l
綱 紀夢 NQ5 7 :1 4 1 ‑ 1 6 0 ( 平 成1 5年)
教 育課樫経 常 の 継 続 的 更 新 に お け る 教 師 の 信 念 の 形成 要 因 に 関 す る 事例 研 究
‑ エ
ス ノ グ ラ フ
イ 一に 基 づ く ラ イ フ ヒ ス トリ
ー分 析 を 中 心 に
‑黒 羽 正 見
(
2 0 0 2
年1 0
月2 1
日 受 理)T h e
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s b elie* o n
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h e c o nt
in u al r e n e wal in c u r ric ulu m m a n age m e nt
. Ac c o rdingt
o r e s e a r ch m at
e rials,fa ct
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e a che r'
s b eliefs o n
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in u al r e n e w al a r e a s follo w;
1 . T hey a r e lat
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heir fa milie s fr o m e a rly ch ild ho od.2二 T hey will m e e
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h eir s ch o ols.4 . T hey will m e e
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hr o ug ht
heir o w nt
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ic e.5 . T hey a r e gr e a
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y.Se c o ndly,
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h e fu nda m e nt
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in u al r ehe w al・in c u r ric ulu m m a n age m e nt
a r e a s follo w;
1 . To fo r mt
e a che r■
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e a ch e r in e a rly ch ild ho od.2 . T o fo r m
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heir s cho ols.3 . To fo r m
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in u al r e n e w al in c u r ric ulu m m a n age m e nt
.キー ワー ド: 教 師
の
信 念 継続 的更新 教 育 課程 経 営 ラ イフ ヒ ス
ト リ ー エス ノ
グラ フ イ
‑Key w o rd s :
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問 題
の所 在
と本稿
の意 図
本教育実 践 総 合
セ
ン タ ー 紀 要 第3 号で
は, 公立 S 小 学 校の
教 育 課 程 経 常の
継 続 的 更 新 要 因を教 師の
信 念に
着目 し, その
更 新を促す歴 史 的 特 質を解明し な が ら考 察し
て
き た。 そ して
継 続 的 更 新の
具 体 的 様 相を踏ま えて
, その
促 進 要 因と して
, 日々
の
授 業 実 践を機 軸と し た後 継 者 育 成の
指 導 体 制の
確立, 外 部 講 師との
形 式 性を排 除し た徹 底し た授 業 実 践の
場の
構 成, 学 校 教 師 集 団 (校 長, 教 頭の
管理職も含む)・ 行 政 関 係 者, , 研 究 者そ れ ぞ れ
の
価 値 創 造者と して の
自覚,の
3 点を指 摘し た。こ こ で
, 筆 者は さ らに
踏み込んで
, 3 0余年に
亘 る継 続 的 更 新を推 進して
き た教師の
信念の
形成要 因に
着目し たv
)。 とい
うの
も, S 小 学 校の
同 僚 教 師は, 主 導者と して
新 任 教 員や異 動 教 員に
S /ト学 校独自の
「充 実し た信 念」(1)
の
形成を促す価 値 創 造者(2)の
役 割を果た して V
) た か らで
あ る。 その
た め, 個 別 教師は決して
一 人の
殻に閉じこ
も るこ
と な く, 自身の
能 力を率 直に
発揮しつ つ,一 互い
に
協 力して
教育目標の
効 果 的な達成を めざす教育琴
程経営を継続的に更新して
き たの で
あ る。そ
こ で
本 稿で
は, S 小 学校の
教育課 程経営の
継 続的 更 新を促 進す る教 師の
信 念の
形 成 要 因を明ら かに
す る。 具 体 的に は, S 小 学 校の
教師集 団が共 有す る 「充 実 し た信 念」の
特 徴が顕著に
現れて い
る個 別 教 師に
焦 点を当て
, そ れ らの
具 体 的 事 例に
即して
分 析 ・ 考 察す る。】l
教 師
の信 念
の形 成 要 因
に関 す る 研 究 の 視 座
1 先 行研 究の検 討
ラ イ
フ ヒ ス
ト リ ー は,口
述史, 自 伝, 日 記な どの
個 人の
一 生の
記 録を意 味し, 対 話 形 式で
行わ れ る口
述史 (o r al hist
o ry) が主 要な方 法で
あり,そ
の
個 人の
肉声を汲み取 り, 日 常 的な内 面的成長の
感 覚を照 射す る点に
価 値が あ る (3) 。口
述史の
方 法論を取 り 上 げた中 野 卓は, 歴 史 的事実
の
信 頼 性 への
問い
に着目し,口
述史の
可 能 性に関して
次の
よ うに
述べて い
る。 す な わ ち,「本 人が自己
の
現 実の
人 生を想 起 して
述 べて L
,) る ラ イフ ス
ト リ ーに
, 本人の
内 面か ら み た現 実の
主体 的 把 握を重 視 しつ つ, 研 究 者が近 現 代の
社 会 史と照 合し位 置づ け, 註 記を添 え, ラ イフ ヒ ス
ト リ ーに
仕 上 げる」 (
4)
と.
