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The Ecological Society of Japan (Japanese Journal of Conservation Ecology) 19 : (2014) 1, * 2, ** A comparison of wetland plant species

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新潟県越後平野の水田地帯に出現する水湿生植物:

土地利用タイプ間における種数と種組成の相違

石田 真也

1,

*

・高野瀬 洋一郎

2,

**

・紙谷 智彦

1

1新潟大学大学院自然科学研究科・2新潟大学超域研究機構

A comparison of wetland plant species richness and taxonomic composition among land-use types in a lowland paddy region on the Echigo Plain, Japan

Shinya Ishida1,*, Yoichiro Takanose2,** and Tomohiko Kamitani1 1Graduate School of Science and Technology, Niigata University,

2Center for Transdisciplinary Research, Niigata University

要旨:低地水田地帯を水湿生植物のハビタットと位置付けた農地計画の検討のためには、耕作水田、休耕田、水路 など複数の土地利用タイプの植生を全体的に評価する必要がある。そこで、新潟県越後平野の水田地帯に存在する 4つの土地利用タイプ(耕作水田・休耕田・土水路・コンクリート三面張り水路)の全 257 ユニットを対象に植生 調査を実施した。調査の結果、耕作水田では、ユニット間での種組成のばらつきが小さく、全体としての水湿生植 物種数は休耕田や土水路と比較して少なかった。しかし、耕作水田ではユニットあたりの水湿生一・越年草種数は 休耕田と並んで最も多く、マルバノサワトウガラシやミズマツバなどの絶滅危惧種が広汎に出現した。管理方法が 圃場ごとに異なる休耕田では、ユニット間での種組成のばらつきが大きく、全体としての水湿生植物種数が最も多 かった。一部の休耕田は、耕作水田のように頻繁な攪乱が起こる環境下では生活史を完了することが難しい種、特 に多年草にとってのハビタットとして重要であることが示唆された。しかし、休耕田では外来種も多く確認された。 土水路では、ユニットあたりの水湿生植物種数は耕作水田や休耕田よりも少ないものの、全体としての種数は休耕 田に次いで多かった。浮葉植物や沈水植物の出現が確認されたのはほとんど土水路のみであったことから、土水路 の存在は水田地帯全体としての水湿生植物の種多様性の維持に重要であることが示された。一方、コンクリート三 面張り水路では、ユニットあたりの種数が極端に少なく、水湿生植物のハビタットとして位置付けることが難しい 環境であることが示唆された。低地水田地帯における水湿生植物の保全のためには、耕作水田、休耕田、土水路な ど複数の土地利用タイプに特有の種群をそれぞれ保全し、相互に補い合うことで、水田地帯全体として種多様性向 上を図ることが望ましいと考えられた。   キーワード:休耕田、耕作水田、種多様性、農業用水路、氾濫原湿地

Abstract: As part of a program for the conservation of wetland plants in Japanese lowland paddy regions, we compared plant species richness and taxonomic composition among four land-use types on the Echigo Plain: cultivated paddy fields, fallow (including abandoned) paddy fields, soil-lined irrigation canals, and concrete-lined irrigation canals. Species compositions were similar across cultivated fields. Total species richness was lower in these fields than in fallow fields and soil-lined irrigation canals. Species of annual and winter-annual herbs (including endangered taxa) occurred regularly in cultivated fields. Species composition varied among fallow fields, which supported the highest species richness across land-use types. Some of the fallow fields provided important habitat for species (particularly perennial herbs) that were rare on cultivated land.

Concrete-*〒 950-2181 新潟県新潟市西区五十嵐二の町 8050 新潟大学大学院自然科学研究科環境科学専攻植物生態学研究室 Graduate School of Science and Technology, Niigata University, 2-8050 Ikarashi, Niigata 950-2102, Japan

**現所属:株式会社グリーンシグマ Present address: Green sigma Co., Ltd.

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はじめに

 日本の主要な農地環境である水田は、近代科学技術が 発展する以前、すなわち 1900 年代前半まで、人力によ る適度な耕作圧と湿地的環境に依存した多くの水湿生植 物のハビタットとして機能していた(中村 1925;鷲谷 2007)。しかし、1950 年代以降に推進されてきた圃場整 備と、重機・除草剤を使用する近代慣行農法の導入によ って、水田の湿地としての機能は大幅に低下した(鷲谷 2007)。また、1970 年代以降は、減反政策の導入と農家 の高齢化によって、各地で休耕田や耕作放棄田の増加が 目立つようになった(農林水産省 平成 23 年耕地及び作 付面積統計:2012 年 7 月公表、http://www.e-stat.go.jp/ SG1/estat/List.do?lid=000001087149、最終確認日 2014 年 8月 13 日)。圃場整備が実施された水田では、休耕また は耕作放棄されたとしても、暗渠や落水口などの排水施 設が残置されている場合には、かつての湿地的環境は回 復しにくい(池上ほか 2011)。そのような休耕田や耕作 放棄田では、路傍植物が侵入して優占する乾性遷移が進 む場合が多い(箱山ほか 1976;千葉 1989)。水田地帯に おけるこうした環境の変化によって、かつて普通に見ら れた水湿生植物の多くが減少することとなった(藤井 1999;環境省 2000)。  1990 年代以降、水田地帯における生物多様性保全の 気運が高まってきている(下田 2003;鷲谷 2007;日鷹 ほか 2008)。水田地帯における水湿生植物の保全に関す るこれまでの研究は、耕作放棄田に注目したものが多か った。中山間地や谷津における水田地帯では、地形上の 制約で圃場整備が実施されていない水田が存在するが、 そのような水田が放棄されると、水湿生植物の良好なハ ビタットとして機能する場合がある(大黒ほか 1996, 2003;河野 1998;角野 1998;下田・中本 2003;池上ほ か 2011)。これらの研究成果は、水湿生植物の保全に配 慮した農地計画の方向性を検討する上で有用であるが、 耕作放棄田という場だけを以てこれらの植物を持続的に 保全していくことは難しい。耕作放棄田では通常、農家 の収入に結びつかない管理(耕起・草刈り)が継続され ることはないため、植生遷移が速やかに進行する。すな わち、耕作圧からの解放によって多種の水湿生植物が出 現 し た と し て も、 間 も な く ヨ シ Phragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud.やガマ Typha latifolia L. などの高茎 多年草が優占する群落に遷移し、再び消えてしまう可能 性が高い(角野 1998;下田・中本 2003)。圃場整備が実 施されていない地域において復田と休耕を 1 ∼数年おき に繰り返すことで、種多様性が高い水湿生植物群落を持 続的に維持できる可能性を指摘する研究は多い(中本ほ か 2002;有田ほか 2006;Yamada et al. 2007)。しかし、 農家人口とコメ需要両面の減少に歯止めが掛からない現 状を考慮すると、労働条件の悪い水田で上記のような管 理を継続することは困難であると予想される。  ごく最近まで、水田地帯で行われる植物に関する研究 は、水田雑草の防除に関するものが主流であった(例え ば、笠原 1949;荒井 1962;八柳 1962;伊藤 1989;劉ほ か 1998;浅野 2001)。このため、耕作水田については、「地 域全体で、どんな植物種がどの程度の頻度で出現してい るのか」という、植生学的な知見が不足している。 Yamada et al.(2011)は、常総台地の谷津及び近接する 低地において、立地と土地改良の強度が稲収穫後の水田 に成立する植生に対して与える影響を解析し、水湿生植 物の良好なハビタットとなり得る耕作水田の条件が「谷 津及び低地(旧河道)に位置し、土地改良がほとんど実 施されていないこと」であることを明らかにした。これ は、低地の水田地帯においても水湿生植物を保全できる 可能性があることを示す重要な成果である。このことか ら、水湿生植物の保全の観点からは、一般的な「圃場整 備が行き届き、慣行農法が導入されている低地の水田地 帯」において水湿生植物が生育できる環境が維持される ような農地計画について、検討を行う価値があると考え られる。  水田地帯における環境改変は、圃場だけではなく、農 業用水路においても進められてきた。農業用水路におけ る最も大きな環境改変のイベントは、管理の効率化と雑 草の出現抑制を目的に推進された水路のコンクリート化 である。従来の素掘り土水路とは物理的・水理的特性が lined irrigation canals contained very few species, but soil-lined canals supported a diversity of taxa. Most floating-leaved and submerged species occurred only in soil-lined irrigation canals. Thus, we suggest that wetland plants unique to each land-use type should be preferentially conserved, thereby enhancing overall diversity across the whole region.

