丸で囲んだ部分に着目すると,0.210~0.180 mmの線径で引張 り強さに変化が見られない.しかし,0.133 mmでは,また低下している.そこで,0.210 mmより線 径が太い領域をA領域,と細い領域をB領域と設定して,両方の領域で実験結果を線形近似した.線 形近似式の傾きSと線形近似のR-2乗値をTable 3.3に示す.

Table 3.3 Slop and R2 (coefficient of determine) of interpolating function

2431

886 Slope S

MPa/mm R2value

0.91 Area A 0.92

Area B 0.275 ~ 0.210

0.210 ~ 0.150

2431

886 Slope S

MPa/mm R2value

0.91 Area A 0.92

Area B 0.275 ~ 0.210

0.210 ~ 0.150

R-2乗値についてはどちらも高く,この線形近似が妥当であると判断できる.傾きSに着目すると,

A領域とB領域では,2倍近くも差があることが確認できる.A領域では引張り強さが78 MPa減少し ている.これは,焼鈍材の引張り強さの18.2%に相当する.一方,B領域では,引張り強さが34 MPa 低下し,焼鈍材の引張り強さの7.9%に相当する.このように,A領域とB領域では引張り強さの減少 に大きな差がある.そこで,B部では引張り強さがほぼ一定になっていると考えた.B領域の平均引 張り強さを算出すると,338 MPaとなった.B領域における引張り強さと平均値の差は±15 MPaとな る.この平均値からの振れ幅は線全体の引張り強さの±3.5%となる.Fig. 3.10に示した焼鈍材の結果 では,引張り強さの平均値からの振れ幅は引張り強さの±3.3%に相当するので,引張り試験の測定誤 差もこの程度であると考えられる.したがって,先に計算したB領域の平均引張り強さをを中心部の 引張り強さと仮定した.A領域の近似線とこの値の交点までをせん断ひずみ層と考え,引張り試験に よって測定されたせん断ひずみ層の深さを便宜上 2λaと定義した.この線図は横軸に直径を取ってい るため,実際のせん断ひずみ層の深さλaはこの値の半分となる.Fig. 3.11から交点までの値を算出し た結果,2λa = 72.8 μmとなった.したがって,実のせん断ひずみ層の深さλaは36.4 μmとなる.引張 り試験で測定したせん断ひずみ層の深さは硬さ試験の測定結果とほぼ一致している.

Fig. 3.9の実験結果から,伸線加工された細線材の引張り強さ上昇には,せん断ひずみ層の引張り強

さが大きく寄与していることが考えられる.そこで,実験結果から,除去されたせん断ひずみ層の引 張り強さを計算することにした.計算式を(3.4)に示す.Fig. 3.12に式中のパラメータを図示する.

σ

Β

P

1

-P

2

πλ(D-λ)

=

σ

Β

P

1

-P

2

πλ(D-λ)

=

(3.4)

P1: Maximum tensile force before polishing

σ

B: Tensile sterngth

P2: MaximumTensile force after polishing D: Diameter before polishing

λ

: Polished layer depth

(10)

λ D

λ D

λ D

P2 P2 P1

P1

(b) After polishing (a) Before polishing

Fig. 3.12 Calculation of tensile strength of removed area

式(3.4)による計算結果をTable 3.4に示す.Table 3.4より,表層から深さ20 μmまでの引張り強さは

601 MPaとなり,焼鈍材の2倍,1パス線線材の全体強度の1.4倍に相当する引張り強さを示している.

また,20~35 μmの層では引張り強さが394 MPaとなり,Fig. 3.11の結果から中心部の引張り強さを 推定すると前述のように338 MPaとなる.

Table 3.4 Tensile strength at surface layer in 1-pass drawn wire

0

6.5 610

6.5~20.0 601

20.0~32.5 394

32.5~50.0 372

Tensile strength

σB

MPa

Depth from surface λ mm

0

6.5 610

6.5~20.0 601

20.0~32.5 394

32.5~50.0 372

Tensile strength

σB

MPa

Depth from surface λ mm

Fig. 3.13に除去部の引張り強さ推移を示す.このように,除去した部分の引張り強さに関して,最

表層が最も高く,表層から中心にかけて低くなる傾向を示す分布となっている.Fig. 3.10に示したよ うに,伸線前の焼鈍材の引張り強さは300 MPaである.1パス伸線後の中心部の引張り強さは338 MPa であり,伸線前と比較して10%の上昇となっている.一方で,線全体の引張り強さは420 MPaであり,

40%も上昇していることになる.この事実から,全体の引張り強さ向上に対するせん断ひずみ層の影 響が大きいと考えられる.

