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韓 国 にお ける老齢手 当制度 と敬 老年 金制度 の 形成過 程 につ いて
株 本 千 鶴
〔要 約 〕
本 稿 は、韓 国 の 老 人 福 祉 法 が規 定 して い る所 得 保 障 の制 度 で あ る老 齢 手 当制 度 と敬 老年 金 制 度 の 形 成 過 程 を考 察 す る こ と に よ って 、韓 国 の高 齢 者 福 祉 政 策 お よ び社 会 福 祉 ・社 会 保 障 政 策 に お け る い くつ か の特 徴 を 明 らか にす る こ とを 目的 とす る。 ま ず 、高 齢 者 の所 得保 障 政 策 を概 観 し、 老 人 福 祉 法 の制 定 ・改 正 と連 動 して老 齢 手 当制 度 と敬 老 年 金 制 度 が 形 成 、展 開 され る過 程 を素 描 し、 さ い ご に考 察 を つ う じて見 出 され た知 見 を述 べ る こ と とす る。
〔キ ー ワ ー ド〕
所 得 保 障 、 手 当 、 年 金 、 無 拠 出 年 金 、 市 民 運 動
は じ め に
韓 国 で は、80年 代 初 頭 か ら福 祉 国家 ・福 祉 社 会 の 建 設 が 国 家政 策 の重 要 な 目 標 の ひ とつ と して掲 げ られ て きた とい わ れ る。 そ して 、 そ の 政 策 の展 開 過 程 に み られ る特 徴 の ひ とつ が、経 済 開 発優 先 の政 策 が と られ て きた こ とに よ って、経 済 発 展 に み あ った再 分 配 構 造 が成 立 して い な い こ とで あ る。 したが って 、 これ ま で の社 会 福 祉 政 策 で は 、 きわ め て 限定 され た対 象 者 に対 して 水 準 の低 い施 策 が お こな われ て き た。
近 年 、韓 国 で も福 祉 国家 の抱 え る社 会 問題 で あ る高 齢 化 の 問 題 が 深 刻 視 され る よ うに な り、 今 後 高 齢 化 社 会 、高 齢 社 会 へ 進 展 して い くこ とを 見 越 した対 策 が 策 定 され る よ うに な った。 この高 齢 者 福 祉 対 策 の 内実 に お い て も、 先 述 の政 策 の特 徴 が み られ る が、 本 稿 は そ れ を 、老 人 福 祉 法 が規 定 して い る所 得 保 障 の
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制 度 で あ る老 齢 手 当制 度 と その後 身 の敬 老 年 金 制 度 の形 成 過 程 を考察 す る こ と に よ って 明 らか に しよ う とす る もの で あ る1)。
方法 と して は、制 度 が案 出 され 、制 定 、施 行 され る まで の制 度形 成 に かか わ っ た行 為 主 体 、す な わ ち高 齢 者権 益 団体 、学 者 、研 究 者 、市 民 、市 民 団体 、官僚 、 国家 な どの制 度 を め ぐる議 論 の検 討 を とお して 、 当 初 の 構 想 、 制 度 の制 定過 程 と施 行 の 展 開 過 程 で 構 想 や 実 施 内容 に変 容 が生 じた 背 景 と要 因 な どを描 出 した い。 資料 は、 これ ま で に筆者 が入 手 した もの に限定 され るが、 そ の な か か ら各 行 為 主 体 の主 張 や政 策 案 な どを比 較 的 明確 にあ らわ して い る各 団体 発 行 の雑 誌
や学 術 雑 誌 、 研 究 報 告 書 、 白書 、 国会 議 事 録 な どを 主 に もち い る。
以 下 、 まず第2次 世 界 大 戦後 に形 成 され て き た高 齢 者 の所得 保 障 の体 系 にっ い て概 観 し、1981年 の老 人 福 祉 法 制 定 を へ て1989年 の法 改 正 時 に設 け られ た老 齢 手 当制 度 の制 定 と施行 の展 開 過 程 を検 討 し、 さ らに1997年 の法 改正 と と もに 敬 老 年 金 制 度 が制 定 、1998年 に実 施 され る まで の過 程 を考 察 す る。
1高 齢 者 の所 得 保 障政 策
1)高 齢 者 所 得 保 障 政 策 の 歴 史 的 展 開 と 構 造
老 後 の所 得 保 障政 策 は、1988年 に国民 年 金 制 度 が実 施 され る まで は、公 務 員 な ど特 殊 職 域 従 事 者 を対 象 と した年 金 制 度 と、 高齢 者 以 外 の対 象 者 もふ くむ貧 困者 に対 す る生 活保 護 制 度 か ら成 り立 って い た。 植 民地 時 代 の1944年 に制 定 さ れ て い た朝 鮮 救 護 令 の内 容 を 引 き継 いだ生 活 保 護法 が1961年 に、公務 員 年 金 法 が1960年 に 、軍 人 年 金 法 が1963年 に、私 立 学 校 教 職 員 年 金 法 が1973年 に制 定 、 そ して制 定 後 間 もな く施 行 され て い る こ とか ら、大 戦 後60年 代 か ら70年 代 にか け て は、 国家 の厚遇 を うけ た階 層 と対 極 の貧 困 層 を対 象 と した所 得 保 障 政 策 が取 られ て い た といえ る。 国 家 形 成 期 に国 家権 力 の た め に奉 仕 す る人材 へ の保 障 が優 先 して実 施 され る こ と、 中間 層 に先 ん じて 貧 困 層 の救 済 策 が講 じ ら れ る こ と は、一 般 的 な現 象 で あ る。
つ ぎ の段 階 と して 、一 般 労 働者 を対 象 と した国 民年 金制 度 の施 行 が発 案 され、
1974年 に 国民 福祉 年 金 法 が制 定 され た が、オ イル シ ョ ックの影 響 に よ る経 済 不
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安 を理 由に そ の施 行 は延 期 され 、1986年 に法 の 全面 改 正 に よ って 国民 年 金 法 が 制 定 され た後 、1988年 に実 施 され た。施 行 当初 は、10人 以 上 の事 業 場 労 働 者 が 対 象 で あ った が 、1992年 に5人 以 上 の事 業 場 労 働 者 、1995年 に農 漁 民 お よ び 農 漁 村地 域 居住 の 自営業 者 、1999年 に都 市 居 住 の 自営 業 者 へ と対 象 を漸 次 拡 大 す る こ と に よ って皆 年 金 が達 成 され た。
1974年 の国 民 福祉 年 金 法 は保 険 料 を経 済 政 策 の原 資 に用 い よ うとす る国家 の 目的下 に作 られ た もの で あ る とい われ る2)。経 済 事 情 を根拠 に国民 年 金 が実 施 さ れ なか った こ と も、 「先 成 長 、後 分 配 」 を ス ロー ガ ン と した 国家 の開 発 経 済 政 策 へ の積 極 性 と所 得 再 分 配 へ の 消極 性 を対 照 的 に示 して い る。1988年 に国 民 年 金 制 度 が実 施 され た背 景 に は、1987年 に経 済 成 長 の成 果 の配 分 を要 求 す る労 働者 た ちが お こ した大 闘争 が あ った。 そ の結 果 、全 斗換 大 統 領 は戦 略 を 民 主 化 に転 換 し、 それ を 引 き継 い だ盧 泰 愚 大 統 領 が、 選 挙 時 の 公 約 どお りに国 民 年 金 制 度 を実施 したの で あ る。 同時 に1989年 に医療 保 険 にお いて も皆保 険 が達 成 され た。
ま た、盧政 権 時 に は1988年 の ソ ウル で のパ ラ リ ン ピ ック開 催 に よ る障害 者 福 祉 へ の関心 拡 大 に よ って 障害 者 対 策 が進 展 した こ とや 、1989年 の地 方 自治 法 の成 立 に よ って地 域 福 祉 へ の取 り組 み が本 格 的 に開 始 され た こと な ど、社 会 福 祉 政 策 の拡 大 発 展 が み られ た3)。
