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高齢者医療制度の行方 ―― 後期高齢者医療制度を超えて ――

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(1)OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 香 川 大 学 経 済 論 叢 第82巻 第3号 2 0 0 9年1 2月 1 6 1−18 4. 高齢者医療制度の行方 ―― 後期高齢者医療制度を超えて ――. 小 目. 松. 秀. 和. 次. !. はじめに. ". 後期高齢者医療制度に対する批判とその検証. #. 後期高齢者医療制度創設の経緯と目的. $. 民主党政権誕生と後期高齢者医療制度の廃止. %. 老人医療費と高齢者医療制度のあり方. &. おわりに. Ⅰ はじめに 去る2 0 0 9年8月3 0日に第4 5回衆議院議員総選挙が行われ,民主党が衆議 '. 院で第一党となり政権与党の座に就いた。いわゆる民主党政権の誕生である。 新政権は旧来の自民党政権とは異なる政策をマニフェストという形で大々的に 訴えて政権交代に成功したわけであるが,その政策は多岐にわたる。経済成長 のエンジンを生産者から消費者に,外需から内需へシフトするマクロ経済政策 など興味深いものが多い。とりわけ国民の関心を引いているのが,こども手当 の創設など社会保障に関する分野である。 自民党政権が小泉内閣の時代から聖域なき構造改革と称して,社会保障費を 毎年2, 2 0 0億円ずつ抑制する方針(福田,麻生内閣でその目標に対する意欲が 次第にトーンダウンしてきた感はあるが)を掲げてきたのは周知のとおりであ る。実際,障害者自立支援法の制定,診療報酬および介護報酬の引き下げ,生 活保護費の母子加算廃止などが行われてきた。一方,それらと軌を一にするよ.

(2) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −162−. 香川大学経済論叢. 362. うに,「消えた年金」に象徴される社会保険庁の相次ぐ不祥事,救急患者の病 院たらい回し,医師不足,介護士不足といった社会保障にまつわる事件や問題 が噴出した。こうした状況を受けて野党時代の民主党は自民党政権の社会保障 政策を厳しく批判し,社会保障の充実による国民生活の安心を訴え,今回の政 権奪取につなげてきた。 民主党の政権公約のなかで年金制度の一元化と並んで強調されているのが, 後期高齢者医療制度の廃止である(福田内閣の時代に長寿医療制度という通称 に改められたが,本稿では混乱を避けるために後期高齢者医療制度という名称 を用いる) 。後期高齢者医療制度は2 0 0 8年4月に始まった新しい制度である が,導入当初から悪評がつきまとっていた。例えば,後期という名称が人生の 終わりを連想させ長寿者に失礼である,消えた年金が問題となっている最中に 保険料を年金から天引きするのは許せないといった具合である。しかし,こう した批判は一部のメディアによるワイドショー的な揚げ足取りの感は否めず, 制度の本質を踏まえたものとはいえない。 では,民主党政権はそうしたワイドショー的な観点から後期高齢者医療制度 を廃止しようとしているのか。答えは否である。マスコミ向けの国民受けする 部分が皆無とはいわないが,マニフェストを見る限り,ある程度制度の特徴を 踏まえた議論がなされているように思える。というのも,民主党が問題にして いるのが,高齢者を現役世代から切り離すという制度の根幹に関わる部分だか らである。加えて,高齢者医療制度を被用者保険や国民健康保険まで含めて地 域保険に再編・統合するという将来の公的医療保険のあり方まで踏み込んで提 案している点からもそれが窺える。 本稿の目的は,民主党政権の誕生によって改めて注目されるようになった高 齢者医療制度のあり方について考察することである。その過程で,後期高齢者 医療制度の説明だけでなく,これまでの経緯や今後の展望についても言及す る。本稿の議論の特徴は,後期高齢者医療制度を日本における高齢者医療制度 の歴史的展開のなかに位置付けて評価している点である。上記で紹介したマス コミによる批判もそうであるが,これまでの報道や政府の検討会が出した報告.

(3) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 363. 高齢者医療制度の行方. −163−. 書を瞥見しても,後期高齢者医療制度創設の経緯や目的に関する認識にばらつ きがあるように感じられる。それが曖昧なままでは,制度を廃止しても問題は 一向に解決されず,むしろ無用な混乱を招く結果になりかねない。 本稿の構成は次のとおりである。まず,後期高齢者医療制度に対する批判を ワイドショー的な部分も含めて紹介するとともに,そうした批判に関する検証 を行う。その過程で制度の本質に関わる部分とそうでない部分とが明らかとな る。次に,後期高齢者医療制度創設の経緯と目的を歴史的展開に沿って説明す る。そして,民主党政権が主張する後期高齢者医療制度の廃止とその後の展開 について検証し,最後に高齢者医療制度のあり方について考察する。. ! 後期高齢者医療制度に対する批判とその検証 後期高齢者医療制度に対する批判は,制度発足から時間が経過するにつれて その内容に変化が見られた。当初は表面的,形式的なものが多かったが,その 後制度が浸透していくにつれて制度の中身に関するものが出てくるようになっ た。それらを列挙すると以下のようになる。 ・制度の名称 ・保険料の年金からの天引き ・保険料と税制との関係 ・保険料負担の増加 ・担当医制度 ・終末期相談支援料 !. 制度の名称について. 後期高齢者医療制度が登場したときに真っ先に批判を浴びたのがその名称で ある。「後期」という言葉が人生の黄昏を感じさせ,長命の高齢者を侮辱して いるというのがその理由である。しかし,同制度は厚生労働委員会や国会で審 議済みであり,突然出てきたわけではない。また,「後期」という言葉は制度.

(4) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −164−. 香川大学経済論叢. 364. 導入以前から新聞報道などを通じて様々な形で露出してきた経緯があり,その ことはマスコミが一番よく知っていたはずである。 人口に占める6 5歳以上の割合を高齢化率とよぶことからも分かるように, 現在の日本では6 5歳以上を高齢者とする場合が多い。しかし,平均寿命が男 性7 9歳,女性8 6歳の時代にあっては,同じ高齢者でも年齢に大きな幅があ る。そこで便宜上,6 5歳から7 4歳までを前期,7 5歳以降を後期とよんで区別 !. 5歳以上を対象とするから「後期」と名づけた することがあった。新制度が7 というのが正直なところで,ここまで激しい批判を浴びるとは予想していな かったに違いない。 「後期」という言葉をめぐる混乱は,制度そのものに起因するものではなく ". 政治的公正(political correctness)に関わる問題である。もちろん,言葉や記 号で人を区別する際にはそれが差別的意味を含んでいないか,一方的な価値観 からつけられたものでないかに十分注意する必要がある。もし政治的に公正で なければ名前を変更することに躊躇するべきではない。「痴呆」という用語を 「認知症」に改めたときのように。 福田内閣は制度の円滑な導入を優先したためか,さしたる反論もせず「高齢 者医療制度に関する検討会」の勧告にしたがって制度のよび方を「長寿医療制 度」に改めた。しかし,根拠法である「高齢者の医療の確保に関する法律」の 条文には現在も後期高齢者という用語が使用されており,単に通称を変更して お茶を濁したに過ぎない。ましてや,政治的公正について真剣に検証された形 跡もない。つまるところ,今回の騒動は「後期」という言葉のもつ否定的響き をマスコミが増幅して伝えたに過ぎず,制度の本質には直接関係のない批判 だったといえる。 !. 保険料の年金からの天引きについて. 保険料の年金からの天引きに対する反応も多分に感情的であった。というの も,年金からの天引きは今に始まったことではなく,既に2 0 0 0年から同じ方 法で介護保険料が徴収されていたからである。介護保険はよくて,医療保険は.

