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More Electric Engine 制御技術の実用化研究 Practical Development of Control Technology for the More Electric Engine 森 岡 典 子 航空宇宙事業本部技術開発センター制御技術部 課長 垣 内 大 紀 航空宇宙

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1. 緒    言

航空産業界における航空機およびエンジンの効率向上は, 地球温暖化防止に対する取組みとして重要になっている. 電動化エンジンの促進 ( MEE:More Electric Engine ) は, 航空機の電動化の促進 ( MEA:More Electric Aircraft ) の 一環でシステム化されたエンジン抽気の廃止やフライトコ ントロールの電動化に連携し,エンジンの軽量化や効率の 改善を担う技術である. IHI MEEの研究は,燃料システムの効率化を図るため の制御システムを開発するとともに,高電圧の電動化技術 によって機器の小型・軽量化を実現する.エンジン制御シ ステムの電動化によって地球環境負荷低減や燃費改善が図 られ,客先の要求である運航コストの低減にもこたえるこ とが可能になる. 2. MEE 開発概要 2. 1 開発経緯 本研究では燃料消費率の向上や CO2削減のため,燃料 システム,電力システム,そのほかのエンジン制御システ ム全体に焦点を当てた,MEE 制御技術の実用化に向け研 究を進めている.すでに航空機メーカでは MEA 実用化 のために高電圧電源システムを導入し,電動のエンジン スタータと発電機を兼ねたスタータジェネレータ,電動 アクチュエータ,電動 ECS( 環境制御装置:Environment Control System)を Boeing787( アメリカ:ボーイング 社 )や AirbusA380( フランス:エアバス社 )で実現して いる. MEAは電力へのエネルギーマネジメントの統合化と エンジン抽気レスに特長づけられ,① 燃料消費率の向上 ② 定時出発率の改善 ③ 客室空気の清浄化による乗客満 足度の向上 ④ 保守・点検の利便化,を提供している ( 1 ) MEEは MEA と連携し,エンジンの軽量化や効率の改善 を担う技術である. 2. 2 MEE の効果 ( 1 ) エンジン効率向上 電動モータで駆動する燃料ポンプの回転数を直接 制御し,燃料流量を制御することによって,余剰燃 料を削減する.これによってエンジン抽出馬力を削 減しエンジン効率を向上させる. ( 2 ) 補機用ギヤボックスレス,油圧レス,空気圧レス ポンプ,発電機などは補機用ギヤボックスを介し てエンジン抽出力によって駆動されている.また, エンジン始動は補機用ギヤボックスに搭載された空 気スタータによって行われている.これらの機器の 電動化によって補機用ギヤボックスによる機械伝達

More Electric Engine

制御技術の実用化研究

Practical Development of Control Technology for the More Electric Engine

森 岡 典 子 航空宇宙事業本部技術開発センター制御技術部 課長

垣 内 大 紀 航空宇宙事業本部技術開発センター制御技術部

小 沢 寛 二 航空宇宙事業本部技術開発センターエンジン技術部

関   直 喜 航空宇宙事業本部技術開発センターエンジン技術部

大 依   仁 株式会社 IHI エアロスペース 基盤技術部電子技術室 主幹

More Electric Engine( MEE:電動化エンジンの促進 )は,次世代航空機用のターボファンエンジンへの適用を目指 した制御コンセプトである.現在,当社においても特に中小型向けの高バイパス比ファンエンジンにおいて,研究, 技術開発が開始され,世界一,人と地球に優しいジェットエンジンを目標にしている.本稿では,IHI MEE の技術的 特長,高い市場価値および先進技術の概要について述べる.

The More Electric Engine ( MEE ) is a next generation turbofan engine that will lead engine control for MEA ( More Electric Aircraft ) in the 21st century. Recently, IHI has started investigations and studies in order to meet the challenge of creating “ an ECO-friendly engine for the future. ” This paper overviews the IHI MEE and reveals details of IHI’s “ Green Innovations. ”