80年 代 後 半 か ら90年 代 にか け て の高 齢 者 所得 保 障政 策 で は、前段 階 で構 築 さ れ て い た二 層 化 構 造 のす き ま に存 在 す る国 民 に ま で対 象 が 拡 大 され 、老 後 の 所 得 保 障 が全 国民 に確 約 され る こ と にな った 。 制 度 の対 象 者 を選 別 的 に 限 定 して い た段 階 か ら普 遍 的 な適 用 の段 階 へ と移 行 され る流 れ も、 一 般 的 に理 解 で き る 現 象 で あ る。 た だ し、 制 度 実 施 の契 機 につ い て は 国家 に よ って 、 ま た 、 制 度 に よ って相 違 が み られ る。 韓 国 に お け る社 会 保 障 政 策 の実 施 に お け る特 徴 は、 「極 め て 不 安 定 な社 会 変 動 期 」 と くに、政 治 権 力 を め ぐって の 変 動 期 に 「新 しい社 会保 障 政 策 が実 施 され る こ とや既 存 の政 策 が 拡 大 され る傾 向 が あ る こ と」 で あ る4)。1961年 に クー デ タ ー に よ って政 権 を掌 握 した朴 政権 時 の生 活 保 護 法 制 定 、 光 州事 件 を軍 事 的 に制 圧 した全 政 権 時 の各 種 福祉 サ ー ビス法 の制 定 、 そ の後 継 で あ る盧 政 権 時 に お け る皆保 険 と国民 年 金 の実施 な ど は、 「不 法 な方 法 で執権 し た政 治 権 力 が 国 民 の不 満 ・不 信 な どを鎮 静 させ 、 政 治 的 な正 統 性 を 確 保 す るた
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め の ひ とつ の手 段 と して社 会 保 障政 策 を利 用 した」 結 果 で あ る と言 え る ので あ る4)。
そ の後 、 民 主 化 と と もに福 祉 国 家 、 福 祉 社 会 の建 設 は国 家 施 策 の 目標 と して 定 着 し、 大 統 領 は公 約 で誓 った社 会 保 障 政 策 を実 行 す る た め の施 策 計 画 を策 定 す る よ うに な った が 、 そ の行 為 自体 は や は り、政 権 の正 統 性 と国民 の信 頼 を確 保 す るた め の戦 略 と して利 用 され て い る面 を残 して い る。1999年4月 に実施 さ れ た都 市 自営 業 者 へ の国 民 年 金 対 象 の拡 大 は、 所得 の把 握 が不 完 全 で あ り、 ま た1997年 末 以 来 の不 況 と い う悪 条 件 下 に あ る に もか か わ らず 強 行 され た ため 、 結 果 と して既 存加 入 者 と くに被 用者 の年 金 支 給 額 の実 質 的 な 引 き下 げ とい う副 作 用 を お こ し、 国 民 の非 難 を か った 。 これ は、 国 家 の過 度 な政 策 実 行 の 意 図 が か え って 国 民 の 不 信 を 喚起 した一 例 で あ る。
以 上 の よ うに、90年 代 末 ま で に公 的 扶 助 と公 的 年 金 に よ る老 後 の所 得 保 障 制 度 の体 系 は確 立 され た が、公 的年 金 は お もに未 来 の老 人 を対象 と した もので あ っ て 、制 度 制 定 時 に高 齢 に達 して い る者 に対 す る補 完 的 な所 得 保 障 制 度 が 同時 に 必 要 と され た。 そ れ が1989年 に策定 され1991年 に施 行 され た老 齢 手 当制 度 で あ り、1997年 に そ の後 身 と して制 定 され1998年 に施行 され た敬 老年 金 制 度 で あ る。詳 し くは後 述 す るが 、 両 者 と も国 民 年 金 の施 行 、 皆 年 金 実 施 と時 を ほ ぼ 同 じ く して施 行 され て い る こ とか ら もわ か るよ う に、 制 度 制 定 当初 、 国民 年 金 を補 完 す る無 拠 出年 金 の機 能 を持 つ もの と意 味 づ け られ て い た。
2)高 齢 者 所 得 保 障 の 施 行 内 容
公 的 扶 助 、 公 的年 金 、老 齢 手 当 ・敬 老 年 金 とい う所 得 保 障 体 系 の三 層 構 造 が 整 え られ て き た こ とを述 べ て き た。 つ ぎ に 、 そ れ ぞれ の 施 行 内容 に つ い て み て み た い 。
生 活 保 護 制度 の対 象 と支 給 内 容 は 〈表1>の よ うで あ る。 扶養 義 務 者 が いな い か 、扶養 義 務 者 が扶 養 能 力 を もた ない場 合 の65歳 以 上 老 衰 者 が 対 象 者 と して該 当す る。 保 護 対 象 者 を策 定 す る さ いの 「選 定 基 準 」(以 下 、韓 国 の用語 の訳 語 に は 「」 を つ け て お く)に は、 さ きの扶養 義 務 者 の有 無 な どの他 に 「所 得基 準 」 と
「財 産 基 準 」 が適 用 され 、そ の ど ち らもが 満 た され な けれ ば な らな い。 これ ら基
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準 は非 現 実 的 な まで に低 い た め 、受 給 資格 を得 られ な い者 を増 や す とい う問題 点 が あ る。 ま た、居宅 保 護 の場 合 、支給 額 は1998年 度 に最 低 生 計 費 の100%の 金額(居 宅 保 護 対 象 者1人 当 た り月162,000ウ ォ ン、施 設保 護 対 象 者125,000 ウ ォ ン)に な った が 、住 宅 扶 助 が な い な ど不 十 分 な点 を残 して い る。
65歳 以 上 の被 保 護 者 の全 被 保 護者 に 占め る割 合 は年 々高 ま って い る。 〈表2>
は被 保 護 世帯 の総 数 と65歳 以 上 被 保 護老 人 世 帯 数 を あ らわ して い るが 、後 者 が 微 増 、 微減 を 繰 りか え して い るの に比 べ て 、前 者 は順 調 に減 少 して きて い るの で 、必 然 的 に後者 の老 人世 帯 の 占め る割合 が大 き くな って きて い るので あ る。 選 定 基 準 に問題 点 が あ る こ とを勘 案 す れ ば、 潜 在 的 な要 保 護者 数 は さ らに 多 く見 積 も られ る こ とが 予 測 され る。
つ ぎ に、公 的年 金 制 度 で あ るが 、 国民 年金 は1988年 に施 行 され たた め 、完 全 老 齢年 金受 給者 は2008年 に な って発 生 す る。 他 の年 金適 用者 は特 殊 職 域 にか ぎ られ て い るた め 、年 金 を所 得 源 とす る老 人 は ご くわ ず か で あ る。 した が って、公 的 扶 助 お よ び公 的年 金 の対 象 に含 ま れ ず 、 また就 業 あ るい は 財産 に よ って収 入 を得 る こ との で きな い者 の大 部 分 は扶養 者 か らの補 助 を収 入 に して い る。1998
表1生 活保護対象者区分 と保護 内容
要 件 保護内容
扶養 義務 者 が いな いか、 い る場 合 で もその者 が扶養 能 力 がない、 その者 か ら扶養 を受 け られな い
1.65歳 以 上 老 衰 者 生計保護
居宅保護対象者(生 活保護法施行令第6 条第1号)
2.18歳 未 満 児 童 3.妊 婦
4.疾 病 ・事 故 な ど の 結 果 、勤 労 能 力 を 喪 失 した り、 障 害 に よ っ て 勤 労 能 力 の な い 者
医療保護 自活保護 教育保護 助産保護
5.上 の1号 あ る い は4号 の 者 と 生 計 を と も に す る 者 で 葬祭保護
こ れ ら の 者 の 扶 養 、 養 育 、看 病 、 そ の 他 こ れ に 準 ず る事 由に よ って生活 が困難 な者
施設保護対象者(生 住居 が なか った り住 居 が あ って もそ こで保護 の 目的 を
活保護法施行令第6 達 成 で きず 、保護 施 設 が保 護機 関 に入 所 させ て保護 を 同上
条第2号) 受 け る者
医療保護 自活保護対象者(生
活保護法施行令第6 条第3号)
生 活保護 対 象者 世帯 で 、 自活 を うな がす た め に この法 に よる保護 の一 部が必要 な者
自活保護 教育保護 助産保護 葬祭保護
出典:保 健福 祉部 『保健 福 祉 白書 』1998年
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表2生 活保護対象者世帯に占める65歳 以上老人世帯
年度 世帯数総計A 65歳 以 上世 帯(廃 疾、
障害者 を除 く)B B/A(%}
1991 626,040 171,077 27.3
1993 559,504 178,854 32.0
1995 495,045 171,895 34.7
1997 443,991 175,379 X1!