(5) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 365. 高齢者医療制度の行方. −165−. !. 駄目というのは道理が通らない。やはり,当時大々的に報じられていた社会保 険庁の怠慢による「消えた年金」問題が影響したのであろう。そうした時期に 保険料を天引きするという政府の無神経さに国民は我慢ならなかったのであ る。政府の対応はというと,年金からの天引きに代えて口座振替を指定できる ようにした(実際の運用は制度開始から半年後) 。しかし,これは税制関係か らの変更であり,原則は相変わらず年金天引きのままである。 !. 保険料と税制との関係について. 保険料の年金からの天引きに対して税制との関係から批判もあった。税制 上,保険料は社会保険料控除の対象となるが,保険料を個別に支払うよりも世 帯の誰か一人(主に世帯主)がまとめて支払った方が,世帯全体で見た場合の 納税額が少なくなる場合がある。年金から天引きされるとそうした節税ができ なくなるというのが批判の理由であった。先述のとおり,この問題には口座振 替への切り替えを認めることで対処した。 ". 保険料負担の増加について. 後期高齢者医療制度に対する批判のなかで最も大きかったのが,新制度に よって負担が増加する者がいることであった。厚生労働省も後に認めたことだ が,とりわけ低所得者にその傾向が強かった。厚生労働省の「長寿医療制度(後 期高齢者医療制度)の創設に伴う保険料額の変化に関する調査−結果速報−」 によると,制度創設による保険料減少世帯数割合は世帯所得が低くなるほど小 さくなる,つまり,低所得世帯ほど保険料が上がる可能性の高いことが示され た(表1参照) 。なぜこのようなことが起きたのか。 後期高齢者医療制度の特徴のひとつに,これまでは扶養関係および所得水準 から被扶養者として被用者保険に加入し保険料を支払うことのなかった7 5歳 以上の者に対しても一律に新制度への加入を義務付け,保険料負担を求めたこ とがある。しかし実際は,制度施行前に発足した福田内閣によって上記の高齢 者の保険料負担は半年間凍結されたため負担増とはならなかった。では一体,.

(6) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −166−. 香川大学経済論叢. 366. 表1:制度創設による保険料減少世帯数割合 減少する世帯数割合. 低所得. 中所得. 高所得. 賦課方式計. 69%. 6 1%. 75%. 78%. 4方式. 73%. 7 3%. 80%. 68%. 3方式. 70%. 6 0%. 76%. 84%. 2方式. 51%. 2 2%. 50%. 85%. 出所:厚生労働省「長寿医療制度(後期高齢者医療制度)の創設に伴う保険料額の変化に関 する調査−結果速報−」表5より抜粋。. 誰の負担が増えたのか。答えは,それまで市町村国保に加入していた低所得高 齢者である。 国保の加入者は相対的に平均年齢が高く平均所得が低い。こうした保険財政 上不利な条件を補うために多額の公費が投入され,低所得者には公費を財源と した保険料減免措置が用意されている。後期高齢者医療制度の創設に伴い7 5 歳以上の国保加入者も当然新制度に移行したが,新制度の保険者は都道府県内 の市町村で組織する広域連合であるため,市町村が独自の判断で行っていた保 険料減免のための公費投入の恩恵を受けられなくなった。特に,国保時代に手 厚く保護されていた低所得高齢者が大きな影響を受けたのである。 政府の対応は素早かった。与党プロジェクトチームが中心となって低所得者 に対する追加的な保険料軽減案を打ち出した。後期高齢者制度の保険料は,応 益負担の均等割と応能負担の所得割から構成され,低所得者は均等割だけを負 担する。元々,低所得者の均等割については所得に応じて7割,5割,2割の 軽減措置があったが,それをさらに拡充したのである(図1参照) 。 被用者保険被扶養者には負担が新たに発生するからという理由で保険料を減 免しておきながら,同じ低所得者でも元国保加入者には何もなしというのは, 確かに公平性の面から問題があったといわざるを得ない。一方で,新制度に よって負担が増えることをタブー視するかのような政府の対応は,総選挙を間 近に控えていたという特殊事情があったにせよ,今後の政策担当者の手足を縛 る結果となった。事実,新たに発足した民主党政権は,保険料負担を増やさな.

(7) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 367. 高齢者医療制度の行方. −167−. 図1:保険料軽減措置 応能分 ︹所得割︺. 割軽減. 応益分 ︹被保険者均等割︺. 割軽減. 割軽減. 割軽減 割軽減. 153 万円 80 万円. 168 万円. 211 万円 192.5 万円. 238 万円. 年金収入. 出所:厚生労働省「高齢者医療制度の見直しに関する議論の整理」より抜粋。 注:平成2 1年度に限り,7割軽減を8. 5割軽減に拡大。. いという前提で将来的な制度の見直しを進めている。 !. 担当医制度について. 担当医制度とは,後期高齢者の同意を得て主治医として届け出た医療機関が 「後期高齢者診療料」という特別な報酬を得る制度である。医療機関は担当医 制度によって診療報酬の一部が出来高払いから定額払いになるため減収となる 可能性があるが,患者にとっては自己負担が減るメリットがある。 担当医制度が批判されるのは,診療を担当する医療機関の固定化が,患者が 医療機関を自由に選択する権利(フリーアクセス)を制限すると考えられてい るためである。民主党が問題視したのは正にこの点である。 これまでの批判が主に負担面に関するものであったのに対して,担当医制度 は給付面に関するものという違いがある。当初は診療報酬面で直接影響を受け る医師・医療機関側からの反対意見が注目されたが,時間が経つにつれて民主 党が指摘するように患者側からの意見も目にするようになった。.