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機構,油圧ライン,空気圧ラインを削減する. ( 3 ) 機体空気抵抗の低減 補機用ギヤボックスレスに併せてスタータジェネ レータをエンジン内部に設置することによって,エ ンジンの前面投影面積が減少し,機体の空気抵抗を 低減させる. ( 4 ) 地上におけるアイドル回転数の最適化 地上におけるエンジンテストや地上走行時は,エ ンジン出力の大部分が機体システムで消費される. この負荷変動を吸収するため,エンジン回転数は高 めに設定しなければならない.電力マネジメントで 負荷変動を補えば,エンジン回転数をより低く設定 できる. ( 5 ) 補機整備作業の容易化 電動化によって油圧配管の取付け・取外し作業が 減少し,補機交換時間が短縮できる.また,電動化 によって油圧機器・油圧配管の削減およびドレイン 油の廃棄が減り,環境に優しいクリーンな整備作業 が実現できる. 2. 3 IHI MEE の開発ステップ( 第 1 図 ) ( 2 ) ( 1 ) ステップ 1:電動燃料システム 燃料ポンプの電動化は,従来は燃料ポンプを駆動 していた補機用ギヤボックスに発電機を搭載し,発電 機からの電力によって電動式燃料ポンプを駆動する. さらに燃料を使用した,可変静翼などを駆動する油圧 アクチュエータも電動化する( 第 1 図 - ( a ) ). ( 2 ) ステップ 2:スタータジェネレータと全電動化 全電動化によって補機用ギヤボックスは不要にな り,エンジン抽出力は直接発電機に接続される.発 電機はスタータジェネレータとして,① エンジン始 動 ② 機体電力の発電 ③ エンジン補機電力の発電, の三つの機能を担う( 第 1 図 - ( b ) ). ( 3 ) ステップ 3:組込みスタータジェネレータ スタータジェネレータは,エンジンの内部に組み 込まれる.エンジン補機類の艤ぎ装も分散され,エン ジン投影面積が小さく最も効率を高めたエンジンに なる( 第 1 図 - ( c ) ). 3. IHI MEE の特長 3. 1 燃料システム IHI MEEにおける燃料システムと従来型の燃料システ ムの比較を第 2 図に示す.従来の民間航空機用エンジン で,主に用いられている補機用ギヤボックス駆動の定容積 型燃料ポンプを使用した燃料システムでは,エンジン回転 数に比例してポンプが燃料を吐出するため,必要な燃焼燃 料流量を超える余剰分をバイパスしてポンプ入口に循環さ せる.この再循環はエンジンの抽出馬力を無駄に消費し, 消費したエネルギーで燃料温度を上昇させる.燃料温度が 上昇すると,燃料を冷媒とする燃料冷却オイルクーラの冷 却能力が低下する.これを補うため,ファン空気を冷媒と する空気冷却オイルクーラが必要になる.しかし,空気冷 却オイルクーラはファン空気を外部に排出してファン効率 を低下させ,燃料消費率 ( SFC ) 悪化の要因になる. IHI MEEの燃料システムはギヤポンプ方式の燃料ポン プを電動モータで駆動し,燃料流量をモータ回転数で制 御する.余剰な燃料流量がなくなり,第 3 図に示すとお ( a ) ステップ 1 エンジン補機 電力分配器 機体電力ライン スタータ ジェネレータ ECU イグニッション 燃料ポンプ 潤滑油ポンプ アクチュエータ 電力分配器 機体電力ライン スタータ ジェネレータ ECU イグニッション 燃料ポンプ 潤滑油ポンプ アクチュエータ オルタネータ 発電機 補機用ギヤボックス 機体発電機 油圧ポンプ スタータ ( b ) ステップ 2 ( c ) ステップ 3 ( 注 )    :機械系    :電力系 :開発要素 ECU :Engine Control Unit