(11)

0 100 200 300 400 500 600 700

0 10 20 30 40 50 60 70 80

Tensile strength

Polished area Radius = 0.137 mm

Drawing direction

Diameter = 0.275 mm λ

σB/MPa

Layer depth from surface λ/μm

Fig. 3.13 Tensile strength of removed area

3.4 付加的せん断ひずみ層の効果とひずみ時効・残留応力の関係

通常の伸線加工において,線材引張り強さに影響を与える因子として,ひずみ時効と残留応力が考 えられている.そこで,以下において,せん断ひずみ層とひずみ時効と残留応力の関係を検討した.

3.4.1 ひずみ時効の影響について

塑性加工を受けた材料は明確な降伏点を示さなくなるが,塑性加工後,長時間放置すると再び降伏 点を示すようになる.同時に降伏点が上昇することが確認されている.この現象がひずみ時効である.

ひずみ時効のメカニズムは塑性加工によって,炭素などの固着から外れて活動した転位に時間が経つ ことによって,再び炭素などが固着して降伏現象が再現すると説明されている4)5).ひずみ時効は降 伏応力だけでなく,引張り強さにも影響していることが確認されている 6).ひずみ時効は温度が高い ほど,早く進行することが確認され,温度と時間の関係を表した計算式が報告されている 6).たとえ ば,室温で1週間程度のひずみ時効が,373 Kの状態で発現するのに必要な時間をその計算式によっ て推定すると30 ~ 60 minになる.このようにわずか100 Kの温度上昇でも,ひずみ時効の速度は 200倍になる.高速の伸線加工では一般的に473 Kにまで線材の温度が上昇することが知られている

7).そのさいの時効時間は1 min未満と推定される.また,特に摩擦が加わる表層部の温度は急激に上 昇し,ひずみ時効も起こりやすくなると考えられる.したがって,細線材表層部の引張り強さ向上に 対するひずみ時効の影響を検討し,せん断ひずみ層の効果と峻別することが重要である.

そこで,0.1 m/minの低速度で伸線し,発熱を抑えてひずみ時効も抑制した線材を用意した.この線

材に対して,前節と同様に,表層部を電解研磨で除去しつつ,引張り試験した.表層部除去前後の線 材の公称応力-公称ひずみ線図をFig. 3.14に示す.

(12)

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450

0 2 4 6 8 10 12 14

0.237 mm Nominal stress

σ

N/MPa

0.273 mm 0.265 mm

Nominal strain

ε

N (%)

Fig. 3.14 Nominal stress – strain diagram of drawn wire at low speed drawing as surface layer was thinned by electro-polishing

この結果より,ひずみ時効を抑えた場合でも,表層部を除去することにより,引張り強さが減少す ることが確認され,表層部の引張り強さが高く,中心部にかけて引張り強さは低下していることが観 察される.この結果は,前節の1パス伸線材の結果と一致している.したがって,ひずみ時効が発生 していない線材においても,せん断ひずみ層の効果によって,線全体の引張り強さが向上していると 考えられる.表層部の引張り強さ上昇に対してひずみ時効の影響が小さいことが確認された.

3.4.2 残留応力の影響について

伸線加工中の表層部と中心部における変形は異なっている.そのため,加工によるひずみは表層か ら中心部にかけて不均一になり,残留応力が発生する 8).残留応力は降伏点に影響を与えることが報 告されている 9).引張り強さと残留応力の関係を報告した研究例は少ないが,引張り強さは降伏点と 異なり十分な塑性変形を経るため,弾性域の現象である残留応力が引張り強さに影響を与えることは 考えにくい.仮に軸方向残留応力がせん断ひずみ層の引張り強さに影響をおよぼす場合について検討 すると,伸線材の表層部では引張り残留応力が発生しているため,残留応力がない場合と比較してせ ん断ひずみ層の引張り強さは低下する傾向を示すと考えられる.したがって,残留応力がある線材で はせん断ひずみ層による線全体の引張り強さ上昇効果が小さくなると考えられる.このような観点か ら,残留応力が引張り強さに与える影響,およびせん断ひずみ層の効果と峻別することは重要である.