こ の
見 解は ま さに
歴 史を その
内 側か ら 生 き た人 間が, 歴 史の
真 実 性を探 究しつ つ, ラ イフ ヒ ス
ト リ ー を語る時の
確か さの
基 準を提 示し た もの
と 理解で
き る。 ま た桜 井 厚は
, 被 差 別 部 落の
ラ イフ ヒ ス
ト リ ーの
研 究 成 果を踏ま えて
, 語 り を 通して
象 徴 的に
読み解く方 法を構 想し た。 桜 井に
よ れば, 語りの
行 為とは
過 去の
出 来 事や体 験を述ベ る
こ
と以上に
, 「 い ま‑こ こ
」 を主 体が 生 き るこ
とで
あり, 人 間が素 朴に過 去の
出来事と し て提 示し た り, 主 体の
主 観 的な意 味や解釈と 理解す る もの の
中で
, 現 在の
社 会 や 共 同 体で
生きて
き た証 と し て読み解か れ る と述べて い
る(5) 。 つ ま り桜 井は, 語り が どの
よ う な文 脈で
行わ れ る か とい
う 語りの
様式を重視して い
る。し か し な が ら,
こ
れ まで
発表さ れ た わ が国の
教 師の
ラ イフ ヒ ス
ト リ ーの
事 例 研 究は, 閉 鎖的な学 校 (教 員) 文 化の
ような歴 史 的背景も あ り, 教師の
生 活 世 界に即 し たもの
は極めて
少ない
(6) 。 その
数 少ない
中で
高 井良健 一 (1 9 9 4) (7) と塚 田 守 (1r9 9 7) ( 8 )の
教師の
ラ イフ ヒ ス
ト リ ーの
事 例 研 究 を取り上 げ, 筆者の
事 例 研 究との
異 同を明ら か に する。まず 塚 田は, 教師1 8名
に
対して
教 師 体 験を自由 に語る形 式を採っ た。 その
間き取り調 査の
分析に
基づ き, 仮 説 的に
教師タ イ プを 四 つに
分 類 して
,そ れ ぞ れ を例証的
に
論じ た。 その
結果, 教師の
タ イ プを静 的な類 型に
分け るの で
は な く, ラ イフ ヒ ス
ト リ ー が具 体 的に
変化 して い
く過 程を事 例 的に 記 述 するこ
とで
, 等 身 大の
高校 教 師の
理 解を促し た とい
う 点で
価 値が あ る。 た だ塚田自身も指摘して
い る通り,口
述に
基づい
た分 厚い 畠述が本来あ
るべ き
で
あ り, 被 調 査 者の
生の
声を生か して
, そ れ ぞ れの
語り を分 析す る手 法で
あ れ ば,一 層教師
の
リア
1) ティ に
迫るこ
と がで
き た と思わ れ る。次
に
高井 良 健 一 は, 若 狭 蔵 之 助とい
う 一 人の
教 師の
生い
立ち か ら退 職まで の
3 0時 間 以 上に
亘る聞 き取りの
記憶を も とに
, 具 体 的な事 例に基づく 教 職 生 活に
お け る中年期の
危機の
問 題を考 察し た。そ
の
結 果, 中年期の
危 機の
持つ閉塞性と, その
危 機と格 闘す るこ
とに
よっ〜
て
拓か れ る新た な キャ リア
・ス
テ ー ジの
可 能 性に
つ いて
論 述し た点は
注 目に
値す‑る。 し か し, 実 際
の
若 狭の
教 師生活の
文 脈に
入 り込んで
引き出し た語りで
ない
た め, 敏 師
の
葛 藤や そ
の
克 服の
過 程を照 射す る点で の
不 十 分さは
否め ない
。 や は り ラ イフ ス
ト リ ー を語る とい う その
行 為その
もの
が, ラ イフ ヒ ス
ト リ ー を創 造す るの で
あ る か ら, どの