第 1 図 IHI MEE の開発ステップ Fig. 1 Steps in development of IHI MEE

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りエンジン抽出力を削減することができる ( 3 ) .さらに, 燃料温度の上昇が抑えられ,燃料冷却オイルクーラの冷 却能力が向上することから,空気冷却オイルクーラによ るファン空気抽出が不要になる.第 4 図にヒートマネジ メントの解析モデルを示す.以上の結果,高効率なエン ジンシステムを提供することが可能になる ( 3 ).これらの IHI MEEによる燃料システムの改善効果を,同様に効率 改善を目指すほかのポンプシステムと比較すると,ポン プ効率において第 5 図に示すとおり可変容量ポンプ ( 4 ) 遠心ポンプなどの方式に比べても高い効率が得られる ( 5 ) すなわち,IHI MEE は最も効率が良く,ヒートマネジメ ントを最適化できる燃料システムである.また,IHI MEE の燃料システムは,従来の燃料計量機構による計量弁,圧 力制御弁などを用いた複雑な機構を必要としないため,燃 料システムがシンプルになり,機器や配管などの削減によ る信頼性・整備性の向上にも貢献する. 燃料システム効率向上による燃料消費率改善効果の試算 を小型エンジンで行った結果 ( 5 ),燃料ポンプ駆動の最適 化によるエンジン抽出力の削減で約 0.4%,燃料冷却オイ ルクーラ削除によるファン空気損失の削減で約 0.6%低減 され,合わせて燃料消費率は約 1%改善した ( 3 ).第 6 図 に IHI MEE ステップ 1 における SFC 改善効果を示す. 3. 2 エンジン性能への影響 3. 2. 1 燃料計量機構レスのエンジン応答性への影響 燃料計量機構内の計量弁,圧力制御弁などによって燃料 計量を行うシステムでは,計量流量の応答性がエンジン回 転数の必要応答時間に比べて極めて速い.一方,IHI MEE は流量をポンプ駆動モータの回転数で制御するため,モー タの加減速応答が燃料制御の応答となる.電動モータはバ ルブ可動部に比べて大きな慣性能率をもつため高速応答に は不利と考えられる.第 7 図にこの評価のため実施した 燃料流量応答性の解析結果を示す. 解析の結果からモータ制御による燃料流量の応答性は, 従来の燃料計量機構による制御と比較して差異がなく,エ ンジン制御に対し十分な応答性をもっていることを確認し た.すなわち,IHI MEE は従来と同等のエンジン制御応 答を実現できると考えられる. 3. 2. 2 電力需要増加のエンジン性能への影響 MEA/MEE化に伴い,航空機の電力需要が増え発電の ためのエンジン抽出力も極めて大きくなると推定される. 電力増加による発電機の増強は第 8 図に示すように,大 型の発電機の性能がスタータ仕様を包含し,従来のエアス ( a ) 従来型燃料システム ( b ) IHI MEE 燃料システム 高圧 ポンプ 低圧ポンプ 機体から 余剰燃料の循環 スカベンジ ポンプ 空気冷却 オイルクーラ オイルポンプ タンク 燃料冷却 オイルクーラ 燃料コントロール スカベンジ ポンプ オイルポンプ タンク 燃料冷却 オイルクーラ 冷却のための ファン抽気の浪費 補機用 ギヤボックス 電動 モータ 第 2 図 IHI MEE 燃料システム Fig. 2 Schematic of the proposed IHI MEE system

0 20 40 60 80 100 120 地上時 離陸時 上昇時 巡航時 降下時 地上時 エ ン ジ ン 抽 出 力 *1 ( % ) 飛行ミッション :従来型補機用ギヤボックス駆動システム :IHI MEE 電動モータ駆動システム ( 注 ) *1: 補機用ギヤボックス駆動による離陸時 抽出力を 100%とした比で示す. 第 3 図 IHI MEE によるエンジン抽出力の削減効果 Fig. 3 Reduction in power extracted from engine