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大きく異なるコンクリート水路の普及によって、水湿生 植物が生育する農業用水路は大きく減少した(内山 2013)。しかし、その後に農業用水路の植生を評価した 研究は少なく、土水路とコンクリート水路とで成立する 植生の種数・種組成がどの程度異なるのかについて、詳 しく調査した事例はない。また、同じ水田地帯に存在す る水田と農業用水路とで、成立する植生の種数・種組成 がどの程度異なるのか(または類似するのか)を評価し た研究は皆無である。  圃場整備が実施された低地水田地帯を水湿生植物のハ ビタットと位置付けた農地計画を検討するためには、耕 作水田、休耕田、水路といった複数の土地利用タイプの 植生を全体的に評価し、種数及び種組成のパターンや、 各土地利用タイプの植生を特徴付ける種群の性質を明ら かにする必要がある。このことによって、土地利用タイ プ間で補い合って水田地帯全体としてより多くの種の保 全を目指す、相補性に配慮した計画について検討するこ とが可能となる。例えば、複数の土地利用タイプに共通 して広汎に出現する種群と、それぞれの土地利用タイプ に特異的に出現する種群とが明らかになれば、土地利用 タイプごとに優先的に保全すべき種群を抽出することが できる。また、ある土地利用タイプの面積が将来的に急 減すると予想される場合(例えば、パイプライン化によ る水路の消失)、それによって減少する種多様性を、他 の土地利用タイプでどの程度補償もしくは代替できるの かについても評価できる。そこで本研究では、国内最大 級の低地水田地帯を擁する越後平野において、水田地帯 の土地利用タイプごとに、出現する植物の種数及び種組 成を明らかにするために広汎な植生調査を行った。調査 対象とした土地利用タイプは、水湿生植物が出現する可 能性がある環境を形成し得るものの全て、すなわち、耕 作水田・休耕田(耕作放棄田含む)・土水路・コンクリ ート三面張り水路の 4 つである。なお、農業用ため池に ついては、流量が豊富な複数の河川が流れる越後平野に はほとんど存在しないため、調査対象に含めなかった。

調査地と方法

調査範囲  調査は、新潟県新潟市の越後平野中西部における水田 地帯(500 km2)で行った(図 1)。新潟市の 1981 年か ら 2010 年までの平均気温は 13.9 度、平均降水量は 1821 mm、平均年間最大積雪深は 36 cm である(新潟地方気 象台の観測値統計より算出)。調査範囲内における信濃 川の河川勾配はおよそ 3300 ∼ 10000 分の 1 で、調査範 囲の標高は南部(約 6 m)から北部(約− 1 m)にかけ て緩やかに低下する(国土交通省北陸地方整備局信濃川 河川事務所 2007)。  信濃川と阿賀野川の堆積作用で形成された越後平野 は、かつては「地図にない湖」と形容されるほどの広大 な湿田地帯であったが、1950 年代の土地改良事業によ って、用排水施設が完備された近代的な乾田地帯へと変 貌した(国土交通省北陸地方整備局・国土地理院 2004、 図 2)。しかし、1970 年代以降は休耕田が増加してきて おり、近年では転作も行われずに放置される耕作放棄田 も目立つようになっている。  水田灌漑のための農業用水は、各河川から揚水された 後、容量の大きい水路(幹線水路・支線水路)から水田 脇を流れる小さい水路(小水路)へと階層的に枝分かれ しながら流れ、それぞれの水田に供給される。排水は、 この逆の順序を辿って河川に戻される。圃場整備以降、 農業用水路は素掘りの土水路からコンクリート三面張り 水路への改修工事が順次実施されてきた。新潟市西蒲区 土地改良区職員への聞き取りによると、調査範囲内にお ける土水路とコンクリート三面張り水路の本数の割合は 現在同程度である。 図 1.調査範囲。白抜きの円は調査地点を、灰色網掛部は山地 を示す。

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調査対象とする圃場・水路の選択  調査範囲から 20 の地域を無作為に抽出し(図 1)、各 地域において半径 250 m 円の範囲内から調査の対象とす る耕作水田、休耕田(以下、耕作放棄田と一括して「休 耕田」と表記)、素掘りの土水路(以下、「土水路」と表 記)、コンクリート三面張り水路(以下、「コンクリ水路」 と表記)を選択した(図 3)。転作が行われている休耕 田は調査対象から除外した。土水路とコンクリ水路は、 共に小水路に限定して選択した。これは、容量が大きい 水路は本数が少ない上に、水路内に植生が存在しない場 合がほとんどであったためである。  調査対象とした圃場及び水路の合計数は、耕作水田と 休耕田がそれぞれ 68 筆(地域あたり 2 ∼ 4 筆)、土水路 が 56 本(地域あたり 0 ∼ 6 本)、コンクリ水路が 65 本(地 域あたり 0 ∼ 8 本)である。ここで、土水路 56 本の内 7本は、素掘り土水路の両側面にコンクリート製柵渠を はめ込んだ二面柵渠水路(底部は土)である。また、土 水路及びコンクリ水路における用水路と排水路の本数の 内訳は、土水路で用水路が 24 本、排水路が 32 本であり、 コンクリ水路で用水路が 34 本、排水路が 31 本である。 なお、地域間で水路数が異なるのは、地域によって土水 路とコンクリ水路のどちらか一方しか存在しない場合が あったためである。 耕作水田・休耕田の環境と管理体制  越後平野の水田地帯における稲の栽培形態は水稲の一 毛作である。環境保全型の特別な農法(有機栽培・不耕 起栽培・冬期湛水など)が実施されている水田は少なく、 通常の耕作水田の農作業には重機が用いられ、除草剤も 使用される。農事暦はおおよそ以下の通りである;(1) 4月:トラクターによる田起こし・代掻き、(2)5 月初 ∼中旬:田植え機による田植え・灌漑開始(水田の水位 を 10 cm 程度に維持するために毎日灌漑を続ける連続的 灌漑)、(3)6 月下旬:中干し(およそ 2 週間の灌漑中断)、 (4)7 月上旬∼ 8 月下旬:灌漑再開(1 週間のうち、連 続した4日間ないし3日間だけ灌漑する断続的灌漑)、(5) 8月下旬:灌漑終了(落水)、(6)9 月下旬:コンバイン による収穫。  各圃場で使用された除草剤の種類については、個別に 把握することができなかったが、近年では全国の 9 割以 上の水田でスルホニルウレア系除草剤(複数の除草剤成 分からなる混合剤、以下 SU 剤)が使用されていること から(伊藤 2000)、本地域でもほとんどの耕作水田にお いて SU 剤が使用されていると考えられる。本地域では、 除草剤は 5 月の田植え直後にのみ使用されるのが一般的 であるが、圃場によっては 6 ∼ 7 月に二度目の投入が行 われる場合もある。以上の農事暦は、越後平野における 耕作水田の大部分(調査対象とした 68 筆を含む)が、 毎年 4 月からおよそ半年の間、一様に「頻繁に水分条件 が変化し、さらに複数回の物理的・化学的攪乱を受ける」 条件下にあることを示している。なお、農事暦と除草剤 使用についての情報は、複数の農業従事者と、新潟市亀 田郷土地改良区及び西蒲区土地改良区職員への聞き取り によって得たものである。  休耕田の管理体制は、圃場ごとに大きく異なる。調査 対象とした休耕田 68 筆中には、調整水田が 10 筆含まれ る。調整水田では、稲の作付けを行わないこと以外は原 則として耕作水田と同様の管理がなされる。それ以外の 休耕田では灌漑は行われないが、毎年除草作業が実施さ れる圃場もあれば、長期間放棄されている圃場もあり、 管理方法が様々である。68 筆の休耕田のうちの情報が 得られた 48 筆(調整水田含む)について、除草剤の散 図 2.越後平野における水田環境の変化。a:1950 年代初頭の稲刈りの様子。腰まで水に浸かりながら、舟を用いて 稲を収穫している(写真:亀田郷土地改良区所蔵)。b:1997 年現在の遠景。圃場整備が行き届き、乾田圃場と 水路が整然と配置されている(写真:北陸地方整備局 2004 より引用)。