そこで,残留応力が細線材の表層部の引張り強さにおよぼす影響を検討するため,残留応力のある 伸線材と残留応力を除去した焼鈍材を対象とし,その結果を比較・検討した.通常の焼鈍では残留応 力を除去できるが,再結晶により内部組織が変化してしまい,引張り強さにも影響をおよぼしてしま う.また,再結晶の結果として表層部に発生した付加的せん断ひずみ層も消滅してしまう.本研究に おける残留応力除去焼鈍では,材料の金属組織を変化させず,付加的せん断ひずみによる金属組織を 保存したままで,残留応力のみを除去することが重要である.そのため,再結晶温度よりも低い温度 で発生する回復を利用することにした.本実験で検討した焼鈍条件をTable 3.5に示す.

(13)

Table 3.5 Annealing condition of residual stress relief annealing

残留応力除去は公称応力-公称ひずみ線図から判断した.一般的に伸線加工を受けた鉄鋼系材料は明 瞭な降伏点を示さない.この現象の一つの要因として,残留応力の影響が考えられる.線材に発生す る残留応力は,表層部では引張り,中心部では圧縮となっている.このような線材を引張り試験する と,引張り残留応力の影響で表層部が中心部より先に降伏する.その後,降伏は徐々に中心に向かっ て伝播していく.このように,降伏が連続的に発生するため,公称応力-公称ひずみ線図では明確な降 伏点を示さない形状となる.そこで,熱処理後の線材が,明確な降伏現象を示しはじめた場合,残留 応力が除去できたと考えた.残量応力除去焼鈍前後の公称応力-公称ひずみ線図をFig. 3.15に示す.

Annealing temperature T

a

K Annealing time t

a

h Condition 1

Condition 2 Condition 3

673 723 773

3

Annealing temperature T

a

K Annealing time t

a

h Condition 1

Condition 2 Condition 3

673 723 773

3

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450

0 5 10 15 20 25 30 35

Stress relieved wire (773 K,3 h)

Original wire before drawing Stress relieved wire (723 K,3 h)

Stress relieved wire (673 K,3 h) 1-pass drawn wire (Re = 16%)

Nominal stress

σ

N /MPa

Nominal strain

ε

N (%)

Fig. 3.15 Nominal stress-strain diagram of stress release wire

Fig. 3.15より,どの焼鈍条件においても,焼鈍を施すことにより,1パス伸線材に比べて,若干の

伸びの回復が観察される.また,焼鈍後の材料では,わずかな降伏伸びが見られる.つぎに,焼鈍条 件による強度変化を検討する.Fig. 3.16に加熱温度Taとその条件における引張り強さσBの関係を示す.

と加熱温度Taが673 Kの場合では,強度の低下がほとんど見られない.Ta = 723 Kの場合では,若干 の引張り強さ低下が確認された.Ta = 773 Kでは大きく強度が減少してしまっている.本実験では強 度が変化するのを極力抑える必要があるため,673 Kの焼鈍条件を第一と考えた.

(14)

300 310 320 330 340 350 360 370 380 390 400

0 200 400 600 800 1000

Temperature during annealing Ta/K Tensile strength σB/MPa

Fig. 3.16 Relationship between tensile strength and temperature during annealing

さらに,673 Kにおける焼鈍前後の内部組織の観察結果をFig. 3.17に示す.平均結晶粒径dAVEを算 出すると,焼鈍前において31.0 μm,焼鈍後において32.0 μmとなる.したがって,観察結果では,焼 鈍後に新たな結晶成長は起っておらず組織変化は確認できない.これにより,内部組織を変化させず に残留応力がほぼ除去できたものとみなした.

(a) Before annealing (b) After annealing

Fig. 3.17 Micro structure of residual stress released wire

前節までと同じ低炭素鋼SWRM6の線材を減面率Re = 16% (D = 0.300 mm → D = 0.275 mm)で伸線 した後に,先に定めた焼鈍条件,加熱温度Ta = 673 K,保持時間ta = 3 hで熱処理をした.残留応力の 除去前後における,全体面積の28%に相当する面積の表層部を除去した場合としない場合の公称応力

‐公称ひずみ線図をFig. 3.18,3.19に示す.