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( a ) 燃料の温度上昇の比較 0.0 0.5 1.0 IHI MEE 電動モータ 駆動システム 補機用 ギヤボックス 駆動システム f con _ _ ∆Tf MEE−∆T ( b ) 計算式 ・熱交換量の増加 Q Q = FCOC_MEEFCOC_con ( ) ⋅ o⋅ ∆f _ ∆ _ h MCp T MEETf con ・燃料の温度上昇 f f p MEE_ f HP T Wf Cp ∆ = ⋅ r ( 注 ) :燃料温度上昇 ( K ) :燃料温度 ( K ) :燃料冷却オイルクーラ入口燃料温度 ( K ) :燃料冷却オイルクーラ出口燃料温度 ( K ) :エンジン入口燃料温度 ( K ) :IHI MEE 電動モータ駆動システムにおける 燃料温度上昇 ( K ) :補機用ギヤボックス駆動システムにおける 燃料温度上昇 ( K ) :潤滑油温度 ( K ) :空気冷却オイルクーラ入口潤滑油温度 ( K ) :燃料冷却オイルクーラ入口潤滑油温度 ( K ) :燃料冷却オイルクーラ出口潤滑油温度 ( K ) :ポンプ馬力 ( W ) :電動モータ駆動ポンプ馬力 ( W ) ∆Tf Tf Tf Fi Tf Fo Tf Ei ∆Tf _MEE ∆Tf _con To ToAi ToFi ToFo HPf p HPf p_MEE :質量比熱 ( J/kg·K ) :燃料の質量比熱 ( J/kg·K ) :質量比熱容量 ( J/K·s ) :エンジン発熱量 ( W ) :空気冷却オイルクーラ熱交換量 ( W ) :燃料冷却オイルクーラ熱交換量 ( W ) :IHI MEE 電動モータ駆動システムにおける 燃料オイルクーラ熱交換量 ( W ) :補機用ギヤボックス駆動システムにおける 燃料オイルクーラ熱交換量 ( W ) :燃料圧力 ( Pa ) :エンジン燃料流量 ( kg/s ) :熱交換率(−) :比重 ( kg/m3 ) Cp Cpf MCpo Qeng QACOC QFCOC QFCOC_MEE QFCOC_con p Wf h r η Tf Ei ∆Tf 空気冷却 オイルクーラ エンジン 燃料ポンプ 燃料冷却 オイルクーラ HPf p Tf Fi QACOC QFCOC ToFo ToFi ToAi Tf Fo Qeng MCpo ( c ) ヒートマネジメントモデル 燃料温度の上昇の比 ( 注 ) 燃料の温度上昇は,補機用ギヤボックス     駆動システムにおける温度上昇を 1.0 と     したときの比を示す. 圧力 = p Wf r 流量 = 第 4 図 ヒートマネジメントの解析モデル Fig. 4 Heat-management analysis model

( b ) 燃料ポンプ効率の比較 *2 0.0 0.5 1.0 1.5 現行システム 3連ギヤポンプ システム 遠心ポンプ システム 可変容量ポンプ システム IHI MEE システム エンジン 高圧軸 回転数 燃料流量 20% 90% 0 25 50 75 100 燃料流量およびエンジン高圧軸 回転数の比 (%) :巡航時 :離陸時 :巡航時 :離陸時 燃料ポンプ効率 (−) ( a ) 解析条件 *1 ( 注 ) *1:離陸時を 100%としたときの比を示す. *2:IHI MEE システムを 1.0 としたときの比を示す. 第 5 図 燃料ポンプ方式の効率比較 Fig. 5 Calculated efficiency of various fuel systems

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タータの機能を発電機が兼ねることを可能にしている. 一方,抽出力の増加はエンジンの制御を不安定にする恐 れがある.第 9 図にエンジン抽出力増加による影響を示 す.第 9 図 - ( a ) に示す解析結果のとおり,従来のエン ジンのように高圧軸から抽出力を得る場合,抽出力を大き くしていくと低圧圧縮機の作動線が上昇し,サージライ ン( 圧縮機に流入する空気流量と,圧力比のバランスが 崩れ,圧縮機が失速することによって正常に機能しなくな る領域との境界線 )に近づきサージマージンが低下する. 区 分 総 推 力 ( 抽出力 )燃料ポンプ ( 空気流量,ファン抽気流量 )空気冷却オイルクーラ 従 来 システム IHI MEE システム Fgcon= f (Fg j−Fex, Was

   −∆Wacoc, Wap) :Fexエンジン抽出力

抽出力の削減 :∆Ff p オイルクーラ設置 空気冷却オイルクーラレス ∆Wacoc=0 ≒1 ∆Wacoc Was % 地上時 離陸時 上昇時 飛行ミッション 巡航時 降下時 地上時 2 0 −2 −4 −6 IH I M E E の SFC 改 善 *1 ( % ) FgMEE= f (Fg j−Fex+     ∆Ff p, Was, Wap) ∆ = gcon −1 gMEE F Dr SFC F Dr − − *1: ( 注 ) Fgcon :従来システム総推力

FgMEE :IHI MEE 総推力

Dr :抗力 ∆Ff p :抽出力削減量 Fg j :コア総推力 Wap :コア空気流量 Was :バイパス空気流量 ∆Wacoc:ACOC( 空気冷却オイルクーラ )ファン抽気流量 第 6 図 IHI MEE ステップ 1 における SFC 改善効果 Fig. 6 SFC reduction accomplished by using IHI MEE STEP1