よ う な場で
, そ して
どの
よ う な文 脈の
中で
語ら れ たの
か, その こ
と が重 視さ れ な け れ ばな ら ない
。 す な わ ち, 個々 の
教 師が実教 育課 程経 営
の
継 続 的更新に お
け る教 師の
信念の
形 成 要 因に
関す る事例 研 究際に生 活し
て い
る文 脈に入 り 込ん でこ
そ, 個々の
教師の
その
人 なら で はの
「教師らし さ」 が表 出する自然な語り を精 細に描き出し, そ
の
語りの
深層に
まで
踏み込ん だ 生 き 生 き と し た記 述の
可 能 性が 拓け て来る と思わ れ る。 その
た めの
研 究 方 法と して
, エス ノ
グラフ イ
一 に基づくラ イフ ヒ ス
ト リ ー 分析が意味深い
と考え る。2 ‑
エ
ス ノグ ラフイ
一 に 基 づ く する ライフ ヒ スト リ ー 分析の必要性工
女 ノグラフ イ
‑ を採用 する研 究の
ほ と ん どぬ,
「
フ ィ
ール
ドワ
ー ク」, つまり 対象との
直接 的な か か わ り合い の
中か ら デ ー タ を収 集す る。こ の
デ ー タ収集 法 q)
特 質は,フ ィ
ール
ドワ
ー クの
際に参与 観 察法, イン
タ ビ ュ ー , ド キ ュ メン ト, そ して
時 に は ラ イフ ヒ ス
ト リ ーの
技法まで
も含め, そ れ らの
技法を複数組み合わ せ るこ
と に よ っ て網羅 的 ・ 総 合 的 ・ 多角 的に デ ー タ を得る点に あ る。こ こ で
重 要な
の
は, エス ノ
グラフ イ
‑ が, 同 時に二
つ以 上の
技 法を組み合わやて
用い
るこ
とで
, そ れ ぞ れの
技法の
持つ短 所を補い
, 別々の
方 法で
収 集さ れ た デ ー タ を他の
方殊に
照ら して
, 研究 方 法の
妥 当 性と デ ー タの
信 頼性を高め ようとする点で ある。 一 般 的に ラ イフ ヒ ス
ト リ ー は イン
タ ビュ ∵ を主た る手 段とする口
述 筆 記の
ラ イフ ス
ト リ ーで
あ り,そ
の
分析で あ る。 それに対 するエス ノ
グラフ イ
‑ は, 日常の
生 活 世 界その
もの
を, その
場に参加し て, その
場の
文 脈性に入 り 込んで
内 側か ら認 識す る方 法で
あ る。 その
た めに
, 生 活の
場に表 出さ れ る会話や し ぐ さ等 観察 可 能な行 為, とりわ け発話や そ
の
意 味を直 接の
対象と す る。 ま た主観的リ ア リ ティ の
再 構 成に関して
, ラ イフ ヒ ス
ト リ ー は行 為 者が語る過 去の
出来事 や体験か ら再 構 成する。 し か しエス ノ
グラフ イ
‑ は, 過 去 も含め た現 在と 将来に か か わ る事柄を再構 成する。 し か も, 再構 成 し た主 観 的リ7
'リ ティ の
一般 化
の
可 能 性の
根 拠 づ けに
つい て
, ラ イフ ヒ ス
ト リ ー が意 味 体 系の
獲 得や転 機の
契 機を語るこ
とに
求めて い
るの に
対 して
, エス ノ
グラフ イ
‑ は生 活を共 有 する共 同 体の
中の
固 有な文 化の
全 体 像を洞 察 力に
満ち た叙 述に
ょ って
提 示す るこ
とに
求めて
いるoこ
れ は,老 の
世 界
の
内 的顔
理 を すで
に その
世 界で
生 活し, 自 明性
の
中に埋め込 まれ てい
る人々 と協 働し な が ら,そ
の
人々の
視点古.
