• 検索結果がありません。

論文要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "論文要旨"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

論文要旨

 本研究の目的は、日本人英語学習者を対象とした英語読解テストの開発において、テスト内で 与えられた文章の内容について問う設問(テストアイテム)を、それらがどのような読解を求め ているのかという内容によって分類し、その分類が設問の難易度に与える影響の有無や、もし影 響があるのであれば、どのような影響を与えるのかということを明らかにすることにある。

 本研究の実施は大きく二つに分かれる。一つはWada(2003)の提唱する local/1iteral , local/inferential および global/inferential という3つの読みを引き出す設問の特徴によっ て読解テストの設問タイプを定義しようとすることの妥当性の研究であり、本研究ではWada

(2003)に加え、このことにっいての学習者の能力差への考察を含めた。もう一つは、それらの設 問タイプが「尺度化」される際に、それぞれの設問タイプのあいだにどのようなアイテム難易度 の関係が生じるのかの研究である。これについても、異なる能力の学習者の間で設問タイプの難 易度の順位に差異が生じるかどうかの考察を行った。

 本論文は全7章で構成される。第1章では、本研究の研究背景、目的および意義を論じている。

ここでは本研究の目的として、Council of EuropeのCommon European Framework of Reference for Languages(CEFR)やAssociation of Language Testers in Europe(ALTE)のALTE℃an−Do statements

に代表されるような、英語能力を指標化し、ある一定の能力と判断された学習者が「何ができて、

何ができないのか」を説明する枠組み作りを、特に日本人学習者のリーディング能力について行 う場合は、どのような要素をもとにした指標や枠組み作りが可能であるのかを明らかにすること が必要であることを述べている。

 第2章では、本研究に関係する先行研究のうち、リーディング能力の定義に対するさまざまな

アプローチについて述べたものを概観している。ここでは主に、リーディングにおいて学習者が 英語の意味理解に到達するまでの過程について言及した研究をとりあげ、それらのプロセスを可 能にする下位能力とされるsubskillsと呼ばれるものを、リーディング能力の構成概念の研究にお いて、どのように認識していくべきかの方向性を示した。リーディング能力の研究においては、

学習者の読解プロセスを直接的に観察することはできないため、テストや言語プロトコルを用い て間接的に観察する。つまり、これらは学習者が読解を行った結果(product)であるため、研究 者は、リーディング能力を指標化するにあたり、学習者が読解において「どのような読解を求め た問題を解くことができたのか」という読解の結果に注目し、これらの下位能力を定義すべきで はないか、としている。

       1

東京外国語大学 博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies)

(2)

 第3章では、本研究に関係する先行研究のうち、リーディング能力の測定について述べたもの

を概観している。言語テストの研究では、学習者の英語能力を構成するさまざまな特性を引き出 す手法に関する研究がさかんにおこなわれている。これらは大きくわけて2つのアプローチによ って分類することができる。一つは、テスト開発やアイテム作成において、アイテムの作成規準 やアイテムによって測定される能力をリーディング能力の下位能力をもとに、分析的に記述する 手法である。もう一つは、テストの中で実施されるタスクを一つの完結した「行動」ととらえ、

そのタスクを構成する要素を、タスクを行うために必要な下位能力などで分析的に記述すること はできないと考える手法である。本研究では、前者の下位能力をもとに記述するアプローチをと ることを提案するに至った。これは、より汎用性のある解釈を可能にする設問を作成する目的の もとでは、設問作成において、その設問に正解するためには、どのような能力が必要とされてい るのかを記述すること(設問タイプ)が不可欠だと考えられるからである。

 また、このような、設問タイプによってどのような学習者の読解結果が引き出されるのかとい う観点からテストを研究することを、設問タイプの「質的」な側面とするならば、その「量的」

な側面はそれらの行動に付与される設問タイプの難易度だと言える。この設問の「量的」な側面 に焦点が向けられる際にも「下位能力」を基盤としたアプローチは必要不可欠である。設問の難 易度は一つの数値などで示されるわけだが、その数値は設問によって引き出された学習者の読解 結果を構築するさまざまな下位能力の難易度の積み重ねだと考えられ、その下位能力の難易度を 特定することが可能であれば、設問全体の難易度を、それが作成される段階である程度は特定す ることが可能になるかもしれない。このため、このような下位能力の難易度の研究は不可欠にな

る。

 Wada(2003)では、 Negishi(1996)をもとに、日本人英語学習者のリーディングテストの解答 を因子分析を用いて分析し、その結果、日本人英語学習者のリーディング能力は local/global comprehension と literal/inferential comprehension dimensionの二っの因子によって説明 されることを明らかにし、それらをもとに, local/literal , local/inferential および global/inferential という3つの読みを引き出す設問タイプを提案した。「下位能力」を基盤とす るアプローチのもとでテストの設問を作成するにあたり、その基盤としてwada(2003)による

two−dimensional approach を用いることは妥当であり、その妥当性を再確認し、さらに学習者 間の能力差や設問の難易度を研究することで、設問タイプの尺度化が可能になるのではないかと いう提案に至った。

 第4章は、本研究の実施の詳細とデータの分析方法に関する記述である。本研究には2つのテ        2

東京外国語大学 博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies)

(3)

ストが用いられた。一っはGTEC fbr STUDENTS(ベネッセコーポレーション)をもとに作られた Test Set A、もう一つはTOEFLをもとに作られたTest Set Bである。 Test Set Aは2つの能力グルー プの被験者に、Test Set Bは1つの能力グループの被験者に受験させた。 Test Set Aの難易度に対

