富山大学 教 養部 紀 要 く人 文 . 社会 科学 篇1, 2 3ほlこ9 7 ‑1 1 9 , 1 9 9 0 .
中 国 東 北とソ連 くシ ベリア.極 割 における環 境 問題の現 状と問題 点
桂 木 健 次
T he Situ atio n a nd Pr oble m s of En vir o n m e ntin N o rt h E a ste r n Ch in a a nd Sibe ria ノFa r Ea ste r n d istrict of U .S.S.良
K e nji K A T S U R A G I
は じ め に
筆 者は, 幸い, 中 国の遼 寧 大 学との交 流 く1989 科 ならび にシベリ ア . 極 東 学 術調 査 団 く1 99 0斜 に おいて, 中 国と シベリ ア.極 東に おける環 境 調 査に か か わ る という 機 会 を 持つ
こと が できたo いずれの国 も, 社 会 主 義 経 済 社 会の見 直 しと市 場 経 済‑ の開放ない しその
積 極 的 な 導入の段 階にあり, 地 球 問題時代における計 画 経 済と社 会 主義の転 換 期の く経 済 と環 境ンをめぐる問題 状 況のさ な か に お か れ ているo 外 部 不 経 済と言わ れ る環境 問題は,
市 場 社 会 な らぬ計 画 経 済 制 社 会 主 義の元 でも 発 生 していた のであるo その社 会が, 経 済 効 率と経 済 主体の選 択 的 機 会の公正原理 として, 市 場 制 を 取り 入 れ て行っ ているのであるo
ところ が, 西 欧. 日本に おいて は, 市 場 制 経 済シ ステムが環境 的外 部 制としての環 境と資 源有限の問 題 を 増 幅さ せ て き たのである. こち ら がく市 場 制B をそう した環 境 問題にみ ら れ る r 市 場の失 削 として見て, 環 境 保 全と施 策の責 任 主 体と 公権 力 微 細 の市 場‑ の 計 画 的 管理 と介入を要 請 して いる とすれ ば, 中 国やソ連では, r人間二 自 由二市 場J の コ
ンテキストで く市 場 制ンに希 望 を紡 いだ私 有 化 く民 営 化 を 進めて いるo こう した思い入 れの スレ違いをどのよ う な 歴 史 的 一 論理的 なコ ンテキストに おいて整理した らよいの だろ ぅかo 市 場 社 会 も 計 画 経 済 社 会の いずれも 環 境 問 題 を 抱え, その負 債に苦し ん でいるo そ し て, そうし た環 境 的 負 荷 を 克服する ために は, 我々 の側で は市場へ の管理 と修正を 政 策 原理に執っ てきた が, 中 国 . ソ連では, 市 場 創 出のな か に環 境政策の展望 を 見て いるの で あるo
ニ の論 稿はこうした論 点の整 理を志 して いるtっ 先 ず‑ 1 , 2 章で, 中 国. ソ連そ れ ぞ れ の環 境 問題に関 する調 査 を整 理すること か ら始め る.rI
1 . 中 国 東 北 部にお け る環 境 管理の発 展段 階
こ の章は, 遼 寧 大 学 経 済 管理学 院工業 管理学 科の万 振 茂 教 授との ヒア リングを 資 料文献
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で サ ポ ー ト したo
中 国で は, 環 境 汚 染の問 題が経 済 活 動 発 展の中で出てきて, 人 命 など‑ の悪 影 響, 国家 発 展にマイナス作用 という 大 き な 経 剤 勺損 害が問 題になっ たo そ れ は, 19 80年 代 初め に は, 自 然 界へ のダメ ー ジを 別にすれ ば, 1 9 0億元 に達 してい る と推 計さ れて いるo こ の間
の経 済 的 な 効益は29 5億元 く汚染 物 質 量は1 4万 トン1 であるo
lj 建 国‑1 9 73年二解 放に続く経 済復 興と社 会 建 設の時期で1 環 境 認 識はないo 工業 発 展