出 典:保 健福 祉 部 『生 活 保 護対 象者 現 況分 析』 各 年度
(韓国保 健 社 会研 究 院 『韓 国 の保 健福 祉指 標1998』p.244‑245よ り再掲)
表3老 人 の収入 源
(複数 回答)
収入源 回答者 数/調 査 対象者数(2,224人)
仕 事 ・職業 33.7
不 動産 ・家賃 12.0
貯 蓄 ・証券 の利益配 当 5.7
年金 2.8
退職金 0.9%
個人年金 0.2
非 同居 の子 どもか らの補助 66.3
同居 の子 ど もか らの補助 23.3
その他親戚 か らの補 助 1.2
国家補助 8.5%
団体 か らの補 助 0.7i
出典:鄭 敬培他 『1998年度 全国老人生活実態および福祉ニーズ調査』韓国保健社会研究院、
1998年 、p.172
年 に韓 国 保 健 社 会 研 究 院 が お こ な っ た 全 国 調 査 に よ れ ば 、65歳 以 上 の 調 査 対 象 者2,224人 の う ち 子 ど もか らの 補 助 を 収 入 源 と す る者 の 比 率 は 、 「非 同居 の 子 ど
も か ら」 が66.3%、 「同 居 の 子 ど も か ら」 が23.3%で も っ と も多 く、 そ の 他 の 収 入 源 で あ る 「仕 事 ・職 業 」33.7%、 「不 動 産 ・家 賃 」12.0%を 大 き く上 回 る 。
ま た 、「公 的 年 金 」 は2.8%、 「国 家 補 助(公 的 扶 助)」 は8。5%と な っ て お り、老 人 の 収 入 源 の う ち 社 会 保 障 に よ る も の は 全 体 の1割 程 度 に と ど ま っ て い る こ と が わ か る 〈表3>。
年 金 の 所 得 代 替 率 は 、 〈表4>に 示 され て い る よ う に 、 国 民 年 金 で は40年 加 入 時 で 最 終 所 得 の60%、 特 殊 職 域 年 金 で は30年 加 入 時 で 最 終 所 得 の70%と な っ て お り、 両 者 と もか な り高 い 代 替 率 で 設 定 さ れ て い る。 しか し、 国 民 年 金 制 度
韓 国 に お け る老 齢手 当制 度 と敬 老年 金 制度 の形 成 過 程 に つ いて 31
表4公 的年 金 の支給 内容(1998年)
国民年金制度 公務員など特殊職域年金制度
適用対象 ・5人 以 上 事 業 場 勤 労 者(1997年:560万 人)
・5人 未 満 事 業 場 勤 労 者 、 自営 業 者(1997年:224万 人) 国家 お よび地 方公務員 、私立 学 校教職員 、軍人
実施年度 ・1988年(被・1999年(自 用 者)営 業 者)
・1960年(公 務 員 年 金)
・1963年(軍 人 年 金)
・1975年(私 立 学 校 教 職 員)
給与水準
・完 全 年 金:基 本 年 金 額 の100%(40年 加 入 時 平 均 給 与 率:最 終 所 得 の60%、 所 得 等 級 別 最 高100%
〜 最 低40 .1%)
・減 額 年 金:基 本 年 金 額 の72 .5〜92.5%
・在 職 者 年 金:基 本 年 金 額 の50〜90%
・早 期 年 金:基 本 年 金 額 の75〜95%
・特 例 年 金:基 本 年 金 額 の25〜75%
・30年 加 入 時最 終所 得 の70
%(所 得 等級 に関係 な く代 替 率 は同 じ)
給与条件 20年 加 入、60歳 支給(完 全 年金) 20年 加入 出典:保 健 福 祉部 『保健 福 祉 白書 』1998年
(鄭敬 培他 『活 気 に満 ちた老 後生 活 保 障 の ため の高齢 者 創 業支 援 方案 』 韓 国保 健 社 会研 究 院 、 1999年 、p.35よ り再 掲)
で40年 加 入 者 が 出 現 す る こ と は ま れ な 例 で あ る と考 え る と、30〜59%が 実 質 的 な 代 替 率 に な る と思 わ れ る 。 一 方 、 職 域 年 金 に 関 し て は 代 替 率 そ の も の も高 い が 、 所 得 等 級 に 関 係 な く一 律 の 代 替 率 が 設 定 さ れ て い る こ と か ら、 優 遇 の 程 度 が よ り た か い こ と が 明 ら か で あ る。
さ い ご に 、 老 齢 手 当 ・敬 老 年 金 で あ る が 、 これ に つ い て は1998年 度 実 施 の 敬 老 年 金 制 度 の 実 施 内 容 を み て お こ う。 対 象 者 は65歳 以 上 の 被 保 護 者 と低 所 得 者 で 、 低 所 得 者 の な か か ら支 給 対 象 を 選 ぶ と き の 「選 定 基 準 」 に は 、 都 市 勤 労 者 世 帯 の 月 平 均 所 得 を 参 考 に し た 「所 得 基 準 」 お よ び 「財 産 基 準 」 が も ち い られ る 。 ま た 、 被 保 護 者 は 申請 の 手 続 き を す る必 要 は な い が 、 低 所 得 者 の 場 合 は 必 要 書 類 を 添 付 した 規 定 の 申 請 書 を 住 居 地 を 管 轄 す る 市 ・郡 ・区 の 長 に 提 出 しな け れ ば な らな い 。 支 給 額 は 月 額 で80歳 以 上 の 被 保 護 者 に は50,000ウ ォ ン、65
〜79歳 の 被 保 護 者 に は40 ,000ウ ォ ン、 低 所 得 者 に は15,000〜20,000ウ ォ ン とな っ て い る 。 これ らの 対 象 者 選 定 や 支 給 額 算 定 の 細 目は 老 人 福 祉 法 施 行 令 、施 行 規 則 で 定 め ら れ て い る 。
以 上 み て き た よ うに、韓 国 の高 齢 者 に対 す る所 得 保 障 政 策 は大 戦 後 約50年 を
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へ て全 国民 を対 象 に包 含 す る体 系 を構 築 した。 そ れ は、公 的扶助 と公 的年 金 、お よび それ ら制 度 に よ って保 障 を受 け られ な い者 の た め に制 定 され た老 齢手 当 ・敬 老 年 金 制 度 か らな る三 層 構 造 とな って い る。 しか し、所 得 保 障体 系 は と との っ
た が 、 国 民 年 金 の完 全 老 齢 年 金 受 給 者 が 出現 し、年 金 生活 が あ る程度 定 着 す る ま で の 当 分 の間 は所 得 保 障 と して の 効 力 は不 充 分 に しか発 揮 され な いた め 、年 金 加 入者 層 と被 保 護 者 お よ び敬 老 年 金 受 給 者 層 の どの 層 か ら もこ ぽれ お ち る者 が一 定 程 度 存 在 す る こ と に な る。 社 会 保 障 の構 造 か ら排 除 され た それ ら老 人 た ち は、 一 般 的 に就 業 の機会 が 少 な い こ とか ら、 子 ど もの扶 養 に依 存 す るか 、 あ る い は低 所 得 者 の 場 合 、所 得 不 足 の 問題 を解 決 で き な い ま ま貧 困 に耐 え なが ら の 生 活 を強 い られ る傾 向 に あ る。
ま た 、 この構 造 に よ る保 障 内容 は 、上 層 に厚 く下 層 に薄 い。 もち ろん 、公 的 扶 助 と社 会 保 険 で は 財源 が異 な るた め 、税 を財 源 とす る公 的扶 助 の支 給 額 が比 較 的低 額 に な る の は 当然 と もい え る。 しか し、近 年 、軍 人 年 金 、公 務 員 年 金 の 財 源 の大 幅 赤 字 状 況 や 、不 況 に よ る国 民 年 金 保 険料 未 納 者 の増 加 を原 因 と した 年 金 額 引 き下 げ な どの現 象 が お きて い る の は 、 国家 が 公 的 年金 制 度 を加 入 者 に 手 厚 い制 度 と して つ くった が た め に引 き起 こ され た 問題 とか ん が え られ る。 換 言 す れ ば、 それ は、 財源 の運 営 管 理 上 の 問題 を別 と して 、保 険 財政 よ り も保 険 加 入 者 へ の厚 遇 の意 思 を示 す こ と に重 点 を置 い た 国 家 の意 図 が もた ら した結 果
と もい え る の で あ る。