=
立 ち, 焦 点づけ, 組み立て るこ
と が求め られる ( 9 ) 0̲
こ の
よ う な意 味か ら, ラrVフ ヒ ス
ト リ ー 分 析も 教師の
現 実 場面に頻 繁に直援 参加 し, その
場の
文 脈 性に入 り 込むこ
と に よ っ て, 教師の
語る言葉の
中に
表 面的な意 味を越
え た独特の
感慨や背景 的事 情を汲み取り, その
教師の
ラ イフ ス
ト リ ー に込め ら れ た感情やこ
だわ り等の
「内な る声」(1 2)
を洞察 ・ 了解する
こ
と が重 要で
あ る と考え る。‖
教師
の信念
の形成 要 因
に関 す る 分 析
の
目 的 と 方 法
1 分析目的
本 事例 調 査は, S 小 学校
の
教育課程 経 営の
̲継続 的更 新を促 進す る教師
の
信念の
形成要 因を分析 ・ 考察 す‑る
こ
と を目 的と す るo すな わ ち, 教師の
教 育行 為を規定し てい
る と み な し得る教師の
信 念を,自 身
の
内 面に豊富に蓄 検し てい
る体験 的 知識で ある挿話 (ep is ode) と し
て
自然に
表出さ せ , その
挿話駒 語り を分析 ・ 考 察す る。 とりわ け, 校内 教 師集 団が共有する 「充 実 し た信念」
の
特徴が顔 著に
現れ てい
る▲B 教頭, C 教務主 任, D 研修 主 任の
3 人に焦 点を当て た具体的事例を分析・ 考 察する。2 本 事例 選定の理由
S 小・学校
の
教師 集団は, 日々の
授 業 実践を通して
着 実な職能 発 達に努めて い
る。 そ して
, その
よ うな個 別 教師の
実践の
基底に 「教師は互い
に厳しく磨き合え て
こ
そ発 達 する」,「教師は自身
の
仕事に責任と誇りを持つ べ き
で
あ る」,「教師は児 童
の
変容に鋭 く 気付き, その
変 容を見 逃さ ない
目を持って
実践し な け ればなら ない
」 等の
関連 する信 念が有機 的に結合し, s 小学校
の
授 業 観や教 職観の
信 念 体 系を形 成 して い
るこ
と が推 察で
き た。 ま た,S 小 学校
の
教 師 集 団が共 有す る 「教 職 観」 とい
う 信 念 体 系の
特 質は, S (ト学 校で の
勤 務 経 験 年 数が 多い教 師ほ ど, ま た その
勤 務経験年数が多い
教師と同 学 年 担 当
の
経 験が あ る教 師ほ ど, その
行 動 的 特 徴を顕 著に
表 出して V
ゝる.し た が っ
て
, 選 定し た 3 教 師が S 小 学 校での
勤務 経 験が最も長く, 実 質 的な リ ー ダ ー