0 5 000 10 000 15 000 エンジン回転数 ( rpm ) ス タ ー タ ジ ェ ネ レ ー タ   ト ル ク 大 小 :スタータ特性 :従来発電機の発電特性 :発電機出力が 2 倍時の 発電特性 :従来発電機の電気性能 :発電機出力が 2 倍とな る発電機の電気性能 第 8 図 発電機とスタータのトルク-速度特性

Fig. 8 Torque-speed characteristics of engine starter and aircraft generator

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 5 10 時 間 ( s ) 15 :指令値 :実際の燃料流量 燃 料 流 量 ( % ) 第 7 図 IHI MEE の燃料計量応答性

Fig. 7 Engine transient simulation of the IHI MEE metering system

空気流量 サージ マージン サージング領域 サージ マージン 空気流量 ( a ) 高圧軸 抽出力 ( b ) 低圧軸 抽出力 小 大 小 大 小 大 小 大 :サージライン :低圧圧縮機作動線  ( 高圧軸抽出力増加前 ) :低圧圧縮機作動線  ( 高圧軸抽出力増加後 ) :サージライン :低圧圧縮機作動線  ( 低圧軸抽出力増加前 ) :低圧圧縮機作動線  ( 低圧軸抽出力増加後 ) 作動線 上昇 作動線降下 サージング領域 低 圧 圧 縮 機   圧 力 比 低 圧 圧 縮 機   圧 力 比 第 9 図 エンジン抽出力増加による影響

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その一つの解決策として低圧軸から負荷を得る方法を検討 している. 本研究で想定する小型エンジンで解析を行った結果,低 圧軸から負荷を抽出する方式で低圧軸からの抽出力を増加 させると,サージマージンが増加する方向に作動線が移動 する特性になる( 第 9 図 - ( b ) ).しかし,効率は逆の特 性となる解析結果を得ており,低圧軸からの抽出力が最適 とは限らないと考えられる.発電機用の抽出軸の選定は, 今後の MEA/MEE の電力負荷増加へ対応するために重要 な設計課題になる. 4. IHI MEE における先進技術と今後の課題 IHI MEEにおける課題は高効率化,小型軽量化を進め, さらに航空機用エンジンとしての信頼性や安全性を向上さ せることである.これらの課題を解決するため,高電圧化 や燃料計量システム,発電システムの簡素化などの技術開 発に取り組んでいる. 4. 1 高電圧アクティブ―アクティブ制御の導入 MEAで高効率化のために適用された DC270V への高 電圧化は,IHI MEE においても必須の技術である.IHI グループでは 1990 年代には ELV( 使い捨ての衛星打 上げロケット:Expendable Launch Vehicle )向けの高電

圧 DC270V 電動制御システムを開発し実用化した ( 6 ) IHI MEEでは,航空機エンジンへ適用するため,さらに 安全性を高める冗長システム設計が必要である. IHI MEEは安全性を高めながら質量増を抑えるため, アクティブ-アクティブ制御を取り入れる ( 2 ).アクティ ブ-アクティブ制御はアクティブ-スタンバイ制御と比較 し,故障時に発生する制御できない状態を瞬時に回避する とともに,正常時には冗長系統がすべて作動することで負 荷分散を図り,電流損失を低減し,システム全体の効率改 善と質量低減に寄与する技術である.以下に,実用化に向 け研究中の要素技術について述べる. ( 1 ) 多重巻線モータの電流制御 ( 7 ) サーボ理論を用いた方式で,冗長構成の二つの巻 線の,片側が故障すると瞬時に正常な巻線の電流を 2倍に増やすことができるアクティブ-アクティブ 制御方式による電流制御技術である.二つの巻線の 電流を加算して電流サーボにフィードバックするこ とで,電流低下を瞬時に補完し制御できない時間を 短くする( 第 10 図 ). ( 2 ) 故障モータの電流位相制御 ( 7 ) IHI MEEでは 3 相モータの電流位相制御にデジタ ル技術を適用し,さらにモータの安全性を高めるた 電流指令 インバータ インバータ ( a ) 通常運転時 ( b ) モータ 2 故障時 Im2=0.5 Ki Ki If 1=1 If 2=1 Ic=1 Im1=0.5 電流指令 インバータ インバータ Im2=0 Ki Ki If 1=1 If 2=1 Ic=1 Im1=1 電流指令 通常運転時 モータ 2 故障 ( − ) ( + ) 0 電   流 時 間 ( c ) 故障発生前後の電流波形 モータ 2 モータ 1 モータ 2 モータ 1 モータ 2 モータ 2 モータ 1 ( 注 ) Ki :電流制御器ゲイン :モータ 1,2 電流( 通常運転時 ) :モータ 1 電流( モータ 2 故障時 ) :モータ 2 電流( モータ 2 故障時 ) :モータ 1 の電流 :モータ 2 の電流 モータ 1 第 10 図 多重巻線モータの電流制御