2老 齢 手 当制 度 の制 定 と施 行
1)老 人 福 祉 法 改 正 と 老 齢 手 当 制 度 の 制 定
す で に述 べ た よ うに、老 人 福 祉 法 が改 正 され た1989年12月 に老 齢 手 当制 度 は成 立 した。 改 正 老 人 福 祉 法 の制 定 に あ た って は 、 まず 、 老人 福 祉 法 制 定 時 以 来 、老 人 福 祉 政 策 にか か わ りが深 く、老 齢 手 当制 度 制 定 の た め の運 動 を主 導 し て い た社 団 法 人 大 韓 老 人 会 が改 正 法 案 を 作 り、 そ の後 、統 一・民 主 党法 案 、平 和 民 主 党法 案 、 与 党 民主 正 義 党法 案 が 国 会 に提 出 され た 。各 党 の法 案 の な か で老 齢 手 当制 度 の 内容 につ い て検 討 され て い た が 、財 源 の確 保 が も っと も危 惧 され
韓 国 にお け る老齢 手 当 制度 と敬老 年 金制 度 の形 成 過程 につ いて 33
て い た。 平和 民 主 党 案 で は老 人 福 祉 基 金 を設 置 して 財 源 を調 達 す る案 が 出 され た し5)、統一 民 主 党案 が 国会 保 健 社 会 委 員 会 で報 告 され た お りに は、 出席 委 員 か ら報 告 者 議員 に対 して65歳 以 上300万 人 の老 人 に手 当 を支 給 す る財 政 につ い て 政 府 側 と協 議 した の か と率 直 な質 問 が だ され た。 報 告 者 議 員 の 回答 は、 協 議 し た事 実 は な く、対 象 は65歳 以 上 老 人 だ が 「保 健 社 会部 長 官(日 本 の厚 生 大 臣 に あ た る)が 国家 予算 規 模 に よ って老 齢 手 当対 象 者 を70歳 以 上 に も75歳 以 上 に もい く らで も上 げ られ ます 。 した が って 、 これ は政 府 の裁 量 権 に任 せ る よ うに な って お ります 」 とい う もの だ った6)。野 党議 員 さえ もが 、法 案 作 成 当 初 か ら国 の 財源 だ けで は65歳 以 上 の老 人 す べ て を対 象 とす る こ とは不 可 能 と考 え て い た の で あ り、 ま た 、 国 の裁 量 で い か よ うに も対 象 選 定 の 年 齢 基 準 が調 節 され う る こ と も承 知 して い た の で あ る。
各 党 の 法案 を調 整 、統 一 して作 成 され た 国会 保 健 社 会 委 員 会 代 案 が本 会 議 を 通 過 、改 正 老 人 福 祉 法 が成 立 し、1989年12月30日 に公 布 、施 行 され た。 この 改 正 法 は、老 人 福 祉 法 が政 府 立 法 の 形 で 成 立 した の に対 して 議 員 立 法 に よ って 成 立 した こ と、 予 算 措 置 を と もな う老 齢 手 当制 度 が導 入 され た こ とを特 徴 とす
る7)。
全5章34条 の 改正 老 人 福祉 法 の な か で 、老 齢 手 当制 度 につ い て は第1章 「総 則 」 につ ぐ第2章 「福 祉措 置」 の第13条 で 「① 国 家 ま た は地 方 自治 団体 は65歳 以 上 の者 に対 して老 齢 手 当を支 給 す る ことが で き る、② 第1項 の老齢 手 当 を支 給 す る時期 及 び 対 象 者 の選 定 基 準 等 に関 して必 要 な事 項 は大 統 領 令 に よ って 定 あ る」 と規 定 され た。 この条 文第1項 の 「す る こ とが で き る」 とい う文 末 表 現 、第 2項 に よ る大 統 領 令(施 行 令)に よ って選 定 基 準 が 設定 され る とい う規 定 は、制 度 施 行 にお け る行 政 機 構 や大 統 領 の 裁 量 の容 認 を示 して い る。
改 正 の契 機 の ひ とつ と して 国 民 年金 の実 施 が あ る。1988年 の 国民 年 金 制 度 の 実 施 で は、保 険 料 納 入 者 で あ る将 来 の老 人 の み が老 後 の所 得 を保 障 され る。 し
た が って 、保 険 に加 入 で きな いす で に高 齢 に な って い る者 の 所 得 を保 障 す る補 完 的制 度 の制 定 の必 要 性 が あ った 。 国 民 年 金 制 度 の制 定 過 程 で も、 そ れ ら人 び との た め の無 拠 出年 金 制 度 案 が 出 され て い た ら しい。 それ を 象 徴 す るの が 法 の 名 称 変 更 で、1974年 制 定 の 国民 福 祉 年 金 法 か ら 「福 祉 」 が 削 除 され 、1986年
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改 正 時 に国 民 年 金 法 と改 称 され た理 由 は、 ひ とつ は 「福祉 」 の言 葉 が連 想 させ る慈 恵 的 な意 味 を排 して 「自立 精 神 を も と にす べ き」 で あ る と考 え られ た た め で8)、も うひ とつ は、無 拠 出老 齢 年 金 制 度 が 「政 府 の財 源 負 担 が 困難 とい う現 実 的 な壁 に は ば ま れ 、結 局 霧 散 化 され て しま った」 た め で 、 改 称 は その 「政 策 上 の 限 界 」 を反 映 した もの で あ る とr国 民 年 金10年 史 』 に は記 述 され て い る9)。
韓 国 の 国民 年 金制 度 で は、地 域 加入 者 の う ち農 漁民 の保 険料 に対 して1995年 か ら2004年 まで の期 限付 き で国 庫支 援 が あ る のみ で 、基 本 的 に は管 理 運 営 費 の 一 部 を負 担 す る以 外 は保 険料 に対 す る国庫 負 担 は な い。 した が って、 政 府 の 財 政 的 介 入 の少 な い こ とか ら も、 負 担 の か さむ 無 拠 出年 金 制 度 が実 現 され な か っ た の は 当然 の結 果 と もいえ る。 日本 で は 国 民 年 金 制 度 導 入 と同 時 に老 齢 福 祉 年 金 、母 子 福 祉 年 金 、障 害福 祉 年 金 の3つ の無 拠 出年 金 制 度 が実 施 され た が、 これ は保 険 料 の2分 の1を 国庫 で支 援 す るの に 、 「貧 困 の た め に保 険料 を拠 出 で き な か った人 に は国 費 の支 出 に よ る援 助 が 行 われ な い とい う不公 平 な結 果 にな る」 と い う理 由か ら、「拠 出制年 金 の支 給 が行 わ れ るよ うにな った の ちで も、無 拠 出制 を補 完 的 な制 度 と して存置 す る こ と と した」 ため で あ る1。〉。 日本 の場合 は、 国費 の 平 等 な再 分 配 と い う 目的 が あ った が 、 韓 国 の場 合 は制 度 の仕 組 み か ら して そ れ を お こな う根 拠 が な か った こ と にな る。
2)老 齢 手 当 制 度 の 施 行
老 齢 手 当制 度 はつ くられ た もの の 、支 給 金 額 、対 象 範 囲 な どを定 め る大 統領 令 の制 定 はお くれ 、実施 は延期 の状 態 がつづ い た。大韓 老人 会 が業 を煮 や し、1990 年5月4日 に関係 者 を集 め て老 齢手 当支 給 制 度 の早期 実 施 を求 め るため の公 聴 会 を 開 催 した。 公 聴 会 で の報告 者 は 、 関連 研 究 所 研 究 員 や大 学 教 授 な どで 、 制度 の基本 的性 格 や実 施方 法 な どにつ い て意 見 を述 べ て い る。以 下 、r老 人生活 』1990 年5・6月 号 に紙 上 掲 載 され た報 告 内容 か ら、制 定 当時 に制 度推 進 団体 、社 会保 障研 究 者 た ち が考 え て いた制 度 の意 味 や施 行 の意 図 、 方 向性 な どを み て み る。
施 行 の 具 体 的計 画 を も提示 した韓 国老 人 問題 研 究所 所 長 朴 在 侃 の 「老 人 の貧 困 は社 会 変 動 の影 響 が 原 因 で あ る た め これ は 当 然 国 家 的 次 元 で対 策 が 立 て られ るべ き」 と題 した報 告 で は 、 まず 、老 人 の所 得 保 障政 策 の現 況 を概 観 した の ち、