の なか で環 境は汚さ れ ている が, 衛 生 問 題の認 識 く人 間の体‑ の影 響l だけは注 意さ れ て
い た. 西 側の環 境 汚染や 公害の情 報が 入 り始め た が, r 資 本 主 義が そう した汚 染 を もた ら したJ の であっ て, 社 会 主 義に は無いというのが中 央の認 識だっ たo 後に19 7 0年 代 初め か ら環 境 認 識が出 来てきたo
21 1 973 ‑19 83年こ環 境 保 護につ い て, 19 7 3年に全 国 環 境工作 会 議が ひらか れ, r 全 面 規 臥 合 割 という 考 えが出たo 具 体 的には, r 稔 合 利 別 r 化 害 為 剛 r 依k a oく耐 群 則
恨蔑 環 劇 場 福人則 という 標 語が掲 げら れ たo 1 9 79年, 環 境 保 護 法に 明文 化 く第4
射 したもの の 憎 乳 倣櫛 という 施 策に留 まっ た だけであっ たo いろいろ とス ロ ー
ガンが掲 げ ら れた くト何 年 間で環 境 を 解 決せよJ などI が, 実 際に取 り 組み は な さ れ て い ない く実 際 的 な 管理 に はなっ ていないl o
だ が, 同法 を もって, 国 務 院 初め, 省 . 自 治 区 . 直 轄 市に環 境 保 護 部 局 設 置 を 設立 悌 26, 27 射 し, 各級機 関の関 係 部 門が r 大 中規 模 企 業 並び に事 業 単 位が そ れぞれの系
級, 部 門, 単 位の環境 保 護工作 を 遂 行 すること く第2 8射 を 決め ているo
31 1 98 3 ‑ 現 在こ中 国は, 1 97 9年r現 代 化J 実 現に着 手, 19 83年 以 降, 環 境 法再整備 へ外 国の経 験 を 活かすo 近代 化 建 設で, まずは環 境 管 理が第 一 義 的 政 策 く国家 指 導 要 綱の重要 な位卸 を 占め るo 1 9 83年に国務 院 納 掛 に環 境 保 護 委 員 会 く首 相が要 点 長l を 組 織 し, 国 家環 境保 護 局 を設 置 しているo 1 98 4年 全 国 第2 回 環 境 保 護 大 会で,
. 環
経
社
二
同 時発 展の方 針 を決め, 予 防 を 主とする総 合 的 管理を 強 化し始め た. 具 体 的に は, 34施 設 を 造り, 24 の法 規, 11 7項 目の標 準 を 決め たo そ して, 5 級の管理体 系 を 国. 省一 市 . 県 一 町 村に対
応 して設 置 した. 環 境 規 制 法 を制 定 して, 企画政 策 指 導の責 任 制, 環 境 保 護 実 施 機 関の設 置 個 か ら町に いたる1 , 都 市 計 画の絶 食企画と考 査, 首 長の責 任 所 在, 考 査の制 度 化,
各企業の考 査 項目, 汚 染 許 可 臥 環 境 保 護の宣 伝 く大 衆に自 然 保 護 認 識 を 育て る責 任l, 三同, 汚 染の ひ どい工場の停止 一移 転な どの手段で稔 合 的に行 なうという 仕 組みは出 来上
中国 東北とソ連 くシベ リ ア.極 東l に おける 環境 問題の現 状 と問 題 点
が っ たo
そ れ で は, 中 国の環 境 保 護の基 本 性 格は どう なっ ている だ ろうかo 当 時の中 国に は r 西 利 く欧 米 . 日和 は発 展の後か ら環 境 保 護に着手し たのが大 半だ か ら, 中 国でも 同じく,
工業 発 展 して か ら汚 染 を 治 すという 考えもあっ たく経 済 を 発 展さ せ て その後に環 境 保 護に 取り組むl が, 汚 染 して か ら修 復 する というの ではなく, 予 防 を 主にする ということ にし
l
たo その理由は, 中 国は発 展 途 上 国であり, 先 進 国のように環 境 汚 染による経 済 捜 央 を 出 し て は, そ れを 治 す 資金がないo 従っ て, 予 防 を 主, 先に王 というのが, 中国に は相 応 し
いという 結 論に至っ たようである.