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め 1 相が故障しても残りの 2 相で制御するフェール セーフシステムを実現する.3 相モータは,1 相故障 時にだ円状の電流ベクトルになるが,円形の電流ベ クトルになるようデジタル制御を行い,スムーズな 回転数制御を可能にしている( 第 11 図 ). ( 3 ) 速度サミングアクチュエータ ( 8 ) 電気機械式アクチュエータは油圧を排除したシン プルな機構であるが,ギヤの固着故障に対処する必 要がある.通例ではクラッチによる切り離しを行う がクラッチ機構自体の信頼性や質量増が課題になる. さらに,アクティブ-アクティブ制御を構成する場 合,モータ出力軸を直接突き合わせると,サーボ系 統の誤差が互いのサーボ系で発生する結果,互いの 出力トルクの演算結果が相反することによって力が ぶつかり合い,振動状態が発生する. IHI MEEでは力の突き合わせではなく,速度で突 き合わせる技術を採用しこの問題を解決した.出力 軸の速度が二つの入力軸の加算となるようにボール スクリューで構成した機構で速度サミング機構( 入 力速度の和を出力速度とする方式 )を構成し軽量化 を図る( 第 12 図 ). 4. 2 新型燃料計量システムの開発 ( 3 ) IHI MEEは,電動モータによって燃料ポンプを駆動し, 回転速度を変化させることによって燃料計量を行う.従来 のシステムでは計量弁を用いた油圧回路によってその制御 が行われ,高応答・高精度を実現している.IHI MEE の システムにおいては,これらはモータの応答特性と燃料 流量フィードバックの精度が各々機能を担う構成になる ( 第 13 図 ).モータの応答性を高めるため,燃料ポンプ 駆動用モータはダイレクトドライブ方式とし,併せて機構 部品の信頼性を高める設計にしている. 電動化された定容積型燃料ポンプによって燃料を高精度 に計量するためには,燃料温度変化や長時間使用に伴うポ ンプ容積効率の変化を補償する必要がある.最も確実な方 法は,燃料流量をモータ回転数制御にフィードバックする 方法である.高精度な流量センサを用いて流量を直接計量 する方法も考えられるが,この場合は流量センサを燃料流 路内に設置することで発生する圧力損失を避ける必要があ り,非接触の流量センサが必要になる.ただし現状では, 計測精度や搭載性において課題が多い. IHI MEEでは,燃料システム構成を最大限簡素化する ことも考慮し,ポンプ後流にバルブ機構を設置し,その前 作動状態 3相モータ電流 固定子( 巻線 )と回転子( 磁石 )の配置 電流ベクトル 正 常 故 障 位相補償 (+) (−) 0 電   流 (+) (−) 0 電   流 (+) (−) 0 電   流 時 間 時 間 時 間 :u 相電流 :v 相電流 :w 相電流 :u 相電流 :v 相電流 :w 相電流 :u 相電流 :v 相電流 :w 相電流 u 相 w 相 v 相 磁 石 巻 線 故障巻線 u 相 w 相 v 相 磁 石 巻 線 N S N S a w b a :電気角の回転座標系 a 軸 b :電気角の回転座標系 b 軸 w :電流ベクトルの回転角速度 a w b a :電気角の回転座標系 a 軸 b :電気角の回転座標系 b 軸 w :電流ベクトルの回転角速度 a w b a :電気角の回転座標系 a 軸 b :電気角の回転座標系 b 軸 w :電流ベクトルの回転角速度 第 11 図 故障モータの電流位相制御 Fig. 11 Phase control for faulty motors