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布を毎年実施している圃場は 30 筆であったが、使用頻 度は年に 1 回から 3 回までと差があった。また、調整水 田以外にも、土壌耕起や火入れが実施されている圃場も 存在した。さらに休耕年数についても、休耕 1 年目の圃 場から 38 年目の圃場まで、68 筆間で大きく異なった(平 均は 10.3 年)。このように、休耕田は圃場間での環境条 件のばらつきが大きい。 土水路・コンクリ水路の環境と管理体制  土水路とコンクリ水路では、基質そのものだけではな く、断面構造にも違いがある。水路の水路幅(cm)は、 土水路(56 本中 51 本)で 101.5 ± 43.0(平均値±標準偏差)、 コンクリ水路(65 本)で 52.6 ± 19.0 であり、土水路で 大きかった(一般線形モデル、P < 0.001)。ここで、土 水路の水路幅は、水路の水位が最も高くなる時期である 6月上旬に測定した水面幅である。一方、水路高(cm) に つ い て は、 土 水 路 で 47.3 ± 15.0、 コ ン ク リ 水 路 で 53.8 ± 23.7であり、水路タイプ間で統計的に有意な違い は認められなかった(一般線形モデル、P = 0.092)。  農業用水路の管理については、土水路とコンクリ水路 で差異はなく、農事暦に基づいて画一的に行われる。農 業用水路には、水田灌漑のために必要な分だけの水が流 される。すなわち、耕作水田において湛水が行われない 時期には通水されない。また、ほとんど全ての水路にお いて、毎年 3 月もしくは 4 月に水路内に残存する前年の 植生や堆積土砂を物理的に除去する「江ざらい」と呼ば れる作業が行われる。実際に、調査対象とした 121 本の 水路中、6 本(土水路 3 本、コンクリ水路 3 本)を除く 全ての水路において江ざらいが実施されていた。なお、 調査対象とした水路では、水路脇の畦畔の植生に対して 草刈りや除草剤散布が行われる場合はあったものの、水 路内の植生に対して直接加えられた人為攪乱は、1 年を 通じて江ざらいのみであった。 植生調査  調査対象とした全ての圃場・水路において、植生調査 のために 1 m2の方形調査枠を 10 個設置した。調査枠の 設置の仕方について、耕作水田と休耕田では、1 m × 1 mの調査枠を 1 m 間隔で直線状に 10 個設置した。休耕 田では圃場中央部に設置したが、耕作水田では中央部に 踏み込むことが不可能であったため、畔に沿って設置し た。この時、全ての調査枠を畔から 50 cm 以上離して設 置するように留意した。以上の調査枠設置の際には、調 査枠以外の場所の踏査も合わせて行い、調査枠内の相観 がその圃場全体の相観を代表するものであることを確認 した。なお、耕作水田における植生を評価した先行研究 図 3.越後平野の水田地帯における 4 つの土地利用タイプ。a:耕作水田、b:休耕田、c:土水路、 d:コンクリート三面張り水路。

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である Yamada et al.(2011)でも、耕作水田 1 筆あたり の植物種組成を評価するための調査面積として 10 m2(1 m2の方形調査枠を直線状に 10 個設置)を採用しており、 圃場全体での出現種群の約 80%が調査枠内に出現した ことから、この調査面積が妥当であったことを確認して いる。土水路とコンクリ水路では、各水路で典型的な相 観を呈している箇所に、1 m2の調査枠を連続して 10 個 設置した。水路における調査枠の形状(方形の縦横比)は、 水路幅を基準に決定した。以降、各圃場・水路の 10 個 の調査枠のまとまりを便宜的に「ユニット」と表記する (すなわち、各土地利用タイプのユニット数は、耕作水 田 68、休耕田 68、土水路 56、コンクリ水路 65 となる)。 総数 2570 個の各調査枠において、同じ年の 7 月と 9 月に、 出現した全ての維管束植物の種名を記録した。なお、関 東地方以西の沿岸地域では、稲収穫後から初冬にかけて の短い期間に生活史を完了する「水田秋植物」の存在が 知られているが(梅本・藤井 2003)、本調査範囲内の水 田地帯ではこれに該当する現象はほとんど見られない。 休耕田における調査は 2008 年、耕作水田における調査 は 2009 年、土水路とコンクリ水路における調査は 2010 年に行った。  植生調査で記録された各植物種を対象に、以下の 4 つ の事項について区分し、土地利用タイプごと及びユニッ トごとに種数を算出した。 1)在来種であるか外来種であるか  清水(2003)に準拠し、各種を在来種と外来種に区分 した。 2)在来種である場合、水湿生種であるか  在来種を対象に、水湿生種であるかどうかを評価した。 水湿生種の定義は、「日本の主要な植物図鑑(北村ほか 1957, 1964;田川 1959;北村・村田 1961;沼田・吉沢 1975;佐竹ほか 1981, 1982a, 1982b;長田 1989;浅野・ 桑 原 1990; 岩 槻 1992; 角 野 1994; 奥 田 1997; 谷 城 2007)のうち、2 つ以上の図鑑において、生育環境の記 載に「水辺」、「湿地」、「湿原」のいずれかの語句が含ま れている草本種」とした。なお、本稿ではこれ以降、「在 来種の水湿生種」を指して「水湿生種」と表記する。 3)水湿生種である場合、絶滅危惧種であるか  水湿生種を対象に、絶滅危惧種であるかどうかを評価 した。本研究の調査地は大部分が新潟市に含まれるため、 評価には環境省第 4 次レッドリスト(2012 年 8 月公表、 http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=20557&hou_ id=15619、最終確認日 2014 年 8 月 13 日)に加えて、新 潟市版レッドデータブック(2010 年 3 月公表、http:// www.city.niigata.lg.jp/kurashi/kankyo/seikatukankyo/ shizenfureai/wildlife/smallanimals/reddate/index.html、最終 確認日 2014 年 8 月 13 日)も使用した。これらのリスト の両方ないし一方において、「絶滅危惧 I 類」、「絶滅危 惧 II 類」、「準絶滅危惧」のいずれかに選定されている 種を、一律で絶滅危惧種として評価した。なお、本稿で はこれ以降、「水湿生種の絶滅危惧種」を指して「絶滅 危惧種」と表記する。 4)生活型  各種を生活型(一・越年草、多年草、木本)によって 区 分 し た。 生 活 型 の 評 価 は 主 に、 佐 竹 ほ か(1981, 1982a, 1982b)、長田(1989)、角野(1994)、岩槻(1992) に準拠した。  なお、本研究では、外来種であるアメリカアゼナ Lindernia dubia (L.) Pennell subsp. major (Pursh) Pennellタケトアゼナ Lindernia dubia (L.) Pennell subsp. dubia の 2種について、一律で広義アメリカアゼナ Lindernia dubia (L.) Pennellとして扱った。また、本調査では、水 湿生種であるタカサブロウ Eclipta thermalis Bunge と外 来種であるアメリカタカサブロウ Eclipta alba (L.) Hassk. が共に出現した。外見が酷似する上に自然交雑するこの 両種を確実に同定するためには、成熟した痩果の精査が 必要であるが(清水 2003)、本研究ではこの作業を行う ことができなかった。このため、この 2 種の出現データ を以降の全ての解析・結果から除外することとした。 統計解析  植生調査の結果から、ユニットごとに 4 区分の種数(在 来種数・水湿生種数・絶滅危惧種数・外来種数)を算出 し、土地利用タイプ別に種数面積曲線を作成した(計算 の繰り返しは 500 回)。次に、土地利用タイプ間におけ るユニットあたりの出現種数の違いを明らかにするため に、マンホイットニーの U 検定による多重比較を行った。  土地利用タイプ間における植物種組成の違いを明らか にするために、各種のユニットごとの出現調査枠数をま とめた行列データを対象に、Permutational Multivariate Analysis of Variance Using Distance Matrices(ADONIS) による解析を行った(計算の繰り返しは 1000 回)。さら に、種組成の違いを視覚的にも明らかにするため、同様 の行列データをもとに、非計量多次元尺度法を用いて各 ユニットを二次元平面上に序列化した(計算の繰り返し は 1000 回)。ここで、コンクリ水路におけるユニットあ たりの種数が、他の土地利用タイプにおけるユニットあ たりの種数と比較して著しく少なかったため、コンクリ

