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『「明 六 雑 誌 」 と そ の 周 辺 』 西洋文化の受容 ・思想と言語

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Academic year: 2021

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K書 謂

神奈川大学人文学研究所(編)

『「明 六 雑 誌 」 と そ の 周 辺 』 西洋文化の受容 ・思想と言語

加 藤 僖 重(濁 協大学外国語学部言語文化学科教授)

「明 六 雑 誌 」 は 明 治7年2月 〜8年11月 まで 発 行 さ れ た論 文 雑 誌 で あ る 。 発 行 期 間 が わ ず か 2年 足 らず と短 く,発 刊 号 数 も全43号 にす ぎ な か っ た に もか か わ らず,そ の 後 の 日本 に 大 き な 影 響 を 与 え た 。 理 由 は 様 々 に 考 え られ る が,そ の 一 つ は 論 文 の 書 き手 の 多 くが,何 らか の 専 門 分 野 を持 っ た 欧 米 帰 りで あ り,各 人 が 積 極 的 な 意 図 を持 っ て 欧 米 の 新 知 識 普 及 に 努 力 を重 ね た 人 達 で あ っ た か らで あ る 。

当 時,欧 米 を見 聞 し て き た 人 は 非 常 に 希 少 で あ っ た だ け に,大 い な る 抱 負 を持 っ て帰 国 した 彼 らの 言 動 が そ の 後 の 日本 の 発 展 を左 右 し た こ とは 想 像 に難 くな い 。 彼 らは 学 ん で きた 諸 分 野 で,こ れ か ら の 日本 は"か くあ る べ き"と の 考 え を 「明 六 雑 誌 」 を通 じて 発 表 した 。 「明 六 雑 誌 」 に は 実 に 多 数 の 論 文 が 掲 載 さ れ て い る が,そ の 多 くは 文 明 開 化 論,国 語 問 題,婦 人 問 題, 政 治 問 題,経 済 問 題,法 律 問 題,教 育 問 題,哲 学 問 題 の 論 文 で,そ れ ら に つ い て の 啓 蒙 を重 点

と し た雑 誌 で あ っ た 。

本 書 は,分 野 を 異 に す る7人 の 専 門 家 が,「 明 六 雑 誌 」 に 載 っ た 論 文 や そ の 社 会 的 影 響 を, 以 下 の よ う に紹 介 した 本 で あ る 。 す な わ ち,

1伊 坂 青 司 氏 は,婦 人 問 題 と し て5回 に渡 っ て 掲 載 さ れ た 森 有 礼 の 「妻 妾 論 」 を挙 げ,夫 婦 平 等 論 を紹 介 して い る 。 森 有 礼 の こ の 論 文 は 当 時 の 日本 に 大 き な波 紋 を 与 え た よ う で,当 時 の オ ピ ニ オ ン リ ー ダ ー で あ る加 藤 弘 之,津 田 真 道,中 村 正 直,福 沢 諭 吉 ら も意 見 を 載 せ て い る こ と を,伊 坂 氏 が 紹 介 して い る 。

2鈴 木 修 一 氏 は,新 時 代 に即 し た倫 理 思 想 を打 ち立 て る べ き必 要 性 を 説 い た4回 に 渡 っ て 掲 載 さ れ た 西 周 の 「人 生 三 宝 説 」 を挙 げ た 。 三 宝 と は 健 康,知 識,富 有 の こ とで あ る が,鈴 木 氏 は,西 周 が こ の 三 つ の 重 要 点 を 当 時 の 日本 人 に 向 け て ど う説 明 した か,を 紹 介 して い る 。 な お 論 文 末 に,西 周 が 苦 心 して 翻 訳 した単 語 が そ の 表 記 ・原 語 ・(西 周 の)訳 語 ・現 行 の 言 葉 に し

たが っ て 載 せ られ て い る 。

3吉 井 蒼 生 矢 氏 は,西 欧 近 代 法 の 基 礎 を 築 い た 人 た ち の 中 か ら箕 作 麟 祥 の 活 躍 を と りあ げ て い る 。 徳 川 昭 武 の 遣 欧 使 節 団 に加 わ っ た麟 祥 は ナ ポ レオ ン法 典 の 翻 訳 を手 が け た が ,そ の際 に 苦 心 して 造 作 した 法 律 用 語 は 現 在 も使 用 さ れ て い る 。 吉 井 氏 は,麟 祥 が 明 六 社 設 立 ・運 営 に 関 与 し て啓 蒙 活 動 に も積 極 的 に 参 加 して い る こ と,私 学 に お け る法 学 教 育 に も大 い に貢 献 した こ