で
あ り, 教 師の
内 面に
蓄瞭さ れ る挿 話と して の
体 験 的 知 識が 豊富で
あ る と推定で
き る。 ま たこ の
3 教 師に
, S小 学 校
の
教 師 集 団が共 有す る 「充 実 し た信 念」の
特 徴が顕 著に現れ て
い
る。 そ れ ゆ え, 彼らの
「個 人 的信念」の
形成契機を検討 するこ
と ば, S 小 学 校の
教 育 課 程経常の
継 続 的 更 新を促 進さ せ る教 師の
信念の
形成要 因を解明 する上で最 適で
あ る と判 断さ れ たの で
, 調 査 対 象 教師として
選 定し た。 3 教 師の
簡単 プロフ ィ
ール
は表lの
通り で あ る。3 教師の信 念の形 成 要 因の分析方 法
教 師が指導体 験を横み重ね る
こ
と は, 相 互作用 に よ る挿話を自身の
内 面に蓄積す るこ
と に他な ら ない
。 そ れ ゆ え教 育 課 程 経営の
中核で あ る 「教 授 ・ 学 習 活 動」 は, 教師と児 童の
相 互作用に
よ っ て形 成さ れ る挿 話で
あ る と同 定で
き る。 ま た その
挿 話は教 師
の
個 人 的 体 験か ら導か れ, 教 師の
内 面に
蓄 積さ れ る極めて
具 体 的な認 識で
も あ る。 そ れ ゆ え,挿 話や挿 話よ り帰 納さ れ る よ り 一 般 的な知識は,
体 験 的 知 識と み な し得る。 教 師は, 自 身
の
指導 体 験を生 涯に
亘り蓄積す る た め,こ こ で
は教師の
生 涯の
指導体 験を体 験 的 知 識の
マ クロ的 構 造と して
検討す る。 そ う す る と, 教 師の
信 念 形 成は, 表2の
入職前 (小 ・ 中 ・ 高・ 大学時 代)の
被教 育 体 験 期, S 小 学 校 以 外の
職務体験 期, S 小 学校の
職 務 体 験 期, そ れに
小 学 校 ‑ 入学す る まで の
家 庭 期を 加え た 4 区 分が,.教師自 身の
体験を挿 話と して
体 制化す る枠 組み と考え ら れ る。 その
た め, そ れらの
分析方 法と し て は, エス ノ
グラフ イ
一 に基づ く ラ イフ ヒ ス
ト リ ー を採用 する。 な お, 論 文の
都合 上, 人 名お よび校名は す べて
仮 名と し た。表1 被調 査者のプ
ロ
フィ
ー ル (平 成1 0年4 月 現在)教 師 年齢 悼 教職経 験年数 勤務 小 学 校 数 最終学 歴 備 考
B 41歳 (S.3l) 男 1 9年
3
( 本校2 年) (過 去6 年) .