(8) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −168−. !. 香川大学経済論叢. 368. 終末期相談支援料について. 多くの人が天寿を全うすることを望み,老衰で死にたいと考える。しかし実 際は,事故や病気など老衰以外の理由で死亡する場合が多いのが現状である。 厚生労働省「人口動態調査」によると,死因別死亡数の割合で老衰は3. 1%に 過ぎず,6 7. 1%が悪性新生物(がん) ,心疾患,脳血管疾患,肺炎による病死 となっている。注目されるのは肺炎による死亡率が年々高まっていることであ る。同調査の性・年齢別の死因をみると年齢が高くなるほど肺炎の割合が高ま る傾向がある。これは高齢社会を反映した結果といえる。病死が増えると必然 的に自宅ではなく病院で死ぬ事例が増える。そしてその期間は多額の医療費が かかることになる。そうした終末期(ターミナル)ケアに対して政府が出した 答えのひとつが終末期相談支援料であった。 終末期相談支援料とは,「保険医療機関の保険医が,一般的に認められてい る医学的知見に基づき回復を見込むことが難しいと判断した後期高齢者である 患者に対して,患者の同意を得て,看護師と共同し,患者及びその家族等とと もに,終末期における診療方針等について十分に話し合い,その内容を文書等 により提供した場合に,患者1人につき1回に限り算定する。 」 (平成2 0年厚 生労働省告示第5 9号より抜粋)というものである。同制度は終末期ケアを考 える上で新しい試みであったが,高齢を理由に必要な治療が打ち切られるので はないかという不安が広がり,わずか3か月で中止を余儀なくされた。 ある自民党参議院議員(医師)は,患者に死を受け入れてもらうために医師 は一生懸命説明するが,これまで何の評価もなかった。だから,せめて診療報 酬をつけることにしたと語っている(「金曜討論」 『産経新聞』2 0 0 9年6月1 9 日) 。しかし,尊厳死をめぐる国民的議論がないままに,リビングウィルの作 成を手助けした医師に報酬を与えるというのは勇み足というしかない。尊厳死 についての社会的,法的理解が進まない状況でそれは正当な報酬として認知さ れないであろうし,今後の終末期医療のあり方についての議論にも水を差すこ とになるだろう。高々2, 0 0 0円の報酬のために支払った代償はあまりにも大き かった。.

(9) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 369. 高齢者医療制度の行方. −169−. 以上,後期高齢者医療制度に対する批判についてまとめてみた。制度の名称 に対する批判を除けば,それらは負担面に関するもの(保険料の年金からの天 引き,保険料と税制との関係,保険料負担の増加)と給付面に関するもの(担 当医制度,終末期相談支援料) とに分けられる。前者も確かに軽視できないが, より本質的な批判といえるのは後者である。なぜなら,制度創設の目的が主に 給付面にあったと考えられるからで,それらに対する国民のアレルギー反応が 制度の存在意義を大きく揺るがしたといえるからである。その点を確認するた めに,後期高齢者医療制度創設に至る経緯について簡単に振り返っておきた い。. ! 後期高齢者医療制度創設の経緯と目的 後期高齢者医療制度は従前の老人保健制度の反省を踏まえて創設された。で は,老人保健制度の問題点とは何だったのか。詳しい説明は拙著『日本の医療 保険制度と費用負担』に譲るが,一言でいえば,それは,老人医療費の増加に うまく対処できなかったことにある。前制度は老人医療費を全保険者で公平に 分担するという点ではある程度の成果を挙げたが,医療費の適正化という点で は無力だった。それゆえ,負担する側の保険者(特に,組合管掌健康保険)の 反発を招き廃止に至ったのである。. ". 老人保健制度に代わる新しい制度として提案されたのは次の3つである。 ・突き抜け方式 ・独立方式 ・一元化方式 突き抜け方式は会社を退職した従業員の面倒を元の被用者保険が引き続き見 るという案で,健康保険組合連合会(健保連)が中心となって主張した。退職 した被用者が国保に流れ増加した国保の負担を軽減するというのが拠出金制度 の目的であったから,それをなくすことで拠出金負担を免れようと考えたので.

(10) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −170−. 香川大学経済論叢. 370. ある。しかし,面倒をみる退職者の範囲をどうするかという問題や,そもそも 突き抜け方式が機能するには会社がつぶれることなく存在し続ける必要があ !. り,非現実的といえた。 こうして突き抜け方式が脱落し,独立方式と一元化方式の2つに絞られるこ とになった。独立方式は日本医師会が,一元化方式は市町村がそれぞれ中心と なって主張した案である。市町村が一元化方式を推す背景には,国保に高齢者 と低所得者が集中し過大な負担を強いられているという不満があった。そこ で,被用者保険,地域保険という現在の区分を改め全ての保険者がひとつにな る案を出してきたのである。独立方式と一元化方式の特徴をまとめると表2の ようになる。 独立方式,一元化方式,それぞれの長短を比較した上で出した結論は,独立 方式を基本とする高齢者医療制度を新たに創設するということであった。そう して誕生したのが後期高齢者医療制度である。では,なぜ独立方式であったの か。理由を挙げるとすれば,それは老人医療費を集中的に管理できるからであ る。ある年齢(7 5歳)以上の高齢者を現行制度から別の制度に移すことで負 担と給付の両面で現役世代とは異なる扱いが可能になる。 重要なのは新制度の重点が負担面ではなく給付面にあったことである。負担 表2:独立方式と一元化方式の特徴 独 立 方. 式. 一 元 化 方 式. 仕組み. 医療費の嵩む高齢者を現役世代から切 り離し独立した制度に加入させる方 式。. 職業や年齢などで区別することなく同 じ保険に加入させる方式。. 長. 高齢者を現役世代から切り離すこと で,後者が加入する現行制度の枠組み を温存できる。 高齢者を同じ制度に集めることで,老 人医療費を管理しやすくなる。. 現行制度に見られるリスク構造(所得 水準,年齢構成など)格差を是正でき る。 現行制度にある拠出金や納付金制度が 不要になり,制度を簡素化できる。. 高齢者の負担する保険料だけでは保険 財政を賄えないため,多額の公費投入 や現役世代からの援助が必要となる。. 国単位ではなく地域単位で一元化した 場合には,何らかのリスク構造調整が 必要となる。 被用者と自営業者間に見られるような 所得の捕捉率格差の是正が必要とな る。. 短. 所. 所.