(15)

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

0 5 10 15 20 25 30

0.231 mm 0.273 mm

Nominal strain

ε

N (%) 2. Tensile test after electro-polishing 1. Drawn with 16% reduction Nominal stress

σ

N /MPa

Fig. 3.18 Tensile test result of drawn wire (non-residual stress relieved)

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

0 5 10 15 20 25 30

Nominal strain

ε

N (%)

0.272 mm

0.229 mm 1. Drawn with 16% reduction

2. Stress relief annealed at 673 K and 3 hour 3. Tensile test after electro-polishing Nominal stress

σ

N /MPa

Fig. 3.19 Tensile test result of residual stress relieved wire

実験結果より残留応力のある線材と残留応力を除去した線材の両方において,表層部を除去するに つれ引張り強さが低下していることが確認できる.また,同時に最大伸びも減少していることが観察 される.そこで,表層部除去前後の引張り強さと伸びの減少率を求め,比較することにした.計算し た引張り強さと伸びの減少率を,Table 3.6,3.7に示す.

Table 3.6 Decrease ratio of tensile strength and elongation in drawn wire

Table 3.7 Decrease ratio of tensile strength and elongation in stress relieved wire

0.229 0.272

Tensile strength Elongation Diameter

D mm

Decrease ratio r

d

%

381

428 23.8

18.6

11.0 21.8

σB

MPa

δ%

0.229 0.272

Tensile strength Elongation Diameter

D mm

Decrease ratio r

d

%

381

428 23.8

18.6

11.0 21.8

σB

MPa

δ%

0.231 0.273

Tensile strength Elongation Diameter

D mm

Decrease ratio r

d

%

432 383

12.9 10.0

11.3 22.5

σB

MPa

δ%

0.231 0.273

Tensile strength Elongation Diameter

D mm

Decrease ratio r

d

%

432 383

12.9 10.0

11.3 22.5

σB

MPa

δ%

(16)

残留応力がある線材の場合,表層部の除去による引張り強さの低下は11.3%,伸びの低下は22.5%

である.一方,残留応力を除去した線材の場合,引張り強さの低下は11.0%,伸びの低下は21.8%で ある.

このように,両方の線材において,引張り強さと伸びの低下率がほぼ同じ値を示す.すなわち残留 応力の有無に関係なく,表層部の引張り強さは中心部よりも高く,線全体の引張り強さ向上に貢献し ていると考えられる.前節のひずみ時効に関する検討と,本節の残留応力に関する検討から,伸線材 表層部のせん断ひずみ層における引張り強さ向上に対して,ひずみ時効および残留応力の影響は非常 に小さいことが確認された.

3.4.3 せん断ひずみ層による延性維持効果について

3.4.1節,および3.4.2節の実験結果から,せん断ひずみ層を除去すると,引張り強さだけでなく伸

び値も減少することが確認された.この事実から,中心部と比較してせん断ひずみ層は引張り強さが 高いだけでなく,延性も高いことが考えられる.一般に引張り強さが向上すると延性が大きく低下す るが,上記の結果よりせん断ひずみ層では強度上昇に対する延性低下が小さく,延性維持効果がある ことが注目される.このせん断ひずみ層による延性維持効果も細線であるため,実験結果に顕著にあ らわれたと考えられる.引張り試験後において,せん断ひずみ層を除去しない場合と除去した場合に おいて,線材の破断面を観察した結果をFig. 3.20,3.21に示す.

50 μm (a) Side-view of fracture

50 μm (b) 45 deg angled-view of fracture

50 μm (c) Top-view of fracture

Fig. 3.20 Fracture shape of fine drawn wire with additional shear strain layer

(17)

50 μm (a) Side-view of fracture

50 μm (b) 45 deg angled-view of fracture

50 μm (c) Top-view of fracture

Fig. 3.20 Fracture shape of fine drawn wire without additional shear strain layer