国立大 学 教 育 学部 行 政3 年経 験 教 頭
C 3 7歳 (S.35) 男 1 5年 3
(本校lO年) 国立大 学 教 育 学部 教務主 任
D 3 7歳.(S.3 5) 男 l 5年 2
( 本校10年) 国立大 学 教育学部 研 修 主 任
表2 エ ピソ ー ドの
マ
クロ
的構造 から のプロ
フィ
ー ル年 55
1
5 6i
57至
5 8 5 91
6 0【
6 11
621
6 3 1 2 3 4 ∫ 5 6 7 8 9 /1 0B 岩 井 小 学 へ新 採
で
入職 5 6 5 6 4 研 研 修セ
ン ター 葵小 学 校ヘ 年 年 主 主 主 主 指導主事 教頭
で
異 動C 入職 前 米 原 小へ 木 崎 小 へ 4 6 3 4 5 6 1 研
新 採
で
入鹿
異 動、 年 年 主 主 主 主 主 主D
入職 前戸 崎 小ヘ新 採
で
入職 4 年2 主
〔注〕 = ‑・
は S
小 学 校 勢 象 ‑は
他 校で
の勤 務を
表す
. 算 用 数 字は S
'Jt学 校で の勤 務 学 年を
,「主」
は
主 任を
示す
。ま た
研 修 主 任, 教 務 主 任, 生 徒 指 導 主 事は
,そ れ ぞ れ
「研 主」,「教 主」,
「生 主」 の略称
と し た
。教 育 課程 経 営
の
継続 的 更新に お
け る教 師の
信 念の
形 成要 因に
関す る事 例 研 究IV
教師
の信念
の形成要因
の分析
・考察
ラ イ
フ ヒ ス
ト リ ー 研 究の
諸 論(1 0) を筆 者の
信 念 形 成の
分 析 過 程に
引き寄せて
考え る と, 時 代を共 に し た先 輩や同 僚 教師の
個 人 的 影響力が信 念形成の
「帰 結 点 ( ‑ 特 定 期)」 (l l) と し
て
重 要で
ある。筆者は,
こ の
帰結 点を信念 形成の
転 機 (t
u r ning point
s) と呼 び, 教職体 験の
中で, 総 合 的な意味で
「教 職観」 に何ら かの
変化や転 機が生ま れ た時 期で
あ る と考え る。 そ れ ゆ え, 教師の
信 念 形成の
帰結 点に は, 転 機
の
契機 ( きっ か け) , その
信 念 形成の
契機が, 教職生 活の
どの
ような時 期の
変化 ・ 転 換か とい
う時 期 ・ 時機 (t
iming), その
変 化や 転 換を生み出す背景に
あっ た時々の
境遇 ・ 状 態の
3 点が重 要で
あ る と思わ れ る。そ
こ
で,, 筆者が 5 年間と
い
う長 期間に
亘るエス ノ
グラフ イ
一に
よって
収集し た デ ー タ より, 小 学 校か ら大 学 卒 業ま で の被教育体験 期 (家庭期も含
む), S 小
学
校以外の
職務 体 験 期 (新 採 用 期を含む), S 小 学校
の
職 務 体験 期の
3 期の
具体的事例 を分 析 対象に し た。 な ぜ な ら, 各教 師の
信念の
形 成 要 因を時 間 的推移に
沿 って
整理する と, 上 述の
3 期に各教師の
信 念の
形成要 因の
特徴が整 理 ・ 集 約で
き る か らで
あ る。1 B 教 頭の ライフ ヒ スト リ ー 分析 表3 入職 前の被 教 育体 験 期 ・
※強 調は筆者 A . 小学 校入学前
1 . 両 親と も小 学校
の
教 員で
, 亡 く な っ た祖母も 教 員とい
う周 囲に教 員が多い
環境の
中で
育ち ま し た。 そ ん な環境の
た め か, 父親は しつ け に は 厳し か っ たで
す。 両 親が よ く仕事の こ
とで
話し 合 っ てい
ま し た。 時々激 しい
やりとりも ありま し た。 どうし て他の
家の
子 ど もの
事で
, 両 親が 言い合いを すろの
か が分か り ま せ んで
し た。 2 . 母は, 残 務 仕 事の
た めに
, よ く私を連れて
学校へ 行き ま し た。 私は誰も
い
ない
広い
廊 下を思い っ き り駆け回 っ
て い
、た