韓 国 に お ける老齢 手 当 制度 と敬老 年 金制 度 の形 成 過 程 につ いて 35
1988年 の 国民 年 金 制 度導 入 時 にす で に受 給 開始 年 齢 の60歳 を超 え て い る者 へ の所 得 保 障対 策 が 緊要 で あ る と主 張 され た 。 つ ぎ に 、老 人 福 祉 法 の 理 念 に基 づ い て そ の所 得 保 障 を担 う老 齢 手 当 の概 念 規 定 が こ ころ み られ る。老 人 福 祉 法 第 2条 の 「基 本 理 念 」 には 「① 老 人 は後 孫 の養 育 と国家 及 び社 会 の発 展 に寄 与 して き た者 と して尊 敬 され 、健 全 で安 定 した生 活 を保 障 され る」 とあ る。 これ に し た が って 朴 は 、 保 険 料 に よ る寄 与 が な い老 人 に も後 孫 養 育 と社 会 発 展 に実 質 的 に寄 与 した功 績 が認 め られ る た め、 そ の補 償 と して最 低 限度 の所 得 を保 障 す る こ とは理 論 的 に可 能 で あ る とす る。 ま た 同 時 に 、老 齢 手 当 は所 得 制 限 を と もな うた め低 所 得 者 を対 象 と した救 貧 制度 の性 質 を もつ が 、 概 念 的 に は公 的 年 金 の 類 型 に属 す る もの で あ る の で 、 それ を 年 金 制 度 が成 熟 す る ま で の過 渡 期 的 措 置 と捉 え よ うと して い る。 そ して、 法 にあ る 「65歳 以 上 の者 」 す べ て に手 当 を支 給 す る こ とが 望 ま しい が、予 算 上 の 困難 を考慮 して 当面 は65歳 以 上老 人 の35%
へ の支 給 か らは じめ 、3年 後 に50%、6年 後 に70%と 対 象 を拡 大 して い く段 階 的 な発 展 計 画 を提 示 した。 支 給 額 につ いて も、生 活保 護 支給 額 の 約50%に あ た る20,000ウ ォ ンを 当初 の支 給 額 と し、 漸 次 引 き上 げ て い く計 画 を作 成 した。
他 の報 告 の大 部 分 で も年 金制 度 と関連 づ けて の検 討 が こ ころみ られて い た。 韓 国 開 発 研 究 院研 究 委 員 の関 載 成 は、完 全 老 齢 年 金 受 給 まで の加 入 期 間 を 満 た せ な い者 の た め に設 け られ た特 例 老 齢 年 金 制 度 の支 給 額 を 勘 案 して手 当 支 給 額 を 検 討 す る こ と、 管 理 機 構 で あ る企 画 団 を構 成 して この 機 構 を 通 じて制 度 の 性 格 定 義 や対 象者 の 範 囲決 定 と選 定 お よ び ミー ンズ テ ス トの方 法 、 財 源 捻 出 、 執 行 機構 な どを準 備 す る こ とを提案 してい る。韓 国社会保 障 問題研 究 所長 のチ ェ ・チ ョ
ン ソ ンも老 齢 手 当 は公 的年 金 が 給 付 さ れ る まで の過 渡 期 的か つ方 便 的 な もの に と ど ま るべ き もの で 、無 拠 出老 齢 年 金 は 国民 年 金 法 の な か の制 度 か あ る い は個 別 制 度 と して 扱 わ れ るべ きで あ る とい う。 韓 国保 健 社 会 研 究 院社 会 研 究 室 長 の 鄭 敬 培 も 「手 当」 か らは じま り基 礎 年 金 制 度 と して 発 展 させ て 「年 金 」 制 度 に 編 入 させ る こ とが で き る と見 通 しを た て て い る。 中央 大 学 教 授 の 金 泳 護 の見 解 は 、老 齢 手 当 は老 人 福 祉 法 に規 定 され て い るの で 、 要 保 護 老 人 の た め の救 貧 的 性 格 を もつ もの と捉 え るべ き で あ り、無 拠 出年 金 制 度 と して み るな らば 国民 年 金 法 な どが 当 然 扱 うべ き とい う もの だ った 。
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「手 当」 とい う名 称 の適 切 性 につ い て も議 論 が もちだ され た。 ソウル大 学教 授 の キ ム ・サ ンギ ュ ンは 、手 当 とは特 定 範 ち ゅ うの者 、す なわ ち児 童 、母 子 家庭 、 障害 者 な ど貧 困 に お ち い る危 険 性 が高 い者 に対 して 国税 に よ る一 定 の 金 額 を無 差 別 あ る い は普 遍 的 に与 え る もの で あ る と定 義 づ け る。 した が って 、 多 様 な所 得 源 を もつ と予 想 され る老 人 に年 齢 だ け を基 準 に して手 当 を支 給 す る こ とはで き な い か ら、手 当 と呼ぶ の は不 適 切 で 、 非 寄 与 老 齢 年 金 と改 称 して仮 称 非 寄与 老 齢 年 金 法 を制 定 す べ きで あ る と提 議 した。延 世 大学 教 授 の イ ・ヘ ギ ョン も、国 民 年 金 法 で もな く生 活 保 護 法 で もな い老 人 福 祉 法 に依 拠 した老 齢 手 当 の 構想 と して 、① カ ナ ダの デ モ グ ラ ン トの よ うに年 齢 以 外 に は条 件 を必 要 と しな い普 遍 的 な制 度 、② 国 民 年 金 加 入 対 象 にな れ な い制 度 導 入 当 時 の老 人 の た め の経過 的 年 金 制 度 、 の2つ が 可 能 とか ん が え 、 公 的 扶 助 とは別 の もの と把握 した。
老 齢手 当 は、一 般 的 な意 味 で は社 会 手 当 と理 解 で き る。社 会手 当 に は2種 類 が あ り、「拠 出 に よ らな い現 金給 付 を指 し、その なか で も対象 を資力(所 得)に よ っ て制 限 す る もの を い わ ゆ る社 会 手 当 、 資 力 を条 件 とせ ず無 差 別平 等 の給 付 を行
う もの を デモ グ ラ ン ト(demogrant)と い う11)」。 したが って 、老 齢 手 当 は資 力 制 限 を と もな う社 会 手 当 の一 種 で あ り、 キ ム ・サ ンギ ュ ンや イ ・ヘ ギ ョンが 後 者 の デ モ グ ラ ン トの みが 社 会 手 当 で あ る とす る理 解 の しか た は 、社 会手 当 の形 態 の一一側 面 しか捉 え て い な い。 あ るい は、 選 別 的 な公 的扶 助 との 区 別 を 念頭 に お いて い た た め に あえ て無 差別 、普 遍 的 な制度 と解 釈 して い た のか も しれ ない。
いず れ にせ よ 、老 齢 手 当 の概 念 と内容 を め ぐって多 様 な解 釈 が な され て い る こ との理 由 の ひ とつ は、 それ が 老 人 福 祉法 に規 定 され て い る こ と にあ るだ ろ う。
国民 年 金 制 度 の経 過 的措 置 と して の意 味 づ けが各 論 者 に よ って な され て い るが 、 国民 年 金法 に よ って そ れ が 定 め られ て い るわ けで は な い。 した が って 、朴 在 侃 が老 人 福祉 法 の 理 念 を根 拠 と して老 齢 手 当 を無 拠 出年 金 と理 解 す る こ とが可 能 で あ る と証 明 した り、他 報 告 者 が 老 齢 手 当制 度 施 行 に年 金制 度 の 内容 を反 映 さ せ て い た り、根 本 的 な異 議 を とな え て老 齢 手 当制 度 を無 拠 出年 金 制 度 と把 握 す
る な らそ の管 轄 を 老 人 福 祉 法 か ら国 民 年 金 法 な ど他 方 に委 ね るべ き で あ る、 と い う意 見 を 出 した り した の で あ る。
!990年12月 、 国会 で老 齢 手 当 の 内容 が確 定 され 、70歳 以 上被 保 護者(居 宅