と を,紹 介 して い る 。

4孫 安 石 氏 の 論 文 は 他 の 論 文 と少 々 趣 を異 に して い る 。 氏 は,1862年,上 海 で 発 刊 さ れ た 中 国 人 の た め の 近 代 的 新 聞 で あ っ た 『上 海 新 報 』 に 載 っ て い る 日本 情 報 あ る い は 『上 海 新 報 』 を 直 接 見 た 高 杉 晋 作 ら の 日本 人 の 反 応 を調 べ る こ と に よ っ て,西 洋 の 「衝撃 」 とそ れ に 対 す る 東 洋 の 「対 応 」 が 後 の 「明 六 雑 誌 」 ば か りで な くす で に 『上 海 新 報 』 もそ う で あ っ た こ と を紹 介

して い る の で あ る 。

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5岡 嶋 千 幸 氏 の 論 文 は,現 在 の 我 々 が ご く自然 に 使 っ て い る 「ソサ エ チ ー 」(ソ サ イ テ ィ)の 原 語Societyを 「社 会 」 と翻 訳 す る の に,森 有 礼 が い か に 苦 労 した か を紹 介 した も の で あ る 。

なぜ な ら 日本 に は 「社 」,「世 間 」s「社 団 」,「会 社 」 な どは あ っ て も同 質 平 等 な 個 人 と個 人 の つ なが り と して の 「社 会」 は も と も と存 在 しな か っ た か らで あ る。 岡 嶋 氏 は そ の よ う な ソサ エ チ ー の 実 践 の 場 と して 明 六 社 は 誕 生 した こ と を 挙 げ

,「 ソ サ エ チ ー 」 の 訳 語 の 一 例 と して 森 有 礼 が 「明 六 雑 誌 」 六 号 と十 一 号 で 「世 交 」 な る 語 を 使 用 し て い る こ と を紹 介 して い る 。

6高 野 繁 男 氏 の 論 文 は,明 治 期 に な っ て 急 速 に 入 っ て き た 西 洋 文 化 を 理 解 す る た め に 新 し く 造 成 さ れ た 「和 製 漢 語 」 の 多 くが 「明 六 雑 誌 」 に載 っ て い る こ と を 紹 介 し て い る 。 高 野 氏 は

「明 六 雑 誌 」 が こ う し た 言 語 情 報 を提 供 して くれ る 第 一 等 資 料 で あ る こ と を示 唆 し,併 せ て 載 っ て い る 和 製 漢 語 の 具 体 例 を分 野 別 に究 明 し て い る 。

7浅 山 氏 は,明 治 に な っ て急 速 に 変 化 した 国 語 表 現 法 を,「 明 六 雑 誌 」 に載 っ て い る 西 周,津 田真 道,森 有 礼 の11論 文 を材 料 に,使 用 され て い る 助 詞 の 性 格 を 文 法 的 に23通 り に分 け,古 典 中 国 語 と も関 連 させ て 説 明 して い る。 氏 は 比 較 の た め,対 象 資 料 と して 「明 六 雑 誌 」 以 前 の 文(近 世 和 文)に 本 居 宣 長 の 『玉 く しげ 』,富 永 仲 基 の 『翁 の 文 』,山 科 道 安 の 『梶 記 』 を,さ

ら に 現 代 文 資 料 と して 「明 緑 雑 誌 」 で 扱 っ た 論 文 と類 似 分 野 に つ い て 記 し て い る 朝 日新 聞 の 13社 説 を選 ん で 比 較 検 討 を して い る 。

高 野 氏,浅 山 氏 の 手 法 は 自 然 系 論 文 で は よ く見 ら れ る 手 法 で あ る と は 云 え,こ の 分 野 で は 注 目 す べ き手 法 で あ ろ う。

明 治 期 の 先 人 達 が 西 洋 文 明 を移 入 す る の に如 何 に 努 力 を した か を 知 る た め に 「明 六 雑 誌Jは 最 適 な 雑 誌 で あ る が,本 書 は そ の 「明 六 雑 誌 」 に掲 載 され て い る 諸 論 文 を ど う読 む べ きか を示 唆 して くれ る好 著 で あ る 。

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