実 践 紹 介
51 1.実践の概要
「アカデミックリーティング入門3 4」は留学生のためにリライトされた専門的なテキ ストを読むことで,読解力の向上とアカデミックな文章の構造を理解することを目的とす る科目である。李(2020)は,本科目の特徴を
ICT
活用の面から述べているが,本稿で は,2020年春学期のコロナショックによるオンライン化においてどのような取り組みを 行ったかについて述べる。2020年度春学期においては
Waseda Moodle
で12回の授業として行った(表1)。なお,授業の到達目標(アカデミックな日本語の文章構造を理解する。アカデミックな日本語で つかわれる文法や語いが使えるようになる)と教科書(アカデミック・ジャパニーズ研究 会(2015)『大学・大学院留学生の日本語(1)読解編』アルク)は対面の授業と同じであ る。
早稲田日本語教育実践研究 第 9 号
アカデミックリーティング
―Moodle を使った実践―
李 在鎬
科目名:アカデミック・リーディング入門 3-4 レベル:初級 1・2 /中級 3・4 ・5 /上級 6・7・8 履修者数:35 名
表 1 12 回分の授業計画
講義ID 内容 目標
講義1 ガイダンス 授業の進め方と課題の提出方法がわかる 講義2 第1課:ことばの役割 日本語の段落の特徴がわかる
講義3 第2課:イルカと超音波 段落の中心文と支持文がわかる 講義4 第3課:地図の分類 アウトラインの構造がわかる 講義5 第4課:睡眠時間 定義の表現がわかる
講義6 第5課:日時計 経過の表現がわかる 講義7 第6課:研究者のタイプ 比較・対照の表現がわかる 講義8 第7課:地球温暖化 原因・結果の表現がわかる 講義9 私の本棚プロジェクト1回目 グループ別の話し合い 講義10 第8課:風呂場の戸 位置を表す表現がわかる
講義11 私の本棚プロジェクト2回目 発表資料の作成。発表日(1日目)
講義12 私の本棚プロジェクト3回目 発表日(2日目)
早稲田日本語教育実践研究 第 9 号/ 2021 / 51―52
52 2.オンライン化
オンライン化においては,表1の計画にそって
Waseda Moodle
の非同期型の授業として デザインした。各講義は図1のように構成した。オンライン化において特に意識したこ と・工夫したこととして,以下の6つが挙げられる。1.講義のはじめにガイドコンテンツをおいて,
何をするのかを明確に示す。
2.大単位の「講義」小単位の「
STEP
」ですべ ての講義を構造化する。3.基本となる流れは変えず,部分的に新規コ ンテンツを入れる。
4.講義動画は2〜4分程度の長さで作成する。
5.フィードバックはこまめかつ直後に行う。
6.オンデマンドの授業ではあるが,直接質問 できる環境を必ず作っておく。
まず,1として講義の最初は「講義の進め方」というページコンテンツをアップし,各
STEP
の学習方法と課題の提出締切を明示した。オンライン授業の場合,教師がそばにい るわけではないので,講義の進め方について明確に説明しておくことが重要であると考え たため,このような対応をとった。次に,2として大単位の「講義」に対して,スモール ステップとなる「STEP
」という単位ですべての講義を構成した。1つのSTEP
は,5〜10 分で可能な活動にして,合計として90分を超えないように配慮した。次に,3として基 本的な流れである「音読のアップロード→動画資料の閲覧→課題の提出→受講生同士の相 互討論→作文の提出」はすべての講義で盛り込みつつも,部分的に新しい方法を入れた。それは,学習が単調になることを防ぐためである。具体的にはコンテンツのパターンを かえたり,相互討論の方法をかえたりした。次に,4として講義動画はできる限り,シン プルなものにすることを心がけた。動画の長さに関しては4分を超えないようにした。そ して,動画の形式もパワーポイントに音声を吹き込み,
MP
4で出力するだけのシンプル なものにした。次に,5として音読や課題に関してはすべてフィードバッグを行った。そ れは,オンライン授業とはいえ,できるだけ孤独感なく,学習できるようにしたい,と 考えたからである。最後に,6として質問はライブセッションで行えるようにし,Waseda Moodle
で実装されているCollaborate
を利用して実施した。参考文献
李在鎬(2020)「ICTを利用した読解授業について」『日本語教育連絡会議論文集』32,15-22.
(http://renrakukaigi.kenkenpa.net/ronbun/2019008.pdf)
(り じぇほ,早稲田大学大学院日本語教育研究科)
図 1 Waseda Moodle