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水路のデータは上記 2 つの種組成の解析から除外した。 また、種組成の解析に使用した各種のユニットごとの出 現調査枠数の行列データは、耕作水田・休耕田・土水路 の全 192 のユニットのうち、10 以上のユニットで出現 が確認された在来種のみを対象に作成した。  単一の土地利用タイプに偏って出現する種(指標種) を明らかにするために、各種のユニットごとの出現調査 枠数をもとに、指標種分析を行った。指標種分析は PC-ORD ver. 6.0(McCune and Mefford 2010)を使用して 行ったが、本統計パッケージにおける指標種分析のアル ゴリズムでは、「全ての土地利用タイプを通じて高い頻 度で出現する種」が事前解析によって除外される。本研 究では、これらの種を水田地帯における共通種として評 価することとした。  種数面積曲線作成のための計算と指標種分析には PC-ORD ver. 6.0を、その他の解析には R ver. 2.12.0(R Development Core Team 2012)を使用した。

結 果

土地利用タイプ間での出現種数の違い  調査地全体で出現が確認された植物の種数は、在来種 数が 200 種であり、そのうち水湿生種数が 98 種、絶滅 危惧種数が 19 種であった(表 1)。外来種数は 34 種で あった。土地利用タイプ別では、在来種数・水湿生種数・ 外来種数は休耕田で最も多く、次いで土水路、耕作水田 の順であったが、コンクリ水路における種数はこれらを 大きく下回った。この傾向は、全ての生活型で一貫して いたが、特に多年草で顕著であった。一方、絶滅危惧種 数は 13 種が出現した土水路で最も多く、耕作水田と休 耕田が共に 9 種であった。コンクリ水路では、いずれの 区分においても種数が最も少なかった。  土地利用タイプ別に出現種数とユニット数との関係を 明らかにするために作成した種数面積曲線(図 4)では、 水湿生種と絶滅危惧種の曲線の形状が土地利用タイプ間 で大きく異なっていた。すなわち、耕作水田と休耕田で は、曲線序盤の種数の増加の度合いが大きく、増加が頭 打ちになるのが早かったが、土水路では、曲線序盤の種 数増加の度合いは耕作水田・休耕田よりも小さいものの、 曲線の終盤になっても種数増加の度合いが鈍らなかっ た。 圃場・水路(ユニット)あたりの種数  各土地利用タイプにおけるユニットあたりの出現植物 種数と、マンホイットニーの U 検定による多重比較の 結果を図 5 に示す(有意判定にはボンフェローニの調整 を採用し、P < 0.0083 の場合を有意と判定)。在来種一・ 越年草のユニットあたりの種数は、耕作水田、休耕田、 土水路で同程度であり、コンクリ水路よりも有意に多か った。水湿生種一・越年草、絶滅危惧種のユニットあた りの種数は、耕作水田と休耕田で同程度に多く、次いで 土水路、コンクリ水路の順であった。一方、在来種多年 草、水湿生種多年草、外来種のユニットあたりの種数は、 休耕田と土水路で同程度に多く、次いで耕作水田、コン クリ水路の順となった。 表 1.土地利用タイプ別の植物の出現種数と、指標種分析によって抽出された指標種及び共通種の種数。括弧内の値が指標種の種数。 種の区分 生活型 耕作水田 休耕田 土水路 コンクリ水路 総種数 共通種数 在来種 一・越年草 75(8) 83(20) 76(11) 54(0) 106 24 多年草 28(3) 56(13) 51(6) 23(1) 84 2 木本 0(0) 9 (0) 1(0) 0(0) 10 0 合計 103(11) 148(33) 128(17) 77(1) 200 26 在来水湿生種 一・越年草 39(6) 46 (9) 42(4) 29(0) 54 18 多年草 14(3) 29 (8) 31(5) 14(1) 44 1 合計 53(9) 75(17) 73(9) 43(1) 98 19 絶滅危惧水湿生種 一年草 7(2) 8 (1) 6(0) 2(0) 10 1 多年草 2(1) 1 (0) 7(2) 4(0) 9 0 合計 9(3) 9 (1) 13(2) 6(0) 19 1 外来種 一・越年草 11(0) 16 (5) 14(4) 10(0) 21 1 多年草 4(0) 6 (0) 7(1) 4(0) 13 1 合計 15(0) 22 (5) 21(5) 14(0) 34 2

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土地利用タイプ間の種組成の違い  ADONIS の結果、在来種の種組成は全ての土地利用タ イプ間で有意に異なっていた(耕作水田 vs. 休耕田:P < 0.001、耕作水田 vs. 土水路:P < 0.001、休耕田 vs. 土 水路:P < 0.001。有意判定にはボンフェローニの調整を 採用し、P < 0.016 の場合を有意と判定)。非計量多次元 尺度法を用いた種組成に基づくユニットの序列化によっ て、土地利用タイプ間の種組成の違いが可視化された(図 6)。耕作水田のユニットは、狭い範囲に集中的に配置さ れ、ユニット間での種組成の類似性が高いことが示され た。一方、休耕田と土水路のユニットは、それぞれ広い 範囲に分散して配置され、一部のユニットは他の土地利 用タイプには見られない特有の種組成を持っていること が示された。また、耕作水田のユニットが配置された範 囲の大部分は、休耕田と土水路それぞれのユニットが配 置された範囲に内包された。 指標種と共通種  指標種分析によって、単一の土地利用タイプに偏って 出現する指標種と、全ての土地利用タイプを通じて高い 頻度で出現する共通種が抽出された(表 1、附表)。耕 作水田の指標種としては在来種 11 種が選択され、その うち水湿生種は 9 種であり、その中には 3 種の絶滅危惧 種(ミズマツバ Rotala mexicana Cham. et Schltdl.、マル バノサワトウガラシ Deinostema adenocaulum (Maxim.) T.Yamaz.、キクモ Limnophila sessiliflora (Vahl) Blume)が 含まれた。休耕田の指標種としては、在来種 33 種(そ のうち水湿生種は 17 種、絶滅危惧種はサワトウガラシ 図 4.土地利用タイプごとの出現植物の種数面積曲線(平均値±標準偏差:計算の繰り返し回数は 500 回)。