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デジタルエンジン制御 計量弁 燃料 噴射弁 補機用ギヤボックス駆動ポンプ 高圧 ギヤ ポンプ サーボ弁指令値 加圧弁 燃料 噴射弁 低圧 ポンプ 差圧制御弁 調整圧力弁 燃料計量機構 燃料流量 サーボ弁 最小圧 加圧弁 サ ー ボ 弁 フ ィ ー ド バ ッ ク 計 量 弁 フ ィ ー ド バ ッ ク ( a ) 従来システム 機体タンク 機体タンク 指令値 モータ コントローラ 流量センサ フィードバック 電動モータ駆動ポンプ :低 圧 :高 圧 :調整圧 :計量弁出口圧 :加圧弁入口圧 :燃料噴射弁入口圧力 :電気信号 :低 圧 :加圧弁入口圧 :燃料噴射弁入口圧力 :電気信号 加圧弁 高圧 ギヤ ポンプ 低圧 ポンプ デジタルエンジン制御 ( b ) IHI MEE システム 第 13 図 IHI MEE 燃料計量システム Fig. 13 Schematics of IHI MEE fuel metering system

( b ) 速度サミングアクティブ−アクティブ制御の動作試験結果 ( a ) 速度サミングアクティブ−アクティブ制御の機構原理 1 s 1 s 1 s 伸 長 中立位置 短 縮 伸 長 中立位置 短 縮 伸 長 中立位置 短 縮 正常時 :安定で円滑な制御 ① 故障発生時 :動作を継続し診断から復旧 ② ③ 片側故障状態 :制御特性は復旧 ⑤ ④ ① 速度サミングのアクティブ−アク ティブ制御によって,2 台のモータ が同時に 1 台のアクチュエータ を制御している. ⑤ 片側固着故障のまま,残りの 1 台で 正常時と同じ制御特性を復元し,制 御を続行した. ② 片側( 1 台 )のモータで固着故障を 発生させた. ③ 1 台故障で速度は低下したが,動作 は続けている. ④ コントローラが故障と診断し,残り 1台のモータ制御のゲインを変更し, 正常時の制御特性へ復旧した. 電動モータ 1 電動モータ 2 ナット速度 w2 リード速度 w1 縮 伸 アクチュ エータ ストローク ボールスクリュー 第 12 図 速度サミングアクチュエータ Fig. 12 Speed summing actuator

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後の差圧を計測して燃料流量のフィードバックに用いるシ ステムにしている.この計量システムにおいては,低流量 から高流量までの全領域で高精度の差圧計測ができるよう にバルブ機構を設計する.低流量域では差圧を確保して計 測精度を確保しつつ,高流量域では差圧が高くなり過ぎな いように調節することでポンプ出口圧を下げ,燃料システ ムの効率を下げることなく高精度の燃料計量を達成する. 本計量システムは,IHI MEE の特長の一つである燃料計 量機構レス,すなわちシンプルで信頼性の高い燃料システ ムを実現可能にする新型燃料計量システムである. 4. 3 永久磁石発電機技術の適用 ( 7 ) IHI MEEでは電力の大容量化に対応した小型軽量発電 機を実現するため,20%の質量低減が見込まれる永久磁 石発電機の研究を進めている. 従来の航空機用発電機は,① 界磁電力用発電機 ② 発電 機制御装置を経由した界磁電力を固定子から回転子へ伝達 する発電機 ③ 界磁電力を使った主発電機,の三つで構成 され,負荷側および発電機内での短絡故障などが発生した 場合には電力遮断を行う機能をもっている.発電機制御装 置によって発電機の出力電流を監視し,異常時には界磁電 力を遮断することで発電を停止するものであり,永久磁石 発電機の場合は,この遮断機能の代替が課題であった. IHI MEEでは永久磁石発電機に遮断機能をもたせるた め,発電停止と同等の機能をもつ中性点遮断方式を研究し ている.第 14 図に示す構成によって従来の永久磁石発電 機では不可能であった,発電機内部での短絡故障において も電流を遮断することが可能になる ( 7 ) 4. 4 システム大型化の課題 ( 9 ) 小型エンジンへの IHI MEE 適用は,削減される機器な どを含めるとトータルで大きな質量増にならないと試算し ている ( 1 )が,中大型のエンジンへの適用を進めるために は,軽量化をさらに進める必要がある.現状技術では,大 型エンジン用に試算した電動燃料ポンプ単体の質量は第 15 図に示すとおり従来補機と比較して重い.モータ高回転 化による質量低減やコントローラの小型化を進めつつ,さ らに電力デバイスの動向を踏まえた適用研究を進める ( 9 ) 発 電 機 出 力 電 圧 負 荷 O N /O F F iu O N /O F F iv O N /O F F iw 時 間  異常発生 故障診断 Vu Vw Vv 発 電 機 出 力 電 流 時 間  異常発生 iu iw iv Vu Vw Vv サイリスタ 電力遮断器 電力遮断器 電力遮断器 サイリスタ サイリスタ iu iv iw 発電機 ( 注 ) Vu,Vv,Vw :出力電圧 iu,iv,iw :出力電流 第 14 図 永久磁石発電機の遮断方式