(11) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 371. 高齢者医療制度の行方. −171−. 構造を変えるだけなら前制度のままでも十分可能であった(事実,現役並み所 得を有する高齢者の自己負担率を引き上げるなどしてきた) 。しかし,負担面 をいくら取り繕ったところで老人医療費の増加スピードに追いつけないという のが前制度を通じての教訓であり,だからこそ給付面に働きかける方法として 新制度の登場が望まれたのである。 高齢社会では何もしなければ老人医療費の増加は必至である。高齢者の多く が慢性疾患を抱え医療機関に掛かる機会が相対的に多いからである。そうした 高齢者特有の事情を考慮した医療提供体制の構築が欠かせない。前制度でも老 人診療報酬点数表という形で診療報酬上特別な配慮をしていた(ただし,平成 1 8年度の診療報酬改定以降,簡素化の観点から医科診療報酬点数表等と一本 化された) 。しかし,医療機関の配置や機能分化の計画の基本単位で保健所の 主な設置者でもある都道府県が高齢者医療制度の保険者ではなかったため,老 人医療費の適正化における責任が曖昧な状態であった。それを明確にするた め,各公的医療保険に分散して加入していた高齢者を地域単位(都道府県単位) に集約させ,医療提供体制の実施主体と整合性をもたせようとしたのである。. ! 民主党政権誕生と後期高齢者医療制度の廃止 後期高齢者医療制度の廃止を公約に掲げる民主党が先の衆議院選挙で勝利 し,同党中心の連立政権(以下,新政府)が誕生した。民主党の政権公約集(マ ニフェスト)には,こう記されている(以下,『民主党の政権公約. Manifesto』. より抜粋,原文ママ) 。 後期高齢者医療制度を廃止し,国民皆保険を守る 【政策目的】 ○年齢で差別する制度を廃止して,医療制度に対する国民の信頼を高める。 ○医療保険制度の一元的運用を通じて,国民皆保険制度を守る。.

(12) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −172−. 香川大学経済論叢. 372. 【具体策】 ○後期高齢者医療制度・関連法は廃止する。廃止に伴う国民健康保険の負担増 は国が支援する。 ○被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し,将来,地域保険として一元的 運用を図る。 【所要額】 8 5 0 0億円程度 後期高齢者医療制度について民主党が問題としたのは,高齢者を他の世代と は別の独立した制度に加入させている点である。先述のとおり,こうした仕組 みは独立方式とよばれ,疾病リスクが高く保険財政にとって負荷の大きい高齢 者を現役世代から切り離すことで,老人医療費を集中的に管理でき,現役世代 が加入する制度の枠組みを温存できるという特徴がある。 それを廃止するということは,以前の老人保健制度に戻すか,新しい制度を 創設するということである。後期高齢者医療制度には6 5歳以上7 5歳未満の前 期高齢者の医療費を保険者が分担する仕組み(前期高齢者納付金制度)がある が,それも同時に廃止することになれば,前期高齢者を相対的に多く抱える国 保の財政が逼迫する。「廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する。 」と なっているのはそうした理由からであろう。 「年齢で差別する制度を廃止して」となっていることから,新たな制度を創 設するにしても,高齢者を若年者と同じ制度に加入させることが予想される。 だとすれば,医療費の嵩む高齢者を現役世代から切り離すことで,老人医療費 の集中管理と現行医療保険制度の枠組み維持という独立方式の制度思想は根本 から否定されたことになる。 後期高齢者医療制度に対する上記の民主党の批判は,実は,2 0 0 9年の3月 に高齢者医療制度に関する検討会がまとめた「高齢者医療制度の見直しに関す る議論の整理」 (以下,「議論の整理」 )のなかで論点のひとつとして提示され.

(13) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 373. 高齢者医療制度の行方. −173−. ていた。注目したいのは,年齢で区別することの是非だけでなく公的医療保険 の都道府県単位の一元化にも言及していた点である。 残念ながら「議論の整理」は高齢者医療制度として後期高齢者医療制度のよ うな独立方式がよいのか,それとも一元化方式がよいのか明確な結論を出すま でには至らず,様々な改革の可能性を示すにとどまっている。「議論の整理」の 問題点として指摘できるのは,それが形態論と負担論に偏っている点である。 時期的に後期高齢者医療制度の負担面に批判が集中していたことを割り引いて も,そうした傾向は否めない。 例えば,後期高齢者医療制度の対象を7 5歳以上ではなく6 5歳以上に引き下 げた場合の財政負担,独立方式を止めて前期高齢者に係る財政調整を7 5歳以 上にも拡大した場合の負担,果ては,当時の厚生労働大臣が提唱したとされる 後期高齢者医療制度と国民健康保険の統合および都道府県単位の再編案の説明 などである。少ないながらも給付面について触れた箇所では,高齢者の不興を 買った一因として,負担面ばかりが目立ち新しいサービスがなかったことを反 省点として挙げる一方,高齢者に限定した診療報酬体系については見直す必要 性を示している。 こうして「議論の整理」を見てみると,後期高齢者医療制度がなぜ創設され たのかについての認識が不足しているように思える。本稿で指摘しているよう に,前制度の老人保健制度が失敗した理由は,老人医療費の増加に負担が追い つけないという構造的な問題であり,それに対処するには負担面ではなく給付 面に働きかけるより他ないという結論に至ったのではなかったか。 2 0 0 9年1 0月4日の『読売新聞』によると,新政府は後期高齢者医療制度を 即座に廃止し老人保健制度に戻すことはせず,地域医療保険の創設を目指す考 えを示したという。ここでいう地域医療保険とは,人々が被用者・非被用者の 別および年齢の別なく加入する地域単位(おそらく都道府県単位)の公的医療 保険であると推測される。形態としてはかつて市町村が主張した一元化方式に 近い。一元化方式の特徴のところでも述べたように,地域単位の一元化では特 別な財政調整を施さない限り,地域間で保険料率に大きな格差が生じる。ま.

(14) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −174−. 香川大学経済論叢. 374. た,特別な財政調整を施したとしても,真に公平な保険料率を実現するのは容 易ではない。後期高齢者医療制度でそうした財政調整の仕組みが導入されてい るが,それはあくまで加入者の平均値を基準にした場合の公平性に過ぎない (小松(2 0 0 8)参照) 。 極論すれば,国単位で一元化しない限り,保険の形状をいくら変えたところ で(たとえ緻密なリスク構造調整を実施したとしても)真に公平な負担は実現 できないのである。また,たとえ地域単位であっても保険者を一元化するのは 容易ではない。特に自営業者の所得把握が高い壁となっている。加入者数でい えば自営業者は微々たるものである。しかし,給与所得がほぼガラス張りの大 多数のサラリーマンにとっては無視できない問題であり,自営業者との統合を 拒否するだけの十分な理由となる。その実現には全国民の所得把握の徹底と総 合課税的な保険料徴収が欠かせない。民主党は同じマニフェストで,税・社会 保障共通の番号制の導入と,税と保険料を一体的に徴収するための歳入庁の創 設を謳っており,実現の可能性がないわけではない。であるならば,負担面に 関しては地域別ではなく全国一律の同一所得同一保険料率を目指すべきであ る。そうしておいてなお保険者を地域単位とする理由を探すとすれば,それは 給付面における改革との整合性以外にない。 給付面の改革を行うに当たって最も適切な単位は何か。市町村単位でも不可 能なわけではないが,市町村の範囲を超えて医療機関に掛かることが一般的な ことを考えればそれより大きな単位が望ましい。そうなると二次医療圏か都道 府県になるが,既存の行政単位としての実績から後者がより適当といえる。保 健所の主な設置者が都道府県であることも幸いする。全国一低い老人医療費を 実現した長野モデルが医師や保健師の地道な保健活動の賜物であったことはよ く知られた事実である。 旧来の公的医療保険制度も「議論の整理」も,そして,民主党案も従来の常 識に捉われ過ぎているのではないか。保険者の範囲で負担と給付が決まるとい う古い考えは捨てるべきである。特に負担については積極的にその範囲を超え るべきであり,ある程度正確な所得捕捉さえ担保できればそれは可能である。.

