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中小企業の経営と会計

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Academic year: 2021

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305  わが国の経済において、中小企業が果たす役割は極めて大きく、中小企 業の経営的な安定と事業活動の発展・再生は、国民経済や地域経済の発展・

再生・活性化にとって不可避な状況となっている。そして、現在の中小企 業が抱える組織問題と経営課題の一つには、事業承継問題がある。事業承 継を計画的・組織的に達成できた企業は、これからの厳しい経営環境で生 き残り、激しい市場競争を勝ち残っていくことができると言える。さらに 言えば、各地域に立地し、価値生産や人材雇用の面で地域経済の重要な担 い手となってきた中小企業の事業承継が成功することが、地方創生の実現 と地域コミュニティーの再生を確保するドライバーとなると言っても過言 ではない。

 以上のような問題意識に基づいて、本プロジェクトでは中小企業の事業 承継問題に焦点を当て、そのあり方を探求することを目的としている。研 究調査期間は、2017年4月1日から3年間を予定している。

 まず、現在の中小企業が抱える課題について調査するため、2017 年度 は複数の文献をもとに各メンバーが自身の研究テーマに沿い研究を進め た。また、平塚市に拠点を置く税理士事務所に協力を仰ぎ、平塚市を中心 とした中小企業が抱える問題点についての聞き取り調査を行なった。主な 調査項目は、以下のとおりである。

◦中小企業会計指針の浸透状況 共同研究報告

共同研究プロジェクト

中小企業の経営と会計

─ 事業承継と中小企業会計基準を中心に ─

≪中間報告≫

プロジェクト代表 

大 田 博 樹

(2)

国際経営フォーラム No.29

306

◦事業承継の現状と課題

◦経営者の会計に対する意識調査

◦銀行との関係構築

◦電子開示の現状

◦会計情報の利用状況

 中小企業においては制度的な会計よりも法人税への関心が高く、中小企 業会計指針が現場では活かされていない現状が明らかとなった。また、多 くの中小企業において事業承継は喫緊の課題であるにも関わらず、具体的 な対策が確立していない点も確認することができた。

 2018 年度には、中小企業の現状を調査するために、東京都葛飾区にあ る S 製作所を訪問し、聞き取り調査を行った。S 製作所は昭和7年創立の 資本金1,000万円、従業員45名の老舗製造業で、主にプラスティック加工 全般、CAD・CAMによる設計政策、熱硬化性樹脂の成形および加工など を行なっている。主な調査項目は、以下のとおりである。

◦中小会計要領の利用状況

◦事業承継の現状と課題

◦経営者の会計に対する意識調査

◦制度的なディスクロージャーと自発的なディスクロージャー

◦会計情報の利用状況

◦従業員研修の状況

 S製作所は、独自の技術を持ち業界のシェアも高いため経営的には大き な問題はなく、事業承継に関しても喫緊の課題とはなっていなかった。し かし、中小企業会計指針の活用が今後の課題であり、生産性向上に向けて さらなる改善がこれからの経営にとって重要であることが確認された。

 今後は、中小企業の事業承継問題に焦点を当て、そのあり方を探求する ことにしている。特に、中小企業経営の合理性と透明性を確保し、経営者 の適切な経営判断と外部利害関係者の合理的な意思決定を支援する中小企 業会計について、中小会計要領を中心にその適用と普及について制度的・

実践的に研究を進めることとしている。

 本プロジェクトの成果は、中小企業の経営実践に有意義で効果的な適用

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中小企業の経営と会計

307 指針や処方箋を提示することとなり、中小企業の発展に理論的にも実践的 にも大きく貢献することができると期待される。

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