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及 び施 設 保 護 者)76,000人 へ の 月 額1万 ウ ォ ンの 支 給 が 翌 年1991年1月 か ら 施 行 さ れ た 。 国 民 年 金 制 度 や 生 活 保 護 制 度 な ど と の す りあ わ せ に よ っ て 対 象 者
や 支 給 金 額 を 決 定 す る と い う作 業 も な く、 予 算 の 観 点 の み か ら施 行 内 容 が 決 定 さ れ た 。 最 終 的 決 定 の 前 に 、 経 済 企 画 院 で は さ ら に人 数 を しぼ っ て70歳 以 上 被 保 護 者 の う ち51,000人 を 対 象 に す る 案 もだ さ れ て い た と い う12)。
老 齢 手 当制 定 過 程 と施 行 直 前 時 に お け る制 度 推 進 者 た ち の意 図 は、 いず れ も 老 齢手 当 を国民 年 金 法 の経 過 的措 置 と して機能 させ る こ と にあ った。 しか し、実 際 の施 行 内容 は、 そ の意 図 を 極 め て媛 小化 した もの に な った。 支 給 対 象 の70歳 以 上 被 保 護 者 数76,000人 は、 朴 在 侃 が た て た計 画 の第 一 段 階 の 目標 で あ る65 歳 以上 老 人 の35%、770,000人 の約1割 で あ る。 もち ろん 、ニ ー ズ の高 い者 へ 重 点 的 に給 付 す る こ とが効 率 的 な資 源 の配 分 法 で あ る とす れ ば、 よ り高 齢 かつ 貧 困 な者 を対 象 と して優 先 す る こ と は、 限 定 され た 予算 を勘 案 す る と、 と られ るべ き 当然 の 手 段 といえ る。 しか し、制 度 制 定 当 初 か ら裁 量 に よ る対 象 の年 齢 引 き上 げが 予 想 され て い た こ とや 、 ミー ンズ テ ス トや支 給 額 にか ん す る制 度 独 自 の基 準 をつ くる よ り も生 活 保 護 基 準 が援 用 され た こ とな どは、 この制 度 に対 す る国家 の消 極 性 を あ らわ して お り、 それ が 当初 意 図 され て い た制 度 の 内 容 と 機 能 を大 き く変 容 させ た要 因 にな って い る とい え るだ ろ う。
3老 齢 手 当 制 度 の展 開 過 程
1)老 齢 手 当 制 度 の 施 行 状 況
老 齢 手 当制 度 推 進 者 た ち の意 図 を綾 小 化 した 内容 とな った が 、制 度 の施 行 と と もに老 齢 手 当 支 給 が 開始 され 、 支 給 金 額 は年 々 引 き上 げ られ 、 対 象 も拡 大 さ れ て い った 〈表5>。1993年 に対 象者 が70歳 以 上 の全被 保 護 者 に拡 大 され、支 給 額 も5,000ウ ォ ン増 額 され た。1995年 に は支 給 額 が年 齢 に よ って二 元 化 され て 、高 齢 の者 に支 給 額 が加 算 され る こ とに な る。 ま た、 対 象年 齢 は しば ら く70 歳 以 上 に固定 され て い た が 、1997年 に65歳 に 引 き下 げ られ 、 老 人 福 祉 法 に明 示 され た 「65歳 以 上 の者 」 へ の 支給 が よ うや く実 現 され た 。 しか し、 この前 進
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表5老 齢手当支給対象者 と月額支給額
年 対 象 者 人 数 月額支給額
1991年 70歳 以 上 被保 護(居 宅 ・施設保護)者 76,000人 10,000ウ ォ ン
1993年 70歳 以上 被保護者 191,000人 15,000ウ ォ ン
1994年 70歳 以上 被保護者 181,000人 15,000ウ ォ ン
1995年 70〜79歳 被保護者
80歳 以上 被保護(居 宅 ・施設保 護)者 174,000人*
20,aoaウ ォ ン 50,000ウ ォ ン
1996年 70〜79歳 被保護者
80歳 以上 被保護(居 宅 ・施設保 護)者
155,000人 19,000人
30,000ウ ォ ン 50,000ウ ォ ン
1997年 65〜79歳 被保護 者 80歳 以上 被保護者
228,000人 37,000人
35,000ウ ォ ン 50,000ウ ォ ン
出典:『 保健 社 会 白書 』 『保健 福 祉 白書 』各 年 版
*対 象 者 の全 数(白 書 に明記 され て い なか った た め保健 福 祉 部 の内 部 資料 よ り算 出)
は 国 家 の 意 志 を 直 接 反 映 した も の と は い え な い 。1996年 度 版r保 健 社 会 白書 』 に は 、 政 府 の 財 政 を 勘 案 して 支 給 対 象 を 拡 大 して い く計 画 で あ る と 付 言 は さ れ て い る が 、1997年 度 の 計 画 と して70〜79歳 の 被 保 護 者 に 月 額35,000ウ ォ ン、
80歳 以 上 の 居 宅 お よ び施 設 保 護 対 象 者 に 月 額50,000ウ ォ ンを 支 給 予 定 で あ る こ と が 明 記 さ れ て い る か らで あ る。 対 象 の 年 齢 引 き下 げ が1997年 に 実 行 され た 背 景 に は 、 老 齢 手 当 制 度 に不 満 を もつ 市 民 に よ る制 度 の 違 法 性 を 追 及 す る運 動
が あ っ た 。
2)老 齢 手 当 制 度 の違 法性 追 及 と市 民 運 動
「テ レ ビ で 老 齢 手 当 に つ い て 話 を 聞 い て 、 な に か 措 置 が あ る の だ ろ う と思 って い た の に な ん の 措 置 もな い ん で す よ 。 あ ん な ふ う に 国 民 に 対 して 話 を して お い て 何 の 手 だ て も しな い の な ら国 民 は な ん で 政 府 を 信 じ られ ま す か 。 そ の 点 に つ い て た い へ ん 憤 慨 した ん で す 。 そ れ で 老 齢 手 当 請 求 訴 訟 を 起 こす こ と に な っ た ん で す13)」
老 人 福 祉 法 第13条 第1項 の 「65歳 以 上 の 者 に 老 齢 手 当 を 支 給 す る こ と が で き る 」 の 規 定 に 反 して 実 際 は70歳 以 上 被 保 護 者 が 支 給 対 象 で あ っ た た め 、対 象 か ら除 外 さ れ て い た 当 時 満65歳 の 被 保 護 者 イ ・ギ ナ ム 氏(男)の 談 で あ る。 権 利 を は く奪 さ れ た 彼 は 、 国 家 へ の 不 信 と怒 り を 掻 き た て られ 、 老 齢 手 当 支 給 対 象
韓 国 に お け る老 齢 手 当制 度 と敬 老年 金 制度 の形成 過 程 につ いて 39
者 選 定 除外 取 消 請 求 訴 訟 とい う行 動 を起 こす に い た った の で あ る。
老齢 手 当 につ い て の施 行 細 目を定 め た施 行 令 の第17条 で は、65歳 以上 の者 の うち所 得 水 準 な どを 参 酌 して対 象者 を選 定 す る、 所 得 水 準 につ い て は保 健 社 会 部 令(施 行 規 則)で 定 め る と規 定 され て い た。 しか し、保 健 社 会 部 令 の施 行 規 則 に これ につ い て の規 定 は な く、老 人 福 祉 事業 指 針 で70歳 以 上 の被 保 護 者 を対 象 とす る こ とが記 され て い る の み で あ った 。 イ ・ギ ナ ム氏 は 、 この規 定 の不 当 性 を批 判 す る た め に保 健 社 会 部 を相 手 に訴 訟 を起 こ した の で あ る。 高 等 裁 判 所 裁 判 部 で は、 ① 老 人 福 祉 法 の老 齢 手 当規 定 は任 意 規 定 で あ り国 家 予 算 の都 合 に よ って 支 給 で き る もの で あ る た め 国家 の裁 量 が 認 め られ る、② 施 行 令 で 「所 得 水 準 等 」 を参 酌 す る よ う に規 定 され て い るの で保 健 社 会 部 指 針 で 年 齢 の制 限 を 設 定 して70歳 に規 定 した こ とは 問題 な い、 とい う判 決 に よ って違 憲 が認 め られ な か った。 しか し、大 法 院(最 高 裁 判 所)の 判 決 で は、 任 意 規 定 と は い って も 施 行 令 で委 任 され たの は年 齢 基 準 で は な く所 得水 準 と関連 した経 済 的水 準 で あ っ て 、保 健 福祉 部(1995年 保 健 社 会 部 を改 称)が 年 齢 基 準 を70歳 以 上 に 引 き上 げ て相 当数 の対 象者 を 除外 した行 政 行 為 は違 憲 で ある と判 断 され た。 これ に よ っ て1994年12月 の提訴 か ら約1年 半 後 の1996年4月 に原告 が 勝訴 し、現行 の指 針 は無 効 とされ 、1997年 か ら対 象 年齢 が65歳 以 上 に 引 き下 げ られ た ので あ る。