(15) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 375. 高齢者医療制度の行方. −175−. 共通の賦課ベースを設定しそれに一律の保険料率を適用すればどの保険に加入 していようとも関係ないはずであり,負担は保険の形状に左右されない。保険 者も保険料の設定から解放されることで自由度が高まり,より重要な給付面に 注力できる。その意味でドイツの医療基金導入に伴う統一保険料率の設定は大 いに参考になる(松本(2 0 0 8) ,小梛(2 0 0 9) ) 。 だとすれば,現行の後期高齢者医療制度も民主党案の地域医療保険も目指し ている方向は同じと考えてよい。後期高齢者医療制度は負担面の問題から現役 世代の公的医療保険が一元化できないのでひとまず高齢者から先に地域保険に 移行したのであり,民主党案は現役世代の負担格差も含めて一挙に解決するた めに老若の区別なく地域保険に移行しようとしているのである。つまり,負担 面を無視すればどちらも地域保険であることには変わりない。違いは,高齢者 のみか,高齢者以外の者(現役世代)も含むかである。現役世代の健康管理や 保健指導を行うのに適した単位が職場か地域かによって結論は異なるが,いず れにせよ,高齢者に限っては職場を離れ地域社会に帰属している人が多いので 地域単位で給付を考えるのが自然である。 負担面と給付面の双方で最適解となる保険の形状を見出すのは至難の業であ り,それを多大な混乱と費用をかけて追求するよりも,給付に最適な保険にし ていく方が望ましい選択といえよう。. ! 老人医療費と高齢者医療制度のあり方 本稿は高齢者医療の負担面ではなく給付面の改革を優先することを提案して いるが,その背景に老人医療費の増加があることは先述したとおりである。慢 性疾患をもつ高齢者の比率が高まる高齢社会では老人医療費の増加はある程度 やむを得ないといえるが,問題はその増え方にある。 老人医療費は,1人当たり医療費と高齢者人口の積によって表される。後者 は人口動態によって既に決まっており,実質的に前者が老人医療費の趨勢を決 める。現行の診療報酬体系(点数単価方式)の下では単価が10円に固定され ている関係上,個々の診療点数が価格でありそれを積み上げていくことで医療.

(16) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −176−. 香川大学経済論叢. 376. 図2:老人医療費と老人医療受給対象者数の増加率比較 % 15 00. 老人医療費(A). 老人医療受給対象者数(B). A−B. 10 00 5 00 0 00 −5 00 −10 00. S59 S60 S61 S62 S63 H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 年. 出所:厚生労働省「老人医療事業報告」 (平成1 9年度)より作成。. 費が算出される。診療点数は厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協 議会で決定され,物価や技術料を反映するといわれる。 老人医療費の増え方としては,高齢者人口の増加率を,!下回る,"等し い,#上回る,の3つが考えられる。それらは,1人当たり医療費が,!減少 する,"不変,#増加する,にそれぞれ対応している。図2は老人医療費と老 人医療対象者数の増加率を比較したものである。それを見ると,老人医療費は 高齢者人口の増加率を上回る#のパターンであることが分かる。 実際,今から示すように1人当たり医療費の増加率は特定の年度を除いてプ ラスとなっている。1人当たり医療費の増加要因を分析する方法としてよく用 いられるのが,医療費の3要素(受診率,1件当たり日数,1日当たり診療費) 分解である。受診率とは1人当たり年間のレセプト枚数,1件当たり日数とは レセプト1枚当たりの診療日数である。1人当たり医療費はそれら3要素の積 として表される。3要素の増減を見れば,1人当たり医療費がどの要素の影響 をより強く受けているかが分かる。 表3は1人当たり入院診療費と1人当たり入院外診療費を3要素別に見たも のである。入院,入院外ともに受診率と1日当たり診療費が増加要因となって.