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D. violaceum (Maxim.) T.Yamaz.1種のみ)の他に、外来 種 5 種(ホウキギク Aster subulatus Michx. var. subulatus、 ヒメムカシヨモギ Conyza canadensis (L.) Cronquist、オニ ノ ゲ シ Sonchus asper (L.) Hill、 ナ ギ ナ タ ガ ヤ Vulpia myuros (L.) C.C.Gmel.、 オ オ ク サ キ ビ Panicum dichotomiflorum Michx.)が選択された。土水路の指標種 としては、在来種 17 種(そのうち水湿生種は 9 種、絶 滅危惧種はホザキノフサモ Myriophyllum spicatum L. と コウガイモ Vallisneria denseserrulata (Makino) Makino の 2種)と外来種 5 種(オランダミミナグサ Cerastium

glomeratum Thuill.、 ホ ソ バ ヒ メ ミ ソ ハ ギ Ammannia coccinea Rottb.、アメリカセンダングサ Bidens frondosa L.、 オ オ ア レ チ ノ ギ ク Conyza sumatrensis (Retz.) E.Walker、コカナダモ Elodea nuttallii (Planch.) St.John) が選択された。コンクリ水路の指標種として選択された の は、 水 湿 生 種 の ホ ソ バ ミ ズ ヒ キ モ Potamogeton octandrus Poir. var. octandrus1種のみであった。一方、共 通種としては、在来種 26 種(そのうち水湿生種は 19 種、 絶滅危惧種はヒメミズワラビ Ceratopteris gaudichaudii Brongn. var. vulgaris Masuyama & Watano 1種のみ)と外 図 5.土地利用タイプごとの圃場・水路(ユニット)あたりの出現植物の種数(耕作水田:n = 68、休耕田:n =

68、土水路:n = 56、コンクリート三面張り水路:n = 65)。e)絶滅危惧水湿生種、f)外来種の種数は、全て の生活型の種数を一括した値である。箱ひげ図が示す値の種類は以下の通り;ひげの下端:最小値、箱の下端: 第一四分位点、箱中の太線:中央値、箱の上端:第三四分位点、ひげの上端:最大値、ひげより外側の黒点: 外れ値。アルファベットの違いはマンホイットニーの U 検定による多重比較で有意差があったことを示す。

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来種 2 種(アメリカアゼナ、セイタカアワダチソウ Solidago altissima L.)が選択された。

考 察

 本研究の主要な成果として、第一に、耕作水田におけ る絶滅危惧種を含む水湿生一・越年草のユニットあたり の種数が休耕田と同程度であり、土水路、コンクリ水路 よりも多いことを明らかにした点が挙げられる。耕作水 田の環境は、「裸地的な富栄養の浅水域または湿地」に 相当するが、水稲生産の場であるという特性上、水田雑 草としての水湿生植物を極力排除する方向で管理が行わ れてきた。しかし、本研究の結果は、耕作水田が一部の 水湿生植物にとってのハビタットとして機能しているこ とを示している。この事実は、耕作水田の指標種として 抽出された 11 種に、主たる減少の理由が現代農業の耕 作圧であるとされる 2 種の絶滅危惧種(マルバノサワト ウガラシとミズマツバ、新潟県 2001)が含まれていた ことや、同じく絶滅危惧種のヒメミズワラビが共通種と 判定され、耕作水田で高い出現頻度が記録されたこと等 に強調される。生物多様性の保全を検討する際、基礎と なる生物の生育情報が正確でなければ、実情に即した適 切な保全策を導出することは難しい。本結果は、現場で の継続的なモニタリングの重要性を強く示唆するもので ある。  水田に生育する水湿生植物の種組成は、20 世紀中盤 以降の近代慣行農法の導入、すなわち乾田化と除草剤使 用によって大きく変化してきた。乾田化の全国的な進行 に伴い、サンショウモ Salvinia natans (L.) All.、デンジソ ウ Marsilea quadrifolia L.、 ミ ズ オ オ バ コ Ottelia alismoides (L.) Pers.などの湛水・過湿条件の通年維持が 生育に不可欠な水生植物が水田圃場から消失することと なった(藤井 2009)。除草剤使用による水田雑草の変遷 については、伊藤(1993)が以下のようにまとめている。 まず、手取り除草が中心だった 1949 年の調査では、ヒ エ類やコナギなどの一年草が中心で、多年草ではマツバ イが目立つ程度であった。2・4D 除草剤が普及した 1950∼ 1960 年代には、この除草剤に抵抗性を持つヒエ 類の繁茂が問題化した。そこで、このヒエ類を防除する ために PCP 除草剤、CNP 除草剤などが導入されたが、 今度はこれらの除草剤に抵抗性を持つマツバイの増加が 問題となった。その後、ベンチオカーブ・シメトリン剤 の導入によってマツバイは減少したが、替わってウリカ ワ、ミズガヤツリ、ホタルイ類などの多年草が増加する こととなった。このように、我が国の水田における雑草 の種組成は、この半世紀の間に劇的な変化を繰り返して きた。そして、1980 年代後半に登場し、現在も全国的 に使用されている除草剤が SU 剤である(伊藤 2000;内 野・芝池 2007)。  SU 剤は、一回の投入で多くの雑草種に対して高い殺 草効果を示すため、除草剤の使用回数は体系処理最盛期 の年 2.5 回から年 1.2 回にまで減少したが、1990 年代の 後半には、SU 剤に抵抗性を持つ株の出現が複数の種に ついて報告されるようになった(伊藤 2000;内野・芝 池 2007)。代表的な SU 剤抵抗性雑草としては、アゼナ類、 アゼトウガラシ Lindernia micrantha D.Don、キクモ、キ カ シ グ サ Rotala indica (Willd.) Koehne、 ミ ゾ ハ コ ベ Elatine triandra Schkuhr var. pedicellata Krylov、イヌホタ ルイ Schoenoplectus juncoides (Roxb.) Palla、ミズアオイ Monochoria korsakowii Regel et Maack、 コ ナ ギ Monochoria vaginalis (Burm.f.) C.Presl ex Kunthなどが挙 げられる(伊藤 2000;内野ほか 2000;小荒井・森田 2002;古原・山崎 2003)。本調査地の耕作水田では、ほ とんどの圃場で SU 剤が使用されていると考えられるこ とから、出現頻度が高かった種については、SU 剤抵抗 図 6.在来植物種の種組成に基づく圃場・水路(ユニット)の 序列化(非計量多次元尺度法:計算の繰り返し回数は 1000 回)。土地利用タイプごとに、最も外側に配置されたユニ ットを実線で結び、種組成のばらつきの範囲を示した。な お、コンクリート三面張り水路については、水路あたりの 出現種数が著しく少なかったため、本解析から除外した。