図から確認できるように,カップ形状の延性破面であり,もう一方の破面もカップ形状を示してお り,カップアンドカップの延性破壊であった.破断時に中心部からボイドが発生して破断の起点とな り,中心から表層部にかけて破断が伝播していると考えられる.どちらの破断面も白丸で囲んだよう に中心にディンプルが観察された.このように,中心から表層にかけて破断が進展するため,表層部 の延性が中心部より高い場合は,中心部でボイドが発生した後においても,表層部のみで引張り試験 が進行して最終的な伸び値も大きく観察されると考えられる.表層部の引張り強さ,および延性が線 材の破断ひずみに対して大きく影響すると考えられる.延性が高い場合において,①カップ形状の破 断面の壁面高さが大きくなる,②絞り率の向上,③ディンプルの面積,壁面高さが大きくなる,など の形状が破断面に現れると考えられる.このうち,特に,表層部の延性が高い場合には壁面高さが大 きくなると考えられるので,せん断ひずみ層の除去前後の壁面高さを SEM によって測定することに した.Fig. 3.21に本研究で測定した壁面高さhfのスケッチを示す.本測定では,それぞれ3組の破断 面を測定し,その平均値をTable 3.8に示す.

(18)

hf

Table 3.8 Height of fracture in both wire with and without additional shear starain layer

Height of fracture h

f μm

Wire with additional

shear strain layer

Wire without additional shear strain layer

20 ± 2 10 ± 2

Height of fracture h

f μm

Wire with additional

shear strain layer

Wire without additional shear strain layer

20 ± 2 10 ± 2

Fig. 3.21 2-dimentional schematic figure of fracture shape of fine drawn wire

カップの壁面高さを測定すると,せん断ひずみ層を除去しない線材では20 ± 2 μm,せん断ひずみ 層を除去した線材では10 ± 2 μmとなった.この結果からも,せん断ひずみ層がある場合の線材で は壁面高さが高く,より延性が高いことが考えられる.しかし,壁面高さの違いだけでせん断ひずみ 層の延性維持効果を全て説明することは困難であり,さらに,引張り試験におけるせん断ひずみ層の 断面積減少,つまりせん断ひずみ層の絞り率,ボイドの進展速度などを検討する必要があり,これら の点は今後の課題となる.

このように延性を維持したまま引張り強さを上昇させる方法としては,結晶粒微細化が考えられる

10)11).したがって,せん断ひずみ層では結晶粒が細かく分断化されていることが予想できる.この点 については第5章において詳述する.

3.5 せん断ひずみ層が引張り強さに与える影響の線径による相違

前章の硬さ試験の結果より,せん断ひずみ層の深さは線径によらず一定であることが確認できた.

よって,線径が細くなるほど,その占める面積割合が相対的に増加し,線材の引張り強さに与える影 響が変化すると考えられる.本節ではせん断ひずみ層が引張り強さσBに与える影響と線径の関係につ いて検討する.そこで,太線材と細線材を対象にして,表層部を除去しつつ引張り試験し,引張り強 さの推移を比較することにした.低炭素鋼SWRM6の直径1.00 mm,0.30 mmの線材を,加熱温度Ta =

1073 Kで,保持時間ta を太線材の場合は30 min,細線材の場合は10 minで焼鈍した.保持時間を線

径によって変化させたのは,単純に体積が異なるため,焼鈍の効果が変わってしまうのを防ぐためで ある.その後,減面率Re = 16%で伸線し,表層部を除去しつつ引張り強さσBを測定した.その結果を Fig. 3.22,3.23に示す.

(19)

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

0.20 0.21 0.22 0.23 0.24 0.25 0.26 0.27 0.28 Diameter after electro polishing D/mm

Tensile strength

σ

B/MPa

1. Drawn with 16% reduction 2. Tensile test after electro polishing

Surface

Fig. 3.22 Tensile strength in each diameter after electro-polishing (0.275mm wire)

Fig. 3.23 Tensile strength in each diameter after electro-polishing (0.92mm wire) 0

50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

0.84 0.85 0.86 0.87 0.88 0.89 0.90 0.91 0.92 1. Drawn with 16% reduction

2. Tensile test after electro polishing

Diameter after electro polishing D/mm Tensile strength σB/MPa

Surface

Fig. 3.22,3.23より,太線材である直径D = 0.92 mm材では,表層部を除去しても引張り強さσB

変化は観察されない.それに対して,細線材である直径D = 0.275 mm材では,表層部を除去するにつ れて引張り強さが減少する.したがって,細線材の場合では表層部の引張り強さが中心部より高く,

線全体の引張り強さに対して大きく影響していることが考えられる.一方,第2章で説明したように,

硬さ試験によるせん断ひずみ層の測定では,D = 0.92 mm材においてもせん断ひずみ層が観察された.