の
を覚えて
いま す。3 . 両親 を
適
して, 学校 とい
うもの
を 身 近に感 じ てい
ま した から, 教師の
仕 事に対し て違 和 感 な く, す ー つ と自分の中に 入 っ て き たの
は確か です。
B . 小学 校 高 学 年
1 . 小学 校5 ・ 6 年
の
担 任は,̲ 非常に厳 しい
女の
先 生で
し た。2 . うちの両 親も 同1
t3 なの かな と 思
v
ゝま し た。 こ ん な 先 生にだ けは絶対 なるまい
と 思t
‑ま し た.C . 中 学校時代
1 . 中学 校
の
時, 広田先生とい
う 数 学の
男性教 員 が担 任で
し た。2 . 私は数 学は得 意で は な か っ た け れ ど, 広田先 生 めお陰で数学が嫌
い 七な らずに す み ま し たo
3 . 厳し
い
先 生で
し た が, ユ ーモ
ア に溢れ てい て
,で き そうに な
も
)問 題もみ んなで
楽しく解く方 法 を教えて
く れ ま し た。D . 高校 時代
1 . 高校
の
時は, あまり 印象に残 って い
ま せ ん。 2 . 偏 差 値 教 育の
真っ 盛 りで
, 受 験 勉 強し か な か った ような気が し ます。
E . 大 学時 代
1 . 大 学に 入 る と, 高校
の
啓 憤を は ら す よ う に,ソ フ
ト部に席を置き, 毎 日練習に明け暮れ ま し た。 あの
時が 一 番 充実して い
た よ う な気が し ま す。2 . 教 育 実 習で印象的な
の
は大 学2 年生の
時初めて
附属小 学 校 へ観察 参加に
行 ちたこ
とで
すo 担 当の
河 合 先 生は体 育専 門の
先 生で し た。 豪快で
厳しい
先 生で
し た が, 誰も その
先 生を慕って い
ま し た。
3 . そ
の
先 生か ら, 子 どもを どうみ る か, どの
よ うに接すればよい
か な ど,い
ろ、
い
ろ な初 歩的な 技 術を教えて
も らい
ま し た。 河 合 先 生の 口
癖は,「若
い
ん だ か ら, 失 敗 を恐れ ず, 思い
っ き りや れ」で
し た。 失 敗し ても 常に温かい
眼 差 しで
見 守って
くれ ま し た。4 . 迷 わず 教員 採用 試験を受け ま し た。 両 親,
一視 母が共
に
教 員とい う環 境の
中で
育って い
る. 特に
母 親が残 務 仕 事の
た め, B 教 頭を学 校、へ連れ
て い
き, そこ で
よ く遊んで い
る。 その
た め,「A
の
3 」 と語 って い
る。こ
れ は, B 教 頭が類 繁に学 校
の
仕 事を幼い
頃かち直 接みて い
る た めに
,そ れ が教 師を無 意 識
に
好 意 的に
受け 止 め る契機に
なって
いる と考え ら れ る。 し か し, 小 学 校5 ・ 6年
の
担 任の
女 性 教師に
つい て
は,「B
の
2」 と きっば り と語っ
て い
る。 す なわち, B 教 頭は,こ の
女 性 教師との
出 会い
を通 して
自分な りの
教 師 像を明 確に
して い
る。 さ ら に, 中 学校の
数 学 教師や教育 実 習の
担 当 教 師との
出 会い
を通して
, 人格的 触 発 を受け, 教 職観や指 導観とい
う信念 形成の
素地を 育んで い
る。 その
結 果, B 教 頭は,「E
の
4 」 と語 っ
て い
る。こ の
語 りの
中に
, 中学 校 ・ 大 学で の
教師との
出 会い
が教職志 望の
契機に
強 く作用して い
る。 すな わ ち, B 教 頭は, 中学 ・ 大 学 時代の
教 師との
出 会い
が, 両 親を通して
培っ た教 師 への
肯 定 的な見 方を鮮 明に す る と同 時に, 「教職志 望」へ
の
価 値を内 面 化さ せ, B 教 頭の
信念 形 成の
素地 を育んで
い っ た推察で
き る。表4 S 小 学校以外の職 務 体験期
※強 調は筆者
A .