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5. 結    言 IHI MEEに関する開発の概要,その技術的特長,当社 の先進技術の取組みについて紹介した.IHI MEE は,社 会的要求である環境性・経済性という客先の要求にこたえ る,次世代を代表するエンジン・システムと期待される. IHI MEEは燃料システムを中心に,独自技術によって世 界に貢献する. ― 謝  辞 ― 本稿に情報提供をいただいたシンフォニアテクノロジー 株式会社,本 IHI MEE の研究に当たって,多大なご支援 をいただいている多くの関係各位のご厚誼に対し,ここに 記し,深く感謝の意を表します. 参  考  文  献

( 1 ) A. Boglietti et al. : The Safety Critical Electric Machines and Drives in the More Electric Aircraft : A Survey  Industrial Electronics 2009 IECON ’09. 35th Annual Conference of IEEE 3-5 ( 2009. 11 )  pp. 2 587- 2 594

( 2 ) N. Morioka et al. : More Electric Engine Architecture for Aircraft Engine Application  ASME Turbo Expo

2011 Vancouver, CANADA, GT2011-46765 ( 2011. 6 ) ( 3 ) N. Morioka et al. : Fuel Pump System Configuration

for the More Electric Engine  SAE 2011 AeroTech Congress & Exhibition 2011-01-2563

( 4 ) Y. Matsunaga et al. : Development of Double Gear Fuel Pump for Heat Management Improvement  J. Eng. Gas Turbines Power Vol. 132 No. 8 ( 2010. 8 )  GT2006-90235

( 5 ) N. Seki et al. : More Electric Engine Architecture for Fuel System of Aircraft Gas Turbine Engine  IGTC2011-0041

( 6 ) H. Oyori et al. : H-IIA Solid Rocket Booster Thrust Vector Control System  23rd ISTS Matsue Japan  2002-d-29

( 7 ) H. Oyori et al. : A Motor Control Design for the More Electric Aero Engine Fuel System  SAE 2011 AeroTech Congress & Exhibition 2011-01-2619 ( 8 ) H. Oyori et al. : Fault-tolerant Control for the

More Electric Engine  50th AIAA ASM Nashville Tennessee AIAA-2012-0111

( 9 ) N. Morioka et al. : Improved Engine Efficiency via the More Electric Engine  50th AIAA ASM Nashville Tennessee AIAA-2012-0110 従来型 補機用ギヤボックス 駆動ギヤポンプ 電動ポンプ 7 000 rpm定格 15 000 rpm電動ポンプ定格 補機用ギヤボックス従来型 7 000 rpm電動ポンプ定格 15 000 rpm電動ポンプ定格 電動ポンプ 駆動ギヤポンプ 大型エンジン 中型エンジン 小型エンジン :モータコントローラ :電動モータ :燃料ポンプ 200 150 100 50 0 質   量 ( k g ) 第 15 図 中大型エンジン燃料ポンプの質量比較 Fig. 15 Weight of fuel pump for medium-sized and large size engines

Fig. 1 Steps in development of IHI MEE
Fig. 3 Reduction in power extracted from engine
Fig. 5 Calculated efficiency of various fuel systems
Fig. 9 Analysis of effect of increase in power extracted from engine
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参照

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