経 済 建 設. 環 境 建 設 一 都 市 社 会の建 設, こ の3 つを 卜同 列 して行 なうこと で, 経 済. 環 境.社 会 効 益 を 同 時に達 成 するく予 防 を 主とするIo 環 境 保 護 を社 会 段 階の発 展の企画の 中に 入 れ る わけであるo r198 6 ‑9 0年二国 民 経 済 社 会 発 展 第7 次5 ケ年 計巨削 の中に r 中 国環 境保 護 計 軌 を設 定 したのであるo それ による と, 都 市 環 境の絵 合 的 r 治 乳 は予 防 を 捻 合 的に実 施 することを 旨にしてい るo 具 体 的な施 策として, 都 市 主 体からの全 面 的企 画 を 行い, 都 市 発 展の主 な 課 題として重 化 学工業 . サ ー ビ ス業の発 展 を絵 合 的 計 画として 作 成 して‑ 各分 野を 管理し, その 1 分野 に環 境が入っているo
都 市の環 境 的 規 制として, 例 えばマ ン ショ ン . アパ ー トに近い処 に は汚 水 路 を絶 対造 ら ないこと, 守. すで にある 処 に は, さまぎ まな提 案 を 行 な う く排 水 路の改 劇 o 旧い工場 を 改修し て汚 染 を 治 す. あるいは郊 外に移 転さ せ るo 規 制レ ベ ル の改 良 快気 汚 染l, 刺 用の規 制では, 東 北地方は 石炭が多く, 石 油少 な く, 天然ガスは ほ と ん ど産 出 し ないo そ れ だけ 汚染 対 策が難 しいo 従っ て, 施 設 面で r %B 市 集 中供 削 システム化 く廃 熱 を 別の工 場や住 宅 など が利用 し ていくう, 石炭の完 全燃焼 化 く燃 焼 を 通 じて汚 染 を抑る1, 熱 源の利 用率 を 向 上さ せ る, 節 水, 水 汚染の防止 休 汚染 を 出さない, 再 利榔 という 規 定が な さ れ,
一 部 実 施さ れ てい た. 地下 水の規 制が最 近かな り 厳 しく なっ てきている が, 都 市の水 汚 染が そ れ だ け深亥帖 なっ ている からである. 都 市 活 動は, 水源を別に求め る と か, 工業 用水で の排 水の回 収 化 汚 染 水の回収と対 応 く分 散処 理ノ 総 合処郵 も 多くの試みがなさ
れ ているo
し か し, 中 国の環 境 管理の際だっ た特 徴は, 新 建 設に はなるべく環 境 管理を 強め る, 釈 しい汚 染 源 を 最 小 限に 抑 え る という 施 策であるo 工業 発 展が主な汚 染掛 こなっ て い るの で, 工場 建 設に際 しては留 意 して, 汚染 をコ ントローールしていく 場 数 を 付け るうo 予 測 検 討 して建 設 を 決め る 価 以て評価 . チェ ッ クして, そ れを 充たさないものは建 設させな
いl ことであるo その ため に, r基本 建 設 項目環 境 保 護 管理乱 く19 81.5 .111の付 款 r 大 中 型 基 本 建 設 項目環 境 影響 報 告 書 提 乳 げセ スノント基 郵 が規定さ れて いるo
環 境アセ ス メントは, 技 術 僻 価 対 象 項 目う と手 続き か らなる が, 中 国の 鳩 乳 は前
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者のみ であるo 掲 げ られて いる対 象事 業 く基 本建 設項 削 は, 1.