しかし,表層部を除去した引張り試験では,引張り強さの減少は観察されなかった.これらの結果よ り,太線材ではせん断ひずみ層が線全体の引張り強さ上昇にに与える影響は小さいが,細線材ではそ の影響が大きいと考えられる.

そこで,太線材と細線材において,同じ深さまで表層部を除去した場合の,除去した表層部分が線

(20)

全体に対して占める面積割合を求めることにした.本実験では,太線材,細線材ともに表面から

0.035mmの深さまで表層部を除去した.この状態を模式的に描いた図をFig. 3.24に示す.ここで,除

去した部分が線全体に占める面積割合raを計算した.太線材では除去した部分の面積割合raは14.6%

であるが,細線材の場合は,ra = 44.4 %になる.このように,面積割合raが太線材と細線材の場合で は,3倍近くもの差があることになる.したがって,この面積割合 raの差によって,表層部を除去し た場合の太線材と細線材の引張り強さ推移が異なった傾向を示したと考えられる.

Original area A0

3.6 本章の総括

本章では,低炭素鋼SWRM6の減面率Re = 16%で1パス伸線した線材を対象として,表層部を電解 研磨で除去しつつ引張り試験する方法によって,せん断ひずみ層の引張り強さを測定し,線全体の引 張り強さに与えている影響を検討した.また,線材の引張り強さに影響を与えると考えられる他要因 として,ひずみ時効,および残留応力とせん断ひずみ層の関係を究明した.最後に,細線材と太線材 を対象として,せん断ひずみ層が線材に与える影響の相違を検討した.それらの結果を以下にまとめ る.

(1) 直径D = 0.30 mmの焼鈍材を対象にして,表層部を除去しつつ引張り試験した場合では,表層と

中心部の引張り強さの変化は観察できなかった.一方,減面率Re = 16%で伸線した線材を同様に実験 した場合では,表層部を除去するにつれて,線全体の引張り強さが減少することが観察された.した がって,伸線材では,表層部の引張り強さが大きく向上している.

Fig. 3.24 Area ratio of surface layer in fine and large wire Removed area Ar

0.035 mm ra = 14.6%

0.035 mm ra = 44.4%

(21)

(2) 伸線加工によって,線材表層部の引張り強さは中心部と比較して大きく向上する.D = 0.30 mm の焼鈍材を,Re = 16%で伸線した場合では,表層部の引張り強さσSは610 MPaであり,中心部の引張

り強さσCは338 MPaとなった.σSは焼鈍材の引張り強さ2倍の値を示している.このように,表層

部の引張り強さは高く,線全体の引張り強さを大幅に上昇させていると考えられる.

(3) ひずみ時効を抑制した線材,および残留応力を除去した線材を対象とした場合においても,表層 部を除去するにつれて,引張り強さが減少することが観察された.したがって,表層部における引張 り強さ向上に対する,ひずみ時効,残留応力の影響は非常に小さいといえる.

(4) D = 0.92 mmの1パス伸線された太線材の場合では,表層部を除去しても引張り強さに変化は見

られなかった.一方,D = 0.275 mmの1パス細線材の場合では,表層部を除去するにつれて,引張り 強さが減少した.このように,線径が細くなるほど,せん断ひずみ層が引張り強さに与える影響が大 きくなる.それは,せん断ひずみ層の深さが線径によらず,一定であるので,線全体に対して占める 面積割合が増加することに起因すると考えられる.

参考文献

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(2) 間宮富士雄:化学研磨と電解研磨,(1997),槇書店.

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(6) 添野浩:軟鋼のひずみ時効,塑性と加工,11-112 (1970),367 -376.

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(9) 訓谷法仁,浅川基男:棒鋼・線材の引抜き条件と残留応力の解析,塑性と加工,38-433 (1997),

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(10) 梅本実:強加工によるナノ結晶鉄鋼材料の開発,第53・54回 白石記念講座,日本鉄鋼協会,(2004),

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(11) Shiro Torizuka,Akio Ohmori,S.V.S. Narayana Murty and Kotobu Nagai:Effect of strain on the microstructure and mechanical properties of multi-pass warm caliber rolled low carbon steel,Scr. Mater.,

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