してその難易度が妥当だと思われる能力グループをGroup A−Low(181人)、難易度が低い(つま りテストで高得点が取れてしまう)と思われる能力グループをGroup A−High(180人)とし、 Test Set Bを受験した、その難易度が妥当だと思われるグループをGroup B(257人)とした。

 テスト問題は、100単語前後のパッセージーっに対して、 local/literal , local/inferential , global/inferential の三種類の設問タイプの問題を一つずつ(計3個)作成した。それぞれのテ ストセットについてパイロットテストを行い、問題分析を行った結果、各テストセットともに、

9つのパッセージに関して、それぞれ3問ずつ、合計27問を用いたテストの実施となった。結

果の分析には、設問特性の特定のためにFull−information Factor Analysis、設問難易度の特定のため に項目応答理論が用いられている。

 第5章では、本研究の結果を報告している。まず、実験データを集めた際に、被験者830人の

日本人英語学習者をどのような基準でGroup A−Low、 Group A−High、 Group Bとして分類したのか の説明をしている。その後、本研究の結果としては、リーディングテストパフォーマンスを構築 する下位能力として、3つの因子が特定され、受験者の能力と同じくらいの能力を必要とする難

易度の設問を与えられたGroup A−LowとGroup Bについては、両者ともに第一因子は設問の「位 置」(テスト内での順番)に関わる要因であるということが明らかになった。これは、学習者の問 題に解答する「速さ」および「集中力」に起因するものではないかと考えられた。つまり、学習 者が本人の英語レベルと同じレベルの問題を与えられた場合には、まずは問題の「位置」が大き な要因となることがわかる。また、Group A−Highのように、受験者の能力よりも下の能力の学習 者を想定する難易度の問題を与えられた場合は、 local/globa1 の因子が解答の成否に大きく影響 を与えることがわかった。つまり、このレベルの学習者にとっては、情報の収集範囲の広さが大 きな影響を与えることがわかる。第二因子については、Group A−LowおよびGroup A−Highでは

inferential 、 Group Bでは local−inferential の要素が特定された。

 第6章は、考察である。第5章の結果により、テスト実施の前の段階で設問タイプを定義し、

それらによって設問の特性を判断することに対する妥当性は否定された。しかし、因子分析の結 果より、 10cal/global や literal/inferential という要因の存在は明らかになったため、十分な 被験者および設問数が確保できる場合には、パイロットテストなどを実施し、その後に設問の持 つ「読み」の特性を特定し、その後のテスト実施に活用することは可能ではないか、という結論

3

東京外国語大学 博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies)

(4)

に至っている。

 設問タイプとその難易度の関係については、 literal/inferential の要因にのみ認められ、 Group A−Lowのように、受験者と同じレベルの難易度の問題を与えられた場合には literal の読みを 求めるアイテムのほうが inferential の読みを求められるアイテムよりも難易度が高く、Group A−Highのように、受験者の能力よりも下のレベルを想定する問題を与えられた場合には、その逆 であることがわかった。このことにより、アイテムの難易度は設問タイプにより影響されること が明らかになり、さらにこの関係は、学習者の英語能力によって変化することが示された。この ことに加え、能力が異なるGroup A−LowとGroup A−Highが同じ設問に対して異なる「読み方」を しているということから、Group A−Lowで想定された学習者には inferential な読みができるこ とがそのレベルにおける境界であり、それより上のGroup A−Highには  global な読みができる ということがそのレベルにおける境界であるということが推測される。これはGroup A−Highの被 験者がGroup A−Lowを想定するレベルにおける境界である inferential な読みはクリアできてい るということは明らかであるから、だから inferential な読みはGroup A−Highにとっては第二因 子としてあらわれているのだ、という解釈を可能にする。この結果については、さらなる研究を おこなうことで、設問タイプをもとにしたリーディング能力の指標軸を想定することが可能にな る可能性が示唆された。

 第7章では、本論文の結論を述べている。ここでは、第6章で述べられた本研究の結果を総括

し、今後のリv−一・一ディングテストの研究において設問タイプが測っている読解の内容をリーディン グ能力の構成概念および能力の指標として着目することの妥当性を述べ、テスト開発における設 問の位置に関する示唆を行っている。また、本研究の限界として、被験者の能力グループの分類 方法などについて、課題が残ることも示唆されている。

4

東京外国語大学 博士学位論文 Doctoral thesis (Tokyo University of Foreign Studies)

参照

関連したドキュメント

観光客を対象とした防災について扱った先行研究としては、観光地の防災対策について 2017

審査要旨

対象は,読字障害群( 17 人), ADHD (注意欠陥多動障害)群( 10 人) , コントロール群(

大規模ゲノムの解読は,生命システムの解明だけでなく,医療科学,薬学,農学などの多様

(2)中学校保健体育科の現代的なリズムのダンス授業におけるステップ習得学習に着目

Macizo & Bajo (2004)は,スペイン語を第一言語(first language :以下, native

カメラによる画像認識の説明の前にピーマンと葉の色の 違いについて説明をする.図 3 はピーマンと葉の色相に対す る明度の比較図,図

ここで得られた結果を地方圏スーパーマーケット市場分析の結果と比較してみる。まず 市場競合度は、地方圏の場合 2