エ
ネルギッシ
ュ な新 採 時 代1 . 新 学 習 指導要 領
の
施 行 通 知が出た 「学 校の
創 意工夫と ゆ と り」‑が言わ れ た時 代で
し た。 全ク ラス
2 学級で
男 子 職 員が少な か っ た た め, 最初か ら 6 年2 組
の
担 任で
し た。2 . 主 任は 40 歳ぐら
い の
女性で
し た。 若 手とい
う 理由で い
き な り体 育 主 任に
な り ま し た。 自分な りに
努 力し ま し た が, 先 輩の
女性教 師が多い
ため
, 新し
い
計 画を提起 する たびに横やりが 入りま し た。
3 . 職員 会議
の
前に, 学級を 回 り ながら意 見 を聞 き, 少 しでも 先 生 方の意見 を 反映し た計 画 案を 出 すの が 一 苦労でし た。4 . と に か く夢 中
に
なって
, 子 ど も と 一 緒に
体を 動か し た時 代で
し た。 大 学の
時ソ フ
ト部に在籍し
て
いたの で
, 朝7 時に は
学 校に
来て
は子ど も とソ フ
ト を や, , たこ
と を よ く覚えて い
ま すo 授 業に
つ いて
は, あ ま り指 導さ れ た記 憶は あ り ま せ ん。 自 分で
好き勝 手に
やって
い た よ うに
思い
ま す。5 . た だ家 庭 科
の ミ シ
ン を使う授 業で
,一 人女
の
子 児 童が過 っ
て
親 指に
ミシ
ン針を突き刺し, 折 れて
し まい
ま し た。 私は す ぐに
主 任を呼 びに
行 き青 ざめて
い た時, 主 任が 「学 級 担 任が そ ん なこ
とで
ど う す るの
o しっ か り し な さい
」 と指 導を受け た思
い
出が, 今で
も残って い
ま す。6 . 初任 者 研 修は あ り ま せ ん
で
し た か ら, 定 期 的 に教 育委員 会や教育事務所, 研 究 会 場に
集めら
れ
て
, 授 業観 察を し たり, 講話な ど を聞き ま し た。B . 充実 し た4 年 目
1 . 相変わ らず体 育主 任か ら は抜け ら れ ま せ ん
で
し た。2 . た だ や っ と 4 年目に し
て
, 自分 の新 しい
試み
が実 行で
き る段 階に
な り ま し た。
3 . やはり石
の
上にも3 年です。 学校で の実 績が あ れ ば 大 丈 夫 なこ
とが分かりま した。4 . 町
の
研 究 指 定 (算 数) を受け た時, 中 心に
なって
や り ま し た。 ま た その
成 果を研 究 発 表し た り,論 文
に
も応募し たりし ま し た。5 . 自分の考えで何でも仕 事を 進めら れ, 楽し く
・ て仕 方 ありませ ん で した。
6 ・ 子 ど も たちと も楽し く遊 びま
. し た。 土 曜 日は 弁 当を持っ
て こ
さ耳
, 学 級 全体で
思い
っ きり 遊びま し た。
7 . 山が近く
に
あ っ たの で
, 春は山菜, 秋は キノ
コ や
ア
ケビ
採り等, 授 業 変 更して
やっ た記憶があ り ま す。
8 . 宿題 忘れ は徹 底し
て
残し ま し た。 遅く な る と 家 庭に
電話して
宿直室で
ラ ーメ
ン を作って
食べさ せ, 8 時ご ろ帰 りま し た。
ら
. 子ど も が夜 空を見 上 げて
, 「先 生, ′あ れ が オ リ オ ン座だ ね」 な ど言い
な が ら帰っ た もの で
し た。1 0. 今は そ ん な
こ
と は で き ま せ ん ね。 あの
頃は,頑張っ
て
や れば 何で
も や れ ま し た。C . 不完 全燃 焼であっ た研 修セ
ン
タ ー 時 代1 . ま さ か
セ
ンタ ー へ 行く とは
自 分で
も想 像して
い ま せ んで
し た。2 . 研究は, S 小に比
べ
れ ば楽でした. 言葉迫t
) や 先輩への
対 応は, 全て に S 小 時 代の
経験が生き まし た。
3 . 改め
て
S 小の
偉 大さ を実 感し ま し た。 S 小の
先 輩も勤 務して
いたの で
何で
も相 談に の
って
くれ ま し た。
4 . ま た S 小 会 ( ‑ O B 会)