(17) (千円). 1人当たり 入院診療費 %. 対前年度比 %. 受診率 %. 対前年度比 %. 1件当たり 日数(日) 対前年度比. 1日当たり 診療費(千円) %. 対前年度比 %. 377. 昭和5 8年度 2 3 7. 4 … 84. 08 … 2 3. 7 2 … 11. 90 … 昭和5 9年度 252. 1 6. 2 8 8. 01 4. 7 23. 6 7 −0. 2 12. 11 1. 7 昭和60年度 2 7 6. 1 9. 5 9 1. 36 3. 8 23. 60 −0. 3 12. 80 5. 8 昭和61年度 2 8 6. 9 3. 9 9 2. 74 1. 5 23. 59 −0. 0 13. 11 2. 4 昭和62年度 2 9 8. 1 3. 9 9 4. 36 1. 8 23. 53 −0. 3 13. 43 2. 4 昭和63年度 3 0 6. 0 2. 7 9 7. 34 3. 2 23. 29 −1. 0 13. 50 0. 5 平成元年度 3 14. 0 2. 6 9 8. 3 6 1. 0 23. 12 −0. 7 13. 8 1 2. 3 平成2年度 3 15. 7 0. 5 9 7. 8 4 −0. 5 23. 00 −0. 5 14. 03 1. 6 平成3年度 3 19. 7 1. 3 9 6. 9 7 −0. 9 22. 8 3 −0. 7 14. 44 2. 9 平成4年度 3 33. 8 4. 4 9 4. 8 6 −2. 2 22. 4 2 −1. 8 15. 70 8. 7 平成5年度 3 37. 8 1. 2 9 2. 8 9 −2. 1 22. 0 7 −1. 6 16. 48 5. 0 平成6年度 3 37. 0 (35 3. 4) −0. 2 (4. 6) 93. 0 6 0. 2 2 1. 7 3 −1. 6 16. 67 (17. 48) 1. 2 (6. 1) 平成7年度 3 28. 0 (367. 5) −2. 7 (4. 0) 91. 71 −1. 5 21. 5 8 −0. 7 16. 5 8 (18. 57) −0. 5 (6. 3) 平成8年度 3 40. 2 (37 8. 8) 3. 7 (3. 1) 91. 00 −0. 8 21. 2 9 −1. 3 17. 56 (19. 56) 5. 9 (5. 3) 平成9年度 3 39. 7 (377. 1) −0. 1(−0. 5) 88. 7 1 −2. 5 21. 04 −1. 2 18. 20 (20. 2 0) 3. 7 (3. 3) 平成1 0年度 34 3. 9 (38 0. 4) 1. 2 (0. 9) 89. 0 9 0. 4 2 0. 5 6 −2. 3 18. 78 (20. 77) 3. 2 (2. 8) 平成1 1年度 349. 4 (385. 4) 1. 6 (1. 3) 88. 55 −0. 6 20. 4 0 −0. 8 19. 3 4 (21. 34) 3. 0 (2. 7) 平成1 2年度 3 28. 6 (35 9. 8) −5. 9(−6. 6) 80. 94 −8. 6 19. 4 5 −4. 6 20. 87 (22. 85) 7. 9 (7. 1) 平成13年度 32 6. 5 (356. 8) −0. 7(−0. 8) 79. 2 9 −2. 0 19. 31 −0. 7 21. 32 (23. 3 0) 2. 1 (2. 0) 平成1 4年度 32 1. 5 (35 0. 9) −1. 5(−1. 7) 78. 38 −1. 2 18. 9 6 −1. 8 21. 6 3 (23. 61) 1. 4 (1. 3) 平成15年度 3 3 4. 8 (364. 8) 4. 1 (4. 0) 80. 0 0 2. 1 18. 9 1 −0. 3 22. 13 (24. 1 1) 2. 3 (2. 1) 平成1 6年度 350. 8 (382. 1) 4. 8 (4. 8) 83. 1 7 4. 0 18. 9 3 0. 1 22. 2 8 (24. 2 7) 0. 7 (0. 7) 平成1 7年度 3 7 2. 9 (40 5. 9) 6. 3 (6. 2) 86. 99 4. 6 18. 9 6 0. 1 22. 6 1 (24. 61) 1. 5 (1. 4) 平成18年度 38 3. 1 (41 2. 4) 2. 7 (1. 6) 88. 6 5 1. 9 18. 93 −0. 2 22. 8 3 (24. 58) 1. 0(−0. 1) 平成1 9年度 4 0 2. 3 (43 2. 2) 5. 0 (4. 8) 90. 3 7 1. 9 18. 9 9 0. 4 23. 4 4 (25. 18) 2. 7 (2. 4) 出所:厚生労働省「老人医療事業報告」 (平成19年度)より抜粋。 注:1人当たり入院診療費及び1日当たり診療費の括弧内は,食事療養・生活療養(医科)費用額を合算した場合の数値である。. 年 度. 表3:1人当たり入院診療費と入院外診療費の推移. OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 高齢者医療制度の行方 −177−.

(18) (千円). 1人当たり 入院外診療費 %. 対前年度比 %. 受診率 %. 対前年度比 %. 1件当たり 日数(日) 対前年度比. 1日当たり 診療費(千円) … 1. 0 6. 2 5. 2 6. 7 4. 4 6. 2 3. 1 4. 7 1. 1 4. 2 2. 4 3. 9 2. 1 2. 6 −1. 9 1. 1 −0. 8 1. 9 −3. 4 0. 8 1. 8 3. 7 1. 8 3. 6. %. %. … (1. 2) (6. 4) (5. 5) (7. 0) (4. 5) (6. 6) (3. 3) (5. 0) (1. 8) (5. 4) (3. 6) (5. 3) (3. 2) (4. 6) (0. 7) (4. 1) (2. 4) (4. 8) (0. 2) (3. 5) (3. 5) (5. 5) (2. 7) (5. 5). 対前年度比. −178−. 昭和5 8年度 1 7 9. 0 (187. 5) … … 1, 13 0. 8 0 … 3. 8 4 … 4. 12 (4. 3 2) 昭和5 9年度 1 79. 3 (18 8. 1) 0. 2 (0. 3) 1, 15 0. 23 1. 7 3. 74 −2. 5 4. 16 (4. 3 7) 昭和6 0年度 18 9. 2 (19 8. 8) 5. 5 (5. 7) 1, 16 8. 6 0 1. 6 3. 66 −2. 2 4. 4 2 (4. 65) 昭和6 1年度 199. 5 (21 0. 1) 5. 4 (5. 7) 1, 18 7. 9 5 1. 7 3. 6 1 −1. 4 4. 6 5 (4. 90) 昭和6 2年度 211. 3 (223. 1) 5. 9 (6. 2) 1, 17 8. 85 −0. 8 3. 61 0. 0 4. 97 (5. 25) 昭和63年度 21 9. 9 (232. 4) 4. 1 (4. 2) 1, 20 2. 94 2. 0 3. 52 −2. 3 5. 1 9 (5. 4 8) 平成元年度 2 32. 2 (246. 2) 5. 6 (6. 0) 1, 22 3. 09 1. 7 3. 4 5 −2. 2 5. 51 (5. 8 4) 平成2年度 2 39. 6 (25 4. 5) 3. 2 (3. 4) 1, 25 2. 4 6 2. 4 3. 37 −2. 3 5. 6 8 (6. 0 3) 平成3年度 25 4. 2 (27 0. 9) 6. 1 (6. 4) 1, 2 8 5. 91 2. 7 3. 32 −1. 3 5. 9 5 (6. 34) 平成4年度 2 59. 8 (27 8. 8) 2. 2 (2. 9) 1, 31 3. 1 4 2. 1 3. 2 9 −1. 0 6. 0 1 (6. 4 5) 平成5年度 2 7 1. 4 (29 4. 6) 4. 5 (5. 7) 1, 33 8. 26 1. 9 3. 24 −1. 6 6. 2 6 (6. 8 0) 平成6年度 280. 2 (30 7. 8) 3. 3 (4. 5) 1, 36 6. 10 2. 1 3. 20 −1. 2 6. 4 1 (7. 0 5) 平成7年度 2 8 9. 5 (32 2. 5) 3. 3 (4. 8) 1, 38 6. 2 1 1. 5 3. 1 4 −2. 0 6. 66 (7. 4 2) 平成8年度 2 95. 7 (33 2. 9) 2. 1 (3. 2) 1, 41 4. 4 1 2. 0 3. 0 7 −1. 9 6. 8 0 (7. 66) 平成9年度 2 9 1. 7 (33 4. 8) −1. 4 (0. 6) 1, 43 3. 9 0 1. 4 2. 9 2 −5. 1 6. 98 (8. 0 1) 平成10年度 2 83. 6 (33 4. 3) −2. 8(−0. 1) 1, 48 6. 69 3. 7 2. 79 −4. 4 6. 84 (8. 0 6) 平成11年度 29 0. 3 (352. 4) 2. 4 (5. 4) 1, 52 4. 90 2. 6 2. 75 −1. 3 6. 9 1 (8. 3 9) 平成1 2年度 28 3. 3 (35 4. 9) −2. 4 (0. 7) 1, 553. 3 7 1. 9 2. 66 −3. 4 6. 86 (8. 5 9) 平成13年度 28 0. 7 (361. 6) −0. 9 (1. 9) 1, 55 6. 9 1 0. 2 2. 58 −3. 0 6. 9 9 (9. 0 0) 平成1 4年度 260. 2 (34 7. 5) −7. 3(−3. 9) 1, 55 0. 7 6 −0. 4 2. 4 9 −3. 7 6. 7 5 (9. 02) 平成1 5年度 255. 9 (35 0. 9) −1. 7 (1. 0) 1, 56 4. 7 0 0. 9 2. 4 0 −3. 3 6. 8 0 (9. 3 3) 平成1 6年度 258. 6 (36 0. 7) 1. 1 (2. 8) 1, 58 3. 37 1. 2 2. 3 6 −1. 8 6. 9 2 (9. 66) 平成1 7年度 26 6. 1 (37 7. 4) 2. 9 (4. 6) 1, 600. 4 6 1. 1 2. 31 −1. 9 7. 18 (10. 1 9) 平成18年度 26 7. 1 (382. 3) 0. 4 (1. 3) 1, 61 3. 0 5 0. 8 2. 26 −2. 2 7. 31 (10. 4 7) 平成1 9年度 274. 0 (399. 3) 2. 6 (4. 4) 1, 62 4. 97 0. 7 2. 2 3 −1. 7 7. 5 8 (11. 0 4) 出所:厚生労働省「老人医療事業報告」(平成1 9年度)より抜粋。 注:1人当たり入院外診療費及び1日当たり診療費の括弧内は,薬剤の支給費用額を合算した場合の数値である。. 年 度. OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 香川大学経済論叢 378.