また 、 同年 に老 人 福 祉 法 が 改 正 され て敬 老 年 金制 度 が 導 入 され る ひ とつ の契 機 と もな った14)。
この訴 訟 に お け る原 告 の 勝 訴 は つ ぎの よ うな意 味 を もつ 。第 一 に、 原 告 が法 体 系 に したが った裁 量 的 行 政 行 為 の み が正 当 で あ る と被 告 に認 め させ た こ とで
あ る。 社 会 福 祉 法 制 の 研 究 者 で あ るサ 燦 榮 は、 現 実 の裁 量 的行 政 行 為 が法 令 で な い指 針 の形 態 で な され る こ とが 多 い の に対 して、 この訴 訟 は 「対 象 者 の権 利 を無 視 した ま ま慣 行 的 に な され て きた慈 善 的 福 祉 行 政 の反 法 治 主 義 的慣 行 に対 して 問題 提 起 した もの15)」と評価 して い る。老 齢 手 当 の支給 額 は老 人 福 祉 法 で そ の 目的 にあ う水 準 を定 め、 そ れ を算 出す る方 法 や手 続 きを下 位 の命 令 規 範 に委 任 す るの が垂 直 的 法 体 系 を維 持 す る こ とで あ る とす れ ば16>、法 一施 行 令(大 統 領 令)一 施 行 規 則(保 健 福 祉 部 令)と い う体 系 が本 来 どお り機能 す る こ とが 原 告 の訴 え に よ って 要 求 され、 ま た それ が体 系 の機 能 を是 正 させ た と もい え る。
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第 二 に、 当事 者 で あ る老 人 が 不 当 な裁 量 に よ る給 付 規 定 に対 して異 議 を 申 し 立 て 、 法 に規 定 され た対 象 者 と して措 置 を受 け る権 利 を獲 得 した とい う こ とで あ る。第13条 は 「〜 す る こ とが で き る」 と任 意 規 定 の表 現 に な ってい るが、上 位 規 範 で あ る法 の規 定 を逸 脱 した福 祉 部 の 年 齢 規 定 が違 法 で あ る と主 張 す る こ
と で、 原 告 の受 給者 と して の権 利 が獲 得 さ れ た。 この よ うな権 利 性 の獲 得 の 判 例 は制 度 を よ り有 効 な もの に し、定 着 へ と前 進 させ る。
第 三 に 、 こ の訴訟 は原 告 の イ ・ギ ナ ム氏 ひ と りに よ って 勝 ち取 られ た わ け で は な く、原 告 を支 援 した市 民 団体 で あ る参 与 民 主 社 会市 民連 帯(以 下 、 参与 連 帯 とい う)の 主 導 で展 開 され た福 祉 運 動 の結 果 で あ る ことが大 きな特徴 で あ る。
韓 国 で は、福 祉 運 動 は他 の社 会 運 動 に くらべ て低調 で 、70年 代 、80年 代 を とお して い くつ か の運 動 が あ ったが 、不 充 分 な成 果 しか上 げ られず 、90年 代 に はい っ て か ら本 格 的 な発 展 が 見 られ る よ うに な った。1994年9月 に創 立 した参 与 連 帯 も創 立 後 す ぐに社 会 福祉 委 員 会 を 構 成 し、 障害 者 や老 人 な ど分 野 別 福 祉 対 象 者 の主 体 的 な運 動 、社 会 福祉 従事 者 の労 働 組 合 結 成 運 動 な どを継 ぐもの と して組 織 的 な運 動 を 開始 した17)。
参 与 連 帯 の運 動 の 究極 的 目標 は国 民 生 活 最 低 線 の確 保 で あ り、 それ を基 盤 に 社 会 福 祉 の 具 体 的 な 問題 につ い て 政 策 提 示 を お こな って い る。 参 与連 帯 の戦 略 の ひ とつ と して 、韓 国 で まだ定 着 して い な い 公益 訴 訟 運 動 が あ る が、 そ の一 例 が老 人 の 生活 保 障 を確保 す るた めの老 齢 手 当 に関 す る先 の訴訟 で あ る18)。総 体 的 な視 野 に た った社 会 福祉 あ るい は社 会 保 障 政 策 推 進 運動 の な か で、老 人 の社 会 福 祉 権 確 保 の た あ の運 動 は老 人 福祉 法 改 正 を 求 あ る運 動 へ とつ らな る。
以 上 の よ うに 、老 齢 手 当制 度 は施 行 初 期 に少 額 で は あ る が支 給 額 の拡 大 が お こな わ れ た とい う事 実 か ら、実 施 主 体 で あ る国家 の 制度 に対 す る積極 性 を うか が う こ とが で き る。 しか し、将 来 的 な対 象 の拡 大 と水 準 の 引 き上 げの計 画 を示 して き た一 方 で、 つ ね に財 政 の都 合 が 優 先 され て きた。 よ り積 極 的 な対 象拡 大 を後 押 し した 背 景 に は、 行 政 当局 を相 手 取 って お こな わ れ た老 齢 手 当制 度 の違 法 性 追 及 運 動 が あ った。 所 得 保 障 を受 け る 当事 者 お よび社 会 運 動 団体 で あ る参 与 連 帯 とい う主 体 の 出現 と関 与 は制 度 の 変 容 に影 響 を及 ぼ した だ けで な く、老
韓 国 にお け る老 齢手 当制度 と敬老 年 金制 度 の 形成 過 程 につ いて 41
人 福祉 政 策 な らび に他 の社 会 福 祉 ・社 会 保 障 政 策 の動 向 を左 右 す る、 あ らた な そ して 重 要 な要 素 にな って い くと思 わ れ る。
4敬 老 年 金 制 度 の制 定 と施 行
1)1997年 老 人 福 祉 法 改 正 と 敬 老 年 金 制 度 の 制 定
1993年 に若 干 の項 目追 加 が な され た改 正 の後 、1997年8月 に再 度 老 人 福 祉 法 が改 正 され た。 改 正 法 は、 これ ま で の法 とは大 幅 に構 成 が変 更 され 、 条 項 も 増 加 して全7章61条 に な った。 旧法 の構 成 は 「第1章/総 則 、 第2章/福 祉 措 置 、 第3章/施 設 お よ び事 業 、第4章/費 用 、第5章/補 則 、第6章/罰 則 」で あ ったが 、改 正 後 は 「第1章/総 則 、第2章/敬 老 年 金 、第3章/保 健 ・福 祉 措 置 、第4章/老 人 福 祉施 設 の設 置 、第5章/費 用、第6章/補 則 、第7章/罰 則 」
とな り、筆 頭 に新 設 の敬 老 年 金制 度 が1章 を割 いて設 け られ た こ と、保 健 サ ー ビ ス が独 立 して扱 わ れ た こ とが も っ と も大 き な特 徴 で あ ろ う。 老 齢 手 当 か ら敬 老 年 金 へ の改 称 は 、無 拠 出年 金 へ の機 能 上 の 接近 を示 した い制 度 制 定 者 の意 図 の 表 れ で あ る とい え よ う。法 改 正 と敬老 年 金 制 度 の導 入 まで の経 緯 を政 策 研 究 者 、 市 民 団 体 、 国会 議 員 の 主 体 ご と に整 理 して た ど って み る。
(1)政 策研 究 者