一 切の自 然 環 境に対 する生 産の影 響, 放 出 排 出 汚 染 物が周辺環 境に たいして与 える 大 中演 模工業の主 な建 設 事 業
2.
‑ 切の自然 環 境と生 態 系の均衡に与え る大 中 規 模の水 利, 鉱 山, 港 湾, 鉄 道 交 通な どの主 な 建 設事 業
3. 広 面積の荒地, 湖 沼, 森林の開発に か んする主 な建 設 事 業
4. 珍 奇 野 生 動 物, 野 生 植 物 などの生 存と成 長に与 える影 響の大 きな生 息 造 成が危 険 な建 設 事 業
5. 各 種の生 態 類 型の 自 然保 護 区, 学 術 的に価 値のある特 殊地質 など で, 生 産が 地区地 形の変 容に大 きな影 響 を 与 える建 設事 業
となっているo
二つ目の特 徴ほ, 防止施 策での rf 同 くf酎 J であるo く11 同 時 設 計, く2う 同 時 実 行, く31 同 時検 定であるo
だが, 既 にある汚染 発 生 施 設と環 境 修 復の取 り 組み が決 定 的に 遅 れ ている. 国 家から 資 金 を 出 すの で, 国家 管理上, 相 当の挽 吾が がない限り は, 着 手され ないo 7 0年 代に, r 環 境 汚 染 者 負 担の原理J が入っ てきてきて, 経 済 改革 体 制が始まっ て から, 企業 く公 和 は 自 分で生 産 を企画 し, 資 金 も持 ちはじめ たのだ か ら, 負 担 を 国 家か ら外 して, r 汚 染 者 負 担の原 則くP P P, J を普及きせ るべき 段 階に なっ てきて はいない だろうかo 保 護 局の話に よる と, そ う した企 業は1 96 0年 代に設立 さ れ ていて, いまは技 術 改 良 を 当 面の課 題にして
いるので, そこまで回す 資 金 的ゆ とりがないとの こ と であっ たo し かし, 指 針 的に は,
19 83年に技術 改 良をし て環 境 汚 染 を 予 防 する方 針 を 決め ているo 国務 院 r 技術 改 良と結 合 して環 境 汚 染 防止をする 9 項 規 定J が そうであるc 捜 術 改 良の資 金に は, 環境 保 護 技 術の 資金 を 合わ せ て組むこと く7 % を 汚 染 防 止にl と されてい る. 1 981‑8 8年, 技 術 改 良 資 金 1 52 4億元の 7 % を 環 境 汚染 防止 に という 計 画であっ た が, 実 績は 30億元で, 規 定に は達 し
て いないo
なお, 1 9 82年に, 企業や事 業 単 位が経 営 管理をつよめ て資 源の節 約 . 絶 合 利用, 汚 染 r 治理J, 環 境 改 尊 を 促 進 する目的で, 公害 税にあた る r 征 収 排 汚 費 暫 行公法J が発 布さ れ
てい る.
遼 寧 省の場 合, 汚染 源の7 0% を 占め る大企業 く1 3 2社1 のうち, 20の工場に汚 染 修 復 を さ せ, 住 民な どへ の影 響 を 与 える 工場 を移 転さ せ, 汚 染の多い工場に 圧力 をか け た り, 拷 染源の改 良に集 中 的実 施 をさせ, 汚 染 者 自 身に負 担さ せ る く標 準 を 超 えた ら罰 金 を 出さ せ る1 ことを 行っ てい るo こ こは, 改 革 派が統 治 している ところであるo 卜排 汚 染 税 法J を 積 極 的に活用して,
‑ 定の数 量. 膿 度 を 超 えた ら税 を 取り, 環 境 保 護の資 金 く修 復 資 金l
へ 回すというや り方で あ るo
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