(19) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 379. 高齢者医療制度の行方. −179−. いる。受診率の上昇は医療機関に掛かる機会の増加を意味する。では,高齢者 が年々病気がちになっているのであろうか。厚生労働省「患者調査」(平成1 7 年)によると,受療率(人口10万人当たり推計患者数)は入院,外来とも上 昇傾向にあるとはいえない(図3参照) 。つまり,病気がちの人の比率は変わ らないものの,彼らの疾病の性質が慢性化・複合化していることで複数の医療 図3:受療率の推移 人 7 000. 入院. 6 000 5 000 4 000 3 000. 65歳以上 70歳以上 75歳以上. 2 000 1 000 0 S40 S45 S50 S55 S59 S62. H2. H5. H8 H11 H14 H17 年. 出所:厚生労働省「患者調査」(平成1 1年,平成1 4年,平成17年)より作成。 注:7 5歳以上の受療率についてはデータ入手の都合から平成14年と平成17 年のみを表示。 人 18 000. 外来. 16 000 14 000 12 000 10 000 65歳以上 70歳以上 75歳以上. 8 000 6 000 4 000 2 000 0 S40 S45 S50 S55 S59 S62. H2. H5. H8. H11 H14 H17 年. 出所:厚生労働省「患者調査」(平成1 1年,平成1 4年,平成17年)より作成。 注:7 5歳以上の受療率についてはデータ入手の都合から平成14年と平成17 年のみを表示。.

(20) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −180−. 香川大学経済論叢. 380. 機関に高頻度で掛からざるを得ず,それが受診率上昇を招いていると推測され る。 1日当たり診療費は診療報酬の改定と医師・医療機関の診療行為に左右され る。表4および図4は診療行為別1日当たり点数(入院外)の寄与度を表して いる。最近の傾向として「処置」の寄与の大きさが目立つ。その理由について は別途詳細な分析が必要であるが,診療報酬改定が強く影響しているものと思 われる。周知のとおり診療報酬(本体)はここ数年あまり引き上げられていな い。しかし,個々の診療行為に対する点数配分については毎回大きな変更が行 われている(最近の例では,産科医の過重労働に応えるため点数を上積みする など) 。「処置」を要する老人が急に増えるとは考えにくく,点数配分の変更に よって当該診療行為の重みが増したと考えるのが自然である。また,個々の診 療点数の増減は医師・医療機関にとって経済インセンティブとなるためその分 の効果もある。 以上より,高齢者人口増以外の老人医療費の増加要因が受診率の上昇と1日 当たり診療費にあり,それぞれの背後に慢性・複合疾患を抱えた高齢者と,診 療報酬の改定および医師・医療機関の診療行為の存在が強く示唆されたわけで あるが,それらに共通しているのはいずれも供給面に関係している点である。 受診率の上昇は患者である高齢者の問題というよりむしろ医療提供体制の問 題である。医療の専門分化が進んだ今日,イギリスのような GP(一般医)制 度をもたない日本では,医師も個々の専門に特化しがちである。そのため,複 数の病気をもつ高齢者は必然的に複数の医師・医療機関に掛からなければなら ない。 診療報酬については,診療点数の増減を通じて望ましい医療提供体制に誘導 するという政策的使用が近年目立って増えている。上に見たように診療行為の 比重の変化を促す効果はあるものの,医療費全体の管理には効果がないばかり か,インセンティブが効き過ぎると,一部の診療行為に過度に偏る危険性があ る。現在の老人医療費の増加は医療費全体に関する問題であり,そのような現 行の診療報酬では対処できない。中身の配分より先に全体をどうするかが問わ.