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性株が存在すると推察される。すなわち、現行の絶滅危 惧種であるマルバノサワトウガラシ、ミズマツバ、キク モ、ヒメミズワラビの高い出現頻度も、SU 剤抵抗性株 の顕在化に起因している可能性がある。  上述の経緯から、現在の耕作水田の植生は、頻繁な物 理的・化学的攪乱を伴う現行の耕作圧に対応可能な、す なわち「SU 剤抵抗性を持ち、短期間で生活史を完了で きる」種群によって特徴付けられている可能性が高いと 言える。今回の場合、指標種分析で抽出された共通種及 び耕作水田の指標種(附表)がこの種群に該当すると考 えられる。低地における耕作水田の管理体制は画一的で あるため、これらの種については、当面は多くの耕作水 田に広汎に出現することができるだろう。一方、今回耕 作水田で出現が確認されなかった種については、現行の 管理体制が大きく変更されない限り、耕作水田で今後個 体群を維持できる可能性は低いと考えられる。それらの 種の保全に際しては、休耕田(耕作放棄田含む)の活用 を検討することが現実的である。  人口減少の時代を迎えている日本において、これまで の農地の全てを維持していくことは難しく、休耕田は今 後も増加していくと見込まれる。これらの休耕田を水湿 生植物のハビタットとして活用することができれば、よ り多くの種を保全できる可能性が高まるだろう。実際に、 本研究では、休耕田において水湿生植物のユニットあた りの種数と全体としての種数が共に多く、指標種の種数 も全土地利用タイプ中最多であるという結果が得られ た。このことは、管理方法の違いにより植生遷移段階が 異なる多数の休耕田の存在が、低地水田地帯全体として の水湿生植物の種多様性の向上に繋がっていることを示 している。除草剤散布や土壌耕起が毎年実施される休耕 田では、一・越年草が主体の植生が成立する一方、休耕 期間が長く管理がほとんど実施されない休耕田は、頻繁 な攪乱が起こる環境下で生活史を完了することが難しい 種群(特にヨシ、オギ Miscanthus sacchariflorus (Maxim.) Benth.、ガマなどの大型多年草)にとってのハビタット となると考えられる(大黒ほか 1996, 2003;河野 1998; 角野 1998;下田・中本 2003;池上ほか 2011)。  しかし、休耕田には外来種が出現する場合が多いこと には注意が必要である。低地の耕作水田が休耕または放 棄される際には、圃場整備の際に埋設された排水施設(排 水口・地中の暗渠など)が残置される場合がほとんどで ある。さらに、農業用水の供給もなくなるため、乾燥地 化する圃場が少なくない。耕作放棄直後の裸地に近い状 態で土壌の乾燥化が進めば、外来の攪乱依存種が速やか に侵入するであろうことは容易に推測できる。そこで、 休耕田を水湿生植物のハビタットとして機能させるため に有効な管理方法として、圃場の湿地化が挙げられる。 休耕田を湿地として管理することで、かつて生育してい た水湿生植物の埋土種子の発芽が促され、水辺植生が再 生した事例は複数存在する(関岡ほか 2000;北川・島 野 2010)。実際に、本研究の調査地内で乾燥地化が進ん でいた三筆の休耕田を筆者らが湿地化し、その後に成立 する植生を調査したところ、多くの水湿生植物の出現が 確認された(Takanose et al. 2013)。特筆すべきは、その 中の一筆において、今回の広汎な調査によっても出現が 確認されなかった、絶滅危惧種のミズアオイが出現した ことである。この結果は、かつて湿地帯であった低地水 田地帯の、水湿生植物のハビタットとしてのポテンシャ ルの高さを示していると言えるだろう。また、湿地環境 が維持されている休耕田では、乾燥地化している休耕田 と比較して、復田する際に掛かる費用が低くなるという 報告もある(有田ほか 2008)。すなわち、休耕田の湿地 化は、「水湿生植物の種多様性の向上」と「圃場の農地 機能の維持」の両面に有効な、優れた管理方法であると 言える。  低地においては、潜在的に洪水災害が発生しやすい地 域に休耕田を集中的に配置し、洪水時に遊水地として活 用するという手段も、土地利用の選択肢として考えられ る。その場合、平常時にも湿地環境が維持されるような 工夫(農業用水の利用や排水施設の撤去など)を行えば、 防災機能の向上と水湿生植物の保全の両立を実現できる 可能性がある。このような管理や配置が少しずつでも導 入されていけば、休耕田をより多面的に活用することが できるだろう。  これまでほとんど調査されてこなかった農業用水路に おける植生の種数及び種組成のパターンを評価し、耕作 水田や休耕田との違いを定量的に明らかにした点も、本 研究の重要な成果である。土水路では、ユニットあたり の水湿生植物の出現種数は耕作水田や休耕田よりも少な いものの、全体としては絶滅危惧種を含む水湿生植物の 種数が多く、低地水田地帯における水湿生植物の種多様 性の維持に大きく貢献していると考えられた。  コンクリ水路では、ユニットあたりの出現種数が極端 に少ない上に、指標種もほとんど存在しなかったことか ら、水湿生植物のハビタットとしての機能が他の土地利 用タイプよりも著しく低いことが示唆された。コンクリ 水路は、雑草の出現抑制を主要目的の一つとして導入さ れた環境であるため、植物の定着基盤として必要である

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土砂の堆積を阻害するような構造に設計されている。わ ずかにでも土砂が堆積している水路では、環境条件次第 で植物が出現することもあるが、出現可能な種は限られ る。絶滅危惧種であるオオミズヒキモ Potamogeton x kamogawaensis Mikiとクロモ Hydrilla verticillata (L.f.) Royleの 2 種の沈水植物は、コンクリ水路でのみ確認さ れたことから、「土砂の堆積」と「常時の通水」の両者 の条件が揃う場合には、コンクリ水路においても何らか の水湿生植物が出現する可能性はある。しかし、本研究 の結果は、そのような水路の存在は稀であることを示唆 するものである。これらのことから、コンクリ水路につ いては、水湿生植物のハビタットとして位置付けること が難しい環境であると考えられる。  本研究で調査対象とした土水路では、農業用水の通水 の時期や期間、毎年春に実施される江ざらいなどの管理 体制については、ほとんどの水路で同様であった。土水 路において、植生の種組成が水路間で大きく異なったこ とは、水路の断面構造や立地の違いに起因する排水能力 の差によって生じたと考えられる。水はけが良く、湛水 期間が耕作水田と密接に連動する土水路では、耕作水田 と類似した種組成の植生が成立する(石田ほか 未発表)。 一方、排水能力が低く、常に湛水状態が維持される土水 路では、種数は少ないものの、他の土地利用タイプには 見られない水湿生植物(浮葉・沈水植物)が出現する(石 田ほか 未発表)。ため池がほとんど存在しない越後平野 の水田地帯においては、こうした排水能力が低い土水路 を除くと、長期間湛水状態が維持される環境が存在しな い。すなわち、浮葉植物や沈水植物など生育のために常 時湛水を必要とする水湿生植物にとっては、このような 土水路がレフュージアとなると考えられる。  今後、農家の高齢化や農家人口の減少が更に加速化す る時代を迎えるにあたり、土水路はコンクリ水路への構 造転換やパイプライン化、水路そのものの放棄によって 減少していく可能性が高い。水湿生植物の保全の観点か らは、水湿生植物が豊富に生育する土水路の環境条件を 特定し、それに相当する環境をできる限り維持していく 農地計画の検討が望まれる。  最後に、本研究で新たに得られた、低地水田地帯にお いて水湿生植物保全を検討する際に有用な知見について まとめたい。まず前提として、土地利用タイプ間で種組 成が異なる(図 6)ことを認識しておく必要がある。す なわち、「ユニットあたりの種数が多い耕作水田だけ(図 5)」、「ユニット間の種組成のばらつきが大きい休耕田ま たは土水路だけ(図 6)」を確保すれば良いのではなく、 各土地利用タイプに特有の種群をそれぞれ保全し、相互 に補い合うことで、水田地帯全体として種多様性向上を 図ることが望ましい。各土地利用タイプで優先的に保全 する種群の選定には、指標種分析の結果(附表)が参考 となるだろう。また、保全に投資できる努力量(保全対 象として確保する面積)が限られている場合、種数面積 曲線を活用することで、より保全効果の高い計画を提言 できる可能性がある。本研究の場合、耕作水田及び休耕 田の水湿生種数・絶滅危惧種数の曲線が途中で頭打ちに なる一方、土水路の曲線は頭打ちにならなかった(図 4)。 このことから、保全対象として確保する面積について、 耕作水田・休耕田は中程度の面積を、土水路はできるだ け大面積をそれぞれ確保する、といった配分を行った方 が効果的であると考えられる。