政 策 研 究 者 の 間 で は、 老 齢 手 当制 度 対 象 者 を拡 大 して い くと と もに 、 将 来 的 に はす べ て の老 人 の所 得 を保 障 す る ため の 方 策 の ひ とつ と して無 拠 出老 齢 年 金 制 度 を導 入 す る案 が かん が え られ て い た。 李 佳 玉 に よれ ば、 先 進 諸 国 で は拠 出 制 年 金 制 度 の本 格 的 な実 施 が無 拠 出制 度 の導 入 を促 進 す る契 機 に な って い る こ とか ら、韓 国 の場 合 、2003年 に減 額 老 齢年 金受 給 者 が発 生 す る時期 前 後 が適 当 と判 断 され て お り、 ま た 、支 給 額 も年 金 支 給 額 の最 少 水 準 程 度 とあ わ せ て設 定 され るの が適 切 で あ る と検 討 され て い た19>。この よ うに、年 金 制 度 との 関連 か ら 受 給 権 の な い者 や低 所 得 者 の た め の 無 拠 出年 金 制 度 の導 入 が老 人 福 祉 政 策 や年 金 制 度 の研 究 者 た ち に よ って議 論 され て い た。 また 、 時 期 的 に も、任 意 加 入 部 分 を残 して い た 国民 年 金制 度 が1995年 に農 漁 民 お よび郡 地 域 居 住者 に まで対 象
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を 拡 大 し、 の こ る対 象 が 都 市 自営 業 者 の み とな り皆 年 金 が 目前 にせ ま って い た こ とが 、無 拠 出年 金 と して の敬 老 年 金 制 度 の導 入 が具 体 的 に検 討 され る背 景 と
して あ った。
(2)市 民 団 体
市 民 団体 にお い て も老 人 福 祉 法 の 改 正 を要 求 す る声 が 起 こ って い た。 参 与 連 帯 は 、韓 国老 人 問題 研 究 所 、韓 国老 人 の電 話 な ど と共 催 で 「老 人 福 祉 法 、 生活 保 護 法 改 正 公 聴 会 」 を1995年9月23日 に 開催 して い る。 会 の趣 旨は 、 国民 の 最 低 限 の 生 活保 障 を確 立 す るた め に、 現 行 老 人 福 祉 法 と生 活保 護 法 の 問題 点 と 改 正 案 を検 討 、 提 示 す る こ とで あ った。 こ こで の 関心 で あ る老 人 福 祉 法 上 の所 得 保 障 で あ る老 齢 手 当 につ い て の 言 及 を み る と、老 人 に対 す る所 得 保 障 は生 活 保 護 法 と老 人 福 祉 法 に よ って 提 供 され て い るが 、 本 来 生 活 保 護 法 は補 充 的 な性 格 の特 別 法 で あ るべ きで 、老 人 福 祉 法 が一・般法 で な け れ ば な らな い。 老 人 福祉 法 上 の 所 得 保 障 は老 齢 手 当制 度 で あ るが 、手 当 と は 「人 口学 的 特 性 だ けを考 慮 し無 差 別 に支 給 され る権 利 性 給 与 で な けれ ば な らな い が、 現 行 法 上 の手 当 と は 一 種 の公 的 扶助 にす ぎな い」 と批 判 され た20)。 した が って 、年 金制 度 に よ る年 金 受 給 者 や 資 産 所 得 お よび勤 労 所 得 の あ る者 な どを 除 外 す る こ とは条 件 と して必 要 で あ る けれ ど も、理 想 と して はす べ て の老 人 に普 遍 的 に支 給 され る よ う に改 善 され な けれ ば な らな い と主 張 され る。
老 齢 手 当受 給 の権 利 性 と制 度 の 普 遍 性 を追 求 す る主 張 は、 法 の具 体 的 理 念 を め ぐる解 釈 に も及 ん で い る。 それ は、第2条 「基 本 理 念 」第1項 の 「老 人 は後 孫 の養 育 と国家 及 び社 会 の発 展 に寄 与 して きた者 と して尊 敬 され 、 健 全 で安 定 し た生 活 を保 障 され る」 とい う条 文 で 、 老 人 に対 す る保 障 が そ の 寄 与 に対 す る補 償 の よ う に規 定 され て い る こ と に対 す る批 判 的 な解 釈 で あ る。 す なわ ち、 この 規 定 は 「後 孫 が い なか った り十 分 に養 育 を行 わ な か った老 人 、社 会発 展 に寄 与 で き な か った老 人 に対 して は福 祉 サ ー ビス を行 うべ きで は な い と い う、 い いか え れ ば老 人 を二 つ の 階層 に分 類 す る意 味 を もつ 」 もの で あ って 、「老 人 問題 を社 会 問題 と して直視 で きてい ない ことを証 明す る もの」であ ると され る21)。したが っ て 、 倫 理 的、 個 人 的 責任 に転 嫁 して貢 献 の な い老 人 を排 除 しよ う とす る国 家 の
韓 国 に お け る老 齢 手 当制 度 と敬 老年 金 制度 の形 成 過程 につ いて 43
政 策 を 改 善 し、老 人 が 老 人 とい う理 由 だ け で そ の生 活 困難 に対 す る社 会 保 障 を 受 け られ る よ う に、 第2条 を削 減 す る改 正 案 が 提 示 され た22)。
参 与 連 帯 は1996年11月8日 に生 活保 護 法 改 正 に関 す る請 願 と と もに老 人 福 祉 法 改 正 に関 す る請 願 を 国 会 に提 出 して い る。 公 聴 会 の結 果 を ま と め た もの と 考 え られ るが 、 この請 願 を検 討 した保 健 福 祉 委 員 会 の専 門委 員 の検 討 報 告 で は、
現 行 老 齢 手 当制 度 は低 所 得 老 人 を対 象 にす る生 活 保 護 の性 格 が 強 い 反 面 、請 願 の 内容 は これ を 普 遍 的 な社 会保 険 の性 格 の制 度 に転 換 す る よ う求 め て お り、 こ れ は福 祉 増 進 に効 果 的 な法 案 で あ る と述 べ られ 、趣 旨 に対 して好 意 的 な評 価 が な され た。 た だ し、 これ に随伴 す る財源 の規 模 お よび 財 源 調 達 方 案 につ い て は 総 合 的検 討 が必 要 と い う こ と も付 言 され た23)。
(3)国 会 議 員
参 与 連帯 の 請 願 が 提 出 され た 頃、1996年11月 か ら1997年3月 にか け て老 人 福 祉 法 改正 に関 す る6件 の法 案 が国 会 に提 出 され た。 そ れ らは提 出順 に、① 老 人 福 祉 法 中改 正 法 律 案(金 弘 一 議 員 他20人 発 議)、 ② 無 拠 出老 齢 年 金 法 案(金 乗 泰 議 員 な ど3人 他75人 発 議)、 ③ 老 人 の社 会参 与 に 関す る基 本法 案(李 在 善議 員 な ど3人 他35人 発 議)、 ④ 老 人 福 祉 法 改 正法 律 案(金 燦 干 議 員 な ど13人 他140 人 発 議)、 ⑤ 老 人 福祉 法 中改正 法律 案(金 乗 泰議 員 他27人)、 ⑥老 人 保 健 法案(金 乗 泰 議 員 な ど13人 他65人)で 、 そ れ ぞ れ 国 会保 健 福 祉 委 員 会 で報 告 と検 討 が 行 わ れ て い る。
所 得 保 障 の た め の新 制 度 導 入 を法 案 に と りい れ て い る もの は、 ② 無 拠 出老 齢 年 金 法 案 と④ 老 人 福 祉 法 改 正 法律 案 で あ る。② 無 拠 出老 齢 年 金 法 案 は ま さ に国 民 年 金 制 度 の 限界 を補 完 す る 目的 か ら作 成 され て い る。 この案 につ い て専 門委 員 は 、支 給 対 象 と支 給 の 如 何 を 大 統 領 令 に よ って定 め る方 法 は国 家 財 政 の与 件 に左 右 され や す い の で 、制 度 を 名 実 と もに実 行 す る た め に は そ れ らを法 律 案 で 明 白に す る こ とや 、完 全 老 齢 年 金 受 給 者 出現 後 も無 拠 出年 金 の受 給 対 象 者 は存 在 す るた め補 完 装 置 が必 要 であ る。 ま た支 給 対 象 につ い て は 、案 は最 低 生 活 費 水 準 以 下 の所 得 の者 を原 則 と して い る が 、社 会 保 障 基 本 法 の規 定 に よ る最 低 生 計 費 に したが え ば対 象 は65歳 以 上 の被 保 護 者 と同 じに な って しま う。案 の 提案