(21) −1. 36. 0. 0 4. 0. 0 7. 置. 術. 酔. 処. 手. 麻. 放射線治療. −0. 02. −0. 01. 0. 0 3. −0. 6 4. 7 6 0. −0. 1 4. 0. 4 1. 0. 2 5. −0. 4 5. 0. 00. −2. 17. 0. 6 0. 0. 3 5. 1. 2 2. 0. 2 5. −0. 6 1. 0. 24. −0. 03. 0. 17. 0. 38. 0. 50. 0. 6 7. 0. 64. 1. 5 5. −1. 2 5. 平成1 4年. 0. 0 1. 0. 04. 0. 1 0. 1. 3 7. −0. 0 4. 0. 0 6. 0. 6 9. 2. 0 5. −0. 10. 1. 30. −0. 77. −6. 74. 0. 96. 平成15年. 出所:厚生労働省「社会医療診療行為別調査」 (各年版)より作成。. −0. 07. −0. 0 1. 0. 1 7. リハビリテーション. 精神科専門療法. −0. 3 8. 射. 0. 1 3. 画像診断. 注. −0. 10. 査. 検. −1. 0 7. −4. 1 1. 在宅医療. 薬. −0. 7 8. 医学管理等. 0. 21. 平成1 3年. 0. 0 3. 0. 25. 0. 0 4. 5. 0 7. 0. 0 9. 0. 0 7. 0. 0 4. −0. 0 6. −0. 0 4. 0. 7 5. −0. 7 5. 0. 8 9. 1. 1 8. 平成16年. 0. 0 7. −0. 24. −0. 1 0. 0. 15. 0. 0 0. 0. 1 4. 0. 9 4. 0. 2 9. 0. 5 0. −0. 2 2. 0. 0 6. −0. 7 5. −0. 1 5. 平成17年. 0. 23. 0. 11. 0. 43. 0. 4 3. 0. 18. −0. 07. −0. 83. −0. 26. −0. 15. −0. 12. 0. 08. −0. 22. −0. 3 0. 平成18年. −0. 35. 0. 08. −0. 16. 2. 4 6. −0. 1 1. −0. 4 1. 0. 3 0. −2. 2 5. 0. 1 7. 0. 3 7. 0. 9 5. 0. 4 5. 0. 0 1. 平成19年. 0. 1 1. 0. 1 4. 0. 2 5. 1 2. 4 5. 0. 2 9. 0. 3 7. 0. 5 8. 0. 5 0. 5 1 0.. 0. 5 5. 1. 0 1. 0. 3 6. −1. 0 0. 平成2 0年. 381. 投. 0. 7 2. 平成12年. 初・再診. 診療行為. 表4:診療行為別1日当たり点数(入院外)の寄与度. OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 高齢者医療制度の行方 −181−.

(22) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −182−. 香川大学経済論叢. 382. 図4:診療行為別1日当たり点数(入院外)の寄与度 % 20. 放射線治療 麻酔. 15. 手術 処置 精神科専門療法. 10. リハビリテーション 注射. 5. 投薬 画像診断. 0. 検査 在宅医療 医学管理等. −5. 初・再診 −10 H12. H13. H14. H15. H16. H17. H18. H19. H20 年. 出所:厚生労働省「社会医療診療行為別調査」 (各年版)より作成。. れているのである。 高齢者は確かに受療機会が多い。しかし,だからこそ老人医療には効率化の 余地が多く残されているのではないか。数が多ければ多いほど共有化できる部 分,共通化できる費用も多いはずであり,今より1人当たり医療費を下げるこ とも十分可能である。それを実現するためには,多数派である高齢者を専用に 扱う医療提供体制が存在して然るべきであり,そうした考えが将来の高齢者医 療制度の根幹になくてはならない。. ! おわりに 本稿では,後期高齢者医療制度に対する批判を検証しながら,制度創設の経 緯と目的に立ち返って老人医療費の問題と今後の高齢者医療制度のあり方を考 察してきた。先ごろ発足した民主党政権は,後期高齢者医療制度を廃止し将来 的には地域保険に一元化する案を検討しているが,本稿が指摘したとおり,そ.

(23) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 383. 高齢者医療制度の行方. −183−. れは,供給面を考えると地域保険である現行の後期高齢者医療制度と方向性を 同じくしている。しかし,その際,保険の形態で加入者の負担が決まるという 古い考えは捨てるべきである。保険の形態と負担のあり方は別物であり,それ は給付のあり方との整合性から導かれるものである。高齢者医療制度を考える 上で重要なのは,老人保健制度の失敗から学んだ教訓,老人医療費の増加をい かに制御するかという視点を忘れないことである。それなくして真の改革はあ りえない。 高齢社会において医療費を潤沢に使えることが果たして幸せなのかよく考え てみる必要がある。長野モデルが示したのは,医療費の大きさと健康は比例し ないという事実である。健康だから医療が不要なのではない。むしろ健康を保 つには医療は不可欠である。ただし,医療が大量にあっても健康にはなれな い。重要なのは,「量」ではなく「質」である。良質な医療は少量でも大きな 効果をもたらす。そうした医療の実現に向けて高齢者医療制度における医療提 供体制を見直す時期に来ているのではないか。 参 考 文 献 [1]厚生労働省「社会医療診療行為別調査(各年版) 」 [2]厚生労働省「患者調査」 (平成1 1年,平成1 4年,平成17年)」 [3]厚生労働省「長寿医療制度(後期高齢者医療制度)の創設に伴う保険料額の変化に関 する調査−結果速報−」2 0 0 8年 [4]厚生労働省「平成2 0年度診療報酬改定に係る通知等について」2008年 [5]厚生労働省「人口動態調査」2 0 0 9年 [6]厚生労働省「老人医療事業報告(平成1 9年度) 」2 0 0 9年 [7]小梛治宣「ドイツ医療保障改革の動向」 『週刊社会保障』法研. 第6 3巻. 第2520号. 2 0 0 9年 [8]小松秀和『日本の医療保険制度と費用負担』ミネルヴァ書房 2005年 [9]小松秀和「高齢者医療費の地域差を保険料にいかに反映させるか−後期高齢者医療制 度の普通調整交付金に関する分析−」 『京都大学経済論叢』第182巻. 第1号 2008年. [10]松本勝明「ドイツにおける2 0 0 7年医療制度改革−競争強化の視点から−」 『海外社会 保障研究』第1 6 5号 2 0 0 8年 [11]民主党『民主党の政権公約 Manifesto』2 0 0 9年.

(24) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −184−. 香川大学経済論叢. 384. 注 (1) 正確には,民主党中心政権とよぶべきかも知れない。なぜなら,参議院では民主党は 単独過半数を押さえていないため,社民党および国民新党と連立を組んでいるからであ る。 (2) 65歳から74歳までを前期,7 5歳から84歳までを中期,8 5歳以上を後期と分類する 方法もある。 (3) こうした名称をめぐる問題は,高齢運転者標識(通称,もみじマーク)が濡れ落ち葉 を連想させるのでけしからんという話と似ている。 (4) 2 0 0 9年1 0月からは住民税の年金天引きも始まった。 (5) 正確にいうとリスク構造調整方式を加えて4案であるが,同方式は他の3方式と併用 できるため,相互に対立する案のなかに含めなかった。 (6) アメリカの GM 社は退職高齢者のために巨額の医療保険費用(これをレガシーコスト という)を負担していたが,それが経営破綻の一因になった。.

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