謝 辞

 編集委員長及び 2 名の匿名査読者からは、本論文を執 筆するにあたり有益なご指摘をいただきました。調査範 囲の農家の方々からは、水田や水路における調査を快く ご許可頂きました。亀田郷土地改良区及び西蒲区土地改 良区の職員の方々からは、越後平野の稲作に関する様々 な情報を教授頂きました。新潟県立植物園の久原泰雅氏、 新潟大学(当時)の池田淳一氏、松本さおり氏、山田い ずみ氏、五十嵐彬子氏、斎藤友恵氏、大山拓郎氏、斎藤 瑛璃香氏、斎藤時子氏、張替 徹氏、小戸田紋郁氏から は、植生調査に際し多大なご協力を頂きました。以上の 方々に、心より御礼申し上げます。なお、本研究は日本 学術振興会特別研究員奨励費(課題番号:20−8057)の 補助を受けて実施しました。また、本研究には、環境省 「環境総合研究推進費」S−9−4 の補助を受けて再度取 りまとめ、解析を行った結果が含まれます。

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附表.各植物種が出現した圃場・水路(ユニット)の数。「区分」の列における記号について、W は在来水湿生種、WE は絶滅危惧 水湿生種、N は水湿生種以外の在来種、A は外来種を示す(それぞれの定義は本文参照)。「指標」の列における土地利用タイ プ名は、その種がその土地利用タイプに偏って出現したことを示す(指標種分析:P < 0.05)。同様に、指標種の列における「共 通」は、その種が全土地利用タイプに共通して高い頻度で出現した種であることを示す(指標種分析:定義は本文参照)。また、 「耕作田」は「耕作水田」の、「コン水」は「コンクリート三面張り水路」の略である。 種名 学名 区分 生活型 耕作田 (n = 68) 休耕田 (n = 68) 土水路 (n = 56) コン水 (n = 65) 指標 トクサ科 スギナ Equisetum arvense N 多年草 26 21 32 6 共通 イヌスギナ E. palustre W 多年草 3 1 6 4 イノモトソウ科

ヒメミズワラビ Ceratopteris gaudichaudii var. vulgaris WE 一年草 42 12 17 3 共通 オウレンシダ Dennstaedtia wilfordii N 多年草 0 1 0 0 オシダ科 ミゾシダ Stegnogramma pozoi N 多年草 0 1 0 0 マツ科 アカマツ Pinus densiflora N 木本 0 1 0 0 クロマツ P. thunbergii N 木本 0 2 0 0 スギ科 スギ Cryptomeria japonica N 木本 0 1 0 0 ヤナギ科 タチヤナギ Salix subfragilis N 木本 0 1 0 0 ニレ科

エノキ Celtis sinensis var. japonica N 木本 0 3 0 0

ケヤキ Zelkova serrata N 木本 0 1 0 0 イラクサ科 ミズ Pilea hamaoi N 一年草 0 1 0 0 タデ科 ヤナギタデ Persicaria hydropiper W 一年草 56 43 21 9 共通 オオイヌタデ Pe. lapathifolia W 一年草 0 2 1 1 イヌタデ Pe. longiseta N 一年草 8 26 17 2 休耕田 ヤノネグサ Pe. nipponensis W 一年草 2 3 1 0 ハナタデ Pe. posumbu N 一年草 2 0 0 0 ボントクタデ Pe. pubescens W 一年草 0 2 1 0 アキノウナギツカミ Pe. sieboldi W 一年草 1 8 1 0 休耕田 ミゾソバ Pe. thunbergii W 一年草 3 2 13 1 土水路 ホソバイヌタデ Pe. trigonocarpa WE 一年草 0 0 1 0 ハルタデ Pe. vulgaris N 一年草 0 0 1 0 ヒメスイバ Rumex acetosella A 多年草 0 0 0 1 ギシギシ R. japonicus N 多年草 0 0 0 1 ヤマゴボウ科 ヨウシュヤマゴボウ Phytolacca americana A 多年草 0 1 0 0 ザクロソウ科 ザクロソウ Mollugo pentaphylla N 一年草 1 0 0 0 スベリヒユ科 スベリヒユ Portulaca oleracea N 一年草 15 7 17 7 土水路 ナデシコ科 ノミノツヅリ Arenaria serpyllifolia N 越年草 1 0 2 1 オランダミミナグサ Cerastium viscosum A 越年草 1 1 15 5 土水路 ツメクサ Sagina japonica N 越年草 2 2 9 1 土水路 コハコベ Stellaria media N 越年草 2 2 2 1 ミドリハコベ S. neglecta N 越年草 2 0 0 0

ノミノフスマ S. uliginosa var. undulata N 越年草 27 28 21 4 共通 アカザ科

シロザ Chenopodium album N 一年草 0 1 0 0

ヒユ科

(16)

種名 学名 区分 生活型 耕作田 (n = 68) 休耕田 (n = 68) 土水路 (n = 56) コン水 (n = 65) 指標 キンポウゲ科 ケキツネノボタン Ranunculus cantoniensis N 多年草 0 1 4 0 キツネノボタン Ra. silerifolius N 多年草 1 4 5 5 スイレン科 フサジュンサイ Cabomba caroliniana A 多年草 0 0 1 0 コウホネ Nuphar japonicum W 多年草 0 0 1 0 マツモ科 マツモ Ceratophyllum demersum WE 多年草 1 0 2 3 オトギリソウ科 コケオトギリ Sarothra laxa W 一年草 24 16 3 1 耕作田 ケシ科 ムラサキケマン Corydalis incisa N 越年草 2 0 0 0 アブラナ科 タネツケバナ Cardamine flexuosa W 越年草 58 59 39 25 共通 マメグンバイナズナ Lepidium virginicum A 越年草 0 0 1 0 イヌガラシ Rorippa indica N 多年草 13 3 9 0 スカシタゴボウ Ro. islandica W 越年草 53 29 27 14 共通 キレハイヌガラシ Ro. sylvestris A 多年草 0 0 1 0 ベンケイソウ科 コモチマンネングサ Sedum bulbiferum N 越年草 10 8 32 23 共通 バラ科

ヘビイチゴ Duchesnea indica var. leucocephala N 多年草 2 0 0 0

ノイバラ Rosa multiflora N 木本 0 2 0 0

クサイチゴ Rubus hirsutus N 木本 0 0 1 0 マメ科

クサネム Aeschynomene indica W 一年草 24 39 21 5 共通

ヤブマメ Amphicarpaea bracteata subsp. N 一年草 0 4 0 0 休耕田

edgeworthii var. japonica

ヤハズソウ Kummerovia striata N 一年草 0 2 0 0

ツルマメ Glycine max subsp. soja N 一年草 0 0 0 1

シロツメクサ Trifolium repens A 多年草 5 1 5 1 ヤハズエンドウ Vicia angustifolia var. segetalis N 越年草 0 2 5 5 カタバミ科 カタバミ Oxalis comiculata N 多年草 2 1 0 2 トウダイグサ科 エノキグサ Acalypha australis N 一年草 37 17 26 9 共通 コニシキソウ Chamaesyce maculata A 一年草 2 1 4 0 コミカンソウ Phyllanthus urinaria N 一年草 1 0 0 0 ブドウ科 ノブドウ Ampelopsis brevipedunculata N 木本 0 1 0 0 var. heterophylla スミレ科 タチツボスミレ Viola grypoceras N 多年草 8 10 1 0 休耕田 スミレ V. mandshurica N 多年草 1 5 1 0 休耕田 ツボスミレ V. verecunda W 多年草 1 1 3 2 ミゾハコベ科 ミゾハコベ Elatine traiandra W 一年草 33 16 12 5 共通 ウリ科 カラスウリ Trichosanthes cucumeroides N 多年草 0 1 0 0 ミソハギ科 ホソバヒメミソハギ Ammannia coccinea A 一年草 0 0 2 0 土水路 ヒメミソハギ A. multiflora W 一年草 2 1 2 2 ミソハギ Lythrum anceps W 多年草 0 2 0 0

キカシグサ Rotala indica var. uliginosa W 一年草 28 25 9 2 共通 ミズマツバ Rot. pusilla WE 一年草 10 7 1 0 耕作田 附表つづき

(17)

種名 学名 区分 生活型 耕作田 (n = 68) 休耕田 (n = 68) 土水路 (n = 56) コン水 (n = 65) 指標 ヒシ科 ヒシ Trapa japonica W 一年草 0 0 1 0 アカバナ科 アカバナ Epilobium pyrricholophum W 多年草 0 14 3 0 休耕田 チョウジタデ Ludwigia epilobioides W 一年草 65 56 35 20 共通 メマツヨイグサ Oenothera biennis A 越年草 0 3 0 0 アリノトウグサ科 ホザキノフサモ Myriophyllum spicatum WE 多年草 0 0 2 0 土水路 セリ科 ドクゼリ Cicuta virosa W 多年草 0 0 1 0 ノチドメ Hydrocotyle maritima N 多年草 3 0 2 0 チドメグサ H. sibthorpioides N 多年草 1 1 5 0 土水路 セリ Oenanthe javanica W 多年草 6 15 25 6 土水路 サクラソウ科 ヌマトラノオ Lysimachia fortunei W 多年草 0 0 1 0 コナスビ L. japonica N 多年草 0 0 2 1 アカネ科

ヤエムグラ Galium spurium var. echinospermon N 越年草 1 2 0 0 ヨツバムグラ G. trachyspermum N 多年草 0 0 1 1

フタバムグラ Hedyotis diffusa W 一年草 14 8 11 3 耕作田 ハシカグサ Neanotis hirsuta var. hirsuta N 一年草 0 0 1 0

ヘクソカズラ Paederia scandens N 多年草 0 4 0 0 休耕田 ヒルガオ科 ヒルガオ Calystegia japonica N 多年草 0 1 0 0 ムラサキ科 ハナイバナ Bothriospermum tenellum N 越年草 4 0 9 1 土水路 キュウリグサ Trigonotis peduncularis N 越年草 0 3 2 0 アワゴケ科 ミズハコベ Callitriche palustris W 一年草 0 0 0 1 シソ科 トウバナ Clinopodium gracile N 多年草 0 2 2 0 ナギナタコウジュ Elsholtzia ciliata N 一年草 0 1 0 0 カキドオシ Glechoma hederacea subsp. grandis N 多年草 0 0 1 0 ヒメオドリコソウ Lamium purpureum A 越年草 0 0 1 1 ヒメジソ Mosla dianthera N 一年草 6 23 14 1 休耕田 ヒメナミキ Scutellaria dependens W 多年草 0 2 0 0 ゴマノハグサ科 マルバノサワトウガラシ Deinostema adenocaulum WE 一年草 16 16 0 0 耕作田 サワトウガラシ D. violaceum WE 一年草 12 16 0 0 休耕田 アブノメ Dopatrium junceum WE 一年草 3 3 0 0 キクモ Limnophila sessiliflora WE 多年草 16 12 4 1 耕作田 スズメノトウガラシ Lindernia antipoda W 一年草 10 7 1 0 耕作田 アメリカアゼナ(広義) Li. dubia A 一年草 68 49 39 20 共通 アゼトウガラシ Li. micrantha W 一年草 35 30 3 2 共通 アゼナ Li. procumbens WE 一年草 2 7 2 1 トキワハゼ Mazus pumilus N 一年草 32 13 22 10 共通 タチイヌノフグリ Veronica arvensis A 越年草 0 2 0 0 オオイヌノフグリ Ve. persica A 越年草 1 0 4 3 オオバコ科 オオバコ Plantago asiatica N 多年草 2 0 1 0 スイカズラ科 キンギンボク Lonicera morrowii N 木本 0 1 0 0 キキョウ科 ミゾカクシ Lobelia chinensis W 多年草 9 6 2 1 キク科 ヨモギ Artemisia princeps N 多年草 2 10 3 1 休耕田 附表つづき

(18)

種名 学名 区分 生活型 耕作田 (n = 68) 休耕田 (n = 68) 土水路 (n = 56) コン水 (n = 65) 指標 ノコンギク Aster ageratoides subsp. ovbatus N 多年草 0 0 1 0

ホウキギク As. subulatus var. subulatus A 越年草 0 5 0 0 休耕田

ヨメナ As. yomena N 多年草 2 0 0 0 アメリカセンダングサ Bidens frondosa A 一年草 13 21 25 11 土水路 タウコギ B. tripartita W 一年草 17 5 7 1 耕作田 トキンソウ Centipeda minima N 一年草 58 43 29 9 共通 ダンドボロギク Erechtites hieracifolia A 一年草 2 3 0 0 ヒメジョオン Erigeron annuus A 越年草 0 3 0 0 ヒメムカシヨモギ Er. canadensis A 越年草 1 11 1 0 休耕田 ハルジオン Er. philadelphicus A 多年草 1 0 0 0 オオアレチノギク Er. sumatrensis A 越年草 13 8 14 6 土水路 ハハコグサ Gnaphalium affine N 一年草 15 4 2 2 耕作田 オオジシバリ Ixeris debilis N 多年草 0 0 1 0 ニガナ I. dentata N 多年草 5 9 1 0 休耕田 イワニガナ I. stolonifera N 多年草 0 0 2 1 アキノノゲシ Lactuca indica N 越年草 0 20 1 0 休耕田 コオニタビラコ Lapsana apogonoides N 越年草 3 0 1 0 ノボロギク Senecio vulgaris A 越年草 6 7 4 2 セイタカアワダチソウ Solidago altissima A 多年草 6 43 8 2 共通 オニノゲシ Sonchus asper A 越年草 2 16 0 1 休耕田 ノゲシ So. oleraceus N 越年草 13 12 2 0 耕作田 オオオナモミ Xanthium canadense A 一年草 0 0 1 1 オニタビラコ Youngia japonica N 越年草 1 1 0 0 オモダカ科 ヘラオモダカ Alisma canaliculatum W 多年草 0 2 1 0 ウリカワ Sagittaria pygmaea WE 多年草 0 0 1 0 オモダカ Sa. trifolia W 多年草 20 7 8 4 耕作田 トチカガミ科 コカナダモ Elodea nuttalli A 多年草 1 0 16 10 土水路 クロモ Hydrilla verticillata WE 多年草 0 0 0 1 ミズオオバコ Ottelia japonica WE 一年草 0 0 1 0 コウガイモ Vallisneria denseserrulata WE 多年草 0 0 2 0 土水路 ヒルムシロ科 オオミズヒキモ Potamogeton x kamogawaensis WE 多年草 0 0 0 1 ホソバミズヒキモ Po. octandrus W 多年草 0 0 3 8 コン水 ヤナギモ Po. oxyphyllus W 多年草 0 0 2 0 土水路 ヒルムシロ属の 1 種 Potamogeton sp. W 多年草 0 0 3 3 ユリ科 オオバギボウシ Hosta montana N 多年草 0 1 0 0 ミズアオイ科

コナギ Monochoria vaginalis var. plantaginea W 一年草 39 20 10 13 共通

イグサ科

イグサ Juncus effusus var. decipiens W 多年草 0 11 2 0 休耕田

コウガイゼキショウ J. leschenaultii W 多年草 0 14 0 0 休耕田 アオコウガイゼキショウ J. papillous W 多年草 0 0 1 0 クサイ J. tenuis N 多年草 0 2 0 0 ツユクサ科 ツユクサ Commelina communis N 一年草 8 8 20 4 土水路 イボクサ Murdannia keisak W 一年草 29 37 38 7 共通 ホシクサ科 ホシクサ Eriocaulon cinereum W 一年草 0 3 0 0 ヒロハノイヌノヒゲ Erio. robustius W 一年草 0 3 0 0 イネ科 ヌカボ Agrostis clavata N 一年草 0 5 2 0 休耕田 スズメノテッポウ Alopecurus aequalis W 越年草 18 32 33 4 共通 メリケンカルカヤ Andropogon virginicus A 多年草 0 1 0 0 附表つづき

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